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電 気 通 信 大 学 紀 要 25 巻 1 号 pp.61-71(2013) 研 究 資 料 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) アポクリファ1 三 浦 清 美 The Medieval Russian Library(IV) Apocrypha 1 Kiyoharu MIURA Abstract The author in this bulletin provides the translations of two medieval Russian apocryphas ; The Resurrection of Lazaro and The Trees of Crosses. Apocrypha is in biblical literature works outside an accepted canon of scripture. It refers to a body of esoteric writings that were at first prized, later tolerated, and finally excluded. Apocrypha arrived in medieval Russia through the Slavonic translation of Byzantine literature. The Resurrection of Lazaro is supposed to have been written between the end of 12 th century and the beginning of 13 th century exactly in Russia. In this work such well-known characters and prophets of the Old Testament as Adam, Moses, David and so on, having suffered in Hell, ask Lazaro, who would be resurrected, to entreat Jesus Christ to pick them out of Hell. Jesus Christ granted their entreaty and went down to Hell to save them. The Trees of Crosses is rather complicated because various elements of plural stories are gathered together like a patch work and as a result lack consistency. When and where this work was composed is not exactly comprehensible. This work appeared in the 14 th century in Bulgarian and Serbian manuscript tradition and only at the end of the 15 th century in Russian. At the base of the work there is the plot that the tree, which caused Adam to have been exiled from Eden, became the trees of the Crosses, by one of which Jesus Christ was crucified. This apocrypha seems to have shown that the original sin of the mankind had been saved by the sacrifice of Jesus Christ. 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) は 中 世 ロシアにお いて 伝 承 された 聖 書 外 典 (アポクリファ)のなかから ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 十 字 架 の 木 についての 講 話 の 二 つの 作 品 を 取 り 上 げる まずはアポクリファの 一 般 的 な 定 義 を 述 べておくこと にしよう アポクリファapocrypha はもともと 隠 され たもの を 意 味 するギリシア 語 で 秘 儀 的 な 教 えを 記 し ているゆえに 教 会 の 外 部 にたいして 隠 されるべき 書 物 と いう 含 意 があったが やがて 異 端 的 内 容 のゆえに 排 除 され 隠 されるべき 書 物 という 意 味 をもつにいたった 日 本 語 では 聖 書 外 典 と 訳 されるが これは 旧 約 外 典 と 新 約 外 典 に 分 けることができ さらにこれと 似 たものとして 旧 約 偽 典 pseudepigrapha がある 古 代 教 会 以 来 アポクリファ という 語 は 異 端 的 な 書 物 としての 旧 約 偽 典 と 新 約 外 典 を 指 すことが 多 く 旧 約 外 典 は 教 会 の 書 物 libri ecclesiaticiとして 正 典 に 準 じる 書 物 と 位 置 づけられてきた M.ルターは 旧 約 外 典 を 聖 霊 によるものではないが 信 者 が 学 ぶ に 値 する 書 物 と 位 置 づけて そのドイツ 語 訳 聖 書 に 収 録 した また カトリックはトリエント 公 会 議 において 旧 約 外 典 を 正 典 ( 第 2 正 典 )とみなす 立 場 を 確 認 している 旧 約 外 典 とされるのは ほぼ 70 人 訳 聖 書 にあっ てヘブライ 語 旧 約 聖 書 に 含 まれなかった 書 物 で 具 体 的 に 名 前 を 挙 げると 第 1 第 2マカベア 書 第 1エ ズラ 書 ユディト 書 ダニエル 書 への 付 加 エス テル 記 への 付 加 トビト 書 ソロモンの 知 恵 ベ Received on September 13, 2012. 電 気 通 信 大 学 共 通 教 育 部

62 三 浦 清 美 (2013 年 2 月 ) ン シラの 知 恵 バルク 書 エレミヤの 手 紙 マ ナセの 祈 り がある これにたいして 旧 約 偽 典 は 正 典 にも 外 典 にも 属 さない ヘレニズム 時 代 のユダヤ 教 文 書 のことで 旧 約 外 典 がすべてギリシア 語 で 伝 えられてきたのにたい して 旧 約 偽 典 はギリシア 語 のほか エチオピア 語 シリア 語 古 代 教 会 スラヴ 語 ラテン 語 などで 伝 えられ ており 特 定 の 地 域 や 集 団 においてのみ 受 け 入 れられて いたことがうかがわれる 偽 典 すなわち «pseudepigrapha»の 名 称 は 偽 名 の 書 から 来 ている これは 古 代 イスラエルの 著 名 人 の 名 を 著 者 名 に 用 いた 後 代 の 偽 書 というほどの 意 味 合 いである 偽 書 であるかぎりは 当 然 内 容 の 面 からも 誤 っ た 教 えを 含 むとみなされた 旧 約 聖 書 偽 典 の 主 なも のをいくつか 挙 げると アダムとエバの 生 涯 イザ ヤの 殉 教 アブラハムの 遺 訓 ヨブの 遺 訓 ソロ モンの 遺 訓 スラヴ 語 のエノク 書 などである 新 約 外 典 は 最 終 的 に 正 典 に 入 れられなかった 古 代 教 会 の 文 書 で 内 容 と 形 式 の 面 で 正 典 に 類 似 してい る 新 約 外 典 は 正 典 の 記 事 を 補 足 拡 充 し 発 展 さ せるもので グノーシス 主 義 的 なものを 含 む 場 合 もある 主 な 作 品 をいくつか 挙 げると ペテロ 福 音 書 トマ ス 福 音 書 ヤコブ 原 福 音 書 ペテロ 行 伝 パウロ 行 伝 セネカとパウロとの 往 復 書 簡 イザヤの 昇 天 ペテロ 黙 示 録 などがある 1 以 上 のべたように 旧 約 偽 典 と 新 約 外 典 は 共 通 して 空 想 的 幻 想 的 な 傾 向 をもっていたが この 系 譜 に 属 する 一 連 の 文 献 が キリスト 教 の 導 入 とともにロシ アに 流 入 してきたのである そのさい 旧 約 偽 典 新 約 外 典 といった 区 分 は 存 在 しなかったようである そ もそも ロシアの 場 合 正 典 の 受 容 もおもに 典 礼 用 抜 粋 のかたちでおこなわれ 旧 約 偽 典 新 約 外 典 も 正 典 とパラレルなかたちで 受 容 された 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 第 3 巻 に 序 文 を 寄 せている Д.С.リハチョーフによれば ロシアのアポクリファは 聖 書 の 補 完 をなすものであった リハチョーフは 次 のよう に 書 いている 聖 書 の 読 者 と 聖 書 後 の 歴 史 的 作 品 の 読 者 が 自 らの 知 識 を 聖 書 以 外 の 何 らかの 作 品 によって 補 いたくなるの も 当 然 のことであった ことに 聖 書 によってすでに 知 られていた 事 柄 の 意 味 を 何 らかのかたちで 開 示 してくれ る 知 識 を 渇 望 した この 役 割 を 多 くの 点 で 果 たしたのがアポクリファ 作 品 であった この 場 合 アポクリファとは 公 的 教 会 の 立 場 から 正 典 ではないと 認 められた 作 品 をさす アポクリ ファ 作 品 は 中 世 ロシアの 翻 訳 文 学 のなかで 少 なからぬ 分 量 を 占 めていた その 多 くがユダヤ キリスト 教 的 初 期 キリスト 教 的 環 境 のなかで さまざまなキリスト 教 教 団 の 教 義 と 結 びついて 成 立 したものであった アポク リファ 作 品 は スラヴ 語 に 翻 訳 されたビザンツ 文 学 をと おして 中 世 ロシアの 文 筆 家 のもとに 届 いた 注 釈 パレイ には 聖 書 で 述 べられる 歴 史 のアポク リファ 的 細 部 が 多 く 含 まれていた 中 世 ロシアの 読 者 が アポクリファ 的 主 題 を 知 るもう 一 つの 経 路 は 聖 地 巡 礼 の 見 聞 記 で 修 道 院 長 ダニールは 自 らの 有 名 な 巡 礼 記 のなかで 聖 書 の 諸 事 件 にたいするアポクリファ 的 伝 説 をいくつも 収 録 している 2 ロシアのアポクリファ 文 学 は 古 代 教 会 の 旧 約 偽 典 新 約 外 典 と 同 じようにその 幻 想 性 を 特 徴 としている アポクリファ 文 学 の 幻 想 性 は 中 世 ロシア 人 の 魂 をつよく 揺 さぶった 中 世 ロシア 人 たちは 元 来 それらがもってい た 幻 想 性 に 引 きこまれて たくましく 想 像 力 の 翼 をはば たかせた 結 果 として 多 くの 作 品 が 筆 写 され ここで 取 り 上 げる ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 のように 自 らもアポクリファ 作 品 を 生 み 出 した その 所 産 は 現 代 の 研 究 者 たちによって 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 第 3 巻 3 中 世 ロシアのアポクリファ 4 においてまとめられてい る 電 気 通 信 大 学 紀 要 の 企 画 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 においても この 選 文 集 にもとづいて 何 回 かにわたり 中 世 ロシアのアポクリファを 紹 介 してゆきたいと 考 えている ロシアのアポクリファの 特 徴 は その 宇 宙 的 ともい える 想 像 力 の 巨 大 さにある ここで 取 り 上 げた ラザ ロの 復 活 に 寄 せる 講 話 十 字 架 の 木 についての 講 話 も 申 し 分 なく 想 像 力 のスケールの 大 きさを 示 して いる このことは ロシアにおけるキリスト 教 受 容 の あり 方 にその 原 因 を 求 めることができると 思 うが 別 稿 で 述 べた 5 ので 繰 り 返 さない 中 世 ロシアの 想 像 力 の 神 髄 を 本 稿 によって 味 わっていただければ 幸 甚 で ある 目 次 (1)ラザロ 復 活 に 寄 せる 講 話 62 (2) 十 字 架 の 木 についての 講 話 65 6 (1)ラザロ 復 活 に 寄 せる 講 話 解 説 ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 は 主 の 復 活 と 地 獄 への 降 臨 と 密 接 に 結 びついた 中 世 ロシアのアポクリファ 作 品 で 12 世 紀 の 終 わりから13 世 紀 のはじめにかけて 書 かれ たと 推 定 される もっとも 初 期 のテクストは15 世 紀 はじ めの 写 本 によるもので 中 世 ロシアの 文 筆 家 たちによっ て 祈 祷 や 奉 神 礼 のテクストの 文 集 に 収 められた こうし た 文 集 として おもに 金 口 ヨハンネスの 説 教 が 集 められ た 斎 戒 の 金 の 口 Постный златоуст キリスト 教 徒 のあるべき 姿 を 説 いた イズマラグド Измарагд 暦 形

中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) アポクリファ1 63 式 で 説 教 や 聖 者 伝 を 集 めた 祝 典 選 文 集 Торжественник などが 挙 げられる 文 集 のなかでこの 作 品 は 大 斎 戒 Великий пост 第 6 週 の 土 曜 日 すなわち ラザロの 土 曜 日 の 項 に ビザンツや 南 スラヴの 文 筆 家 たとえ ば 金 口 ヨハンネス クレタのアンドレイ オフリドの クレメントらのラザロの 復 活 にかんする 著 作 とともに 配 置 された この 作 品 は 私 たちの 時 代 にいたるまで 縮 小 版 と 拡 大 版 の 二 つの 編 纂 本 によって 知 られているが いずれも 先 行 する 原 テクストに 起 源 をもち 伝 承 史 のかなり 早 い 段 階 で 原 テクストから 二 つのテクストに 分 離 したと 考 えら れている 二 つの 編 纂 本 は 大 きさや 名 称 ( ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 地 獄 のラザロへのアダムの 講 話 ) だけではなく その 内 容 も 異 なっている 両 者 に 共 通 の 講 話 の 根 幹 部 分 として ラザロが 間 もなく 復 活 する 7 ことを 知 った 地 獄 のアダムが ラザロ にたいして 啼 泣 し 懇 願 する 場 面 がある アダムはキリ ストに 一 刻 も 早 く 地 獄 に 降 臨 し 旧 約 聖 書 の 預 言 者 や 始 祖 たちをも 含 む 囚 われ 人 らを 解 放 してくれるように 頼 む のである アダムは 囚 われ 人 らをあまりにも 厳 しく 罰 していることについて 神 を 責 め 神 の 裁 きの 正 当 性 にた いして 疑 念 を 表 明 している この 部 分 に 中 世 ロシアの 文 筆 家 たちはアポクリファ 性 を 認 めていた アダムの 啼 泣 と 懇 願 は 縮 小 版 の 主 たる 内 容 となってい る 拡 大 版 では 福 音 書 の 奇 跡 についての 物 語 といかに キリストがアダムの 願 いをかなえたかの 物 語 が 増 補 され ている キリストが 磔 刑 に 処 され 死 んだのちに 地 獄 を 訪 れるという 事 件 の 詳 細 は 正 典 の 聖 書 には 存 在 しない このゆえにこの 作 品 の 後 半 は 中 世 スラヴ 語 の 翻 訳 で 知 られていたビザンツのアポクリファ アレクサンドリア のエフセビオスの 洗 礼 者 ヨハネの 地 獄 への 降 臨 につい ての 講 話 キプロスのエピファニオスの 偉 大 なる 土 曜 日 のイエス キリストの 埋 葬 の 講 話 に 取 材 して 書 か れたと 考 えられている これらのテクストは その 祝 祭 日 の 説 教 においてトゥーロフのキリルが 史 料 として 用 い ていた こうした 事 情 もあって キリルの 説 教 と ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 のあいだには イエスの 地 獄 めぐりの 記 述 において 多 くの 共 通 点 が 認 められる この 作 品 の 作 者 はギリシア 語 の 資 料 や 詩 篇 のテクストを 自 分 流 に 改 作 している そのほかにも この 作 者 はラザロの 復 活 にか んする 金 口 ヨハンネスの 講 話 や 10 世 紀 ブルガリアの 著 作 家 オフリドのクリメントのラザロへの 賛 辞 のテク ストを 利 用 している そのほか 研 究 者 たちは ラザロ の 復 活 に 寄 せる 講 話 に 囚 人 ダニールの 祈 り や イー ゴリ 遠 征 物 語 との 共 通 点 も 見 出 している この 一 連 の 作 品 群 の 共 通 点 は ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 が 古 い 時 代 にさかのぼるテクストであることを 示 唆 している イーゴリ 遠 征 物 語 の 冒 頭 部 分 には 伝 説 の 詩 人 ボヤーンの 指 を 形 容 した 神 通 力 のあるその 指 вещия пьрсты という 語 句 が 出 てくるが この 語 句 は И.Я.フ ランコ И.Я.ポリフィリエフ В.Н.ペーレッツ В.П.ア ドリアノヴァ ペーレッツ И.П. エリョーミン М.В. ロ ジェストヴェンスカヤら 研 究 者 たちによって ラザロ の 復 活 に 寄 せる 講 話 のダビデ 王 の 竪 琴 を 弾 く 指 を 示 す 多 くの 眼 光 をたたえたその 巧 みな 指 многоочитая перъсты と 比 較 されている しかしながら この 二 つの 作 品 の 相 似 性 はさらに 深 い 意 味 を 湛 えている それは ボヤーンとダビデ 王 という 二 人 の 歌 い 手 の 形 象 のみならず 復 活 の 概 念 そのもの 地 獄 と 死 のテーマ テクストの 主 題 的 構 造 にもおよんで いる И.П.エリョーミンは ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 がロシアで 書 かれたことを 疑 わなかった 彼 のいう ところによれば この 作 品 は アポクリファのモチーフ が 編 みあわされてできており その 組 み 合 わせ 方 は 独 創 的 で 一 人 の 作 者 の 手 になるものと 考 えざるを 得 ない 今 日 までこの 作 品 は30 以 上 の 写 本 によって 知 られて いる 写 本 におけるその 名 称 は 異 なっている この 翻 訳 は 拡 大 版 によるものであるが 大 部 分 の 拡 大 版 テクスト はその 題 名 に ラザロの 復 活 について または ラザロ の 復 活 によせて という 文 言 を 含 んでいる このゆえに 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 БЛДР 第 3 巻 (256 261 頁 ) でこの 作 品 を 校 訂 したМ.В.ロジェストヴェンスカヤは 写 本 の 継 承 史 のなかでもっとも 伝 統 的 な 作 品 名 称 として ラザロの 復 活 に 寄 せる 講 話 という 名 称 を 選 んだと 述 べている 前 述 のとおり 本 稿 の 翻 訳 は 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 БЛДР 第 3 巻 に 収 められた М.В.ロジェストヴェ ンスカヤ 校 訂 のテクスト 8 にもとづくものである この テクストは ロシア 科 学 アカデミー ロシア 文 学 研 究 所 ИРЛИマールィシェフ 記 念 古 文 書 保 管 室 のピネガ 写 本 集 成 280 番 Пинежское, 280 (1533 年 )に 拠 っている この 文 集 ( 斎 戒 の 金 の 口 Постный златоуст )には 作 品 のテクストが2つ 収 められている いずれも 拡 大 版 に 属 するものである これらを 仮 にP1 P2としよう P1が このグループの 大 部 分 の 写 本 において 見 いだ される 拡 大 版 の 完 璧 に 伝 統 的 なテクストである 一 方 P2は 一 定 の 芸 術 的 独 自 性 によってきわだっている 編 者 М.В.ロジェストヴェンスカヤによれば P2は ほか の 写 本 テクストと 比 較 すると 短 く 刈 りこまれており そのゆえにテクストの 末 尾 はP1によって 再 現 されなく てはならない しかしながら 大 切 なことは 原 テク ストにあったと 思 われる 対 話 的 構 造 を 厳 格 に 守 ること によって P2がギリシア 語 のアポクリファ テクスト に 手 を 加 え もろもろのエピソードを 独 自 のやりかた で フォークロア 化 していることである P2テクス

64 三 浦 清 美 (2013 年 2 月 ) トはほかのテクストよりも 芸 術 的 な 側 面 において 現 代 の 読 者 に 訴 えかけるものが 大 きいと 編 者 М.В.ロジェ ストヴェンスカヤは 考 えた このゆえに 彼 女 はБЛДРの 校 訂 テクストにP2 を 使 ったのだという 表 題 小 見 出 しは 原 典 に 拠 ものである 翻 訳 地 獄 からの 脱 出 天 よ 聞 け 地 よ 耳 を 傾 けよ 主 が 語 られる わたし は 息 子 らを 生 み 育 てあげた が おまえたちはわたし に 背 いた わたしの 者 どもは わたしがわたしであると がわからない 牡 牛 はわたしがそこに 横 たわっているこ とがわかり ろばは 自 らの 主 人 の 飼 い 葉 桶 を 知 っている けれども わたしはほかの 者 に 慈 しみをあたえず 自 ら の 言 葉 を 地 に 向 かって 放 ち 人 々を 悪 魔 の 誘 惑 から 救 い だす 9 そのとき 偉 大 な 王 で 預 言 者 であるダビデが 底 なしの 地 獄 に 座 し 竪 琴 の 黄 金 の 生 きたる 弦 に 多 くの 眼 光 を たたえたその 巧 みな 指 を 置 いてこう 言 った 兄 弟 たち よ わたしたちは 心 楽 しく 静 かな 歌 を 自 らのために 歌 う ことにしよう わたしたちは 栄 えの 王 キリストの 到 来 とともに 心 和 もう ダビデはすでに 幸 福 のときが 満 ち るのを 聞 いた ペルシアの 占 星 術 師 たち 10 の 馬 のひづめ の 音 を 聞 いた 彼 らは 地 上 に 生 まれた 天 の 王 に 贈 り 物 を もってくるのだ その 母 清 らかな 処 女 が 愛 をいだいて その 赤 子 にかがみこみ むつきでくるみ こう 言 う お お 高 き 怖 ろしき 天 の 王 よ なぜにあなたは 地 上 の 貧 しきわたしたちのもとに 降 りてこられようと 決 意 なされ たのか 何 ゆえこの 洞 窟 を 欲 されたのか 何 ゆえ 家 畜 の 飼 い 葉 桶 に 横 たわれることを 望 まれたのか 主 よ あな たはご 自 身 が 空 を 雲 でおおうことができる 主 よ あな たには 天 が 王 座 であり 地 は 足 台 である 11 そなたを 殺 さんがために 知 恵 なきヘロデは 自 らの 歯 をぎしぎし と 鳴 らす しかし 来 たれ 預 言 者 たちよ 義 人 たちよ イザヤよ エレミヤよ 地 獄 をののしり こう 答 えるが よい おお 力 なき 悪 魔 め すると 地 獄 が 悪 魔 に 言 った 悪 魔 よ 聞 くがよい そなた ダビデよ 言 うがよい そして ダビデは 言 った ダビデにはものを 言 うことがかなわぬ おお ダビデ は 厳 重 に 幽 閉 された 見 よ 鉄 の 門 がある 銅 の 閂 があ る 石 の 柱 がある 12 そのなかにダビデは 幽 閉 された 70 人 の 預 言 者 たちが 言 っている ダビデよ わたし たちに 告 げよ わたしたちの 誰 が 生 きたる 世 界 の 主 のも とにこの 知 らせをもたらせばよいのか そのとき ダ ビデははっきりとした 声 で 言 った イザヤ エレミヤ ハバクク アーロン エゼキエル ソロモン アダム アブラハム イサク ヤコブ サムエル ダニール そ して すべての70 人 の 預 言 者 たちよ この 地 獄 にひびく 私 の 声 を 聞 くがよい 見 よ 私 たちのもとから 生 きたる 世 界 の 主 のもとに 主 の 友 人 ラザロが 行 こうとしている そのとき 最 初 に 創 造 された 人 間 であるアダムが 眠 り から 覚 めたように 自 らの 顔 を 手 で 打 った アダムは 言 った 主 の 友 人 ラザロよ 私 の 消 息 について 生 き たる 世 界 の 主 に 知 らせ 言 ってくれ 主 よ このために 主 は 私 を 造 られたのですか と 主 よ このために 私 は 人 間 を 生 み 地 に 満 たしたのですか と 主 よ 私 は 自 分 の 身 がかわいそうです 私 がかつてあなたの 御 前 で 罪 を 犯 したことは 残 念 に 思 っておりません 地 獄 があなた の 被 造 物 に 罵 言 を 投 げかけるのをくやしいと 思 うだけで す 主 よ もしも 私 アダムがあなたに 罪 を 犯 したとして も あなたのお 気 に 入 りの 者 たち 私 の 子 孫 始 祖 アブ ラハム 息 子 イサク 孫 ヤコフ これらの 者 たちは 主 よ あなたに 何 をしたというのでしょう 主 よ この 者 たちのために 私 たちを 地 獄 から 連 れだしてください 主 よ もしもこの 者 たちが 御 身 に 対 して 何 か 罪 を 犯 し たならば 主 よ アンブリイの 息 子 預 言 者 モーセがお ります この 者 は 紅 海 をわたってイスラエルの 民 を 導 き シナイ 山 で 柴 のなかにおられるあなたと 一 対 一 で 対 面 し ましたが 私 たちとともに 底 はてしなき 地 獄 におります 主 よ この 者 に 免 じて 私 たちを 地 獄 からお 解 き 放 ちくだ さい 主 よ もしも 預 言 者 モーセが 御 身 に 対 して 罪 を 犯 した というのなら ヌンの 子 ヨシュア モーセの 妹 の 子 がお ります ヨシュアは7 人 の 王 が 治 めるエリコの 町 に 攻 め 寄 せました 13 町 は 石 造 りで 市 壁 は 鉄 でできており 銀 の 薄 板 がかけられ 金 箔 を 張 られていました 王 たち は 市 壁 に 手 をかけて 言 いました これは 私 たちの 町 で はないか この 町 を 作 ったのは 私 たちの 手 ではないか 彼 らは 神 の 名 を 呼 ばなかったのです ヨシュアは 高 き 方 に 祈 りをささげました そして 主 は 大 天 使 ミハイルに ラッパを 吹 き 鳴 らすように 命 じました 鉄 の 市 壁 は 地 面 の 基 礎 にいたるまで 崩 れ 落 ちました ヨシュアは 町 に 怒 涛 のごとく 雪 崩 れこみ 7 千 3 百 人 の 兵 士 を 殺 しました 主 よ この 者 が 私 たちとともに 底 はてしなき 地 獄 におり ます この 者 のために 主 よ 私 たちを 地 獄 から 連 れだ してください もしも 主 よ このヨシュアが 御 身 に 対 して 罪 を 犯 した としても ヨシュアの 子 預 言 者 ギデオンがおります 人 々は 羊 毛 で 神 を 試 しました ギデオンは 麦 打 ち 場 に 羊 毛 を 置 いたのです 御 身 に 謎 をおかけします 彼 は 言 いました もしも 羊 毛 が 乾 いていて 地 面 に 全 部 露 が 降 りていたら この 地 上 に 神 はおられます そのとお りのことが 起 こったのである そして ギデオンは 麦 打 ち 場 に 二 回 目 の 羊 毛 をおきました 御 身 に 謎 をおかけ します もしも 羊 毛 に 露 が 降 り 地 面 が 全 部 が 乾 いてい たら この 地 上 の 私 たちのもとに 神 はおられます そ

中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) アポクリファ1 65 して そのとおりのことが 起 こったのです 羊 毛 をしぼ ると 12プード 14 の 水 が 湧 き 出 したのです 15 主 よ この 者 が 私 たちとともに 底 はてしなき 地 獄 におります この 者 のために 主 よ 私 たちを 地 獄 から 連 れだしてください もしも 主 よ このギデオンが 御 身 に 対 して 罪 を 犯 した のならば 主 よ 偉 大 なる 王 ダビデの 息 子 ソロモン 王 がいます この 者 は 御 身 の 誉 れのため エルサレムの 町 に 聖 なるもののなかでもっとも 聖 なる 水 晶 でできた 神 殿 を 建 立 し ケルビムとセラフィムに 似 せて 二 羽 の 黄 金 の 鷹 を 鍛 造 しました 16 この 者 は 謎 をかけて 言 ったの です もしも 神 が 私 たちのもと この 地 上 におられる ならば これらの 鷲 に 聖 霊 が 入 りますように すると 鷲 は 神 殿 のなかに 飛 びまわり 空 高 く 舞 い 上 がりました 主 よ この 者 もまた 私 たちとともに 底 はてしなき 地 獄 に おります この 者 のために 私 たちを 地 獄 から 連 れだして ください と このとき ある 土 曜 日 に 主 は 預 言 者 の 繰 言 を 聞 かれた 70 人 の 預 言 者 たちが 主 よ 私 たちを 底 はてしなき 地 獄 から 連 れだしてください と 泣 き 叫 んでいた イエス はラザロの 姉 妹 マルタとマリアのいるベタニアに 入 った マルタとマリアはイエスが 来 られたと 聞 きつけると 一 目 散 に 走 ってゆき イエスの 足 もとに 身 を 投 げ 出 すと 言 った もしもあなた 様 がここにいらっしゃったなら 私 たちの 兄 弟 は 死 ななかったでしょう すると キリ ストは 言 った おまえたちの 兄 弟 ラザロはよみがえっ た すると ラザロはよみがえった ラザロは 言 った 主 よ 最 初 に 創 られた 人 間 アダムはあなたに 泣 き 叫 んで います 主 よ 地 獄 から 連 れだしてください と 主 よ 族 長 アブラハムはイサクとヤコブとともにあなたに 泣 き 叫 んでいます 主 よ 地 獄 から 連 れだしてください と 主 よ ダビデ 王 は 息 子 ソロモンのことであなたに 泣 き 叫 んでいます すると 主 はラザロに 言 った もしも 私 の 僕 愛 す るダビデのおかげをこうむらないならば 私 はその 度 を 越 した 知 恵 と 無 法 17 ゆえにソロモン 王 を 滅 ぼしたことで あろう このとき キリストは 魂 となって 地 獄 を 訪 れた キリ ストとともに サムサイル マイアミル スラヴィイル ミハイル ガヴリールら 天 使 たちが 主 の 御 前 に 駆 け 寄 っ て 言 った 見 よ 栄 光 に 輝 く 王 キリストが 来 られ る 18 暗 闇 にある 者 よ 光 を 浴 びよ とおっしゃいな がら すると 地 獄 の 枷 の 内 側 から 地 獄 が 言 った 栄 光 に 輝 く 王 とは 誰 か 天 使 たちは 言 った 主 は 戦 いにお いて 力 強 く 恐 ろしい それが 栄 光 に 輝 く 主 地 獄 は 言 っ た かくのごとき 力 強 く 恐 ろしい 者 が どうして7 つの 天 を 離 れ 地 下 の 貧 しき 私 たちのもとに 来 たのか 天 使 たちは 言 った 敵 であるサタンを 追 い 払 い 縛 り あげておまえに 引 きわたし 自 らのお 気 に 入 りの 者 たち を 地 獄 から 引 き 上 げるためだ 地 獄 はあたりを 見 回 し サタンに 言 った おお 呪 われたベルゼブル 19 善 を 阻 み 悪 を 栄 えさせる 者 よ わたしはおまえに 言 ったで はないか もしも 主 が 強 いならば 主 と 別 の 場 所 で 争 う がよいと そなたが 私 に イエスを 縛 りあげ 閉 じ 込 め る 場 所 を 私 のためにさだめよ と 言 ったとき わたしは そなたに 言 った 行 って 自 らの 子 どもたちと ユダ ヤ 人 と ユダとともに 離 れた 場 所 でイエスと 戦 うがよ い もしもイエスがこの 場 所 に 来 るならば イエスはそ なたを 縛 りあげ 私 に 引 きわたし 自 らのお 気 に 入 りの 者 たちを 連 れだすであろう と サタンは 地 獄 に 言 った 根 性 の 悪 いやつめ 彼 奴 (きゃ つ)はそなたに 悪 を 働 くばかりだった ラザロを 連 れだ したのだ それなのに そなたは 彼 奴 を 恐 れている 彼 奴 は 私 にも 少 なからぬ 悪 をなした だから 私 はここで 絶 え 間 なく 彼 奴 と 戦 っていたのだ 地 獄 は 言 った 私 はたっぷりラザロの 身 体 を 腐 らせてやった 血 管 も 節 々 も 崩 れさった そこで イエスはラザロに 声 に 出 して 言 った ラザロ 出 て 来 なさい ラザロは 立 ち 上 がったが 狩 りに 出 か けるライオンのように 身 体 のどこも 損 なわれてはおら ず 宙 を 舞 っていた イエスの 声 はいまや 私 の 耳 から 出 た そして 私 のうちにあるあらゆるものは イエス の 声 によって 動 いている そのとき 貴 様 20 は 私 に 言 っ た あなたの 恐 ろしい 栄 えある 名 によって ラザロの 魂 を 手 放 すことはおそろしい と 21 そのとき 偉 大 なる 王 ダビデは 彼 がまだ 生 きていた ときのように 言 った 銅 の 門 が 壊 れるように 鉄 の 閂 が 折 れるように そして このとき 主 は 銅 の 門 を 叩 き 壊 し 鉄 の 閂 を 折 った 主 はアダムに 言 われた 見 よ この 右 手 が 太 古 の 昔 にそなたを 造 り 泥 のなかから そなたを 救 い 出 したのだ そして このとき 主 は 復 活 し 使 徒 たちに 言 った 行 って 地 のあらゆる 場 所 で 教 えを 説 き 広 めよ 父 と 子 と 聖 霊 の 名 のもとに 洗 礼 をほど こし 自 らを 守 るように 教 え 導 くがよい 22 そして ご 自 身 は 天 に 昇 り 父 の 右 手 に 座 した すべての 地 上 にそ の 誉 れがあまねくいきわたった いまもつね 変 わること なく 誉 れが 主 にふさわしくありますように 23 (2) 十 字 架 の 木 についての 講 話 解 説 ゴルゴダの 丘 で 十 字 架 となった3 本 の 木 の 話 は スラ ヴ 文 学 において 神 学 者 ナジアンゾスのグレゴリオスの 手 になるものであるとされている この 有 名 な 著 作 家 詩 人 雄 弁 家 は アレクサンドリアとアテネの 哲 学 学 派 に おいて 教 育 をほどこされた 380 年 から381 年 にかけて

66 三 浦 清 美 (2013 年 2 月 ) 彼 はコンスタンティノープルの 総 主 教 であったし 381 翻 訳 をグレゴリオスの 名 前 で 出 版 することを 提 案 してい 年 には 第 2 次 コンスタンティノープル 全 地 公 会 の 議 長 を る(Клибанов А. И. К проблемеантичногонаследия... 務 めたとはいえ 教 会 における 公 的 な 活 動 は 短 期 的 なも С.176-177) したがって 読 者 を 旧 約 聖 書 新 約 聖 書 の のにすぎなかった しかしながら 彼 のアリウス 派 異 端 テクストから 離 れてはるか 遠 くへ 誘 うアポクリファ 伝 説 との 戦 いと 説 教 墓 碑 碑 文 書 簡 神 学 的 自 伝 的 テー を 神 学 者 グレゴリオスの 名 のもとに 隠 そうとしたこと マの 韻 文 などの 文 学 的 遺 産 は キリスト 教 文 化 に 大 きな は 驚 くべきことでもなんでもないのである 影 響 をあたえた 大 ワシーリイの 盟 友 であり 金 口 ヨハ 十 字 架 の 木 にかんするアポクリファは 寄 木 細 工 のよ ンネスの 同 時 代 人 であった 神 学 者 グレゴリオスは 彼 ら うな 作 品 とみなすことが 出 来 る 一 読 して 気 づくが こ とともに 全 地 の 教 師 教 会 の 父 と 呼 ばれている の 説 話 は 物 語 としての 一 貫 性 を 欠 いている しかしなが М.Н.スペランスキイは 神 学 者 グレゴリオスを 半 ば 古 典 ら ここに 集 められた 諸 エピソードに いわくいいがた 的 な 著 作 家 と 名 づけた 彼 はキリスト 教 文 学 初 期 の 支 柱 の い 幻 想 性 が 漂 っていることはたしかであると 思 われる 一 つであったばかりではなく 古 典 古 代 の 芸 術 的 な 思 想 この 幻 想 性 は 中 世 ロシアの 読 者 たちを 魅 惑 したもので と 様 式 の 時 代 的 に 最 後 の 代 表 者 であった(Сперанский この 作 品 のなかに 収 められた 諸 モチーフは ほかのアポ М.Н. Переводные сборники изречений в славянорусской письменности. М., 1904. С. 411-412.) 古 代 を 見 てみよう クリファ 作 品 のなかでも 繰 り 返 しあらわれている それ とキリスト 教 時 代 との 端 境 期 に 創 作 活 動 をした 神 学 者 グ 3 人 の 司 祭 の 談 話 や バルクの 啓 示 には 洪 水 レゴリオスの 説 教 は 教 会 スラヴ 語 にはそれほど 多 く 訳 によって 天 国 から 流 れでた 葡 萄 の 木 を 天 国 に 植 えるサタ されてはいなかったとはいえ 古 典 古 代 の 神 話 とネオプ ナエルの 話 がある ロトによって 燃 えさしから 育 てられ ラトニズムの 哲 学 をロシアの 会 衆 に 伝 えた(Клибанов た 木 については ギリシア 語 のミハイル グリカの 年 代 А.И. К проблемеантичного наследия в памятниках 記 (12 世 紀 )にも 歴 史 パレイ(パライオス) にも древнерусской письменности // ТОДРЛ. М. - 伝 えられている Л. 1957. Т.13. С.160; Иванов А. И.Максим Грек и モーセが 水 を 甘 くするさいに 用 いた 枝 から 生 い 育 った итальянское Возрождение / / Византийский 木 にかんしては モーセをめぐるアポクリファにも エ Временник. М., 1972. Т.33. С.155; Буланин Д. М. ルサレムの 修 道 士 アファナシオスがパンクに 宛 てた 書 簡 Комментарии Максима Грека к словам Григория (13 世 紀 のノヴゴロドの 舵 の 書 Кормчая книга の Богослова // ТОДРЛ. Л., 1977. Т.32. С.276-277) 写 本 テクストで 知 られている)のなかにも 見 出 される 敬 虔 な 十 字 架 についての 講 話 は しかしながら 同 じアポクリファが 注 釈 パレイ Толковыепалеи と 神 学 者 グレゴリオスの 手 になるものではない 十 字 架 の 年 代 記 パレイХронографические палеи の 一 部 に 木 についてのアポクリファを 研 究 したИ.Я.ポリフィリ 編 入 されている エフが 仮 説 として 述 べているところによれば この 作 品 また ニコディム 福 音 書 のギリシア 語 写 本 のなかに が 神 学 者 グレゴリオスによって 書 かれたとされてきたの 聖 家 族 がエジプトへの 逃 避 の 途 上 に 盗 賊 たちと 出 会 うエ は グレゴリオスのある 説 教 のなかに アダムの 転 落 ピソードがある と 救 世 主 の 十 字 架 上 の 死 とを また 善 悪 の 認 識 の 木 と 金 口 ヨハンネスとその 同 時 代 人 キプロスのエピファニ 十 字 架 の 木 とを 結 びつける 短 い 一 節 があったためである オスは ゴルゴダの 丘 にアダムが 埋 葬 され 同 じ 場 所 に (Порфирьев И. Я. Апокрифические сказания о キリストが 十 字 架 にかけられた 話 を 伝 えているし アダ ветхозаветных лицах и событиях по рукописям ムの 首 にかんする 伝 説 はエルサレムにおいて 伝 承 され Соловецкой библиотеки. СПб., 1877. С.48) しかし 12 世 紀 に 聖 地 をめぐったロシアの 巡 礼 者 修 道 院 長 ダ ながら この 著 作 家 の 作 品 のなかに 両 者 を 結 びつける ニールがこの 話 を 聞 いている ついでながら アダムが 根 拠 を 捜 し 求 めることは 必 ずしも 必 要 ではない 作 品 に ゴルゴダの 丘 で 流 されたキリストの 血 とわき 腹 の 肋 骨 の 崇 敬 されていた 著 作 家 の 名 前 を 冠 することは 中 世 ロシ あいだから 流 れでた 水 によって 洗 礼 を 受 けたという 話 は ア 文 学 ではあたりまえのことであった たとえば 金 口 いうまでもなく 聖 書 に 由 来 するものではない ヨハ ヨハンネス ディオニュソス アレオパギテース パタ ネ 福 音 書 のなかでは (ローマの) 兵 士 の 一 人 が 槍 で ラのメフォディオスの 名 前 を 冠 された 作 品 が 残 っている イエスのわき 腹 を 刺 した すると すぐ 血 と 水 が 流 れた 神 学 者 グレゴリオスにかんしていえば 中 世 ロシア 文 学 とあるだけである において 彼 の 名 前 のもとで 紀 元 前 4 世 紀 の 古 代 ギリシ しかしながら アダムの 首 という 主 題 は 中 世 ロ ア 作 家 メナンドロスの 喜 劇 からとられた 格 言 が 知 られて シア 文 学 宗 教 美 術 民 衆 歌 謡 においてとりわけ 人 気 の いたし 17 世 紀 にはユーリイ クリジャニチがフョー 高 いものであった この 伝 説 は キリストへの 論 難 磔 ドル アレクセーヴィチ 帝 に アリストテレスの 著 作 の 刑 の 経 緯 を 追 った 聖 なる 大 金 曜 日 Великий пяток 24

中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) アポクリファ1 67 の 三 歌 斎 経 триодь のなかに 見 出 すことができる 数 々 し 部 分 部 分 が 伝 えられることもあった テクストは のイコン 画 のなかに 磔 刑 の 十 字 架 の 下 にアダムの 頭 蓋 次 の 研 究 書 において 公 刊 されてきた 骨 が 描 かれている Пыпин А.Н.Памятники старинной русской 十 字 架 の 木 の 伝 説 は 旧 約 聖 書 新 約 聖 書 のさまざま литературы. СПб., 1862. Вып. 3. С.81-82; Тихонравов な 事 件 人 物 が 結 びつけられている 十 字 架 の 木 にかん Н.С. Памятникиотреченнойрусскойлитературы. М., するアポクリファの 冒 頭 は アダムとエバにかんするア 1863. Т. 1. С.305-313; Порьфирьев И.Я. Апокрифические ポクリファの 最 後 の 場 面 に 依 拠 している 楽 園 の 木 の3 сказания о ветхозаветных лицах и событиях по 本 の 枝 から 命 の 火 が 燃 えつきかけたアダムが 桂 冠 を 編 рукописям Соловецкой библиотеки. СПб., 1877. С.47-50, み その 桂 冠 をかぶらせてアダムが 埋 葬 されたという 話 96-99, 101-103; Ягич В. История сербо-хорватской である この 桂 冠 から 十 字 架 の 木 が 生 い 育 った ブルガ литературы. Казань, 1871. С.101-102, 106-109; Порьфирьев リアの 研 究 者 А.ミルテノヴァは この 二 つの 作 品 を 同 И.Я. Апокрифические сказания о ветхозаветных 時 に 検 討 している(Миртенова А.Текстологически лицах и событиях. Казань, 1872. С. 105-115, 132, 138-141, наблюдениявърху дваапокрифа(апокрифенцикъл 165-166; Веселовский А. Н.Разыскания в области за кръстного дърево,приписан на Григорий Богослов, русского духовного стиха. 10. Западные легенды о и фаокрифа за Адам и Ева)// Старобългарска древе креста и Слово Григория Богослова о трех литература. София, 1982. Кн. 11. С.35-55) крестных древах // Прилож. к т. 45 Зап. имп. АН. このアポクリファの 一 連 のエピソードのなかで 特 別 な СПб., 1883. С.365-417; Словарь книжников и 位 置 を 占 めるのは ソロモン 王 による 神 殿 建 設 の 記 述 で книжности Древней Руси. Л., 1988. Вып. 2 (вторая ある この 記 述 が 三 つの 木 にかんするすべての 話 を 一 つ половина XIV-XVI в.). Ч.1. А-К. С. 60-66. にまとめ これらの 三 つの 木 がエルサレムに 現 われたこ この 翻 訳 の 底 本 としたのは 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 とを 説 明 しているからである 神 殿 建 設 にさいしてソロ ВЛДР 第 3 巻 のテクスト 25 である このテクストは 基 モンが 悪 魔 の 助 力 を 用 いたというエピソードには ソロ 本 的 にロシア 科 学 アカデミー 図 書 館 のセルビア 起 源 の モン 王 にかんする 古 いタルムード 伝 説 の 反 響 を 見 てとる 写 本 (16 世 紀 )Библиотека РАН 13. 2. 25. Л.7-12.に ことができる このタルムード 伝 説 のなかにも 神 殿 建 拠 っている この 写 本 にはない «Възят три главня» 設 のさいソロモンを 助 ける 悪 魔 たち もしくは 悪 魔 た までの 冒 頭 部 分 は ロシア 国 民 図 書 館 ポゴージン 集 成 ちの 王 アスモデイが 現 われている ソロモン 王 は ギリ 1615 番 (1632 年 )РНБ 1632г., собр. Погодина, 1615. シアの 伝 説 によれば 神 が 大 天 使 ミカエルとともに 彼 Л.193-194によって 補 っている この 写 本 にしたがって に 送 った 魔 法 の 指 輪 によって 悪 魔 たちにいうことをき いくつかのテクストの 増 補 改 訂 がおこなわれている かせたのだった(Веселовский А. Н.Славянское сказание 表 題 小 見 出 しは 原 典 に 拠 ものである о Соломоне и Китаврасе и западные легенды о Морольфе и Мерлине. СПб., 1872. С.105, 131-132, 134, 翻 訳 137) 神 学 者 聖 グレゴリオスの 聖 なる 十 字 架 にかんする 講 話 聖 家 族 が 盗 賊 に 出 会 う 話 は キリストとともに 十 字 架 アダムは 桂 冠 をかぶせられて 埋 葬 された その 桂 冠 は にかけられた 正 しい 盗 賊 がどのように 生 まれたのか アダムがその 木 のために 楽 園 から 追 放 された 当 の 木 の を 示 す 物 語 である この 正 しい 盗 賊 は 6 日 間 聖 母 枝 を 縒 りあわせてアダムの 頭 にのせられたものであった の 乳 によって 養 われた 子 供 であった このエピソードが この 桂 冠 はアダムの 息 子 セトが 彼 にもってきたのであっ アダムの 首 をめぐる 一 連 の 話 に 加 えられたのは それが たが それは 天 使 が 楽 園 から 運 んできてセト 26 にあたえ キリストが 十 字 架 にかけられる 場 所 がエルサレムとなっ たものである アダムの 頭 のこの 桂 冠 から 木 が 生 えた た 由 縁 を 説 明 しているからである このようにして そ そして それは 高 く 高 く 3 本 の 幹 に 分 かれて 驚 くほ れぞれが 独 自 の 主 題 をもったすべての 伝 説 がこのアポク ど 高 く 成 長 した 3 本 の 幹 はいっしょに 成 長 し ほかの リファを 大 団 円 つまり ゴルゴダのテーマへと 導 くの あらゆる 木 より7 倍 も 高 くなった である すなわち アダムが 楽 園 から 追 放 される 原 因 と なった 木 が 全 人 類 の 救 済 の 木 となったのである 敬 虔 な 盗 賊 が 磔 にされた2 本 目 の 木 について ブルガリアとセルビアの 中 世 文 学 において 十 字 架 に この 木 の 一 部 をチグリス 川 が 楽 園 から 運 び 出 し 砂 地 かんするアポクリファは14 世 紀 の 写 本 のなかに 現 われ に 止 まった セトが 自 らの 父 アダムを 追 憶 しようとした る ロシア 中 世 文 学 では もう 少 し 遅 く 15 世 紀 終 わり とき 天 使 はこの 木 を 指 し 示 した セトはナイルと 呼 ば から16 世 紀 はじめにかけての 写 本 に 現 われる この 作 れる 川 のほとりで 火 を 灯 した かくしてセトは 自 らの 父 品 は すべてのエピソードが 書 き 継 がれることもあった を 記 憶 したのである そして この 炎 は 消 えることなく

68 三 浦 清 美 (2013 年 2 月 ) 末 代 までつねに 絶 えることなく 燃 えていた そして 獰 猛 な 獣 たちがこの 火 を 守 っているのである ロト 27 が 罪 を 犯 したとき 改 悛 するためにアブラハム 28 のもとを 訪 れた アブラハムはロトの 話 を 聞 くと 大 い に 身 の 毛 がよだつ 思 いをし 彼 が 破 滅 するようにはから い 立 ち 去 らせて 言 った 行 ってナイルのほとりで 燃 えている 火 をもってくるがよい すると ロトは 行 っ てあらゆる 獣 たちが 眠 っているのを 見 ると 3 本 の 燃 え さしを 取 ってアブラハムのもとにもってきた アブラハ ムは 見 ると 悟 り 驚 愕 した そして 彼 は 燃 えさしを 甕 の 入 れ 水 を 注 ぐように 命 じた アブラハムは 言 った 燃 えさしが 芽 吹 くとき そなたの 罪 は 赦 されるだろう 水 のある 場 所 は 遠 かったが 日 に3 度 口 に 含 んで 水 を 運 び 木 に 注 ぎかけた このようにして 燃 えさしは 芽 吹 い た そして 驚 くべきすばらしい 木 がそびえたった 不 敬 な 罪 人 が 磔 にされた3 本 目 の 木 について この 木 の 一 部 を 洪 水 の 水 が 運 び 出 した そして 水 が 涸 れると この 木 はメラ 29 川 のほとりに 残 っていた モー セがイスラエルの 民 人 を 引 き 連 れてきたとき この 川 の 水 が 苦 かったので 何 も 飲 むものがなかった モーセは 水 をもとめて 悲 しく 歩 いた そして 神 に 祈 りをささげ た すると 天 使 が 一 本 の 木 を 指 し 示 した 木 は 上 流 に あり 花 を 咲 かせていた モーセはこの 木 から 枝 を 取 り 十 字 を 形 づくるようにして 川 岸 に 植 えた すると 木 の おかげで 水 が 甘 くなった そして 木 は 実 に 高 く 驚 く べき 豊 かに 生 い 茂 る 木 に 成 長 した 問 い どのようにこれらの 木 が 生 い 茂 り どのように かくも 成 長 したのか 答 え 主 が 楽 園 を 造 ったとき そこには 天 使 も 誰 もお らず 主 とサタナエル 30 がいただけであった 主 が 何 か を 植 えるように 命 じるたびに サタナエルはあらゆる 庭 園 からこっそりと 主 にたいして 盗 みをはたらき 盗 んだ ものを 楽 園 のいたるところで 撒 き 散 らした 主 は 仰 せら れた そこに 私 の 体 があるだろう そこに 私 自 身 がい るだろう おまえは 追 放 の 憂 き 目 にあうことだろう それから 主 は 外 に 出 られた すると サタナエルは 言 っ た 主 よ 祝 福 したまえ 私 たち 二 人 が 植 えたのだから 主 は 言 われた 私 こそがそこ 楽 園 の 真 ん 中 にある そして サタナエルが 自 らの 木 を 見 に 行 こうと 出 ていっ たとき 木 は 彼 を 楽 園 から 追 放 した そして サタナエ ルは 黒 に 染 まり 悪 魔 となった その 木 は3 本 の 幹 に 育 った 1 本 目 の 幹 はアダムであ る 2 本 目 の 幹 はエバである 3 本 目 のまんなかの 幹 は 主 ご 自 身 である アダムとエバが 罪 を 犯 したとき アダ ムの 幹 がチグリス 川 に 落 下 し チグリス 川 はそれを 運 び 去 った この 木 の 一 部 は 大 洪 水 が 起 こったとき 水 の なかからあらわれ メラ 川 のほとりで 生 い 育 った エバ の 幹 は 楽 園 に 落 ちた 問 い この 木 はどのようにしてエルサレムでふたたび ひとつになったのか? 答 え 主 なる 神 は ソロモンが 神 の 家 聖 なるシオン 31 を 建 立 することを 望 まれた そのとき 主 はソロモンに 指 輪 を 贈 られ ソロモンはあらゆる 鬼 神 を 支 配 した そし て ソロモンは 神 の 家 聖 なるシオンを 建 立 した 神 殿 の 屋 根 を 葺 くために 木 を 探 した すると ソロモンには モーセがメラ(マラ)で 植 えた 木 が 指 し 示 された ソロ モンは 行 って 木 を 切 った その 木 には 80 頭 の 水 牛 が 繋 がれていた ヨルダン 川 で 空 が 暗 くなった ひどい 嵐 が 襲 ってきた ヨルダン 川 に 木 が 飲 みこまれ 見 つから なくなった そして ソロモンには 燃 えさしから 生 い 育 った 別 の 木 が 指 し 示 された ソロモンは 燃 えさしから 育 ったその 木 のもとに 行 った たくさんの 民 衆 がいた みなを 合 わせ ると3 千 人 を 超 える 人 々である 彼 らは 木 を 信 仰 してい た なぜなら 木 は 大 いなる 奇 跡 を 起 こしたからであ る みなは この 木 のうえで 磔 になることを 主 が 望 まれ ていると 考 えた ソロモンがこの 木 を 切 ろうとしたとき 人 々はソロモンに 木 を 切 らせずにこう 言 った ソロモ ンよ 私 たちはそなたに 生 きた 木 を 切 らせない そなた はどこで3 本 の 燃 えさしが 生 い 育 ち 大 いなる 奇 跡 を 起 こすのを 見 たのか 多 くの 者 たちがこの 木 に 救 いを 見 出 した なぜなら この 木 に 磔 にされることを 主 はお 望 み になったからである ソロモンは 多 くの 者 たちを 殺 し この 木 を 切 った そして ソロモンはこの 木 をエルサレ ムに 運 んだ 木 を 信 仰 する 人 々は 木 の 枝 を 集 めて 泣 き ながらエルサレムに 運 び 木 を 見 守 った そして ソロモンは 木 を 神 殿 に 運 んだが 木 はそれが 立 てられるべき 場 所 には 動 こうとはしなかった ソロモ ンは 悲 しんだ シュビラ 32 はこの 木 のことを 聞 き それ を 見 にやってきた シュビラはそれに 腰 かけ 火 をつけ ようとした そのときシュビラは 言 った おお のろ われた 木 め すべての 人 々は 一 斉 に 叫 んだ いと 神 聖 なる 木 よ この 木 に 主 は 磔 になるであろう そのとき ソロモンは 木 を 持 ち 上 げ 神 殿 に 立 てかけた エリセイという 名 のある 男 がヨルダンの 岸 辺 で 大 工 を していた この 男 は 斧 をヨルダン 川 に 落 とした 斧 がヨ ルダン 川 に 沈 んだこの 木 に 突 き 刺 さった 男 はソロモン のもとに 来 てこのことを 知 らせた ソロモンは 行 ってこ の 木 を 引 き 上 げた それが 失 われた 木 であることがわ かったので 人 々は 木 をエルサレムに 運 び 神 殿 に 運 ん だが 木 は 持 ちあがらなかった そして その 木 をかの 1 本 目 の 木 に 立 てかけた そして ソロモンは 言 った お

中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) アポクリファ1 69 お 偉 大 なる 奇 跡 だ これらの 木 々は 高 さと 美 しさによっ て 実 に 驚 嘆 すべきであるが 持 ち 上 がらない どこで 私 たちはこれらの 木 々よりも 高 い ほかの 木 を 見 つけるこ とができるだろうか そして ソロモンは 主 の 封 印 によって 手 なづけていた 鬼 たちに 訊 ねた 彼 らは 言 った 私 たちはエデンの 遠 くに 大 きくすばらしくおどろくべき 木 があるのを 知 って いる 私 たちはそれについて 話 すのが 怖 ろしい ソロ モンは 言 った 私 はそなたたちを 神 が 私 にあたえた 主 の 印 章 によって 縛 りあげる それがいやなら 行 って 頂 と 根 っこをもってそれをここにもってくるがよい すると 鬼 たちは 行 って 根 こそぎ 木 をもってきた 木 の 根 のなかにアダムのされこうべがあった 鬼 たちはそ れをエルサレムまでもってきて 根 っこから 木 を 切 り 倒 した そして 彼 らは 地 面 に 木 を 置 いて 測 った 木 は 運 ぶこ とができたが 神 殿 にははるかに 足 らなかった ソロモ ンは 言 った 大 いなる 驚 くべき 奇 跡 よ 私 は3 本 の 木 を 見 つけた 木 はほかではどこにも 見 つからないほどの もので 偉 大 なる 奇 跡 を 起 こし 地 上 におけば 大 きく 見 えるが 神 殿 を 建 てるにははるかに 足 らなかった これ らの 木 はすべて たった 一 本 のもとの 木 から 生 い 育 った ものだ そして ソロモンは 木 を 神 殿 に 立 てかけ 木 を 見 守 る ように 見 張 りをつけた そして ソロモンは 鬼 たちに 訊 ねた エデンからエルサレムまでどのくらいの 距 離 が あるか 鬼 たちは 答 えた 5 万 6 百 53マイルの 距 離 があります なぜなら それがどのくらいの 距 離 なのか 私 たちは 測 ったことがあるからです アダムの 頭 についての 話 アダムの 頭 は 根 っこのなかにあったが だれもそれを 見 なかった ソロモンが 狩 りにでかけたが 突 然 の 嵐 が 彼 をおそった 王 の 上 着 を 羽 織 った 彼 の 従 士 の 一 人 は たまたま 王 とともにいなかったのだが 洞 窟 を 見 つ け 猟 犬 と 鷹 とともにその 洞 窟 に 入 った そこにじっと していると 洞 窟 が 岩 でできているのではなく 骨 でて きていることがわかった 嵐 がやむと 従 士 は 外 にでて 王 を 見 つけた すると ソロモンは 彼 に 言 った 僕 よ そなたは 余 の 着 物 を 羽 織 り どこにいってしまったのか 嵐 のおかげで 余 はびしょ 濡 れだ それなのにそなたはな ぜ 濡 れてはいないのか 従 士 は 言 った ご 主 人 さま 私 は 洞 窟 を 見 つけて 猟 犬 と 鷹 とともに 中 に 入 ったので す 私 の 馬 はおもてにいました そして 洞 窟 が 岩 では なく 骨 でできていることに 気 づきました 王 は 翌 朝 行 って 根 から 泥 を 落 としてみた そして それがアダム の 頭 であること アダムが 死 んだとき 天 使 がセトにあた えた 木 とともに 持 ち 運 ばれたものであることを 知 った 問 い この 木 はいかにして 育 ったか 天 使 はどこから この 木 をもってきてセトにあたえたか 答 え サタナエルが 主 からこの 木 を 盗 んだとき 主 は 仰 せになった そなたは 私 から 盗 みを 働 いた この ゆえにそなたは 追 放 されるであろう かくしてサタナ エルは 追 放 された そして 木 は3 本 の 幹 に 生 い 育 った アダムの 幹 エバの 幹 そして 真 ん 中 に 神 である 主 ご 自 身 の 幹 である アダムの 幹 はチグリス 川 が 運 び 去 っ た 主 の 幹 は 天 使 がセトにあたえ セトがアダムのため にもってきた アダムはそれで 自 らのために 桂 冠 を 編 ん だ この 桂 冠 から 木 が 生 い 育 った エバの 幹 は 洪 水 のと きに 流 れ 着 いた ソロモンはそれがアダムの 頭 であることに 気 づくと そ れをエルサレムの 真 ん 中 にもってきた 人 を 遣 って 呼 ぶ と あらゆる 人 々が 集 まってきた ソロモンは 彼 らに 命 じて 言 った 余 がやることを 見 て そなたたちはその とおりにおこなうがよい すると ソロモンは 石 を 取 り それに 深 々と 頭 をさげて 言 った 余 はそなたを 礼 拝 する 神 の 最 初 の 創 造 物 のように そして 石 を 頭 に ぶつけて 言 った 余 はそなたを 撃 つ 神 の 御 前 で 罪 を 犯 した 者 のように すると すべての 民 衆 は 石 を 投 げ つけた リトストラトン ヘブライ 語 でいう 石 打 ち 33 がおこなわれた なぜなら エルサレムの 民 衆 がすべて 集 まっていたからである 私 たちの 主 イエス キリストの 裁 判 がおこなわれたと き ピラトのもとにキリストと 二 人 の 強 盗 が 連 れてこら れた ピラトが 命 じ これらの 木 で3 本 の 十 字 架 が 作 ら れた キリストはアダムの 頭 から 生 い 育 った 木 に 磔 にさ れた 正 しい 強 盗 はキリストの 右 手 で 燃 えさしから 生 い 育 った 木 に 磔 にされた 正 しくない 強 盗 はキリストの 左 手 で モーセが 植 え メラ 川 のほとりで 生 い 育 った 木 に 磔 にされた 二 人 の 強 盗 についての 訂 正 ヘロデが 私 たちの 主 イエス キリストを 殺 そうとした とき ヨセフは 天 使 が 彼 に 告 げたとおり 聖 母 とその 息 子 さらに 主 の 弟 であるヤコフをともなってエジプトに 赴 いた その 途 上 二 人 の 盗 賊 が 妻 と 自 らの 子 どもたち とともに 悲 しんでいた 一 人 の 盗 賊 のもとに 乳 首 の 一 つ しかない 妻 がいた 盗 賊 の 二 人 の 妻 には 幼 子 がいた 片 方 の 盗 賊 の 妻 は6 日 間 ひどく 心 臓 を 病 んでいた 乳 首 が 一 つしかないもう 片 方 の 妻 は 自 分 の 子 どもしか 養 うこ とができず もう 一 人 の 子 供 は 飢 えのために 死 にかけて いた そのとき 妻 が 病 気 であった 盗 賊 は 幼 子 とヨシ フとをともなった 聖 母 を 捕 まえ 言 った 私 たちはこの 人 にもその 妻 にも 危 害 を 加 えない この 女 が 私 の 赤 ん 坊 に 乳 をあげてくれるように 赤 ん 坊 はもう6 日 も 何 も 食

70 三 浦 清 美 (2013 年 2 月 ) べていないのだから このように 彼 らを 捕 らえ 自 分 の 家 に 連 れていった 聖 母 は 盗 賊 の 子 供 に つづく6 日 にわたって 乳 をあげつづけた すると 盗 賊 の 妻 が 回 復 し 盗 賊 の 子 供 も 元 気 になった 盗 賊 は 言 った 偉 大 な 奇 跡 だ もしこの 女 が 自 分 の 幼 子 とともに 来 て 私 の 子 供 を 元 気 にしてくれなかったなら 私 の 子 供 は 死 んでい ただろう 盗 賊 はたくさんの 贈 り 物 をあたえ ヨシフ と 幼 子 をともなった 聖 母 を 見 送 った 盗 賊 の 子 供 たちは 成 長 して 彼 らの 父 親 たちと 同 じよ うに 盗 賊 になった 私 たちの 主 イエス キリストが 磔 に なったとき 彼 らも 捕 らえられてピラトのもとに 連 れて いかれた そして ピラトは 主 の 両 脇 に 彼 らを 磔 にする ように 命 じた 聖 母 が 乳 をあたえた 盗 賊 は 主 の 右 にいて 叫 んだ 主 よ あなたの 御 国 においでになるときには 私 を 思 い 出 してください だが もう 片 方 の 盗 賊 は 不 敬 なことを 言 った このために 天 国 に 入 る 者 たちからは ずれ 責 め 苦 に 落 とされた アダムは 私 たちの 主 イエ ス キリストの 血 によって 洗 礼 を 授 けられた 私 たちの 神 にとこしなえに 栄 えあれ アーメン 注 1 平 凡 社 大 百 科 事 典 聖 書 参 照 2 Библиотека литературы древней Руси. Т.3. СПб., 1999. С.6. 3 Библиотека литературы древней Руси. Т.3. СПб., 1999. 中 世 ロシア 語 と 現 代 ロシア 語 の 対 訳 で 注 がつい ている 4 Апокрифы древней Руси. СПб., 2008. 現 代 ロシア 語 の 翻 訳 のみが 掲 載 されている 5 金 田 一 真 澄 ロシア 文 学 の 扉 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 2007 年 20 23 頁 6 Библиотека литературы древней Руси. Т.3. СПб., 1999. С.256-261, 397-398. 7 ヨハネによる 福 音 書 11 章 8 Библиотека литературы древней Руси. Т.3. СПб., 1999. С.256-261. 9 イザヤ 書 1 章 2 3 節 10 いわゆる 東 方 3 博 士 ( マタイによる 福 音 書 2 章 1 12 節 )のこと 11 イザヤ 書 66 章 1 節 12 詩 篇 107 章 16 節 参 照 13 ヨシュア 記 1 6 章 14 1 プードは 40 フント 16.38 キログラム 15 士 師 記 6 章 16 列 王 記 6 章 23 30 節 ただし 列 王 記 上 では 作 られるのは 二 羽 の 鷲 ではなく 翼 のある 一 対 のケルビ ムである また ソロモンが 神 を 試 し 鷲 が 神 殿 を 飛 び まわるエピソードは 列 王 記 上 にはない 17 列 王 記 上 11 章 に 拠 れば ソロモン 王 は700 人 の 王 妃 と 300 人 の 側 室 をもち この 妻 たちが 彼 の 心 を 悩 ませ 彼 の 心 をほかの 神 々へ 向 かわせた 18 詩 篇 24 章 7 10 節 19 悪 霊 のかしら いわゆる ベルゼブル 論 争 が 共 観 福 音 書 にある( マタイによる 福 音 書 12 章 22 36 節 ; マ ルコによる 福 音 書 3 章 20 30 節 ; ルカによる 福 音 書 11 章 14 23 節 ) 20 地 獄 を 指 す 21 この 直 接 話 法 はラザロの 言 葉 であると 解 すべきであろう 22 マタイによる 福 音 書 28 章 19 20 節 23 Библиотека литературы древней Руси. Т.3. СПб., 1999. С.284-291,406-407. 24 受 難 週 間 の 金 曜 日 キリストが 十 字 架 にかけられた 日 25 Библиотека Литературы древней Руси. Т.3. СПб., 1988. С.284-291,402-405. 26 アダムとエバの 息 子 カインとアベルの 弟 ノアはかれ の 子 孫 である 27 アブラハムの 甥 で ソドムの 住 人 神 はその 住 人 の 罪 ゆ えにソドムを 焼 きつくすことを 決 心 したが 天 使 は 正 し い 人 であったロトと 妻 二 人 の 娘 を 呪 われた 町 から 連 れ 出 そうとした 天 使 は 逃 亡 の 途 中 で 後 ろを 振 り 返 っては いけないと 命 じたが ロトの 妻 は 硫 黄 が 降 りかかり 焼 きつくされるソドムの 町 を 振 りかえって 見 たために 塩 の 柱 になった その 後 ロトは 二 人 の 娘 と 交 わり 二 人 の 男 の 子 をもうけ 一 人 はモアブ 人 の 祖 先 となり もう 一 人 はアンモン 人 の 祖 先 となった( 創 世 記 18 章 16 節 19 章 38 節 ) ここで 説 かれるロトの 罪 とは この 近 親 相 姦 であると 思 われる 28 アブラハムはユダヤ 人 の 祖 その 罪 のゆえにソドムとゴ モラを 滅 ぼそうと 決 めた 神 に アブラハムはそれを 思 いとどまらせようと 試 みる( 創 世 記 18 章 16 33 節 ) アブラハムがロトの 罪 に 驚 き その 贖 いを 命 じるという モチーフは 純 粋 にアポクリファ 的 なものであるが そこ にはソドムとゴモラのことをとりなした 創 世 記 の アブラハムのイメージが 投 影 されていると 思 われる 29 メラ(マラ)は 旧 約 聖 書 出 エジプト 記 に 出 てくる 地 名 であり 川 の 名 前 ではない エジプトを 脱 出 したモー セたち 一 行 は マラに 着 いたが そこの 水 は 苦 くて 飲 むことができなかった そういうわけで そこの 名 はマ ラ( 苦 い)と 呼 ばれた 民 はモーセに 何 を 飲 んだらよ いのか と 不 平 を 言 った モーセが 主 に 向 かって 叫 ぶと 主 は 彼 に 一 本 の 木 を 示 された その 木 を 水 に 投 げ 込 むと 水 は 甘 くなった ( 出 エジプト 記 15 章 23 25 節 ) 30 サタン 悪 魔 悪 霊 のこと アポクリファにおいては 自 らを 創 造 した 神 に 反 抗 する 堕 天 使 としてあらわれる おもにサタナエルと 戦 うのは ふつう 神 ではなく 大 天 使 ミカエルである 31 エルサレムの 古 い 別 称 ダビデが 征 服 したエブス 人 の 丘 の 上 の 町 エルサレムは シオン 要 塞 と 呼 ばれていたが イスラエルの 詩 人 たちは シオン をエルサレムの 愛 称 として 好 んだ 預 言 者 たちは 神 の 王 国 神 が 住 まわれ る 天 上 の 場 所 としてシオンという 語 を 用 いた 地 上 の シオン とはエルサレム 神 殿 のことを 指 す 32 未 来 を 予 言 する 古 代 ギリシアの 女 預 言 者 中 世 ロシアの 古 写 本 において 12 人 のシュビラについて という 作 品 が 16 世 紀 にあらわれ その 像 はモスクワ クレムリ ンの 生 神 女 聖 福 音 (ブラゴヴェシェンスカヤ) 教 会 の 回 廊 描 画 (1564 年 ) 聖 福 音 教 会 の 扉 描 画 生 神 女 就 寝 (ウ スペンスカヤ) 教 会 の 扉 描 画 コストロマの 三 位 一 体 聖 堂 の 扉 描 画 ノヴゴロドのイコン 画 書 物 の 挿 絵 などに

あらわれる 17 世 紀 になると 12 人 のシュビラについ て 外 務 官 署 の 翻 訳 官 ニコライ スパファリイの 書 物 に おいて 詳 細 に 描 かれている スパファリイの12 人 のシュ ビラについての 書 物 には 十 字 架 の 木 についての 講 話 のある 版 が 収 められている シュビラがソロモンを 訪 ね たとされる 外 典 作 品 において シュビラはしばしばシェ バの 女 王 ( 列 王 記 上 10 章 )と 同 一 視 されている 33 リスストラトン は このテクストにおいてはヘブラ イ 語 で 石 打 ち の 意 とされているが じっさいはギリ シア 語 で 敷 石 を 意 味 する これはエルサレム 総 督 の 館 にあって 裁 きがおこなわれた 大 理 石 もしくはモザイク を 張 った 小 さな 空 間 のことである ヨハネによる 福 音 書 では ヘブライ 語 で ガバタ すなわち 敷 石 という 場 所 で 裁 判 の 席 につかせた となっている 中 世 ロシア 文 学 図 書 館 (IV) アポクリファ1 71