平 成 18 年 ( 行 ケ) 第 10105 号 審 決 取 消 請 求 事 件 平 成 18 年 8 月 9 日 判 決 言 渡, 平 成 18 年 6 月 19 日 口 頭 弁 論 終 結 判 決 原 告 トップツアー 株 式 会 社 ( 旧 商 号 東 急 観 光 株 式 会 社 ) 訴 訟 代 理 人 弁 理 士 員 見 正 文 被 告 Y 訴 訟 代 理 人 弁 理 士 中 島 淳, 加 藤 和 詳, 西 元 勝 一, 福 田 浩 志, 樋 熊 美 智 子 主 文 特 許 庁 が 取 消 2005-30291 号 事 件 について 平 成 18 年 1 月 31 日 にした 審 決 を 取 り 消 す 訴 訟 費 用 は 被 告 の 負 担 とする 事 実 及 び 理 由 第 1 原 告 の 求 めた 裁 判 主 文 第 1 項 と 同 旨 の 判 決 第 2 事 案 の 概 要 本 件 は, 商 標 登 録 を 不 使 用 取 消 しとした 審 決 の 取 消 しを 求 める 事 件 であり, 原 告 は 取 り 消 すとされた 商 標 の 商 標 権 者, 被 告 は 取 消 審 判 の 請 求 人 である 1 特 許 庁 における 手 続 の 経 緯 (1) 原 告 は, TEAMS の 欧 文 字 を 標 準 文 字 で 横 書 きしてなり, 指 定 役 務 を 商 標 法 施 行 令 別 表 の 区 分 による 第 39 類 鉄 道 による 輸 送 に 関 する 情 報 の 提 供, 車 両 による 輸 送 に 関 する 情 報 の 提 供, 船 舶 による 輸 送 に 関 する 情 報 の 提 供, 航 空 機 による 輸 送 に 関 する 情 報 の 提 供, 道 路 情 報 の 提 供, 主 催 旅 行 の 実 施, 旅 行 者 の 案 - 1 -
内, 旅 行 に 関 する 契 約 ( 宿 泊 に 関 するものを 除 く )の 代 理 媒 介 又 は 取 次 ぎ,ス ーツケースの 貸 与 及 び 第 42 類 宿 泊 施 設 の 提 供 の 媒 介 又 は 取 次 ぎ, 宿 泊 施 設 に 関 する 情 報 の 提 供, 飲 食 物 の 提 供 に 関 する 契 約 の 媒 介 又 は 取 次 ぎ, 電 子 計 算 機 の 性 能 操 作 方 法 等 に 関 する 紹 介 及 び 説 明, 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守, 通 訳, 翻 訳, 会 議 室 の 貸 与 又 は 展 示 施 設 の 貸 与 に 関 する 契 約 の 媒 介 又 は 取 次 ぎ とする 登 録 第 4514557 号 商 標 ( 平 成 12 年 4 月 14 日 出 願, 平 成 13 年 10 月 19 日 設 定 登 録, 以 下 本 件 商 標 という )の 商 標 権 者 である (2) 被 告 は, 平 成 17 年 3 月 17 日, 商 標 法 50 条 1 項 に 基 づき, 本 件 商 標 の 指 定 役 務 のうち, 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 に 係 る 部 分 につい て 商 標 登 録 の 取 消 審 判 を 請 求 し( 取 消 2005-30291 号 事 件 として 係 属 ), その 登 録 ( 予 告 登 録 )が 同 年 4 月 7 日 にされた (3) 特 許 庁 は, 平 成 18 年 1 月 31 日, 登 録 第 4514557 号 商 標 の 指 定 役 務 中, 第 42 類 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 につい ては,その 登 録 は 取 り 消 す との 審 決 をし, 同 年 2 月 10 日 にその 謄 本 を 原 告 に 送 達 した 2 審 決 の 理 由 審 決 の 理 由 は, 以 下 のとおりであり, 要 するに, 商 標 権 者 ( 原 告 )が, 本 件 審 判 の 請 求 の 登 録 ( 平 成 17 年 4 月 7 日 ) 前 3 年 以 内 に 日 本 国 内 において, 本 件 商 標 の 指 定 役 務 中, 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 について 本 件 商 標 を 使 用 しているとは 認 めることができないから, 本 件 商 標 の 登 録 は, 商 標 法 50 条 1 項 の 規 定 により,その 指 定 役 務 中, 上 記 役 務 について 取 り 消 すべきである,とい うのである ( 1) 商 標 法 50 条 1 項 に 規 定 する 商 標 登 録 の 取 消 審 判 の 請 求 があったときは, 同 条 2 項 の 規 定 に より, 審 判 の 請 求 の 登 録 前 3 年 以 内 に 日 本 国 内 において 商 標 権 者, 専 用 使 用 権 者 又 は 通 常 使 用 権 者 の いずれかがその 請 求 に 係 る 指 定 商 品 又 は 指 定 役 務 のいずれかについて 登 録 商 標 の 使 用 をしていること を 被 請 求 人 が 証 明 するか, 又 は, 使 用 していないことについて 正 当 な 理 由 があることを 被 請 求 人 が 明 - 2 -
らかにしない 限 り,その 指 定 商 品 に 係 る 商 標 登 録 の 取 消 を 免 れない ( 2) これを 本 件 についてみるに, 審 判 乙 1( 取 引 形 態, トラベルマネージメント 業 務 に 関 する 契 約 書, ビジネスモデルの 通 常 実 施 権 許 諾 協 定 書 及 び ソフトウェアのサポートに 関 する 覚 書 )は, 取 引 形 態 と 書 された 作 成 年 月 日 の 不 明 な1 枚 の 被 請 求 人 ( 会 社 )の 取 引 フローと 認 めら れる 書 面 であり, 他 に 添 付 の3 通 の 書 面 は,いずれも 前 記 の 本 件 商 標 の 使 用 を 証 明 する 証 拠 としてい かなる 関 係 にあるのかが 不 明 である 審 判 乙 2( 機 密 保 持 契 約 書 )は, 前 記 の 本 件 商 標 の 使 用 を 証 明 する 証 拠 としていかなる 関 係 に あるのかが 不 明 な 書 面 である 審 判 乙 3( 旅 費 計 算 管 理 システム TEAMS ご 提 案 書 )は, 被 請 求 人 が 作 成 したと 認 め られる 作 成 年 月 日 の 記 載 のない 書 面 である 審 判 乙 4( Tokyu Streamlines サービスのご 案 内 )は, 被 請 求 人 が 作 成 した 作 成 年 月 日 の 記 載 のない 書 面 である ( 3) そうとすれば, 被 請 求 人 は, 審 判 乙 1ないし4を 提 出 したのみであり,かつ, 提 出 に 係 る 審 判 乙 1ないし4によって, 本 件 商 標 が 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 について 使 用 しているとは 認 められないこと, 作 成 年 月 日 の 記 載 のない 書 証 からは 使 用 の 時 期 が 明 らかでないこ と, 及 び 商 標 権 者 又 は 通 常 使 用 権 者 のいずれかが 使 用 しているか 明 らかでないことから,いずれも 前 述 のとおり 不 十 分 な 証 明 であって,これらの 証 拠 をもっては, 本 件 商 標 が, 被 請 求 人 により 本 件 請 求 に 係 る 指 定 役 務 ( 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 )について 使 用 しているものと は 認 めることができない 他 に, 上 記 の 認 定 判 断 を 覆 す 証 拠 は 見 当 たらない ( 4) してみれば, 答 弁 の 理 由 及 び 審 判 乙 1ないし4を 総 合 的 に 判 断 しても, 被 請 求 人 ( 商 標 権 者 )が, 本 件 審 判 の 請 求 の 登 録 ( 平 成 17 年 4 月 7 日 ) 前 3 年 以 内 に 日 本 国 内 において, 本 件 商 標 の 指 定 役 務 中, 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 について 本 件 商 標 を 使 用 しているも のとは 認 めることができない したがって, 本 件 商 標 の 登 録 は, 商 標 法 50 条 の 規 定 により, 指 定 役 務 中 電 子 計 算 機 のプログラ ムの 設 計 作 成 又 は 保 守 について 取 り 消 すべきものである 第 3 当 事 者 の 主 張 - 3 -
1 原 告 主 張 の 審 決 取 消 事 由 審 決 は, 被 請 求 人 ( 商 標 権 者 )が, 本 件 審 判 の 請 求 の 登 録 ( 平 成 17 年 4 月 7 日 ) 前 3 年 以 内 に 日 本 国 内 において, 本 件 商 標 の 指 定 役 務 中, 電 子 計 算 機 のプロ グラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 について 本 件 商 標 を 使 用 しているものとは 認 めるこ とができない とした (1) 商 標 権 者 ( 原 告 )による 使 用 原 告 は, 平 成 16 年 7 月 1 日 以 降, 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 ( 以 下 本 件 役 務 という )に 係 るプログラムを 旅 費 精 算 管 理 システ ム と 称 して,これに 関 する 広 告 を 内 容 とする 情 報 に 本 件 標 章 を 付 して, 原 告 のウ ェブページに 掲 載 し,また, 本 件 商 標 の 審 判 の 請 求 の 登 録 前 3 年 以 内 に, 旅 費 精 算 システム, 海 外 旅 費 精 算 システム の 提 案 書 ( 甲 17,19)やその 提 供 時 の 情 報 セキュリティに 関 する 説 明 書 ( 甲 18)に 本 件 標 章 を 付 して, 顧 客 に 頒 布 し た (2) 通 常 使 用 権 者 による 使 用 ア 東 急 ストリームライン 株 式 会 社 ( 以 下 東 急 ストリームライン という ) は, 平 成 15 年 1 月 1 日, 原 告 ( 平 成 18 年 1 月 31 日 変 更 前 の 商 号 は, 東 急 観 光 株 式 会 社 である )から, 会 社 分 割 により 国 際 旅 行 事 業 及 びビジネストラベル 事 業 ( 本 件 役 務 を 含 む )に 関 して 有 する 権 利 義 務 を 承 継 し, 平 成 16 年 7 月 1 日, 原 告 に 合 併 し 解 散 した 会 社 であるが, 原 告 は,その 間, 本 件 商 標 について, 東 急 スト リームラインに 通 常 使 用 権 を 許 諾 していた また, 原 告 は, 本 件 商 標 について, 日 本 ケイデンス デザイン システムズ 社 ( 以 下 日 本 ケイデンス という ) 及 び 三 井 情 報 開 発 株 式 会 社 ( 以 下 三 井 情 報 開 発 という )に 通 常 使 用 権 を 許 諾 した イ 東 急 ストリームラインは, 平 成 15 年 1 月 1 日 から 平 成 16 年 6 月 31 日 ま での 間 に, 旅 費 精 算 管 理 システム に 関 する 広 告 を 内 容 とする 情 報 に 本 件 標 章 を 付 して, 同 社 のウェブページに 掲 載 し,また, 旅 費 精 算 管 理 システム, - 4 -
旅 費 精 算 システム の 提 案 書 ( 甲 23ないし25,29)に 本 件 標 章 を 付 して, 顧 客 に 頒 布 した また, 本 件 商 標 の 審 判 の 請 求 の 登 録 前 3 年 以 内 に, 日 本 ケイデン スは, 旅 費 精 算 システム に 本 件 商 標 を 付 した 使 用 許 諾 契 約 書 ( 甲 26)を 顧 客 と 取 り 交 わし, 三 井 情 報 開 発 は, 要 件 定 義 書 ( 甲 27)に 本 件 標 章 を 付 して 顧 客 に 頒 布 した (3) 以 上 のとおり, 原 告 又 は 上 記 通 常 使 用 権 者 は, 本 件 商 標 の 審 判 の 請 求 の 登 録 前 3 年 以 内 に, 被 告 の 請 求 に 係 る 指 定 役 務 について, 本 件 商 標 を 使 用 しているか ら, 審 決 の 認 定 判 断 は, 誤 りである 2 被 告 の 反 論 (1) 東 急 ストリームライン, 日 本 ケイデンス 及 び 三 井 情 報 開 発 については, 通 常 使 用 権 の 許 諾 契 約 の 存 在 を 示 す 証 拠 方 法 が 全 く 提 出 されていないから, 通 常 使 用 権 者 とは 認 められない (2) システムは, 商 品 に 当 たるとしても, 役 務 には 当 たるものではない ま た, 原 告 や 東 急 ストリームラインのウェブページでは, 旅 費 精 算 管 理 システ ム の 名 称 として 本 件 商 標 を 使 用 しているにすぎないし, 提 案 書 ( 甲 17,19, 23ないし25,29), 情 報 セキュリティに 関 する 説 明 書 ( 甲 18), 使 用 許 諾 契 約 書 ( 甲 26) 及 び 要 件 定 義 書 ( 甲 27)は, 商 標 法 2 条 3 項 8 号 の 取 引 書 類 に 当 たらない 上, 特 定 の 一 企 業 に 提 示 されただけであるから, 同 号 の 頒 布 に 当 たらない 第 4 当 裁 判 所 の 判 断 1 甲 1ないし9,14,16,17,19ないし26,28,29 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 次 の 事 実 が 認 められる (1) 原 告 は, 本 件 審 判 の 請 求 の 登 録 ( 平 成 17 年 4 月 7 日 ) 前 3 年 から 後 記 (2) の 吸 収 分 割 をした 平 成 15 年 1 月 6 日 までの 間 に, 少 なくとも,1 平 成 14 年 5 月 28 日, 株 式 会 社 ソニー ピクチャーズエンタテインメントに 対 し, 旅 費 精 算 - 5 -
システム TEAMS 手 配 プロセス と 題 する 提 案 書 ( 甲 17)を 交 付 して,チケ ット 発 注 と 原 告 への 支 払 いプロセスの 概 要 を 説 明 し,2 同 年 12 月 16 日, 川 崎 重 工 業 株 式 会 社 に 対 し, 海 外 旅 費 精 算 システム その 構 築 に 関 するご 提 案 と 題 する 提 案 書 ( 甲 19)を 交 付 して, 海 外 旅 費 精 算 システムであるTEAMSの 概 要 を 説 明 している(なお, 川 崎 重 工 業 株 式 会 社 の 子 会 社 であるケイライントラベル 株 式 会 社 による 提 案 とする 必 要 があったため, 上 記 提 案 書 の 作 成 者 はケイライントラ ベル 株 式 会 社 とされている ) 日 本 ケイデンスは, 原 告 との 間 で 平 成 12 年 6 月 20 日 付 け 出 張 申 請 経 費 精 算 アウトソーシング 事 業 に 関 する 覚 書 ( 甲 14)を 取 り 交 わし, 出 張 申 請 経 費 精 算 システムの 運 営 上 必 要 となるソフトウェア,ハードウェア 等 の 開 発 を 行 っていた が, 平 成 15 年 12 月 1 日,ケイライントラベル 株 式 会 社 とともに, 川 崎 重 工 業 株 式 会 社 との 間 で, 旅 費 精 算 システム(TEAMS) に 関 するソフトウェア 使 用 許 諾 契 約 ( 甲 26)を 締 結 した (2) 原 告 と 東 急 ストリームライン( 平 成 14 年 9 月 9 日 設 立 )は, 原 告 の 国 際 旅 行 事 業 及 びビジネストラベル 事 業 を 東 急 ストリームラインに 承 継 させるために 吸 収 分 割 を 行 い, 平 成 15 年 1 月 6 日 にその 旨 の 登 記 を 経 由 した 原 告 は, 吸 収 分 割 に 先 立 ち, 全 国 を 網 羅 する 東 急 観 光 平 成 15 年 1 月, 個 性 的 な3つの 顔 が 新 たに 誕 生 いたします として, 東 急 ストリームラインを 含 む3 社 を 紹 介 する チラシ( 甲 6)を 作 成, 配 布 したが,これには, 東 急 ストリームラインについて, 幅 広 いサービスを 提 供 する 国 際 旅 行 と,ご 出 張 の 手 配 から 精 算 までをシス テム 管 理 することにより,トータルな 旅 費 出 張 費 削 減 を 実 現 するビジネストラベル マネジメント このふたつの 仕 事 を 両 輪 として,グローバルな 視 点 で 活 躍 されてい る 国 内 外 のお 客 様 に 質 の 高 い 旅 行 サービスをお 届 けします と 説 明 している 東 急 ストリームラインは, 平 成 15 年 にウェブページを 開 設 したが, 少 なくとも 同 年 10 月 17 日 の 時 点 のウェブページ( 甲 22)において,BTM 事 業 (Business Travel Management)について, 当 社 では,お 客 様 の 多 様 なニーズにお 応 えする - 6 -
為, 各 システム 構 成 を 機 能 ごとにユニット 化 しております との 案 内 文 のもと に, ユニット 構 成 の1つとして, 旅 費 精 算 ユニット TEAMS Web 対 応 旅 費 精 算 管 理 システム を 掲 げ,さらに,TEAMS(Travel Expense Accounting & Management System)につき, 出 張 に 関 わる 従 来 の 出 張 申 請 手 配 精 算 支 払 等 の 業 務 で 重 複 していたプロセスを 見 直 し,Web 上 で 電 子 的 に 処 理 管 理 する 旅 費 精 算 管 理 システムです ( 有 料 ) と 説 明 している 東 急 ストリームラインは, 少 なくとも,1 平 成 15 年 2 月 27 日, 富 士 ゼロッ クスゼネラルビジネス 株 式 会 社 FXトラベルに 対 し, TOKYU BUSINESS TRAVEL MANAGEMENT PLAN と 題 する 提 案 書 ( 甲 23)を 交 付 して,TEAMSにつき, 出 張 申 請 手 配 精 算 支 払 等 の 業 務 で 重 複 していたプロセスを 見 直 し,Web 上 で 電 子 的 に 処 理 管 理 する 旅 費 精 算 管 理 システム として,その 内 容 を 説 明 し, 2 同 年 3 月 25 日, 株 式 会 社 オギハラに 対 し, ビジネストラベル マネジメン トに 関 するご 提 案 書 と 題 する 提 案 書 ( 甲 24)を 交 付 して,TEAMSにつき, 上 記 1と 同 様 の 説 明 をし,3 同 月 26 日, 経 済 産 業 省 に 対 し, 旅 費 法 に 基 づく 精 算 業 務 の 受 託 提 案 と 題 する 提 案 書 ( 甲 25)を 交 付 して, 旅 費 精 算 管 理 シ ステム であるTEAMSの 内 容 を 説 明 し(なお, 見 積 りの 前 提 として, 本 件 で 提 案 する 弊 社 システム TEAMS は, 一 般 企 業 向 けに 開 発 した 旅 費 精 算 管 理 システムであり, 現 時 点 では 官 公 庁 の 業 務 フロートと 異 なる 部 分 があるため, 旅 費 法 令 等 のすべてをシステムでカバーするまでには 至 っておりません 将 来 的 に 弊 社 システムのバージョンアップに 伴 い, 人 件 費 がメインとなる 受 託 料 が 引 き 下 げられる 可 能 性 があります と 記 載 されている ),4 同 年 9 月 10 日, 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 に 対 し, 出 張 旅 費 に 関 する 事 務 処 理 システムの 構 築, 運 用 及 びに 導 入 準 備 業 務 に 関 するご 提 案 と 題 する 提 案 書 ( 甲 29)を 交 付 して, 出 張 旅 費 精 算 システム(TEAMS)の 内 容 を 説 明 している (3) 原 告 は, 平 成 16 年 7 月 1 日, 東 急 ストリームラインを 合 併 した(これに 伴 い, 東 急 ストリームラインは 解 散 した ) - 7 -
原 告 は, 少 なくとも, 平 成 16 年 11 月 9 日, 日 本 ミクロコーティング 株 式 会 社 に 対 し, Tokyu Streamlines サービスのご 案 内 と 題 する 提 案 書 ( 甲 8)を 交 付 しているが,その 中 で,Information Technology( 受 発 注 旅 費 精 算 システム)の 1つとして, 旅 費 精 算 ユニット TEAMS Web 対 応 旅 費 精 算 管 理 シス テム を 掲 げている 2 上 記 の 事 実 によれば, 原 告 の 旅 費 精 算 管 理 システムとは, 従 来 の 出 張 申 請, 手 配, 精 算 及 び 支 払 等 の 業 務 で 重 複 していたプロセスを 見 直 して,Web 上 で 電 子 的 に 処 理 管 理 しようとするプログラムで, 顧 客 の 需 要 に 応 じて 適 宜 カスタマイ ズされる( 例 えば, 原 告 と 日 本 ケイデンスとの 間 の 平 成 12 年 6 月 20 日 付 け 出 張 申 請 経 費 精 算 アウトソーシング 事 業 に 関 する 覚 書 ( 甲 14)には, ユーザー の 依 頼 によりカスタマイズされたソフトウェア (2 条 3 項 )との 記 載 があること に 照 らして 明 らかである )ものであるから,このようなシステムの 提 供 は, 本 件 役 務 である 電 子 計 算 機 のプログラムの 設 計 作 成 又 は 保 守 に 当 たるということ ができる そして, 本 件 商 標 の 審 判 の 請 求 の 登 録 前 3 年 以 内 に, 原 告 は,この 旅 費 精 算 管 理 システムをTEAMS(Travel Expense Accounting & Management System)と 称 して,これを 記 載 した 提 案 書 を 顧 客 に 交 付 し,また, 東 急 ストリー ムラインも, 原 告 から 通 常 使 用 権 の 許 諾 を 得 て,TEAMSに 関 する 広 告 を 内 容 と する 情 報 を 原 告 のウェブページに 掲 載 したり,これを 記 載 した 提 案 書 を 顧 客 に 交 付 したりしている そうであれば, 原 告 は, 被 告 による 商 標 登 録 の 不 使 用 取 消 審 判 請 求 の 登 録 前 3 年 以 内 において, 本 件 商 標 を 使 用 したものということができる 3 被 告 は, 通 常 使 用 権 の 許 諾 契 約 の 存 在 を 示 す 証 拠 方 法 が 全 く 提 出 されていな いから, 東 急 ストリームラインは 通 常 使 用 権 者 でないと 主 張 する しかしながら, 契 約 書 などの 書 面 によらなければ, 通 常 使 用 権 を 許 諾 することができないというわ けではなく,また, 契 約 書 などの 書 面 が 証 拠 として 提 出 されない 場 合 であっても, 上 記 1の 事 実 によれば, 原 告 が 本 件 商 標 について 東 急 ストリームラインに 通 常 使 用 - 8 -
権 を 許 諾 した 事 実 は 優 に 推 認 されるのである 被 告 の 主 張 及 びこの 点 に 関 する 審 決 の 事 実 認 定 に 関 する 手 法 は,あたかも, 実 体 法 的 には 要 式 行 為 性 を 要 求 し, 手 続 法 的 には 法 定 証 拠 力 を 想 定 するものであって, 誤 りである また, 被 告 は,システムは, 商 品 に 当 たるとしても, 役 務 には 当 たるものではな いと 主 張 するが, 上 記 2のとおり, 原 告 の 旅 費 精 算 管 理 システムは,Web 上 で 電 子 的 に 処 理 管 理 しようとするプログラムであるから,これをもって, 有 体 物 を 観 念 することはできない さらに, 被 告 は,ウェブページでは, 旅 費 精 算 管 理 システム の 名 称 として 本 件 商 標 を 使 用 しているにすぎないし, 提 案 書 等 は, 商 標 法 2 条 3 項 8 号 の 取 引 書 類 に 当 たらない 上, 特 定 の 一 企 業 に 提 示 されただけであるから, 同 号 の 頒 布 に 当 たらないと 主 張 する しかしながら, 上 記 1の 事 実 によれば, 東 急 ストリ ームラインのウェブページの 掲 載 は, 商 標 法 2 条 3 項 8 号 にいうところの, 本 件 役 務 に 関 する 広 告 を 内 容 とする 情 報 に 本 件 商 標 を 付 して 電 磁 的 方 法 により 提 供 する 行 為 に 当 たるものである また, 提 案 書 は 取 引 上 必 要 な 書 類 であるから, 本 件 役 務 に 関 する 取 引 書 類 に 当 たるところ, 通 常,このような 提 案 書 は 提 供 を 求 める 特 定 の 顧 客 に 交 付 されるものであるから, 現 実 に 提 供 を 求 める 顧 客 に 交 付 されている 以 上, これを 頒 布 したということができる 第 5 結 論, 以 上 によれば, 本 件 商 標 の 使 用 を 認 めることができないとした 審 決 は 誤 りであ り, 原 告 主 張 の 審 決 取 消 事 由 は 理 由 があるから, 審 決 は 取 り 消 されるべきである 知 的 財 産 高 等 裁 判 所 第 4 部 - 9 -
裁 判 長 裁 判 官 塚 原 朋 一 裁 判 官 高 野 輝 久 裁 判 官 佐 藤 達 文 - 10 -