第 18 章 労 働 事 情 1. 労 働 法 の 体 系 インドネシアにおける 主 な 労 働 法 制 としては 雇 用 関 係 については 2003 年 制 定 の 労 働 に 関 する 法 律 および 2000 年 制 定 の 労 働 組 合 に 関 する 法 律 があり 社 会 保 険 関 係 については 1992 年 制 定 の 労 働 者 の 社 会 保 障 に 関 する 法 律 および 1992 年 制 定 の 年 金 基 金 に 関 する 法 律 労 働 紛 争 関 係 については 2004 年 制 定 の 労 使 紛 争 解 決 法 がある 2. 労 働 市 場 と 雇 用 情 勢 (1) インドネシアの 労 働 市 場 インドネシアの 人 口 2 億 3,760 万 人 (2010 年 の 国 家 統 計 局 国 勢 調 査 )のうち 15 歳 以 上 の 人 口 は 1 億 7,207 万 人 ( 約 72.4%)である 15 歳 以 上 人 口 のうち 労 働 力 人 口 は 1 億 1,653 万 人 ( 約 67.7%)で さらに 労 働 力 人 口 のうち 就 業 者 は 1 億 821 万 人 ( 約 92.9%)であ る( 図 表 18-1) 2010 年 頃 より 日 系 企 業 の 進 出 は 大 幅 に 増 加 傾 向 にあるものの 労 働 力 は 依 然 として 豊 富 である 2010 年 の 失 業 率 は 7.1%( 失 業 者 数 は 832 万 人 )と 高 いが 2005 年 以 降 徐 々に 低 下 している( 図 表 18-2) 図 表 18-1 インドネシアの 労 働 力 構 成 (2010 年 時 点 ) 総 人 口 :2 億 3,760 万 人 15 歳 以 上 人 口 :1 億 7,207 万 人 ( 約 72.4%) 15 歳 未 満 人 口 : 6,557 万 人 ( 約 27.6%) 労 働 力 人 口 :1 億 1,653 万 人 ( 約 67.7%) 非 労 働 力 人 口 : 5,554 万 人 ( 約 32.3%) 就 業 者 :1 億 821 万 人 ( 約 92.9%) 失 業 者 :832 万 人 ( 約 7.1%) ( 注 ) 総 人 口 は 2010 年 の 暫 定 数 字 それ 以 外 は 2010 年 8 月 時 点 末 尾 の 桁 四 捨 五 入 単 位 : 人 ( 出 所 ) 国 家 統 計 局 National Labour Force Survey 2010 より 作 成 117
図 表 18-2 就 業 者 失 業 者 数 失 業 率 の 推 移 ( 百 万 人 ) 140 失 業 者 数 ( 左 軸 ) 就 業 者 数 ( 左 軸 ) 120 失 業 率 ( 右 軸 ) 100 11.9 10.9 10.0 9.4 9.0 8.3 18% 16% 14% 12% 80 60 11.24% 10.28% 9.11% 8.39% 7.87% 7.14% 10% 8% 40 6% 4% 20 94.0 95.5 99.9 102.6 104.9 108.2 2% 0 05 06 07 08 09 10 0% ( 暦 年 ) ( 出 所 ) 国 家 統 計 局 National Labour Force Survey 2005,2006,2007,2008,2009,2010 より 作 成 (2) インドネシアの 就 業 構 造 就 業 者 の 産 業 別 構 成 比 (2011 年 )をみると 農 林 水 産 業 (3,933 万 人 )が 35.9%と 最 大 で 卸 小 売 レストラン ホテル 業 (2,340 万 人 21.3%) コミュニティー 社 会 個 人 サー ビス 業 (1,556 万 人 15.2%) 製 造 業 (634 万 人 13.3%)が 続 く( 図 表 18-3) 時 系 列 で みると 農 林 水 産 業 の 比 率 が 減 少 し コミュニティー 社 会 個 人 サービス 業 の 割 合 がや や 増 加 傾 向 にある( 図 表 18-4) 図 表 18-3 就 業 者 の 産 業 別 構 成 (2011 年 8 月 ) 金 融 保 険 不 動 産 ビジ ネスサービス 2.4% 輸 送 通 信 業 4.6% 鉱 業 採 石 業 1.3% 電 力 ガス 水 道 0.2% 建 設 業 5.8% 製 造 業 13.3% 農 林 水 産 業 35.9% コミュニ ティー 社 会 個 人 サービス 15.2% 卸 小 売 レス トラン ホテル 21.3% ( 出 所 ) 国 家 統 計 局 National Labour Force Survey 2011 より 作 成 118
図 表 18-4 産 業 別 構 成 比 の 推 移 50% 45% 農 林 水 産 業 卸 小 売 レストラン ホテル コミュニティー 社 会 個 人 サービス 製 造 業 建 設 業 輸 送 通 信 業 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 04 05 06 07 08 09 10 11 ( 暦 年 ) ( 出 所 ) 国 家 統 計 局 National Labour Force Survey 2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011 より 作 成 (3) インドネシアの 雇 用 情 勢 インドネシアでは 労 働 人 口 は 潤 沢 であり 一 般 ワーカーの 採 用 は 企 業 の 買 い 手 市 場 である 一 般 ワーカーの 採 用 にあたっての 問 題 は 特 に 生 じていない 一 方 優 秀 なエンジ ニアやスタッフの 採 用 はそれほど 容 易 ではない インドネシアでは 就 業 人 口 に 占 める 大 学 卒 業 者 の 比 率 が 5%と 低 く 約 5 割 が 小 学 校 で 教 育 を 終 了 している( 中 退 を 含 む) 専 門 的 な 基 礎 知 識 技 術 を 有 する 人 材 が 少 なく その 上 企 業 間 での 引 き 抜 きや より 良 い 条 件 を 求 めてのジョブ ホッピングも 多 く 確 保 は 容 易 とは 言 えない インドネシアでは 新 卒 のスタッフ 採 用 は 一 般 的 ではないといわれるが 日 系 企 業 へのヒ アリングでは スタッフの 採 用 にあたっては 大 学 の 新 卒 を 採 用 している との 声 も 聞 か れた( 採 用 方 法 については 4. 雇 用 関 係 (2) 従 業 員 の 採 用 を 参 照 ) また 現 地 スタッ フへの 将 来 の 事 務 移 管 を 目 指 して 日 本 語 のできる 優 秀 な 人 材 の 採 用 を 積 極 的 に 行 う 例 も ある 119
図 表 18-5 就 業 者 の 学 歴 別 構 成 (2011 年 2 月 時 点 ) 短 期 専 門 課 程 3% 職 業 専 門 高 等 学 校 9% 大 学 5% 高 等 学 校 15% 小 学 校 ( 中 退 者 を 含 む) 49% 中 学 校 19% ( 出 所 ) 国 家 統 計 局 資 料 (No.33, 2011, May 5)より 作 成 3. 賃 金 (1) 賃 金 に 関 する 法 制 度 賃 金 に 関 する 法 令 には 労 働 法 (2003 年 第 13 号 )のほか 時 間 外 労 働 と 時 間 外 労 働 手 当 に 関 する 労 働 移 住 大 臣 令 KEP-102/MEN/VI/2004 最 低 賃 金 の 決 定 方 法 を 定 めた 同 大 臣 令 PER-1/MEN/1999 および KEP-226/MEN/2000 最 低 賃 金 設 定 の 根 拠 となる 最 低 生 活 費 につい て 定 めた 同 PER-17/MEN/VIII/2005 などがある 労 働 法 では 同 一 労 働 に 対 する 同 一 賃 金 の 適 用 を 定 めており 性 別 や 人 種 宗 教 等 での 賃 金 差 別 を 禁 止 している 賃 金 は 解 雇 時 の 解 雇 手 当 および 退 職 金 の 算 出 の 基 準 となり 基 本 給 のほか 家 族 手 当 交 通 費 食 事 手 当 残 業 代 等 を 含 む また 賃 金 のうち 75% 以 上 が 基 本 給 でなくてはならないことが 労 働 法 で 定 められている このほか 通 貨 危 機 後 の 民 主 化 と 地 方 分 権 の 動 きを 反 映 して 最 低 賃 金 は 地 方 別 に 決 定 されることが 法 令 で 規 定 されており さらにこの 地 方 別 最 低 賃 金 を 基 にして 地 方 ごとの 産 業 分 野 別 の 最 低 賃 金 が 決 定 される なお この 産 業 別 最 低 賃 金 は 地 方 別 最 低 賃 金 よりも 5% 以 上 高 くなくてはならない (2) 平 均 的 な 賃 金 水 準 2010 年 の 全 産 業 平 均 の 賃 金 水 準 は 月 額 121 万 ルピアで 全 産 業 セクターにおいて 近 年 上 昇 傾 向 にある 主 要 産 業 について 見 ると 金 融 (204 万 ルピア)や 電 気 ガス 水 道 (172 万 ルピア)などは 平 均 水 準 を 大 きく 上 回 る 一 方 製 造 業 (114 万 ルピア)は 平 均 水 準 を 若 干 下 回 り また 農 林 水 産 業 (59 万 ルピア)も 全 産 業 平 均 の 半 分 以 下 の 水 準 となっている 120
図 表 18-6 主 要 産 業 における 平 均 賃 金 の 推 移 ( 月 額 ) (10 万 ルピア) 25 全 産 業 平 均 農 林 水 産 業 製 造 業 20 電 力 ガス 水 道 金 融 等 15 10 5 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 ( 暦 年 ) ( 出 所 ) 労 働 移 住 省 統 計 より 作 成 (3) 周 辺 諸 国 との 賃 金 比 較 ジャカルタの 賃 金 水 準 を 周 辺 諸 国 の 主 要 都 市 と 比 較 してみると ホーチミンやヤンゴン より 高 くバンコクやクアラルンプールより 安 い 程 度 である また 前 年 比 ベースアップ 率 ( 製 造 業 )は 2011 年 が 9.0% 2012 年 が 9.6%と 高 水 準 で 推 移 している ジャカルタの 賃 金 上 昇 は バンコクやマニラ プノンペンと 比 較 すると 高 い 水 準 にある 一 方 進 出 企 業 に とって 賃 金 の 上 昇 が 大 きな 問 題 となっている 中 国 ( 上 海 )や 中 国 同 様 近 年 労 働 者 の 確 保 が 難 しくなってきているベトナム(ホーチミン)と 比 較 すると 低 い 水 準 にとどまってい る 図 表 18-7 周 辺 諸 国 との 平 均 賃 金 比 較 ( 単 位 : 月 額 ドル) 都 市 ワーカー エンジニア 中 間 管 理 職 ( 一 般 工 職 ) ( 中 堅 技 術 者 ) ( 課 長 クラス) 製 造 業 前 年 比 ベースアップ 率 (%) 2010->2011 2011->2012 香 港 1,522 2,004 3,735 3.9 3.8 シンガポール 1,252 2,239 3,710 4.1 3.9 上 海 311 609 1,096 12.9 11.4 ムンバイ 306 619 1,291 13.5 12.8 クアラルンプール 298 878 1,684 4.7 4.5 バンコク 263 588 1,423 5.3 6.0 マニラ 236 388 1,012 5.6 5.3 ジャカルタ 186 357 854 9.6 9.0 ホーチミン 114 265 641 16.8 17.1 プノンペン 101 363 416 7.8 6.2 ダッカ 54 125 428 14.8 10.5 ヤンゴン 41 95 238 9.9 12.2 ( 出 所 ) 第 21 回 アジア オセアニア 主 要 都 市 / 地 域 の 投 資 関 連 コスト 比 較 (2010 年 8~9 月 ジェトロ 実 施 ) より 作 成 121
4. 雇 用 関 係 (1) 労 働 規 制 インドネシアでは 1990 年 代 後 半 から 労 働 関 連 法 の 整 備 が 進 められている 1997 年 10 月 に 制 定 された 改 正 労 働 法 は 労 使 双 方 からの 反 対 の 声 により 施 行 が 凍 結 され 2002 年 9 月 に 廃 止 された それに 代 わる 法 律 案 として 2003 年 3 月 に 労 働 に 関 する 法 律 が 公 布 された さらに 2004 年 には 労 使 紛 争 解 決 法 が 制 定 された 新 労 働 法 は 労 働 民 主 化 と 評 され 雇 用 賃 金 ストライキ 解 雇 退 職 金 などを 規 定 し 労 働 関 連 各 法 規 の 基 本 法 と 位 置 付 けられている 労 働 者 保 護 に 重 点 を 置 いた 内 容 となって おり 企 業 にとって 労 働 問 題 が 大 きな 課 題 となっている 2006 年 3 月 に 発 表 された 投 資 環 境 改 善 のための 政 策 パッケージ では 同 年 4 月 を 期 限 に 労 働 法 改 正 案 の 国 会 提 出 が 目 指 された しかし 労 働 法 改 正 に 向 けて 開 催 された 政 労 使 三 者 協 議 では 労 働 者 保 護 に 関 す る 規 定 の 多 くが 削 除 されていることに 労 働 団 体 側 が 反 発 労 働 法 改 正 に 反 対 する 労 働 団 体 のデモが 3 月 以 降 各 地 で 頻 発 し 労 働 法 改 正 案 の 国 会 提 出 は 延 期 された 政 府 は 引 き 続 き 政 労 使 三 者 協 議 による 法 改 正 の 検 討 を 進 めていく 方 針 であるが 労 働 団 体 は 労 働 法 の 改 正 は 労 働 者 の 権 利 の 縮 減 につながるとして 2006 年 以 降 も 継 続 して 不 参 加 の 姿 勢 を 示 し ている (2) 従 業 員 の 採 用 一 般 ワーカーの 採 用 は 新 聞 広 告 自 社 ホームページ 工 場 門 扉 での 求 人 掲 載 や 人 材 会 社 の 利 用 学 校 での 求 人 などさまざまな 方 法 で 募 集 が 行 われている 採 用 形 態 では 当 初 は 契 約 社 員 として 採 用 し 優 秀 な 人 材 を 社 員 として 採 用 するケースが 多 い なお 契 約 社 員 としての 契 約 更 新 は 1 回 のみ 認 められており さらに 継 続 して 雇 用 する 場 合 には 正 社 員 として 採 用 しなければならない 一 方 スタッフやエンジニアについては 当 初 から 正 社 員 として 採 用 する 企 業 が 多 い 採 用 にあたっては 人 材 会 社 や 自 社 ホームページ 等 での 募 集 に 加 え 既 存 スタッフ 社 員 か らの 紹 介 や 閉 鎖 撤 退 した 企 業 のスタッフ 経 験 者 の 採 用 などが 行 われている 外 資 企 業 には 原 則 としてインドネシア 人 従 業 員 の 雇 用 が 義 務 付 けられており 外 国 人 の 採 用 には 制 限 がある( 詳 しくは 9. 外 国 人 就 労 規 制 と 労 働 許 可 の 取 得 参 照 ) さらに 地 域 によっては 従 業 員 の 一 定 以 上 を 域 内 居 住 者 から 採 用 することを 求 める 通 達 が 出 され る 場 合 もあるようである 122
(3) 従 業 員 の 解 雇 通 常 被 雇 用 者 には 3 ヵ 月 間 の 試 用 期 間 が 与 えられ その 期 間 内 に 不 十 分 な 点 が 見 つか った 場 合 は 解 雇 することができる 試 用 期 間 経 過 後 の 解 雇 の 前 には 書 面 による 警 告 を 3 回 行 うことが 通 例 である また 窃 盗 やその 他 の 犯 罪 のような 深 刻 な 違 反 が 合 った 場 合 に は 警 告 なしで 解 雇 することも 可 能 である 警 告 は 11 回 目 の 警 告 後 6 ヵ 月 間 22 回 目 の 警 告 後 9 ヵ 月 間 33 回 目 の 警 告 後 12 ヵ 月 間 が 経 過 すると 無 効 になる 業 務 の 効 率 化 のために 従 業 員 を 解 雇 する 場 合 従 業 員 は 以 下 の 退 職 金 を 受 ける 権 利 が 与 えられる ただし 自 発 的 に 退 職 した 被 雇 用 者 には 退 職 金 を 受 ける 権 利 はない 以 下 の 退 職 金 を 受 ける 権 利 は 労 働 法 に 基 づくものである 退 職 金 = A 2 + B + 費 用 勤 務 期 間 A B 1 年 未 満 給 料 1ヵ 月 分 なし 1 年 以 上 2 年 未 満 給 料 2ヵ 月 分 なし 2 年 以 上 3 年 未 満 給 料 3ヵ 月 分 なし 3 年 以 上 4 年 未 満 給 料 4ヵ 月 分 給 料 2ヵ 月 分 4 年 以 上 5 年 未 満 給 料 5ヵ 月 分 給 料 2ヵ 月 分 5 年 以 上 6 年 未 満 給 料 6ヵ 月 分 給 料 2ヵ 月 分 6 年 以 上 7 年 未 満 給 料 7ヵ 月 分 給 料 3ヵ 月 分 7 年 以 上 8 年 未 満 給 料 8ヵ 月 分 給 料 3ヵ 月 分 8 年 以 上 9 年 未 満 給 料 9ヵ 月 分 給 料 3ヵ 月 分 9 年 以 上 12 年 未 満 給 料 9ヵ 月 分 給 料 4ヵ 月 分 12 年 以 上 15 年 未 満 給 料 9ヵ 月 分 給 料 5ヵ 月 分 15 年 以 上 18 年 未 満 給 料 9ヵ 月 分 給 料 6ヵ 月 分 18 年 以 上 21 年 未 満 給 料 9ヵ 月 分 給 料 7ヵ 月 分 21 年 以 上 24 年 未 満 給 料 9ヵ 月 分 給 料 8ヵ 月 分 24 年 以 上 給 料 9ヵ 月 分 給 料 10ヵ 月 分 費 用 は 以 下 の 金 額 の 合 計 となる (a) 未 消 化 の 有 給 休 暇 分 の 給 料 (b) 従 業 員 およびその 家 族 が 当 初 の 勤 務 地 に 帰 宅 するための 旅 費 (c) 住 宅 費 および 医 療 費 として 解 雇 手 当 ( 上 記 A)および 長 期 勤 務 手 当 ( 上 記 B)の 15%に 相 当 する 金 額 (d)その 他 雇 用 契 約 就 業 規 則 又 は 労 働 協 約 により 定 められた 金 額 123
給 料 は 原 則 として 過 去 3 ヵ 月 の 平 均 金 額 であるが ボーナス 等 により 変 動 する 場 合 に は 過 去 12 ヵ 月 の 平 均 金 額 となる インドネシアは 労 働 法 が 厳 しく 一 旦 正 社 員 として 採 用 すると 解 雇 することが 容 易 で なく またそのためのコストもかなり 大 きい そのために 企 業 によっては 従 業 員 の 半 分 程 度 を 契 約 社 員 (コントラクトワーカー)として 採 用 し 景 気 変 動 による 影 響 を 調 整 し ているところが 多 い 契 約 社 員 の 定 義 ( 雇 用 期 間 に 限 定 がある 社 員 ) 就 業 可 能 業 務 就 業 時 間 賃 金 などは 労 働 法 (2003 年 3 月 )に 規 定 されている 2 年 以 内 の 期 間 で 契 約 を 結 び 最 長 1 年 の 契 約 期 間 の 変 更 ( 契 約 期 間 の 変 更 は 1 回 のみ 可 能 である )あるいは 最 長 2 年 の 更 新 が 認 めら れているため 合 計 で 最 長 4 年 間 まで 契 約 社 員 として 就 業 することが 可 能 である なお 就 業 可 能 業 務 や 契 約 期 間 に 関 する 規 制 に 企 業 側 が 違 反 した 場 合 契 約 社 員 は 期 間 の 定 め がない 正 社 員 となる 5. 労 働 条 件 インドネシアでは 労 働 組 合 と 雇 用 者 が 自 主 的 かつ 自 由 に 交 渉 を 行 い 賃 金 や 雇 用 条 件 に 関 して 団 体 協 約 を 結 ぶことができる このような 協 約 は 政 府 の 認 可 を 受 けなければなら ず 最 長 2 年 まで 有 効 であり 1 年 間 の 延 長 も 可 能 である 主 要 就 労 規 制 1 賃 金 : 固 定 手 当 を 含 む 基 本 給 は その 地 域 の 最 低 賃 金 を 下 回 ってはならない 2 就 業 時 間 : 週 5 日 の 場 合 1 日 8 時 間 以 内 週 40 時 間 以 下 週 6 日 の 場 合 1 日 7 時 間 以 内 週 40 時 間 以 下 超 過 勤 務 は 労 働 者 の 同 意 を 得 て 1 日 3 時 間 以 内 週 14 時 間 以 下 3 休 日 : 法 律 で 定 める 有 給 休 暇 のほか 忌 引 結 婚 休 暇 病 休 出 産 休 暇 国 民 の 義 務 や 宗 教 的 な 義 務 を 果 たすための 休 暇 4 解 雇 : 個 人 解 雇 の 場 合 は 地 方 委 員 会 大 量 解 雇 の 場 合 は 中 央 委 員 会 の 許 可 が 必 要 5 退 職 金 慰 労 金 等 : 勤 続 年 数 に 応 じた 退 職 金 慰 労 金 などの 支 払 い 124
6. 社 会 保 険 インドネシアの 社 会 保 険 には 以 下 のものがある 1 労 働 者 災 害 保 険 2 死 亡 保 険 3 老 齢 保 険 4 健 康 保 険 老 齢 保 険 には 本 人 の 自 己 負 担 分 ( 給 与 の 2%)と 雇 主 負 担 分 ( 給 与 の 3.7%)がある が 労 働 者 災 害 保 険 死 亡 保 険 健 康 保 険 は 自 己 負 担 はなく すべて 雇 主 が 負 担 する 労 働 者 災 害 保 険 の 負 担 率 は 月 給 の 0.24~1.74%( 業 種 により 負 担 率 が 異 なる 全 額 雇 用 主 負 担 ) 死 亡 保 険 の 負 担 率 は 月 給 の 0.3%( 全 額 雇 用 主 負 担 ) 健 康 保 険 の 負 担 率 は 独 身 者 の 場 合 月 給 の 3% 既 婚 者 の 場 合 月 給 の 6%( 全 額 雇 用 主 負 担 )となっている 企 業 負 担 分 の 合 計 は 最 大 で 3.7+1.74+0.3+6 で 月 給 の 11.74%となる 7. 労 使 関 係 (1) 労 働 組 合 労 使 紛 争 インドネシアでは 長 い 間 労 働 組 合 の 設 立 が 規 制 されていたが 1998 年 6 月 政 府 が ILO87 号 条 約 ( 結 社 の 自 由 および 団 結 権 の 保 護 条 約 )を 批 准 し 労 働 組 合 の 設 立 を 自 由 化 し た すべての 従 業 員 は 労 働 組 合 を 結 成 し 労 働 組 合 の 組 合 委 員 となる 権 利 を 有 する 労 働 組 合 は 10 名 以 上 の 労 働 者 が 加 入 することにより 結 成 することができる その 結 果 現 在 では SPSI( 全 インドネシア 労 働 組 合 総 連 合 )をはじめ 多 数 の 労 組 が 設 立 登 録 され ている ストライキ 発 生 件 数 は 最 低 賃 金 の 大 幅 な 引 き 上 げ 実 施 により 労 働 者 の 生 活 環 境 が 改 善 されたことから 経 済 安 定 化 に 伴 って 減 少 傾 向 にあった 2005 年 には 発 生 件 数 は 96 件 となり 100 件 を 下 回 る 水 準 まで 低 下 した しかし 最 低 賃 金 や 賃 上 げなどの 賃 金 に 関 する 事 項 および 労 働 者 社 会 保 障 などの 福 利 厚 生 に 関 する 事 項 を 原 因 として 再 び 増 加 傾 向 にあり 2011 年 には 302 件 となっている 125
<ストライキの 発 生 件 数 と 参 加 人 数 > 1990 1995 2000 2005 2009 2010 2011 ストライキ 数 ( 件 ) 61 276 273 96 149 192 302 参 加 人 数 (1,000 人 ) 31 127 126 56 94 126 102 ( 出 所 ) 労 働 移 住 省 ILO 資 料 より 作 成 (2) その 他 インドネシア 国 民 の 約 90%がイスラム 教 徒 であり 1 日 5 回 のお 祈 りが 義 務 付 けられて いる そのため 就 業 時 間 内 に 少 なくとも 2 度 のお 祈 り 時 間 を 考 慮 しておく 必 要 がある 1 回 あたりのお 祈 りの 時 間 は 約 10~15 分 である 8. 労 使 紛 争 の 解 決 インドネシアにおいては 2004 年 に 制 定 された 労 働 裁 判 所 および 労 働 事 件 訴 訟 法 に 基 づ き 労 働 関 係 に 関 する 紛 争 は 以 下 の 4 種 類 に 分 類 される 1 権 利 に 関 する 紛 争 : 法 規 雇 用 契 約 就 業 規 則 または 労 働 協 約 の 解 釈 および 適 用 に 関 する 相 違 の 結 果 として 生 じる 権 利 が 認 められていないことを 主 張 する 紛 争 2 利 害 に 関 する 紛 争 : 雇 用 契 約 就 業 規 則 または 労 働 協 約 において 定 められた 雇 用 条 件 に 関 する 理 解 の 不 一 致 の 結 果 として 雇 用 関 係 において 生 じる 紛 争 3 雇 用 契 約 終 了 に 関 する 紛 争 : 雇 用 契 約 の 当 事 者 の 一 方 による 雇 用 契 約 の 終 了 に 関 する 理 解 の 不 一 致 から 生 じる 紛 争 4 労 働 組 合 間 の 紛 争 : 労 働 組 合 の 加 入 者 権 利 および 義 務 に 関 する 労 働 組 合 間 の 紛 争 上 記 の 労 働 紛 争 の 解 決 のため 労 働 裁 判 所 および 労 働 事 件 訴 訟 法 は 以 下 の 4 つの 解 決 方 法 を 規 定 している 1 調 停 : 一 人 または 複 数 の 中 立 の 調 停 人 が 立 ち 会 い 紛 争 解 決 を 促 す 上 記 4 類 型 すべて で 利 用 することができる 2 和 解 : 調 停 と 同 様 に 一 人 または 複 数 の 中 立 の 立 会 人 が 立 ち 会 い 紛 争 解 決 を 促 す 利 害 に 関 する 紛 争 雇 用 契 約 終 了 に 関 する 紛 争 および 労 働 組 合 間 の 紛 争 において 利 用 する ことができる 3 仲 裁 : 当 事 者 間 の 書 面 による 仲 裁 合 意 に 基 づき 労 働 裁 判 所 外 で 紛 争 の 解 決 が 図 られ る 利 害 に 関 する 紛 争 および 労 働 組 合 間 の 紛 争 において 利 用 することができる 4 労 働 裁 判 所 による 裁 判 : 地 方 裁 判 所 内 に 設 けられた 特 別 裁 判 所 であり 労 働 関 係 の 紛 争 すべてについて 判 断 する 権 限 を 有 する 126
9. 外 国 人 就 労 規 制 と 労 働 許 可 の 取 得 (1) 労 働 法 (2003 年 3 月 25 日 付 法 律 第 13 号 )による 規 制 2003 年 3 月 25 日 付 法 律 第 13 号 にて 制 定 された 新 労 働 法 は 第 VIII 章 第 42 条 から 第 49 条 において インドネシアにおける 外 国 人 労 働 者 の 就 労 について 規 定 している インドネシアにおける 外 国 人 の 就 労 には 労 働 移 住 大 臣 等 の 許 可 が 必 要 である 外 国 人 の 就 労 は 特 定 の 役 職 および 期 間 ( 注 1)に 限 られること 当 該 の 外 国 人 には 役 職 規 定 や 能 力 基 準 ( 注 2)を 遵 守 することが 求 められる ( 注 1) 外 国 人 の 就 労 を 制 限 する 特 定 の 役 職 および 期 間 外 国 人 労 働 者 が 守 るべき 役 職 規 定 や 能 力 基 準 については いずれも 労 働 移 住 大 臣 決 定 で 詳 細 を 規 定 ( 注 2) 能 力 基 準 とは 専 門 の 知 識 や 技 術 のほか インドネシア 文 化 に 対 する 理 解 も 指 す (2) 外 国 人 労 働 者 雇 用 許 可 および 暫 定 居 住 許 可 の 取 得 外 資 系 企 業 は 原 則 としてインドネシア 人 労 働 者 を 雇 用 する 義 務 があり インドネシア 人 では 遂 行 できない 管 理 職 や 専 門 職 に 限 り 外 国 人 の 雇 用 が 認 められている インドネシアに 外 国 人 社 員 を 派 遣 し 就 労 させるためには 一 時 滞 在 ビザ(ビザ 区 分 312) (VITAS=Visa Tinggal Terbatas)の 取 得 が 必 要 である 一 時 滞 在 ビザの 取 得 のためには 投 資 調 整 庁 (BKPM)からの 外 資 進 出 の 認 可 取 得 により まず 現 地 子 会 社 の 法 人 設 立 手 続 きの 完 了 が 必 要 である 手 続 きの 詳 細 は 以 下 の 通 りである 1 外 国 人 雇 用 計 画 書 (RPTKA=Manpower Plan)の 提 出 と 許 可 取 得 インドネシアで 事 業 を 行 う 外 国 民 間 企 業 政 府 プロジェクト 実 行 法 人 インドネシアの 法 律 に 基 づき 設 立 された 法 人 社 会 教 育 文 化 あるいは 宗 教 団 体 興 行 サービス 事 業 の ほか 各 種 駐 在 員 事 務 所 も RPTKA 取 得 が 必 要 RPTKA の 申 請 は 雇 用 主 の 身 分 外 国 人 従 業 員 の 役 職 /ポジション 賃 金 雇 用 総 人 数 雇 用 期 間 就 労 地 外 国 人 従 業 員 につくインドネシア 人 見 習 いの 指 名 インドネシア 人 労 働 者 の 教 育 訓 練 プログラム 計 画 などについて 記 す RPTKA 申 請 に 際 して 必 要 な 書 類 につ いては 第 11 章 2.その 他 の 手 続 きとその 際 の 必 要 書 類 を 参 照 申 請 された 外 国 人 従 業 員 の 雇 用 が 50 人 以 上 ならば 国 内 労 働 者 育 成 配 置 総 局 長 が 50 人 未 満 ならば 労 働 者 提 供 雇 用 局 長 が RPTKA 承 認 書 を 発 行 する RPTKA 承 認 書 の 有 効 期 間 は 最 高 5 年 国 内 労 働 市 場 の 状 況 により さらに 同 じ 期 間 だけ の 延 長 を 認 められる 2 派 遣 者 用 ビザの 発 給 申 請 と 発 給 雇 用 主 は 上 記 の RPTKA 承 認 を 得 た 後 そのコピーを 含 む 申 請 書 類 を 以 って 労 働 移 住 省 労 働 者 配 置 総 局 にあて 赴 任 者 用 のビザ 発 行 の 前 提 となる 労 働 省 の 推 薦 状 (TA-01) 発 行 を 申 請 通 常 1 営 業 日 で 発 行 される 労 働 移 住 省 の 推 薦 状 は 原 本 が 法 務 人 権 省 入 国 管 理 総 局 に 送 付 されるとともに 写 しが 該 当 する 赴 任 者 に 交 付 される 127
前 記 の 推 薦 状 が 発 行 された 後 雇 用 主 は 同 総 局 に 赴 任 者 の 一 時 滞 在 ビザを 申 請 する 同 ビザの 発 給 許 可 が 下 ると 同 総 局 から 赴 任 者 が 一 時 滞 在 ビザの 発 給 を 希 望 する 国 に 所 在 するインドネシア 公 館 にビザ(VTT) 許 可 書 が 電 送 され それを 受 信 後 当 該 公 館 は 赴 任 者 に 現 地 入 国 可 能 な 一 時 滞 在 ビザを 発 給 するので それを 受 ければ 派 遣 者 のインドネシア 赴 任 が 可 能 になる また 雇 用 主 は 赴 任 者 の 一 時 滞 在 ビの 発 給 後 技 術 能 力 開 発 基 金 (DPKK)を 赴 任 者 1 名 あたり 月 100 ドル 1 年 分 の 場 合 は 計 1,200 ドルを 労 働 移 住 省 指 定 銀 行 へ 納 付 する 必 要 がある 上 記 の DPKK の 納 付 後 労 働 移 住 省 に 外 国 人 労 働 者 雇 用 許 可 (IMTA)を さらに 赴 任 者 居 住 予 定 地 の 入 国 管 理 事 務 所 に 暫 定 居 住 許 可 (KITAS)を 同 時 に 申 請 する IMTA は 申 請 後 10 から 15 労 働 日 後 ( 規 定 上 は 3 労 働 日 )に 許 可 が 発 行 され KITAS は 赴 任 者 の 入 国 の 後 7 日 以 内 に 入 国 管 理 事 務 所 に 出 頭 し 本 人 署 名 や 指 紋 押 捺 写 真 撮 影 を 済 ませると 数 日 後 には 発 給 される ということが 原 則 的 に 定 められている 有 効 期 限 が 当 面 1 年 ( 延 長 可 能 )の KITAS および IMTA の 双 方 を 取 得 した 後 赴 任 者 は インドネシアでの 就 労 が 可 能 になるが 付 帯 的 に 外 国 人 着 任 報 告 (LKOA)の 提 出 や 外 国 人 登 録 証 (POA) 住 民 登 録 (SKTT) 警 察 登 録 証 明 ( 通 称 イエローカード) 等 の 取 得 も 必 要 である また ジャカルタ 在 住 の 赴 任 者 には 上 記 とは 多 少 異 なる 登 録 手 続 きがあるので 留 意 が 必 要 である 上 記 の 一 連 の 手 続 は 申 請 ごとに 必 要 提 出 書 類 も 多 種 で 煩 雑 な 点 が 多 々あ るため 信 頼 できる 現 地 エージェント( 日 系 会 社 もあり)に 手 続 代 行 させることが 賢 明 で ある また 手 続 の 変 更 等 は 頻 繁 なので そのつど 関 係 機 関 に 細 部 を 確 認 されたい 128