鶴 見 大 学 紀 要, 第 52 号, 第 3 部,27 32,2015. 親 の 経 済 力 と 教 育 格 差 Economic power and Education disparity by Parents * 上 田 衛 Mamoru UEDA はじめに 短 期 大 学 を 取 り 巻 く 環 境 は 大 きく 変 貌 を 遂 げつつある 短 期 大 学 といえば 女 性 の 永 久 就 職 前 の 花 嫁 修 業 の 一 端 を 担 うものとされていた 時 代 もあったが 近 年 の 短 期 大 学 の 担 う 役 割 は ただ 教 養 を 身 につけるための 学 校 から 資 格 とりわけ 国 家 資 格 を 取 得 し 生 涯 にわたる 女 性 の 社 会 参 加 の 一 翼 を 担 うものとなってきている そのためには 何 ら かの 資 格 免 許 が 取 得 出 来 ない 短 期 大 学 学 科 はどんどん 姿 を 消 しつつある また 大 学 短 期 大 学 に 進 学 する 環 境 も 大 きく 変 貌 を 遂 げている 高 校 生 の 半 数 以 上 が 大 学 短 期 大 学 に 進 学 する という 昨 今 の 状 況 のもと 国 公 立 大 学 と 一 部 の 名 門 私 立 大 学 を 除 いては 充 分 に 学 力 のある 学 生 を 確 保 することが 非 常 に 困 難 となりつつある その 結 果 多 くの 大 学 短 期 大 学 においては 充 分 に 学 力 があり 学 習 意 欲 のある 学 生 を 確 保 することが 困 難 であり 現 実 は 如 何 にして 入 学 定 員 を 確 保 するか 汲 々としているのが 現 状 である そのために 各 学 校 は 毎 年 新 学 期 が 開 始 早 々から AO 入 試 指 定 校 入 試 推 薦 入 試 自 己 推 薦 入 試 社 会 人 入 試 一 般 入 試 等 を 実 施 し さらには 出 張 出 前 入 試 等 々 手 を 替 え 品 を 替 え 学 生 募 集 に 当 たっているのが 実 情 である 大 規 模 な 大 学 短 期 大 学 では 毎 週 のごとく 入 学 試 験 を 実 施 しているところも み 受 けられる 又 毎 年 春 先 から 開 催 されるオープンキャ ンパス 等 においての 個 別 相 談 の 会 場 では 学 生 確 保 の 為 にいろいろなグッズを 揃 えて 学 生 の 確 保 に 血 眼 になるとい う 状 況 にある 中 でも 近 年 オープンキャンパスの 個 別 相 談 において 従 来 は 父 母 が 同 伴 する 中 では 父 母 の 関 心 は どの 様 な 免 許 資 格 が 取 得 できるのか 学 費 諸 経 費 の 額 アルバイトの 実 情 等 の 質 問 であった 大 学 短 期 大 学 の 入 学 式 卒 業 式 には 親 の 付 き 添 いは 当 たり 前 となるばかりで なく オープンキャンパスの 会 場 にも 親 の 付 き 添 いも 珍 し いものではなくなりつつある むしろ 親 の 付 き 添 いがある 受 験 生 ほどより 真 剣 とも 受 け 止 められている 中 でも 親 御 さんの 関 心 ごとは その 大 学 短 期 大 学 にはどの 様 な 奨 学 金 制 度 が 準 備 されているか その 額 と 手 続 きの 方 法 を 問 い 合 わせるケースは 珍 しくはなくなってきている さらに 近 年 大 学 短 期 大 学 が 抱 える 大 きな 問 題 に 退 学 率 の 多 さが 指 摘 されて 入 る 平 成 26 年 4 月 朝 日 新 聞 杜 と 河 合 塾 が 全 国 745 大 学 を 対 象 に 実 施 した 調 査 では 退 学 率 は 8.1% であった( 国 立 大 学 3.0% 公 立 大 学 4.0% 私 立 大 学 が9.5%) 苦 労 をして 志 願 者 を 集 めた 大 学 短 期 大 学 に おいても 退 学 者 を 減 らすこと 定 員 を 割 り 込 まないことが 重 要 な 課 題 として 大 きな 課 題 となりつつある とりわけ 苦 労 して 学 生 を 集 める 大 学 短 期 大 学 における 退 学 率 の 多 さ は 大 学 短 期 大 学 の 収 入 の 大 半 を 占 める 学 費 収 入 の 減 少 を 防 ぐためにも 大 きな 問 題 となっている 退 学 問 題 は 日 本 の 大 学 短 期 大 学 を 取 り 巻 く 財 政 状 況 の 厳 しさが 言 われて 久 しい 状 況 のもと 今 後 の 学 校 存 亡 に もかかわる 重 大 問 題 でもある 中 でも 深 刻 なものが 経 済 的 理 由 で 学 業 の 継 続 が 困 難 な 学 生 が 多 く 認 められることで ある 親 の 経 済 力 が 子 どもの 学 業 果 ては 学 歴 将 来 の 人 生 に 大 きく 左 右 することとなる 現 状 経 済 的 要 件 が 機 会 の 平 等 果 ては 機 会 の 平 等 を 阻 害 することを 真 剣 に 考 察 す る 必 要 があるであろう 父 親 の 階 層 と 子 どもの 将 来 今 世 紀 に 入 って わが 国 は 階 層 社 会 になって その 階 層 が 固 定 化 されつつあることが 明 確 になってきた 社 会 階 層 と 社 会 移 動 調 査 (SSM 調 査 )の 結 果 によると 親 の 職 種 によって 子 どもの 最 終 学 歴 が 大 学 等 である 場 合 に 大 きな 変 化 が 認 められる 2005 年 度 調 査 (1975 年 )によると 子 どもの 大 学 等 進 学 者 の 割 合 は 親 の 職 業 が 専 門 管 理 職 で 60%(44%) 一 般 ホワイトカラーで48%(19.5%) 自 営 業 で32%(18%) 農 業 で16%(5%) 逆 に 子 どもの 階 層 が 専 門 管 理 職 である 場 合 親 の 職 業 が 専 門 管 理 職 の 割 合 が 61%(52%) 一 般 ホワイトカラーが 59%(38%) 自 営 業 が34%(27%) 農 業 が22%(15%) ブルーカラーが29%(23%) であった また 親 の 職 業 による 子 どもの 年 収 を 見 ると 専 門 管 理 職 が640 万 円 (300 万 円 ) 一 般 のホワイトカラーが620 万 円 (280 万 円 ) 自 営 業 が580 万 円 (260 万 円 ) 農 業 が510 万 円 (15 万 円 ) ブルーカラーが490 万 円 (20 万 円 )となっ ている( 週 間 東 洋 経 済 2008 年 5 月 17 日 号 より) これらをみ * 230 8501 横 浜 市 鶴 見 区 鶴 見 2 1 3 鶴 見 大 学 短 期 大 学 部 保 育 科 Department of Early Childhood Care and Education, Tsurumi University of Junior College, 2 1 3 Tsurumi, Tsurumi- Ku, Yokohama 230 8501, Japan. 27
鶴 見 大 学 紀 要 第 52 号 第 3 部 表 1. 高 校 卒 業 までの 教 育 幼 稚 園 小 学 校 中 学 校 小 計 高 等 学 校 合 計 公 立 64 万 円 308 万 円 229 万 円 601 万 円 252 万 円 853 万 円 私 立 147 万 円 623 万 円 525 万 円 1295 万 円 479 万 円 1774 万 円 差 額 83 万 円 315 万 円 296 万 円 694 万 円 227 万 円 921 万 円 教 育 費 は 学 校 教 育 費 ( 授 業 料 制 服 代 PTA 会 費 ) 給 食 費 けいこごと 補 助 学 習 費 ( 塾 家 庭 教 師 図 書 費 ) 幼 稚 園 は2 年 制 表 2. 大 学 4 年 間 の 教 育 費 国 立 私 立 私 立 私 立 文 系 理 系 医 歯 系 (6 年 間 ) 大 学 492 万 円 604 万 円 720 万 円 2965 万 円 国 立 との 差 0 112 万 円 228 万 円 2473 万 円 表 3. 大 学 生 4 年 間 の 学 生 生 活 費 国 立 私 立 差 額 自 宅 418 万 円 687 万 円 269 万 円 自 宅 外 708 万 円 987 万 円 279 万 円 差 額 290 万 円 300 万 円 学 生 生 活 費 は 学 費 ( 授 業 料 その 他 の 学 校 納 付 金 修 学 費 課 外 活 動 費 通 学 費 の 合 計 ) 生 活 費 ( 食 費 住 居 光 熱 費 保 健 衛 生 費 娯 楽 し 好 費 その 他 の 日 常 費 の 合 計 ) 独 立 行 政 法 人 日 本 学 生 支 援 機 構 (JASSO) 調 べ ると 親 の 職 業 階 層 に 比 例 して 子 どもの 学 歴 や 出 世 年 収 なども 高 学 歴 で 高 い 地 位 に 就 きそれに 伴 って 年 収 が 高 いこ とが 分 かる このことから 父 親 の 階 層 が 子 どもの 学 歴 を 左 右 していることが 推 察 される 同 様 に 子 どもの 出 世 にも 父 親 の 階 層 が 大 きな 影 響 力 を 持 っており しかもその 風 潮 が 固 定 化 しつつある 先 の SSM 調 査 の 結 果 より 年 収 650 万 円 以 上 の 比 率 をみると 父 親 の 学 歴 による 差 が 歴 然 であ り 父 親 の 学 歴 が 大 学 卒 の 場 合 子 どもの 半 分 近 くは 年 収 650 万 円 以 上 であるが 父 親 の 学 歴 が 中 学 卒 の 場 合 には 収 入 が4 分 の1 以 下 となっている すなわち 年 収 の 多 さと 父 親 の 学 歴 は 比 例 しているのである 親 の 経 済 力 と 学 歴 子 どもの 教 育 については 年 収 900 万 円 以 上 と400 万 円 以 下 の 層 を 比 較 すると 教 育 費 負 担 中 高 一 貫 校 への 進 学 および 海 外 での 教 育 経 験 等 を 比 較 してみると 年 収 900 万 円 以 上 の 層 であれば8 割 近 くの 親 が 子 どもの 教 育 費 負 担 を 惜 しまない と 回 答 し 負 担 を 惜 しむ という 親 は1 割 にも 満 たない 400 万 円 以 下 では 負 担 を 惜 しまな い という 親 は 僅 かに2 割 しか 存 在 しない 負 担 をしたくて も 出 来 ないのが 現 状 であろう それは 900 万 円 以 上 の 層 では 半 分 以 上 が 子 どもを 中 高 一 貫 校 へ 通 わせたい と 回 答 をよせており 通 わせたくはない と 回 答 した 親 の3 倍 を 超 えている これは 子 どもに 海 外 での 教 育 を 経 験 させた いかという 問 に 関 する 回 答 にも 同 様 な 結 果 が 得 られている このことから 親 が 経 済 的 に 裕 福 であれば 十 分 な 教 育 を 受 けることが 出 来 るが 経 済 的 に 厳 しい 状 況 にある 家 庭 で は 海 外 で 教 育 を 受 ける 機 会 が 少 なくなってしまう これは 親 の 経 済 力 で 教 育 を 受 ける 機 会 の 平 等 が 損 なわれて いるという 現 状 を 示 している ところで 親 が 子 どもに 望 む 学 歴 は いずれの 階 層 の 親 であっても 子 どもが 大 学 卒 以 上 の 学 歴 を 取 得 することを 願 っている しかし 現 実 には 経 済 力 がないため 子 どもの 学 歴 にということまでには 気 が 回 らないのが 現 状 である 近 年 アジアの 新 興 国 の 子 どもた ちの 中 にも 海 外 の 大 学 や 大 学 院 に 進 学 する 割 合 は 目 覚 ま しいものがあるが わが 国 においては 大 学 院 等 の 進 学 はか ってと 比 べるとその 増 加 が 著 しいが 留 学 生 の 割 合 は 決 し て 増 加 しているようには 認 められない また 学 部 学 科 別 に 見 ると わが 国 においては 国 立 公 立 私 立 の 大 学 の 間 に 授 業 料 等 の 納 付 金 に 大 きな 格 差 が 認 めら れる 中 でもわが 国 においては 医 歯 薬 系 の 学 費 が 極 め て 高 額 であり 私 立 大 学 の 医 歯 薬 系 の 学 費 が 平 均 値 で も3000 万 円 以 上 負 担 せねばならないことを 考 えると 親 には 大 きな 負 担 である わが 国 においても 近 年 所 得 格 差 の 拡 大 が 大 きな 社 会 問 題 となりつつある わが 国 においては 高 所 得 者 の75% 以 上 が 大 学 大 学 院 の 卒 業 修 了 者 である これに 対 して400 万 円 以 下 の 層 では 大 学 卒 業 者 以 上 は 半 分 にも 届 かない 親 の 低 学 歴 のため 経 済 力 が 乏 しく 子 どもも 学 歴 不 足 で 非 正 規 雇 用 の 職 にしか 就 くことが 出 来 ないという 負 の 連 鎖 が 生 まれている すなわち 父 親 の 経 済 力 と 子 どもの 成 績 子 どもの 学 習 環 境 ( 塾 通 い 習 い 事 等 )の 関 連 は 親 の 経 済 力 と 子 どもの 成 績 との 関 連 は 比 例 しており 塾 通 い 習 い 事 中 学 受 験 等 は 親 の 経 済 力 に 左 右 されているのであ る なかでも 父 親 の 所 得 と 子 どもの 成 績 が 比 例 している ことは 子 どもを 学 習 塾 にかよわせていることに 明 確 に 現 れている 塾 通 いの 現 状 は 所 得 が300 万 円 未 満 の 階 層 では 13.0%に 過 ぎないが 所 得 が1,100 万 円 以 上 の 階 層 ではその 28
上 田 衛 : 親 の 経 済 力 と 教 育 格 差 4.7 倍 の 子 どもが 塾 に 通 っている 親 の 年 収 と 大 学 進 学 率 を 見 ると 親 の 年 収 が400 万 円 で 子 どもの 大 学 進 学 率 が31.4%であるのに 対 して 年 収 が 1000 万 円 では 進 学 率 が62.4% 高 卒 の 非 正 規 社 員 の 割 合 が40.0%に 対 して 大 卒 の 非 正 規 社 員 の 割 合 は20.0% と いう 現 実 少 子 化 と 呼 ばれる 現 状 において 年 収 300 万 円 未 満 の 男 性 の 結 婚 率 が9.3% 600 万 円 未 満 では37.6%と 経 済 力 が 結 婚 率 にも 大 きく 影 響 を 与 えている 2013 年 度 の 東 京 大 学 合 格 者 のうち57%が 親 の 年 収 が950 万 円 以 上 であった 今 や 東 京 大 学 は 裕 福 な 家 庭 の 子 女 で 占 められている 親 の 経 済 力 が 子 どもの 学 力 に 影 響 を 与 えるのみならず 老 後 の 生 活 にも 大 きく 影 響 を 与 えることとなる 低 学 歴 非 正 規 社 員 国 民 年 金 という 図 式 が 想 定 され 高 学 歴 正 規 社 員 厚 生 年 金 との 間 に 老 後 の 生 活 におおきな 格 差 新 たに 介 護 難 民 等 が 発 生 することも 予 想 される 子 どもの 教 育 費 高 等 学 校 卒 業 時 なでの 教 育 費 の 負 担 額 について AIU 保 険 の 現 代 子 育 て 考 で 見 てみると 表 1のような 結 果 である 例 えば 義 務 教 育 終 了 まですべて 公 立 のみで 過 ごしたと しても 親 の 負 担 は601 万 円 の 負 担 である これをすべて 私 立 の 学 校 で 過 ごすと 平 均 で1,295 万 円 も 負 担 しなけれ ばならない さらに 高 校 まで 進 んだ 場 合 すべて 公 立 で も853 万 円 すべて 私 立 の 場 合 は1,774 万 円 であり その 差 は 実 に921 万 円 にもなってしまう さらに 大 学 4 年 間 の 教 育 費 をみると 表 2からも 分 かるよ うに 医 学 部 や 歯 学 部 を 除 けば 国 立 と 私 立 の 差 は100~ 200 万 円 の 差 である しかし 国 立 大 学 でも 4 年 間 で1 人 当 たり500 万 円 近 くの 支 出 である もしこれが 医 歯 系 であ れば6 年 間 で 約 3 千 万 円 ( 年 間 500 万 円 )もの 費 用 がかかる これでは 低 所 得 階 層 ではとても 賄 いきれないであろう 大 学 で 必 要 な 経 費 は 自 宅 通 学 か 自 宅 外 通 学 かで 約 300 万 円 位 の 違 いがある 近 年 の 少 子 化 といえども 地 方 から 都 会 の 大 学 への 入 学 が 家 計 に 大 きなしわ 寄 せをきたし ていることが 想 像 される 具 体 的 には 自 宅 から 国 立 大 学 へ 通 う 場 合 と 自 宅 外 通 学 で 私 立 大 学 へ 通 学 する 場 合 とで は その 差 は4 年 間 で579 万 円 ( 年 間 145 万 円 )にもなって しまう このような 現 状 では 低 所 得 層 の 家 庭 では 自 宅 外 の 私 立 大 学 へはとても 進 学 をさせることが 非 常 に 困 難 な 状 況 にある これらを 考 えると 大 学 へ 進 学 できるか 否 かは 単 に 親 の 経 済 力 のみならず 居 住 地 ( 近 くに 国 立 大 学 があ るか 否 か)にもよるところが 大 きい このようにみてくる と 大 都 市 圏 以 外 の 地 方 に 居 住 する 低 所 得 者 層 の 子 弟 は 高 学 歴 を 得 ることに 関 しては 圧 倒 的 に 不 利 であり それは 教 育 の 機 会 均 等 という 理 想 とははなはだ 異 なるものであ る 以 上 見 てきたように 子 育 てと 子 どもの 教 育 には 大 層 経 済 的 負 担 がのしかかっている そのため 低 所 得 の 家 庭 で は 十 分 な 教 育 を 子 どもに 与 えることが 困 難 であり その 結 果 として 親 からの 貧 困 がこども 世 代 に 世 襲 されるとい う 負 の 連 鎖 が 生 じることとなる 子 どもにとっては 自 己 責 任 と 全 く 無 縁 なはずの 負 の 連 鎖 を 断 ち 切 るため には 公 的 扶 助 制 度 をどの 様 に 整 備 し 運 用 するかと 言 う 事 になる 子 育 て 低 福 祉 国 日 本 わが 国 の 子 育 て 支 援 策 としては 児 童 手 当 児 童 扶 養 手 当 特 別 児 童 扶 養 手 当 等 がある しかし その 内 容 はお 粗 末 なものである 児 童 手 当 は 主 要 国 と 比 べても 不 十 分 な ものであり 児 童 手 当 は 永 らく 対 象 が 第 3 子 以 降 に 限 られ その 趣 旨 は 低 中 所 得 の 多 子 世 帯 の 支 援 が 中 心 で 全 ての 児 童 を 対 象 としたものではなかった 手 当 て 額 も 原 則 5,000 円 に 据 え 置 かれ 年 金 や 児 童 扶 養 手 当 と 異 なり 物 価 スライドも 行 われず 実 質 的 な 価 値 は 低 下 する 事 態 をも 招 いていた その 後 第 2 子 第 1 子 にまで 対 象 を 拡 大 し たが 主 要 国 並 に 義 務 教 育 修 了 まで 支 給 されるものにはな らなかった このため 総 給 付 費 の GDP 比 でみると1% 程 度 を 確 保 している 先 進 諸 国 比 べると 約 0.03%の 水 準 に 長 く 留 まっていた 2000( 平 成 12) 年 度 以 降 公 費 を 財 源 に 対 象 年 齢 が 段 階 的 に 小 学 校 修 了 までに 引 き 上 げられ 所 得 制 限 も 若 干 緩 和 されたが 扶 養 控 除 の 加 算 措 置 の 廃 止 など を 財 源 としたため 再 配 分 率 の 構 造 も 変 わらなかった 財 源 も3 歳 未 満 時 を 養 育 する 被 用 者 に 対 しては7 割 ( 特 例 給 付 は10 割 )の 事 業 主 負 担 が 入 り 事 業 主 の 私 的 な 扶 養 手 当 ての 共 同 化 の 性 格 が 強 いのに 対 して 非 被 用 者 について は すべて 公 費 で 賄 われるなど 被 用 者 と 非 被 用 者 および 3 歳 を 境 とする 年 齢 などによりばらばらでありとても 分 か りづらい 制 度 となっている 2010( 平 成 22) 年 子 ども 手 当 てを 公 約 に 掲 げた 民 主 党 政 権 下 で 新 たに 子 ども 手 当 てが 設 けられた しかし 児 童 手 当 法 は 廃 止 されず 単 年 度 立 法 により 行 われた2010( 平 成 22) 年 度 子 ども 手 当 ては その 一 部 として 児 童 手 当 法 に 基 づく 児 童 手 当 などを 支 給 する 仕 組 とし その 分 の 費 用 については 国 地 方 公 共 団 体 事 業 主 が 負 担 することと なった その 後 2012( 平 成 24) 年 度 から 政 権 の 交 代 に 伴 い 子 ども 手 当 てを 廃 止 し 児 童 手 当 を 復 活 拡 充 すると いう 民 自 公 の3 党 合 意 に 基 づく 特 別 措 置 法 が 成 立 した さらに2012( 平 成 24) 年 度 以 降 の 恒 久 的 な 制 度 については 名 称 を 児 童 手 当 に 戻 し 所 得 制 限 を 導 入 する 児 童 手 当 法 の 改 正 法 が 成 立 し 同 年 6 月 から 支 給 が 開 始 されている 日 本 は 中 福 祉 中 負 担 の 国 といわれているが 2005 年 度 88 兆 円 に 上 る 社 会 保 障 給 付 費 の 約 8 割 は 年 金 医 療 介 護 などの 高 齢 者 向 けであり その 実 子 供 向 けは 約 4 兆 円 にすぎないという アメリカと 肩 を 並 べる 低 福 祉 国 とい われている 世 界 の 子 育 て 世 帯 への 所 得 再 配 分 率 は 子 ども のいる 世 帯 と 子 どものいない 世 帯 でみるとデンマークで 12% 25% フランスで 24% 31% ドイツで 18% 19% 日 本 で 13% 22% スウェーデンで 13% 22% 英 国 で 25% 23% アメリカで 23% 28% である 子 どものいる 家 庭 では 再 配 分 の 効 果 は ほほゼロである つまり 子 どものいる 家 庭 に 対 して 所 得 の 再 配 分 が 何 ら おこなわれていないことである これを 放 置 して 少 子 化 対 29
鶴 見 大 学 紀 要 第 52 号 第 3 部 策 をいくら 唱 えても あまり 意 味 があるとは 思 えない 教 育 への 公 的 支 出 は デンマークで7.2% スウェーデンで 6.8% フィンランドで5.0% フランスで5.0% アメリカ で7.4% 英 国 で6.0% 韓 国 で7.2%であるのに 対 して 日 本 では 公 財 政 支 出 は4.8% 私 費 負 担 の 割 合 は3.5%である 日 本 の GDP に 占 める 公 的 負 担 の 割 合 は 僅 かに3.5%であ り アメリカですら5%を 超 えているのに OECD 諸 国 の 中 では ギリシアについで 下 位 から2 番 目 である しかし 私 的 負 担 の 割 合 は1.3%もあり アメリカ 韓 国 に 次 いで3 位 につけている つまり 日 本 の 教 育 費 用 は 個 人 負 担 で カバーされている 部 分 の 割 合 が 他 の 先 進 諸 国 と 比 べて 極 めて 大 きくなっており 世 帯 の 経 済 力 が 子 どもの 教 育 レベ ルに 大 きな 影 響 力 をおよぼしているものと 推 測 される そ の 結 果 貧 しい 家 庭 の 子 どもは 親 の 経 済 力 の 無 さが 原 因 で 教 育 の 機 会 を 閉 ざされてしまうことになる とりわけ 地 方 の 小 都 市 に 住 む 低 所 得 家 庭 の 子 どもは 可 愛 そうに 過 ぎる のである 表 4.OECD 加 盟 25 カ 国 の 子 どもの 貧 困 率 メキシコ(2002) 25% アメリカ(2000) 22% トルコ(2002) 21% ニュージーランド(2001) 16% イギリス(2000) 16% アイルランド(2000) 15.5% イタリア(2000) 15.5% ポルトガル(2000) 14.8% 日 本 (2000) 14.3% カナダ(2000) 13.5% オーストリア(1999) 13.0% ハンガリー(2000) 12.5% ドイツ(2001) 12.5% ギリシア(1999) 12.5% OECD25カ 国 平 均 (2000) 12.0% オーストラリア(1999) 11.9% オランダ(2000) 9.8% ルクセンブルク(1999) 8.0% フランス(2000) 7.5% チェコ(2000) 7.4% スイス(2001) 7.0% ノルウエー(2000) 4% スウェーデン(2000) 4% フィンランド(2000) 3% ( 注 ) 子 どもと 子 どものいる 世 帯 の 貧 困 率 子 どもの 貧 困 率 は 同 一 の 家 族 構 成 の 下 で 中 位 可 処 分 所 得 の 50% 未 満 世 帯 に 所 属 する 17 歳 以 下 の 子 どもの 比 率 (%) ( 出 典 ) 図 表 で 見 る 世 界 の 社 会 問 題 (OECD 編 著 明 石 書 店 刊 2006 年 より 表 5.ひとり 親 ( 片 親 ) 世 帯 の 子 どもの 貧 困 率 トルコ (2002) 58.5% 日 本 (2000) 57.3% アイスランド(2000) 55.0% アメリカ(2000) 49.5% カナダ(2000) 42.0% イギリス(2000) 40.5% オーストラリア(1999) 39.0% メキシコ(2002) 35.0% ポーランド(2000) 34.5% OECD24カ 国 平 均 (1999) 32.5% ドイツ(2001) 31.5% フランス(2000) 27.5% イタリア(2000) 27.0% チェコ(2000) 22.0% ギリシア(1999) 20.0% フィンランド(2000) 10.0% スウェーデン(2000) 9.5% デンマーク(2000) 8.0% ( 注 )ひとり 親 世 帯 ( 片 親 世 帯 )での 貧 困 率 子 どもの 貧 困 率 は 同 一 の 家 族 構 成 の 下 で 中 位 可 処 分 所 得 の 50% 未 満 世 帯 に 所 属 す る 17 歳 以 下 の 子 どもの 比 率 (%) ( 出 典 ) 図 表 でみる 世 界 の 社 会 問 題 (OECD 編 著 明 石 書 店 刊 2006 年 ) 表 4は OECD 加 盟 25カ 国 の 子 どもの 貧 困 率 を 示 してい る 日 本 は14.3%で OECD 加 盟 国 平 均 よりもかなり 高 く それだけに 相 対 的 貧 困 に 陥 っている 子 どもが 多 いことが 分 かる 先 進 国 の 中 で 日 本 よりも 貧 困 率 の 高 い 国 はアメリカと イギリスのみである 新 自 由 主 義 経 済 を 標 榜 している 国 々では 貧 富 の 格 差 が 拡 大 し 富 める 者 はますます 富 み 貧 しい 者 はますます 貧 しくなる という 資 本 主 義 の 側 面 が 認 められる これに 対 して 福 祉 大 国 と 呼 ばれる 北 欧 の 国 々 では 貧 困 率 の 割 合 は 日 本 の3 分 の1という 低 率 である こ のことから 日 本 は 子 育 てに 関 して 低 福 祉 国 と 言 う 事 が 出 来 る 表 5は OECD 加 盟 国 のひとり 親 世 帯 の 子 どもの 貧 困 率 を 示 すものであるが 日 本 の 貧 困 率 は57.3%である 福 祉 大 国 の 北 欧 諸 国 ではフィンランドが10.0% スウェー デンが9.5% デンマークが8.0%の 低 さで ひとり 親 世 帯 への 福 祉 の 充 実 が 推 測 される 日 本 では とりわけ 母 子 世 帯 の 貧 困 の 状 況 は 2006( 平 成 18) 年 度 の 日 本 の 全 世 帯 の 収 入 の 平 均 が563 万 8 千 円 に 対 して 母 子 家 庭 の 収 入 は213 万 円 しかない 日 本 の 児 童 扶 養 手 当 は 年 収 365 万 円 以 下 の 母 子 家 庭 が 対 象 であるが 年 収 130 万 円 以 上 であると 減 額 される しかも 子 どもが 一 人 だと 全 額 では41,720 円 で あるが 二 人 目 は5000 円 三 人 目 は 僅 かに3,000 円 である 母 子 家 庭 においては その4 割 が 生 活 保 護 二 世 という 事 実 も 認 められる このことはまさに 貧 困 の 連 鎖 その ものであろう このような 現 状 から 貧 困 家 庭 に 対 して 義 務 教 育 期 間 中 の 就 学 援 助 という 制 度 があるが あるいは 私 立 高 校 に 通 う 生 徒 に 対 する 授 業 料 の 助 成 という 制 度 もあるが これら 30
上 田 衛 : 親 の 経 済 力 と 教 育 格 差 の 制 度 は 各 地 方 自 治 体 によって 大 きな 差 が 認 められる つまりわが 国 では 貧 困 家 庭 の 居 住 する 場 所 によって 機 会 均 等 が 大 きく 違 いが 認 められるのである 学 力 の 国 際 比 較 OECD では 世 界 の15 歳 児 童 を 対 象 に 学 習 到 達 度 ( 学 力 )に 関 して 実 際 にテストを 行 う 調 査 を3 年 ごとに 行 って いる OECD における 学 習 到 達 度 調 査 での 日 本 の 順 位 は 2003 年 度 (2000 年 度 )では 読 解 力 14 位 (8 位 ) 数 学 的 リテラシー6 位 (1 位 ) 科 学 的 リテラシー2 位 (2 位 ) 問 題 解 決 能 力 4 位 ( 実 施 せず)であった 日 本 の 順 位 は 読 解 力 と 数 学 的 リテラシーの2 部 門 において 大 きく 順 位 を 下 げている この 結 果 により 文 部 科 学 省 は ゆとり 教 育 から 学 力 重 視 路 線 へと 方 向 転 換 を 余 儀 なくされた し かし ひとたび 緩 んだ 箍 を 再 び 締 めなおすことはなかなか 用 意 ならざることである 学 力 重 視 路 線 への 変 更 は 公 財 政 による 教 育 投 資 の 増 大 に 繋 がらず 親 への 教 育 投 資 への 負 担 を 増 大 させている その 結 果 わが 国 においては 親 の 経 済 力 が 子 どもの 学 力 に 少 なからず 影 響 を 与 えるという 結 果 を 引 き 起 こしている 公 財 政 による 教 育 費 支 出 の 国 際 比 較 OECD 加 盟 国 が 2002( 平 成 14) 年 に 初 等 中 等 教 育 ( 小 中 高 の 教 育 )で 児 童 生 徒 一 人 当 たりにどれくらいの 公 財 政 支 出 を 行 ったかを みると 表 6の 通 りである 表 6. 生 徒 一 人 当 たりの 公 財 政 支 出 教 育 費 ノルウエー 8,562 オーストリア 7,935 アメリカ 7,837 デンマーク 7,718 スイス 7,278 スウェーデン 7,244 イタリア 7,242 アイスランド 7,062 ベルギー 6,871 フランス 6,610 フィンランド 6,180 日 本 6,016 ポルトガル 5,882 オランダ 5,845 OECD 平 均 5,643 ドイツ 5,270 表 6を 見 ると 日 本 の 支 出 額 は OECD の 平 均 額 を 僅 かに 上 回 るだけであり ノルウエー デンマーク スウェーデ ン 等 の 北 欧 の 国 々の 公 財 政 支 出 が 多 いことが 分 かる 表 7. 学 生 一 人 当 たり 公 財 政 支 出 教 育 費 (2002 年 ) デンマーク 14,864ドル スウェーデン 14,144ドル ノルウエー 13,231ドル オーストリア 11,402ドル フィンランド 11,333ドル ベルギー 10,336ドル オランダ 10,232ドル ドイツ 10,075ドル アメリカ 9,286ドル イギリス 8,512ドル アイルランド 8,416ドル OECD 平 均 8,322ドル フランス 7,950ドル アイスランド 7,888ドル イタリア 6,788ドル ハンガリー 6,457ドル ポルトガル 6,364ドル スペイン 6,119ドル オーストラリア 6,047ドル チェコ 5,457ドル 日 本 4,862ドル ギリシャ 4,712ドル メキシコ 4,313ドル スロバキア 4,052ドル ポーランド 3,860ドル 韓 国 901ドル 高 等 教 育 表 7. 学 生 一 人 当 たりの 公 財 政 支 出 教 育 費 (2002 年 ) デンマーク 14,864ドル スウェーデン 14,144ドル ノルウエー 13,231ドル オーストリア 11,402ドル フィンランド 11,333ドル ベルギー 10,336ドル オランダ 10,232ドル ドイツ 10,075ドル アメリカ 9,286ドル イギリス 8,512ドル アイルランド 8,416ドル OECD 平 均 8,322ドル フランス 7,950ドル アイスランド 7,888ドル イタリア 6,788ドル ハンガリー 6,457ドル ポルトガル 6,364ドル スペイン 6,119ドル オーストラリア 6,047ドル チェコ 5,457ドル 日 本 4,862ドル ギリシャ 4,712ドル メキシコ 4,313ドル スロバキア 4,052ドル ポーランド 3,860ドル 韓 国 910ドル 31
鶴 見 大 学 紀 要 第 52 号 第 3 部 表 7は OECD 加 盟 国 が 2002 年 に 短 大 高 専 大 学 大 学 院 の 学 生 一 人 当 たりにどれくらいの 公 財 政 支 出 を 行 っ たかを 示 したものである 日 本 の 支 出 額 は 4,862ドルと OECD 平 均 (8,322ドル)よりも 3,460ドル( 平 均 値 の42%) も 少 ない デンマーク スウェーデンでは14,000ドルを 超 えており 実 に 日 本 の3 倍 近 い 額 を 支 出 している 表 8. 公 財 政 の 教 育 支 出 対 GDP の 比 較 デンマーク 8.4% スウェーデン 7.5% ポルトガル 7.0% アイスランド 6.6% フィンランド 6.5% ベルギー 6.4% ノルウエー 6.2% フランス 6.0% オーストリア 5.7% ルクセンブルク 5.5% イギリス 5.0% イタリア 4.9% アメリカ 4.9% オランダ 4.9% アイスランド 4.3% スペイン 4.3% ドイツ 4.2% 日 本 4.1% ギリシヤ 3.2% 日 本 の 公 財 政 の 教 育 支 出 の 割 合 が 低 いことは 近 年 の 教 育 環 境 に 大 きな 影 響 を 与 えている バブル 経 済 が 破 綻 した 以 降 のわが 国 の 教 育 関 連 予 算 の 削 減 とともに 国 立 大 学 の 独 立 行 政 法 人 化 教 育 関 連 支 出 の 大 幅 な 削 減 は 若 手 研 究 者 の 海 外 流 失 にも 繋 がっている それを 如 実 に 示 している ものが 高 等 教 育 費 の 公 費 負 担 率 の 少 なさである 高 等 教 育 費 にかかる 費 用 のうち 公 費 の 負 担 割 合 を 比 較 してみる と スウェーデンが80.81% フィンランドが63.69% オ ランダが57.36% ベルギーが43.91% オーストリアが 34.30% ドイツが33.42% フランスが31.26% イタリ アが28.49% カナダが26.40% オーストラリアが21.33% アメリカが20.91% イギリスが17.48% ニュージーラン ドが14.80%であるのに 対 して 日 本 はわずかに13.15%で OECD 加 盟 国 の 中 では 最 低 である 以 上 からわが 国 の 教 育 関 連 費 用 の 異 常 な 低 さとそれに 対 応 する 親 の 経 済 力 の 格 差 が 問 題 となる OECD 加 盟 国 の 大 学 授 業 料 の 国 際 比 較 をしてみると (2003~04 年 度 )アメリカが4,587ドル オーストラリア が3,781ドル 日 本 が3,747ドル 韓 国 が3,623ドル ニュ ージーランドが2,538ドル スイスが1,132ドル イタリア が983ドルポルトガルが868ドル スペインが801ドル オ ーストリアが800ドル フランス462ドル ハンガリーが 351ドル これに 対 して チェコ デンマーク フィンラ ンド アイスランド ノルウエー スロバキア スウェー デンでは 大 学 の 授 業 料 は 無 料 である 高 等 教 育 費 に 占 める 大 きな 部 分 は 授 業 料 である 日 本 の 場 合 国 立 大 学 の 授 業 料 は 平 均 で496,800 円 私 立 大 学 では804,367 円 となって いる 日 本 の 大 学 生 の 割 合 は 国 公 立 が24.9% 私 立 大 学 が 75.1%であるから 私 学 比 率 の 高 い 日 本 では 教 育 費 の 負 担 が 家 計 に 大 きな 影 響 を 与 えていることが 分 かる このこと より 日 本 においては 高 等 教 育 における 公 的 負 担 の 割 合 が 少 なく 教 育 費 の 多 くを 個 人 の 負 担 に 依 存 するという 状 況 が 読 み 取 れる とりわけ 大 学 教 育 における 公 的 負 担 の 割 りあいについては 世 界 で 最 低 の 水 準 である 日 本 のこのよ うな 状 況 に 対 して ユニセフは 高 等 教 育 を 無 償 にすること を 目 標 に 掲 げ その 目 標 に 向 かうことを 国 際 人 権 規 約 の 中 で 謳 っている しかし 日 本 は1979( 昭 和 54) 年 国 際 人 権 規 約 を 批 准 していながら その 中 の 社 会 権 規 約 のなか の 無 償 教 育 に 向 けて 努 力 をするという 項 目 については 未 だ に 留 保 している その 後 も 日 本 はユニセフから 高 等 教 育 の 私 費 負 担 の 軽 減 を 勧 告 されながら 問 題 を 放 置 するのみな らず 国 立 大 学 の 独 立 法 人 化 による 公 費 負 担 の 軽 減 私 立 大 学 への 私 学 助 成 金 の 引 き 下 げがたたみかけている 親 の 経 済 力 の 弱 さは 単 に 学 校 教 育 のみならず 子 ども や 家 庭 の 教 養 文 化 費 の 少 なさにも 影 を 落 としている 文 化 国 家 を 標 榜 するのであれば せめて 子 どもたちの 教 育 の 機 会 の 平 等 を 図 るべきだろう 教 育 費 の 幼 稚 園 から 大 学 大 学 院 までの 無 償 化 海 外 への 留 学 制 度 の 充 実 等 が 国 家 指 針 として 明 確 に 示 されてもよいのではなかろうか まとめ 近 年 の 日 本 の 若 者 の 学 力 は 国 際 的 にみても 間 違 いな く 低 下 している 2002 年 から 始 まった ゆとり 教 育 は 教 育 費 の 公 費 負 担 を 削 減 し 親 の 責 任 に 転 嫁 した そのた めに 公 教 育 にしか 頼 れない 階 層 の 人 々には 教 育 を 通 し て 社 会 階 層 を 上 昇 させるというメカニズムから 除 外 された 人 々には 貧 困 の 再 生 産 につながり 格 差 の 固 定 化 に 繋 が る 学 習 指 導 要 領 の 改 訂 は 勿 論 必 要 ではあるが 今 日 本 において 求 められるのは 教 育 の 建 て 直 しに 積 極 的 な 教 育 投 資 を 国 が 行 うことが 求 められる 参 考 文 献 1. 格 差 社 会 橘 木 俊 招 岩 波 新 書 2. 日 本 の 論 点 2006 文 藝 春 秋 3. 教 育 格 差 和 田 秀 樹 PHP 研 究 所 4. 東 洋 経 済 2007 年 2 月 24 日 号 5. 世 界 の 統 計 2014 総 務 省 統 計 局 6. 日 本 の 統 計 2014 総 務 省 統 計 局 32