IAIS update:2016 年夏 注 : 本資料は Deloitte Development LLC が作成し 有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです この日本語版は 読者のご理解の参考までに作成したものであり オリジナルである英語版の補助的なものです

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IAIS update: Summer 2016 IAISは利害関係者のボスではなくパートナーとして将来を見据える 1 ICSは進展が見られるものの依然残る不一致 2 パネリストは新たなG-SII 評価手法を歓迎 4 新たなG-SII 評価手法の公表 6 執行委員会に対し開放性の拡大を求める声 8 サイバーリスクとサイバー保険は依然として検証が必要な危険領域 10 国際保険市場の現状 11 略語 12 02

IAIS は利害関係者のボスではなく パートナーとして将来を見据えている ブダペスト- 保険監督者国際機構 (IAIS) は国際的な保険規制の将来に向けた次のステップについて議論しましたが IAISの幹部は この第 9 回年次グローバル セミナーの開催地となったブダペストにちなむ特別な歴史について触れました 今回のイベントが開催されたブダペストのこのホテルは ウェス アンダーソン監督の2014 年の映画 グランド ブダペスト ホテル のモデルとなったホテルであり 同時に IAISのグローバル セミナーで10 年前の金融危機に関する事後分析が初めて議論されたホテルでもあります そして 国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み (ComFrame) とグローバル保険資本基準 (ICS) の策定に向けて最初の措置が講じられたのでした 河合美宏事務局長は 米国の業界の強力な代表者を含む出席者に対し 今回のセミナーに世界から参集した利害関係者数は過去最大であると告げました 執行委員会のビクトリア サポルタ委員長は開会挨拶で IAISが創出した様々な規制レベルについて取り上げました そして IAISの基準設定活動は3 階層で行われ 比例的に厳格になっていきます と述べました サポルタ委員長によれば 保険基本原則 (ICP) はすべての保険会社に適用され グローバルにシステム上重要な保険会社 に関する基準は現在 9 社の保険会社に またComFrameは55 社の 国際的に活動する保険グループ (IAIG) に適用されています ComFrame の適用対象となる IAIGの数は10% 増加しています サポルタ委員長は 指摘しておきたい 極めて重要な ポイントが3つあると述べました そして聴衆に対して IAISは立法者や監督者ではなく基準設定主体であり その機能はベスト プラクティスを推奨することにあると述べました 私はIAISを 監督者が それらの基準を作成するために情報を共有する手段として機能するプロセスであると考えています それらの基準を作成 実施するのは各国の立法者や規制当局の特権である とサポルタ委員長は付け加えました さらに IAISが米国以外における現行の規制構造に主眼を置いているとして 主に米国の一部利害関係者から時折非難されてきたことに触れて IAISは同等に尊重される200の国 地域で構成されており 特定のいかなる監督者群にも主眼を置いてはいないと述べました サポルタ委員長が挙げた3つ目のポイントは IAISが透明性に注力しているということでした いくつかの指標が示す通り IAISは過去 2 年間 ( 利害関係者 ) への関与を強化してきました 委員長は IAISが過渡期にある組織と呼び 利害関係者関与作業部会が設置され IAISの優先課題として利害関係者関与に係る計画の策定に取り組んでいることを明らかにしました 最後にサポルタ委員長は聴衆に対して 今年後半にパラグアイで開催されるIAIS 年次大会を楽しみにしていると述べました 昨年モロッコで開催された大会では規制当局以外の利害関係者を除外したため IAISは広範な批判を受けましたが 今年の大会は全員に開かれており 委員長はすべての人々に参加を要請しました 注目に値するのは ブレグジットに関する国民投票がこのイベントの翌週に実施されることになっており IAISでは多くのうわさ話が交わされたことでした IAISはブレグジットについてコメントを発表しておらず IAISが受ける可能性のある影響について一切示唆していません 要点 IAIG の数が 50 社から 55 社に増加しました IAISは自身の権限が限定されており 各国の立法者や規制当局を尊重する必要があることを強調しました 現在 業界を含めた利害関係者の関与がIAISの優先課題となっており IAISは年次大会から規制当局以外の利害関係者を除外するという前回の措置を取り止めました 1

ICS は進展が 見られるものの 不一致が依然残る パネル ディスカッション グローバル資本基準と保険資本基準の策定 のある参加者から ICS 策定のプロセスの継続により利害関係者にとって一層明白になってきたことを言及しました IAISのパオロ カドーニ氏は 保険資本基準の策定は容易な仕事ではありません と述べました 同氏によれば だからこそ ICSバージョン 1.0やバージョン2.0への移行など様々な段階で複数年にわたるプロセスが実施されているのです ICSはComFrameの一部であり 評価 適格資本リソースおよびICS 資本要件という3つの構成要素を有しています カドーニ氏によれば IAIS は過去 3 年間 重要な問題点への取り組みとアプローチの精緻化の作業を進めてきました しかし ICSの策定は まだ道半ばにも達していません 同氏は 7 月半ばには 新たなフィールド テスト用テクニカル パッケージと共に 2つ目の協議文書が3カ月の市中協議に付されると聴衆に告げました この3カ月間の協議期間はこれまでIAIS が設定してきた60 日の期間よりも長く 利害関係者はより多くの時間をコメントに充てることができます カドーニ氏によれば 現在 フィールド テスト プログラムには42 社が任意で参加していますが IAISとしては それをさらに拡大し 次のラウンドではIAIG 全 55 社を組み込むことを望んでいます IAISはICS のカリブレーション ( 調整 ) に取り組んでいますが それを正確に行うことが重要であると同氏は指摘しました カドーニ氏は IAISは [ 評価 ] に関する見解に相違があることを認識しています そうした相違の解消に努めています と述べました そして 望ましい最終結果は 既存のどれか1つの基準ではなく共通のゴールへの収束であるとした上で バージョン1.0 には市場調整評価 (MAV) とGAAPプラスの両方が含まれると付け加えました 米国のFRB( 連邦準備制度理事会 ) がすでに採用しているGAAPプラス手法の重視は IAISの姿勢の変化を示すものと思われます カドーニ氏によれば 他にも依然として対処すべき懸念事項があります それらの残された問題には 相互保険会社の取り扱いや 資本要件 金利リスク [ 低金利環境におけるカリブレーションは困難であると同氏は指摘 ] 税務などが含まれます 同氏は フィールド テスト任意参加企業からのフィードバックに基づいて既に変更がなされた点として モーゲージ リスクの取り扱いを変更したことを挙げました 2

カドーニ氏は 今後予定されるフィールド テストに関するスケジュールを示しました 2016 年のフィールド テスト プロセスは10 月半ばに完了し 来年ロンドンで開催される夏季大会でICSのバージョン 1.0が合意される予定です バージョン2.0に関する市中協議は2018 年に実施され 2019 年にICS の採用に至ることを目指しています 米国の業界代表者から ICSの採用までに恐らく 20~30 年の期間を想定する方が現実的ではないか またどんな最終状態が望ましいのかという質問がなされました カドーニ氏は 現時点では2つのゴールがあり これらには明確な期限が設定されていると答えました また同氏は 3 年前の開始時点と比べれば大幅な進展が見られます とも述べました 英国の大手多国籍保険会社の代表者である別のパネリストは 重要な問題のひとつは感応度と単純性のバランスをどう図るかであると発言しました そして 資本基準や相互理解の点では大きな進展があったことを認めながらも 対処すべき様々な問題が残されていると指摘しました また この発言者によれば 自身の会社はすでにSIIとして業務を行っており 経営者は別の方法に移行する意欲をほとんど持てないとのことです 同代表者は 共通の会計の枠組みは依然として不明確なものの 様々な会計基準は調整して一致させる必要があると述べました そして 2つの異なる評価基準に基づく制度は一貫したアプローチとは言えないと指摘しました その英国の保険会社の代表者は 取り組むべき主な問題は割引率であると述べました そして 設計上の大きな問題としてボラティリティと景気循環増幅効果 (pro-cyclicality) を挙げた上で このことはすべて割引率に帰着し これに取り組んで妥当な結果を導き出す必要があると 指摘しました その場合 割引率は原負債に妥当なものであるべきです その代表者は続けて 収益率を加味した割引率には長所があるものの 資産負債管理 (ALM) を反映している必要があると指摘しました その他の懸念事項として 内部モデルの使用能力があります FRBは資本基準における内部モデルの使用を採用しなかったのに対し 欧州の規制当局は従来からそれらのモデルを使用しており その代表者は これは自社にとって本質的なことであり バージョン2.0に組み込むべきであると述べました その代表者は 生命保険市場と損害保険市場に対するアプローチがあまりにかけ離れていると指摘した上で 粒度 (granularity) を高める必要があると付け加えました この先 明らかに困難が待ち受けています パネリストとして加わった米国の大手保険会社の代表者は 米国の業界内には広範 強固かつ思慮深い意見の多様性があります と発言しました そして 自社がグローバルICSを強力に支持していると説明するとともに 国際連結グループ資本制度は世界市場へのアクセスや競争力のある国際保険市場の実現に寄与すると述べました その代表者は 評価方式の選択が中心的な問題であると主張しました そして MAVにも進展が見られるものの FRBは経済的な性質の調整を加えながらGAAPベースの基準を策定するだろうと述べました その代表者は FRBは内部モデルを採用しなかったものの 自身の会社は内部モデルを取り入れる用意があると発言しました そして SIIに区分される大手企業は標準的手法ではなく内部モデルの方向に向かっていると指摘しました さらに 自身の 会社の見方によれば ICSのこれまでの成果は素晴らしいと言えるものの 技術的な細部を詰める作業がまだ残されていると聴衆に述べました その代表者も 割引率が鍵となることに同意するとともに 統合とは 最初の出発点から離れたところで統合することを意味します と付け加えました NAICの代表者としてはこれが最後の大会となる元フロリダ州保険局長のケビン マッカーティ氏は 期限の設定があまりに野心的であると今もなお考えており この期限設定が最終的な成果を台無しにするのではないかという懸念を抱いていると述べました 同氏は 米国は 達成可能なグローバル資本基準の策定に全力を挙げて取り組んでいます と述べました また 米国企業が投資のために NAICの指定を利用する能力について懸念を表明するとともに GAAPプラス手法を維持することが重要であると指摘しました マッカーティ氏は 米国規制委員会は シニア債やサープラス ノートの取り扱いを含め IAISが検討を進めている資本リソースに関する厳格な基準に懸念を抱いていると発言しました また 契約の境界線も懸念事項であり カリブレーションや内部モデルの使用も引き続き懸念事項となる可能性が高いと述べました マッカーティ氏は このシステムは過度に複雑になる可能性があると聴衆に告げました IAISメンバーが 前日開かれたIAISの会合で 比較可能な国際資本基準を引き続き追求する決意を改めて表明したことが聴衆に明らかにされました 要点 評価のためにGAAPプラスの手法を検討中 割引率が中心的な懸念事項 内部モデルの使用に関して保険会社間および規制当局間に大きな見解の違いが見られます 新たに指定された5 社を含め 国際的に活動する保険グループはすべて 近々実施されるフィールド テストに参加する準備を整えるべきです 次回の協議文書では 結果に影響を及ぼしたいと考える利害関係者にとって これまでより長いコメント期間が設定されます 3

パネリストは 新たな G-SII 評価手法を 歓迎 G-SIIに係る評価および指定プロセス のパネリストたちは冒頭発言で 新たに明らかにされたG- SIIの手法が 透明性の向上および構造やプロセスの大幅改善という点で従来のプロセスを改善するものである とする一致した見方を示しました この新手法はパネル ディスカッション当日に公表されました IAISの執行委員会委員でドイツ連邦金融監督庁 (BaFin) 保険 年金監督局長のフランク グルント博士は 改訂された手法のすべての段階で 非公開のプロセスから透明なプロセスに移行することが重要であると発言しました そして ドイツにはG-SIIプロセスを導入するための法的根拠がまだないと述べました フランスの大手保険会社の代表者は 過去 2 年間に非常に多くの企業で変化が生じていることから システミック リスク監視のために既存のリスク管理にもっと注意を払うことをIAISに 求めました また 低金利それ自体がシステミック リスクに相当するかどうかを問うとともに ガバナンスの重要性について論じました さらにその代表者は 様々な規制による累積的な影響を明らかにするための影響評価が必要であると述べました また 新手法では変額年金に関してデリバティブが 悪者扱い されなくなったことを歓迎しました パネルに加わった米国の大手保険会社の代表者は この新手法では活動評価基準に向けて一定の進展が見られることを歓迎すると述べました そして 独立レビューがもう1つの重要な構成要素であると述べるとともに 低金利環境が相当の重圧を生み出しており 恐らく小規模な市場参加者の方がはるかに大きな影響を受けることに同意しました パネリストでシンガポール通貨監督庁保険局長のコン イー リー氏は 現在の手法が改善されている ことについて自信を表明しました 4

パネリストでニュージャージー州銀行保険局保険部長のピーター ハート氏も新手法を賞賛しました そして この結果は大きな進歩です と述べました 同氏が挙げた良い点は 関連するセクター間分析 軽減要因の使用 被指定企業が主張を表明できることなどでした 同氏は この新手法によりデリバティブの二重計上が解消され 透明性が向上し 定量的プロセスと定性的プロセスのバランスがとれた明確な構造が生み出されたと述べました ハート氏が挙げた課題は 依然として相対的な順位付けに依拠していること 軽減 加重要因に関し規制当局間に不一致が見られること 識別されたリスクを体系的に世界経済に結び付ける方法が 依然として明瞭性を欠いていることなどです また同氏は 企業にとってのリスクと経済にとってのリスクが依然混同されていると指摘しました 米国の大手保険会社の代表者もこれに同意し とりわけデリバティブや証券貸借取引の特定の使用法は 場合により従来型の保険業務よりもシステミック リスクが高い可能性があり 保険会社はそうした業務を縮小してきたと述べました グルント博士の懸念事項には 消費者にとっての透明性の欠如の拡大と認められる事態や 保険会社から消費者へのリスク移転などが含まれます 博士は 規制当局はこの問題を重視する必要があると述べました 要点 新たな G-SII の手法には多くの改善が見られる一方 懸念事項も残されています 規制当局は 消費者への影響を重視するよう求められました 5

新たな G-SII 評価手法の 公表 NTNI の分類は取り止め IAISはグローバル セミナーの期間中に G-SII の評価手法および一部の保険商品がもたらす潜在的リスクの分類方法に対する大幅な変更を発表しました すなわち その手法を改訂するとともに これまで一部の商品に適用されていた包括的な分類を取り止め なぜ特定の商品の特徴や関連業務がシステミック リスクを引き起こす可能性があり そうしたものとして取り扱われるかを説明しました IAISによれば この改訂は 昨年末に公表した市中協議文書に関して受け取ったコメントに基づくものであり またこれまで3 回実施された指定作業の結果を参考にしています この新バージョンは評価手法の2013 年バージョンを引き継ぐものであり IAISの3 年間のレビュー サイクルの一部となっています この新手法では当初の3 段階評価が5 段階に拡大されています 各段階 ( フェーズ ) は次の通りです フェーズI: データ収集 フェーズII: 定量的基準値の設定 フェーズIII: 定量的なフェーズに続く新たなフェーズとして 最初の2つのフェーズで入手できなかった定量的 定性的情報を追加的に収集 分析します フェーズIV: これは応答のためのフェーズであり G-SII 候補となっている企業が これまでの3つのフェーズの結果として自身のステータスに関する情報を受け取り 手法のいかなる側面であっても それに関連する追加情報を提示することが可能です 米国では 適正手続きに従っているとされた根拠に基づいて ある保険会社をシステム上重要な金融機関 (SIFI) と認定したことを無効とする裁判所の判決が下されており この件との関連で本フェーズは特に興味深いものと言えます フェーズV: このフェーズでは IAISから金融安定理事会 (FSB) への勧告として フェーズIからIVまでを総合した全体評価を作成します IAISによれば 指標の感応度 システミック リスクとの関連性 および保険会社間や国 地域間における信頼度を含むデータ品質に関連する問題に対処するために IAISは当初手法で使用されていた指標の一部を変更しました 業界の多数の代表者が賞賛した 恐らく最も重要な変更は デリバティブ取引 (CDSや類似のデリバティブ商品によるプロテクションの売建て ) や金融保証 再保険の指標について絶対参照値 (absolute reference values) を使用することになった点です 6

リスク度を決定するために相対値を使用することについては 保険会社から大きな懸念が表明されていました 旧手法の下では 保険会社は相互に比較されることになっていました その結果 システミック リスクの実際のレベルがほとんどゼロの場合でも 保険会社は相対的なランキングによって評価されてしまいます 反対に 保険会社が高水準のシステミック リスクを有していても 単に同業他社の水準がそれより高いという理由により指定を免れる可能性が生じます これに関連する動きとして IAISは 保険商品の特徴から発生するシステミック リスク に関するペーパーを公表しました このペーパーでは しばしば論争の的となってきた 非伝統的保険 非保険業務 (NTNI) という分類をIAISの用語集から削除して IAISが 商品の特徴に関するより精緻で微妙な差を反映した評価 と呼ぶものに差し替えられました IAISは 新基準で懸念されるのは マクロ経済エクスポージャーと重大な流動性リスクが 資産流動化とエクスポージャーという経路を通じて波及する可能性であり そのいずれもがシステミック リスクの発生確率を高める可能性があるということを明確にしようとしました 主な焦点は エクスポージャーと資産流動化という 最も関連性の高い2つの根本的な波及経路に置かれています とIAISは述べています IAISによれば 重大なマクロ経済的リスクは 保険会社の財政状態が経済全体と強く相関している場合のエクスポージャーに関連しています 重大な流動性リスクは 保険契約者の取付け (run) リスクに関連しています 評価対象となる契約の特徴には 商品の種類 契約上の保証 および保険会社が負債キャッシュ フローに対応するために投資できる程度などが含まれます IAISはまた 他にもこのシステミック リスク評価に組み込まれる可能性がある要因が存在しており その一部はリスクを軽減させる可能性があると述べています ペーパーではさらに 入手の遅延や勘定価格に関連する経済的ペナルティといった IAISが重大な流動性リスクの悪化 軽減要因であると考えるものが詳細に例示されています この新たな分類は NTNIの分類と異なり二分的なものではありません またIAISは 尺度や基準を明確化する作業を引き続き行っているため この分類は最終的なものではないと繰り返し注意しています このペーパーによれば これまでの手法では 保険会社のシステム上の重要性を評価する際の重要な2つの要素はNTNI 業務活動と相互関連性であるとされています しかしIAISは それら2 つのカテゴリーの間に概念的な重複がある可能性を認識しています さらに 2015 年の市中協議では 多くの利害関係者が非伝統的保険 (NT) という用語を紛らわしいと捉えていることが明らかになりました これらを考慮し IAISはNTNIという商品分類の使用を止めることを決定しました 図表 1: マクロ経済リスクへのエクスポージャーに関する 2 段階の契約評価 その契約は保有者に給付保証を提供しているか いいえ はい 重大なマクロ経済リスクを示す契約上の兆候はなし 負債キャッシュフローに対応する保険会社の能力について契約上の重大な制限があるか いいえ はい 重大なマクロ経済リスクを示す契約上の兆候はなし マクロ経済リスクを示す契約上の証拠 出所 : 保険監督者国際機構 要点 流動性と市場リスクが重大な懸念事項となっています 銀行への取付け を可能にさせる商品は どのような分類が使用されているかにかかわらずリスクを高めます ヘッジ戦略の中にはシステム上の懸念を軽減させるものがあります これらの変更から明らかなように プロセスを通じたIAISへの関与が重要となります G-SIIの指定に対する影響は依然として推測の域を出ていません 7

執行委員会に対し 開放性の拡大を 求める声 IAIS 執行委員会と利害関係者の対話 の 金融安定および破綻処理と再建 パネル セグメントでは 米国生命保険協会 (ACLI) の会長兼 CEOのダーク ケンプソーン知事が 国際保険協会連盟 (GFIA) を代表して発言し IAISの取り組みに対する保険会社の関心が高まっていることに触れました ケンプソーン会長によれば 当初 小規模な加盟企業はACLIのIAISへの関与に疑問を抱き なぜそんなことをするのか と尋ねました しかし現在では その影響を目の当たりにして 小規模な加盟企業も 直接影響を受ける企業と同様 強い関心を寄せています 8

消費者運動家である経済的公正センター (Center for Economic Justice) のバーニー バーンボーム氏は G-SIIの手法を 面倒すぎて遅すぎる と評しました 同氏は システミック リスクの問題は軽減するのではなく低減すべきであり 監督者は必要に応じてそうしたリスクを限定するための手段を有しているべきであると述べました そして 活動ベースの基準へと移行することをIAISに要求しました 執行委員会 (EXCO) のビクトリア サポルタ委員長は ケンプソーン会長が言及したシステミック リスクに関する国際通貨基金 (IMF) のペーパーについて触れ 次のように述べました 様々な人が様々なことを考えています [ 何がシステミック リスクの高い活動に相当するのかに関して ] 意見の一致があるようには思えません ケンプソーン会長は 一部の国が再保険リスクを国内に保持することを要求する規則を導入したことなど いくつかの懸念事項を示しました また 国境を越えるデータフローに対する制限に対しても懸念を表明しました オーストラリア健全性規制機構 (Australian Prudential Regulatory Authority) の代表者は IAISの取り組みによりグローバル基準が促進されており 保護主義を正当化することは困難になっていると答えました スイスの大手多国籍保険会社の代表者は 破綻処理と再建に関するIAISの取り組みについて取り上げました EXCOの代表者は IAISはまず資本面に集中して取り組んだ後に 市場行為に向けた取り組みを行うことになるだろうと述べました EXCOのパネル ディスカッションには 基準設定と実施 および IAISの運営と利害関係者の関与 も含まれていました 基準設定のパネル ディスカッションでは ドイツ保険協会のアクセル ベーリング博士がICS2.0 で内部資本モデルを使用することを強く求めました おそらくFRBが内部モデルを採用しなかったことを引用した発言と解釈されるのですが 博士は 銀行側は内部モデルを望んでいないとも指摘しました バーンボーム氏は 保険会社を対象とする健全性基準に関して設定が進められているものと類似した結果を消費者についても確立することが IAISの目標であるかと尋ねました パネル司会者を務める米国連邦保険局 (FIO) のマイケル マックレイス氏は IAISの消費者ワーキング グループがこの問題に取り組んでいるが まだ初期段階にあると述べました 大手国際ブローカーの代表者は そうした基準の設定が困難なことを強調した上で 消費者の公平な取り扱いとは 社会環境の差異に応じて異なることを意味すると指摘しました 利害関係者の関与のセクションでは 米国損害保険協会 (PCI) のスティーブ ブローディー氏が PCIは以前のいわゆる有料参加 (pay-toplay) 方式を支持してはいないが ワーキング グループが作業を進めている間 利害関係者は依然としてワーキング グループとの継続的な対話を行えないでいると述べました EXCOの代表者は IAISはより広範な利害関係者の関与を目指しており 関与の計画が公表された際は それに関する利害関係者のフィードバックを望んでいると答えました そして これまで講じられた措置として 利害関係者との会合を2 日間に延長したこと 年次大会を再びすべての利害関係者に開放したことなどがあると述べました そのEXCOメンバーは IAISと利害関係者の関係は公式かつ有意義なものである必要があります と述べた上で 2015 年以前の構造に逆戻りすることはないと付け加えました そして IAISが開放性の強化に向けて講じた措置として 地域的な利害関係者の会合およびIAISのウェブサイトで提供される情報の拡充を挙げるとともに IAISは利害関係者に提供する情報の継続的な拡大に注力していると述べました 要点 IAISは 業界の利害関係者との比較的非公式な接触に対し 積極的ではないように見えます 市場行為が近々主要な注目分野になると思われます あらゆる規模の保険会社がIAISの取り組みに注目しています 一部の国 地域では保護主義が現れています 9

サイバーリスクとサイバー保険は 依然として検証が必要な 危険領域 ジュネーブ協会のアンナ マリア デュルステル事務局長は サイバーリスクとサイバー保険 のパネル ディスカッションで サイバーリスクに関する調査の大半は今のところ損害ではなく侵入の情報に基づいていると発言しました そして 2018 年 5 月に実施される予定の欧州安全保障イニシアティブ (European Security Initiative) に言及した上で 侵入に関する情報を是正計画と共に72 時間以内に規制当局に提供することを要求しました デュルステル事務局長は サイバーリスクに対する保険会社の取り組みは 最高責任者レベルの管理者の主導下で組織的に実施しなければならないと述べました また 欧州のサイバー保険市場は現在のところ小規模で 米国に大きく水をあけられていると指摘しました しかしながら 近い将来大幅な成長が期待されます 事務局長は 保険引受可能性に対する主な障害として データ不足や 変化のリスク 蓄積リスク 潜在的なモラル ハザードの問題を挙げました そして サイバー保険を支援するために 匿名化されたデータプールの開発や 再保険プール 現在の保険契約の分析 新たな保険契約の開発が提案されました スイスの大手保険会社のサイバーおよびデジタル戦略責任者は サイバーリスクを現在のオペレーショナル リスクの枠組みに押し込むことは難しいと述べました そして 最高リスク管理責任者 (CRO) フォーラムが現在サイバーリスクの分類方法を考案しており 従来より一層豊富なデータを収集できると期待していることを紹介しました その責任者は 獲物に農薬が蓄積したために白頭ワシが絶滅に瀕した時期になぞらえて サイバーリスクも蓄積することがあるためそれによって保険が絶滅しかねないと述べました そして このリスクは サイバーリスクの保障 内だけでなく他の保障内にも蓄積する可能性があると指摘しました このリスクは定量化 監視 操作を行う必要があり それには2 3 年を要すると思われます IAISは最近 保険セクターにとってのサイバーリスクに関するイシュー ペーパー ( 論点書 ) を公表し 利害関係者からフィードバックを受け取りました 要点 サイバーリスクやサイバー保険に関して 米国は欧州に先行しています 安全な市場のためにはさらに多くのデータや構造が必要です サイバーリスクの蓄積が重大な脅威となっています IAISやCROフォーラムは最近サイバーリスクに関するペーパーを公表しました 10

国際保険市場の 現状 保険市場も 世界のほとんどの国が直面している問題による影響を免れることはできません 低成長や低金利は売上と利益を押し下げ 投資収益を低減させると同時に 売上の自律的成長を困難にする可能性があります これらすべての事態に直面する中 保険業界は世界全体でどのような状況にあるのでしょうか この点についての説明が 国際保険市場の現状 - 分析と動向 のパネル ディスカッションでIMFのシニア ファイナンシャル スペシャリストであるジョバンニ クチノッタ氏によってなされました ( 図表 2にその概要が図示されています ) 結局のところ それほど深刻な状態にあるわけではありません システミック リスクはいくぶん上昇しているものの 利益は安定しており 保険料は伸びています 詳細は IMFが2016 年 4 月に公表した国際金融安定性報告書 (Global Financial Stability Report) をご覧ください 図表 2: 国際保険市場の現状システミック リスクが引き続き上昇する中で 複合的な要因が保険市場に影響している 11

略語 ACLI 米国生命保険協会 ComFrame 国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み EXCO IAIS 執行委員会 FIO 米国連邦保険局 FSAP 金融セクター評価プログラム FSB 金融安定理事会 GAAP 一般に公正妥当と認められた会計原則 G-SII グローバルにシステム上重要な保険会社 IAIG 国際的に活動する保険グループ IAIS 保険監督者国際機構 ICP 保険基本原則 ICS 保険資本基準 IMF 国際通貨基金 MAV 市場調整評価 SIFI システム上重要な金融機関 PCI 米国損害保険協会

IAIS update: Summer 2016 Contacts Gary Shaw Vice Chairman US Insurance Leader Deloitte LLP +1 973 602 6659 gashaw@deloitte.com Richard Godfrey Advisory Principal US Insurance Advisory Leader Deloitte & Touche LLP +1 973 602 6270 rgodfrey@deloitte.com Author Andrew N. Mais Senior Manager Deloitte Center for Financial Services Deloitte Services LP +1 203 761 3649 amais@deloitte.com Howard Mills Managing Director Global Insurance Regulatory Leader Deloitte Services LP +1 212 436 6752 howmills@deloitte.com Neal Baumann Principal Global Insurance Leader US Insurance Consulting Leader Deloitte Consulting LLP +1 212 618 4105 nealbaumann@deloitte.com Contributor David Sherwood Advisory Senior Manager Deloitte & Touche LLP +1 203 424 4390 dsherwood@deloitte.com About the authors Andrew N. Mais Formerly a director at the New York State Insurance Department, Mais is a member of Deloitte s Center for Financial Services, providing industry-leading thought leadership and insight on regulatory affairs on state, national, and international levels, and related topics to the financial services sector. David Sherwood Formerly an examiner with the UK Financial Services Authority, Sherwood has 20 years of risk and regulatory experience. His focus is insurance risk management and regulation, including the issues that affect companies both at an international level (such as Solvency II, systemic risk, and ComFrame), and domestically (ORSA, federal oversight, and the SMI). 13

本資料に掲載されているのは一般的な情報のみであり デロイトは 本資料により会計 ビジネス 金融 投資 法務 税務 またはその他の専門的アドバイスもしくはサービスを提供するものではありません 本資料はそのような専門的アドバイスまたはサービスに代替するものではなく また貴社の事業に影響を及ぼす可能性のある一切の決定または行為の基礎として利用されるべきではありません 貴社の事業に影響を及ぼす可能性のある一切の決定または行為を行う前に 必ず資格のある専門家のアドバイスを受ける必要があります デロイトは 本資料に依拠した利用者が被る損失について責任を負うものではありません 2016 Deloitte Development LLC. ( 日本語版について ) デロイトトーマツグループは日本におけるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( 英国の法令に基づく保証有限責任会社 ) のメンバーファームおよびそのグループ法人 ( 有限責任監査法人トーマツ デロイトトーマツコンサルティング合同会社 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社 デロイトトーマツ税理士法人および DT 弁護士法人を含む ) の総称です デロイトトーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり 各法人がそれぞれの適用法令に従い 監査 税務 法務 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています また 国内約 40 都市に約 8,700 名の専門家 ( 公認会計士 税理士 弁護士 コンサルタントなど ) を擁し 多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています 詳細はデロイトトーマツグループ Web サイト (www.deloitte.com/jp) をご覧ください Deloitte( デロイト ) は 監査 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリーサービス リスクマネジメント 税務およびこれらに関連するサービスを さまざまな業種にわたる上場 非上場のクライアントに提供しています 全世界 150 を超える国 地域のメンバーファームのネットワークを通じ デロイトは 高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて 深い洞察に基づき 世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを Fortune Global 500 の 8 割の企業に提供しています Making an impact that matters を自らの使命とするデロイトの約 225,000 名の専門家については Facebook LinkedIn Twitter もご覧ください Deloitte( デロイト ) とは 英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( DTTL ) ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します DTTL および各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です DTTL( または Deloitte Global ) はクライアントへのサービス提供を行いません Deloitte のメンバーファームによるグローバルネットワークの詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり その性質上 特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません また 本資料の作成または発行後に 関連する制度その他の適用の前提となる状況について 変動を生じる可能性もあります 個別の事案に適用するためには 当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき 本資料の記載のみに依拠して意思決定 行動をされることなく 適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください 2017. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.