オーストラリア 自 治 体 の 公 務 員 制 度 財 団 法 人 自 治 体 国 際 化 協 会 (シドニー 事 務 所 )
目 次 はじめに 概 要 ⅰ 第 1 章 自 治 体 の 組 織 及 び 職 員 数 1 1 自 治 体 の 地 位 1 2 自 治 体 の 組 織 1 3 職 員 数 3 第 2 章 法 的 基 礎 及 び 職 7 1 職 員 制 度 の 決 定 権 限 7 2 職 員 制 度 に 関 する 法 令 7 3 職 員 の 種 類 7 4 定 数 組 織 職 の 改 廃 8 5 職 の 級 9 6 職 ( 業 務 )の 格 付 け 11 第 3 章 任 用 13 1 任 命 権 者 任 用 原 則 13 2 任 用 方 法 13 3 任 用 の 条 件 15 第 4 章 任 用 後 17 1 人 事 異 動 17 2 昇 任 17 3 退 職 17 第 5 章 勤 務 条 件 21 1 給 料 21 2 その 他 の 勤 務 条 件 ( 勤 務 時 間 休 暇 ) 24 第 6 章 労 働 基 本 権 等 26 1 労 働 基 本 権 26 2 政 治 的 行 為 の 制 限 26 第 7 章 職 員 研 修 27 1 原 則 27 2 サウス シドニー 市 での 職 員 研 修 奨 励 制 度 27 第 8 章 ジェネラル マネージャー 制 度 28 1 権 限 の 改 革 28 2 採 用 制 度 の 改 革 28 3 ジェネラル マネージャーの 勤 務 経 歴 28 4 ジェネラル マネージャーの 給 料 29 資 料 NSW 州 内 の 地 方 自 治 体 職 員 の 休 暇 等 勤 務 条 件 一 覧 表 31 参 考 文 献 等 一 覧 33
はじめに 本 レポートの 前 身 である オーストラリアの 公 務 員 制 度 概 説 (2)( 地 方 自 治 体 ) (CLAIR REPORT No.146)が 刊 行 されて 5 年 が 経 過 した 本 稿 は そ の 間 に 生 じた 幾 つかの 制 度 改 正 及 び 基 本 的 データ 等 を Up-Date させること により 21 世 紀 を 迎 えたオーストラリア 自 治 体 の 公 務 員 制 度 についてまとめ たレポートである 今 回 の 改 訂 にあたっては 勤 務 形 態 の 多 様 性 や 職 の 格 付 け 勤 務 実 績 評 価 の 実 態 及 び 職 員 研 修 の 項 を 充 実 させ 制 度 の 解 説 はもとより その 実 際 の 運 用 についても 紹 介 した 本 文 では オーストラリア 自 治 体 の 職 員 制 度 の 概 況 につき ニュー サウ ス ウェールズ(NSW) 州 の 自 治 体 を 中 心 に 説 明 することとし 最 近 の 傾 向 及 び 実 例 については 同 州 サウス シドニー 市 について 調 査 研 究 を 行 なっ た 今 回 のレポート 作 成 にあたり 多 大 なるご 協 力 をいただいたシドニー 工 科 大 学 地 方 自 治 教 育 センター プログラム コーディネーター Robert Mellor 氏 及 び NSW 州 サウス シドニー 市 組 織 人 事 部 組 織 管 理 課 長 Peter Macklin 氏 に 対 して 厚 くお 礼 を 申 し 上 げる 次 第 である ( 財 ) 自 治 体 国 際 化 協 会 シドニー 事 務 所 長
概 要 第 1 章 では オーストラリア 自 治 体 の 組 織 及 び 職 員 数 など 基 本 的 な 事 項 に ついて 最 近 の 傾 向 などを 含 めて 解 説 した 第 2 章 では オーストラリア 公 務 員 の 法 的 基 礎 及 び 定 数 や 組 織 職 の 改 廃 における 根 拠 規 定 等 につき 説 明 している また 職 の 格 付 けについての 項 を 充 実 させた 第 3 章 及 び 第 4 章 では 職 員 の 任 用 から 退 職 に 至 るまでの 制 度 の 概 要 仕 組 みについて 説 明 した 特 に 職 員 募 集 や 職 員 の 解 雇 等 について 我 が 国 の 実 態 との 相 違 に 即 して 解 説 した 第 5 章 では サウス シドニー 市 職 員 給 料 表 を 掲 載 しながら 特 に 昇 給 構 造 について 同 市 における 実 際 の 運 用 を 詳 述 した 第 6 章 では 公 務 員 の 労 働 基 本 権 等 について 説 明 し 第 7 章 では 職 員 研 修 制 度 について 言 及 した 第 8 章 では オーストラリア 自 治 体 でみられるジェネラル マネージャー 制 度 について 説 明 し その 意 義 や 問 題 点 をはじめ 同 制 度 に 関 わる 幾 つかの トピックも 紹 介 した i
第 1 章 自 治 体 の 組 織 及 び 職 員 数 第 1 節 自 治 体 の 地 位 オーストラリアは 連 邦 政 府 州 政 府 特 別 地 域 ( 注 1) 及 び 自 治 体 ( 注 2)の 3 つの 行 政 機 構 から 構 成 される 連 邦 国 家 (Commonwealth of Australia) である 自 治 体 は 各 州 の 自 治 体 法 (Local Government Act)に 根 拠 を 置 く 団 体 であり その 職 員 制 度 に 関 する 事 項 も 各 州 政 府 の 権 限 に 属 する ( 注 1)6 州 と 2 特 別 地 域 ( 準 州 )は 次 のとおり 首 都 特 別 地 域 政 府 は 自 治 体 の 機 能 も 兼 ねており 同 地 域 には 自 治 体 はない ニュー サウス ウエールズ クイーンズランド 州 タスマニア 州 (Tas) 州 (Qld) ( 略 称 NSW 以 下 同 じ) 南 オーストラリア 州 北 部 準 州 (NT) (SA) ヴィクトリア 州 (Vic) 西 オーストラリア 州 首 都 特 別 地 域 (ACT) (WA) ( 注 2)オーストラリアの 自 治 体 の 概 要 については オーストラリアの 地 方 自 治 体 概 説 (CLAIR REPORT No.110) 参 照 第 2 節 自 治 体 の 組 織 1 議 会 と 市 長 自 治 体 の 最 高 政 策 決 定 機 関 である 議 会 (Council)は 議 決 機 関 であると 同 時 に 執 行 機 関 の 機 能 を 有 している 議 員 の 定 数 は 我 が 国 の 市 町 村 に 比 べ 格 段 に 少 なく NSW 州 自 治 体 法 では 515 人 と 定 められている 市 長 (Mayor)は 一 般 的 には 非 常 勤 の 職 であり 多 くは 議 員 (Councillor) の 互 選 により 選 出 される その 主 要 な 職 務 は 議 会 の 議 長 を 務 めることと 対 外 的 に 自 治 体 を 代 表 することに 限 定 されている 2 自 治 体 の 内 部 組 織 議 会 の 決 定 した 方 針 を 受 けて 日 常 の 行 政 執 行 にあたるのが 本 レポートの 対 象 とする 自 治 体 職 員 である 職 員 で 構 成 される 地 方 自 治 体 の 内 部 組 織 は 各 州 法 自 治 体 の 規 模 等 により 様 々である 例 として 次 に NSW 州 サウス シドニー 市 の 行 政 機 構 を 記 す( 図 -1 ) 1
図 -1 サウス シドニー 市 行 政 機 構 図 議 会 市 長 ( 市 議 9 名 ) ジェネラル マネージャー (1 名 ) シ ェネラル マネーシ ャー 室 広 報 マスコミ 担 当 (17 [7]) 企 画 総 務 部 (115.6 [1]) 組 織 人 事 部 (20) 民 生 部 (149.1 [69]) 財 政 部 (38.2 [2]) 環 境 事 業 部 (480 [44]) 都 市 整 備 部 (96.8 [8]) 企 画 調 整 課 組 織 管 理 課 健 康 管 理 課 財 政 課 廃 棄 物 課 都 市 計 画 課 市 民 課 労 務 課 青 少 年 児 童 課 会 計 課 技 能 指 導 課 建 築 指 導 課 総 務 課 労 災 補 償 課 図 書 館 税 務 課 技 術 管 理 課 管 財 課 雇 用 機 会 均 等 課 高 齢 障 害 課 給 与 課 緑 政 課 職 員 評 価 室 建 設 課 福 利 課 維 持 課 職 員 研 修 課 道 路 交 通 課 ( 出 典 )サウス シドニー 市 作 成 資 料 ( ) 内 の 数 字 は 各 部 における 職 員 人 役 (しょくいんにんやく: 業 務 量 を 職 員 数 に 換 算 したもの)の 数 を 表 わし また [ ] 内 は 臨 時 職 員 の 数 である 全 職 員 1,047.7 名 (うち 臨 時 職 員 131 名 ) サウス シドニー 市 (South Sydney Council)の 概 要 州 都 地 域 の 都 市 型 大 規 模 地 方 自 治 体 (UDV- 連 邦 政 府 住 宅 地 方 省 に よる 分 類 ) 所 在 地 :シドニー 市 に 隣 接 し 面 積 :17.8km 2 人 口 :83,000 人 特 徴 : シドニー 市 を 南 側 から 取 り 囲 むような 形 の 市 域 には 高 級 住 宅 街 (Potts Point) 歓 楽 街 (Kings Cross) アミューズメント 街 (Moore Park)や アボリジニー 系 住 民 の 中 心 地 区 (Redfern)など 世 界 的 に 名 高 い シド ニー の 実 質 的 な 活 力 を 担 う 都 市 である 市 の 南 端 はシドニー 空 港 に 隣 接 し 2000 年 5 月 に 開 通 した 鉄 道 新 線 (エ アポートライン)により 現 在 は 軽 工 業 が 散 在 する 沿 線 地 区 を 通 勤 の 利 便 性 を 活 かした 住 宅 地 区 として 再 開 発 する 計 画 もある 1989 年 にシドニー 市 から 分 離 して 以 降 も 同 市 との 再 合 併 や 周 辺 都 市 との 合 併 議 論 が 絶 えず 最 新 (2002 年 現 在 )の 動 向 としては 同 市 を 含 むシドニー 都 市 圏 (8 市 )の 市 域 ( 境 界 線 ) 再 編 が 議 論 されている 2
第 3 節 職 員 数 1 概 況 自 治 体 の 全 職 員 数 は 145,000 人 で 各 州 ごとの 自 治 体 の 職 員 数 は 表 - 1 のとおりである 表 -1 各 州 ごとの 自 治 体 の 職 員 数 (2001 年 9 月 ) NSW Vic Qld SA WA Tas NT 合 計 職 員 数 ( 千 人 ) 46.6 32.2 38.8 8.5 13.5 3.2 1.2 145.0 構 成 比 (%) 32.2 22.8 26.7 5.8 9.4 2.3 0.8 100.0% ( 出 典 )Wage and Salary Earners Australia, 2001.9( 連 邦 政 府 統 計 局 ) 2 平 均 最 多 最 少 職 員 数 一 自 治 体 当 たりの 職 員 数 は 平 均 で 211 人 である( 全 自 治 体 数 :685 団 体 ) NSW 州 内 の 一 自 治 体 当 たりの 職 員 数 は 平 均 で 269 人 であり( 全 自 治 体 数 :172 団 体 ) 全 国 平 均 より 多 い オーストラリアで 最 も 多 くの 職 員 を 有 している 自 治 体 の 職 員 数 は クイー ンズランド 州 の 州 都 ブリズベン 市 (City of Brisbane 人 口 820,590 人 ))の 7,600 人 で 最 少 は 北 部 準 州 のリッチフィールド(Shire of Litchfield 人 口 15,100 人 )の 9 人 である ( 出 典 )Local Government of Australia 3 職 員 数 の 変 化 1986 年 以 降 の 自 治 体 職 員 数 の 変 化 は 図 -2 のとおりである この 間 93 年 まで 増 加 傾 向 が 続 いた 後 は 減 少 に 転 じ 特 に 96 年 98 年 にかけては 同 国 の 経 済 状 況 の 悪 化 及 びこれに 伴 う 公 的 部 門 の 行 財 政 改 革 を 受 けて 急 激 な 減 少 をみた 最 新 の 状 況 では 2000 年 オリンピック 後 の 経 済 情 勢 の 好 転 を 反 映 してか 再 び 増 加 している NSW 州 内 自 治 体 職 員 数 の 変 化 は 図 -3 のとおりである まず 92 年 93 年 には 電 力 ( 公 営 ) 事 業 の 見 直 しにより シドニー 周 辺 地 域 で 従 前 は 自 治 体 の 職 員 とされていた 電 力 関 係 従 事 職 員 が 州 政 府 職 員 になったため 自 治 体 職 員 数 としては 大 幅 な 減 少 を 示 した 96 年 から 現 在 までについては 全 国 の 傾 向 と 同 様 の 動 きをとっており 2001 年 には 再 び 増 加 傾 向 に 転 じてい る 3
図 -2 全 自 治 体 職 員 数 の 変 化 (1986-2001) ( 千 人 ) 165 160 155 150 145 140 135 130 125 1986 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 ( 年 ) 図 -3 NSW 州 自 治 体 職 員 数 の 変 化 (1988-2001) ( 千 人 ) 64 60 56 52 48 44 40 1988 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 ( 年 ) ( 出 典 )Wage and Salary Earners Australia, 2001.9( 連 邦 政 府 統 計 局 ) 4 従 事 業 務 別 職 員 数 とその 変 化 傾 向 オーストラリアの 自 治 体 では 道 路 公 園 など 公 共 施 設 の 整 備 維 持 管 理 や ゴミ 収 集 街 路 清 掃 などの 事 業 が 伝 統 的 に 公 共 団 体 の 主 要 な 業 務 であ ったため 現 業 職 員 が 多 い しかし 機 械 化 技 術 革 新 による 作 業 の 効 率 化 行 財 政 改 革 の 一 環 としての 行 政 サービスの 積 極 的 な 外 部 委 託 化 や 周 辺 都 市 との 広 域 的 な 連 携 により 屋 外 的 業 務 の 合 理 化 が 著 しく 進 んできた これを 受 けて 技 術 技 能 職 機 械 操 作 職 単 純 労 務 職 ( 現 業 職 員 )の 比 重 は 近 年 著 しく 減 少 傾 向 にある その 反 面 管 理 専 門 職 福 祉 コミュニティ や 文 化 部 門 における 職 員 数 の 比 重 は 増 加 中 である これは 近 年 における 自 治 体 の 所 掌 業 務 の 拡 大 を 如 実 に 反 映 したものである 従 事 する 業 務 職 の 種 類 による 分 類 と 変 化 は 表 -2 のとおりである 4
表 -2 全 国 自 治 体 職 の 種 類 別 職 員 数 の 分 類 と 変 化 ( 人 ) 職 の 種 類 1995 年 2001 年 構 成 比 増 減 職 員 数 構 成 比 職 員 数 構 成 比 ホ イント 農 林 水 産 300 0.2% 100 0.1% 0.1 製 造 700 0.5% 400 0.3% 0.2 電 気 ガス 水 道 事 業 13,600 8.8% 3,100 2.1% 6.7 建 設 技 師 1,300 0.8% 5,200 3.5% 2.7 財 産 管 理 100 0.1% 100 0.1% 0 一 般 事 務 職 134,600 87.2% 133,400 90.1% 2.9 教 育 200 0.1% 100 0.1% 0 健 康 管 理 衛 生 100 0.1% 1,600 1.1% 1.0 文 化 レクリエーション 部 門 1,100 0.7% 1,500 1.0% 0.3 組 織 管 理 その 他 100 0.1% 700 0.5% 0.4 分 類 不 明 2,200 1.4% 1,800 1.1% 0.3 合 計 154,300 100.0% 148,000 100.0% ( 出 典 )Wage and Salary Earners Australia, 1997.3, 2001.9( 連 邦 政 府 統 計 局 ) 5 サウス シドニー 市 の 部 門 別 職 員 構 成 サウス シドニー 市 では 一 般 事 務 職 など 原 則 として 市 庁 舎 内 で 勤 務 する 職 員 を Salaried Officers とし また 道 路 公 園 管 理 やゴミ 収 集 など 環 境 的 事 業 にあたる 現 業 職 員 を Waged Staff として 職 種 を 区 分 している 同 市 における 職 員 数 および 事 務 職 現 業 職 の 構 成 割 合 の 変 化 は 表 -3 のとおりである かつては 過 半 数 を 超 えていた 職 員 全 体 に 占 める 現 業 職 の 割 合 も 現 在 ではほぼ 半 々となっている これは 4 で 述 べた 現 業 部 門 の 効 率 化 と 健 康 管 理 衛 生 や 文 化 レクリエーション 部 門 に 期 待 される 同 市 の 役 割 が 拡 大 多 様 化 したことによるものである また ここ 10 年 における 職 員 数 の 減 少 は 組 織 全 体 としての 事 務 合 理 化 の 推 進 ( 広 域 行 政 を 含 む)による 成 果 であると 考 えられる なお 同 市 では 2002 年 1 月 ジェネラル マネージャーの 交 代 があった これを 機 に 現 在 同 市 組 織 の 大 幅 な 改 編 を 検 討 中 である 職 員 数 は 削 減 せ ず 職 員 の 再 配 置 にて 対 応 する 方 針 であるが 現 在 6 つを 数 える 部 を 4 つに 統 廃 合 する 見 込 みだ 5
表 -3 サウス シドニー 市 の 職 員 数 及 び 職 員 構 成 の 変 化 1980 年 222 人 (40%) 332 人 (60%) 計 554 名 事 務 職 現 業 職 1990 年 520 人 (40%) 780 人 (60%) 計 1300 名 2001 年 524 人 (50%) 524 人 (50%) 計 1048 名 6 自 治 体 職 員 の 年 齢 構 成 NSW 州 の 自 治 体 職 員 の 平 均 年 齢 について 1989 年 のデータによると 全 職 員 38 歳 男 性 40 歳 女 性 34 歳 であり 年 齢 男 女 別 の 職 員 数 の 構 成 は 図 -4 のとおりである また サウス シドニー 市 では 2002 年 1 月 現 在 職 員 1,048 名 の 平 均 年 齢 は 40.8 歳 最 年 少 の 職 員 は 16 歳 最 高 齢 は 71 歳 である なお 雇 用 機 会 均 等 (EEO=Equal Employment Opportunity)により 採 用 昇 給 から 退 職 に 至 るまでの 間 年 齢 による 差 別 考 慮 が 一 切 禁 止 されて いる そのため 人 事 管 理 資 料 としての 職 員 年 齢 の 意 義 はなくなり 実 態 把 握 は 困 難 になっている 図 -4 NSW 州 自 治 体 年 齢 男 女 別 職 員 数 (1989.6) ( 人 ) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 合 計 男 性 女 性 1,000 0 ( 年 齢 ) 15-20 21-25 26-30 31-35 36-40 41-45 46-50 51-55 56-60 61-65 66- 不 明 ( 出 典 )Characteristics of NSW Local Government Employees 1991(NSW 州 自 治 体 省 ) 6
第 2 章 法 的 基 礎 及 び 職 第 1 節 職 員 制 度 の 決 定 権 限 自 治 体 の 職 員 制 度 に 関 する 事 項 は 各 州 政 府 の 権 限 に 属 する 従 って オースト ラリアには 各 州 ごとに 自 治 体 職 員 制 度 があるが 基 本 的 には 類 似 点 も 多 く 本 レ ポートでは NSW 州 自 治 体 の 職 員 制 度 を 中 心 に 記 述 し いくつかの 重 要 な 事 項 については 他 州 の 状 況 についても 触 れることとする 第 2 節 職 員 制 度 に 関 する 法 令 1 通 則 オーストラリアには 自 治 体 の 職 員 制 度 に 関 する 我 が 国 の 地 方 公 務 員 法 に 相 当 する 独 立 の 州 法 はない 我 が 国 の 地 方 自 治 法 に 相 当 する 各 州 の 自 治 体 法 (Local Government Act) 中 に 数 か 条 の 規 定 が 設 けられているのみである(NSW 州 法 の 場 合 第 11 章 第 332 条 から 第 354 条 まで) 自 治 体 法 に 規 定 のない 事 項 について は 各 州 労 使 関 係 法 同 法 に 基 づく 裁 定 ( 注 ) 等 による ( 注 ) 裁 定 (Award)については オーストラリア 州 政 府 の 公 務 員 制 度 (CLAIR REPORT No.234) 参 照 2 自 治 体 職 員 に 適 用 される 裁 定 自 治 体 の 議 会 は 裁 定 の 定 める 基 準 ( 最 低 基 準 )に 基 づいて 各 自 治 体 職 員 の 勤 務 条 件 ( 給 料 表 を 含 む)を 決 定 する NSW 州 内 の 自 治 体 職 員 に 適 用 される 裁 定 は NSW 州 自 治 体 裁 定 (Local Government (state) Award)である これは NSW 州 自 治 体 協 会 と 職 員 を 代 表 す る 主 要 な4つの 職 種 別 組 合 との 合 意 に 基 づいて 労 使 関 係 委 員 会 が 決 定 したもの である 裁 定 は 幹 部 職 員 である 上 席 職 員 ( 後 述 )の 任 用 に 関 しては 原 則 的 に 適 用 外 である 第 3 節 職 員 の 種 類 NSW 州 自 治 体 法 は 1993 年 に 全 面 的 に 改 正 され( 実 際 には 1919 年 制 定 の 旧 法 廃 止 に 伴 う 1993 年 新 法 の 制 定 ) ジェネラル マネージャーを 含 む 上 席 職 員 制 度 を 導 入 した 現 在 同 州 の 自 治 体 職 員 は 雇 用 条 件 の 違 いから 上 席 職 員 とそれ 以 外 の 職 員 ( 以 下 一 般 職 員 という)に 大 別 される 自 治 体 の 特 定 の 幹 部 職 員 は 上 席 職 員 として 最 高 5 年 間 の 期 限 付 きの 個 別 の 雇 7
用 契 約 に 基 づいて 任 用 される これに 対 し 一 般 職 員 は 期 限 の 定 めのない 任 用 であ り これに 関 連 して 雇 用 条 件 の 点 でいくつかの 違 いがあり その 違 いは 個 々の 項 目 の 中 で 記 述 する( 他 州 の 状 況 導 入 の 経 緯 及 び 問 題 点 については 第 8 章 ジ ェネラル マネージャー 制 度 を 参 照 ) 1 ジェネラル マネージャー(General Manager) オーストラリアの 自 治 体 では 議 会 の 政 策 決 定 に 基 づき 非 常 勤 の 市 長 に 代 わ り 首 席 行 政 職 員 (Chief Executive Officer)が 日 常 的 な 意 思 決 定 と 執 行 に 責 任 を 持 ってあたる この 職 は 州 により 様 々な 名 称 で 呼 ばれている( 表 -4 参 照 ) NSW 州 では 自 治 体 法 改 正 によりジェネラル マネージャー(General Manager) の 名 称 に 統 一 されるとともに 市 長 の 職 務 が 議 長 として 議 会 の 主 宰 と 自 治 体 行 事 の 際 の 代 表 等 に 限 定 されたため その 役 割 の 重 要 性 が 高 まった ジェネラル マネージャーは 議 会 に 出 席 し 主 要 な 意 思 決 定 に 関 与 し 議 会 と 行 政 部 門 の 接 点 となり 上 席 職 員 を 含 む 職 員 の 任 免 権 等 を 有 する 重 要 な 職 である 表 -4 各 州 自 治 体 の 首 席 行 政 職 員 職 の 名 称 NSW General Manager (GM) SA Chief Executive Officer (CEO), Vic Chief Executive Officer (CEO) City Manager Qld Chief Executive Officer (CEO) Tas General Manager (GM) WA Chief Executive Officer (CEO), NT Chief Executive Officer (CEO), City Manager, Town Clerk, Town Clerk Shire Clerk, Shire Manager ( 出 典 )Local Government of Australia 2 上 席 職 員 (Senior Staff) 上 席 職 員 とは ジェネラル マネージャー 及 び 議 会 の 定 める 組 織 機 構 図 に 上 席 職 員 の 職 として 規 定 された 職 にある 自 治 体 の 幹 部 職 員 であり ディレクター (Director)の 名 称 で 呼 ばれることが 多 い NSW 州 内 の 自 治 体 の 上 席 職 員 の 総 数 は 約 700 人 で 平 均 で 全 職 員 の 1.3%を 占 める 上 席 職 員 の 数 が 3 人 の 自 治 体 が 約 100 団 体 45 人 が 約 20 団 体 619 人 が 約 50 団 体 である(NSW 自 治 体 協 会 から 聴 取 ) 3 その 他 法 令 上 必 置 とされる 職 NSW 州 自 治 体 法 上 必 置 とされる 職 は ジェネラル マネージャー 及 び 渉 外 広 報 担 当 官 (Public Officer)の 職 のみである 第 4 節 定 数 組 織 職 の 改 廃 オーストラリアの 自 治 体 には 議 会 が 条 例 で 定 める 職 員 定 数 の 概 念 はない 8
NSW 州 の 自 治 体 では 議 会 が 上 席 職 員 の 職 とその 他 議 会 が 必 要 と 考 える 職 を 含 んだ 組 織 機 構 図 と 人 件 費 の 大 枠 を 定 め その 範 囲 内 でジェネラル マネージャ ーが 必 要 な 組 織 職 と 職 員 数 を 定 める 第 5 節 職 の 級 NSW 州 自 治 体 裁 定 には 上 席 職 員 職 群 給 与 基 準 及 び 一 般 職 員 に 適 用 される 専 門 職 群 給 与 基 準 管 理 技 術 職 群 給 与 基 準 定 型 業 務 職 群 給 与 基 準 の 合 わせて 4 種 類 の 給 与 基 準 に 合 計 15 級 が 規 定 されている 同 裁 定 の 定 める 給 料 基 準 は 表 -5 のとおりである 表 -5 NSW 州 自 治 体 裁 定 の 定 める 給 料 基 準 ( 給 料 表 ) 職 群 (Band) 基 準 給 料 (Rate) 週 給 First Pay 内 は 標 準 職 務 例 Period 01/11/01 First Pay Period 01/11/02 First Pay Period 01/11/03 (1) 定 型 業 務 職 群 1 級 訓 練 生 1( 年 齢 15 歳 ) $242.40 $250.30 $258.40 訓 練 生 2( 年 齢 16 歳 ) $302.50 $312.30 $322.40 $355.90 $367.50 $379.40 訓 練 生 3( 年 齢 17 歳 ) $416.10 $429.60 $443.60 訓 練 生 4( 年 齢 18 歳 ) 大 学 入 学 資 格 者 $476.30 $491.80 $507.80 訓 練 生 5 $514.30 $531.00 $548.30 訓 練 生 6 訓 練 生 7 訓 練 生 8 訓 練 生 9 訓 練 生 10 $539.70 $565.70 $591.70 $618.60 $557.20 $584.10 $610.90 $638.70 $575.30 $603.10 $630.80 $659.50 (2) 定 型 業 務 職 群 2 級 定 型 業 務 職 群 3 級 街 路 警 備 員 定 型 業 務 職 群 4 級 (3) 事 務 技 術 職 群 1 級 事 務 技 術 職 群 2 級 財 政 主 事 事 務 技 術 職 群 3 級 財 政 主 査 (4) 専 門 職 群 1 級 専 門 職 群 2 級 保 育 園 長 専 門 職 群 3 級 専 門 職 群 4 級 技 術 係 長 (5) 上 席 職 員 職 群 1 級 商 工 課 長 上 席 職 員 職 群 2 級 上 席 職 員 職 群 3 級 総 務 部 長 上 席 職 員 職 群 4 級 $484.30 $535.50 $598.40 $591.70 $678.50 $812.10 $678.50 $812.10 $945.80 $1,146.3 $1,079.40 $1,346.80 $1,680.90 $2,014.80 $501.80 $553.00 $617.80 $610.90 $700.60 $838.50 $700.60 $838.50 $976.50 $1,183.60 $1,114.50 $1,390.60 $1,735.50 $2,080.30 $519.30 $571.00 $637.90 $630.80 $723.40 $865.80 $723.40 $865.80 $1,008.20 $1,222.10 $1,150.70 $1,435.80 $1,791.90 $2,147.90 9
それぞれの 職 群 基 準 は 職 種 ではなく 職 に 要 求 される 資 格 能 力 責 任 等 の 高 低 難 易 度 に 対 応 している 従 って より 困 難 度 の 高 い 職 へ 任 用 ( 昇 任 )され れば 適 用 される 給 与 基 準 が 変 わる 給 与 基 準 と 学 歴 との 標 準 的 な 対 応 関 係 を 示 せば 専 門 職 群 : 大 学 卒 以 上 事 務 技 術 職 群 : 短 期 大 学 (TAFE) 卒 定 型 業 務 職 群 : 高 等 学 校 卒 といえる 裁 定 には 次 に 示 す 6 項 目 に 沿 って それぞれの 等 級 に 必 要 とされる 資 格 能 力 が 記 述 されている これは 我 が 国 の 級 別 職 務 基 準 表 に 相 当 するが 我 が 国 のものより 記 述 は 詳 しい 1 権 限 責 任 2 判 断 力 課 題 解 決 3 特 別 な 知 識 技 術 4 管 理 能 力 5コミュニケーション 能 力 6 資 格 経 験 ( 例 ) 専 門 職 群 4 級 ( 一 般 職 員 の 最 高 位 )の 条 件 1 権 限 責 任 専 門 分 野 の 事 業 に 対 する 責 任 組 織 の 重 要 課 題 に 関 し 議 会 上 席 職 員 に 対 する 専 門 家 としての 意 見 具 申 この 級 の 職 は 当 該 分 野 における 行 政 実 績 全 体 に 重 大 な 影 響 力 を 有 する 2 判 断 力 課 題 解 決 この 級 の 職 は 課 題 解 決 の 枠 組 み 実 施 計 画 を 決 定 する これに 対 する 上 席 職 員 の 見 直 しは 最 小 限 のものである この 職 は 課 題 解 決 にあたり 議 会 上 席 職 員 の 代 理 を 務 める 課 題 解 決 判 断 の 質 に 対 する 監 視 評 価 は 下 位 の 職 員 からも 行 われる 3 特 別 な 知 識 技 術 自 治 体 の 主 要 な 事 業 の 方 向 を 定 め 管 理 するための 専 門 知 識 技 術 が 必 要 で ある 主 要 課 題 の 解 決 に 当 たっての 創 造 性 改 革 力 に 関 する 専 門 知 識 技 術 が 必 要 である 4 管 理 能 力 この 級 の 職 は 主 要 事 業 の 計 画 実 施 見 直 しに 当 たり 自 ら 主 要 メンバーと して 参 画 すると 共 に 関 係 する 専 門 職 員 等 に 指 示 を 与 えることが 要 求 される 5コミュニケーション 能 力 職 員 を 統 率 し 動 機 付 ける 能 力 が 必 要 である この 職 には 相 当 程 度 単 独 で 重 要 事 項 の 交 渉 を 行 う 能 力 が 要 求 される この 職 には 自 治 体 と 外 部 の 住 民 グループを 仲 介 できることが 必 要 とされる 6 資 格 経 験 専 門 の 領 域 における 主 要 事 業 の 計 画 改 善 管 理 に 関 し 実 務 経 験 と 共 に 当 該 分 野 における 大 学 での 専 門 資 格 の 取 得 が 要 求 される ( 出 典 )NSW 自 治 体 裁 定 2001 10
第 6 節 職 ( 業 務 )の 格 付 け 個 々の 職 の 分 類 級 付 けにあたり 民 間 の 経 営 コンサルタント 会 社 の 考 案 した 評 価 付 け 手 法 を 用 いて 行 っている 地 方 自 治 体 も 多 い その 一 つである OCR 社 職 務 評 価 方 式 の 概 要 は 次 のとおりである 6 つの 主 要 な 評 価 項 目 の 下 にさらに 評 価 項 目 が 細 分 化 され それぞれの 評 価 は 点 数 化 される その 合 計 点 (100 点 1,200 点 )が 当 該 職 の 評 価 点 になる この 評 価 点 を この 評 価 法 を 用 いて 評 価 した 他 の 自 治 体 の 職 の 評 価 点 と 給 与 の 相 関 関 係 ( 上 位 中 位 下 位 )の 情 報 と 比 較 することにより 当 該 職 の 級 と 給 与 を 決 定 す るというものである サウス シドニー 市 では 外 部 のコンサルタントを 用 いず 新 たな 職 が 必 要 とさ れた 時 45 名 からなる 職 務 評 価 委 員 会 を 設 置 して 検 討 する メンバーは 組 織 管 理 部 長 や 対 象 となる 職 の 内 容 を 熟 知 する 職 員 などから 成 り 新 たな 職 種 に 関 する 詳 細 な 資 料 を 基 に 必 要 な 場 合 には 参 考 人 との 面 接 を 行 うなど 公 平 かつ 公 正 な 職 の 格 付 けに 努 めている 評 価 方 式 は 前 述 OCR 社 のものと 類 似 し 6 つのカテゴリーをさらに 33 項 目 に 細 分 化 する 各 項 目 については 当 該 職 に 求 められる 能 力 の 度 合 いに 応 じて 点 数 を 加 点 していき その 合 計 点 数 ( 傾 斜 配 分 による 1,000 点 満 点 )に 応 じて 同 市 給 料 表 ( 第 5 章 参 照 )への 級 対 照 表 にあてはめ ジェネラル マネージャーの 承 認 を 経 て 同 市 の 給 料 表 の 中 に 反 映 されることになる こうした 手 続 きは 新 たな 職 種 が 生 じた 場 合 のみならず 肩 書 きや 業 務 内 容 の 変 更 を 生 じた 際 にも 組 織 管 理 部 による 諮 問 およびジェネラル マネージャーの 承 認 がある 場 合 実 施 される なお 表 -6 は サウス シドニー 市 で 運 用 される 6 つのカテゴリーと 33 項 目 の 分 類 表 表 -7 は 給 料 表 への 級 対 照 表 である 11
表 -6 職 の 格 付 け-6 つのカテゴリーと 33 項 目 の 分 類 表 カテゴリー 項 目 分 類 権 限 および 責 任 の 度 合 い 17 判 断 能 力 問 題 解 決 能 力 810 協 調 性 1119 資 格 及 び 経 験 2022 専 門 知 識 技 術 2325 管 理 能 力 2633 表 -7 職 の 格 付 け- 給 料 表 への 級 対 照 表 級 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 点 数 101 235 260 290 320 350 385 425 465 505 550 595 234 259 289 319 349 384 424 464 504 549 594 644 13 14 15 16 17 18 645 694 695 749 750 804 805 859 860 929 930 1,000 なお 給 料 表 (118 級 )については 第 5 章 参 照 12