外 彼 の 作 品 は あ ま り 海 外 で 知 ら れ て い な い 彼 の 作 品 の 中 で 現 在 の 日 本 で 美 人 画 が 最 も 知 ら れ て い る 題 材 で あ り 夢 二 の デ ザ イ ン は 今 日 ま で 人 気 が 高 い 例 えば 日 本 で は 夢 二 デ

大 正 ロマンにおけるアール ヌーヴ ォ ー の 受 容 ミ ュ ン ヘ ン 大 学 博 士 課 程 サ ビ ー ネ シ ェ ン ク ( S a b i n e S h e n k ) 20 世 紀 の 前 期 の 特 色 はデモクラシー 西 欧 の 文 化 的 な 影 響 自 我 を 強 調 す るモダニストを 内 包 す る ス ロ ー ガ ン で あ る 大 正 時 代 ( 1 9 1 2-1 9 2 6 ) の 日 本 は 特 別 な 雰 囲 気 を も っている 明 治 時 代 末 大 正 時 代 を 包 括 し て 昭 和 初 期 ま での 時 代 は ミ ニ チ ェ ロ シ ャ ロ ン 氏 により 大 規 模 な 大 正 時 代 グ レ タ ー タ イ シ ョ ー ( G r e a t e r T a i s h ō ) と 呼 ばれていた 1 この 時 代 に 関 係 の あ る 表 現 大 正 ロ マ ン は ど の よ う な 意 味 を 持 っ て い る の で あ ろ う か 大 正 時 代 は 構 造 的 な 変 化 が あ り 伝 統 を 打 破 してア ス ペ ク ト も 多 く 同 時 にロ マ ン ティシズムに 対 しての 不 安 も 内 包 し て いる 2 高 畠 華 宵 大 正 ロ マ ン 館 の 館 長 であり 大 正 イ マ ジ ュ リ ィ 学 会 の 副 会 長 の 高 畠 澄 江 氏 に よ る と この 不 安 は 当 時 の 人 々が 感 じ ら れ て い た こ と で あ り 大 正 ロ マ ン ま た は 大 正 浪 漫 は 戦 後 1 9 7 0 年 代 の 言 葉 だ そうである 20 世 紀 前 期 の 大 正 時 代 固 有 の 感 情 を 表 現 す る ア ー ティス ト の 中 で 竹 久 夢 二 ( 1 8 8 4-1 9 3 4 ) 以 下 夢 二 と 略 記 3 が 理 想 像 と な り 彼 は そ の 時 代 の 画 家 の 中 で 特 に 大 正 ル ッ ク を 表 現 し た と い わ れ て い る 4 現 在 に 至 る ま で 夢 二 は 日 本 においてそ の 名 を 知 ら れ て い る が 先 の ミ ニ チ ェ ロ シ ャ ロ ン 氏 の 指 摘 以 1 M i n i c h i e l l o, S h a r o n A. ( 2 0 0 1 年 ) G r e a t e r T a i s h o. J a p a n 1 9 0 0-1 9 3 0 B r o w n, K e n d a l l H. 篇 T a i s h ô c h i c. J a p a n e s e m o d e r n i t y, n o s t a l g i a, a n d d e c o S e a t t l e : U n i v e r s i t y o f W a s h i n g t o n P r e s s ( 9-15 頁 ) 9 頁 2 竹 久 夢 二 高 畠 華 宵 蕗 谷 虹 児 展 : 大 正 昭 和 の ロ マ ン 画 家 た ち 展 覧 会 カ タ ロ グ 毎 日 新 聞 社, 1 9 9 4, 7 頁 3 本 名 は 竹 久 茂 次 郎 号 と よ ば れ て い る ア ー テ ィ ス ト 名 前 は 夢 二 で あ る 4 K r i t t e r, U l r i c h v o n 篇 (19 9 6 年 ) J a p a n i s c h e B u c h i l l u s t r a t i o n. 1 8 5 0-1 9 8 5. U n b e k a n n t e I l l u s t r a t i o n s g r a p h i k s e i t J a p a n s Ö f f n u n g z u m W e s t e n ( L i t e r a r i s c h e B i l d w e l t e n d e s 2 0. J a h r h u n d e r t s. T e i l V ) G ö t t i n g e n : G o l t z e V e r l a g 1 2 9 頃 または T h o r n t o n, R i c h a r d S. ( 1 9 8 9 年 ) J a p a n e s e p o s t e r s : T h e f i r s t 1 0 0 y e a r s D e s i g n I s s u e s - D e s i g n i n A s i a a n d A u s t r a l i a 6 巻 1 号 (4-1 4 頃 ) 9 頃 1

外 彼 の 作 品 は あ ま り 海 外 で 知 ら れ て い な い 彼 の 作 品 の 中 で 現 在 の 日 本 で 美 人 画 が 最 も 知 ら れ て い る 題 材 で あ り 夢 二 の デ ザ イ ン は 今 日 ま で 人 気 が 高 い 例 えば 日 本 で は 夢 二 デ ザ イ ン に 基 づ く 着 物 品 揃 えが 売 ら れ て い る 夢 二 の 作 品 は 様 々 な ジ ャ ン ル が 該 当 す る 夢 二 は デ ザ イ ン の ほ か に 水 彩 画 油 絵 挿 絵 ス ッ ケ チ な ど を 描 く 作 家 で あ り 詩 人 で も あ っ た また 多 数 の ス ケ ッ チ ブ ッ ク の 他 5 表 紙 口 絵 千 代 紙 封 筒 な ど の 文 具 も 少 な く な い 一 番 緻 密 な デ ザ イ ン の 例 は 夢 二 と 妻 の 岸 た ま き が 一 緒 に 1914 年 に 開 業 した 港 屋 絵 草 子 店 と い う 店 の 作 品 で あ る その 店 は 1 9 1 6 年 に 閉 店 し た が 夢 二 の デ ザ イ ン に 基 づく 文 具 は 現 在 も 京 都 や 東 京 の 港 屋 と 呼 ば れ る 店 で 売 られてい る また 京 都 の 大 正 ロ マ ン 亭 と 称 する 大 正 時 代 の ス タ イ ル を 中 心 と す る カ フ ェ や レ ス ト ラ ン も 増 加 傾 向 が ある そ の 結 果 現 在 は 大 正 時 代 に 関 するも の の ブ ー ム が あ ると 思 わ れ る 海 外 の 美 術 商 や 美 術 館 も 夢 二 と 彼 の 時 代 の 画 家 の 作 品 へ の 興 味 が 高 ま っ て い る 例 え ば ア ム ス テ ル ダ ム の ニ ホ ン ノ ハンガ ( N i h o n n o h a n g a ) 6 という 私 立 の 美 術 館 は 海 外 で の 夢 二 の 作 品 の コ レ ク シ ョ ン の 中 の 一 番 大 き い も の となった その 多 角 的 な 作 品 の ゆえに 芸 術 家 と し て の 夢 二 の 位 置 づ け を 定 義 す る こ とは 困 難 で あ る 作 品 は 非 常 に 人 気 を 得 た が 多 く の 作 品 は コ マ ー シ ャ ル ア ー ト と 見 な さ れ て い た た め 同 時 代 の 美 術 界 は 彼 を 画 家 と し て 認 めてい な か っ た その 結 果 1 9 6 0 年 代 ま で 日 本 美 術 史 に お い て も 彼 に つ い て の 研 究 は あ ま り な かった 7 1970 年 代 は 大 正 時 代 の 興 味 が 高 まり 夢 二 の 作 品 は 日 本 美 術 の 全 集 に も 含 ま れ る よ う に な っ た 8 こ れと 異 なり 近 年 に い た る ま で 海 外 で の 研 究 は 少 な い 海 外 の 著 書 は 1980 年 代 ま で 言 及 された こ と が な い 9 現 在 の 20 世 紀 前 期 ま た は 大 正 時 代 の 再 人 気 の 影 響 で 学 術 的 な 興 味 も 高 まって い 5 恩 地 幸 四 郎 二 よ る と ス ッ ケ チ ブ ッ ク は 五 百 冊 以 上 が あ る 恩 地 孝 四 郎 ( 1 9 3 6 年 ) 書 窓 夢 二 の ス ケ ッ チ 帖 抄 夢 二 追 憶 特 輯 6 巻 6 号 1 6 6 / 1 6 7 頁 6 この 美 術 館 は 2009 年 に 開 館 さ れ て い た 館 名 は 日 本 の 版 画 と い う 美 術 雑 誌 の 関 係 が あ る と い う 美 術 館 の 焦 点 は 二 十 世 紀 の 前 期 の 版 画 と な る 7 M e r r i t t, H e l e n と Y a m a d a N a n a k o 篇 ( 1 9 9 0 年 ) M o d e r n J a p a n e s e w o o d b l o c k p r i n t s. T h e e a r l y y e a r s H o n o l u l u : U n i v e r s i t y o f H a w a i i P r e s s 3 1 頁 8 例 え ば 竹 久 夢 二 は 木 村 重 圭 と 一 緒 に 1978 年 の 集 英 社 で 出 版 さ れ た 現 代 日 本 美 人 画 全 集 の 第 8 巻 に は い て い る 9 M e r r i t t, H e l e n と Y a m a d a N a n a k o 篇 ( 1 9 9 0 年 ), 同 書 より 31 頁 2

る と 思 われる 10 2 0 0 8 年 に は 金 沢 美 術 工 芸 大 学 博 士 学 位 申 請 論 文 が 夢 二 をテ ーマとしており 更 に 最 近 は 二 つ の 博 士 論 文 が 海 外 で 作 成 中 で あ る 11 今 で も 人 気 の あ る 夢 二 の ス タ イ ル は 国 際 的 な 要 素 が 強 い と 思 わ れ る た とえば 抽 象 美 術 と く に ロ シ ア の 未 来 派 の 様 式 が 多 い 夢 二 の 作 品 も あ る 12 他 方 で 夢 二 は ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー を 受 容 す る ア ー ティス ト と よ ば れ て い る 同 時 代 の 橋 口 五 葉 ( 1 8 8 0-1 9 2 1 ) 藤 島 武 二 ( 1 8 6 7-1 9 4 3 ) など 13 または 杉 浦 非 水 ( 1 8 7 6-1 9 6 5 ) 小 林 か い ち ( 1 8 9 6-1 9 6 8 ) の 作 品 は そ の 受 容 を 反 映 し て おり ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の ス タ イ ル は 1 9 0 0 1 9 2 3 年 代 に 日 本 で 流 行 し た ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー と い う 言 葉 は 世 紀 末 の 時 代 か ら 1910 年 頃 までの 美 術 的 な 表 現 で あ る この 表 現 はシ グ フ リ ド ビング 氏 (S i e g f r i e d B i n g ) 14 の メ ソ ン デ ル ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー ( M a i s o n d e l ' A r t N o u v e a u ) と い う パ リ に あ る ア ー ト ギ ャ ラ リ ー か ら 展 開 し た 15 同 じ 意 図 に 基 づ き な が ら ヨ ー ロ ッ パ で は 地 域 に よ っ て 違 う 名 前 が 生 ま れ た た と え ば ド イ ツ に お け る 同 ス タ イ ル は 青 春 式 と よ ば れ て い る ド イ ツ 語 で ユ ー ゲ ン ド は 青 春 の 意 味 を 持 ってお り ス タ イ ル は ユーゲンド シ ュ テ ィ ー ル ( J u g e n d s t i l ) と 呼 ば れ ている 名 前 は そ の ス タ イ ル を 示 す ミ ュ ン チ ェ ン の 雑 誌 ユ ー ゲ ン ド ミ ュ ン ヘネル ツァイ ト シ ョ リ フ ト フ ィ ア クンスト ウ ン ド レ ベ ン ( J u g e n d. M ü n c h n e r W o c h e n z e i t s c h i f t f ü r K u n s t u n d L e b e n ) ( 青 春 絵 入 10 高 橋 氏 の 博 士 論 文 は 竹 久 夢 二 論 : な ぜ 夢 二 式 は 社 会 現 象 と な り え た か を 対 象 と す る こ れ に 基 づ く 2010 年 に 出 版 されていた 竹 久 夢 二 : 社 会 現 象 としての 夢 二 式 と い う 著 書 は 最 近 の 参 考 図 書 と な る 11 その 論 文 はハーバ ード 大 学 や ミ ュ ン ヘ ン 大 学 の プ ロ ジ ェ ク ト で あ る 12 例 え ば ブ ル リ ュ ー ク ( 1 8 8 2-1 9 6 7 ) と の 出 会 う は も う 調 べ ら れ て い る ( 1 9 8 6 年 ) C a n a d i a n A m e r i c a n S l a v i c s t u d i e s 20 巻 1 2 号 ( 1 1 1-1 2 5 頃 ) 1 1 7-119 頁 13 例 えば 装 幀 の 出 来 に は 日 本 に ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー を 伯 仲 す る 若 林 操 子 ( 2 0 1 1 年 ) ス チ ュ ー デ ィ オ 特 別 冬 号 ( 1889-1 8 9 9 年 ) 特 別 冬 号 ( 1 8 9 9-1 9 0 0 年 ) と 五 葉 のア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 様 式 に よ る 装 幀 ) ( 172-177 頃 ) 橋 口 五 葉 展 : 生 誕 130 年 東 京 新 聞 (2011 年 8 月 13 日 - 9 月 25 日 : 北 九 州 市 立 美 術 館 分 館, 2 0 1 1 年 10 月 4 日 - 11 月 6 ) 1 7 5, 1 7 6 頁 14 ま た は サ ム エ ル ビ ン グ ( S a m u e l B i n g )と 呼 ばれる 15 木 田 拓 也 ( 2005) 日 本 の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 1900-1 9 2 3 新 し い 芸 術 と し て の 工 芸 東 京 国 立 近 代 美 術 館 な ど 篇 日 本 の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 1900-1 9 2 3 工 芸 と デ ザ イ ン の 新 時 代 8 頁 3

ミ ュ ン ヘ ン の 美 術 生 活 の 週 刊 ) 16 か ら と っ て い た ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー と い う 様 式 はヨー ロッパを 中 心 に ア メ リ カ 東 欧 な ど で も 国 際 的 な 流 行 と な っ た それゆえに ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー は グ ロ ー バ ル な 芸 術 様 式 と 言 え るだろう 日 本 に お け る 受 容 は 特 別 な 態 様 だ ったと 思 わ れ る 世 紀 末 に ヨ ー ロッパで 発 展 した 様 式 の 中 に は 日 本 の 美 術 版 画 な ど に お け る 型 の 影 響 も 多 い 同 時 代 に も 日 本 に お け る 明 治 維 新 の た め 日 本 と ヨ ー ロ ッ パ の 国 際 授 受 は 増 加 し た ヨ ー ロッパのア ー テ ィ ス ト の サ ー ク ル 中 で 浮 世 絵 漆 器 な ど が 初 めて 鑑 賞 さ れ たのである 日 本 ま た は ア シ ア 風 の 芸 術 や 美 術 な ど の 人 気 は ジ ャ ポ ニズムと 言 われ 17 この 流 行 は ア ー テ ィ ストの 間 に 普 及 し 画 家 版 画 家 な ど の 作 品 の 表 現 も 変 化 した 有 名 な 例 と し て ヴ ァ ン ゴ ッ ホ を 始 め 画 家 たちは 絵 の 中 に 日 本 の 美 術 作 品 を 結 像 し て 和 風 の 要 素 を 使 っ て 美 術 を 創 造 し て い る ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の ス タ イ ル は こ の 和 風 の 要 素 と 洋 風 の 成 分 の 融 合 か ら 生 ま れ た の で あ る 例 え ば 浮 世 絵 に お け る カ ッ ト や 遠 視 画 を 倣 っ て 色 彩 は 版 画 か ら 取 っ た こ と が 明 ら か で あ る 絵 画 の 中 に は そ の 例 も あ る が プ リ ン ト 表 紙 など の デ ザ イ ン 物 の 中 に 一 番 多 い と 言 え る アール ヌ ー ヴ ォ ー は 和 風 の 美 術 の 概 念 を 変 形 し 欧 州 の ア ー ト の な か に 新 鮮 で モダン な 美 術 の 様 式 を 生 じさ せ た た と 思 われる そ れ 故 に グ ロ ー バ ル な ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー に 対 し て 日 本 は 特 殊 事 情 を 示 していると 思 わ れ る 例 えば 藤 島 武 二 の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の ス タ イ ル を 有 する1 9 0 1 年 の 明 星 の 表 紙 を 見 れ ば 同 時 代 の こ の ス タ イ ル が 魅 力 的 だ っ た こ と が よ く 分 か る 18 黒 田 清 輝 ( 1 8 6 6-1 9 2 4 ) の 場 合 に は 留 学 や 旅 行 16 ゲ オ ル グ ヒ ロ ト ( G e o r g H i r t h ) と 称 する 発 行 者 ユーゲンド と 言 う 雑 誌 は 1 8 9 6 年 から1 9 4 0 年 ま で に 刊 行 さ れ て い た 表 紙 の 精 彩 ま た は 同 時 代 の 画 家 文 学 者 な ど の 投 稿 が 特 徴 で あ っ た 思 想 傾 向 は 活 気 を 重 点 と 置 く で あ り デ カ ダ ン ス や ミ リ タ リ ズ モ に 反 対 し た と 思 わ れ る Z e l l e r, B e r n h a r d ( 1 9 6 2 年 ) W e n d e d e r B u c h k u n s t. L i t e r a r i s c h - k ü n s t l e r i s c h e Z e i t s c h r i f t e n a u s d e n J a h r e n 1 8 9 5-1 9 0 0 { J a h r e s g a b e 1 9 6 2 d e r H ö h e r e n F a c h s c h u l e f ü r d a s g r a p h i s c h e G e w e r b e S t u t t g a r t } S t u t t g a r t 79 頁 17 始 め に ジ ャ ポ ニ ズ モ に は 日 本 美 術 と ア シ ア 美 術 の 判 別 派 な か っ た 18 K r i t t e r, U l r i c h v o n 篇 ( 1 9 9 6 ) J a p a n i s c h e B u c h i l l u s t r a t i o n. 1 8 5 0-1 9 8 5. U n b e k a n n t e I l l u s t r a t i o n s g r a p h i k s e i t J a p a n s Ö f f n u n g z u m W e s t e n ( L i t e r a r i s c h e B i l d w e l t e n d e s 2 0. J a h r h u n d e r t s. T e i l V ) G ö t t i n g e n : G ö l t z e V e r l a g 5 2 頁 4

から 持 ち 帰 った ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の 資 料 が 主 なソース と な っ て き た が 19 こ の よ う な 時 代 の 美 術 の 流 れ を 受 容 す る 日 本 で 発 売 さ れ た ヨ ー ロ ッ パ の 美 術 文 化 雑 誌 も 重 要 な 役 割 を 果 たした 先 に 紹 介 した ユ ー ゲ ン ド と 言 う 雑 誌 は 丸 善 書 店 でヨー ロ ッ パ と 同 じ 頃 に 売 れ た と 把 握 さ れ て い る 20 竹 久 夢 二 の 異 国 趣 味 の 作 者 荒 木 瑞 子 氏 に よ る と 1 9 0 0 1 9 1 0 年 代 に 早 稲 田 近 辺 の 古 書 店 で 買 う 機 会 が あ っ た 日 本 で 発 行 さ れ て い た 雑 誌 白 樺 は 白 樺 派 と い う 作 家 グループの 会 員 が ユ ー ゲ ン ド の 雑 誌 を 要 約 し た も の で も あ っ た 21 白 樺 の 中 に は 全 ペ ー ジ の 挿 絵 で 海 外 の 美 術 作 品 が 紹 介 さ れ て い た そ の 紹 介 さ れ た ス タ イ ル は 変 化 したが ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の 作 品 は 頻 発 し て い た 白 樺 派 の 文 人 は 例 え ば ド イ ツ の ユ ー ゲ ン ト シ ュ テ ィ ー ル 作 風 で 描 か れ て おり こ れ ら の 人 び と の 間 で は ハ イ ン リ ヒ ボ ケ ラ ー ( H e i n r i c h V o g e l e r ) が 大 人 気 と な っ て き た 22 このようにヨ ー ロ ッ パ の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 式 の 表 現 は 日 本 に 受 容 さ れ て い た 同 ス タ イ ル は 和 風 の 影 響 が 多 か ったため 特 別 な ケ ースである 相 関 的 な 影 響 は 以 上 の よ う な 結 果 を も た ら し た 夢 二 は 和 的 な 描 像 風 を 回 顧 する 装 飾 ま た は 二 次 元 の 柄 行 の 優 先 を は じ め る 同 時 代 の 画 家 の ひ と り である 23 海 外 で は 夢 二 は あまり 知 ら れ て い な い の ちに 短 い 紹 介 が 付 い た に す ぎ な い そ し て 外 国 でのコ レ ク シ ョ ン は 夢 二 作 品 が 少 ない 先 に 述 べ た ア ム ス テ ル ダ ム に あ る 夢 二 の 作 品 を 収 集 す る 美 術 館 ニホ 19 海 野 博 ( 1988 年 ) 日 本 のア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 青 土 社 13 頁 20 K r i t t e r ( 1 9 9 6 年 ) 同 書 よ り 126 頁 21 M a y a, M o r t i m e r ( 2 0 0 0 年 ) M e e t i n g t h e S e n s e i. T h e R o l e o f t h e M a s t e r i n S h i r a k a b a W r i t e r s L e i d e n / B o s t o n / K ö l n : B r i l l 68 頁 22 ハ イ ン リ ヒ ボ ゲ ラ ー ( 1 8 7 2-1 9 4 2 ) 1 9 1 1 年 の12 巻 は ボ ゲ ァ ー の 特 発 が 発 展 さ れ た であり S c h a m o n i, W o l f g a n g ( 1 9 8 0 年 ) D i e S h i r a k a b a - G r u p p e u n d d i e E n t d e c k u n g d e r n a c h i m p r e s s i o n i s t i s c h e n M a l e r e i i n J a p a n N O A G N a c h r i c h t e n d e r G e s e l l s c h a f t f ü r N a t u r - u. V ö l k e r k u n d e O s t a s i e n s ( H a m b u r g ) 1 2 7 / 1 2 8 巻 ( 57-85 頃 )62 頃 な た は R i e d i n g e, U w e ( 1 9 9 2 年 ) D i e Z e i t s c h r i f t S h i r a k a b a u n d i h r e R e z e p t i o n W o r p s w e d e s, e i n e r K ü n s t l e r k o l o n i e d e r J a h r h u n d e r t w e n d e M ü l l e r, K l a u s と W o l f r a m N a u m a n n 篇 N e n r i n J a h r e s r i n g e. F e s t g a b e f ü r H a n s A. D e t t m e r W i e s b a d e n : H a r r a s s o w i t z 2 0 3 頁 23 S w i n t o n, E l i z a b e t h d e S a b a t o ( 1 9 8 6 年 ) T h e g r a p h i c a r t o f O n c h i K ô s h i r ô. I n n o v a t i o n a n d t r a d i t i o n ( ハ ー ヴ ァ ド の 博 士 論 文 1 9 8 0 年 ), L o n d o n / N e w Y o r k : G a r l a n d P u b l i s h i n g 1 7 頁 5

ン ノ ハ ン ガ の 他 に は ミ ュ ー ジ ア ム オブ フ ァ イ ン ア ー ツ ボストン ( M u s e u m o f F i n e A r t s B o s t o n ) と いう 美 術 館 が あ る そこに 扱 っ て い る 作 品 の 例 と し て 挙 げ ら れ る の は 没 後 に 出 版 さ れ た 版 画 に 加 え 絵 は が き デ ザイン30 枚 である 24 また ロ ン ド ン に あ る ブ リ テ ィ ッ シ ュ ミ ュ ー ジ ア ム ( B r i t i s h M u s e u m ) に お け る 夢 二 の 作 品 の 中 に は 表 紙 デ ザ イ ン が い く つ か あるだけで あ る 然 る に 日 本 に は 夢 二 の 作 品 を 中 心 に す る コ レ ク シ ョ ン が 多 数 で あ る 例 え ば 金 沢 湯 涌 夢 二 館 夢 二 郷 土 美 術 館 竹 久 夢 二 伊 香 保 記 念 館 な ど の 美 術 館 は 夢 二 の 作 品 に 焦 点 を 合 わ せ て い る ま た 私 的 な コ レ ク シ ョ ン も 少 なくない 竹 久 夢 二 の 本 名 は 竹 久 茂 であり 1 8 8 4 年 に 現 在 の 岡 山 県 邑 久 市 本 所 で 生 ま れている 25 夢 二 は 子 供 の 頃 から 描 かくことに 興 味 があり 文 字 を 書 くよりも 絵 を 描 く こ と が 好 き で あ ったため 小 学 校 の 先 生 が 困 っ て い た と い う 26 神 戸 の 国 際 町 にあった 中 学 に 入 学 し て い た が 27 経 済 的 な 原 因 で 夢 二 の 家 族 が 福 岡 へ 引 っ 越 し 28 そのあとすぐ 夢 二 が 家 族 と 離 れ 1 9 0 1 年 に 上 京 し 早 稲 田 実 業 学 校 に 入 学 し た 29 人 力 車 夫 な ど の 仕 事 に 従 事 し そ の 後 彼 の 文 章 や 挿 絵 は 人 気 を 集 め る よ う に な っ た そ し て 1 9 0 5 年 に 文 章 と 小 間 絵 の 開 版 で 成 功 した 小 間 絵 と い う の は ス ケ ッ チ のような 小 さい 挿 画 のことである 30 1 9 0 7 年 に 夢 二 の 美 人 画 の モ デ ル で あ る 岸 た ま き こ の 時 代 の 女 性 美 の ア イ ド ルと 結 婚 した 31 1 9 0 9 年 に 夢 二 は 一 番 人 気 の あ る 絵 入 り 本 の 第 一 巻 の 夢 二 24 B o s t o n M u s e u m o f F i n e A r t s とのコレクションは 百 科 事 典 的 な コ レ ク シ ョ ン と 呼 ば れ て い る か ら エ フ ェ メ ラ は 少 な く な い 25 小 倉 忠 夫 (1977 年 ) 夢 二 の 生 涯 画 家 と し て の 出 発 別 冊 太 陽 竹 久 夢 二 ( 21-27 頃 )21 頁 26 小 倉 忠 夫 (1977 年 ) 同 書 よ り 22 頃 または 岡 崎 まこと( 1 9 8 4 年 ) 夢 二 正 伝 求 龍 堂 24 頁 27 小 倉 忠 夫 (1977 年 ) 同 書 よ り 2 3 頁 28 細 野 正 信 ( 1 9 8 5 年 ) 竹 久 夢 二 保 育 者 17 頁 29 小 倉 忠 夫 (1977 年 ) 同 書 よ り 23 24 頁 30 小 倉 忠 夫 他 ( 1986 年 ) 竹 久 夢 二 青 木 繁 集 英 社 7 4 頃 木 村 重 圭 ( 1978 年 ) 現 代 日 本 美 人 画 全 集 第 八 巻 竹 久 夢 二 集 英 社 81 頁 31 S t r o n g M c D o n a l d, S u s a n ( 2 0 0 3 年 ) O n c h i K ô s h i r ô. T a i s h ô M o d e r n i s t ( 博 士 論 文 M i n n e s o t a 大 学 2002 年 ) 7 6 / 7 7 頃 または 河 北 倫 明 ( 1 9 6 3 年 ) 竹 久 夢 二 流 離 の 詩 愁 日 本 近 代 絵 画 全 集 8 号 講 談 社 版 ( 8-35 頃 ) 86 頁 6

画 集 春 の 巻 を 出 版 した 32 こ の 時 代 に は 人 気 が 高 まり 彼 は 妻 の た ま き と 一 緒 に1 9 1 4 年 に 港 屋 と い う デ ザ イ ン 物 や 版 画 な ど の 店 を 創 業 し この 店 で デ ザ イ ン し た も の を 売 っ て い た 33 そ の 港 屋 の 時 代 に 作 っ た 夢 二 の 版 画 は 夢 二 の 版 画 デ ザ イ ン の 中 でも 特 に 緻 密 で あ っ た 彼 は 版 木 を 自 分 で 作 らず 印 刷 も 専 門 家 に ま か せ た が 彼 は そ の 作 業 を 監 督 し て い た 34 [ 港 屋 ] の 作 品 は 半 襟 千 代 紙 封 筒 な ど の 生 活 デ ザ イ ン の も の が 多 数 で あ った 35 美 術 を 生 活 に 応 用 するというの は ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の 一 つ の コ ン セ プ ト で あ り 夢 二 は 他 の 挿 し 絵 画 家 と 比 べて こ の 点 で 表 紙 デ ザ イ ン の ア ー ル ヌーヴォーへの 貢 献 は 複 合 的 で あ る と 思 わ れ る 36 さ ら に 恩 地 幸 四 郎 他 港 屋 で 新 し い 美 術 作 風 の 作 品 も 集 め 夢 二 がそ の 部 屋 で 展 覧 会 を 開 催 す る 機 会 を 彼 ら に 与 え た 37 彼 ら と 共 に 夢 二 は 美 術 雑 誌 を 探 索 し て 先 に 言 及 し た ユ ー ゲ ン ド と い う 雑 誌 を 読 ん だ こ と も 知 ら れ て い る 38 夢 二 は 経 済 的 な 事 柄 に あ ま り 興 味 が なかったため 二 年 後 自 分 の 店 を 閉 め ること と なった 39 その 後 1 9 1 4 年 に 笠 井 彦 乃 と 出 会 っ た 彦 乃 は 夢 二 の モ デ ル だ け で は な く 夢 二 の 人 生 で 最 も 好 き な 恋 人 と な っ た し か し 女 学 生 で あ っ た 彦 乃 の 家 族 は そ の 関 係 に 反 対 し 若 い 彦 乃 は 病 気 に な り 24 歳 で な く な っ た 40 その 間 も う 一 人 の 女 性 32 Ho n d a, S h o j o ( 19 8 6 年 ) T a k e h i s a Yu me j i R i me r, T h o ma s J. 篇 Mu l t i p l e me a n i n g s. T h e w r i t t e n w o r d i n J a p a n - p a s t, p r e s e n t, a n d f u t u r e. ( A s e l e c t i o n o f p a p e r s o n J a p a n e s e l a n g u a g e a n d c u l t u r e a n d t h e i r t r a n s l. p r e s e n t e d a t t h e L i b r a r y o f C o n g r e s s ) Wa s h i n g t o n : As i a n Di v., L i b r a r y o f C o n g r e s s ( 49-5 0 頃 ) 49 頃 または Me r r i t t, He l e n と Ya ma d a Na n a k o 篇 (19 9 0 年 ) Mo d e r n J a p a n e s e w o o d b l o c k p r i n t s. T h e e a r l y y e a r s Ho n o l u l u : U n i v e r s i t y o f Ha wa i i P r e s s 2 5 頃 33 小 倉 忠 夫 ( 1 9 7 7 年 ) 夢 二 の 生 涯 港 屋 京 都 時 代 別 冊 太 陽 竹 久 夢 二 (77-84 頃 ) 80 頁 34 M e r r i t t, H e l e n と Y a m a d a N a n a k o 篇 (1 9 9 0 年 ) 同 書 より 2 9 / 3 0 頁 35 S t r o n g M c D o n a l d, S u s a n ( 2 0 0 3 年 ) 同 書 より 85 頁 36 小 倉 忠 夫 他 ( 1986 年 )42 頁 37 M e r r i t t, H e l e n と Y a m a d a N a n a k o 篇 (1 9 9 0 年 ) 同 書 より 180 頁 38 S t r o n g M c D o n a l d, S u s a n ( 2 0 0 3 年 ) 同 書 より 84 頁 39 M e r r i t t, H e l e n と Y a m a d a N a n a k o 篇 (1 9 9 0 年 ) 同 書 より 27 頁 40 小 倉 忠 夫 ( 1 9 7 7 年 ) 同 書 よ り 81 頃 頁 7

1 9 1 9 年 に 出 会 っ た お 葉 と いうモ デ ル の 恋 人 が 夢 二 の 20 年 代 30 年 代 の ス タ イ ル に 強 い 影 響 を 与 え た と 思 わ れ る 41 そ の 時 の ア カ デ ミ ッ ク な 美 術 世 界 と の コ ネ ク シ ョ ン が 少 な な か っ た た め 夢 二 が 同 時 代 の 学 術 的 な 画 家 の よ う に 外 国 で 美 術 を 研 究 す る こ と は 難 し か っ た そ れ に か か わ ら ず 931 年 にアメリ カ と ヨ ー ロ ッ パ へ 出 発 し た 42 フ ラ ン ス の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の 中 心 の パリも 訪 れたが 日 記 に よ れ ば パ リ は 夢 二 の ロ マ ン チ ッ ク な 想 像 と 大 分 異 な っ た 43 30 年 代 に は ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー が も う は や 全 盛 期 を 過 ぎ た ため 美 術 世 界 は 彼 が 抱 い て い た 想 像 と 相 違 し て い た と 思 わ れ る 当 惑 や 幻 滅 が 大 きかった 夢 二 は 1 9 3 3 年 に 帰 国 後 1 9 3 4 年 に は 肺 結 核 を 患 い 療 養 所 で な く な っ た 44 以 上 に 述 べ た よ う に 夢 二 のア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 受 容 の 本 源 は 国 内 で 入 手 できる 資 料 で あ っ た 夢 二 は 雑 誌 白 樺 を 読 ん で い た の が 知 られてい る さ らに 夢 二 の 絵 入 本 を 出 し て い た 洛 陽 堂 と い う 出 版 社 は 白 樺 を 出 し て い た と ころと 同 じで あ る 45 白 樺 の 広 告 面 に 夢 二 の 本 が 宣 伝 されて い る よ う で あ る そ の 雑 誌 の 内 容 は よ く 知 ら れ て い た と 思 わ れ る 荒 木 氏 に よ る と 夢 二 は ユ ー ゲ ン ド を 古 書 店 で 買 っ て そ の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 式 作 品 が 刺 激 と な ってきた 金 沢 の 二 十 一 世 紀 美 術 館 の 学 芸 員 高 橋 律 子 氏 に よ る と 明 治 時 代 に 41 海 野 弘 ( 2 0 0 6 年 ) 都 市 風 景 の 発 見 日 本 の ア ヴ ァ ン ギ ャ ル ド 芸 術 右 文 書 院 144 頁 42 S w i n t o n, E l i z a b e t h d e S a b a t o ( 1 9 8 6 ) T h e g r a p h i c a r t o f O n c h i K ô s h i r ô. I n n o v a t i o n a n d t r a d i t i o n ( ハーバードの 博 士 論 文 1 9 8 0 年 ), L o n d o n / N e w Y o r k : G a r l a n d P u b l i s h i n g 7 頃 またはK a n e k o, Y o s h i m a s a ( 2 0 0 3 年 ) J a p a n e s e P a i n t i n g a n d J o h a n n e s I t t e n s A r t E d u c a t i o n ( S y m p o s i u m : A e s t h e t i c E d u c a t i o n i n J a p a n t o d a y ) J o u r n a l o f A e s t h e t i k E d u c a t i o n 37 巻 4 号 ( 93-1 0 1 頃 )95 頁 43 小 笠 原 洋 子 ( 2 0 0 2 年 ) 夢 二 ギ ヤ マ ン の 舟 大 村 書 店 238 頁 44 S t r o n g M c D o n a l d, S u s a n ( 2 0 0 3 年 ) O n c h i K ô s h i r ô. T a i s h ô M o d e r n i s t ( 博 士 論 文 M i n n e s o t a 大 学 2002 年 ) 74 頃 または K r i t t e r, U l r i c h v o n 篇 ( 1 9 9 6 ) J a p a n i s c h e B u c h i l l u s t r a t i o n. 1 8 5 0-1 9 8 5. U n b e k a n n t e I l l u s t r a t i o n s g r a p h i k s e i t J a p a n s Ö f f n u n g z u m W e s t e n ( L i t e r a r i s c h e B i l d w e l t e n d e s 2 0. J a h r h u n d e r t s. T e i l V ) G ö t t i n g e n : G ö l t z e V e r l a g 211 頁 45 S t r o n g M c D o n a l d, S u s a n ( 2 0 0 3 年 ) 同 書 より73 頃 M e r r i t t, H e l e n と Y a m a d a N a n a k o 篇 (1990 年 ) M o d e r n J a p a n e s e w o o d b l o c k p r i n t s. T h e e a r l y y e a r s H o n o l u l u : U n i v e r s i t y o f H a w a i i P r e s s 2 6 頁 8

始 まった 有 名 な 例 と な っ て い る 藤 島 武 二 の 流 行 に 続 い て 夢 二 は ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク を 設 計 し た 46 イ ン ス ピ レ ー シ ョ ン の イ メ ー ジ を 集 めた 夢 二 の スク ッ ラ ッ プ ブ ッ ク は 5 冊 存 在 する 47 高 橋 氏 は 一 冊 が 遺 族 の 協 力 で 調 べる こ と ができた ほ か の 4 冊 は 夢 二 郷 土 美 術 館 の 撮 影 デ ー タ を 調 査 する 機 会 が あ っ た 48 開 巻 さ れ た 一 冊 は 高 橋 氏 に よ っ て 夢 二 ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク 1 ( YS1)と 呼 ばれている 49 こ の ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク と ユ ー ゲ ン ド の 内 容 を 比 べ る と 例 えば 1 9 0 6 年 の ユ ー ゲ ン ド か ら の 図 版 は こ の 一 冊 に 三 つ が あると 分 か る 50 そ の ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク の 図 版 は ヨ ー ロ ッ パ と 日 本 両 国 の 美 術 の イ メ ージが 入 ってある 例 え ば 藤 島 武 二 の 蝶 と 言 う 油 絵 に 対 し て エ ド ワ ル ド ムンク( E d v a r d M u n c h ) の マ ド ン ナ ( M a d o n n a ) フ ェ ル デ ナ ン ト ホ ド ラ ー ( F e r d i n a n d H o d l e r ) の デ ア フ リ ュ ー リ ン グ ( D e r F r ü h l i n g ) が ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク に 見 られる そ の 他 は ピ カ ソ ゴ ー ギ ャ ンなど 更 に 恩 地 孝 四 郎 の 図 版 が つ い て い る 51 夢 二 郷 土 美 術 館 に あ る 表 紙 に 顔 を 描 い て い る 英 語 で M o t h e r と 記 さ れ て い る 作 品 は YS2 で 多 数 の ヌ ー ド の イ メ ー ジ が 目 立 っ て い る さ ら に ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー が 関 係 する オー ブ レ イ ビ ア ズ リ ー ( A u b r e y B e a r d s l e y ) 52 の サ ロ メ ー からインスパ イアーされた 挿 絵 二 枚 が 貼 付 されて いる そのほかに ユ ー ゲ ン ド の 表 紙 が 複 数 の 例 が 見 られる 以 下 では 夢 二 の 仕 事 に お け る ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー デ ザ イ ン の 例 の 検 討 を 行 いたい 夢 二 の 初 め て の ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 品 は 1 9 0 5 年 に 出 版 された ハ ガキ 文 学 と い う 雑 誌 で 賞 を 取 っ た 絵 葉 書 の フ ロ ラ ル の 図 案 で あ っ た 53 次 46 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 竹 久 夢 二 社 会 現 象 としての 夢 二 式 金 沢 ブリュック/ 青 雲 者 297 頁 47 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 同 書 より 300 頁 48 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 同 書 より 49 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 同 書 より 50 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 同 書 よ り 51 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 同 書 より 309 頁 52 イギリスのア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の ビ ア ド ス リ ー ( 1 8 7 2-1 8 9 8 ) の 影 響 は 夢 二 の ス タ イ ル で 良 く 見 え る 訳 で あ る 細 野 正 信 ( 1 9 8 5 年 ) 竹 久 夢 二 保 育 者 111 頁 53 小 倉 忠 夫 篇 ( 1 9 8 4 年 ) 日 本 水 彩 画 名 作 全 集 3 竹 久 夢 二 第 一 法 規 出 版 7 4 頃 また は 細 野 正 信 ( 1 9 8 7 年 ) 竹 久 夢 二 と 抒 情 画 家 た ち 講 談 社 4 4 / 4 5 頁 9

の 例 のように 日 本 で の 受 容 が 展 開 さ れ た と 思 われる ポ ー ル ベ ル ト ン ( P a u l B e r t h o n ) の ラ ジ ョ ヨ ー セ で フ ル ー ト ( L a j o u e u s e d e f l u t e ) と い う ポ ス タ ー に フ ル ー ト を 吹 奏 す る 女 姿 が 描 か れ て い る 54 1900 年 のア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー の 最 盛 期 の デ ザ イ ン で あ る それに 基 づ い た 藤 島 武 二 の 明 星 と い う 雑 誌 の 口 絵 に お け る 解 釈 が ある 55 こ れ は 大 体 ベ ル ト ン の コ ンポジションが 持 っ て い る が 情 緒 的 表 現 が 変 化 し て い る と 思 わ れ る そ の 本 で 夢 二 は ど ん た く と 言 う 絵 入 小 歌 集 の 口 絵 を 描 い た 56 藤 島 武 二 の 笛 吹 き は 少 し 疲 れ た 顔 が あ り 背 景 も 風 体 も 変 化 し て い た が 手 の 姿 は ベ ル ト ン 風 に 描 出 さ れ て 顔 の 表 情 は 和 やかになった ベルトンか 藤 島 武 二 か 誰 が 夢 二 の 模 範 に な っ た の か と い う 問 題 は ま だ 調 べ て い ない さらに ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク に お け る ユ ー ゲ ン ド の 表 紙 や 挿 絵 を 見 る と 夢 二 の デ ザ イ ン の 関 係 を 見 ることができる Y 4 の ス ク ラ ッ プ ブ ッ ク に 57 あ る エ ド ヴ ァ ル ド オ ク ン ( Edua r d O k u n ) が 描 い た 挿 画 は 夢 二 の ど ん 58 たく という 小 歌 集 の も う 一 枚 の 口 絵 に 似 て い る オ ク ン の 挿 画 に は 色 気 の 森 の 中 の キ ノ コ の よ う な 家 族 が 描 い て あ る 子 供 も 母 もヌ ー ド で あ り ア ウ ト ラインはア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 風 で 抑 揚 が つ い て い る 夢 二 が イ メ ー ジ を 変 え クリッピングを し ても そ の デ ザ イ ン の 源 が 分 か り や す い と 思 われる そ れ か ら ユ ー ゲ ン ド の 1 9 0 9 年 7 号 の 表 紙 の イ メ ー ジ が 夢 二 の 受 容 の も う 一 つ 例 と な っ て い る 59 ユ ー ゲ ン ド の ロ ベ ル ト ワ イ ス ゲ ル バ ー ( R o b e r t W e i ß g e r b e r ) と い う イ ラ ス ト レ ー タ ー は その 表 紙 に 象 に 騎 乗 す る サ ー カ 54 木 股 知 史 ( 2 0 0 6 年 ) 竹 久 夢 二 ど ん た く の 画 像 引 用 立 命 館 文 学 2 0 0 6 2 号 ( 306-3 1 1 頃 )309 頁. 55 木 股 知 史 ( 2 0 0 6 年 ) 同 書 より. 56 木 股 知 史 ( 2 0 0 6 年 ) 同 書 より 309 頁. 57 E d u a r d O k u n ( 1 8 7 2-1 9 4 5 ) : W o d i e B u c h e n d ä m m e r n 橅 が ま ど ろ む 所 J u g e n d ( 1 9 0 6, 2 冊 ( 2 7-52 号 )) 9 9 2 / 9 9 3 頁 h t t p : / / d i g i. u b. u n i - h e i d e l b e r g. d e / d i g l i t / j u g e n d 1 9 0 6 _ 2 / 0 4 0 6 58 竹 久 夢 二 の 口 絵 ど ん た く ( 1 9 1 3 ) 木 俣 知 史 竹 久 夢 二 ど ん た く の 画 像 引 用 立 命 館 文 学 2 / 2 0 0 6 3 1 0 頁. 59 高 橋 律 子 ( 2 0 1 0 ) 竹 久 夢 二 社 会 現 象 と し て の 夢 二 式 金 沢 ブ リ ュ ッ ク / 青 雲 者 310 頁 10

ス 団 の 石 版 画 が 描 か れ て い る 60 こ れ は 夢 二 の ス ク ッ ラ ッ プ ブ ッ ク の 4 号 に おける 図 版 の 本 源 だと 分 かる 61 似 ているデザインは 夢 二 が 作 った 子 供 の 国 と い う 本 の 表 紙 の よ う である 62 夢 二 が 描 い ていた 象 は あ ま り 動 か な い 姿 で あ り コ ン ポ ジ シ ョ ン に は 浮 世 絵 に お け る 象 の 描 出 が 見 えている し か し サ ー カ ス 団 は ワ イ ス ゲ ル バ ー の 挿 画 か ら 影 響 を 受 け た 可 能 性 も ある 最 後 に 1 9 0 5 年 の 5 号 の ユ ー ゲ ン ド の 表 紙 がこのことの 例 と な っ て い る 63 アル ルカンと 一 緒 に 踊 る 団 扇 を 持 っ て い る バ レ リ ー ナ が 見 ら れ る 絵 が あ る 夢 二 の 1916 年 の 歌 劇 カ ル メ ン ハ バ ネ ラ の 歌 64 と い う フ ラ ン ス の 歌 劇 の セ ノ オ 楽 譜 の 表 紙 から 影 響 を 受 けたの は こ の イ ラ ス ト レ ー シ ョ ン だ と 思 われる 65 夢 二 の デ ザ イ ン の シ ン ボ ル や 色 気 は 音 楽 の テ ー マ に よ る と ス ペ イ ン 風 に な っ て い く ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー のスタイルは ア ー ティス ト と し て の 夢 二 に と っ て 興 味 深 かったことが 明 ら か に な っ た そ れ だ け で は な く 観 念 的 な コ ン セ プ ト や 理 論 のア ス ペ ク ト に つ い て も 考 慮 し た こ と が 夢 二 の 記 事 な ど か ら 明 ら か で あ る ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 式 の 中 には 抽 象 的 な も の も 多 く そ れ で 感 情 を 表 現 す る こ と が 夢 二 の 持 論 の 中 で 際 立 ったの で あ り そ の イ マ ジ ュ リ ィ は 作 品 の 中 で 大 切 な 役 割 を 果 た し て い る 66 以 上 の よ う な 例 に 見 る こ と に よ り 夢 二 の 大 正 ロ マ ン の 時 代 に お け る ア ー ル ヌ ー ヴ ォ ー 受 容 ま た は そ の モ ダ ン な 表 現 と 伝 統 的 な 和 風 な 様 式 の 合 併 が 鮮 明 になるで あ ろ う 夢 二 と 同 時 代 の 画 家 た ち の 作 品 は 日 欧 の 相 互 作 用 が 融 合 さ れ た も の で あ り 大 正 時 代 の 異 文 化 交 流 史 へ の 窓 に な る と 思 われる 60 J u g e n d 1 9 0 9 年 7 号 の 表 紙 61 木 股 知 史 ( 2 0 0 6 年 ) 同 書 より 3 10 頁 62 竹 久 夢 二 (1910) 子 供 の 国 洛 陽 堂 63 J u g e n d 1 9 0 5 年 5 号 の 表 紙 ( 石 版 画 ) ハ イ デ ル ベ ル グ 大 学 の デ ジ タ ル 歴 史 的 な 保 有 高 64 竹 久 夢 二 セ ノ オ 楽 譜 表 紙 ( 1916) 歌 劇 カ ル メ ン ハ パ ネ ラ の 歌 65 木 股 知 史 ( 2 0 0 6 年 ) 同 書 より 3 10 頁 66 S w i n t o n, E l i z a b e t h d e S a b a t o ( 1 9 8 6 ) T h e g r a p h i c a r t o f O n c h i K ô s h i r ô. I n n o v a t i o n a n d t r a d i t i o n ( ハーバードの 博 士 論 文 1 9 8 0 年 ) L o n d o n / N e w Y o r k : G a r l a n d P u b l i s h i n g 1 7 頁 11