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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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Transcription:

スポーツ博物館将来構想 独立行政法人日本スポーツ振興センター 平成 31 年 3 月 29 日

はじめに... 1 I スポーツ博物館将来構想の位置付け... 2 II スポーツ博物館の意義 目的... 2 (1) 背景 意義 目的... 2 1 背景... 2 2 意義 目的... 3 (2) コンセプト... 4 III 設置場所及び名称... 7 (1) 設置場所... 7 (2) 名称... 8 IV 新しいスポーツ博物館の基本的な業務... 9 (1) 既存資料の整理 目録の作成... 9 (2) 事業内容... 9 1 収集 保存... 9 2 調査研究... 10 3 展示 公開... 10 4 教育普及... 12 5 交流... 13 6 スポーツライブラリー... 15 V スポーツ博物館の運営体制等...16 (1) 運営体制及び形態...16 (2) 必要な人員体制の確保...16 (3) 利用促進等...16 VI 再開館に向けた今後の計画...17 (1) 再開館を前提とした今後の計画...17 (2) 再開館までの期間における所蔵資料の利活用等...19

はじめに独立行政法人日本スポーツ振興センター ( 以下 JSC という ) が管理 運営する秩父宮記念スポーツ博物館 ( 図書館機能を含む 以下 スポーツ博物館 という ) は 1959( 昭和 34) 年に国立競技場 (1958( 昭和 33) 年竣工 ) 内に併設して設置された 以来 スポーツに関する各種資料を収集 保存 研究 展示し 主としてスポーツの歴史と文化に対する理解と普及に努めてきた スポーツ博物館は 2013( 平成 25) 年 9 月に東京 2020 オリンピック パラリンピック競技大会の開催が決定し 新国立競技場が整備されることとなったことを受け 引き続き新国立競技場の中に整備する計画で 2014( 平成 26) 年 5 月から一時休館 移転した しかしながら 2015( 平成 27) 年 8 月に新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議において整備計画が見直され 新国立競技場は 原則として競技機能に限定 し さらに スポーツ博物館等のスポーツ振興を目的とした施設は設置しない とされたことから 新国立競技場の中に引き続き整備されることとなった故秩父宮殿下の御遺品を除き スポーツ博物館の在り方を再検討する必要性が生じた このような状況を受け JSC では スポーツ博物館の今後の在り方について法人内で検討を行ってきたが 2018( 平成 30) 年度からの第 4 期中期目標 ( 文部科学大臣指示 ) に 秩父宮記念スポーツ博物館 図書館については 機能や役割など今後の在り方について 平成 30 年度中に結論を出し その結果を踏まえて具体的な取組を進める と記載されたこと また 関係者からの早期の再開館への期待や資料の散逸を危惧する声があることを踏まえ 外部有識者等から広く意見を聞くことを目的に スポーツ博物館将来構想検討会議 ( 以下 検討会議 という ) を 2018( 平成 30) 年 7 月に設置した 検討会議では スポーツ基本法等に掲げられたスポーツの ( 多様な ) 価値や意義 社会的な課題や政策目標との関連性に留意しつつ JSC がスポーツ博物館を設置する意義 コンセプト及び事業内容等の今後の在り方について議論いただき その結果は検討会議の 審議のまとめ として取りまとめられた その中で 我が国においてスポーツの価値についての普及啓発や資料の継承という役割が継続的に果たされるためには 国の機関であり長年にわたりスポーツ関係の資料を収集 保存してきた経験を持つ JSC が 引き続きスポーツに関する博物館を運営していくことが適切であるとされた これを受け JSC としても 広く国民にスポーツの価値を伝えていく必要性や貴重なスポーツ資料の継承という役割の重要性を改めて認識し JSC の基本理念である スポーツの推進と人々の健全な発達 健康で豊かな生活を実現し 公正で活力ある地域 社会 平和と友好に満ちた世界に貢献 の実現に近づくため 国との密接な連携 協力の下 スポーツ博物館を再開館することとする 1

I スポーツ博物館将来構想の位置付け 本スポーツ博物館将来構想は 検討会議の 審議のまとめ を踏まえ 同スポーツ博物館の機能や役割 具体的な取組のイメージ等について JSC としての基本的な方向性及び目標とすべき将来像をまとめたものである II スポーツ博物館の意義 目的 (1) 背景 意義 目的 1 背景 スポーツ 1 は 心身ともに健やかな人間を育て 人々に大きな生きがいをもたらすなどの個人的な恩恵だけでなく 明るく豊かで活力に満ちた社会の形成 経済 地域の活性化や国際交流を通じた相互理解などの社会的な恩恵をもたらすなど 多様な価値を有している ( 図 1 参照 ) スポーツがそのように多様な価値を有しているにもかかわらず 例えば国民のスポーツ実施率において長年女性や働き盛りの層の実施率が低い 2 ことや スポーツが嫌いな層が少なからず存在する 3 など する みる ささえる というスポーツ関係人口の拡大に向けては大きな課題があり それらにはスポーツの多様な価値の理解が不十分であるということも関係しているものと思われる 加えて 我が国のスポーツ界においては 近年 ドーピング パワーハラスメント 暴力行為 スポーツ団体のガバナンスの欠如などの問題が表出している このような問題の一側面には 結果を求める中での行き過ぎた勝利至上主義に象徴されるように スポーツの価値の特定の面だけが強調されるあまり スポーツの多様な価値が見失われているあるいは十分理解されていないということが背景にあると考えられる そのため 国は クリーンでフェアなスポーツの推進によるスポーツの価値の向上を目指し スポーツ インテグリティ 4 を高めるための取組を進めている 1 検討会議における議論の中で スポーツは 遊びなどの身体活動や教育としての体育から 民俗的 伝統的なスポーツや近代スポーツまで多様で幅広い活動が含まれるものである 過去から現在 そして未来にわたり変化をし続けているものである といった意見があり スポーツを幅広い視点で捉えることが重要であると考えられる 2 平成 28 年度スポーツの実施状況等に関する世論調査 ( スポーツ庁 2016 年 ) によると 成人の週 1 回以上のスポーツ実施率は 42.5%(30 代女性 27.7%) である 3 平成 30 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査 ( スポーツ庁 2018 年 ) によると 運動やスポーツをすることは好きですか という質問に対し 嫌い やや嫌い と答えている中学 2 年生女子の割合は 21.3% である 4 平成 29 年度に定められた第 2 期スポーツ基本計画において スポーツにおけるインテグリティ ( 誠実性 健全性 高潔性 ) とは 必ずしも明確に定義されているとはいえないが ドーピング 八百長 違法賭博 暴力 ハラスメント 2

広く国民にスポーツの価値を正しく伝えていく必要があるところ 以前国立競技場内に設置されていたスポーツ博物館は スポーツの多様な価値を伝えうる資料を所蔵していたものの 資料の管理や文化的な価値の調査研究が十分できておらず 次世代へ継承していくべき資料が明確でなかった また スポーツ博物館の所蔵資料だけに頼った単純な陳列的展示が中心であり 他機関との連携もできておらず スポーツ資料に関するネットワークが構築されていなかったことから 全国の資料の保存状況の把握やスポーツの多様な価値についての発信も十分できていなかった 図 1 : スポーツの多様な価値の例 2 意義 目的以上のような背景を踏まえて 再開館後の新たなスポーツ博物館 ( 以下 新しいスポーツ博物館 という ) は 日本で唯一の総合スポーツ博物館 5 として 広く国民にスポーツの多様な価値を正しく伝え続けスポーツの振興に寄与していくために 次のような意義 目的を果たしていきたいと考えている 目的 : スポーツの多様な価値についての普及啓発と次世代への継承 (1) スポーツの多様な価値についての理解を促進する情報発信拠点 (2) スポーツに関わる文化的価値の高い資料の収集 保存 継承 (3) スポーツ関係の資料を有する博物館等の全国的なネットワークの拠点 差別 団体ガバナンスの欠如等の不正が無い状態であり スポーツに携わる者が自らの規範意識に基づいて誠実に行動することにより実現されるものとして国際的に重視されている概念である とされている 5 特定の競技種目や分野 地域 人物等に限定せず 我が国のスポーツ ( 体育を含む ) に関係する資料を幅広く扱う博物館 3

新しいスポーツ博物館は スポーツの多様な価値の普及啓発や我が国のスポーツ関係資料を国民の財産として後世に継承していくという役割を果たす上で必要不可欠なものであり 日本で唯一の総合スポーツ博物館として これまで積み上げてきた有形無形の資産を活用し 資料の収集 保存 研究 展示 教育普及などの博物館活動を通じて スポーツの多様な価値を分かりやすく伝えていく また スポーツについて人々が思索したり 様々な交流ができる場を提供する スポーツ博物館が現在所蔵している貴重な資料群 ( スポーツに多大な御功績のあった故秩父宮殿下にまつわる資料や近代スポーツが日本に多く入ってきた明治期から現代までの日本のスポーツ史に関する様々な資料など ) は 日本のスポーツを語る上で不可欠な財産である JSC は公的機関として これらの財産を後世に継承する役割と責任があり 新しいスポーツ博物館において適切に保存 継承する これまでスポーツ関係の博物館 図書館 団体等の全国的なネットワークは存在せず 資料所有状況などの実態が把握できていないなどの課題もあったことから 今後は 国の機関として新しいスポーツ博物館が 全国的 横断的な情報や資料のネットワークの拠点の役割を果たしていく 以上のような目的を果たすため 国と密接に連携しつつ 十分な体制を整備するとともに 人々にスポーツの多様な価値をわかりやすく伝え 日本のスポーツの振興に貢献していく また 新しい時代の博物館のモデルとして これまで以上に様々な博物館の機能を発揮することにより スポーツを通じて様々な社会課題の解決や持続可能な社会の実現に挑戦する (2) コンセプト 新しいスポーツ博物館のコンセプトは次のとおりとする ( 図 2 参照 ) スポーツの多様な価値を伝えるネットワークの拠点 -スポーツの多様な価値( 人生や社会を変える 力 未来を創る 可能性 ) を発信 - 新しいスポーツ博物館は 独立行政法人である JSC が運営する博物館であり 広く国民に対して スポーツが人々や社会に様々な変化をもたらし 多様な価値を有しているということを わかりやすく伝えていく 拠点 としての役割 4

を担う また それらをよりよく実現するためのナショナルセンターとして新たなネットワークを構築し その中核的役割を担う 拠点 ともなる スポーツの多様な価値は 言い換えれば スポーツを通じて人々の人生や社会をより良いものに変えてきた 力 があり また将来に向かって未来を創っていくことができる 可能性 があるということである 現在のスポーツに関わる様々な問題の根底にあるとも指摘されている 勝利至上主義 行き過ぎた上意下達や集団主義 科学的合理性の軽視といった 日本のスポーツ界の悪しき体質 旧弊 6 を克服するためにも 広く全国にスポーツの多様な価値を普及啓発していくことが重要である 新しいスポーツ博物館は スポーツに関わる人だけでなく スポーツに関心のない人も含めた広く国民に対し スポーツに関する資料の背後にある事象やストーリーをわかりやすく説明したり スポーツを題材にしたマンガや映画等の文化的な側面を示したりすることで スポーツの奥深さや根源的な面白さを考えてもらう場 機会を提供する こうしたスポーツの多様な価値への認識と理解 ( 知る 学ぶ 気づく等 ) を全国に広げていくことにより 国民の意識や行動が変容して様々なかたちでのスポーツへの参画につながり その結果として 例えば第 2 期スポーツ基本計画に掲げられた政策目標の達成に寄与することが期待される さらに スポーツを通じてもたらされた具体的な成果が 例えば健康な人々の増加による国民医療費の削減や各地で開催されるスポーツイベントへの集客による地域活性化 スポーツを通じた国際交流による相互理解への促進などの社会的な課題への貢献にもつながっていく 新しいスポーツ博物館は 博物館機能を通じてスポーツの多様な価値を広く伝えていくことにより スポーツに関わる政策目標の達成と様々な社会課題の解決に貢献していく 新しいスポーツ博物館は このような機能を十分果たすためにも これまでの展示中心の 静的な 博物館ではなく 積極的に情報を発信していく 動的な 博物館を目指していく そのためにも 自ら伝えるのみならず他の博物館 図書館 スポーツ関係団体 地方自治体 大学や学会 民間企業との連携により 効果的に情報を発信できる関係者間のネットワークを新たに構築し その拠点としての役割を果たしていく 6 我が国のスポーツ インテグリティの確保のために (- スポーツ庁長官メッセージ -2018 年 6 月 15 日 ) 5

図 2 : 新しいスポーツの博物館の機能 ( イメージ ) 新しいスポーツ博物館の来館イメージ 小中高校生がキャリア教育の一環として来館し 夢と憧れについて考えたり アスリートの人生や個々のエピソードを通じて夢や憧れ 目標を持つことや それらに向かって行動することについて 学んだり考えたり話し合ったりする 小中高校生が修学旅行で来館し 半日くらいかけて様々なスポーツに触れるプログラム ( 館側で用意 ) を楽しんだり 来館前に自らが設定してきたテーマについて調べたりする 全国大会等で東京に来たスポーツをする子供 若者 大人が来館し 自分が知らないスポーツの価値を 知ったり気づいたりして 自分のスポーツ生活全般やプレー 練習に向かう姿勢や態度について考え 見直したりする 学校教員やスポーツ指導者が来館したり館のウェブサイトを閲覧したりし 自らの教え方や指導方法に ついて見直すきっかけを得る 地方自治体の社会教育 体育 スポーツ振興や地方創生担当者等が来館し スポーツを みる ささえ る を促進するモデル講座等を体験し 地元でも取り組んでみようとする 6

スポーツに全く縁のなかった人々が スポーツに関するアニメや漫画 映画などに関する展示 スポー ツ写真のワークショップ等を通じてスポーツに関心を持つ 外国人旅行客が来館し 日本におけるスポーツの状況やその振興方策等について知り 自国や居住地域 のスポーツとその振興のあり方等について考えるきっかけを得る III 設置場所及び名称 (1) 設置場所新しいスポーツ博物館の設置場所は現在まだ決まっていないが 検討会議 審議のまとめ における提言を踏まえ 人が集まりやすく スポーツとの関わりが深い場所であることが望ましいこと 日本で唯一の総合スポーツ博物館として 近隣に整備される公益財団法人日本スポーツ協会の資料室やオリンピック ムーブメントの発信拠点となる公益財団法人日本オリンピック委員会の 日本オリンピックミュージアム と機能や内容面で適切な役割分担をしつつ 連携が期待できることを勘案し 現在 世界に誇れるスポーツクラスターの形成を目指して整備が進められている東京都新宿区 渋谷区 港区にまたがる 神宮外苑エリア を有力な候補として 早期に具体的な設置場所及び必要な面積を検討する ( 図 3 参照 ) :JSC の管理施設 図 3 : 神宮外苑地区周辺と JSC 管理施設 7

神宮外苑エリア においては 一つの場所に十分なスペースが確保できない場合も想定されることから 資料の収集 保存や 調査研究の機能と 展示をはじめとした利活用の機能を分けて配置する場合も考えられる その場合は 各機能相互の連携を十分に留意して設置場所を検討する (2) 名称スポーツ博物館の再開館にあたっては 国立競技場内に設置されていた以前のスポーツ博物館が我が国のスポーツ振興に御尽力された故秩父宮殿下の御事績を記念して設置された経緯や 約 60 年間の歴史との継続性を考慮し 秩父宮記念 の名称は引き続き維持するとともに 独立行政法人である JSC が国の施設として設置する総合スポーツ博物館であることを国内外にわかりやすく示すため 次のとおりとする なお 名称の変更は スポーツ博物館が再開館するタイミングに合わせて実施する ただし 秩父宮記念ギャラリー は 新国立競技場の竣工に合わせて 2019 年度に整備されることから その時点から新たな名称として使用する予定 主要施設等の名称 ( 再開館以降 ) 施設 名称 英語表記 全体 秩父宮記念国立スポーツ博物館 Prince Chichibu Memorial National Sport Museum 附属施設 秩父宮記念ギャラリー故秩父宮殿下の御遺品室 Prince Chichibu Memorial Sport Gallery ( 新国立競技場に整備予定 ) スポーツライブラリー Sport Library 8

IV 新しいスポーツ博物館の基本的な業務 (1) 既存資料の整理 目録の作成 Ⅱ(2) に掲げるコンセプトを踏まえて各事業を進めていくため 現在所蔵している資料について 資料の利活用の前提となる整理及び目録の作成を 2019 年度末までに行い 以後 目録の公開と並行してその精緻化を進める (2) 事業内容より多くの人々にスポーツの多様な価値を理解してもらうため 後に言及する展示 教育普及 交流などの各事業を 人々の多様な関心やニーズ等に応じて適切に使い分け 提供することが必要である さらに 訪日外国人観光客や海外のスポーツ関係者からのアクセスにも適切に対応する また JSC はスポーツや児童生徒等の健康の保持増進に関する多様な業務を行っており これらの成果についてもスポーツ博物館の事業を通じて積極的に発信し スポーツの振興に寄与する なお 以下に述べる各事業については 再開館に向けて実施していくものだけでなく 再開館後 段階的に充実していくものも含む 1 収集 保存 スポーツ博物館は 蹴鞠や武術 遊戯など日本古来のスポーツや 明治初期から現在に至る競技やオリンピック 国民体育大会などの競技大会に関わる資料 日本のスポーツ史を俯瞰できるまとまった資料を中心に収集 保存してきたが スポーツには身体活動 遊び 儀礼 教育 競技など様々な側面があることを踏まえ 今後は スポーツを多角的な視点から捉え 資料を収集 保存していく必要がある 新しいスポーツ博物館の新たなコンセプトに基づき 2020 年度中に具体的な収集方針を策定する そのため 関係する学会や外部の専門家と連携し 収集 保存と調査研究に関する有識者会議を JSC 内に立ち上げ スポーツの多様な価値の整理 収集方針 既存資料の価値づけ等について 2019 年度から検討を進めていく 将来的には 後に言及するスポーツ関係の博物館 図書館 団体等を中心とした全国規模の横断的なスポーツ関係資料の情報ネットワークを通じ 資料の所在や保存状態の情報をデータベース化することにより 各館が手軽にそれぞれの資料の所蔵状況について情報共有できる環境を整備するとともに 必要に応じて相互の資料の利活用を促進する 9

スポーツ博物館が所蔵してきた資料のうち 新たに策定する収集方針に沿わない資料や複数の他の機関が所有している資料等については スポーツ関係の博物館 図書館 団体等のネットワークを活用するなどにより 当該資料の受入を希望する他の機関への移管 譲渡等を含め 再開館までに資料の精選を行う 資料利用の利便性向上や保存等の観点から ( 予算や体制に留意しつつ ) 将来的にデジタルアーカイブ化を進める場合の資料の対象範囲等について対応を検討する 民間で所有している貴重なスポーツ関係資料を滅失させないため 例えば 重要なスポーツ関係資料の認定 登録や資料の保存方法に関するアドバイスなどについて 将来的に検討する 劣化防止や修復については 今後専門家の助言を得ながら 2020 年度中に外部機関との連携を含め必要な仕組みを検討する 2 調査研究 2019 年度から 調査研究の基盤となる常勤の学芸員等を複数確保 配置した上で 研究者との共同研究 所蔵資料の調査に関する委嘱など外部専門家との協力体制を構築し 資料が持つ歴史的 社会的背景 個々のエピソードを踏まえたストーリー及びスポーツの価値を明らかにするための調査研究を継続的に行っていく 所蔵資料の調査研究に当たっては まず展示等に活用する優先度の高い資料については 2022 年度までに スポーツの多様な価値を伝える という観点からより深い価値づけを行う それ以外の資料についても着実に調査研究していく また調査研究結果は 展示や教育普及に活用するとともに ホームページや機関誌 関係学会や学術論文などを通じ 広く発信していく 所蔵資料の調査にとどまらず スポーツの文化やスポーツの価値を伝えていくためにどのような展示手法や運営が望ましいかについての調査研究も継続的に行っていく 3 展示 公開 国内外の多くの人々に 日本のスポーツの歴史や文化を正しく理解する機会を提供するとともに 資料から見える スポーツの多様な価値 を具現化し スポーツがこれまで社会にどのような貢献をしてきたのか また今後どのように 10

貢献しうるかということを広く伝えるため 新たに策定する収集方針や調査研究の成果を踏まえ 様々な形式での展示を行う また 世代 スポーツへの関心度 障がいの有無などに関わらず すべての人が楽しめる博物館となるよう 他の博物館や海外の博物館の展示手法等も参考としながら 例えば 次のような展示の工夫を検討する 実際にモノに触れたりして 体感 することのできる展示 スポーツに関心のない層にも親しみやすい スポーツを題材にした映画やマンガ アニメ等に関する展示 VR( バーチャルリアリティ ) 等の最新技術を活用した参加体験型展示 障がい者が楽しめることも含め ユニバーサルデザインに配慮した展示 展示の構成は これまでのように実物資料の展示を見て感じてもらう展示と スポーツの特徴である動きのある展示 ( 例えば映像や体験型の展示 ) を組み合わせるなど 効果的な展示方法を検討する また 新しいスポーツ博物館内で行う展示だけでなくスポーツ系博物館以外の博物館や図書館 その他の場所で行う展示を通じて 新しいスポーツ博物館そのものに来館できない方に対しても 資料に触れる機会を提供する ( 新しいスポーツ博物館における展示イメージ ) 常設展示 : スポーツの基本的 普遍的な価値や スポーツの価値の多様性について伝える例 ) する みる ささえる それぞれの魅力 スポーツの多様性 スポーツレガシー スポーツと健康 スポーツと災害 スポーツと生き甲斐 スポーツと地域 スポーツとジェンダー スポーツと相互理解 平和 等 企画展示 : 特定のテーマ ( 特に他分野との関わり ) を取り上げながら より深く詳細にスポーツの価値を伝える ( 一定期間で展示替えを実施 ) 例 ) 映画やマンガの中のスポーツ アートやデザインとスポーツ スポーツと科学技術 ご当地マラソンと地域活性化 等 協賛展示 ( 特別展示 ): 基本的には民間企業等の経費負担により 民間企業の発想やノウハウ 最新のテクノロジーなどを活用した魅力ある展示を通してスポーツの価値を伝える例 ) スポーツ用具の最新テクノロジー アスリートの食事の歴史と変化 11

( 他館との連携などによる新しいスポーツ博物館外での展示 公開 ) 巡回展示 : 地方公共団体や民間の博物館等と連携することにより 新しいスポーツ博物館の資料を活用し 広く全国にスポーツの価値を伝える Web 等コンテンツ :Web 上でのバーチャルミュージアムの展開やメディア等での画像の積極的な公開 新国立競技場に設置する 秩父宮記念ギャラリー ( 故秩父宮殿下の御遺品室 ) については 2019 年度中に整備する 2020 年度は東京 2020 オリンピック パラリンピック競技大会の状況に応じて公開し その後 同大会後の新国立競技場の後利用に合わせて正式な公開とする ( 公開方法 時期については 関係機関と調整の上で今後決定する ) 新しいスポーツ博物館が所蔵する貴重な資料に触れる機会を増やしていくため テーマに沿った資料やパネルをパッケージにして貸し出すための 巡回展示物 を作成し 全国の博物館 図書館等での活用を促す 全国の博物館 図書館や地方自治体 ( 大会開催施設やホストタウンなどを含む ) 等との協働 ( 巡回展や共催展示 ) や民間企業等と協働しての展示も検討し 実施する 4 教育普及 スポーツが心身の健康や精神的な達成感 充足感をもたらすだけでなく 地域の活性化や経済成長 共生社会の実現や国際交流による相互理解促進などにも貢献するなど スポーツの多様な価値 について人々が理解し 深く考える機会を提供するため 教育普及活動を積極的に行う その際 近隣のスポーツ施設等も積極的に活用する 具体的には 例えば 次のような教育普及活動を通じてスポーツの多様な価値について発信していくことを検討する ( 再開館時から ) セミナー シンポジウム ワークショップ等の開催 ( 例 ) スポーツと他分野を融合させた学びの機会の提供 ( スポーツ写真の撮影方法 スポーツと科学実験 スポーツマンガなどをテーマとしたワークショップ開催など ) 12

多数の利用が見込める顧客の層やニーズに応じた特別なパッケージプログラムの提供 ( 修学旅行生向けの学習 体験パッケージ 若手アスリート向けの上手な体の動かし方や健康 安全確保スキルのパッケージなど ) ( 再開館後運営が軌道に乗ってから順次実施 ) 学校等の教育機関やスポーツ団体 チーム等に出向いて行う出前授業や講演などのアウトリーチ活動 学習指導要領の内容に沿った学習ができるような学校向けプログラムの開発 提供 地方自治体や学校等の教育機関が実施する展示や教育事業に対する資料の貸与や教育プログラムの提供 特に 将来を担う子供たちやスポーツ指導者 スポーツ実施者の方々に対する教育普及活動も積極的に行う 予備知識を持たない子供たちに対しては 教材や展示を補足する解説などに工夫を凝らし スポーツに関わる様々なストーリーを楽しみながら学べるようなプログラムを開発する また 広く国民一般に対しホームページ SNS 等を通じて情報提供するなど 展示以外の様々な手法により 教育普及活動を展開する ボランティア ( 運営支援 インタープリター 7) や学生インターンシップ等を積極的に受け入れ 将来的にはそれらの外部人材が主体となって企画するワークショップの実施やホームページ等を通じた情報発信を積極的に展開していく スポーツについて主体的に考え行動するきっかけを与えることができ スポーツと社会をつなぐためのコミュニケーション コーディネーション能力を備える スポーツコミュニケータ ( 仮称 ) を養成し スポーツが社会にとって有益なものであるということを広く訴えかけていくことを検討する 8 5 交流 新しいスポーツ博物館がスポーツの多様な価値を全国各地の人々に伝えていくために スポーツ博物館単体での活動だけではなく 国内外の他の博物館 図書館 スポ 7 博物館の展示について分かりやすく解説し伝える人のこと 8 参考 : 国立科学博物館 サイエンスコミュニケータ http://www.kahaku.go.jp/learning/university/partnership/02.html 13

ーツ関係団体 地方自治体 大学や学会 民間企業との連携や交流が不可欠である そのため 関係者間のネットワークの構築に寄与し その拠点としての役割を果たしていくことを重要なミッションと位置付け スポーツ関係資料を媒介として様々な交流を行っていく ( 図 4 参照 ) 図 4 : 関係者間のネットワークのイメージ ( 資料の保存 活用等に関するネットワーク ) 国及びスポーツ関係の博物館 図書館 団体等と連携し 多様なスポーツの価値を伝えることを目的とした全国規模の横断的なネットワークを構築する ネットワーク構築に当たっては まずはこれまでスポーツ博物館と連携 協力関係のあったスポーツ関係の博物館 図書館 団体等を中心にスタートし 連絡協議会等を設置して骨格となる機能や役割を整理していく 具体的には 各分野で中核となる機関 (JSPO JOC JPC などのスポーツ団体 スポーツ関係資料を多数所有する体育系大学 2019 年 9 月に開館する予定の 日本オリンピックミュージアム などオリンピック系博物館など ) との連携を 2019 年度中にスタートさせ 再開館に向けて徐々にネットワークを拡大 充実させる また 役割分担などネットワークの構築に向けた準備として 学会など外部の専門家と連携し 2019 年度から全国の関係施設におけるスポーツ関係資料の所蔵調査等を実施することにより 資料所有状況をあらかじめ把握する 14

資料の所在や保存状態の情報の共通データベース化 資料分類や整理方法などに関する現場レベルでの情報交換 資料の相互貸借 人材交流などを活性化させ 国全体としてスポーツ関係資料のアーカイブを充実 強化していく ( 地元 地域や地方自治体 学校との交流 ) 新しいスポーツ博物館が設置される場所の近隣施設 地元商店街 自治体 学校等との密接な連携 ( 例 ) 地元商店街との連携した割引制度 地元の学校向け特別企画など 地方自治体や学校等との交流 JSC と地方自治体によるスポーツを通じた協働ネットワークである JAPAN SPORT NETWORK の活用 ( 例 ) スポーツに関心のある地方の博物館 図書館等の職員の受入れによる人材育成への貢献と 地方でスポーツをテーマとした展示を増やすための支援 国内だけではなく 海外の博物館との貴重なスポーツ関係資料の相互貸借 6 スポーツライブラリー スポーツライブラリーにおいては 研究者やメディアなどが博物館資料やスポーツに関する史実等を調査するための研究用の資料として また博物館の来館者が展示をより深く理解するための補完資料としての利用を想定し 利用者の幅広い目的に対応できるようにするため 図書館資料を適切に保存し 利用しやすい環境を整える 利用者のニーズに応じた資料を適切に提供することに重点を置いたサービスの充実を図るため 常勤の司書を配置し 多様な経験を積ませることで スポーツに関する図書館資料についての専門性を高め レファレンスサービスを充実させていく 強い要望が寄せられていることから まずはスポーツ関係団体などの関係者や専門家 報道機関等のニーズに応えることを優先し 体制を整えた上で 2019 年度から段階的にサービスを提供していく 一般利用者向けのサービスについても 所蔵資料を活用しつつ スポーツに関する様々な情報に触れる場として 他の施設 ( 例えば飲食スペースやショ 15

ップ等 ) との共同利用なども検討しながら 徐々にサービス内容を充実していく 従来は行っていなかった 博物館資料に関連する図書資料の紹介や アスリートやスポーツ愛好家に対する読書や本の活用の意義 価値を伝えていくことにより スポーツに関する図書館資料の積極的な活用を促すことを検討する V スポーツ博物館の運営体制等 (1) 運営体制及び形態 JSC 内に新しいスポーツ博物館を所管する独立の部署を設置し 運営に必要な監督職員や専門職員等を適切に配置するとともに JSC 内の他部署が持つネットワークの活用や取組の成果の発信拠点として博物館を活用するなど 他部署との連携を図る 公共性や社会的ニーズを踏まえつつ 資料の収集保存や調査研究 展示 教育普及の企画などの学芸業務は JSC の職員が直接関与する体制とする その上で これまで以上に自由度や効率性を高めた事業を展開するため 展示の制作や運営 接客 広報や情報発信 施設管理などの分野については 民間企業等のノウハウを活用するため業務委託を検討する (2) 必要な人員体制の確保 博物館として求められる機能を十分果たすためには 収集保存 調査研究 教育普及などそれぞれの分野で中心となる専門性を持った常勤の職員が必要である 日本で唯一の総合スポーツ博物館として求められる専門性を確保するため 常勤の学芸員 司書やその他の専門職員等を適切に配置し 体制の充実を図れるよう 国に協力を求めつつ取り組む スポーツ博物館の持つ資料の価値やコンテンツの魅力を引き出し それらを積極的に外部に対して情報発信することにより スポーツ博物館の事業をより充実させていくため 渉外機能を担う職員を配置することを将来的に検討する (3) 利用促進等 スポーツの多様な価値をできるだけ多くの方々に伝えていくことは 新しいスポーツ博物館の役割として重要であることから 国内外の幅広い層の方に来て 16

いただける博物館を目指し 目標を立てて取り組んでいく そのため 多くの利用が期待できる学校等の教育機関や地域の関係団体 民間企業等との連携を強化し 広報についても戦略的に実施する 施設等の様々な形での有効活用や積極的な民間企業とのタイアップ ( 館内外での共催事業等 ) オフィシャルスポンサーシップの導入などによる民間企業等からの寄付金やクラウドファンディング 外部資金の獲得 会員制度の充実など 他の博物館での先進的な取組も参考にしながら 入館料収入以外の収入確保について積極的に検討し 実施していく 来館者の主なターゲットとなりうる層に効果的にアプローチするため それらと深く関わる企業 団体の関係者によるアドバイザリーボードのような会議体を設置し 民間の発想を取り入れた運営を目指す ( 例 : メディア スポーツ文化 旅行 観光 エンターテインメントなどの関係企業 団体 ) JSC の地域事務所 ( 仙台 名古屋 大阪 広島 福岡 ) を活用し 教育委員会及び学校等に対して新しいスポーツ博物館の意義を訴求し 利用を促す VI 再開館に向けた今後の計画 (1) 再開館を前提とした今後の計画 再開館することとした場合 現時点では設置場所や面積など不確定要素が多く 具体的なロードマップを作成することが困難である そのため 再開館に向けては 国と連携を図りつつ まずは基本的 根幹的機能を果たせる施設 体制を確保し 設置場所や面積などの基本条件の見通しが立った段階で 再開館までのロードマップを早期にまとめる 検討会議の 審議のまとめ において 本会議としては このような新しい博物館について 今後の JSC における将来構想の検討と国への提案に当たって これまで以上に様々な機能を充実させていくことを希望しつつ 国も我が国のスポーツ振興におけるスポーツ博物館の重要性を十分認識して必要な支援を行うことを強く期待する との意見も踏まえ まずは基本的 根幹的機能を果たせる施設 体制を整備した上で 段階的に充実拡張していく 具体的には 今中期目標期間中 (2022 年度末まで ) においては既存資料の整理 価値づけや今後の博物館の機能の具体化 基盤形成のための業務を中心に行い 再開館に向けた準備に関する業務や発展的な取組については 次期中期目標期間において改めて事業計画を策定し 進めていくこととする ( 別表参照 ) 17

( 再開館 本格稼働期 ) 全体 設置場所の決定 竣 学術事業普及活 事業別表 : 再開館を前提とした今後の計画 本計画においては第 5 期中期計画期間中 (2023~2027 年 ) の再開館を想定し 段階的に整備を進める 計画の策定運営体制再開館に向けた 事等既存資料整理収集 保存調査研究展 公開教育普及交流スポーツライブラリー 第 4 期中期計画期間中 (2018 2022 年 ) 第 1フェーズ ( 将来構想の検討 資料整理期 ) 将来構想の策定 将来構想の具体的取組のための 員体制の整備 所蔵資料の整理 ( 録整備 所有権確認など ) 収集 保存と調査研究に関する有識者会議の ち上げ 外部専 家との協 体制の構築 第 2フェーズ ( 将来構想の具体化 基盤形成期 ) 将来構想を踏まえた基本計画の策定 再開館に向けた運営 員体制の検討 録の公開 録データの精緻化 第 3フェーズ ( 再開館に向けた準備期 ) 将来構想を踏まえた実施計画の策定 展 公開に向けた具体策検討 員確保 材育成 収集 針策定 資料の精選 ( 他の機関への移管 譲渡等 ) 劣化防 修復の仕組み検討 調査研究成果の活 第 5 期中期計画期間以降 再開館 第 4 フェーズ 資料の所在 保存状況のデータベース化 資料価値体系化 ( 優先するもの ) 資料価値体系化 ( 優先のもの )( 以後継続 ) 調査研究結果の公開 (HP 機関誌 学会等 ) 展 法 運営についての調査研究 常設展 の休 秩 宮記念ギャラリーの展 事 常設展 の準備 効果的な展 法検討 他館等との協働による展 公開 資料の貸出 ボランティア 学 インターンシップ等の受 秩 宮記念ギャラリーの限定公開 ( 調整中 ) 連絡協議会の ち上げ ネットワークの拡 ( 機能や役割の整理 ) 各機関の資料所蔵状況調査の開始 基本設計 実施設計 事 秩 宮記念ギャラリーの全 公開 ( 調整中 ) 現場レベルの情報交換 資料の相互貸出 材交流等 スポーツ関係団体等の関係者や専 家 報道機関等のニーズを優先した段階的なサービス提供 常設展 の開始 様々な 法による展 巡回展 物の作成 セミナー シンポジウム等の実施 アウトリーチ活動 教育普及プログラムの開発 提供 ボランティア ( 運営 援 インタープリター ) の受 スポーツコミュニケータ ( 仮称 ) の養成 ネットワークの構築 本格始動 充実 資料の所在 保存状況のデータベース化 再掲 地元 地 治体や学校等との交流 常勤司書の配置によるレファレンスサービスの充実 般利 者向けに資料を活 し 他の施設との共同利 の検討等サービスの充実 図書資料の紹介や活 意義を伝えるなど積極的に活 18 各項 の内容は 各フェーズ間の前後に重なる部分があると考えられる 広報等については 各フェーズにおける整備の進捗に応じて適切に対応する

(2) 再開館までの期間における所蔵資料の利活用等これまでに述べた再開館に向けた準備活動のほか 以下のような取組も行っていく 再開館までの期間については 国と連携を図りつつ 所蔵資料を適切に管理する場所と経費を確保し 巡回展等の実施を通じて所蔵資料の有効活用を進めていく ラグビーワールドカップ 2019 日本大会 東京 2020 オリンピック パラリンピック競技大会など今後日本で開催される大規模国際競技大会に関して スポーツ博物館が所蔵している資料を活用し 巡回展等の実施を通じて大会に向けた機運醸成に取り組む 全国の博物館 図書館 団体等にスポーツの多様な価値を示す展示の重要性について伝え 他館等が行うスポーツ資料の展示機会を増やしていく JSC の各事業において開催するセミナーや講習会等 様々な機会を活用してスポーツ博物館が所蔵している資料の展示を行い スポーツ博物館の認知度を高める 19