沖 縄 県 立 南 部 医 療 センター こども 医 療 センター 附 属 北 大 東 診 療 所 ~うふあがりの 島 で~ 香 川 25 期 生 松 岡 剛 司
離 島 に 出 る 前 に 2002 年 3 月 自 治 医 大 卒 業 2002 年 5 月 ~2004 年 4 月 まで 香 川 県 立 中 央 病 院 にて2 年 間 の 初 期 研 修 (スーパーローテート) 沖 縄 県 出 身 の 同 期 生 との 結 婚 を 機 に 義 務 年 限 を 二 分 前 半 の 勤 務 地 である 沖 縄 県 へ 2004 年 5 月 ~2005 年 3 月 まで 沖 縄 県 立 中 部 病 院 にて 離 島 派 遣 前 研 修 ( 総 合 内 科 2ヶ 月 救 急 センター2ヶ 月 小 児 科 2ヶ 月 整 形 外 科 1ヶ 月 産 婦 人 科 1ヶ 月 呼 吸 器 内 科 2ヶ 月 皮 膚 精 神 科 1ヶ 月 )
北 大 東 島 とは?
北 大 東 島 について 沖 縄 本 島 の 東 方 360km 隆 起 サンゴ 礁 でできた 沖 縄 県 最 東 端 の 島 まわりをすべて 断 崖 に 囲 まれ 島 の 中 央 はラグーン( 礁 湖 )の 跡 で 盆 地 を 形 成 明 治 36 年 (1903 年 ) 南 大 東 島 と 同 じく 八 丈 島 出 身 の 玉 置 半 右 衛 門 の 会 社 が 開 発 に 着 手 ( 会 社 独 占 支 配 の 下 で 燐 鉱 石 の 採 掘 とサトウキビの 単 一 栽 培 ) 最 盛 期 には 人 口 4000 人 貯 鉱 庫 や 軌 道 跡 積 出 埠 頭 などにか つての 賑 わいを 垣 間 見 る 今 では 通 称 砂 糖 の 島 一 面 にサトウキビ 畑 が 広 がり 沖 縄 県 の 機 械 化 農 業 の 先 進 地 古 来 より うふあがり 島 (うふ= 大 きい あがり= 東 の 意 )と 呼 ば れ 本 島 では 神 の 島 として 信 仰 の 対 象
北 大 東 島 について 所 在 地 : 沖 縄 県 島 尻 郡 北 大 東 村 面 積 :11.94 平 方 km 周 囲 :18.3km 標 高 :74m 世 帯 数 :200 世 帯 (1 世 帯 人 員 2.64 人 ) 人 口 :528 人 ( 男 性 286 人 女 性 242 人 ) 年 齢 : 少 人 23.9% 大 人 58.7% 老 年 17.4% お 年 寄 りが 少 なく 子 供 が 大 変 多 い 島 です 産 業 : 農 13% 漁 1% 二 次 44% 三 次 42%
北 大 東 島 の 生 活 環 境 電 気 : 島 内 にて 自 家 発 電 水 道 : 海 水 淡 水 化 施 設 ( 下 水 処 理 はなし) ガス:JA 沖 縄 北 大 東 支 店 ( 農 協 )にて 取 扱 い ごみ: 北 大 東 クリーンセンターにて 島 内 処 理 宿 泊 施 設 2 箇 所 : 民 宿 とホテル(コテージタイプ) 金 融 機 関 : 農 協 と 郵 便 局 小 売 店 : 農 協 購 買 部 と 商 店 ( 兼 駄 菓 子 屋 )3 軒 本 屋 なし 電 気 店 なし 学 校 : 北 大 東 村 立 幼 稚 園 小 中 学 校 ( 高 校 なし) 北 大 東 村 営 の 学 習 塾 がある( 無 料 )
北 大 東 島 生 活 環 境 通 信 環 境 :インターネットはISDN 通 信 衛 星 利 用 容 量 に 限 りがあり インターネットが 利 用 できるのは 村 役 場 診 療 所 ホテル 学 校 建 設 会 社 など 限 ら れた 場 所 のみ 一 般 家 庭 への 普 及 はない テレビ: 小 笠 原 諸 島 経 由 で 東 京 局 の 電 波 を 受 信 ( 日 本 テレビ テレビ 東 京 以 外 ) 沖 縄 県 ではあるが 地 方 ローカルは 視 聴 不 可
直 線 距 離 で 東 京 ー 名 古 屋 間 ほどあります
隣 の 南 大 東 島 とは8km ほどしか 離 れていません が 間 に 深 い 海 溝 があり 定 期 路 線 などもないため 行 き 来 は 余 りありません 島 は 断 崖 絶 壁 に 囲 まれた 盆 地 状 南 の 島 にありがちな 美 しい ビーチはありません その 代 わり に 大 きな 波 が 常 時 打 ち 寄 せる 壮 大 な 景 観 が 楽 しめます
39 人 乗 り 飛 行 機 にて1 時 間 10 分 (1 日 1 便 ) 客 貨 物 船 だいとう にて 片 道 15 時 間 ( 約 週 1 便 ) 人 も 荷 物 も このようにゴンドラに 乗 って 上 陸 します
自 然 の 入 り 江 があり ここから 開 拓 民 が 上 陸 したとのこと 現 在 では 上 陸 公 園 として 整 備 さ れ ここから 見 る 夕 日 は 絶 景 です
沖 縄 県 最 東 端 の 碑 があり 公 園 と して 整 備 されています 島 の 最 東 端 には 人 工 的 に 作 られた 潮 溜 まりがあ り 干 潮 時 には 唯 一 の 海 水 浴 場 として 利 用 されて います
島 内 には 燐 鉱 石 採 掘 で 栄 えた 面 影 を 今 に 残 す 遺 跡 がところどころで 見 られます
台 風 襲 来 中 の 港 の 様 子 とても 近 寄 れるものではありません
島 の 主 要 産 業 はサトウキビ 大 型 機 械 の 導 入 で 大 規 模 農 業 を 展 開 してい ます
島 唯 一 の 信 号 機 近 くのポストの 上 には 特 別 天 然 記 念 物 ダイトウオオコウモリ の 剥 製 が 鎮 座 しています
北 大 東 診 療 所 について
北 大 東 診 療 所 沖 縄 県 島 尻 郡 北 大 東 村 字 中 野 209-10 医 師 1 名 看 護 師 1 名 事 務 員 1 名 延 べ 患 者 数 :3266 人 ( 新 患 639 名 ) 一 日 平 均 患 者 数 :13.2 人 ( 平 成 18 年 ) 心 電 図 腹 部 エコー 徐 細 動 付 モニター 生 化 学 検 査 器 血 算 測 定 器 遠 心 分 離 機 吸 引 吸 入 器 オートクレー プ 単 純 レントゲン 撮 影 機 湿 式 自 動 現 像 器 牽 引 器 輸 液 ポンプ シリンジポンプ 顕 微 鏡
診 療 内 容 1 慢 性 疾 患 のコントロール 2 小 児 患 者 3 外 傷 4 小 外 科 疾 患 若 い 人 が 多 く 1と 同 等 に2 3 4が 多 い 現 在 往 診 必 要 患 者 なし( 島 内 にはミニデイのみ) 介 護 保 険 主 治 医 意 見 書 件 数 は3 件 前 後 全 身 的 な 介 護 の 必 要 な 高 齢 者 は 本 島 の 施 設 に 入 るため 島 内 にて 福 祉 施 設 などの 高 齢 者 対 策 事 業 は 充 実 していません
受 付 待 合 室 診 療 所 玄 関 正 面 一 年 中 ハイビスカスの 花 が 咲 き 誇 っています 診 察 室
経 過 観 察 ベッド 牽 引 台 処 置 台 簡 単 な 小 外 科 手 術 や 外 傷 患 者 はここ で 処 置 します レントゲン 撮 影 室
左より妻 育休中 筆者 看護師 事務員 県立医療センターの2年目研 修医 離島研修中
急 患 搬 送 について
搬 送 手 続 き 搬 送 必 要 患 者 発 生 添 乗 当 番 病 院 に 添 乗 及 び 受 け 入 れを 打 診 診 療 所 より 村 役 場 防 災 担 当 に 要 請 書 提 出 村 役 場 より 県 消 防 防 災 課 へFax 県 消 防 防 災 課 より 自 衛 隊 に 出 動 要 請 自 衛 隊 出 動 自 衛 隊 機 : 片 道 約 50 分 ( 夜 間 はアイドリングしていないことが 多 い) 自 衛 隊 ヘリ: 片 道 約 1 時 間 50 分 症 例 により こちらで 搬 送 機 の 指 定 はできない 100% 医 師 添 乗 ではない 特 に 夜 間 は 断 られることがあるが 決 定 権 は 診 療 所 医 師 にあり 最 速 で 要 請 より2 時 間 で 搬 送 機 到 着 ( 天 候 よく 自 衛 隊 機 の 場 合 )
ヘリ 搬 送 症 例 ( 平 成 17 年 度 ) 搬 送 年 月 日 性 別 年 齢 疾 患 名 搬 送 手 段 医 師 添 乗 天 候 時 間 備 考 2005.5 82 歳 男 性 腰 椎 圧 迫 骨 折 自 衛 隊 機 なし 晴 れ 昼 独 居 老 人 2005.7 13 歳 男 性 急 性 虫 垂 炎 自 衛 隊 機 なし 晴 れ 昼 2005.11 48 歳 男 性 右 大 腿 切 断 出 血 性 ショック 自 衛 隊 機 あり 晴 れ 深 夜 心 肺 蘇 生 3 時 間 待 機 2005.12 60 歳 女 性 細 菌 性 髄 膜 炎 敗 血 症 自 衛 隊 ヘリ あり 晴 れ 昼 意 識 障 害 2005.12 66 歳 男 性 急 性 腎 後 性 腎 不 全 ( 高 K 血 症 ) 自 衛 隊 機 あり 晴 れ 昼 ( 休 日 ) 2006.1 72 歳 男 性 細 菌 性 肺 炎 敗 血 症 性 ショック 自 衛 隊 機 あり 晴 れ 昼 2006.1 13 歳 男 性 大 腿 骨 骨 幹 部 骨 折 自 衛 隊 ヘリ なし 風 雨 深 夜 6 時 間 待 機 2006.3 43 歳 男 性 くも 膜 下 出 血 脳 内 出 血 自 衛 隊 機 あり 晴 れ 夕 方 挿 管
ヘリ 搬 送 症 例 ( 平 成 18 年 度 ) 搬 送 年 月 日 性 別 年 齢 疾 患 名 搬 送 手 段 医 師 添 乗 天 候 時 間 備 考 2006.4 84 歳 男 性 小 脳 梗 塞 自 衛 隊 ヘリ なし 風 雨 昼 ( 休 日 ) 6 時 間 待 機 2006.5 50 歳 女 性 Ⅱ 度 熱 傷 気 道 熱 傷 疑 い(20%) 自 衛 隊 機 あり 晴 れ 昼 2006.6 35 歳 女 性 子 宮 外 妊 娠 自 衛 隊 ヘリ なし 風 雨 翌 日 の 昼 26 時 間 待 機 2006.6 26 歳 男 性 足 関 節 脱 臼 ひ 骨 粉 砕 骨 折 自 衛 隊 ヘリ なし 晴 れ 昼 ( 休 日 ) 2006.8 75 歳 女 性 尿 路 感 染 症 敗 血 症 自 衛 隊 ヘリ なし 晴 れ 昼 2006.8 83 歳 女 性 Ⅱ 度 熱 傷 (20%) 自 衛 隊 ヘリ なし 晴 れ 深 夜 2006.8 48 歳 女 性 心 不 全 ( 僧 帽 弁 狭 窄 症 急 性 増 悪 ) 自 衛 隊 ヘリ あり 晴 れ 昼 2006.8 48 歳 男 性 急 性 心 筋 梗 塞 自 衛 隊 ヘリ あり 雷 雨 翌 朝 13 時 間 待 機 2006.12 72 歳 男 性 心 不 全 ( 原 因 不 明 行 旅 病 人 ) 自 衛 隊 機 あり 晴 れ 昼 2007.1 14 歳 女 性 急 性 虫 垂 炎 自 衛 隊 機 あり 雨 夜 間 2007.1 55 歳 男 性 顔 面 骨 骨 折 気 道 損 傷 ( 皮 下 気 腫 ) 自 衛 隊 ヘリ あり 晴 れ 夜 間 2007.1 20 歳 女 性 ハンドル 外 傷 ( 肝 損 傷 ) 出 血 性 ショック 自 衛 隊 ヘリ あり 雨 夜 間 挿 管 4 時 間 待 機
定 期 便 搬 送 症 例 ( 平 成 17 18 年 度 ) 定 期 便 搬 送 症 例 ( 緊 急 性 はないが 即 日 入 院 処 置 が 望 ましい 患 者 は 定 期 便 で 送 る 座 位 可 能 が 条 件 ) 2005 年 度 8 歳 男 性 喘 息 発 作 気 管 支 肺 炎 2006 年 度 60 代 女 性 急 性 肝 炎 3 歳 男 性 肺 炎 50 代 男 性 黄 疸 胆 管 癌 疑 い 50 代 男 性 上 部 消 化 管 出 血 疑 い 3 歳 男 性 喘 息 発 作 50 代 男 性 下 部 消 化 管 出 血 重 症 貧 血 14 歳 男 性 上 前 腸 骨 棘 剥 離 骨 折 50 代 男 性 モンテジア 骨 折 50 代 女 性 突 発 性 難 聴 70 代 男 性 上 部 消 化 管 出 血 疑 い 70 代 男 性 肺 炎 60 代 男 性 腎 癌 疑 い 20 代 男 性 習 慣 性 膝 蓋 骨 脱 臼 剥 離 骨 折 60 代 男 性 COPD 急 性 増 悪 70 代 男 性 肺 炎 50 代 男 性 アルコール 性 肝 硬 変 腹 水 貯 留
ネットワークシステムについて 各 離 島 診 療 所 から 登 録 している 有 志 の 専 門 医 に 対 し First class(ネットワークサーバーソフトウエアとメール サーバー 機 能 が 統 合 されたソフトウエア)を 通 じて 症 例 コンサルトが 可 能 同 システムには ヘリ 添 乗 当 番 病 院 消 防 隊 自 衛 隊 海 上 保 安 庁 県 ( 事 務 局 )も 参 加 ヘリ 添 乗 症 例 今 後 の 問 題 点 などについて ネット 上 に 提 起 された 案 件 (スレッ ド 方 式 )に 対 し 情 報 提 供 意 見 調 整 を 行 っている 同 システムを 利 用 し 離 島 を 離 れられない 診 療 所 医 師 も 参 加 可 能 な テレビ 会 議 を 行 うことも 年 に 数 回 ある テレビ 会 議 システムを 利 用 して 県 立 中 部 病 院 で 毎 日 行 われている 研 修 医 対 象 のレクチャーも 視 聴 可 能
デジカメで 症 例 の 写 真 をアップし 専 門 医 のア ドバイスをもらうことが 出 来 ます カメラもあり こちらの 映 像 も 送 れ る 様 になっています(テレビ 会 議 が 可 能 )
命 どぅ 宝 ゆいマールプロジェクト 県 立 中 部 病 院 救 急 センター 長 高 良 剛 先 生 ( 自 治 医 大 17 期 )を 中 心 とし 県 内 各 消 防 署 の 救 急 救 命 士 看 護 師 医 師 ら 有 志 で 心 肺 蘇 生 の 啓 蒙 をボランティアで 行 っているプロジェクト 自 身 の 離 島 診 療 所 勤 務 の 経 験 を 振 り 返 り 救 急 車 や 救 急 救 命 士 のいない 離 島 にて バイスタンダーの 存 在 が いかに 重 要 かを 広 めるのが 目 的 2004 年 から 開 始 今 までに 津 堅 島 伊 平 屋 島 阿 嘉 島 座 間 味 島 粟 国 島 古 宇 利 島 小 浜 島 黒 島 波 照 間 島 で 実 施 2005 年 12 月 南 北 大 東 島 でも 実 施
住 民 の 皆 さんも 熱 心 です 学 校 では 中 学 生 を 中 心 に 熱 心 に 心 配 蘇 生 法 を 学 んでいました
初 めての 一 人 診 療 所 勤 務 が 離 島 で それも 外 洋 の 超 遠 隔 地 であったため 当 初 は 緊 張 の 連 続 でした しかし 振 り 返 って みれば 大 変 貴 重 な 経 験 をさせていただ くことができ 今 後 の 人 生 を 歩 んでいく 上 で 大 きな 糧 となることと 思 います 将 来 的 には 離 島 でして いただいた 支 援 を 今 度 は 自 分 がしていけるように 研 鑽 を 積 み 努 力 し て 行 こうと 思 います 皆 さん 離 島 医 療 は 楽 しいですよ!! 香 川 25 期 生 松 岡 剛 司