仙 台 医 療 センター 医 学 雑 誌 Vol. 2 April 2012 症 例 報 告 胃 癌 と 早 期 大 腸 癌 を 同 時 性 重 複 した 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 上 野 孝 之 1) 高 橋 広 喜 1) 菅 原 かおり 1) 吉 田 はるか 1) 杉 村 美 華 子 1) 野 口 謙 治 1) 岩 渕 正 広 1) 真 野 浩 1) 鵜 飼 克 明 1) 湯 目 玄 2) 斎 藤 俊 博 2) 鈴 木 博 義 3) 田 所 慶 一 1) 1) 国 立 病 院 機 構 仙 台 医 療 センター 消 化 器 科 2) 国 立 病 院 機 構 仙 台 医 療 センター 外 科 3) 国 立 病 院 機 構 仙 台 医 療 センター 臨 床 検 査 科 抄 録 症 例 は 84 歳 女 性 血 便 肛 門 部 腫 瘤 を 主 訴 に 来 院 した 下 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 で 7 時 ~10 時 方 向 に 肛 門 より 脱 出 する 径 40mm 大 の 隆 起 性 病 変 と 1 時 ~2 時 方 向 に 肛 門 管 から 直 腸 にかけてもう1つの 径 35mm 大 の 隆 起 性 病 変 を 認 め 生 検 で 悪 性 黒 色 腫 と 診 断 された 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 で 幽 門 前 庭 部 後 壁 に 径 40mm 大 の 進 行 1 型 癌 を 認 め 生 検 により 低 分 化 腺 癌 と 診 断 された また S 状 結 腸 の 有 茎 性 病 変 に 対 し 内 視 鏡 切 除 術 を 施 行 したところ 腺 腫 内 癌 と 診 断 された 胃 癌 に 対 しては 幽 門 側 胃 切 除 術 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 に 対 しては QOL を 考 慮 し 経 肛 門 的 腫 瘍 切 除 術 を 施 行 した 高 齢 のため 補 助 化 学 療 法 は 施 行 しなかった が 術 後 2 年 経 過 した 現 在 肛 門 部 に 局 所 再 発 を 認 めるものの 生 存 中 である 本 邦 報 告 例 において 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 に 他 臓 器 癌 を 重 複 した 例 を 検 索 した 結 果 自 験 例 を 含 めて 7 例 認 めた 重 複 癌 は 胃 癌 3 例 結 腸 癌 3 例 乳 癌 1 例 直 腸 悪 性 リンパ 腫 1 例 甲 状 腺 癌 1 例 であった 予 後 は 自 験 例 と 不 明 な 2 例 を 除 くと 術 後 もしくは 初 診 後 5 年 以 内 に 悪 性 黒 色 腫 の 再 発 転 移 で 死 亡 した キーワード: 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 胃 癌 大 腸 癌 重 複 癌 (2011 年 1 月 11 日 原 稿 受 領 1 月 11 日 採 用 ) 1 緒 言 悪 性 黒 色 腫 は 皮 膚 の 色 素 細 胞 (メラノサイト)あ るいは 母 斑 細 胞 から 発 生 する 悪 性 度 の 高 い 皮 膚 癌 の 一 種 である 皮 膚 以 外 では まれに 脳 眼 窩 や 口 腔 肺 消 化 管 外 陰 部 などの 粘 膜 にも 発 生 するこ とがあり 消 化 管 においては 直 腸 肛 門 部 と 食 道 に 好 発 する 1), 2 ) 直 腸 肛 門 部 原 発 の 悪 性 黒 色 腫 (anorectal malignant melanoma:amm)は 特 徴 的 な 症 状 に 乏 しく 早 期 診 断 が 困 難 であり 血 行 性 お 71
胃 癌 早 期 大 腸 癌 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 重 複 癌 よびリンパ 行 性 に 転 移 しやすく 極 めて 予 後 不 良 な 疾 患 とされている 3),4) 今 回 われわれは AMM に 胃 癌 大 腸 癌 を 同 時 性 に 重 複 した 症 例 を 経 験 したので 報 告 する 2 症 例 患 者 : 84 歳 女 性 主 訴 : 血 便 肛 門 部 腫 瘤 家 族 歴 : 特 記 すべきことなし 既 往 歴 : 高 血 圧 現 病 歴 : 2009 年 11 月 初 旬 より 血 便 と 肛 門 部 腫 瘤 に 気 づいていたが 放 置 していた 2011 年 1 月 に 症 状 の 悪 化 を 認 め 近 医 を 受 診 し 肛 門 管 癌 が 疑 われ 当 科 へ 紹 介 となった 入 院 時 現 症 : 身 長 145cm 体 重 42kg 血 圧 109/56mmHg 脈 拍 88 回 /min 体 温 36.6 眼 瞼 結 膜 に 貧 血 なく 表 在 リンパ 節 は 触 知 せず 胸 腹 部 に 異 常 を 認 めなかった 高 度 な 脊 柱 後 弯 症 のた め 常 に 前 屈 位 の 状 態 であった 直 腸 指 診 では 直 腸 肛 門 縁 より 脱 出 する 表 面 結 節 状 の 黒 褐 色 を 呈 した 弾 性 硬 の 腫 瘤 と 下 部 直 腸 にも 弾 性 硬 な 腫 瘤 を 触 知 し た 血 液 検 査 所 見 : 貧 血 なく 肝 胆 道 系 酵 素 および 腎 機 能 などは 正 常 範 囲 内 であった 腫 瘍 マーカーは CEA が 7.0( 正 常 :0~3.4)ng/ml 悪 性 黒 色 腫 の 腫 瘍 マーカーである 5-S-cysteinyldopa は 12.1 ( 正 常 :1.5~8.0) nmol/l と 軽 度 上 昇 を 認 めた 下 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 : 7 時 ~10 時 方 向 に 肛 門 より 脱 出 する 易 出 血 性 の 黒 褐 色 を 呈 した 径 40mm 大 の 隆 起 性 病 変 を 認 めた 直 腸 内 反 転 観 察 では 1 時 から 2 時 方 向 に 肛 門 管 から 直 腸 にかけて 径 35mm 大 の 隆 起 性 病 変 を 認 めた( 図 1a b) 生 検 の 結 果 2つ ともメラニン 色 素 を 含 む 腫 瘍 細 胞 が 多 数 認 められ 悪 性 黒 色 腫 と 診 断 された さらに S 状 結 腸 に 径 20mm 大 の 有 茎 性 病 変 を 認 めた( 図 1c) 注 腸 造 影 検 査 : 肛 門 管 に 表 面 不 整 な 腫 瘤 と 肛 門 管 から 直 腸 にかけて 比 較 的 表 面 平 滑 な 腫 瘤 を 認 めた( 図 2a,b) S 状 結 腸 に 径 20mm 大 の 腫 瘤 性 病 変 を 認 めた( 図 2c, d) 骨 盤 部 MRI 検 査 所 見 : 肛 門 管 から 突 出 する 腫 瘤 性 病 変 と 肛 門 管 から 直 腸 に 腫 瘤 性 病 変 を 認 め 2つの 図 1 上 部 下 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 7 時 ~10 時 方 向 に 肛 門 より 脱 出 する 易 出 血 性 の 黒 褐 色 を 呈 した 径 40 mm 大 の 隆 起 性 病 変 を 認 めた(a) 直 腸 内 反 転 観 察 では 1 時 から 2 時 方 向 に 肛 門 管 から 直 腸 にかけて 径 35 mm 大 の 隆 起 性 病 変 を 認 めた (b) S 状 結 腸 に 径 20mm 大 の 有 茎 性 病 変 を 認 めた(c) 幽 門 前 庭 部 後 壁 に 径 40mm 大 の 進 行 1 型 癌 を 認 め, 十 二 指 腸 へ 陥 頓 していた(d) 図 2 上 部 下 部 消 化 管 造 影 検 査 肛 門 管 に 表 面 不 整 な 腫 瘤 (a, 矢 印 )と 肛 門 管 から 直 腸 にかけて 比 較 的 表 面 平 滑 な 腫 瘤 (a, b, 矢 頭 )を 認 めた. S 状 結 腸 に 径 20mm 大 の 腫 瘤 性 病 変 を 認 めた(c, 矢 印 ) 胃 から 十 二 指 腸 へ 陥 頓 した 腫 瘤 を 認 めた (d, 矢 頭 ) 72
仙 台 医 療 センター 医 学 雑 誌 Vol. 2 April 2012 腫 瘍 は T1 で low intensity T2 および 造 影 T1 強 調 画 像 において high intensity を 呈 した( 図 3) 図 4 切 除 標 本 所 見 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 は, 径 40mm 大 (a)と 径 35mm 大 (b)の2つの 腫 瘤 で sm, ly1, v0 であっ た 胃 癌 は 幽 門 部 後 壁 に 径 50mm 大 の 進 行 1 型 病 変 で por1 tub2 with sig, ly1, v1, T2(SS), N0, StageⅠB であった 図 3 骨 盤 MRI 検 査 肛 門 管 から 突 出 する 腫 瘤 性 病 変 と 肛 門 管 から 直 腸 に 腫 瘤 性 病 変 を 認 め, 2 つの 腫 瘍 は T1 で low intensity(a) T2(b)および 造 影 T1 強 調 画 像 (c, d)において high intensity を 呈 した 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 : 幽 門 前 庭 部 後 壁 に 径 40mm 大 の 進 行 1 型 癌 を 認 め 十 二 指 腸 へ 陥 頓 し ていた( 図 1d) 十 二 指 腸 内 でスコープを 反 転 させ 生 検 を 施 行 し 低 分 化 腺 癌 と 診 断 された 胸 腹 部 CT 検 査 所 見 : 肺 転 移 肝 転 移 や 腹 部 および 骨 盤 部 内 に 明 らかなリンパ 節 腫 大 も 指 摘 されなか った 治 療 および 経 過 : S 状 結 腸 の 有 茎 性 病 変 に 対 し 内 視 鏡 切 除 術 を 施 行 したところ carcinoma in adenoma, tub 1,m, ly0, v0 と 診 断 された 胃 癌 に 対 しては 幽 門 側 胃 切 除 術 を 施 行 し AMM に 対 しては QOL を 考 慮 し 経 肛 門 的 腫 瘍 摘 出 術 を 選 択 した 切 除 標 本 所 見 : AMM は 7 時 ~10 時 に 径 40mm 大 と 1 時 ~2 時 に 径 35mm 大 の2つの 腫 瘤 で 大 腸 癌 取 扱 い 規 約 に 準 じると sm, ly1, v0 であった( 図 4a,b) 組 織 学 的 に 類 円 形 から 多 角 形 細 胞 質 を 持 つ N/C 比 の 高 い 異 型 細 胞 が 充 実 性 に 増 殖 しており 細 胞 質 内 に 褐 色 のメラニン 色 素 を 含 む 腫 瘍 細 胞 が 多 数 み られた 免 疫 染 色 では S-100 および HMB-45 が 陽 性 であった( 図 5) 胃 癌 は 幽 門 部 後 壁 に 径 50mm 図 5 直 腸 肛 門 部 の 病 理 組 織 所 見 類 円 形 から 多 角 形 細 胞 質 を 持 つ N/C 比 の 高 い 異 型 細 胞 が 充 実 性 に 増 殖 しており(a, HE 染 色, 100) 細 胞 質 内 に 褐 色 のメラニン 色 素 を 含 む 腫 瘍 細 胞 が 多 数 みられた(b, HE 染 色, 400 ) 免 疫 染 色 で は HMB-45(c)および S-100(d) が 陽 性 であった 大 の 腫 瘤 で Type1, por1 tub2 with sig, ly1, v1, T2(SS), N0, StageⅠB であった( 図 4) 術 後 経 過 良 好 で 術 後 第 19 病 日 目 に 退 院 した 高 齢 のた め 補 助 化 学 療 法 は 施 行 せず 近 医 にて 外 来 経 過 観 察 となり その 後 1 年 半 経 過 した 2011 年 7 月 に 肛 門 部 に 局 所 再 発 を 認 めるも 対 症 療 法 にて 加 療 中 で ある 3 考 察 AMM は 全 悪 性 黒 色 腫 症 例 の 0.2~3%で 肛 門 部 73
胃 癌 早 期 大 腸 癌 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 重 複 癌 原 発 の 悪 性 腫 瘍 で 占 める 割 合 は 0.1~4.6%と 比 較 的 まれな 疾 患 である 5),6) 好 発 年 齢 は 50~70 歳 代 女 性 が 男 性 の 2 倍 多 いとされる 7) AMM は 直 腸 肛 門 移 行 部 に 存 在 するメラノサイト より 発 生 すると 考 えられているが 同 部 が 外 胚 葉 と 内 胚 葉 の 接 合 部 で 発 生 学 的 に 不 安 定 であること ま た 排 便 による 慢 性 刺 激 にさらされることが 要 因 と 考 えられる 8) 症 状 は 肛 門 部 出 血 肛 門 部 痛 便 通 異 常 などがあ り AMM の 特 徴 的 な 症 状 というのはない 痔 核 や 肛 門 ポリープとして 放 置 されて 診 断 が 遅 れ 進 行 し た 状 態 で 診 断 されることある 9) 自 験 例 においても 初 発 症 状 から 受 診 し 診 断 されるまで 約 1 年 以 上 経 過 していた 診 断 は 視 診 や 内 視 鏡 検 査 で 黒 色 調 の 弾 性 硬 な 腫 瘤 を 認 めた 場 合 に AMM を 疑 い 生 検 で 腫 瘍 中 にメ ラニン 顆 粒 の 存 在 を 証 明 することにより 確 定 診 断 を 得 る AMM の 7~30%にメラニン 色 素 が 目 立 た ない 低 色 素 性 あるいは 無 色 素 性 黒 色 腫 では 確 定 診 断 が 困 難 な 場 合 もあり 6),7) メラニン 染 色 や S-100 蛋 白 HMB-45 などの 免 疫 染 色 が 診 断 に 有 用 となる 10) 一 般 に 皮 膚 の 悪 性 黒 色 腫 においては 生 検 を 行 う ことは 転 移 を 促 進 するとされているが 11) AMM の 場 合 は 生 検 が 予 後 に 与 える 影 響 についての 相 関 関 係 は 認 められなかった 7) これは 皮 膚 原 発 例 に 比 べ 初 診 時 すでに 遠 隔 転 移 を 伴 う 進 行 例 が 多 いため と 推 測 されている 7 ) 9) AMM を 疑 い 生 検 施 行 後 に 確 定 診 断 された 場 合 は 可 及 的 すみやかに 治 療 を 開 始 するべきと 考 える また AMM は 自 験 例 のように 多 発 例 や 壁 内 転 移 の 症 例 も 報 告 12) されているため 局 所 切 除 後 は 慎 重 な 経 過 観 察 を 要 すると 思 われる 治 療 は 外 科 的 切 除 が 選 択 されるが 切 除 範 囲 やリ ンパ 節 郭 清 を 含 めた 標 準 術 式 は 確 立 していない 腹 会 陰 式 直 腸 切 断 術 (abdominoperineal resection: APR)と 局 所 切 除 術 (local excision:le)のどちらを 選 択 するかについて 本 邦 ではリンパ 節 郭 清 と APR を 行 うことが 一 般 的 となっている 4),7) さらに 原 ら 4) は 長 期 生 存 例 の 条 件 として 1) 腫 瘍 径 が 5cm 未 満 であること 2) 壁 深 達 度 が MP 以 内 であること 3)リンパ 節 転 移 の 有 無 に 関 わらず 広 範 なリンパ 節 郭 清 を 伴 う APR を 施 行 することの 3 点 を 挙 げてい る 一 方 欧 米 では APR と LE で 予 後 に 差 はない とする 意 見 が 多 く 術 式 に 関 しては 統 一 した 見 解 に は 至 っていない 13 ),14) AMM の 重 複 癌 について 医 学 中 央 雑 誌 で 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 重 複 癌 のキーワードで 検 索 したところ 1983 年 から 2011 年 までの AMM の 報 告 128 件 ( 会 議 録 を 除 く)のなかで 重 複 癌 は 7 例 であった ( 表 1) 表 1 Anorectal malignant melanoma associated with multiple primary neoplasm reported in Japan m;mucosa, sm;submucosa, mp; muscularis propria, a; adventitia, APR: abdominoperineal resection, LE: local excision 74
仙 台 医 療 センター 医 学 雑 誌 Vol. 2 April 2012 7 例 中 6 例 は 女 性 であり 同 時 性 : 異 時 性 は 6:1 であった 胃 癌 が 3 例 ( 進 行 癌 1 例 ) 大 腸 癌 が 3 例 ( 進 行 癌 1 例 ) 直 腸 の 悪 性 リンパ 腫 甲 状 腺 癌 乳 癌 が 1 例 であった 自 験 例 は AMM に 胃 癌 と 大 腸 癌 を 重 複 していたが 佐 藤 ら 3) の 報 告 においては AMM と 胃 癌 の 異 時 性 重 複 症 例 の 剖 検 後 に 甲 状 腺 癌 の 合 併 が 判 明 していた 治 療 は 4 例 に APR が 施 行 され その 後 の 予 後 が 明 らかな 3 例 においては 再 発 転 移 のため 5 年 以 内 に 死 亡 している 自 験 例 は AMM に 対 し LE を 施 行 したが 1 年 半 後 に 局 所 再 発 を 認 め 対 症 療 法 のみを 施 行 している AMM の 予 後 は 極 めて 不 良 であり 5 年 生 存 率 は 4.6~15% APR 術 後 の 5 年 生 存 率 でも 18.7% 平 均 生 存 期 間 は 8 ~25 ヶ 月 とされる 15),16) 予 後 が 不 良 である 理 由 と して 本 疾 患 が 女 性 に 多 く 肛 門 診 察 を 恥 ずかしがる ことが 多 いため 発 見 が 遅 れること また 発 見 されて も 小 さいうちは 痔 核 と 間 違 えられやすいことなど が 早 期 診 断 の 妨 げとなっている 加 えて 腫 瘍 自 体 の 悪 性 度 が 高 いこと 直 腸 肛 門 移 行 部 はリンパ 血 管 系 が 豊 富 であり 早 期 にリンパ 行 性 血 行 性 転 移 が 生 じ やすいことなどがあげられる 3) AMM の 予 後 改 善 のためには 早 期 発 見 早 期 診 断 が 現 時 点 では 最 も 重 要 であると 考 えられる 4 結 語 今 回 我 々は AMM に 胃 癌 大 腸 癌 を 重 複 した 極 め て 稀 な 1 例 を 経 験 したので 報 告 した 悪 性 黒 色 腫 を 含 め 悪 性 腫 瘍 の 症 例 では 常 に 重 複 癌 の 可 能 性 を 考 慮 した 術 前 精 査 と 術 後 長 期 間 の 経 過 観 察 が 重 要 で あると 思 われる なお 本 症 例 の 要 旨 は 第 191 回 日 本 消 化 器 病 学 会 東 北 支 部 例 会 (2011 年 7 月 盛 岡 )にて 報 告 した 5 文 献 1) Rosai J. Dermatoses tumor and tumorlike conditions. In Rosai and Ackerman s Surgical Pathology, ninth ed. Mosby, New York,2004; 154-176. 2) 嶋 田 鼎, 伊 藤 博 司, 青 野 義 一, 他 : 消 化 管 悪 性 黒 色 腫 の 最 近 の 動 向 ならびに 長 期 生 存 例 の 検 討 外 科 2009;71;973-981 3) 佐 藤 健 誠, 渡 辺 晴 司, 辻 邦 彦, 他 : 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 手 稲 渓 仁 会 病 院 医 学 雑 誌 1997;1;61-69 4) 原 春 久, 浅 野 道 雄, 浅 井 秀 司, 他 : 長 期 生 存 し た 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 日 消 外 会 誌 1992;25;2046-2049 5) S Ishizone, N Koide, F Karasawa, et. al. Surgical treatment for anorectal malignant melanoma:report of five cases and review of 79 Japanese cases. Int J Colorectal Dis. 2008;23:1257-1262 6) Wanebo HJ, Woodruff JM, Farr GH, et al. Anorectal melanoma. Cancer. 1981;47: 1891-1900. 7) 岡 部 聡, 中 島 和 美, 金 子 慶 虎, 他 : 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 自 験 例 と 本 邦 報 告 137 例 の 検 討 日 本 大 腸 肛 門 病 会 誌 1987;40:401-407 8) 河 端 秀 明, 趙 栄 済, 桂 奏, 他 : 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 胃 と 腸 2007;42;1290-1296 9) 西 科 琢 雄, 国 枝 克 行, 宮 喜 一, 他 : 長 期 生 存 し えた 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 2 例 日 消 外 会 誌 2001;34;292-296 10) 猪 狩 公 宏, 落 合 高 徳, 東 海 林 裕, 他 : 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 4 例 日 臨 外 会 誌 2009; 70:1786-1790 11) 石 原 和 之 : 外 科 医 のための 境 界 領 域 の 知 識 悪 性 黒 色 腫 外 科 1980;42;629-633 12) 村 山 明 子, 早 川 直 和, 山 本 英 夫, 他 : 上 皮 内 進 展 を 伴 った 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 日 消 外 会 誌 1999;32;2296-2300 13) Yeh JJ, Shia J, Hwu WJ, et al The Role of Abdominoperineal Resection as Surgical Theraphy for Anorectal Melanoma. Ann Surg 2006;244;1012-1017 14) Droesch JT, Flum DR, Mann GN Wide local 75
胃 癌 早 期 大 腸 癌 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 重 複 癌 excision or abdominoperineal resection as the initial treatment for anorectal melanoma? Am J Surg 2005;189;446-449 15) Merrick R, Christoper P, Thomas P et. al. Patterns of failure in anorectal melanoma. Arch Surg 1990;125:313-316 16) Martin AW Epidemiology and prognosis of anorectal melanoma.gastroenterology 1993; 104;174-178 17) 寺 島 洋 子, 笠 原 正 男, 岩 瀬 克 己, 他 : 直 腸 原 発 性 悪 性 リンパ 腫 と 肛 門 管 原 発 性 悪 性 黒 色 腫 の 重 複 腫 瘍 例 日 本 大 腸 肛 門 病 会 誌 1989; 42; 249-255 18) 嶋 田 鼎 中 鉢 誠 司 一 戸 文 雄 他 : 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 と 早 期 胃 癌 が 重 複 した 長 期 生 存 者 の 1 例 癌 の 臨 床 1996;42;10;1109-1118 19) 和 田 正 英 石 田 秀 行 猪 熊 滋 久 他 : 結 腸 早 期 癌 を 重 複 した 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 日 消 外 会 誌 1999;60;776-780 20) 岸 本 弘 之 村 上 大 樹 岡 伸 一 他 : 大 腸 癌 を 併 存 した 直 腸 肛 門 部 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 外 科 2004;66;228-231 藤 澤 貴 史 上 山 茂 充 大 内 佐 智 子 他 : 直 腸 肛 門 部 原 発 深 達 度 m の 有 茎 性 悪 性 黒 色 腫 の 1 例 76