蓄電システムに関する技術開発動向 ~ 定置用 MW 級蓄電システムの研究開発動向について ~ 環境 エネルギー研究本部 研究員長谷川功
背景 研究開発の背景 自然エネルギー発電は出力が不安定なため 大量に普及した場合 連系する電力系統に悪影響を与えるという問題点が指摘されている この問題を解決する手段の一つとして 蓄電池による出力安定化が注目されている 出力のイメージ 蓄電池に充電 -/ ~ 蓄電池から放電 出力は お日様任せ 風任せ ~/- 蓄電システムの開発 評価方法の検討 < 想定される悪影響 > 電圧の変動 周波数の変動 など キーポイント = 大型 低コスト 長寿命抑制これを実現するためには より低コストでより長寿命な大型蓄電システムの開発とともに それを評価するための手法検討が必要である 2
再生可能エネルキ ーとの系統安定化用途 以外の電力貯蔵用電池の開発ターケ ット 発電所 電力供給サイド 変電所併設大容量蓄電池システム 変電所 揚水発電所 揚水発電所代替大容量蓄電池システム 移動体用 定置型 需要家サイド 電気自動車用電池 (10 数 ~ 数 10kWh 級 ) プラグインハイブリッド車用電池 ( 数 ~10kWh 級 ) [ 出典 : 経済産業省 低炭素電力供給システムに関する研究会 ( 第 2 回 ) 配布資料 ( 平成 20 年 8 月 )] 3 家庭用電池電力貯蔵装置 ( 数 ~10 数 kwh 級 )
1 高エネルギー密度化 鉛電池ナトリウム硫黄電池ニッケル水素電池リチウムイオン電池 現状 40~80 Wh/L 140~170 Wh/L 40~100 Wh/L 140~210 Wh/L 将来性 2 大容量化実績現状 MWh 級数 100MWh 級数 100 kwh 級数 10 kwh 級 3-1 コスト ダウン 3-2 高出力対応 3-3 実用 SOC 範囲 4-1 長寿命化 4-2 低 SOC の寿命へ の低影響 4-3 過充電 過放電耐 性 5-1 充放電エネルギー 効率 5-2 SOC 監視の容易 さ 系統安定化用蓄電池の現状と研究開発による解決の将来性 kw 単価 15~25 万円 /kw 24 万円 /kw 10 万円 /kw 5~150 万円 /kw 現状 kwh 単価 5 万円 /kwh 2.5 万円 /kwh 10 万円 /kwh 10~200 万円 /kwh 本体価格将来性 現状 1 時間率 ( 但し容量 50%) 6~7 時間率 1 時間率 0.5 時間率 将来性 現状比較的狭い極めて広い極めて広い広い 将来性 - - 現状 4500 サイクル 4500 サイクル 2000 サイクル 3500 サイクル 将来性 ( サルフェーション ) 現状 将来性 - - - 現状過充電 過放電 将来性 - 現状 75~85% 90% 80~90% 94~96% 将来性 現状 将来性 - 現状 ~ ~ 5-3 低稼働率時の高効 ( リセットロス ) ( ヒータロス リセットロス ) ( リセットロス ) 率性将来性 - 本表中のコストはシステム規模 構成等による変動があり得る参考値で 現状値も出典資料時点 (2006 年 ) の値 [ 出典 : 経済産業省 低炭素電力供給システムに関する研究会 ( 第 2 回 ) 配布資料 ( 平成 20 年 8 月 )] 4
風力発電に併設する蓄電システム所要容量 ( 発電設備 MW あたり ) の試算例 制御方法 平均化時間 ( 分 ) 所要 MW 容量 (MW) 所要 MWh 容量 (MWh) 必要な最小充放電時間率性能 備 考 短周期変動対策 長周期変動対策 10 1 0.77 0.077 0.1 2 0.16 0.032 0.2 20 3 0.17 0.068 0.4 120 4 1.00 12.3 12.3 終日平滑化運転 平均化時間 10 分での最大値縮小率を最大にするための所要容量 平均値縮小率 47.6% 累積出現頻度 100% を蓄電池で制御 1の容量削減ケースで 平均化時間 10 分での平均値縮小率を40% 程度にするための所要容量 平均値縮小率 40.4% 累積出現頻度 84.7% を蓄電池で制御 1の容量削減ケースで 平均化時間 20 分での平均値縮小率を50% 程度にするための所要容量 平均値縮小率 49.9% 累積出現頻度 83.7% を蓄電池で制御 夜間 8 時間完全充電 昼間は 平均化時間 120 分での短周期変動対策運転を実施 昼間時間帯の平均値縮小率は82.0% [ 出典 : 経済産業省 平成 17 年度新エネルギー等電力市場拡大促進対策基礎調査等 ( 風力発電導入拡大のための周波数変動対策としての蓄電池システムの導入に関する調査 ) ( 平成 18 年 6 月 )] 風力発電の場合でも 制御方法 平均化時間 の設定で 所要蓄電容量 (MWh) に約 100 倍の開き 風力発電容量 (MW) 当たりの系統安定化蓄電システムのコスト目標が見定めにくい 併設蓄電容量 (MWh) が小さくてすむと 蓄電システムのコスト目標が緩和される反面 市場規模がコスト低減を生む量産規模に至らず 蓄電システム製造への投資意欲が高まらない恐れもある 短周期変動 or 長周期変動 平均化時間 など 平均的なシステム要件を検討する必要有り 5
風力発電の特徴から見た蓄電池システムへの要求性能 ( 例 ) 低い充電状態 (State of Charge, SOC) の待機状態においても 寿命劣化や効率の低下が少ないこと 風力発電の設備利用率は必ずしも高くないことから 蓄電池システムの設備利用率も低くなる傾向がある 長周期変動対応としての下げ代対応運転の場合 電力需要の少ない深夜に先立ち SOC を下げておく必要があるが 深夜に高い SOC まで必ずしも充電されるとは限らない SOC の的確な管理が可能であること 積算電流計などによる計測では 徐々に誤差が蓄積し 電池の実際の SOC とのずれが生じる恐れがあり 校正のために 満充電リセットを行い 容量計リセットを行う必要がある 低い SOC にある電池には 商用電力を用いて満充電する必要が生じる [ 出典 :NEDO 委託業務成果報告書 ( 財団法人電力中央研究所 ) 系統連系円滑化蓄電システム技術開発に関する調査 ( 平成 18 年 7 月 )] 6
NEDO 系統連系円滑化蓄電システム技術開発 共通基盤研究のご紹介 7
研究開発の概要 研究開発の目的 低コストで長寿命な自然エネルギー発電用の大型蓄電システムを構築 実現するために必要となる各種の技術開発を行なう テーマと最終目標 (1) 実用化技術開発システムの大型化と出力制御技術の開発を行なう 最終目標 = 大型蓄電システムの製作と 6 ヶ月以上の実機検証 (2) 要素技術開発高性能化のための各種構成部材の開発を行なう 最終目標 = コスト 4 万円 /kwh 寿命 10 年を実現する技術の開発 (3) 次世代技術開発新規材料および製法等の研究開発を行なう 最終目標 = コスト 1.5 万円 /kwh 寿命 20 年を見通す新技術の開発 実用化 (4) 共通基盤研究本プロジェクトの開発品に適用する各種評価方法の開発を行なう 最終目標 = コスト 安全性 寿命 性能評価方法の開発 要素技術開発次世代技術開発 実用化技術開発 各種評価方法 共通基盤研究 大きさ 8
系統連系円滑化蓄電システム技術開発L=京都大 小久見氏 研究実施体制 研究の方向性や技術的内容を審議 < 技術委員会 > 九州大 山木氏東工大 菅野氏山形大 仁科氏長崎大 森口氏元 GSY 山地氏 NEDO Gr ミーティンク = 2 回 / 年 技術委員会 = 2 回 / 年 (P実用化 要素技術開発 (SPL: 豊橋技科大 櫻井氏 ) 次世代技術開発 (SPL: 神奈川大 佐藤氏 ) )三菱総研 - 電中研 ( 各種評価方法 ) 共通基盤研究 (SPL: 産総研 辰巳氏 ) 川崎重工 ( ニッケル水素 ) 北陸電力 - エナックス ( リチウムイオン ) 三菱重工 - 九州電力 ( リチウムイオン ) 日立製作所 ( リチウムイオン ) 日清紡 ( キャパシタ ) 電中研 ( リチウム電解質 [ ポリマー ]) 同志社大 ( リチウム負極 [ 高電位 ]) 大阪大 ( リチウム電解質 [ ポリマー ]) 東工大 谷口准教授 ( リチウム正極 [ 燐酸 Mn]) 東海カーボン 産総研 ( リチウム負極 [ カーボン ]) 鶴岡高専 - 京都大 ( リチウム電解質 [ ポリマー ]) 東工大 山田准教授 ( リチウム正極 [B,Si 系 ]) 9
共通基盤研究における研究体制 技術委員会 ワークショップ 設置 開催 本研究の方向性や技術的内容を審議 PL,SPL 共通基盤研究 評価方法の妥当性を審議 専門委員会 設置 コスト評価 WG 安全性評価 WG 寿命 性能評価 WG NEDO 研究委託 三菱総合研究所電力中央研究所 各評価方法の検討 加速劣化試験の実施 連携 要請 開発者 サンプルセルの作製評価方法の検討評価の実施 10
11 研究開発内容当初の問題点研究開発内容目標 客観的なコスト評価手法や材料原単位が存在しない 蓄電システム導入量の推定を進めつつ 量産効果推定モデルを開発 セル モジュール システムの各レベルのコスト評価手法を開発 量産化効果評価モデルの熟度を高めた MW 級システムの評価手法の確立 基盤データの整備 標準的な寿命評価方法 加速劣化試験方法が存在しない セル モジュール システムの各レベルの寿命評価手法を開発 手法の妥当性を確認すべく 確認試験を実施 加速劣化評価試験方法の確立 モジュール システムレベルの評価手法の完成 検証 リチウムイオン電池の開発品を対象に共通の加速劣化試験を実施 試験結果の分析 寿命推定方法 加速劣化試験方法へのフィードバック 標準的な安全性評価手法が存在しない セル モジュール システムの各レベルの安全性評価手法を開発 開発した安全性評価方法に基づく確認試験の実施 モジュール システムレベルの評価手法の完成 検証 性能に係る用語の定義が未統一 標準的な性能評価手法が存在しない 各種用語を定義しつつ セル モジュール システムの各レベルの性能評価手法を開発 ウィンドファームやメガソーラー等の実サイトのデータを収集し それらに基づく試験パターンを作成 風力 太陽光発電出力等基盤データの整備 モジュール システムレベルの評価手法の完成 検証
中評価方法案の適用間主にモジュール システムレベル評評価結果主にセルレベル 評用価サンプル提供 研究項目とスケジュール 研究項目平成 19 年度平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度 コスト評価方法の開発 評価範囲 項目の検討 評価方法の検討 検証 など 共通基盤 研究 開発者 安全性評価方法の検討 既存の規格基準の調査 評価項目の検討 評価方法の検討 検証 など 性能評価方法の開発 既存の規格基準の調査 評価項目の検討 評価方法の検討 検証など 寿命評価方法の検討 基本試験パターンの検討 寿命加速方法の検討 加速劣化試験の実施 開発品の評価 検証 試験用サンプルセルの作製 開発品の中間評価 各種評価方法の検討 開発品の性能検証 開発品の最終評価 など 価方法の適12
標準システム仕様の検討 ( コスト評価手法の検討例 ) 新エネ併設の MWh 級蓄電システムの用途を整理し 用途別に標準システム仕様を検討 標準システム仕様を設定する背景 : 蓄電部分 ( いわゆる蓄電池 ) のコストは kwh 単位で変化するが システム部分 ( 変換器 変圧器等 ) は kw がコストのパラメータ 同一規模のシステム [kw] でも 蓄電容量 [kw] が倍だとシステム部分のコストが見かけ上半分に 低下 することとなる こうした事態は当然ミスリードを生じるため システムレベルコスト評価においては共通の用途および仕様のもとで評価すべき 表コスト評価のための用途別蓄電システム標準仕様 用途 / 役割 概要 併設する新エネ発電 新エネの出力規模 蓄電容量 変換装置の規模 交流電圧 電力品質対策 新エネの出力変動を抑制 風力発電 10MW 平滑化 20 分 :40%kW 0.5h 平均化 120 分 :50%kW 3h 太陽光発電 10MW 平滑化 20 分 :70%kW 20 分 平均化 120 分 :70%kW 2h 6,600V 6,600V 余剰電力対策 下げ代不足対策 タイムシフト 新エネ導入によって発生する余剰電力を蓄電 ( 主に風力 ) 需要最小時に 供給力過剰 ( 下げ代不足 ) にならないように調整 供給側でオフピーク時の安い電力を蓄電しピーク時に放電 太陽光発電 10MW 100%kW 4h 12MW 6,600V 風力発電 10MW 50%kW 8h 12MW 6,600V 太陽光発電 10MW 70%kW 4h( 平滑化 120 分 ) 6,600V 風力発電 10MW 50~100%kW 4~8h 12~24MW 6,600V カットアウト時対応 新エネのカットアウト時に バックアップ電源 ( ディーゼル発電等 ) 立ち上げまでの電力を補償 風力発電 10MW 50%kW 15~30min 12MW 6,600V 13