染 色 体 の 数 の 異 常 1. 倍 数 性 (polyploidy) 2. 異 数 性 (aneuploidy)
1. 正 倍 数 性 1.1 正 倍 数 性 (euploidy) 近 縁 の 種 品 種 において 基 本 数 の 完 全 な 整 数 倍 の 染 色 体 セット (ゲノム)を 持 っていること 一 倍 体 ( 半 数 体 ) 二 倍 体 ( 通 常 ) 三 倍 体 四 倍 体 二 倍 体 (diploid)が 通 常 の 状 態 であるので 普 通 3 倍 以 上 のゲノ ム を 持 つ 個 体 を 倍 数 体 という 同 一 種 由 来 のゲノムだけ 有 するものを 同 質 倍 数 体 (autopolyploid) 異 なる 種 由 来 のゲノムを 有 するものを 異 質 倍 数 体 (allopolyploid)と いう 二 倍 体 の 体 細 胞 の 自 然 な 染 色 体 倍 加 や 非 還 元 配 偶 子 の 授 精 に よって 生 じる 動 物 ではまれで 発 生 しても 正 常 に 発 達 しないが 植 物 では 普 通 に 見 られる 人 為 的 にも 染 色 体 倍 加 は 可 能 -コルヒチン 処 理 魚 類 の 受 精 卵 の 加 圧 や 温 度 処 理 -
基 本 数 (basic number): 一 連 の 倍 数 体 種 の 中 で 最 少 の 染 色 体 数 を 持 つ 種 の 半 数 染 色 体 数 (x=) 二 倍 体 では 基 本 数 と 配 偶 子 に 含 まれ る 染 色 体 数 (n=)が 同 じになる 例 :ヒト 2n=46, n=23 ゲノム(genome): 生 活 の 単 位 であり 一 ゲノムがその 構 成 分 子 で ある 一 染 色 体 (またはその 断 片 )を 失 えば 死 滅 するか または 生 活 機 能 をいちじるしく 弱 める ( 木 原 1931); 配 偶 子 の 持 つ 染 色 体 数 (Winkler 1920) 分 子 遺 伝 学 では ある 生 物 種 が 持 つ 全 DNA 情 報 と 定 義 される
1.2 一 倍 体 ( 半 数 体 :haploid) ゲノム を1セットだけを 持 つ 個 体 を 半 数 体 という 単 為 生 殖 (parthenogenesis)によって 希 に 発 生 する 生 育 は 二 倍 体 よりは 悪 く 不 稔 になる 人 為 的 にも 発 生 させることができる (1) 葯 培 養 (2) 遠 縁 交 雑 (3) 不 活 性 化 精 子 花 粉 による 授 精 自 然 な 状 態 で 発 生 する 場 合 がある 例 : 膜 翅 目 昆 虫 の 雄 [ミツバチ] 2n=32, 2n=16 パンコムギの 正 常 個 体 (2n=42) と 半 数 体 (2n=21) http://en.ikipedia.org/iki/haplodiploid_sex-determination_system
1.3 同 質 倍 数 体 同 質 四 倍 体 (autotetraploid) 2つの 二 価 染 色 体 同 一 種 由 来 のゲノムを4つ 持 つ 一 般 的 に 生 育 は 遅 いが 旺 盛 で 気 孔 花 種 子 が 大 きくなる 稔 性 は 低 下 する( 右 図 参 照 ) 自 然 界 では ジャガイモ カキ ト ウモロコシ(?) ギシギシ 人 為 的 な 同 質 四 倍 体 は 果 樹 ソバ 花 卉 などの 育 種 に 利 用 さ れている 2:2 四 価 染 色 体 2:2 三 価 染 色 体 + 一 価 染 色 体 2:1 1:0
同 質 三 倍 体 (autotriploid) 同 一 種 由 来 のゲノムを3つ 持 つ 二 倍 体 と 四 倍 体 の 交 配 によって 育 成 できる 一 般 的 に 生 育 は 良 い 稔 性 は 極 端 に 低 下 する( 右 図 参 照 ) 自 然 界 では ヒガンバナ バナナ 人 為 的 な 同 質 三 倍 体 は その 強 健 性 大 果 性 及 び 不 稔 性 を 利 用 した 果 樹 果 物 花 卉 などの 育 種 に 利 用 されて いる 三 価 染 色 体 二 価 染 色 体 + 一 価 染 色 体 2:1 2:1
1.4 異 質 倍 数 体 異 質 四 倍 体 (allotetraploid) 複 二 倍 体 (amphidiploid) 異 なる 二 倍 体 種 間 の 雑 種 の 染 色 体 倍 加 又 は 異 なる 四 倍 体 種 間 の 交 雑 によっ 生 じる ( 右 図 参 照 ) 異 質 四 倍 体 は 異 なる 二 種 の 細 胞 融 合 によっ ても 作 成 できる( 擬 生 殖 雑 種 :parasexual hybrid) 稔 性 は 正 常 になる 自 然 界 では コムギ ワタ タバコ 複 二 倍 体 は 作 物 の 育 種 に 利 用 されている 例 :Raphanobrassica( 大 根 xキャベツ) ライコ ムギ(マカロニコムギxライムギ) 千 宝 菜 (コ マツナxキャベツ) ハクラン(ハクサイxキャ ベツ) AA x BB AA AB AABB BB AAAA x BBBB AABB 交 雑 染 色 体 倍 加 染 色 体 倍 加 交 雑
Raphanobrassica G. D. Karpechenko (1927)の 育 成 大 根 (Raphanus sativus 2n=18) とキャベツ(Brassica oleracea 2n=18)の 雑 種 は 高 い 不 稔 性 を 示 した まれに 得 られた 種 子 は 染 色 体 が 倍 加 しており 稔 性 は 回 復 してい た 木 原 均 著 小 麦 の 合 成 ( 講 談 社 1973)
2. 異 数 性 一 部 の 染 色 体 の 数 が 変 異 している 状 態 を 異 数 性 といい そのような 変 異 を 持 つ 個 体 を 異 数 体 (aneuploid)という 正 常 より 染 色 体 数 が 多 い 場 合 を 高 次 異 数 性 (hyperaneuploidy) 又 は 多 染 色 体 性 (polysomy) 少 ない 場 合 を 低 次 異 数 性 (hypoaneuploidy) という Nullisomy( 零 染 色 体 性 ) Monosomy( 一 染 色 体 性 ) Trisomiy( 三 染 色 体 性 ) Double monosomy 2n=2x-2 2n=2x-1 2n=2x+1 2n=2x-1-1
2.1 異 数 性 生 成 の 原 因 : 染 色 体 不 分 離 (non-disjunction) 体 細 胞 分 裂 や 減 数 分 裂 の 後 期 において 染 色 体 ( 染 色 体 分 体 ) が 正 常 に 分 離 せず 一 方 の 細 胞 に 過 剰 に 他 方 に 不 足 した 染 色 体 が 分 配 されること 体 細 胞 分 裂 での 不 分 離 は 異 数 性 の 細 胞 からなるモザイク 個 体 を 生 じるが 異 数 性 は 子 孫 に 伝 達 することはまれである 減 数 分 裂 で 起 こると 異 数 性 の 配 偶 子 が 生 じるので 異 数 体 の 子 孫 が 生 じる 原 因 となる( 右 図 参 照 ) 減 数 第 一 分 裂 後 期 減 数 第 二 分 裂 後 期
2.2 ショウジョウバエのX 染 色 体 不 分 離 と 性 決 定 C. Bridges (1916) 減 数 分 裂 時 に 希 にX 染 色 体 の 不 分 離 により (n+1) (n-1)の 異 常 な 配 偶 子 が 生 じる 正 常 な 配 偶 子 との 受 精 によ り(2n+1) (2n-1)の 異 数 体 が 生 じる XXY 個 体 は 正 常 な 雌 XO 不 妊 雄 になる + 赤 眼 雄 + + X 白 眼 雌 卵 + + Y 染 色 体 は 雄 の 機 能 には 必 要 であるが 性 決 定 には 関 与 しない 精 子 赤 眼 雌 致 死 赤 眼 雄 ( 不 妊 ) 白 眼 雄 白 眼 雌 致 死
雌 雄 モザイク (gynandromorph) 雌 雄 モザイクのツマグロヒョウモン(2002 年 箕 面 昆 虫 館 提 供 ) ショウジョウバエのような 昆 虫 で 同 一 個 体 に 雌 雄 の 明 確 な 組 織 の 区 別 が 見 られる 現 象 性 が 染 色 体 体 構 成 によって 厳 密 に 決 まる 自 律 的 (autonomous) 性 決 定 に 起 因 する 受 精 卵 の 発 生 初 期 に 起 こるX 染 色 体 の 不 分 離 が 原 因 と 考 えられる XX 不 分 離 によるX 染 色 体 の 消 失 XX XO 組 織 組 織
2.3 ヒトの 異 数 性 ( 性 染 色 体 ) http://en.ikipedia.org/iki/chromosome_abnormality ターナー 症 候 群 Turner syndrome:2n=45, XO female クラインフェルター 症 候 群 Klinefelter syndrome:2n=47, XXY male XXX 女 性 triple-x female:2n=47, XXX female XYY 男 性 XYY male:2n=47, XYY male Y 染 色 体 が 男 性 決 定 の 必 須 因 子
2.4 X 染 色 体 の 不 活 性 化 : Lyonの 仮 説 (Lyonization) M. Lyon(1961) http://en.ikipedia.org/iki/x-inactivation 哺 乳 動 物 の 雄 と 雌 でX 染 色 体 の 数 が 異 なるが どちらも 正 常 である この 矛 盾 はX 染 色 体 の 不 活 性 化 によって 解 決 される 哺 乳 動 物 のX 染 色 体 の 内 活 性 のあるものは 細 胞 に1 本 だけで 残 り のXは 胚 発 生 の 初 期 に 異 常 凝 縮 して 性 染 色 質 (X-クロマチン sex chromatin body or Barr body)となり 不 活 性 化 する どちらのX 染 色 体 が 不 活 性 化 するかは 機 会 的 に 決 まり いったん 不 活 性 化 すると 生 涯 再 び 活 性 化 しない X 染 色 体 の 数 に 応 じて 凝 集 したX 染 色 体 は 細 胞 核 でBarr bodyとして 観 察 される 三 毛 猫 の 毛 色 を 決 める 遺 伝 子 はX 染 色 体 上 にあり Lyonizationが 原 因 と 考 えられている http://en.ikipedia.org/iki/tortoiseshell_cat 46, XY; 45, X 46, XX; 47, XXY 47, XXX; 48, XXXY 48, XXXX; 49, XXXXY
Barr body http://en.ikipedia.org/iki/x-inactivation 三 毛 猫 (tortoiseshell cat) http://en.ikipedia.org/iki/tortoiseshell_cat 三 毛 猫 の 毛 色 を 決 める 遺 伝 子 はX 染 色 体 上 にあ り Lyonizationが 原 因 と 考 えられている S: 常 染 色 体 に 座 乗 し 白 黒 の 斑 紋 を 作 る X O : X 染 色 体 上 に 座 乗 し 茶 の 毛 色 にする X B : X 染 色 体 上 に 座 乗 し 黒 の 毛 色 にする
1000 人 当 りのダウン 症 児 の 出 生 2.4 ヒトの 異 数 性 ( 常 染 色 体 ) Trisomy 21 (Don Syndrome) (2n=47, +21) :700 出 生 に1 人 短 命 http://en.ikipedia.org/iki/don_syndrome Trisomy 18 (Edards Syndrome) (2n=47, +18) : 20,000 出 生 に1 人 平 均 寿 命 6か 月 Trisomy 13 (Patau Syndrome) (2n=47, +13) :8,000 出 生 に1 人 平 均 寿 命 2-4か 月 母 親 の 出 産 年 齢 と 染 色 体 異 常 児 の 発 生 には 正 の 相 関 がある 母 親 の 年 齢