ヴィナヤ パトゥリカー/Vinaya Patrika ( 抄 ) [ 始 めに] 1609 年 ごろに 成 立 したとされる 定 説 のように 1532 年 が Tulsidas の 生 誕 の 年 であるとすれ ば 70 歳 代 の 作 品 全 部 で 279 詩 節 より 成 る 原 題 は 嘆 願 の 書 という 意 味 ラーマ 神 を 長 とする 一 種 の 司 法 機 関 パンチャーヤト( 五 人 会 )への 嘆 願 の 書 類 ということ しかし その ような 体 裁 による 真 摯 な 告 白 の 書 また 神 との 一 対 一 の 対 話 の 書 ひいては 深 遠 な 祈 りの 書 と 考 えてもかまわないだろう 訳 出 にあたって テキストは Gita Press 版 を 基 に し 随 時 Nagaripracarini Sabha 版 を 参 照 した 以 後 折 を 見 て 追 加 訂 正 を 繰 り 返 してい きたいと 思 う 102 ハリよ わたしはあなたにとても 感 謝 しています 神 々でさえ 得 がたい この 修 行 の 家 である 身 体 を あなたは 親 切 にもわたしに 与 えてくださ いました あなたの 一 つ 一 つの 恩 恵 を わたしは 無 数 の 口 を 持 っていても 述 べ 尽 くすことはできな いでしょう しかしながら 主 よ わたしにはさらに 欲 しいものがあります とても 寛 大 な 方 よ どうかそれ をわたしにお 与 えください 魚 が 水 から 離 れられないように わたしの 心 は 一 瞬 たりとも 感 官 の 欲 望 から 離 れることがで きません そのためにわたしは 何 度 も 輪 廻 をくりかえし とても 恐 ろしい 苦 難 に 耐 えなくてはなりませ ん あなたの 恵 みを 釣 り 糸 とし あなたの 御 足 の 鉤 の 印 を 釣 り 針 とし あなたの 至 高 の 愛 を 柔 ら かな 餌 として どうかわたしの 心 という 魚 を 貫 き 釣 り 上 げ わたしの 苦 しみを 除 いてください ラーマよ それはあなたにとっていともたやすいことです もちろんヴェーダに 知 られた 方 法 もあり 他 の 多 くの 神 々もいます しかし 哀 れなわたしは 他 に 嘆 願 してまわるつもりはありません
まさにこのわたしを 迷 妄 の 綱 で 縛 り 上 げた 方 まさにその 方 にわたしを 解 き 放 ってもらうしか ないのです 103 ラーマよ 主 よ あなたに 祈 願 します 他 にたいして 希 望 や 信 心 や 依 頼 心 を 抱 くような このわたしの 愚 かさを 奪 い 去 ってくださ い わたしは 解 脱 も 英 知 も 財 産 もまったく 欲 しくはありません 繁 栄 も 偉 大 さもまた ラーマよ ただあなたの 御 足 にたいするわたしの 純 粋 な 愛 が 日 一 日 といや 増 しに 増 せば よいと ただそう 願 うだけです 悪 行 の 報 いで たとえわたしがどのような 世 界 に 生 を 余 儀 なくされても どうかわたしへの 愛 顧 を 瞬 時 も 止 めないでください 亀 が 自 分 の 産 んだ 卵 を 手 放 さないよう に 主 よ この 世 でこの 身 体 が 経 験 するかぎりのすべての 愛 信 頼 関 係 が 一 点 に 集 中 し ただあなたにたいするものでありますように 111 ケーシャヴァよ どういえばいいのか わかりません ハリよ あなたのこの 不 思 議 な 作 品 を 目 にして ただ 心 で 納 得 するだけです 姿 のない 画 家 が 虚 無 の 壁 に 絵 具 なしで 描 いた 絵 それは 洗 っても 消 えません しかも 死 の 恐 怖 があります そのほうを 見 る 人 に 苦 しみをもた らします 陽 光 に 見 えてくる 幻 の 水 そこにはとても 恐 ろしい 鰐 の 形 をしたものが 棲 んでいます その 怪 物 は 口 もないのに 水 を 飲 もうとしてやって 来 たものを すべて 呑 み 込 んでしまいま す この 世 を 真 実 だという 者 もあれば 偽 りだという 者 もあります また 真 偽 こもごもだと 考 える 者 もいます この 三 者 の 意 見 とも 迷 いであり この 迷 いから 自 由 になった 者 こそ 真 の 自 己 を 知 ることが
できると わたしは 考 えます 113 マーダヴァよ なぜわたしをいまだに 憐 れんでくださらないのですか あなたは 救 いを 求 める 者 を 守 護 すると 誓 われ わたしはあなたの 蓮 の 御 足 に 目 を 向 けて 生 きることを 誓 っています わたしが 哀 れな 者 で あなたが 情 け 深 い 方 ということがなければ またわたしが 僕 であり あ なたが 主 であるということがなければ みずから 耐 え 忍 ぶ 苦 しみを わたしはあなたに 語 ることもなかったでしょう 語 らずとも あ なたは 人 の 心 の 内 を 知 っておられますけど ヴェーダでも 述 べられていますように あなたは 惜 しみなく 与 えるのに わたしはけちであ り わたしが 堕 落 しているのに あなたは 清 らかです ラーマよ このようにわたしとあなたの 間 には 多 くの 関 係 があります もはやわたしを 見 捨 て ることはできないのではないでしょうか あなたはわたしにとって 父 であり 母 であり 師 であり 兄 弟 であり 友 人 であり 主 人 であり あらゆる 意 味 でわたしの 恩 人 です わたしが 二 元 性 の 暗 い 井 戸 に 落 ちることがないように どうかなにかの 方 策 を 講 じてくださ い お 聞 きください 蓮 の 目 をした 方 よ あなたの 無 限 の 慈 悲 こそ 人 間 を 大 きな 恐 怖 から 解 放 してくれるものです 主 よ あなたの 光 がなければ わたしの 疑 念 はけっして 晴 れることはないでしょう 114 マーダヴァよ この 世 にわたしのような 者 はいません あらゆる 意 味 で 卑 しく 汚 れており とても 哀 れで 感 官 の 快 楽 に 溺 れた 者 は そしてあなたのように 理 由 もなく 恵 み 深 く 苦 しむ 者 の 朋 友 であり 自 己 放 棄 を 旨 とする 主 はいません わたしは 苦 しみと 愁 いのために 心 安 らかではありません 恵 み 深 い 方 よ なぜわたしを 憐
れんでくださらないのですか しかし もちろん あなたになんの 落 ち 度 もなく 悪 いのはこのわたしです 主 よ あなたは まさに 知 恵 の 館 であるこの 身 体 を わたしに 与 えてくださいました それを 得 ながらも わたしはあなたを 知 ることがありませんでした 竹 が 白 檀 を 非 難 したり ケーパーが 春 を 非 難 しても 無 駄 なことです いったいどうして 髄 のない 竹 に 芳 香 が 染 みたり 不 運 なケーパーに 若 葉 が 生 えたりするで しょうか わたしはあらゆる 意 味 で 硬 く ハリよ あなたは 柔 らかい わたしの 心 には 確 固 たる 思 いが あります 主 よ わたしの 迷 妄 の 鎖 が 解 けるのは あなたがそれを 解 いてくださる 時 であると 116 マーダヴァよ あなたの 作 り 出 す 幻 影 は 疲 労 困 憊 するまで 様 々な 方 策 を 講 じたとしても 克 服 することはできません あなたが 憐 れんでくださらなければ 人 から 聞 いても 思 案 しても 理 解 しようとしても 人 に 理 解 させようとしても この 幻 影 の 有 様 は 合 点 がいきません その 有 様 を 実 感 しないかぎり 迷 妄 の 産 物 である この 世 の 恐 ろしい 困 難 が 苦 しみをもた らしつづけるでしょう 甘 くて 冷 たい 梵 の 甘 露 を 心 で 味 わうこともできるのに どうして 幻 の 水 にすぎぬ 感 官 の 快 楽 を 求 めて 日 夜 かけずりまわるのでしょうか 自 分 の 家 に 純 粋 な 如 意 宝 珠 を 持 つ 人 が どうして 硝 子 を 掻 き 集 めたりするのでしょうか だれかに 隷 属 していた 夢 から 覚 め もはやだれにも 隷 属 していないのに いったいだれに 解 放 を 嘆 願 したりするのでしょうか 知 識 やバクティなど 多 くの 修 行 があり それらはすべて 真 実 であり どれも 偽 りではありませ ん しかし ハリよ あなたの 恩 恵 があってはじめて 迷 いは 消 え 去 ります そのことこそわたし の 心 の 頼 りです
117 おお ハリよ どうしてわたしにあなたを 非 難 することができるでしょう それによってはけっして 解 脱 を 得 ることができないような 方 法 を わたしは 日 夜 行 っていま す わたしは 知 っています 感 覚 の 対 象 は 無 意 味 なものにすぎませんが それがために 人 は 無 知 の 暗 い 井 戸 に 落 ちることになると なのに わたしは 犬 や 山 羊 や 驢 馬 のように 感 覚 の 対 象 を 放 棄 することなく それに 愛 着 し それを 求 めてさまよっています 迷 妄 の 虜 となって 人 々に 敵 対 し みずからの 益 を 考 えることもできません 傲 慢 嫉 妬 自 尊 といった 知 識 の 敵 たちの 中 で わたしは 終 始 馴 染 み 合 って 暮 らしていま す ヴェーダやプラーナで 聞 き 知 っていますが ラーマよ あなたこそ 全 世 界 に 偏 在 なさってい る 方 です しかし わたしの 罪 深 い 空 ろな 心 には そのことは 染 み 通 ってきません ちょうど 白 檀 の 香 りが 髄 のない 竹 に 染 み 込 まないように 慈 悲 の 倉 よ わたしは 罪 の 海 です 人 の 心 を 知 る 方 よ すでに 御 存 知 のように 蛇 の 天 敵 であるガルダ 鳥 に 乗 る 方 よ この 世 という 蛇 に 咬 まれたわたしは あなたにこそお すがりします 118 おお ハリよ どうしてわたしに 幸 福 を 願 うことができるでしょう わたしの 行 いは 象 の 見 せかけの 牙 のようなもの すっかりあなたが 御 存 知 のように わたしの 言 行 が 一 致 していたら 輪 廻 の 海 を 仔 牛 の 足 跡 に 溜 まった 水 を 渡 るように たや すく 渡 ることができるでしょう 言 行 不 一 致 のこのわたしが ハリよ どうしてあなたのお 膝 元 での 幸 福 を 得 ることができるで しょうか 孔 雀 は 見 た 目 には 美 しく きれいな 声 で 甘 露 を 混 ぜたように 鳴 きますが
食 べるものといったら 毒 蛇 言 行 不 一 致 とは このように 酷 いものです あらゆる 生 類 を 慈 しみ 妬 心 がなく あなたの 蓮 の 御 足 に 愛 を 寄 せる 者 そのような 者 を ラーマよ あなたは 愛 でられます さらには 思 慮 深 く 自 他 の 区 別 をすっか り 捨 て 去 った 者 を ラグ 王 よ わたしの 欠 点 に 際 限 はなく わたしはこの 輪 廻 の 世 にこそふさわしい 者 です しかしながら 慈 悲 の 倉 よ みずからの 特 性 を 考 慮 なさり どうかわたしをお 憐 れみくださ い 120 ハリよ なぜわたしの 大 きな 迷 いを 除 いてくださらないのですか 偽 りにすぎないのに この 世 が 真 実 に 見 えてきます あなたが 恵 みを 垂 れてくださらないか ぎり 感 覚 の 対 象 は 存 在 しないと 知 りつつも 主 よ わたしは 生 存 を 去 ることができません だれにも 縛 られていないのに 愚 かにも みずからの 頑 迷 さによって わたしは 鸚 鵡 のよう に 自 由 を 奪 われています ちょうど 夢 の 中 で 様 々な 病 気 に 苦 しめられ 死 が 迫 ったように 感 じて 医 師 にいろんな 治 療 を 試 みてもらうが 目 覚 めることなしには 苦 痛 は 止 まないのとおなじよ うです ヴェーダもスムリティも 師 も 聖 者 も 見 解 を 同 じくしていますが この 可 視 世 界 は 存 在 せ ず 苦 をもたらすのみです ラーマよ その 世 界 を 捨 て 去 ることなしには またあなたを 拝 することなしには だれも 苦 難 から 逃 れることはできません ヴェーダでは 輪 廻 の 海 を 渡 るための 多 くの 方 法 が 神 聖 な 言 葉 で 述 べられています しかし わたし と わたしの という 言 葉 が 消 えてしまわないかぎり 人 はけっして 幸 福 を 得 ることはできないのではないでしょうか 123 ラグ 王 よ わたしにはこのように 思 われます
情 け 深 い 方 よ 僕 の 恩 人 よ あなたの 恵 みなしでは 迷 妄 も 幻 影 も 消 えることはないと どんなに 言 葉 に 関 する 知 識 が 豊 富 で 弁 舌 が 巧 みであっても だれも 輪 廻 の 海 を 渡 ること はできません 夜 暗 い 家 の 中 で 燈 火 のことを 話 題 にしても 闇 を 除 き 去 ることはできないのとおなじよう に ちょうど 飢 えに 苦 しむ とても 哀 れで 不 幸 な 人 が 家 の 壁 に 如 意 樹 や 如 意 牛 の 絵 を 描 いてもらっても 彼 の 苦 難 が 消 えることがないように 六 種 の 味 の 様 々な 料 理 について 日 夜 説 明 する 者 がいたとしても 料 理 に 満 足 して 得 られる 喜 びを 知 るのは なにも 言 わずに 実 際 にその 料 理 を 食 べた 者 だ けです 心 に 光 を 宿 していないかぎり 感 官 の 欲 望 が 心 にあるかぎり 輪 廻 の 世 をさまよい けっして 幸 を 得 ることはできません 129 美 しい 舌 よ なぜおまえは ラーマ ラーマ ラーマ と 唱 えないのか その 名 号 を 心 に 想 うだけで 幸 福 と 善 果 が 増 し 罪 と 禍 が 減 るというのに 労 することなく 末 世 の 罪 科 の 苛 酷 で 恐 ろしい 網 が 切 れていくというのに ちょうど 太 陽 が 昇 ると 闇 が 四 散 していくように ヨーガ 供 儀 念 誦 遁 世 苦 行 聖 地 巡 礼 は まるでこの 世 という 大 きな 象 を 縛 るために 砂 で 縄 を 綯 っているようなもの おまえはすぐれた 名 号 という 如 意 宝 珠 を 捨 て トウアズキの 実 を 物 欲 しそうに 眺 めている おまえのそのつまらない 欲 望 を 目 にして わたしはおまえを 叱 責 する 167 ラーマへのバクティは 行 うのが 難 しい 言 うは 易 く 行 うは 難 し バクティを 知 るのは バクティを 行 うことができた 者 のみ
ある 技 に 秀 でた 者 にとって その 技 はたやすく つねに 快 いもの 魚 が 河 の 流 れを 遡 っていくのに 大 きな 象 がガンジス 河 に 流 されていく ちょうど 砂 の 中 に 砂 糖 が 混 じっているとき だれも 力 ずくで 砂 糖 を 分 離 することはできな い しかし 小 さいながら とても 味 に 詳 しい 蟻 は いともたやすく 砂 糖 を 分 離 し 手 に 入 れること ができる 可 視 世 界 をまるごと 腹 に 収 め ヨーガ 行 者 は 眠 りを 捨 てて 眠 る ハリのお 膝 元 での 至 福 を 経 験 できるのは 完 全 に 二 元 性 を 脱 した 者 のみ 彼 にとって 悲 しみ 迷 妄 恐 れ 喜 び 昼 夜 の 別 時 間 と 空 間 は 存 在 しない このような 境 地 なしでは 疑 念 が 根 絶 されることはない 244 ハリよ このようにしてわたしは 知 恵 を 失 いました ラーマよ 心 の 中 の 蓮 である あなたを 見 捨 て せわしなく 外 をかけずりまわったために みずからの 身 体 にある 甘 美 な 香 料 なのに 愚 かきわまりない 鹿 がその 秘 密 を 知 らず この 至 上 の 芳 香 はどこからくるのかと 山 樹 木 蔓 草 地 面 穴 を 探 しまわるみたいに 清 らかな 水 で 満 たされた 池 が その 表 面 だけすこし 藻 や 草 でおおわれています 邪 なわたしはその 池 を 捨 て 心 を 燃 え 上 がらせたまま 渇 きを 癒 そうとします 体 中 をものすごい 三 種 の 熱 が 満 たし さらには 耐 えがたい 欠 乏 がわたしを 苦 しめます まさに 心 の 家 にある あなたの 名 号 という 如 意 樹 を 捨 て 感 官 の 快 楽 というアカシヤの 庭 園 に 執 心 しています あなたのような 知 恵 の 倉 は 他 におられず わたしのような 愚 か 者 は 他 にいません それは 諸 プラーナの 述 べるとおりです 主 よ そのことを 考 慮 なさり 心 にふさわしく 思 われることを このわたしにたいしてなさって ください 245
愚 かな 心 によってわたしは 破 滅 してしまいました お 聞 きください 憐 れみ 深 い 方 よ この 愚 かな 心 のせいで わたしは 輪 廻 をくりかえし その たびに 苦 しみに 涙 しました 本 然 の 喜 びという 冷 たく 甘 い 甘 露 がすぐそばにあるのに まるでそれが 遠 くにあるかのよ うに わたしはそれを 見 失 いました 愚 かなわたしは 迷 妄 のゆえに 様 々な 労 苦 を 重 ねましたが それは 無 駄 に 水 をかき 回 したよ うなものでした 行 為 は 泥 であると 知 りつつも 心 にそれをなすりつけ 邪 な 心 の 汚 れをすべて 洗 い 落 とそう としました 渇 いていながら 邪 なわたしはガンジス 河 を 忘 れ 何 度 も 何 度 もせわしなく 虚 空 から 幻 の 水 を 搾 り 出 そうとしました 主 よ 恵 みを 垂 れてください わたしは 包 み 隠 さず みずからの 咎 をすべて 語 りました 夜 具 を 敷 いている 間 に 夜 はすっかり 過 ぎてしまいました 主 よ わたしは 安 眠 できません でした 258 恩 恵 の 倉 よ わたしはあなたを 見 知 っていながら あなたを 忘 れてしまいました あまりに 横 柄 となり 逆 にあなたを 非 難 する 始 末 です ヨーガ 行 者 たちが 刻 苦 して 関 係 を 持 とうとしている 方 に わたしはなんとか 関 係 を 持 っていたのに 不 運 にもわたしはその 関 係 を 断 ち 切 ってしまい ました わたしはこれまで 十 二 分 に 探 してきたつもりですけど わたしのような 罪 の 倉 は 十 四 宇 宙 に 他 にいませんでした 荷 車 に 付 き 従 う 犬 のように わたしは 強 力 な 幻 影 と 迷 妄 を 一 瞬 見 捨 てたかとおもうと またもや 付 き 従 い 奉 仕 を 始 めます 主 よ わたしはあなたに 何 度 も 何 度 も 誓 って 言 いますが あなたに 対 する 大 反 逆 者 として わたしに 匹 敵 する 者 は 他 にいません どうかあなたの 戸 口 から この 嘘 つきで 貪 欲 な ペテン 師 を 追 い 払 ってください さもなければわたしは 甘 露 のような 水 を 豚 のように 汚 すことでしょう
ですから わたしを 良 い 方 に 導 いておそばに 置 いてくださるか あるいはわたしのような 卑 しい 者 は 叩 きのめしてしまうか どちらかにしてください さあ その 二 つのうちどちらにするか あなたのほうでお 考 えください もうわたしには 嘆 願 することはなにもありません わたしは 何 度 も 誓 って 真 実 を 述 べました あなたが 遅 延 なさると わたしはあなたの 偉 大 な 名 号 という 舟 を 沈 めてしまうことになるでし ょう 259 あなたが 正 してくださったわたしの 状 態 が わたしが 損 ねることによって もし 損 なわれると すれば ヴェーダに 書 かれたことは ひとまず 置 かせてもらって 世 間 はいったいどのように 言 うでし ょうか 主 が 無 関 心 であり 僕 が 罪 深 ければ その 二 つが 相 俟 って 哀 れな 者 の 朋 友 よ 哀 れな 者 であるわたしは 苦 しみの 火 に 焼 かれ てしまうことでしょう 末 世 がわたしを 押 さえつけるので わたしは 胸 を 金 剛 石 で 守 りました それによって 激 しい 苦 痛 に 耐 えています わたしを 含 めて 他 に 従 属 している 者 たちは 苦 痛 に 耐 えるしかありません 恵 み 深 き 方 よ あなたの 素 晴 らしい 名 声 により あなたはわたしを 守 護 せざるをえないでし ょう 結 局 は わたしの 苦 境 に 目 を 向 け 今 のように 無 関 心 ではいられなくなるでしょう 祭 儀 を 行 う 者 信 心 深 い 者 聖 者 神 の 僕 脱 俗 者 世 俗 の 者 これらすべての 者 たちがおのれの 善 行 にしたがって なんらかの 場 所 を 確 保 することでしょ う しかし わたしのように 臆 病 親 不 孝 残 忍 な 者 たち 堕 落 した だらしない 者 たちは あなたが 顔 を 背 けてしまえば いったい 他 のだれが 受 け 入 れてくれるでしょうか 情 け 深 い 方 よ すべての 人 の 状 態 はその 時 々で 変 化 します しかしわたしにはあなた 以 外 けっしてだれも 好 意 を 寄 せてくれないでしょう ラーマよ 身 口 意 からあなたに 誓 って 言 いますが 主 よ あなたが 保 持 してくださってはじめて このわたしは 維 持 されることでしょう
260 主 が 無 関 心 になると 特 別 な 僕 でさえ 破 滅 してしまいます わたしなど 物 の 数 でもありません わたしが 破 滅 しかかっているのは だれの 目 にも 明 らか です この 世 に 居 場 所 もなく あの 世 を 頼 ることもできません わたしは ラーマよ あなたの 名 号 によって 購 われた 僕 のはずです 行 為 性 向 時 世 愛 欲 瞋 恚 貪 欲 迷 妄 などの 大 きな 鰐 と 深 刻 な 欠 乏 が わたしをしっかり 掴 んで 放 しません 解 放 してくださるのは 大 王 であるあなただけ しかし 無 数 の 兵 士 がわたしを 束 縛 しようとし ているのです 救 い 給 え 主 よ 救 い 給 え わたしは 罪 という 三 種 の 熱 に 焼 かれています 他 の 神 々への 好 み 理 解 信 仰 愛 も すべてはあなたの 戸 口 を 通 して 得 られるものです だがわたしは 熱 いバターミルクを 飲 むにも 息 を 吹 きかけて 飲 むほど 注 意 深 くなりました わたしは 他 の 神 々の 名 前 を 唱 えるのに 疲 れ 果 て カーストの 位 も 行 動 様 式 も 低 下 しました わたしはあなたの 食 べ 残 しを 切 望 するのであって ミルクに 浴 したいとは 思 っていません わたしは 余 所 でよい 行 いをし よい 道 を 進 み みずからの 幸 を 願 うつもりはありません 心 によくよく 考 え ここでもまたみずからの 幸 を 願 うつもりはありません わたしは 何 度 も 思 案 を 重 ねました 主 よ そのようなみずからの 思 いをあなたにも 述 べ わたしは 今 あなたに 維 持 してもらって います 261 わたしの 自 力 では 未 来 永 劫 にわたってわたしの 更 生 はならないでしょう ラーマよ あなたの 思 し 召 しがあれば 瞬 時 にしてわたしの 更 生 はなるでしょう しかし 恩 恵 の 倉 よ どう 言 ったらいいのでしょう あなたのなさりようは とても 賢 明 です わたしはといえば 貴 重 な 宝 石 のような 人 生 と 引 き 換 えに ナツメの 実 を 手 に 入 れただけで した 心 は 汚 れ 行 為 は 末 世 の 汚 れにまみれました この 舌 もあなたの 名 号 を 唱 えたことはかつてなく いつもわたしは 出 鱈 目 なことばかり 言 っ ていました
邪 な 道 を 進 み 邪 に 振 る 舞 い 良 い 結 果 になったことは 間 違 ってもありませんでした 子 供 の 頃 遊 んでいた 時 でも まったくついていませんでした 見 よう 見 まねで また 偽 りの 心 から あるいは 優 れた 人 々との 交 誼 の 影 響 によって わたしよ り 良 い 結 果 が 生 じると わたしはそれを 公 然 と 世 間 に 知 らしめました しかし 自 分 の 罪 悪 は 秘 密 にしました 愛 着 瞋 恚 敵 意 そして 諸 感 覚 器 官 に 伴 う 心 を 大 事 に 養 い それらにバクティを 捧 げ まさにそれらを 愛 しました 過 去 現 在 未 来 に 思 いを 馳 せるだけで わたしの 状 態 は 理 解 できます 結 局 わたしはなにをなすこともなかったのです しかし 世 間 は このわたしには ラーマへの 愛 と 信 があると 言 います その 真 偽 はどうあれ わたしの 拠 り 所 は 主 ラーマよ あなたのみ 262 なにも 言 うことはできません しかし 言 わずにはおられません 主 よ 大 いなる 者 にみずからの 哀 れさを 語 るのは とても 快 いことです だが 主 よ あなたはあまりに 偉 大 で わたしはあまりに 卑 小 です あなたは 神 聖 で わたしは 罪 にまみれています この 両 極 端 について 考 えると 心 は 畏 縮 します しかし 主 よ あなたの 義 を 耳 にし わたしの 心 はふたたびあなたと 相 対 します あなたの 賛 歌 を 歌 い 合 掌 して 低 頭 すれば あなたは 卑 小 な 者 たちにも 情 けをかけてくださいます あなたのなんと 素 晴 らしい 愛 の 流 儀 でしょうか この 宮 廷 では 傲 りによってすべてが 台 無 しになってしまいます 貧 しさ つまり 謙 虚 さによってのみ 安 寧 を 得 ることができます ラーヴァナほど 肥 え 太 った 者 はいませんでした ヴィビーシャナほど 痩 せ 細 った 者 はいま せんでした 今 こそわたしはあなたの 僕 への 愛 について 理 解 できます この 宮 廷 での 賢 さは 千 の 愚 かさに 等 しいのです 素 直 に 真 実 を 語 れば 汚 れは 消 えてしまいます ジャターユ アハリヤー シャバリーのこと を 毎 日 思 い 出 せば
主 よ あなたにたいする 愛 が 失 われることはないと 思 います あなたの 名 号 という 如 意 樹 は すべての 願 いを 叶 えてくれます あなたの 名 号 を 想 起 するだけで 末 世 の 罪 欺 瞞 が 弱 まっていきます 慈 悲 の 倉 よ わたしが 望 む 恩 恵 は シーターの 主 よ あなたへのバクティというガンジス 河 の 水 に 棲 む 魚 でありつづけることで す 263 主 よ 僕 の 心 のうちをどうかよく 理 解 してください わたしの 理 性 という 女 性 は あなたへの 信 頼 を 夫 とし 彼 に 心 からの 愛 を 捧 げることを 誓 い 優 れた 生 活 を 送 ることを 好 みます 悪 行 と 善 行 の 報 いで わたしはあらゆる 人 と 接 することとなりました 他 人 の 状 態 を 検 討 すると 同 時 に 自 分 の 行 った 行 為 についても 検 討 しました しかし 主 よ 今 やわたしは 自 分 の 善 悪 について なんの 懸 念 も 恐 れもありません シーターの 主 よ あなたに 誓 ってわたしは 真 実 を 述 べます あなたは 言 葉 とさらに 知 識 の 主 であり 外 界 も 内 界 も 見 通 す 方 です あなたの 前 では 口 に 出 した 言 葉 も 心 の 内 も 隠 すことはできません わたしはあなたの 僕 であり あなたこそわたしの 恩 人 です もしもわたしが 包 み 隠 して 述 べるとすれば わたしは 蠅 がギー 油 に 落 ちるのと 同 然 になるで しょう 264 わたしの 言 うことを 聞 き それからお 前 によしと 思 われることを 行 え 内 と 外 の 四 つの 眼 でよく 見 て 言 え 三 界 に また 三 世 にわたって ハリのようにお 前 に 好 意 を 寄 せてくれる 方 が 他 にいるか? 身 体 という 家 に 住 むのを 繰 り 返 し お 前 は 幾 度 も 新 しい 肉 親 の 愛 を 経 験 した 愛 の 狡 猾 さも 見 分 けがつくようになり お 前 には 愛 の 内 実 が 露 わになった 友 人 関 係 はといえば それはまさにペテンの 売 買 である 彼 らは 用 がある 時 にだけ 会 いに 来 て 足 に 縋 り 付 いて 懇 願 する
神 々もずる 賢 い お 前 は 彼 らのことがよく 理 解 できたか? 彼 らは 与 えるのは 僅 かだが 受 け 取 るのはその 万 倍 だ 善 行 はといえば それをいくら 積 んでも ラーマなしでは 徒 労 にすぎない それは 火 のない 灰 だけの 護 摩 壇 で 行 う 供 儀 不 毛 地 に 降 る 雨 のようなもの 未 来 永 劫 にわたって 善 なる 方 すべての 者 に 幸 をもたらす 方 その 名 声 がヴェーダでも 世 間 でもあまねく 知 れわたっている 方 そのようなラーマのような 品 性 の 倉 である 主 は 他 にいない 邪 悪 な 者 よ お 前 はまるで 主 を 忘 れてしまったかのようだ どうしてお 前 に 心 の 平 安 がある だろうか 生 類 の 生 命 生 命 の 最 高 の 恩 人 もっとも 愛 すべき 方 卑 小 な 者 たちを 清 める 方 お 前 はその 方 に 不 敬 をなしている 恵 み 深 いコーサラ 王 が お 前 のためにチトラクータで 行 ってくださった 御 業 を お 前 は 心 に 想 起 すべきだ 265 清 らかな 肉 体 と 意 欲 に 満 ちた 心 を 持 ち 我 はラーマの 僕 と わたしは 言 います しかし 主 よ いったいどのような 不 運 のためでしょう わたしはあなたと 良 い 関 係 も 結 べず あなたを 良 く 愛 することもできません 水 を 欲 するのに 火 が 手 に 入 り 甘 露 も 毒 に 変 わってしまいます 末 世 の 悪 行 について まさに 聖 人 たちが 語 ったとおりでした わたしは 太 陽 と 夜 を 見 分 けることもできません 末 世 はわたしを 盲 人 だと 考 え 目 薬 として ジャングルの 雌 虎 の 乳 で 作 ったギー 油 をわたしに 勧 めます その 異 常 な 治 療 法 を 聞 き わたしがそれについて 真 剣 に 考 慮 しはじめると 末 世 はわたしの 心 の 理 性 の 力 を 奪 ってしまいます 主 よ あなたにお 話 しするのもためらわれます またもやわたしは 顔 色 を 失 う 結 果 になるのではないかと 恐 れます しかしながら やはりお 願 いします 末 世 を 召 喚 し 禁 止 してほしいのです
もはやわたしのような 愚 かな 人 間 にはちょっかいを 出 さないようにと 266 恵 み 深 い 方 よ あなたに 近 づきたいと 思 えば 思 うほど わたしはあなたから 遠 ざかってしまいます ラーマよ あなたは 四 ユガにわたって 変 化 なく わたしもまた たとえ 罪 と 欠 点 だらけであっても ずっとあなたの 僕 でした この 卑 しい 末 世 が 機 会 をとらえて 中 途 半 端 な 状 態 だったわたしを 騙 しました 黄 金 色 だったわたしを 醜 い 色 に 変 え 王 だったわたしを 乞 食 にし 賢 明 だったわたしを 愚 かにしました わたしは 無 数 の 山 や 森 をさまよい 火 もないのに 燃 えつづけました そしてわたしはチトラクータを 訪 れ 末 世 のあらゆる 悪 行 を 知 りました 今 やわたしは 恐 怖 におびえています 主 よ わたしは 合 掌 してあなたの 前 に 立 ち 低 頭 してあなたに 述 べています わたしの 聞 いたところでは 素 性 の 知 れた 盗 人 がまた 人 を 殺 すだろう とのことです 主 よ そのことをわたしはあなたに 恭 しく 申 し 上 げました 今 はほっとした 気 分 です 267 ラーマよ わたしは 堅 く 誓 いを 立 てて 今 日 から 絶 対 にあなたの 宮 廷 の 門 から 離 れないことにします 汝 は 我 が 僕 と あなたが 言 ってくださらないかぎり わたしは 一 生 ここから 立 ち 去 ることは ないでしょう 主 よ あなたに 誓 いを 立 てて わたしはほっとしています わたしを 小 突 いて 地 獄 から 追 い 出 そうとして 地 獄 の 従 者 たちは 疲 れ 果 ててしまいました わたしは 梃 子 でも 動 こうとしませんでした この 世 に 何 度 も 生 を 享 け わたしは 母 の 胎 内 で 耐 えがたい 苦 しみを 味 わいました そこでやっと 地 獄 を 貶 して 地 獄 を 離 れたのです
わたしが 頑 固 に それを 手 に 入 れようと 躍 起 になっているもの わたしはそれを 手 に 入 れるまでここを 離 れないでしょう あなたは 憐 れみ 深 い 方 であり 結 局 はそれを 与 えざるをえないでしょう ただ どうか 速 やかにお 願 いしたいのです わたしは 疲 労 困 憊 するばかりです わたしが 罪 にまみれているので 明 言 するのをためらっておられるのなら どうかお 願 いです わたしをあなたの 心 の 中 で 受 け 入 れてください わたしは 末 世 を 目 のあたりにして 動 揺 しています 269 ラーマよ いつになればわたしにとってあなたが 愛 しい 存 在 となるのでしょう 魚 にとって 水 が 愛 しいように 人 にとって 幸 福 な 生 活 が 蛇 にとって 宝 石 が 貪 欲 な 人 にとって 財 産 が 愛 しいように 若 い 男 にとって 若 い 女 が 当 然 愛 しく 思 えるように 慈 悲 の 倉 よ あなたにたいする 強 く 聖 なる 愛 への 意 欲 を わたしの 心 に 生 じさせてくださ い ヴェーダの 教 えでは 賢 明 な 主 よ あなたは 人 の 望 みを 叶 えて 下 さる 方 憐 れみの 倉 よ どうかこの 哀 れなわたしの 願 いを 叶 えてください 272 ラーマよ わたしに 悪 い 感 情 を 持 たないでください わたしから 目 を 背 けないでください お 聞 きください この 世 でもあの 世 でも あなた 以 外 にわたしの 恩 人 はけっしてどこにもいま せん わたしを 欠 点 だらけの 無 能 で 怠 惰 な 卑 しい 役 立 たずの 人 間 だと 考 え 利 己 心 だけの 仲 間 たちは 三 日 熱 の 魔 除 けのようにわたしを 捨 て 間 違 っても 振 り 返 って 見 ようとしませんでした わたしがバクティの 心 に 欠 け ヴェーダの 道 に 外 れ 末 世 の 汚 れに 満 ちているのを 知 り 神 よ 他 の 神 々もまたわたしを 見 捨 てました しかし 神 々にはなんの 咎 もなく すべてはわ
たしが 悪 いのです あなたの 名 号 のお 蔭 でわたしは 腹 を 満 たしています ただそれだけなのに あなたの 僕 だ と 言 われています それはすでに 世 間 で 周 知 のこととなっています 世 間 が 偉 大 か ヴェーダが 偉 大 か どうか あなた 自 身 で 判 断 してください いつであっても とにかく わたしの 良 い 状 態 は あなたからでなくては 生 じないでしょう 神 よ あなたが 遅 延 なされば それだけ 日 ごとにわたしの 状 態 は 悪 化 するでしょう お 願 いです 速 やかにわたしを 受 け 入 れてください 273 あなた 以 外 のだれに 話 すでしょう わたしの 恩 人 が 他 にだれかいるでしょうか 僕 友 苦 しむ 者 寄 る 辺 のない 者 にたいして 生 来 愛 情 を 抱 かれる 方 が 哀 れな 者 の 朋 友 よ あなたの 他 にいるでしょうか 多 くの 罪 人 が 舟 も 筏 もなしに 輪 廻 の 海 を 渡 っていきました ラーマよ 恵 みであれ 怒 りであれ 真 心 からであれ 欺 いてであれ 流 し 目 であれ ともかくあなたがいずれかの 視 線 で 彼 らを 見 たことによって あなたが 好 ましいと 思 う 視 線 で 速 やかにわたしを 見 てください わたしを 受 け 入 れてください 遅 延 なさらないでください もはやわたしの 命 数 は 尽 きようとしているのですから 274 神 よ わたしにどこへ 行 けというのですか 哀 れで 苦 しんでいる 者 にとって どこに 居 場 所 があるというのでしょうか 主 よ あなたのように 恵 み 深 い 方 が 他 にいるというのでしょうか 庇 護 を 求 める まったく 無 力 なものを あなたのように 保 護 してくださる 方 が 他 の 主 たちは 金 のある 者 有 能 な 者
良 く 奉 仕 する 者 だけを 受 け 入 れます 財 もなく 無 能 で 怠 惰 な 者 たちを 守 護 するのは ラーマよ 比 類 のない 主 であるあなたにこそふさわしいのです 口 に 出 してなにを 言 うことがあるでしょうか 主 よ 賢 明 なあなたは わたしの 心 の 中 を 御 存 知 です わたしのような 心 の 汚 れた 者 にとって 三 界 において また 三 世 にわたり あなただけが 唯 一 の 支 えなのです 275 わたしは 戸 口 ごとに 平 伏 し 哀 れっぽい 様 子 で みずからの 窮 状 を 訴 えました この 世 ではいたる 所 に 多 くの 人 々の 苦 しみと 咎 を 除 くことのできる 情 け 深 い 方 々がたくさ んいます しかしその 内 のだれもわたしと 話 をしてくれませんでした 父 母 もわたしを 捨 てました 蛇 がわが 子 を 捨 てるように なぜ 怒 りを 覚 えるでしょう いったいだれを 非 難 するでしょう すべてはわたしの 不 運 のため 人 々はみなわたしの 影 に 触 れることさえためらいます わたしの 不 幸 な 様 を 見 て 聖 人 たちは 言 いました なにも 心 配 することはない お 前 のような 獣 のように 罪 深 く 卑 しい 者 たちが 庇 護 を 求 めに 来 ると ラーマ 様 はそのような 者 たちを 見 捨 てはなさらんだ ラーマ 様 は 最 後 までしっかりと 守 ってくださるお 方 だ それ 以 来 わたしはあなたの 僕 となり あなたにたいする 愛 も 信 もないのに 幸 せな 者 となりました 主 よ あなたの 名 号 の 偉 大 さとあなたの 品 性 とによって わたしは 安 寧 を 得 ました そのことを 考 えると わたしは 心 に 恥 じらいを 覚 え また 同 時 にあなたを 賞 賛 することでしょ う 276
わたしはあらゆることをやりました あらゆる 場 所 に 行 きました あらゆる 人 に 頭 を 下 げまし た ラーマよ あなたの 僕 になるまでは この 世 に 何 度 も 生 を 享 けて いたる 所 でただ 苦 しみの み 味 わいました あなたの 特 別 な 僕 になってからも 願 望 に 余 儀 なくされ 卑 しい 主 たちに 話 しかけました 嘆 き 悲 しみながら 戸 口 ごとにみずからの 窮 状 を 訴 えました しかし 口 をあんぐりと 開 けて 待 っていても 口 には 塵 すら 入 ってきませんでした 着 るものも 食 べるものもなく 気 が 変 になったように あちらこちら 駆 けずりまわりました 命 よりも 愛 しい 自 負 心 と 尊 厳 を 打 ち 捨 て 悪 人 たちの 前 で 幾 度 も 裸 の 腹 を 見 せては 凹 ま せ 食 べ 物 を 乞 いました 主 よ わたしは 欲 ゆえに 渇 望 しましたが なにも 手 に 入 ることはありませんでした 本 当 のところ 取 るに 足 らない 貪 欲 によって 恥 知 らずなこのわたしが 踊 らなかったような 踊 りはひとつもありません 耳 を 澄 まし 目 を 凝 らし 心 を 傾 け この 世 の 王 たちの 真 相 を 探 りました しかし みずから の 頭 を 叩 き 絶 望 するばかりでした そこで これこそわたしにとって 最 善 だと 思 い あわてふためいてあなたの 御 足 におすがり に 来 たのです ダシャラタ 王 の 御 子 よ あなたこそ 全 能 です 三 界 があなたを 誉 め 称 えています あなたに 低 頭 するこのわたしを 御 覧 ください 主 よ あなたの 数 々の 名 声 が わたしに 支 援 の 約 束 を 与 え わたしをここまで 呼 び 寄 せたの です 277 ラーマ 王 よ わたしにとってあなた 以 外 に 真 の 恩 人 はいません 主 よ あなたを 含 めすべての 方 々にわたしは 申 し 上 げます よく 考 慮 なさり もしあなた 以 外 に 著 しい 主 がいるならば はっきりと 別 の 主 張 をしていただ きたいと 思 います 体 と 魂 の 結 び 付 いた 生 類 の 友 は みな 偽 りの 縫 い 目 で 縫 い 合 わされたようなものです 思 うに 彼 らはバナナの 幹 に 髄 がないようなものです
取 るに 足 らない 硝 子 が 黄 金 や 宝 石 に 接 し はさまれて 映 え 輝 くようなものです 父 よ この 哀 れなわたしの 嘆 願 の 書 を あなたみずから 読 んでもらいたいのです 自 分 の 心 を 見 つめて わたしが 書 いたこの 書 に 恵 み 深 きあなたにふさわしく お 墨 付 きを 賜 わり それから 五 人 会 に 諮 問 してもらいたいの です 278 風 神 の 息 子 ハヌマーンよ! 敵 を 滅 ぼすシャトゥルグナよ! 親 愛 なバラタよ! ラクシュマナ よ! 各 々 都 合 のよい 時 に どうかこの 哀 れなわたしを 思 い 出 してください そうしてくだされば この 衰 弱 し 切 ったわたしの 僕 としての 願 いも 叶 えられるでしょう 宮 廷 においては だれもが 正 しい 修 行 者 を 誉 め 称 えます しかし そうでないわたしを あなた 方 が 口 添 えしてくだされば 支 えのないわたしに 支 え がもたらされるでしょう あなた 方 には 善 果 と 名 声 主 の 恵 み この 世 での 益 そして 解 脱 が もたらされるでしょう 折 を 見 て この 罪 深 いわたしの 状 態 を 是 正 してください そして 恵 み 深 い 保 護 者 であるラーマに 極 限 の 僕 であるわたしの 愛 の 流 儀 を 伝 えてくだ さい 279 ハヌマーンの 意 向 とバラタの 好 意 を 見 てとり ラクシュマナは 述 べた 主 よ 末 世 においても ひとりの 僕 によって あなたの 名 号 にたいする 愛 と 信 が 維 持 されて います それを 聞 き そこに 集 う 者 たちはみな 賛 同 して 言 った わたしたちもこの 僕 の 振 舞 につい ては かねてより 知 っています まさに 惨 めな 者 に 情 け 深 いラーマの 恩 恵 である みなが 見 守 る 中 主 ラーマはすぐに 惨 めな 者 の 腕 を 手 に 取 った ラーマは 微 笑 み 言 った そのとおりだ わたしもこの 僕 のことはすでに 聞 き 知 っている この 書 にラーマ 手 ずからのお 墨 付 きをいただき 寄 る 辺 ないわたしは 目 的 を 達 し 心 に 喜
び 主 の 足 元 に 低 頭 した