消訴訟である 争点は, 引用商標との類否 ( 商標法 4 条 1 項 11 号 ) である 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 3 月 11 日, 下記本願商標につき, 商標登録出願 ( 商願 号 ) をしたが, 拒絶査定を受けたので, これに対する不服の審



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指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

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平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

83155C0D6A356F E6F0034B16

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

最高裁○○第000100号

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

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平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

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平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

ある 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 23 年 6 月 8 日, 下記本願商標につき商標登録出願 ( 商願 号 ) をし, 平成 23 年 11 月 25 日, 指定商品の補正をしたが, 平成 24 年 1 月 30 日, 拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 4

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事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

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第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

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審決取消判決の拘束力

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

第 2 事案の概要本件は, 原告が有する下記商標登録 ( 本件商標 ) について, 被告が行った商標法 51 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求に対し, 特許庁がこれを認容する審決をしたことから, 原告がその審決の取消しを求めた事案である 争点は,1 原告による下記の本件使用商標 1 及び2(

求める事案である 1 本件商標被告は, 平成 17 年 3 月 7 日, rhythm の文字を横書きしてなる商標 ( 以下 本件商標 という ) について, 第 25 類 履物, 乗馬靴 を指定商品として, 商標登録出願し, 同年 9 月 16 日に設定登録を受けた ( 登録第 号

4390CD461EB D090030AC8

平成 25 年 7 月 18 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 7 月 4 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史 麻 子 呰 真 希 被 告 特 許 庁 長 官 指 定

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

号 ) をしたが, 同年 11 月 17 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 28 年 1 月 26 日, これに対する不服の審判請求をした ( 不服 号 ) ( 甲 3, 甲 4の1, 乙 1) 特許庁は, 平成 28 年 7 月 28 日, 本件審判の請求

最高裁○○第000100号

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

キューピー図形事件:東京高裁平成15(行ケ)192号平成15年10月29日判決(認容・審決取消)

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

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認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

平成 25 年 5 月 30 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 4 月 25 日 判 決 原告 X 訴訟代理人弁理士田中聡 被告東洋エンタープライズ株式会社 訴訟代理人弁理士野原利雄 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原

( イ ) 極めて簡単で かつ ありふれた音 ( 第 3 条第 1 項第 5 号 ) 1 単音及びこれに準じるような極めて単純な音 後述の 各国の審査基準比較表 ( 識別力 ) の 類型 3 に該当 資料 2 ( ウ ) その他自他商品役務の識別力が認められない音 ( 第 3 条第 1 項第 6 号

平成 25 年 7 月 18 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 7 月 4 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史 麻 子 呰 真 希 被 告 特 許 庁 長 官 指 定

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平成 24 年 7 月 12 日判決言渡 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 平成 24 年 5 月 8 日口頭弁論終結 判 決 原 告 株式会社レベルファイブ 訴訟代理人弁護士 辻 哲 哉 被 告 特 許 庁 長 官 指 定 代 理 人 酒 井 福 造 同 田 村 正

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

平成 30 年 9 月 10 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 7 月 11 日 判 決 原告ハワード株式会社 同訴訟代理人弁護士 窪 田 英一郎 乾 裕 介 今 井 優 仁 中 岡 起代子 本阿弥 友 子 同訴訟代理人弁理士

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

1 特許庁における手続の経緯等 ( 後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実 ) (1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) の商標権者である ( 甲 1, 2) 登録番号第 号登録出願日平成 26 年 3 月 27 日設定登録日平成 28 年 4 月 22 日登録

にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

平成 25 年 10 月 23 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 24 年 ( ワ ) 第 号役務標章差止請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 9 月 4 日 判 決 東京都渋谷区 < 以下略 > 原 告 株式会社 KPG LUXURY HOTELS 同訴訟代理人弁護士 吉 田

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

意匠法第十七条の三意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは その意匠登録出願は その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 2 前項に規定する新たな意匠登録出願があつたときは もとの意匠登

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

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第 2 事案の概要本件は, 商標登録出願拒絶査定に対する不服審判請求を成り立たないとした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 8 号該当性の有無である 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 24 年 2 月 9 日, 下記商標 ( 以下 本願商標 という ) について, 指定

同 長 沢 幸 男 同 岩 渕 正 樹 同 弁理士 正 林 真 之 同 八 木 澤 史 彦 主 文 1 原告らの請求を棄却する 2 訴訟費用は原告らの負担とする 事実及び理由 第 1 請求特許庁が無効 号事件について平成 23 年 9 月 26 日にした審決を取り消す 第 2

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

2018 年 2 月 8 日第一東京弁護士会総合法律研究所知的所有権法部会担当 : 弁護士佐竹希 バカラ電子カードシュー 事件 知財高裁平成 29 年 9 月 27 日判決 ( 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号 ) I. 事案の概要原告 ( エンゼルプレイングカード株式会社 : カー

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成22年 月 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

 

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平成 24 年 1 月 30 日判決言渡 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 10252 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 12 月 15 日 判 決 原告株式会社白謙蒲鉾店 訴訟代理人弁理士佐藤英昭 丸山亮 被 告 特 許 庁 長 官 指 定 代 理 人 前 山 る り 子 板 谷 玲 子 田 村 正 明 主 文 特許庁が不服 2010-7005 号事件について平成 23 年 6 月 17 日 にした審決を取り消す 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた判決 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 1 本件訴訟は, 商標登録出願の拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取 - 1 -

消訴訟である 争点は, 引用商標との類否 ( 商標法 4 条 1 項 11 号 ) である 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 3 月 11 日, 下記本願商標につき, 商標登録出願 ( 商願 20 09-17427 号 ) をしたが, 拒絶査定を受けたので, これに対する不服の審判請求をした ( 不服 2010-7005 号 ) 本願商標 海葉 ( 標準文字 ) 指定商品第 29 類かまぼこ, 加工水産物 ( かつお節 寒天 削り節 食用魚粉 とろろ昆布 干しのり 干しひじき 干しわかめ 焼きのり を除く ), 肉製品, かつお節, 寒天, 削り節, 食用魚粉, とろろ昆布, 干しのり, 干しひじき, 干しわかめ, 焼きのり特許庁は, 平成 23 年 6 月 17 日, 同請求につき 本件審判の請求は, 成り立たない との審決をし, その謄本は同年 7 月 5 日, 原告に送達された 3 審決の理由の要点本願商標は下記引用商標と類似の商標であって, 本願商標の指定商品は引用商標の指定商品に包含されるものであるから, 商標法 4 条 1 項 11 号に該当する 引用商標 ( 商標登録第 472111 号 ) 指定商品( 平成 18 年 3 月 22 日の書換え後のもの ) 第 29 類食肉, 卵, かまぼこ, ちくわ, はんぺん, 塩辛, うに ( 塩辛魚介類 ), このわた, 肉のつくだに, 水産物のつくだに, 寒天, かつお節, 干しのり, 焼きのり, とろろ昆布, 干しわかめ, 干しあらめ, ジャム, 野菜のつくだに, 果実の漬物, 野菜の漬物, なめ物 出願昭和 30 年 2 月 15 日 登録昭和 30 年 10 月 27 日 商標権者株式会社杉本利兵衛本店 - 2 -

第 3 原告主張の審決取消事由 ( 商標法 4 条 1 項 11 号の解釈適用の違法性 ) 1 本願商標の外観, 観念, 称呼本願商標は, 海葉 の漢字を標準文字で横書きしてなるものである 本願商標を構成する 海葉 の文字は, 成語としては各種国語辞典に掲載されていないが, これを構成する文字である漢字は, 我が国においては表意文字として使用されており, 漢字 1 文字 1 文字が意味を有することは公知の事実である 本願商標に使用されている 海 の漢字は 地球上の陸地以外の部分で, 塩水をたたえた所 を意味し, 葉 の漢字は ハ と読む場合は 植物の栄養器官の1つ を意味し, ヨウ と読む場合は 木の葉の先や縁のようにとがっているところ 葉のように薄く平たいもの を意味する そして, これら 海 と 葉 の文字は, 小学校で教えられるごく平易な漢字であり, その意味もさして難しいものではない したがって, 本願商標に接した一般の需要者 取引者は, 即座に特定の観念を想起するとはいえないが, 構成文字に相応して 海の葉っぱ 程度の観念を想起する これに加えて, 原告は, 海産物を原材料として植物の葉の形状に似せて形成し, 一般に 笹かまぼこ と呼ばれる, 海の葉っぱ を連想させる外観のかまぼこに 海葉 の商標を付して販売しており, この商品に接した需要者 取引者は, 海の葉っぱのような笹かまぼこ 程度の観念を想起する 本願商標からは, 構成文字に応じて, カイヨウ 又は ウミハ の称呼が生じる 2 引用商標の外観, 観念, 称呼引用商標は, 海陽 の文字をあたかも石碑の拓本のような様態において縦書きし, 海 の文字は 毎 の部分を 每 と表すものであり, 陽 の文字は 昜 の部分を 易 のごとく横画を省略したもので, あたかも中国唐代の九成宮醴泉銘のようにピンと張りつめた緊張感や厳しさが感じられる書体で表されており, 書道に詳しくない一般の需要者 取引者であっても 日本若しくは東洋的な, 長い歴史 - 3 -

伝統がありそうな 印象を受ける 引用商標に使用されている 海 の漢字は本願商標と共通であり, 陽 の漢字は 日に向かっている方 日の当たっている側 を意味するところ, 陽 の文字も平易な漢字であり, その意味もさして難しいものではない したがって, 引用商標に接した一般の需要者 取引者は, 即座に特定の観念を想起するとはいえないが, 構成文字に相応して 海から昇る陽 ( ひ ), 日の当たっている明るい海, 海の日が当たっている方 程度の観念を想起する これに加えて, 被告は, 引用商標を使用した商品について 大海原からのぼる朝日をかたどった色鮮やかな高級紅蒲鉾 海陽 と説明しており, この商品に接した需要者 取引者は, 海から昇る陽 ( ひ ) のようなかまぼこ 程度の観念を想起する 海陽 の文字からなる引用商標からは, カイヨウ, ウミヒ 等の称呼が生じる 3 原告主張の対比判断 (1) 外観本願商標と引用商標とは, 海 の文字が共通し, 葉 と 陽 の文字が相違しているが, 多数の文字からなる語句のうちの一語が相違するのとは異なり,2 文字のうちの1 文字 ( 文字標章の半分 ) が相違するのであって, 外観の相違を過小評価することはできない そして, 葉 の文字は くさかんむり を部首とする 上と下とに分けられる漢字 の外観を有するのに対して, 陽 の文字は こざとへん を部首とする 右と左に分けられる漢字 の外観を有するものであり, 外観上の類似点は一切ない 加えて, 本願商標は 海葉 の標準文字を普通に横書きしてなるのに対し, 引用商標は 海陽 の文字をあたかも石碑の拓本のような様態において縦書きし, さらに 海 の文字は 毎 の部分を 每 と表すなどの相違がある したがって, 本願商標と引用商標との間には, 無視することができない外観上の相違がある - 4 -

(2) 観念本願商標及び引用商標は, いずれも辞書に記載のあるような成語ではないが, 上記のとおりいずれも平易な漢字からなり, 葉 と 陽 との漢字が有する意味 ( 字義 ) が異なる そして, 漢字を母国語として普通に使用し, 同音異義語を日常的に使い分けている一般の需要者 取引者において, 海葉 と 海陽 とを同義と捉えることは考えらない したがって, 本願商標と引用商標との間には, 無視することができない観念上の相違がある (3) 称呼本願商標及び引用商標からは, カイヨウ の称呼が生じる場合があるから, その限りにおいて, 称呼が類似する場合がある (4) 取引の実情本願指定商品に含まれる かまぼこ については, 海宝 という商標を用いた商品と, 海峰 という商標を用いた商品との間で, 出所について誤認混同を生じることなく各商標が使用されている また, 本願指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とする商標に関して, 海精 と 海匠, 海華 と 海香/ うみか のような併存登録例がある なお, 被告は, 口頭取引が増加していることをもって, 称呼が特に重要であると主張する しかし, 電話等の口頭取引が増加しているとしても, 現在の商取引のすべてが口頭取引になっているのではなく, 称呼を頼りとする口頭取引はあくまで商取引の一形態にすぎない また, 被告が主張する口頭取引について, 被告提出の証拠には, カタログ チラシや, ウェブサイト上の商品のパッケージ写真を見て注文する旨の記載があり, 商標は視覚に訴える態様で機能しているのであって, 称呼を頼りとする取引であるとはいえない (5) 小括上記の観念及び外観の相違は, カイヨウ との称呼の共通性を優に凌駕するも - 5 -

のであるから, これらを総合して考察すれば, 本願商標と引用商標とは商品の出所 について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標であり, これらを類似すると した審決の判断は誤りである 第 4 被告の反論 1 本願商標の外観, 観念, 称呼本願商標は, 海葉 の漢字を標準文字で表してなるものである 本願商標は, 広辞苑第 6 版, 角川大字源, その他の一般の辞典にも掲載されていないことからして, 特定の意味を有する成語ではない また, 海 の漢字と 葉 の漢字とからなる 海葉 は, それ自体で熟語的な意味合いを認識させるものでもない したがって, 本願商標は, 全体として特定の観念を生じないものである 本願商標は, 音読みした場合には カイヨウ であり, 訓読みした場合には ウミハ であって, いずれも特に不自然な称呼ではないから, 本願商標の構成自体からは, 通常, 両称呼が生じる ただし, 原告は, 指定商品のかまぼこに使用した本願商標について かいよう の読み仮名を付しており, 実際の取引における称呼は カイヨウ である 2 引用商標の外観, 観念, 称呼引用商標は, 海陽 の漢字を筆書き風に同書同大で縦書きした構成よりなる 引用商標は, 広辞苑第 6 版, 角川大字源, その他の一般の辞典にも掲載されていないことからして, 特定の意味を有する成語ではない また, 海 の漢字と 陽 の漢字とからなる 海陽 は, それ自体で熟語的な意味合いを認識させるものでもない したがって, 引用商標も, 全体として特定の観念を生じないものである 引用商標は, 音読みした場合には カイヨウ, 訓読みした場合には ウミヒ である ただし, 引用商標権者は, 商品 かまぼこ について, かいよう 又は カイヨウ の振り仮名を付した 海陽 の文字を商標として使用しており, 実際の取引における称呼は カイヨウ である - 6 -

3 被告主張の対比判断 (1) 外観本願商標と引用商標の外観を対比した場合には, 本願商標が 海葉 の漢字を標準文字で横書きにて表してなるのに対し, 引用商標が 海陽 の漢字を筆書き風に縦書きにて表してなるものであるから, 外観上類似するとまではいえない しかしながら, 共に漢字 2 字のみから構成され, かつ, 看者の注意をひきやすい語頭の 海 の漢字を共通にするものである なお, 一般に商標を使用するに際して, 横書きを縦書きに, 又はその逆に表示方法を変えることや, 楷書のみならず筆書き風の書体をも用いて表示することが, 普通に行われていること, また, 海 の文字の旁( つくり ) についても, 同じ文字の異体字である上, 子細に観察しなければ把握することができない程度の相違であるということから, 横書きか縦書きか, 標準文字か筆書き風か, 海 の文字の旁 ( つくり ) が 毎 か 每 かについては, その相違によって, 需要者 取引者に与える出所識別標識としての印象が大きく異なるとはいえない (2) 観念本願商標と引用商標とは, 共に特定の観念を生じさせない造語というべきであるから, 観念において比較することはできず, 観念をもって両商標を明確に区別することはできない (3) 称呼本願商標と引用商標の称呼は, カイヨウ で同一である (4) 取引の実情ア商品の購入にあたっては, 目視によるものに限らず, 商標から生ずる称呼を手掛かりとした対面販売や電話注文のように, 口頭で商品名を伝えて購入することがしばしばある そして, 近年, 高齢者など, 日常の買物が困難な者が増えており, これらの者に向けて, インターネットによる商品注文だけでなく, パソコンを使えない者のためにFAXや電話によっても商品注文を受け付けており, これに - 7 -

伴い, 電話による口頭取引も増えているものと推測される 本願商標及び引用商標で抵触する指定商品を取り扱う業界においても, 複数のかもぼこ店やスーパーマーケットのウェブサイトにおいて, 電話で注文を受け付ける旨の表示がされている イ商品の宣伝 広告も, 新聞 雑誌等の紙媒体を用いて視覚に訴えるものに限らず, テレビ ラジオ等を用いて聴覚に働きかけるものもあるから, 日常の買物品などでは, 需要者は, 例えば, コマーシャルソング等に織り込まれた商品の名称 ( 商標の称呼 ) だけを記憶にとどめ, その記憶した商標の称呼を頼りに商品を選択, 購入することも, ごく普通にみられることである 本願商標及び引用商標で抵触する指定商品 かまぼこ についても, 複数のCM ソングが存在しており, テレビやラジオにより, 商標を告知する広告が行われていると推測される ウ原告の商品 かまぼこ の取扱い店舗は, 本店所在の宮城県を主として, 13 都道県 ( ただし, うち4 県の店舗では, 現在取り扱っていない ) に及んでいる 引用商標権者の商品 かまぼこ の取扱い店舗も, 本店所在の山口県を主として,9 都府県に及んでいる このように, 互いの取扱い地域は広範囲に及び, 重なる地域も少なくない エ本願商標及び引用商標で抵触する指定商品は, 安価に購入でき, 日常的に消費されるものであって, その取引者 需要者には, 買い物難民, 家庭の主婦など, 広く一般消費者も含まれるものである オ以上を総合的に勘案すると, 本願商標及び引用商標で抵触する指定商品の分野においては, その需要者が, 商品の同一性を識別するに際して, 商標から生ずる称呼が極めて重要な要素となる (5) 指定商品本願商標の指定商品と引用商標の指定商品には, かまぼこ 等, 同一又は類似の商品が含まれている - 8 -

(6) 小括上記 (4) のとおり, 本願商標及び引用商標で抵触する指定商品の分野では, 商品の同一性を識別するに際して称呼が極めて重要な要素となるから, 本願商標と引用商標との類否を判断するに当たっては, 外観及び観念に比して称呼を重視すべきである また, 本願商標の指定商品は, 引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である そうすると, 本願商標と引用商標とは, 上記取引の実情を踏まえつつ総合勘案するならば, 外観において類似せず, 観念について比較できない ( 仮に, 原告の主張どおり,2 文字目の漢字から生ずる観念が相違する ) としても, 称呼は カイヨウ で同一であるから, 両商標が同一又は類似の商品に使用された場合には, 商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標というべきであり, 本願商標が商標法 4 条 1 項 11 号に該当するとした審決の認定, 判断に誤りはない 第 5 当裁判所の判断 1 本願商標及び引用商標について (1) 本願商標は, 海葉 の漢字を標準文字で表記したものである 本願商標は, 全証拠によっても辞書に収録された成語であるとは認められないものの, これを構成する 海 と 葉 の文字は, いずれも平易, 常用, かつ一般人にとって観念を容易に想起し得る漢字であり, また,2 文字程度の漢字を組み合わせた単語について, これを構成する文字からその意味を理解することも通常のことであるから, 本願商標からは, 海 と 葉 から生じる観念を組み合わせた, 海草の葉っぱ, 海に浮いた葉っぱ 程度の観念を生じるものと認められる また, 本願商標からは, 構成文字に応じて, カイヨウ, ウミハ の称呼が生じ得るところ, 原告は, 本願商標を指定商品に含まれるかまぼこに使用する際に, かいよう の読み仮名を付しているから ( 甲 18), 本願商標からは基本的に カイヨウ の称呼が生じるものと認められる - 9 -

(2) 引用商標は, 海陽 の漢字を, 行書体に近い筆書体により縦書きで表記したものである 引用商標も, 本願商標と同様に, 全証拠によっても辞書に収録された成語であるとは認められないが, 平易, 常用, かつ一般人にとって観念を容易に想起し得る漢字を組み合わせたものであり, 陽 の文字からは 日の当たっている側 ( 甲 1 0), 太陽 等の観念を生じるから, 一般人にとって, 構成文字である 海 と 陽 から生じる観念を組み合わせた, 海に昇る太陽, 海に沈む太陽, 海の日の当たる場所 程度の観念を生じるものと認められる また, 引用商標からは, 構成文字に応じて, カイヨウ, ウミヒ の称呼が生じ得るところ, 引用商標権者は, 引用商標を指定表品に含まれるかまぼこに使用する際に, かいよう の読み仮名を付しているから( 乙 4の1), 引用商標からは基本的に カイヨウ の称呼が生じるものと認められる 2 本願商標と引用商標との類否 (1) 類否の判断外観について, 本願商標と引用商標は, それぞれを構成する漢字 2 文字のうち, 先頭の1 文字が 海 であって共通するものの, 海 ともう1 文字の漢字を組み合わせた単語は非常に多く存在するから ( 乙 3), 海 と組み合わされる漢字の外観上の相違を軽視することはできないというべきである そして, 本件においては, 葉 と 陽 との間に旁( つくり ) や偏 ( へん ) の共通性はなく, その相違は大きいから, 全体として両者は外観が大きく異なる 観念についても, 本願商標からは 海草の葉っぱ, 海に浮いた葉っぱ 程度の観念が生じるのに対し, 引用商標からは, 海に昇る太陽, 海に沈む太陽, 海の日の当たる場所 程度の観念が生じるから, 両者は観念において大きく異なる 称呼について, 本願商標と引用商標から生じる称呼は, いずれも基本的に カイヨウ であり, 基本的に同一である - 10 -

以上のとおり, 本願商標と引用商標とは, その外観, 観念において大きく相違し, 称呼において基本的に同一であるところ, 海の母音である あい も, 葉や陽の母音である おう も, 漢字の音読みとしてありふれた読みであり, これに K と Y の子音を組み合わせた KあいYおう との称呼は2 文字の漢字のありふれた読みからくるもので, 外観, 観念の相違に比較すると, 識別力が弱いものである そして, 本件において, この判断に反して特に考慮すべき取引の実情は認められないから, 本件においては, 外観と観念の相違が称呼の共通を凌駕するものというべきであって, 指定商品について共通するものがあるとしても, 本願商標と引用商標とは類似するものではないというべきである (2) 被告の主張に対する判断被告は, 本願商標と引用商標とで抵触する指定商品を取り扱う業界などにおける取引の実情を考慮すると, 称呼が極めて重要な要素となる旨主張する 確かに, 証拠 ( 乙 5の1~6の6) によれば, 日常の買い物が困難になっている高齢者等に対応するため, 本願指定商品に含まれるかまぼこ等を取り扱っている複数のスーパーマーケット, インターネットを利用したネットスーパーにおいて電話注文を受け付け, また, ウェブサイトを設けているかまぼこ店においても電話注文を受け付けている事実が認められるものの, 他方において, これらの電話注文の多くは, 事前に配布されたカタログや商品一覧のチラシの存在, ウェブサイト上の商品情報や商品番号, さらには単価などの閲覧等を前提とするものと認められるから, これらの電話注文に関して称呼のみで取引が特定されている実情にあるとはいえない また,CMソングについても, 本願指定商品に含まれるかまぼこを取り扱っている複数の業者がCMソングを作成している事実は認められるものの ( 乙 7の1~7 の5),CMソングの歌詞には取扱業者の名称も含まれるのが通常であろうから, これにより称呼のみが特に重視される実情にあると認めることはできない そして, その他被告が主張するところによっても, 上記判断は左右されず, 被告 - 11 -

の主張は採用することができない 第 6 結論以上のとおり, 引用商標との対比において商標法 4 条 1 項 11 号該当性を肯定した審決の判断は誤りである よって, 原告の請求を認容することとして, 主文のとおり判決する 知的財産高等裁判所第 2 部 裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 真辺朋子 裁判官 古谷健二郎 - 12 -