タイトル 著 者 引 用 ips 細 胞 ( 人 工 多 能 性 幹 細 胞 ) 時 代 の 人 間 の 性 と 性 愛 に 関 する 一 考 察 安 岡, 譽 ; 橋 本, 忠 行 札 幌 学 院 大 学 人 文 学 会 紀 要 = Journal of the Society of Humanities(98): 83-113 発 行 日 2015-10-01 URL http://hdl.handle.net/10742/2016 札 幌 学 院 大 学 総 合 研 究 所 069-8555 北 海 道 江 別 市 文 京 台 11 番 地 電 話 :011-386-8111
札幌学院大学人文学会紀要 第98号 2015年10月 注4 同性愛の発生の機制を考えるヒントを与えるものとして 昔の東ドイツでの社会学的調 査が有名である 1942年から1945年 第2次世界大戦中 と1947年と1948年 大戦後 に生 まれた人たちに有意に同性愛者が多かったというデータである 比較として 1940年以前と 1948年以降に生まれた人たちには同性愛者は少なかった この結果から 過酷な戦時下の強 いストレスを受けた母親から生まれた男の子に同性愛者が多いという事実は 注6 に述べ ることと関連して考えると注目に値する 注5 生物学的視点から男女差をみると 若原正己博士の指摘によれば 男性は ①すべての年 代で死にやすい ②殺人による死亡例が多い ちなみに 野生動物でもオスが死にやすい という特徴がみられるという その理由として 1 X 染色体説 男は X 染色体が1本しかな く 異常な遺伝子が発現しやすいため 2 アンドロジェン説 男は自分が出す男性ホルモ ンのアンドロジェンによって攻撃的になりやすく 喧嘩 殺人 事故 病気をおこしやすい 24 ため をあげている 注6 アンドロジェン シャワー という現象がある 25 これは 男胎児のアンドロジェンの 血中濃度が妊娠10週目頃から上昇し 14週でピークに達するもので その量は成人男性の血 中濃度に匹敵するほど膨大である 第1次アンドロジェン シャワー さらに 生後2ヶ 月あたりにもう一度大量のアンドロジェンの分泌がみられる 第2次アンドロジェン シャ ワー この2度にわたって放出される男性ホルモンによって男として成長できるのである これが何らかの理由で異常をきたすと 性の発達にさまざまな影響が生じる つまり 女性 図3 ヒト胎生期と新生児期のアンドロジェン分泌 胎生期の4か月ごろと新生児期の2か月ごろに 男児の体内で大量のアンドロジェンが合成されて 分泌される 荒 井康充著 男と女の脳をさぐる 東京図書 1986年 64頁の図より改変 110