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Transcription:

新 潟 大 学 国 際 センター 紀 要 第 7 号 86-103,2011 年 JournaloftheInternationalExchangeSupportCenter 2011,Vol.7:86-103,N igatauniversity ハ と ガ の 使 い 分 けの 問 題 について ロシア 語 母 語 話 者 の 場 合 UsageofJapaneseParticles wa and ga A ReportonRussianStudentsLearningJapaneseLanguageattheirUniversity ペトロヴァ ユリア * JULIA,Petrova Ru sianstudentslearningjapaneseattheiruniversityoftenfinditdificulttounderstandwhenthey shouldusejapanesetopicmarkingparticle"wa"andjapanesesubjectmarkingparticle"ga".inthis articleiintroduceaverysimpleandusefulbutnotperfectpo siblesolutionforthat. 1.はじめに ロシア 人 大 学 生 での 日 本 語 を 学 習 している 人 達 にとって 難 しいと 感 じるのは ハ と ガ の 使 い 分 けである どんなときに ハ を 使 い どんなときに ガ を 使 うのか 又 文 には 主 題 が 必 要 かそ れとも 必 ずしも 必 要 ではないのか これらは 初 級 の 学 生 にとって 困 難 な 問 題 である 日 本 語 の 助 詞 についてのひととおりの 説 明 はロシア 語 でも 読 むことができる しかし ハ と ガ を 比 べては 書 いていない また ハ と ガ の 使 い 分 けについてロシア 語 で 書 かれた 論 文 は 私 が 調 べた 限 りでは 見 当 たらなかった つまり 多 くのロシア 人 の 日 本 語 学 習 者 は 大 学 等 の 学 校 で 習 った 教 科 書 にある 例 文 などをもとに それぞれ 自 分 でなんと なく ハ と ガ を 使 い 分 けているに 過 ぎない そこで 本 稿 では 初 級 者 向 けの ハ と ガ の 使 い 分 けの 簡 単 なルールを 用 意 し 日 本 語 を 学 習 しているロシア 人 大 学 生 に 文 の 空 欄 に ハ か ガ を 選 んで 入 れるというテス トを 実 施 してみた 大 学 生 に 紹 介 した 単 純 なこのルールが 案 外 実 用 に 耐 えるものであったこ とがわかったので 本 稿 ではそれについて 報 告 する 実 験 で 用 いた ハ と ガ の 使 い 分 けのルールは 日 本 での 先 行 研 究 をもとにペトロヴァ と 池 田 が 考 案 したものである * 新 潟 大 学 国 際 センター 研 究 生 県 費 留 学 生 - 86 -

2. 先 行 研 究 2.1.ロシアでの 先 行 研 究 2.1.1.クン(2006) ハ と ガ は 動 作 主 属 性 の 持 ち 主 を 表 す 格 助 詞 と 説 明 している ハ を 使 う 場 合 は 述 語 の 意 味 を 強 調 し 否 定 文 であれば ハ を 使 う 一 方 ガ を 使 う 場 合 は 動 作 主 属 性 の 持 ち 主 を 強 調 する 強 調 するとは その 情 報 が 他 の 情 報 より 大 切 である あるいは 大 切 なものとして 示 す という 意 味 であるとする また 以 下 の 文 と 説 明 は ハ と ガ の 使 い 分 けの 例 としてクンが 紹 介 しているもので ある ( ) この 山 は 高 いです この 文 では この 山 の 高 さ という 属 性 が 強 調 されていると 言 える つまり 他 の 山 よりこの 山 の 方 が 高 いということを 伝 えている (2) 雪 が 降 る ガを 用 いているので 降 る ではなく 雪 を 強 調 していることになる 降 る のは 雨 でも 霰 でもなく 雪 だと 伝 える 文 である ( ) 彼 が 先 生 です 他 の 人 ではない 彼 が 先 生 だと 伝 える 文 である 2.1.2.シクロフスキイ(2004) ハ ガ トハ モ は 主 語 を 指 示 する 格 助 詞 である ハ ガ トハ モ の 違 い について 考 える ハ を 使 う 場 合 は 主 語 はみんなが 知 っていることを 表 す ガ を 使 う 場 合 は 主 語 を 意 味 的 に 強 調 する トハ を 使 う 場 合 は 述 語 は 主 語 の 性 質 についての 説 明 である モ を 使 う 場 合 他 の 助 詞 を 使 用 する 場 合 の 主 語 と 比 べて モをつけた 主 語 を 強 調 する 2.1.3.ダニロフ(2004) ハ と ガ の 使 い 分 けを テーマ レーマというアイデアで 説 明 している 簡 単 に 言 う とテーマとはトピックで 旧 情 報 である それに 対 してレーマは 新 情 報 である ハ はテーマ の 格 助 詞 で ガ はレーマの 格 助 詞 である ( ) 彼 は 学 生 だ という 文 では 彼 は はテーマである テーマとは 聞 き 手 と 話 し 手 が 知 っている 情 報 (すでに 話 し 手 と 聞 き 手 の 両 者 が 持 っている 情 報 という 意 味 では 旧 情 報 といえる) である 一 方 学 生 だ はレーマである レーマとは 聞 き 手 にとって 初 めて 出 て くる 情 報 ( 話 し 手 は 持 っているが 聞 き 手 は 持 っていない 情 報 という 意 味 では 新 情 報 といえる)である また 人 や 物 の 性 質 について 説 明 する 時 説 明 される 人 やものは ハ を 伴 って 出 - 87 -

ペトロヴァ ユリア 現 する たとえば 聞 き 手 に 新 しい 人 を 紹 介 する 時 に 彼 は などとその 人 を 指 し 述 語 としてその 人 の 名 前 出 身 就 業 年 齢 などの 情 報 を 提 示 する 誰 を 紹 介 する のかは 話 し 手 と 同 じ 場 にいる 聞 き 手 にはすでに 分 かっている( 旧 情 報 )はずであ る 話 し 手 聞 き 手 の 双 方 が 持 っている 情 報 彼 に ハ を 付 けて 彼 は とし て 表 現 するということである 一 方 ( ) 彼 が 学 生 だ という 文 では 先 ほどとは 状 況 が 異 なる 何 人 かの 人 間 が 目 の 前 にいて その 中 の 誰 かが 学 生 であることを 示 すような 状 況 である 何 人 かの 候 補 者 の 中 から 学 生 とい う 属 性 を 持 つ 人 間 を 一 人 選 ぶという 状 況 のとき 例 のように 彼 が と 表 現 する また 述 部 ( 主 語 ではない 部 分 )に 疑 問 詞 だれ 何 どこ いつ どれ いくら 何 の 本 誰 のカメラ どんな 人 などがある 質 問 の 文 では いつ も 主 語 に ハ をつけて 表 現 する ( ) あの 人 は 誰 ですか あの 人 は 東 京 大 学 の 山 田 先 生 です ( ) お 誕 生 日 はいつですか 誕 生 日 は 月 日 です 上 の 質 問 に 対 する 答 えの 文 では テーマ( あの 人 (お) 誕 生 日 )に ハ をつ ける 主 語 が 疑 問 詞 どれ どちら どの 人 どちらの 傘 などである 質 問 の 文 で は いつも 主 語 に ガ をつける ( ) どの 人 が 田 中 さんですか (= 田 中 さんは どの 人 ですか) あの 眼 鏡 をかけた 人 が 田 中 さんです (= 田 中 さんは あの 眼 鏡 をかけた 人 です) ( ) どちらが 京 都 行 きの 電 車 ですか (= 東 京 行 きの 電 車 はどちらですか) こちらです 上 の 質 問 に 対 する 答 えの 文 では レーマに ガ をつける 2.2. 日 本 での 先 行 研 究 日 本 国 内 には ハ と ガ の 先 行 研 究 は 非 常 にたくさんあり 代 表 的 なものだけでもす べてを 取 り 上 げることはできない 本 稿 では 先 行 研 究 をまとめて 整 理 し なおかつ 新 しい 見 方 を 紹 介 している 野 田 ( )のみを 取 り 上 げることにする 2.2.1. 野 田 尚 史 (1996) 野 田 ( )では 提 案 された ハ と ガ の 使 い 分 けの 原 理 のうち 重 要 と 思 われるもの を 整 理 すると 大 きく 次 )から )の つにまとめられている 1) 新 情 報 と 旧 情 報 の 原 理 新 情 報 には ガ 旧 情 報 には ハ 野 田 ( )では 新 情 報 と 旧 情 報 の 原 理 と 呼 ぶのは 主 格 名 詞 が 話 の 現 場 や 文 脈 - 88 -

とどのような 関 係 をもっているかによって ハ と ガ の 使 い 分 けを 説 明 するものであ る つまり 主 格 名 詞 がまだ 知 られていない 新 情 報 のときはその 主 格 に ガ がつき 主 格 名 詞 がすでに 知 られている 旧 情 報 のときはその 主 格 に ハ がつくという 原 理 である ( ) 私 は 吉 田 と 申 します 社 長 にお 取 次 をお 願 いします ( ) 私 が 先 日 履 歴 書 を 差 し 上 げました 吉 田 でございます 2) 現 象 文 と 判 断 文 の 原 理 現 象 文 には ガ 判 断 文 には ハ 現 象 文 と 判 断 文 の 原 理 と 呼 ぶのは モダリチィの 面 からの 文 の 分 類 によって ハ と ガ の 使 い 分 けを 説 明 するものである つまり 現 象 文 の 主 格 に ガ がつき 判 断 文 の 主 格 に ハ がつくという 原 理 である 次 の( )と( )の 例 はそれぞれ 現 象 文 と 判 断 文 である ( ) 雨 が 降 っている ( ) それは 梅 だ 3) 文 と 節 の 原 理 文 末 までかかる 時 ハ 節 の 中 には ガ 文 と 節 の 原 理 と 呼 ぶのは 主 格 がどこまでかかるかによって ハ と ガ の 使 い 分 けを 説 明 するものである つまり 文 末 までかかるときは ハ が 使 われ 節 の 中 だけに しかかからないときは ガ がつかわれるという 原 理 である ( ) 鳥 が 飛 ぶ 時 には 空 気 が 動 く ( ) 鳥 は 飛 ぶときには 羽 を こんな 風 にする 4) 対 比 と 排 他 の 原 理 対 比 のときには ハ 排 他 のときには ハ か ガ 対 比 と 排 他 の 原 理 と 呼 ぶのは 主 格 名 詞 が その 文 の 中 にない 同 類 の 名 詞 との 関 係 で どのような 意 味 をもつかによって ハ と ガ の 使 いわけを 説 明 するものである つま り 同 類 の 名 詞 にたいして 対 比 的 な 意 味 をもつときは ハ が 使 われ 排 他 的 な 意 味 をも つときは ガ が 使 われるという 原 理 である ( ) 雨 は 降 っていますが 雪 は 降 っていません ( 対 比 的 ) ( ) 太 郎 が 学 生 です ( 他 の 人 は 学 生 ではありません: 排 他 的 ) 5) 措 定 と 指 定 の 原 理 措 定 には ハ 指 定 には ガ 措 定 と 指 定 の 原 理 と 呼 ぶのは 主 格 名 詞 と 述 語 の 意 味 的 な 関 係 によって ハ と ガ の 使 い 分 けを 説 明 するものである つまり 述 語 が 主 格 名 詞 の 性 質 を 表 す 措 定 のときには ハ だけが 使 われ 主 格 名 詞 と 述 語 名 詞 が 同 じものであることを 表 す 指 定 のときは ハ か ガ が 使 われるという 原 理 である ( ) いなごは 害 虫 です ( ) 君 の 帽 子 はどれです? 前 の( )のような 文 は いなご について 害 虫 だ と 解 説 する 措 定 の 文 なの で 次 の( )のような ガ の 文 に 変 えることはできない それに 対 して 前 の ( )のような 文 君 の 帽 子 と どれ の 一 致 を 認 定 する 指 定 の 文 なので その 次 の( )のような ガ の 文 に 変 えることができるというのである ( ) * 害 虫 がいなごです - 89 -

ペトロヴァ ユリア ( ) どれが 君 の 帽 子 です? 以 上 の つの 原 理 を 主 題 という 統 一 した 視 点 から 捉 えなおすことにする そうすると 次 の AからEの つの 原 理 として 再 編 されることになる A) 主 題 を 持 てるかどうかの 原 理 ( 上 記 3)にあたる ) ( ) 八 木 がよくホームランを 打 つことは みんな 知 っている B) 主 題 をもつかどうかの 原 理 ( 上 記 2)にあたる ) ( ) 富 士 山 が 見 えるよ C) 何 を 主 題 にするかの 原 理 ( 上 記 1)にあたる ) ( ) そのあと 私 はカラオケボックスに 行 きました D) 主 題 を 明 示 するかどうかの 原 理 ( 上 記 5)にあたる ) ( ) 私 が 責 任 者 (であること) 宏 坑 坑 坑 坑 宏 主 題 責 任 者 は 私 です 私 が 責 任 者 です E)どうとりたてるかの 原 理 ( 上 記 4)にあたる ) ( ) 私 は 魚 は 好 きですが 肉 は 嫌 いです ( ) 月 より 月 のほうが 寒 い ここでは ハ と ガ の 使 い 分 けが 決 まる 段 階 を 大 きく つにわける そして それぞ れの 段 階 で たがいに 違 う つの 原 理 によって ハ と ガ の 使 い 分 けが 決 まる 3. 調 査 はじめに でも 書 いたが ハ と ガ の 使 い 分 けは 学 習 者 が 日 本 語 の 文 法 を 学 習 す る 過 程 で 習 得 が 困 難 な 問 題 の 一 つだと 考 えられる これは ハ ガ を 学 習 者 が 学 習 する 際 にその 基 本 となる 使 い 方 を 体 系 的 に 学 んでいない また 教 授 者 が 導 入 する 際 に その 基 本 となる 使 い 方 を 体 系 的 に 指 導 できずにいることが 原 因 だと 考 えられる ここでは 初 級 者 向 けの ハ と ガ の 使 い 分 けの 体 系 的 かつ 簡 単 なルール( 以 下 ルー ル と 略 して 示 す)を 日 本 での 先 行 研 究 をもとにペトロヴァ 池 田 が 以 下 のように 作 成 した まずルールは 基 本 と 例 外 の 二 つの 部 分 に 分 かれる 例 外 はその 内 容 からさらに1と2の つに 分 かれる つまり 今 回 の 実 験 で 我 々が 示 したルールは 結 局 つになる 基 本 ルール: 名 詞 述 語 文 形 容 詞 述 語 文 には ハ 動 詞 述 語 文 には ガ が 必 要 名 詞 述 語 文 形 容 詞 述 語 文 と 動 詞 述 語 文 の 例 をあげる ( ) 彼 は 弁 護 士 です ( ) この 映 画 は 面 白 いです ( ) 両 親 が 新 潟 へ 行 きます - 90 -

( ) 彼 女 がNTTで 働 いています 例 外 ルール1: 可 能 ( 能 力 ) 必 要 存 在 ( 所 属 )という 意 味 がある 形 容 詞 述 語 文 では 能 力 を 持 つ 人 に は ハ その 対 象 には ガ を 使 う 例 : 必 要 好 き 嫌 い 上 手 下 手 得 意 などである 以 下 に 例 をあげる ( ) 私 は 寿 司 が 好 きです この 文 は ある 人 間 の 好 き という 感 情 について 表 現 している この 好 き と いう 感 情 の 主 体 は 私 である つまり 私 というトピック( 主 題 )についての 情 報 を 示 している 文 だと 言 える また 一 方 で 好 き という 感 情 を 何 に 向 けるか ( 対 象 )が 寿 司 が によって 示 されている 言 い 換 えれば 私 というトピックに 対 して 寿 司 が 好 きである という 情 報 を 伝 えている 文 である ( ) 友 達 は 英 語 が 分 かる この 文 は ある 人 間 の 分 かる という 能 力 について 表 現 している この 分 かる という 能 力 の 主 体 は 友 達 である つまり 友 達 というトピック( 主 題 )につ いての 情 報 を 示 している 文 だと 言 える また 一 方 で 分 かる という 能 力 を 何 に 向 けるか( 対 象 )が 英 語 が によって 示 されている 言 い 換 えれば 友 達 というトピックに 対 して 英 語 が 分 かる という 情 報 を 伝 えている 文 だといえる 例 とも 私 は 背 が 低 い と 同 じで 私 というトピックについて 背 が 低 いという 情 報 を 提 示 します と トピックが 持 つ 性 質 ( 属 性 )を 示 しているに 過 ぎない 例 外 ルール2: 対 比 や 比 較 という 構 文 も 例 外 的 なの ハ と ガ の 使 い 分 けが 必 要 これら: 対 比 がある 文 対 比 がある 文 であれば ハ を 使 っている 比 較 がある 文 比 較 がある 文 であれば ガ を 使 っている 最 初 は 対 比 の 例 をあげる ( ) 私 はバナナは 好 きですが リンゴはあまり 好 きではありません 私 はバナナが 好 きです 私 はリンゴがあまり 好 きではありません バナナ> 好 き りんご> 好 きではない 好 みという 性 質 について バナナとリンゴを 対 比 している その 結 果 - 91 -

ペトロヴァ ユリア 私 はバナナは 好 きですが リンゴはあまり 好 きではありません ( ) 山 田 さんはりんごを 食 べたが 高 橋 さんは 食 べなかった 山 田 さんはりんごを 食 べた 高 橋 さんは りんごを 食 べなかった - 省 略 の 印 山 田 > 食 べた 高 橋 > 食 べなかった 食 べるという 行 為 について 山 田 さんと 高 橋 さんを 対 比 している その 結 果 山 田 さんはりんごを 食 べたが 高 橋 さんは 食 べなかった 次 に 比 較 の 例 を 挙 げる ( ) バスより 電 車 のほうが 速 いです バスは 速 いです 電 車 は 速 いです バス> 速 い 電 車 > 速 い 速 さについて バスと 電 車 を 比 較 している その 結 果 バスより 電 車 のほうが 速 いです ( ) 納 豆 が 一 番 おいしい 納 豆 についてだけ 述 べるなら 納 豆 はおいしい というのが 普 通 である 同 じ 美 味 しいという 性 質 を 持 つ 食 べ 物 をいくつか 並 べて 豆 腐 はおいしい 寿 司 はおいしい ラーメンはおいしい はおいしい があり その 中 で 比 較 した 結 果 納 豆 の 性 質 が 一 番 と 判 断 された 結 果 であることを 上 の 例 文 は 示 しているといえる 以 上 のルールを 整 理 すると 以 下 の 表 のようになる - 92 -

名 詞 / 形 容 詞 動 詞 1. 基 本 ハ と ガ の 使 い 分 けの ルール X は N/Adjです X=N X Adj 例 えば: 彼 は 弁 護 士 です この 映 画 は 面 白 いです X が V ます 例 えば: 両 親 が 新 潟 へ 行 きます 彼 女 がNTTで 働 いています ただし 疑 問 文 であれば X は V ますか 例 えば: 喫 茶 店 はどこにありますか 田 中 さんはどこに 住 んでいますか 2. 例 外 1 ハ と ガ 使 い 分 けの ルール { 人 }(ニ)ハ + 対 象 ガ + 動 詞 / 形 容 詞 X ハ Y ガ N です 私 は 母 が 医 者 です X Y N 私 の 母 は 医 者 です XハYがAdjです 例 えば: 兄 は 背 が 高 いです 妹 は 漢 字 が 上 手 です 太 郎 は 絵 がうまいです X ハ Y ヲ V ます 例 えば: 子 供 はジュースを 飲 みます ただし Vは 可 能 ( 能 力 ) 必 要 存 在 ( 所 属 )という 意 味 があるとき X ハ Y ガ V ます 例 えば: 私 はお 金 が 要 ります 妹 は 英 語 が 分 かります 2 1. 対 比 がある 文 ハ 対 比 がある 文 であれば ハを 使 っています 例 えば: バナナは 好 きですが リンゴはあまり 好 きではありません 山 田 さんは 来 たが 木 村 さんは 来 なかった 2. 比 較 がある 文 ガ 比 較 程 度 がある 文 であれば ガを 使 っています 例 えば: バスより 電 車 のほうが 速 いです アメリカの 車 より 日 本 の 車 のほうが 便 利 です - 93 -

ペトロヴァ ユリア 以 上 に 示 したルールが 実 用 に 耐 えるかどうかをテストするために 日 本 語 を 学 習 している ロシア 人 大 学 生 にアンケートテストを 実 施 した 今 回 のアンケートテストの 調 査 対 象 はハバ ロフスク 極 東 国 立 人 文 大 学 で 日 本 語 を 学 習 している 年 生 と 年 生 の 学 生 である なお 学 生 の 日 本 語 学 習 歴 は 概 ね 以 下 のとおりである 年 生 : みんなの 日 本 語 初 級 I を 終 わって みんなの 日 本 語 初 級 Ⅱ に 入 ったところ 学 期 週 総 時 間 数 前 期 15 120 時 間 (8コマ/ 週 ) 後 期 20 140 時 間 (7コマ/ 週 ) 計 35 260 時 間 年 生 : みんなの 日 本 語 初 級 I みんなの 日 本 語 初 級 Ⅱ を 終 わって 日 本 語 中 級 で 学 ぶ に 入 ったところ 学 期 前 期 後 期 計 週 15 20 35 総 時 間 数 150 時 間 (10コマ/ 週 ) 170 時 間 (8か9コマ/ 週 ) 320 時 間 調 査 対 象 の 学 習 者 の 日 本 語 力 は 学 習 歴 から 考 えて まったくの 初 心 者 ではないが 初 級 あるいは 初 級 から 中 級 に 入 りかけているくらいと 考 えてよい このテストの 実 施 の 目 的 は ある 程 度 日 本 語 の 文 法 を 学 習 しているが 総 合 的 には 初 級 の 域 を 出 ないような 学 生 にとって 我 々が 提 案 するルールがどの 程 度 使 えるかを 確 認 すること である そのため テストは 回 実 施 した 回 目 はルールを 説 明 しないで 回 目 はルー ルを 説 明 した 後 に 実 施 した テストを 聞 いたことで ハ と ガ の 使 い 分 けの 学 習 が 進 む かどうかを 見 るために テストは 回 とも 同 じ 学 生 に 対 して 行 った 3.1.1 回 目 のテスト 結 果 一 回 目 のテストは 月 に 実 施 した 以 下 に 年 生 と 年 生 両 方 が 同 じ 間 違 いをしたものを あげる 番 号 はアンケートテスト 中 の 番 号 動 詞 文 では 基 本 的 に ガ を 使 うはずだが ハ を 使 っていた 例 えば ( ) 知 らない 人 は 私 に 話 しかけてきた ( ) たくさんの 人 は 花 火 を 見 に 長 岡 に 来 ました 日 本 語 を 勉 強 し 始 めた 時 例 文 の 人 を 表 す 名 詞 の 後 にはまず ハ が 付 いている おそら くそれでみんな 同 じ 間 違 いをしたと 考 えられる 可 能 ( 能 力 ) 好 み 必 要 という 意 味 の 形 容 詞 動 詞 がある 場 合 学 生 が 対 象 に ハ をつ ける ( ) 日 本 の 映 画 は 好 きな 人 が 増 えています ( ) クラスには 日 本 語 で 文 章 を 書 くのは 得 意 な 学 生 は 少 ないです - 94 -

最 初 に 学 習 した 形 容 詞 文 の 基 本 形 XはYだ という 構 文 がおそらく 頭 にあり 無 条 件 に ハ を 選 んだものと 考 えられる ( ) あのスーパーが 水 曜 日 は 休 みです 情 報 の 重 要 度 を 理 解 せずに ハ と ガ を 選 択 してしまった 例 である 水 曜 日 は あのスーパーが 休 みです ( 重 要 な 情 報 =あのスーパーです) あのスーパーは 水 曜 日 が 休 みです ( 重 要 な 情 報 = 水 曜 日 です) ( ) あなたがた 人 のなかでだれが 一 番 若 いですか もちろん わたしは 一 番 わかいです ( ) だれか 加 藤 さんの 電 話 番 号 を 知 りませんか たぶん 山 田 さんは 知 っています 3.2.2 回 目 のテスト 結 果 月 に 回 目 のテストを 実 施 した 年 生 と 年 生 のどちらも こちらで 用 意 したロシア 語 によるルールの 説 明 を 聞 いて テストをした 以 下 に 半 数 以 上 の 学 生 が 間 違 ったものをあ げて その 特 徴 を 整 理 する ( ) その 荷 物 がいつ 送 りますか 多 くの 学 生 が ハ ではなく ガ を 選 んだ おそらくルール: 基 本 に 基 づき 動 詞 文 に 対 して 自 動 的 に ガ を 選 んだと 考 えられる Xを 送 る の Xを を 主 題 にするときに Xは となるが Xが にはならない ( ) 山 田 さん( ) 魚 を 食 べたが 高 山 さん( ) 食 べなかった この 文 は 山 田 さんの 行 動 と 高 山 さんの 行 動 を 対 比 して 述 べているので どちらにも ハ が 入 る しかし 学 生 の 答 えは 次 の 三 パターンに 分 かれた 1 両 方 に ハ を 入 れる ルールの 例 外 に 注 意 を 払 わず 基 本 ルールのみを 利 用 して 動 詞 述 語 文 ということだけを 考 えて ガ を 選 んだ 2 山 田 さんのあとに ハ を 入 れ 高 山 さんのあとに ガ を 入 れる 3 山 田 さんのあとに ガ を 入 れ 高 山 さんのあとに ハ を 入 れる 2 3の 例 文 では 学 生 たちがルールの 中 で 迷 って 間 違 ったと 考 えられる ( ) ケーキ( )あまり 好 きじゃありませんが チョコレート( ) 大 好 きです これも 学 生 の 答 えが 三 つに 分 かれた 1 ケーキとチョコレート 両 方 のあとに ガ を 入 れる この 文 は 対 比 の 文 なのでどちらも ハ を 入 れるべきところを Xが 好 き( 大 好 き) という 好 き の 基 本 的 な 使 い 方 (ルール 例 外 2)にならって ガ を 入 れてしまっ た 2 ケーキのあとに ハ を 入 れ チョコレートのあとに ガ を 入 れる 好 きは 形 容 詞 なので ハ を 選 んだ 大 好 きというのは 好 みをあらわす 形 容 詞 なの で 普 通 にこの 形 容 詞 に ガ をつける 3 ケーキのあとに ガ チョコレートのあとに ハ を 入 れる - 95 -

ペトロヴァ ユリア ( ) 毎 年 月 に 全 国 からたくさんの 人 ( ) 祭 りを 見 に 東 京 にやってくる この 文 は 動 詞 文 なので ガ を 使 わなければならないが 人 中 人 しか ガ を 選 ばなかった ( ) あのハンサムな 男 の 人 ( ) 私 のクラスメートです この 文 では 私 は あのハンサムな 男 の 人 を 意 味 的 に 強 調 したいなら ガ 単 純 な 紹 介 文 なら ハ のはずだが 学 生 たちは 全 員 後 者 の 名 詞 文 と 判 断 して ハ を 選 んだ ( ) 明 日 東 京 からリーさん( ) 来 ます 動 詞 述 語 文 なので ガ を 選 ぶべきところで ハ を 選 んでしまっている おそら く 最 初 に 習 った 日 本 語 が Xは です や Xは します だったので 文 を 完 成 させるのにまず ハ を 用 いたと 考 えられる 4. 考 察 回 と 回 のテストの 結 果 を 調 べて 年 生 と 年 生 両 方 がだいたい 同 じ 間 違 いをしたと いう 結 論 に 達 した 二 つの 主 な 間 違 いを 指 摘 することができる その1 最 初 に 習 ってなんとなく 覚 えた いってみれば 個 人 によって 異 なる ハ と ガ の 使 い 分 けがテストに 大 きく 影 響 を 与 えたと 思 われる その 結 果 学 生 たちは 私 たちが 紹 介 した ルールに 戸 惑 っていた その2 私 たちが 作 成 したルールは 大 きく 分 けて 基 本 と 例 外 の 二 つの 部 分 からなり どちらの ルールを 優 先 させるかに 迷 いが 見 られた テストの 例 文 の 中 には 基 本 と 例 外 のどちらのルー ルを 適 用 すればよいのか 迷 う 要 素 が 時 々 混 じっており 学 生 たちはどちらを 優 先 させるのか わからなくて 結 局 正 しくない 答 えを 選 んでしまった たとえば 私 はバナナは 好 きですが リンゴはあまり 好 きではありません この 例 文 には 二 つの 例 外 の ハ と ガ の 使 い 分 けのルールが 適 用 可 能 である 形 容 詞 述 語 文 : 基 本 好 み という 意 味 がある 形 容 詞 述 語 文 : 例 外 1 対 比 がある 文 : 例 外 2 この 例 文 で 多 くの 学 生 が 間 違 った 一 番 の 理 由 は 例 外 の ハ と ガ の 使 い 分 けの 複 雑 さだと 思 う 1 回 目 正 答 率 2 回 目 正 答 率 55/71(77% ) 36/45(80% ) - 96 -

5.まとめ 日 本 語 を 学 習 しているロシア 人 大 学 生 にとって 難 しいと 感 じるのは ハ と ガ の 使 い 分 けである しかし ロシア 語 で 書 かれたハとガに 関 する 詳 しい( 良 い) 参 考 書 は 少 ない そ れで 日 本 での 先 行 研 究 をもとに 作 成 した 初 級 者 向 けの ハ と ガ の 使 い 分 けの 簡 単 な ルールを 導 入 し 実 際 に 学 生 にテストをしてもらった 結 果 かなりの 確 率 で ハ と ガ が 使 い 分 けることができることがわかった 最 後 にもう 一 度 ハ と ガ の 使 い 分 けのルー ルを 簡 単 に 整 理 しておく 基 本 動 詞 述 語 文 : 動 作 主 体 +ガ 名 詞 形 容 詞 述 語 文 : 属 性 主 体 +ハ 例 外 意 味 的 な 例 外 述 語 が 動 詞 でありながら 動 きを 意 味 しない( 静 的 な 事 態 ) 場 合 たとえば 好 み 能 力 必 要 という 意 味 を 持 つ 場 合 構 文 的 な 例 外 対 比 比 較 の 構 文 を 持 つ 場 合 対 比 リンゴハ 好 き だが バナナハ 嫌 い 彼 ハリンゴを 好 む 彼 女 ハ 日 本 語 ガ 話 せる 私 達 ハお 金 ガ 要 る 比 較 バス より 電 車 の 方 ガ 速 いです 属 性 主 体 以 外 に 必 要 な 要 素 がある 場 合 ( 彼 ハ)リンゴガ 好 き ( 彼 女 ハ) 背 ガ 高 い 参 考 文 献 寺 村 秀 夫 ( ) はとが 日 本 語 文 法 セルフ マスターシリーズ くろしお 出 版 寺 村 秀 夫 ( ) 格 助 詞 日 本 語 文 法 セルフ マスターシリーズ くろしお 出 版 野 田 尚 史 ( ) はとが 新 日 本 語 文 法 選 書 くろしお 出 版 Данилов,А.Ю.Японскийязык.Именительный тематический и именительный рематический падежи :[учеб.пособие ]/А.Ю.Данилов.-М.:Восток -Запад, 2004.-176с. - 97 -

ペトロヴァ ユリア (ダニロフ アンドレイ( ) テーマとレ マの 格 助 詞 モスクワ 出 版 ) Кун,О.Н.Элементарная грамматика японского языка /О.Н.Кун.-изд.2-е.- М.:АСТ:Восток -Запад,2006.-77[ 3]с. (クーン オレグ( ) 日 本 語 の 文 法 モスクワ 出 版 ) Лаврентьев,Б.П.Практическая грамматика японского языка /Б.П.Лаврен тьев -3-е изд.,испр.-м.;живой язык,2002.-352с. (ラヴレンチェフ ボルス( ) 日 本 語 文 法 参 考 書 現 代 語 出 版 ) Шкловский,И.Г.Практический синтаксис японского языка.элементарное предложение /И.Г.Шкловский.-М.:АСТ;Харьков :Торсинг,2005.-765,[ 3]с. (シクロフスキー イリヤ(2004) 日 本 語 の 構 文 論 モスクワ 出 版 ) - 98 -

附 録 1 月 に 実 施 したテスト ( )の 中 に ハ か ガ を 入 れなさい このタオル( )きれいです ここにあったリンゴは 田 中 さん( ) 食 べた バス 料 金 ( )また 値 上 げになりました この 前 の 日 曜 日 市 民 マラソン 大 会 ( ) 開 かれた 参 加 者 ( ) 全 部 で 人 ぐ らいだったそうだ それ( ) 何 の 本 ですか その 事 件 ( ) 警 察 ( ) 調 べています 私 の 趣 味 ( ) 古 い 時 計 を 集 めることです バレーボール( ) 一 番 面 白 いです 私 ( ) 友 達 と 月 にバスで 東 京 へ 行 きます 誕 生 日 ( ) 何 月 何 日 ですか 兄 ( ) 背 ( ) 高 いです 新 幹 線 の 売 り 場 ( )どこにありますか 大 学 生 や 大 学 院 生 ( ) 人 ぐらい 来 ます あなた( ) 誰 と 旅 行 しましたか 今 年 の 夏 ( ) 暑 いです 日 本 の 食 べ 物 で 何 ( ) 一 番 おいしいですか 田 中 さんと 話 している 人 ( ) 誰 ですか 私 ( ) 魚 をよく 食 べます リーさん( ) 発 表 する 予 定 です あのスーパー( ) 水 曜 日 ( ) 休 みです 田 中 さん( ) 社 長 になると 思 います このみかん( )おいしいです ( ) ですか 航 空 便 ( ) 船 便 より 高 いです 田 中 さん( )どこに 住 んでいますか 田 中 さん( ) 本 町 に 住 んでいます たくさんの 人 ( ) 花 火 を 見 に 長 岡 に 来 ました この 電 車 ( ) 新 潟 駅 まで 行 きますか 家 の 電 話 番 号 ( ) - - です 私 の 家 ( ) 狭 いですが 駅 から 近 いです ここから 富 士 山 ( ) 見 えます 鈴 木 さん( )[Sony]カメラを 持 っています 父 ( ) 車 を 入 学 祝 に 買 ってくれました - 99 -

ペトロヴァ ユリア 銀 行 ( ) 何 時 に 閉 まりますか 母 ( )ケーキ( ) 好 きです 友 達 ( ) 外 国 語 ( )できる 面 白 い 仕 事 ( )ほしいです あなた( )コピー 機 の 使 い 方 ( )わかりますか 先 生 の 声 ( ) 聞 こえますか 姉 ( ) 説 明 ( ) 詳 しいです 私 ( ) 外 国 で 暮 らした 経 験 ( )ありません この 本 ( ) 間 違 い( ) 多 いです 議 論 ( )まだ 続 いている この 人 ( ) 日 本 語 ( ) 上 手 ですから 心 配 しないで 下 さい 給 料 ( ) 多 いか 少 ないかは たいしたちがいではない 私 の 声 ( ) 聞 こえますか 太 郎 さん( ) 子 供 ( ) 人 いる この 仕 事 をするには 多 くの 人 手 ( ) 要 る 日 本 の 映 画 ( ) 好 きな 人 ( )ふえています 私 ( )もっと 時 間 ( )ほしかった 彼 ( ) 大 学 に 行 きます クラスには 日 本 語 で 文 章 を 書 くの( ) 得 意 な 学 生 ( ) 少 ないです この 手 紙 ( )いつ 来 ましたか 見 て 鳥 ( )たくさん 飛 んで 行 くよ 手 術 ( ) 朝 に 始 まった 田 中 さん( ) 来 たけど 山 田 さん( ) 来 なかった 今 月 ( ) 忙 しくて わたし( ) 時 間 ( ) 足 りない 先 生 あなた( ) 昨 日 何 時 間 勉 強 しましたか 学 生 時 間 ぐらいです 山 下 さんの 家 ( ) 新 しくて とてもきれいです 知 らない 人 ( ) 私 に 話 しかけてきた あなたがた 人 のなかでだれ( ) 一 番 若 いですか もちろん わたし( ) 一 番 若 いです 私 ( ) 夏 休 みの 間 に 漢 字 を 覚 えた だれかイーさんの 電 話 番 号 を 知 りませんか たぶん 山 田 さん( ) 知 っています 先 日 先 生 ( )いらっしゃった 場 所 にまたお 連 れします 公 園 で 子 供 ( ) 遊 んでいます - 100-

ジミーさん お 元 気 ですか もうすぐ 月 ですね 東 京 ( ) 暑 いですか ジミーさん ( ) 私 たちのうちにホームステイに 来 てから もう 半 年 になりますね 冬 の 北 海 道 ( )とても 寒 かったですが いま( ) 気 持 ちのいい 季 節 です 半 年 前 ( )ジミーさん( ) 日 本 語 学 校 の 学 生 でしたね 月 からの 専 門 の 勉 強 ( )どうですか コンピューターの 勉 強 ( )おもしろいですか 今 の 学 校 に 留 学 生 ( )いますか ところで 私 も 月 に 学 校 を 卒 業 して 月 から( ) 旅 行 会 社 に 勤 めています 旅 行 会 社 の 仕 事 ( ) 大 変 ですが 面 白 いです 毎 日 時 まで 仕 事 をしますが その 後 火 曜 日 と 木 曜 日 には 英 会 話 の 学 校 にも 通 っています 英 会 話 の 学 校 ではいろいろな 会 社 の 人 ( ) 勉 強 しています 出 版 社 や 銀 行 の 人 などです 弟 ( ) 月 から 高 校 年 生 になりました 弟 ( )スポーツ( ) 好 きで 去 年 ( ) 毎 日 学 校 で 野 球 をしていました でも 今 年 ( ) 高 校 の 年 生 で 大 変 です 私 も 家 族 も いま( ) 忙 しいですが 月 には 湖 へキャンプに 行 きます ジミーさ んも 一 緒 にキャンプをしませんか 北 海 道 の 夏 ( ) 涼 しいです それでは またご 連 絡 します どうぞ お 元 気 で 月 日 木 村 ひろ 子 ジミー シミス 様 - 101-

ペトロヴァ ユリア 附 録 2 月 に 実 施 したテスト ( )の 中 に ハ と ガ を 入 れなさい 早 く 病 気 ( ) 治 るといいですね 私 ( ) 外 国 で 暮 らした 経 験 ( )ない その 荷 物 ( )いつ 送 りますか 時 に 電 車 で 彼 女 ( ) 病 院 へ 行 きます 映 画 館 ( )どこにありますか 手 術 ( ) 朝 時 に 始 まった 山 田 さん( )リンゴを 食 べたけど 高 山 さん( ) 食 べなかった イーさん( )とてもきれいな 女 の 人 です 駅 で 友 達 を 待 っていると 歳 ぐらい 女 の 人 ( ) 話 しかけてきた 東 京 に 住 んでいる 友 達 ( ) 鈴 木 さんです きのう 久 しぶりに 高 山 さんから 電 話 ( )あった 何 か 言 っていましたか 赤 ちゃん( ) 生 まれたと 言 っていました 毎 年 月 に 全 国 からたくさんの 人 ( ) 祭 りを 見 に 東 京 にやってくる あのハンサムな 男 の 人 ( ) 私 のクラスメートです 昼 ごはん( ) 大 学 の 食 堂 で 食 べます ケーキ( )あまり 好 きじゃありませんが チョコレート( ) 大 好 きです あした 東 京 からリーさん( ) 来 ます その 新 幹 線 ( ) 番 線 から 出 ます 下 の 部 屋 に 赤 ちゃん( )います となりの 部 屋 ( )うるさいです 部 屋 にきれいな 絵 ( )あります 会 社 ( ) 時 から 時 までです 私 ( )いつもテレビを 見 ます 海 岸 で 若 い 人 ( )サーフィンをする 月 ( ) 台 風 シーズンでよく 雨 ( ) 降 る ケビン コスナー( ) 年 アメリカのカリフォルニアで 生 まれた 小 鳥 の 声 ( )きれいで かわいかったです 昔 ( ) 結 婚 するの( )よくないことだと 考 える 人 ( ) 多 かった 最 近 テレビのお 見 合 い 番 組 ( ) 人 気 ( )ある あの 子 ( ) 愛 情 ( ) 必 要 だ おじさん( ) 誕 生 日 にプレゼントを 買 ってくれた 消 防 車 ( )みんな 赤 いです このバス( ) 窓 ( ) 大 きいです - 102-

あなたはスキーもスケートも 上 手 ですね 生 まれ( ) 北 海 道 ですから 田 辺 さんに 会 ったの( ) 入 学 試 験 のとき( ) 最 初 だ - 103-