ベクトルポテンシャルを 用 いた 流 体 流 れ 場 の 編 集 Editing Fluid Flow using Vector Potential 佐 藤 周 平 1 土 橋 宜 典 2,1 楽 詠 灝 3 岩 崎 慶 4,1 西 田 友 是 5,1 Syuhei SATO 1 Yoshinori DOBASHI 2,1 Yonghao YUE 3 Kei IWASAKI 4,1 Tomoyuki NISHITA 5,1 1 UEI リサーチ 1 UEI Research 2 北 海 道 大 学, JST CREST 2 Hokkaido University, JST CREST 3 コロンビア 大 学 3 Columbia University 4 和 歌 山 大 学 4 Wakayama University 5 広 島 修 道 大 学 5 Hiroshima Shudo University E-mail: syuhei.sato@uei.co.jp 1. はじめに 近 年, 映 画 や ゲ ー ム な ど の 映 像 制 作 において, 写 実 的 な 流 体 映 像 を 作 成 す る た め に, 物 理 ベ ー ス の シ ミ ュ レ ー シ ョン[2]がよ く 利 用 さ れ る.し か し, 物 理 ベ ー ス の シ ミ ュレ ー シ ョ ン は 非 常 に 計 算 コス ト が 高 い. その ため, 所 望 の 流 体 映 像 を 得 る た め には 異 な る パ ラ メ ー タセッ トで 何 度 も シ ミ ュ レ ー シ ョ ンを 繰 り 返 す 必 要 が あ り, 映 像 制 作 全 体 にかかる 時 間 が 非 常 に 長 くなる. 再 度 シ ミュ レ ー シ ョ ン を 実 行 せ ず に, 流 体 の 流 れ 場 を 編 集 で きれ ば, こ の よ う な 問 題 の 解 決 が 期 待 で き る. し か し, 単 純 に 流 れ 場 を 編 集 した 場 合, 流 体 の 非 圧 縮 性 が 保 たれ ず, 意 図 し な い 場 所 か ら 流 体 が 湧 き 出 し た り, 消 えた り す る. そ こ で, 本 研 究 で は, 非 圧 縮 性 を 保 持 し た 流 体 流 れ 場 の 編 集 手 法 を 提 案 する.こ の よ うな 編 集 を 実 現 する た め に, 我 々 は ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャル を 用 い て, 流 れ 場 を 表 現 す る. 提 案 手 法 で は, ま ず, 入 力 の 速 度 場 か ら ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル を 計 算 す る. 次 に, ユ ー ザ が 編 集 操 作 を 行 い, ベ ク ト ル ポ テ ンシ ャ ル に 編 集 に 対 応 した 処 理 を 行 う.そして, 編 集 後 の ベクトルポテン シ ャ ル に 対 し て, curl 演 算 子 ( )を 適 用 す る こ と で, 編 集 が 適 用 された 速 度 場 を 得 る. 任 意 のベクトルポテ ンシャル につ い て, が 成 り 立 つ た め, 我 々 の 手 法 は 常 に 非 圧 縮 性 を 保 証 す る こと が で き る. 提 案 手 法 を 用 い る こ と で,ユ ー ザ は 流 れ 場 を 編 集 し て, 様 々 な 流 れ 場 を 作 成 す る こ と が 可 能 で ある. 編 集 要 素 とし て は, 流 れ 場 の 変 形 と 障 害 物 の 追 加 を 扱 う. 2. 関 連 研 究 流 体 シミュレーション:Stam は,Navier-Stokes 方 程 式 を 安 定 に 解 く た め の 手 法 を 提 案 し た [23]. Stam の 手 法 以 降, 様 々 な 流 体 現 象 を シ ミ ュ レ ーシ ョ ン す る た め の 手 法 が 数 多 く 提 案 さ れ て い る [6-8,11,16]. 一 般 的 に, 所 望 の 流 体 ア ニ メ ー シ ョ ン を 得 る ため に は, シ ミ ュ レ ー シ ョ ンの 実 行 と パ ラ メ ー タ の 調 整 を 繰 り 返 し 行 う 必 要 が あ る. こ れ は 非 常 に 煩 雑 な 作 業 で あ る. 流 体 制 御 : 所 望 の 形 状 の 流 体 ア ニ メ ー シ ョ ン [5,22,26] や ユーザ 指 定 の 曲 線 に 沿 って 動 く 流 体 [14]を 作 成 する た め に,い く つ か の 制 御 手 法 が 提 案 さ れ て い る. これ ら の 手 法 は, 外 力 を 追 加 す る こ と によ っ て 流 体 の 動 き を 制 御 する. こ れ ら の 手 法 を 用 い て, 様 々 な 流 体 ア ニ メ ー シ ョン を 作 成 す る 場 合, ユ ー ザは 複 数 回 シ ミ ュ レ ー シ ョ ンを 実 行 す る 必 要 が あ る. 一 方 我 々 の 手 法 では, 再 度 流 体 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 実 行 する 必 要 な く, 様 々 な 流 体 アニ メ ー シ ョ ン を 作 成 す る こと が 可 能 で あ る. モデルリダクション: 流 体 シ ミ ュ レー シ ョ ン を 高 速 化 するための 一 つのアプローチとして,モデルリダクシ ョ ン 手 法 が 提 案 さ れ て い る [25,27].こ れ ら の 手 法 で は, 様 々 な 初 期 条 件, パ ラ メ ー タ で シ ミュ レ ー シ ョ ン を し て 得 ら れた 速 度 場 の セ ッ ト を 用 意 し, そ の 速 度 場 に 対 し 主 成 分 分 析 を 適 用 す る. そ し て, 主 成 分 を 基 底 関 数 と し て 用 い る こ と で,Navier-Stokes 方 程 式 を 高 速 に 計 算 で き る. し か し, こ れ ら の 手 法 では, 基 底 の 線 形 和 に よ り 流 れ 場 を 表 現 し て い る た め, 入 力 デ ー タ か ら 大 き く 異 なる 流 れ 場 は 作 成 す る こ と がで き な い. また, 様 々な 流 れ 場 を 作 成 可 能 と す る た めに は, 多 く の 速 度 場 デ ー タが 必 要 で あ り, そ の 結 果 とし て, デ ー タ ベ ー ス を 構 築 す る 段 階 で, 繰 り 返 し 流 体 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 実 行 しな け れ ば な ら な い. 上 記 の 手 法 を ベ ー ス と し て, 流 体 の 高 速 な 再 シミュレーションを 可 能 とする 手 法 が 提 案 されている[13]. この 手 法 では, 流 体 シミュ レ ー シ ョン に よ り 得 ら れ た 単 一 の 速 度 場 の セ ッ ト に 対 し 主 成 分 分 析 を 適 用 し, 基 底 関 数 を 得 る.そして,そ の 基 底 が 張 る 空 間 で Navier-Stokes 方 程 式 を 解 くこと で, 異 なる パ ラ メ ー タ 設 定 の 流 れ 場 を 効 率 的 に 計 算 す ることができる.し かし, こ の 手 法 でも,[25,27]の 手
法 と 同 様 に データの 線 形 和 として 表 現 できない 流 れ 場 は 作 成 でき な い. 従 っ て, 提 案 手 法 が 目 標 と す る よ う な, 全 体 的 な 流 れを 変 更 す る と い った こ と は で き な い. 手 続 き 的 手 法 : 手 続 き 的 な 手 法 は, 比 較 的 低 コストで 所 望 の 流 れ 場 を 作 成 す る こ と が で きる. こ の よ う な 手 法 の 一 例 と し て, 様 々 な 炎 の ア ニ メー シ ョ ン を 作 成 す る た め の 手 法 が 提 案 さ れ て い る [9,15].こ れ ら の 手 法 で は, 炎 の 経 路 を 表 す 曲 線 を 変 形 することで, 所 望 の 結 果 を 生 成 す る こ と が で き る. し か し, 物 理 的 な 正 確 さ は 考 慮 して い な い た め, 不 自 然 な 結 果 が 作 成 さ れ る 場 合 が あ る. ま た, 流 れ 場 は 非 圧 縮 性 を 満 た さ な い. Pighin らは,シミュレーションされた 流 れ 場 を, advected radial basis functions に より 表 現 し, 流 れ 場 を 編 集 するための 手 法 を 提 案 した[18].しかし,この 手 法 も 結 果 の 流 れ 場 に 対 し 非 圧 縮 性 を 保 証 し て い な い. シミュレーション 結 果 の 再 利 用 :Reveendran らはシミ ュ レ ー ショ ン に よ り 作 成 さ れ た 複 数 の 水 のアニメーシ ョンからその 間 の 状 態 を 補 間 する 手 法 を 提 案 した[19]. こ の 手 法 で は, 水 の 表 面 を 表 す メ ッ シ ュ デ ー タ か ら time-space mesh を 作 成 し,non-rigid iterated closest point method (non-rigid ICP)に よ り デ ー タ 間 の 対 応 を と る こ とで, 尤 も ら し い 中 間 の 状 態 の メ ッシ ュ を 得 ることが できる.しかし,この 手 法 は 水 面 を 表 すメッシュに 対 し て 適 用 す る も の で あ り, 我 々 が 扱 う よ う な 格 子 に 格 納 さ れ たデ ー タ を 扱 う こ と は 考 慮 され ていない. 我 々 は こ れ まで, 流 れ 関 数 を 用 い る こ とで, 非 圧 縮 性 を 保 持 して 2D の 流 れ 場 を 変 形 するための 手 法 を 提 案 した [20]. 本 稿 では,ベクトルポテンシャルを 用 いること で,3D の 流 れ 場 に 対 してそのような 変 形 を 実 現 するた め の 手 法 を 提 案 す る. ベクトルポテンシャルの 計 算 : 速 度 場 か ら ベク ト ル ポ テ ン シ ャル を 求 める 方 法 は, 数 値 流 体 力 学 の 分 野 にも 存 在 す る. 例 え ば, 渦 法 で は, 速 度 場 を 渦 度 の ベ ク ト ル ポ テ ンシ ャ ル で あ る と み な し, 渦 度 場 か ら 速 度 場 へ 変 換 する[4,10,17,28,29]. 我 々 の 知 る 限 り で は, 我 々 の 手 法 は 流 体 の 編 集 の た め に ベ ク ト ルポ テ ン シ ャ ル を 使 用 し た 初 の 方 法 で あ る. 本 稿 で は, 我 々 の 問 題 に 適 切 な 境 界 条 件 と 方 程 式 に つ い て 議 論 する. 3. 入 力 と 仮 定 提 案 手 法 の 入 力 は, 非 圧 縮 な 速 度 場 の 単 一 の セ ッ ト である.ここ で, はフレーム 番 号 を 表 し, は 入 力 の 速 度 場 の フ レ ー ム 数 で あ る. 提 案 手 法 で は, が 空 間 的 に 十 分 な め ら か で あ り, 単 連 結 な 閉 領 域 ( は 種 数 0)に 定 義 さ れ て いる と 仮 定 す 図 1: 提 案 手 法 の 概 要 る.また, の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 空 間 の 境 界 の 法 線 方 向 成 分 が で あ る と 仮 定 す る : (at ). ここで, は 境 界 の 法 線 で あ る. ま た, 密 度 場 と し て 表 現 さ れ る 流 体 が に 従 っ て 移 流 す ると 仮 定 す る. 提 案 手 法 で は, 速 度 場 を 置 き 換 え, 新 しい 速 度 場 に 従 っ て 流 体 を 移 流 さ せ る こ と で, 様 々 な アニ メ ー シ ョ ン を 作 成 す る. 以 下 で は, 簡 潔 な 表 記 の ため に を 省 略 する. 4. 提 案 手 法 の 概 要 速 度 場 や 密 度 場 を 直 接 操 作 す る 代 わり に, 提 案 手 法 で は, ベク ト ル ポ テ ン シ ャ ル を 用 いる こ と で, 編 集 さ れた 流 れ 場 に 対 し, 非 圧 縮 性 を 保 証 する. 単 連 結 な 閉 領 域 に おい て,Helmholtz -Hodge 分 解 の 定 理 [1,24]によ り, 十 分 に な め らか なベクトル 場 は 次 のように 分 解 で きる., (1) こ こ で, は ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル, は スカラー 場 で ある. の シミ ュ レ ー シ ョ ン 空 間 の 境 界 の 法 線 方 向 成 分 は であ る : at, (2) また, は 境 界 に 垂 直 で あ る. 我 々 の 入 力 の 速 度 場 は 非 圧 縮 な ので, で あり, 従 って,. (3) そ し て, 恒 等 式 が 任 意 の ベ ク ト ル 場 に 対 し て 満 たさ れ る た め, ベ ク ト ル ポ テン シ ャ ル の 回 転 は 常 に 非 圧 縮 条 件 を 満 た す. そ の た め, ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル に 対 し 編 集 を 行 う こ と で, 結 果 の 流 れ 場 に 非 圧 縮 性 を 保 証 す る こ と が で き る. 図 1 に 提 案 手 法 の 概 要 を 示 す. 視 覚 的 にわかりやす く す る ため, 全 ての 3 次 元 ベ ク トル 場 を, 2 次 元 ベ ク
図 3: 障 害 物 の 追 加 図 2: 格 子 の 変 形 ト ル 場 で 図 示 し た. 前 処 理 で は, まず, 格 子 ベ ー ス の 方 法 に より, 非 圧 縮 性 Navier-Stokes 方 程 式 を 解 く こ と で, 入 力 の 速 度 場 を 作 成 す る.そ し て, 各 フレームの 速 度 場 をベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル へ 変 換 す る.ラ ン タ イ ム で は, ユ ー ザ が 編 集 操 作 を 行 い, そ の 編 集 に 対 応 す る 処 理 を ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル に 適 用 す る こ と で, 編 集 後 のベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル を 得 る.そ し て,curl 演 算 子 を に 適 用 す る こ と で, 編 集 後 の 速 度 場 を 生 成 す る. 最 後 に, に 従 って 密 度 場 を 移 流 させる. 5. ベクトルポテンシャルの 計 算 Helmholtz-Hodge 分 解 の 定 理 に 従 い, 入 力 の 非 圧 縮 な 速 度 場 は,ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル を 用 い て, 式 (3) の よ う に 表 す こ と が で き る. た だ し, こ の ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル は 通 常 一 意 に 求 め る こ と が で き な い. こ れは, が を 満 た す と 仮 定 し た 場 合, あ る ベ ク ト ル ポテ ン シ ャ ル も, 任 意 の ス カラ ー 場 に 対 し て, 定 義 より, を 満 た す た め で あ る. 我 々は, 時 間 変 化 するベクトル 場 の 変 形 に 適 す る よう,この 自 由 度 を 拘 束 する. 以 下 では 編 集 操 作 の う ち 変 形 を 例 と し て 説 明 す る. ま ず, 式 (1) に 従 い, ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル を のように 分 解 する.ここで, はベクト ル 場, はス カ ラ ー 場 で あ る.そ して, 変 形 を 表 す 関 数 により を 変 形 す る. は, 例 え ば, 各 位 置 ベク ト ル を 新 しい 位 置 へマップする 関 数 を 表 す. この 変 形 では, ベ ク ト ル 値 関 数 は の よ う に 変 換 され, と 記 述 するこ と と す る.こ れ に よ り 我 々 は, ベ ク ト ル 値 関 数 と に 対 して, を 得 る. そ し て, 変 形 後 の ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル は 以 下 の よ う に な る.. (4) 上 式 に curl 演 算 子 を 適 用 した 場 合, 任 意 の 変 形 に 対 し て, は 常 に 0 に な ると は 限 ら な い.そ の た め, もし に 時 間 的 な コヒーレンスがない 場 合, は 結 果 の 流 れ 場 に 意 図 し な い 揺 ら ぎを 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ る. 従 って, 我 々はそのような 問 題 を 避 けるた めに, の 値 を 拘 束 する. 本 稿 で は 特 に, 以 下 の 設 定 により を 強 制 す る. at, (5) at. (6) 速 度 場 か ら 所 望 の ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル を 得 る た め に, 我 々 は ま ず, 式 (3)の 両 辺 に curl 演 算 子 ( ) を 適 用 し 次 式 を 得 る., (7) 我 々 は こ の ポ ア ソ ン 方 程 式 を 境 界 条 件,, の 下 で 解 くこ と に よ り,ベ ク ト ル ポ テ ンシ ャ ル を 得 る( 付 録 A に 証 明 を 示 す). 式 (7) を 数 値 的 に 解 く た め に, biconjugate gradient stabilized method (BiCGSTAB)を 本 稿 で は 採 用 し た. 6. 編 集 後 の 速 度 場 の 生 成 本 手 法 はベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ル に 対 し て, ユ ー ザ の 編 集 操 作 に 対 応 し た 処 理 を 適 用 す る. 本 稿 では, 編 集 要 素 と して 変 形 お よ び 障 害 物 の 追 加 を 扱 う. 流 れ 場 の 変 形 : 本 稿 では, 制 御 点 や 制 御 パス( 図 2 は 制 御 パ スの 例 ) を 用 いて,2 次 元 ( 図 2 の 平 面 ) で 変 形 操 作 を 行 い, そ れを 3 次 元 格 子 の 方 向 の 各 2 次 元 ス ラ イス に 適 用 す る. 変 形 手 法 には 移 動 最 小 二 乗 法 に 基 づく 方 法 [21]を 用 いた.そして, 変 形 後 のベクト ル ポ テ ンシ ャ ル を 得 る た め に, 我 々 は ま ず が 格 納 さ れ て い る 変 形 後 の 格 子 を, を 格 納 す る た め の 直 交 格 子 で 再 サン プ リ ン グ す る. そ し て 変 形 後 の ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャル の 正 確 な 方 向 を 得 るために,ベクトルポテ ン シ ャ ルの 値 に 変 形 に 対 応 する 局 所 的 な 回 転 を 適 用 す る. 提 案 手 法 では,[21]の 方 法 に 限 らず, 画 像 やメッ シ ュ を 変 形 す る た め の 任 意 の 変 形 手 法 を 適 用 できる. しかし, 格 子 が 裏 返 るような 変 形 が 適 用 された 場 合, 裏 返 り がベ ク ト ル 場 に 不 連 続 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ り, そ の 結 果 大 きな 速 度 が 生 成 される 場 合 がある.ま た, 変 形 の 度 合 い が 大 き い 場 合, 速 度 が 意 図 せ ず 大 き く 変 化 して し ま う. こ れ は, 変 形 が 大 き く な る と, 格 子 点 間 のエ ッ ジ の 長 さ が 変 化 し, の 値 が 大 き く 変 化 すること が 原 因 で あ る.
図 4: 非 圧 縮 性 を 保 っ た 変 形 の 重 要 性 図 5: 提 案 手 法 と 流 体 シ ミ ュ レ ー ショ ン に よ る 結 果 と の 比 較 表 1: 格 子 数 お よ び 計 算 時 間 図 格 子 数 T ns T p T r 5 256x128x384 146 298 2.9 7,9 192x192x512 234 407 4.4 ポ テ ン シャ ル が 計 算 された 後, に curl 演 算 子 を 適 用 す る こ と で, 編 集 後 の 速 度 場 を 得 る. 結 果 の 速 度 場 は, が 0 と な る た め, 常 に 非 圧 縮 性 を 満 足 す る. 図 6: 障 害 物 の 追 加 の 例 障 害 物 の 追 加 : 障 害 物 の 追 加 は, Bridson らの 方 法 [3] を 用 い る. こ の 論 文 で は, ノ イ ズ 関 数 を 用 い て ポ テ ン シ ャ ル 場 を 生 成 す る こ と で, 手 続 き 的 に 流 体 の よ う な 流 れ 場 を 作 成 で き る. そ し て, ポ テン シ ャ ル 場 に 対 し 以 下 の 式 を 適 用 す る こ と で, 非 圧 縮 性 を 保 ったまま 障 害 物 の 影 響 を 考 慮 した 流 れ 場 を 生 成 できる., (8) ここで, は ある 格 子 点 ( ここでは 図 3 の 赤 点 )から 最 も 近 い 距 離 に あ る 障 害 物 上 の 点 の 法 線 ( 図 3 赤 矢 印 ) を 表 す. ま た, は 格 子 点 と 最 も 近 い 障 害 物 上 の 点 と の 距 離 に 応 じ て 変 化 す る 係 数 で あ り, 障 害 物 に 近 い 格 子 点 ほど 0 に 近 くなる( 図 3 緑 と 橙 色 の グ ラ デ ー シ ョ ン 部 分 : 各 色 が 濃 い ほ ど が 0 に 近 い). 上 記 の 方 法 に つ い て, 詳 細 は 文 献 [3]を 参 照 して い た だ き た い. ユ ー ザ が 上 記 の 編 集 操 作 を 行 い, 編 集 後 のベクトル 7. 実 験 結 果 計 算 に 使 用 し た PC は,CPU が Intel Core i7 3930K で あ り,メ モ リ は, 32GB である. 図 6,7,8 お よび 図 9 の 右 の 画 像 は 物 理 ベ ー ス レ ン ダ ラ の "Mitsuba"[12]を 用 い て レ ンダ リ ン グ し た. な お 本 節 のア ニ メ ー シ ョ ン 例 に つ い ては, 補 足 資 料 の 動 画 フ ァ イル を 参 照 し て い た だ き た い. 非 圧 縮 を 保 った 変 形 の 重 要 性 : 速 度 場 の 非 圧 縮 性 を 保 持 す る こと は, 全 体 の 質 量 を 保 存 する た め に 重 要 な 要 素 で あ る. 図 4 にこの 重 要 性 を 示 す. 視 覚 的 にわかり や す く する た め, 2D の 流 れ 場 を 用 い た. 2D において ベ ク ト ルポ テ ン シ ャ ル は 流 れ 関 数 と 呼 ば れ る ス カ ラ ー 関 数 と して 表 さ れ る. 本 実 験 で は, 我 々 の 従 来 手 法 [20] を 用 い て, 2D の 速 度 場 から 流 れ 関 数 を 計 算 した. こ の 例 で は, ゼ ロ で な い 密 度 場 が 2D の 流 体 シミュ レ ー シ ョン に よ り 生 成 さ れ た 時 間 変 化 す る 速 度 場 に し た が っ て 移 流 さ れ る. シ ミ ュ レ ー ショ ン 空 間 の 中 央 下 端 に は, 毎 フ レ ー ム 一 定 の 上 向 き の 速 度 が セ ッ ト さ れ
図 7: 様 々 な ア ニ メ ーシ ョ ン の 作 成 例 図 9: 魔 法 のランプから 立 ち 上 る 煙 の 例 図 8: 複 数 の 煙 突 から 立 ち 上 る 煙 の 例 る. ま た, ラ ン タ イ ム に お い て, 密 度 の 追 加 や 除 去 は 行 わ な い. 図 4 の 左 3 つ の 画 像 は, 密 度 場 を 可 視 化 し た も の であ り, 各 画 像 の 左 上 の 図 は 変 形 に 用 い た 格 子 である.ま た, 右 上 の 図 は 赤 色 の 矩 形 で 示 し た 領 域 の 速 度 場 の 発 散 を 示 し た も の で あ り, 青, 緑,および 赤 色 は そ れぞ れ マ イ ナ ス, ゼ ロ, お よび プラスの 発 散 を 表 す. 図 4 右 のグラフは 全 体 の 質 量 の 偏 差 を 表 す. 偏 差 は の よ う に 算 出 し, は シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 領 域 全 体 に わ た っ て 密 度 を 積 分 する こ と で 算 出 さ れ る. 流 れ 関 数 を 使 わ ず に 直 接 速 度 場 を 変 形 し た 場 合, 結 果 の 速 度 場 に 非 ゼ ロ の 発 散 が 生 じ, そ の 結 果 全 体 の 質 量 が 初 期 値 か ら 大 幅 に 逸 脱 し て しま う.こ れに 対 し, 非 圧 縮 性 が 保 た れ て い る 場 合, 質 量 の 時 間 的 な 偏 差 を 十 分 に 減 少 さ せ る こ と が で き る.ま た, 我 々 は,3D の 流 れ 場 の 変 形 に つ い て も 同 様 の 傾 向 を 確 認 し て い る. 編 集 結 果 とシミュレーション 結 果 との 比 較 : 図 5 に 提 案 手 法 によ り 作 成 さ れ た 結 果 と 流 体 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 作 成 さ れ た 結 果 の 比 較 を 示 す. 図 5a は 入 力 の 煙 の ア ニ メー シ ョ ン で あ り, 図 5b -d は 流 体 シミュレー シ ョ ン によ り 作 成 さ れ た 結 果 で あ る. シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に は, 煙 が 右 に 流 れ る よ う, シ ミュ レ ー シ ョ ン 空 間 の 左 端 に 一 様 な 外 力 を 適 用 し て い る. 図 5b-d は 提 案 手 法 に よ り 作 成 さ れ た 結 果 で あ り, 変 形 に よ り 図 5b -d の よ う な 流 れ を 模 倣 で き る こ と を 示 す. 変 形 が 小 さ い 場 合, 我 々 の 結 果 は シ ミ ュ レ ー シ ョン に 近 い 結 果 が 作 成 で き る. ま た, 比 較 的 大 き な 変 形 で も 尤 も ら し い ア ニ メ ー ショ ン を 作 成 で き る. 3D の 流 体 の 編 集 : 表 1 に 各 結 果 の 格 子 数 と 計 算 時 間 を 示 す. 計 算 時 間 の 単 位 は[sec/frame]であ る.T ns は 流 体 シ ミ ュ レー シ ョ ン の 時 間,T p および T r は それぞれ 提 案 手 法 に おけ る 前 処 理 と ラ ン タ イ ム の 計 算 時 間 で あ る. 提 案 手 法 で は, シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 時 間 に 比 べ, 前 処 理 に 約 2 倍 の 計 算 時 間 がかかっている.しかし,ラン タ イ ム の 計 算 は, 約 50 倍 高 速 に なっ て お り, 所 望 の 映 像 を 作 成 す る 際 の 試 行 錯 誤 を 効 率 的 に 行 う こ と が で き る.ま た, 提 案 手 法 で 行 う 計 算 は, 前 処 理 での Navier- Stokes 方 程 式 とポアソン 方 程 式,ランタイムでの 変 形 処 理 と curl 演 算 であり, 並 列 化 が 有 効 である. 図 6 は, 障 害 物 を 追 加 し た 場 合 の 例 である. 格 子 数 は 256x256x384 で あ る. 図 6a は, 入 力 の 流 れ 場 で あ り, 図 6b は,a に 障 害 物 ( 赤 球 )を 追 加 し その 影 響 を 考 慮 し た 流 れ 場 で あ る. 障 害 物 が 追 加 され た こ と で, 球 の 下 に 煙 が 滞 留 しており, 密 度 が 濃 くなっているのがわ か る. また, そ の 影 響 で, 球 の 上 方 に 立 ち 上 る 煙 の 量 が 入 力 に 比 べ て 少 な く な っ て お り, 障 害 物 を 考 慮 し た 影 響 を 確 認 す る こ と が で き る. 単 一 の 流 れ 場 ( 図 7a)か ら, 提 案 手 法 は 様 々 な 流 れ 場 を 作 成 す る こ と が で き る. こ の 例 で は 格 子 を 水 平 方 向 や 鉛 直 方 向 に 縮 め た り, 鉛 直 方 向 に 引 き 延 ば し た り す る こ とで, 入 力 と 比 べ, 細 い 煙 ( 図 7b), 太 い 煙 ( 図 7c), 高 い 煙 ( 図 7d)の ア ニ メ ー シ ョン を 作 成 で き る.
各 画 像 の 左 上 の 図 は 変 形 に 用 い た 格 子 で あ る. 図 8 は, 図 5b-d の 結 果 を 使 用 して, 複 数 の 煙 突 から 立 ち 上 る 煙 のシーンを 作 成 し た 例 であ る.こ のよ う に, 提 案 手 法 で は, 単 一 の デ ー タ か ら 複 数 の 流 体 アニメー シ ョ ン を 効 率 的 に 作 成 で き る. 図 9 に 魔 法 の ラ ン プ か ら 立 ち 上 る 煙 の 例 を 示 す. 図 9a は 入 力 の 流 れ 場 で あ り, b は 提 案 手 法 に よ り 得 ら れ た 結 果 であ る. 図 9a で は, 煙 が 垂 直 に 立 ち 上 っ て い る. 図 9b で は,a から 蛇 行 するような 流 れを 作 成 した.ま た, 図 9 右 の 画 像 は b の 結 果 を 用 いて 作 成 し た. 提 案 手 法 で は, こ の よ う な シ ミ ュ レ ー ショ ン の パ ラ メ ー タ 調 整 だ けで は 作 成 が 難 し い 流 れ も 作 成 で き る. リ ミ テ ー シ ョ ン: 提 案 手 法 は ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル を 変 形 す るた め, 速 度 場 において 変 形 結 果 が 直 観 的 でな い 場 合 があ る. 例 え ば,ベ ク ト ル ポテ ン シ ャ ル の x,y, z 成 分 が, において 組 み 合 わ さ れ て いるため, 平 面 に おい て ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ルを 変 形 し た 場 合, 平 面 に 垂 直 な 方 向 に も 速 度 場 が 変 化 す る. ま た, 変 形 が 非 常 に 大 き く な る と, 同 様 に 直 観 的 な 変 形 が 難 し い. そ の た め, 今 後 変 形 の 度 合 い や 種 類 に 応 じ て 起 こ る 変 化 を 定 量 化 す る 予 定 で あ る. 8. まとめと 今 後 の 課 題 本 稿 で は, 非 圧 縮 性 を 保 ち つ つ 流 体 の 流 れ 場 を 編 集 す る 手 法 を 提 案 し た. 非 圧 縮 性 は 入 力 の 流 れ 場 を ベ ク ト ル ポ テン シ ャ ル に 変 換 す る こ と で 満 足 さ れ る.ま た, curl-free な 成 分 を 含 まないようベ クト ル ポ テ ン シ ャ ル に お け る 自 由 度 を 拘 束 するた め の 方 法 も 提 案 した. 今 後 の 課 題 と し て, よ り 直 観 的 な 変 形 の 実 現 が 挙 げ ら れ る.ま た, もう 一 つの 流 体 の 物 理 法 則 である 運 動 量 保 存 も 満 た し た 編 集 方 法 の 開 発 が 挙 げ ら れ る. 文 献 [1] Bhatia, H., Norgard, G., Pascucci, V., Bremer, P.: The helmholtz-hodge decomposition - a survey. IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics 19(8), pp. 1386-1404 (2013) [2] Bridson, R.: Fluid Simulation for Computer Graphics. AK Peters (2008) [3] Bridson, R., Hourihan, J., Nordenstam, M.: Curl-noise for procedural fluid flow. ACM Transactions on Graphics 26(3), Article 46 (2007) [4] Cottet, G.H., Koumoutsakos, P.D.: Vortex Methods: Theory and Practice. Cambridge University Press (2000) [5] Fattal, R., Lischinski, D.: Target-driven smoke animation. ACM Transactions on Graphics 23(3), 439 446 (2004) [6] Fedkiw, R., Stam, J., Jensen, H.W.: Visual simulation of smoke. In Proceedings of ACM SIGGRAPH 2001, pp. 15 22 (2001) [7] Feldman, B.E., O Brien, J.F., Arikan, O.: Animating suspended particle explosions. In Proceedings of ACM SIGGRAPH 2003, pp. 708 715 (2003) [8] Foster, N., Fedkiw, R.: Practical animation of liquids. In Proceedings of ACM SIGGRAPH 2001, pp. 23 30 (2001) [9] Fuller, A.R., Krishnan, H., Mahrous, K., Hamann, B., Joy, K.I.: Real-time procedural volumetric fire. In Proceeding of the 2007 symposium on Interactive 3D graphics and games, pp. 175-180 (2007) [10] Gamito, M.N., Lopes, P.F., Gomes, M.R.: Two-dimensional simulation of gaseous phenomena using vortex particles. In Proceedings of the 6th Eurographics Workshop on Computer Animation and Simulation, pp. 3 15. Springer (1995) [11] Hong, W., House, D.H., Keyser, J.: Adaptive particles for incompressible fluid simulation. The Visual Computer 24(7 9), 535 543 (2008) [12] Jakob, W.: Mitsuba renderer (2010). Http://www. mitsuba-renderer.org [13] Kim, T., Delaney, J.: Subspace fluid re-simulation. ACM Transactions on Graphics 32(4), Article 62 (2013) [14] Kim, Y., Machiraju, R., Thompson, D.: Path-based control of smoke simulations. In Proceedings of the 2006 ACM SIGGRAPH/Eurographics symposium on Computer animation, pp. 33 42 (2006) [15] Lamorlette, A., Foster, N.: Structural modeling of flames for a production environment. ACM Transactions on Graphics 21(3), 729 735 (2002) [16] Nguyen, D.Q., Fedkiw, R., Jensen, H.W.: Physically based modeling and animation of fire. ACM Transactions on Graphics 21(3), 721 728 (2002) [17] Park, S.I., Kim, M.J.: Vortex fluid for gaseous phenomena. In Proceedings of the 2005 ACM SIGGRAPH/Eurographics symposium on Computer animation, pp. 261 270 (2005) [18] Pighin, F., Cohen, J., Shah, M.: Modeling and editing flows using advected radial basis functions. In Proceedings of the 2004 ACM SIGGRAPH /Eurographics Symposium on Computer Animation, pp. 223 232 (2004) [19] Raveendran, K., Wojtan, C., Thuerey, N., Turk, G.: Blending liquids. ACM Transactions on Graphics 33(4), Article 137 (2014) [20] Sato, S., Dobashi, Y., Iwasaki, K., Yamamoto, T., Nishita, T.: Deformation of 2D flow fields using stream functions. In Proceedings of SIGGRAPH Asia 2014 Technical Briefs, Article 4 (2014) [21] Schaefer, S., McPhail, T., Warren, J.: Image deformation using moving least squares. ACM Transactions on Graphics 25(3), pp. 533 540 (2006) [22] Shi, L., Yu, Y.: Taming liquids for rapidly changing targets. In Proceedings of the 2005 ACM SIGGRAPH /Eurographics symposium on Computer animation, pp. 229 236 (2005) [23] Stam, J.: Stable fluids. In Proceedings of ACM SIGGRAPH 1999, Annual Conference Series, pp. 121 128(1999) [24] Tong, Y., Lombeyda, S., Hirani, A.N., Desbrun, M.: Discrete multiscale vector field decomposition. ACM Transactions on Graphics 22(3), 445 452 (2003) [25] Treuille, A., Lewis, A., Popovic, Z.: Model reduction for real-time fluids. ACM Transactions on Graphics
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