FOCUS 地域 & 経済 拡大する ふるさと納税 の現状と課題 ( 上 ) ~ 寄附金と地方税の視点から考える~ ぶぎん地域経済研究所調査事業部主席研究員松本博之はじめに 自分が生まれた故郷 育った町や村 応援したい地域 居住地以外の都道府県や市区町村を選ぶことができ そこへ寄附をすると一定の限度内での住民税等の控除が受けられ その上に寄附をした地方自治体から返礼品 ( 地元の特産物等 ) が送られる制度 ふるさと納税 が拡大しています 政府の進める地方創生の諸施策と相まって ブーム とも言える状況のふるさと納税制度ですが そこには 自治体は税収増につながり 個人にとっては寄附をすると 経済的な利益 を受けられるという仕組みにもあることが一因となっているようです そこで ふるさと納税について 今回は前半として公表された諸統計をもとに現状を分析し 次回は後半として寄附金や地方税のあり方から見た課題を中心に考察します 1 ふるさと納税の概要 平成 20 年度税制改正から始まった制度で 都道府県及び市区町村 ( 任意の地方自治体 ) に寄附をすると 寄附金が一定限度に達するまでは 寄附金額から2,000 円を差し引いた全額が個人住民税 ( 地方税 ) の寄附金税額控除と所得税 ( 国税 ) の寄附金控除 ( 所得控除 ) の合計として受けられます 減税措置を受けるためには 寄附の受領書を添えて確定申告をすることが必要でしたが 平成 27 年度改正からは 政府の進める地方創生の諸施策の関連から 平成 27 年 1 月 1 日から納税枠が約 2 倍に 同 4 月 1 日からは確定申告をしない方法 ( 制限あり ) も選択できるようになりました また多くの自治体が 寄附者に対してそれぞれの自治体の特産品等を返礼品として送っていますので 実質的に自己負担額の2,000 円を上回る価格 ( 価値 ) の特産品を手にできる場合が多く 最近の拡大の一因でもあると言えます 各自治体の返礼品を比較できるウエブサイトもあり 関連本も発売されるなどして 返礼品競争とも言われている状況です 返礼品の送付は もともとはふるさと納税制度の 枠外の任意の取り組み ということですが これが逆にふるさと納税と返礼品との関係を複雑なものとしています ⑴ふるさと納税制度の創設と背景ふるさと納税は 平成 19 年 5 月の全国知事会での提案のあと 総務省による ふるさと納税研究会 ( 第 1 回から第 9 回 ) での議論を経て 平成 19 年 12 月に与党の平成 20 年度税制改正大綱に盛り込まれました そして翌 平成 20 年 4 月 30 日の地方税法の改正により ふるさと納税制度 が創設されました 現在の住民税は 毎年 1 月 1 日現在で納税者が居住している地方自治体から課税される仕組みです ふるさと納税の誕生には 居住地だけでなく 出生地や育った地域 また住みたいとか好きな地域などにも納税できるようにしようという趣旨があります そこには 現在の地方 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号 9
で生まれ 教育を受けた人材が都会に出て就職し 居住する都会で納税するという社会構造に原因があります 都会の地方団体は税収を得るが ふるさとの地方団体には税収がないという現実です これが地方だけでなく 国全体の発展を阻害し 生涯を通じた行政サービスと税負担をバランスさせる新しい税制が求められるとしています 都会の税収増と地方の税収減の是正という背景も見えます ⑵ふるさと納税の理念総務省は ふるさと納税 の理念について自己のウエブサイト ふるさと納税ポータルサイトにおいて ふるさと納税で 地方創生 ふるさと納税で日本を元気に! として その三つの意義を謳っています それによりますと以下の通りです 第一に 納税者が寄附先を選択する制度であり 選択するからこそ その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること それは 税に対する意識が高まり 納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります 第二に 生まれ故郷はもちろん お世話になった地域に これから応援したい地域へも力になれる制度であること それは 人を育て 自然を守る 地方の環境を育む支援になります 第三に 自治体が国民に取組みをアピールすることでふるさと納税を呼びかけ 自治体間の競争が進むこと それは 選んでもらうに相応しい 地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります ( 注 : ゴシック体 太字部分は当該ウエブサイトの通りとしています ) さらに ふるさと納税は 納税者と自治体が お互いの成長を高める新しい関係を築いていく 自治体と納税者の両者が共に高め合う関係 であることに触れ これを利用しての国民 一人ひとりの貢献により 地方を変え よりよい未来をつくること そして全国の様々な地域に活力が生まれることを期待することで ふるさと納税の理念についての項を締めくくっています ⑶ふるさと納税の仕組みふるさと納税と寄附控除についての仕組みは 図表 1と2を参照してください 1 年間のふるさと納税の寄附金額から 利用料 と言うべき自己負担額 2,000 円を引いた額を 控除限度額の範囲内で所得税と住民税から全額控除してもらえます ただしこれには 確定申告が必要で 所得税は寄附した年の納税額から還付され 個人住民税は翌年度の6 月以降に納付する分から控除されるというものです その後 平成 27 年 1 月から 同様に自己負担額 2,000 円で寄附できる上限額が拡大されました また従来は確定申告が求められていましたが 同年 4 月から ふるさと納税ワンストップ特例制度 が導入されました この特例制度は 年間 5 団体以下の寄附金の実行であれば 確定申告をせずに控除が受けられる制度です ただ この特例制度を利用した場合 所得税からの控除は行われません その分を含めた控除額の全額が 翌年度の住民税から控除されることになりました 年収 2,000 万円以下の給与所得者などは この制度を利用することにより 確定申告という手間が省けることになりました ただ特例制度を利用することにより 従来の確 10 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号
FOCUS 地域 & 経済 図表 1 ふるさと納税の手続き ふるさと納税の手続き ( ) ふるさと納税 ふるさと納税を った方 受 ふるさと納税先の自治体 受 ふるさと納税を った年 の 税から控除 ふるさと納税を った 年度 の 住民税から控除 ( 額 ) 税 の 住 地市 ( 出所 : 総務省等の関連資料より当研究所作成 ) 図表 2 ふるさと納税の寄附控除 税からの控除 税からの控除 ふるさと納税を った年の 税からの控除 税からの控除 ふるさと納税 ( 寄附金 ) 控除額 住民税からの控除 住民税からの控除 ふるさと納税を った 年度の住民税からの控除 住民税からの控除 ( 本 ) 住民税からの控除 ( 例 ) 自 額 2 000 ( 出所 : 総務省等の関連資料より当研究所作成 ) 定申告をすれば 所得税からの控除が受けられ 住んでいる自治体の負担も小さくなっていたわけですが 特例 によって 確定申告をしないためすべての控除額が住民税 ( 国税である所得税から地方税へ ) からとなり 結果として寄附者の住んでいる自治体への住民税収はいっそう減少となってしまうことになりました ⑷ふるさと納税の節税効果ふるさと納税は 控除を受けられる寄附金には限度額が設けられています 図表 3は ふるさと納税額の目安一覧 ( 平成 27 年以降 ) のように自己負担額の 2,000 円を除いた全額が所得税 ( 復興特別所得税を含む ) 及び個人住民税から控除されます これは寄附者の年収 家族構成などによって異なります ( 図表 3に一部の給与収入に対する例を紹介しました ) ただ 例えば年収 300 万円独身の限度額が28,000 円であるのに対して 年収 1,000 万円独身は176,000 円 年収 2,000 万円独身は何と560,000 円と限度額は大きくアップします これは ふるさと納税額が所得税と住民税から控除されるという特性から 高額所得者ほど控除限度額が大きくなり 返礼品の受け取りによって発生する経済的利益も多くなることになります 返礼品が豪華になればなるほど富裕層にとっての節税効果が高まり 結果として 金持ち優遇 制度となってしまっています 控除限度額は 発足当時は 個人住民税の1 割程度 でありましたが 平成 27 年 1 月の制度改正で 約 2 割と倍増されました これによって収入の違いによる控除限度額の格差もさらに ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号 11
図表 3 全額控除される ふるさと納税額 ( 年間上限 ) の目安 ( 一部の例 ) ( 単位 : 円 ) ふるさと納税を ふるさと納税を行う家族構成の例 行う人 ( 本人 ) 独身又は 夫婦 2 又は共働共働き+ 子 1 人 夫婦 + 子 1 人 共働き+ 子 2 人 夫婦 + 子 2 人 の給与収入 共働き1 き+ 子 1 人 ( 大学生 3) ( 高校生 3) ( 大学生と高校生 )( 大学生と高校生 ) 300 万円 28,000 19,000 15,000 11,000 7,000 500 万円 61,000 49,000 44,000 40,000 36,000 28,000 700 万円 108,000 86,000 83,000 78,000 75,000 66,000 1,000 万円 176,000 166,000 163,000 157,000 153,000 144,000 1,200 万円 239,000 229,000 226,000 219,000 206,000 197,000 1,500 万円 386,000 374,000 370,000 362,000 358,000 346,000 2,000 万円 560,000 548,000 544,000 537,000 532,000 521,000 2,500 万円 845,000 831,000 826,000 818,000 813,000 800,000 ( 出所 : ふるさと納税ポータルサイト ( 総務省 ) より当研究所作成 ) 1 共働き は ふるさと納税を行う本人が配偶者 ( 特別 ) 控除の適用を受けていないケースを指す ( 配偶者の給与収入が 141 万円以上の場合 ) 2 夫婦 は ふるさと納税を行う人が配偶者に収入がないケースを指します 3 高校生 は 16 歳から 18 歳の扶養親族 大学生 は 19 歳から 22 歳の特定扶養親族 を指します 中学生以下 の子供は ( 控除額に影響がないため ) 計算に入れる必要はありません 広がったと言えます 政府としては ふるさと創生の観点から そうしたのかと判断できます しかしながら いろいろな社会的局面で いわゆる格差が問題視されている昨今 新たな格差が出現したと取る向きも 少なからずいるものと思います 2 数字で見るふるさと納税の実態 ⑴ 納税額と件数の実態 ( 全国 ) ふるさと納税の実態について グラフや表を使って 考察しましょう 図表 4は 全国レベルでのふるさと納税の金額と件数の推移を見たものです 初年度となった平成 20 年度は 件数が53.6 千件 金額が81.3 億円となりました 平成 22 年度までは 件数 金額ともにほぼ横ばいで推移していたことがわかります 平成 23 年には 東日本大震災の復興支援をきっかけに増加したと言われています 東日本大震災の後に 被災地の復興支援をふるさと納税を利用しよう という動きも手伝って 23 年度の利用件数で100. 1 千件となり 金額も約 121.5 億円と100 億円の大台を超えたのです しかしながら その後は受入れ額が減少するなど 伸び悩んでいました その後 平成 26 年度からそれまでの水準を大きく上回る件数 受入れ額の急増を見ることになります その理由については 経年による制度の認知度向上がありますが 大きな要因としては ふるさと納税に伴い自治体が実施している返礼品について 多くの自治体がその品目やサービス内容をアピールするようになり これがマスメディアを通して多くの国民の知るところとなったことが一つ目としてあげられます やや行き過ぎも指摘されていまして この点については後ほど触れたいと思います 二つ目として 先ほど触れましたふるさと納税の制度改正が挙げられます 枠が約 2 倍に拡大されたことと ふるさと納税ワンストップ特例制度 が創られ ふるさと納税に関する確定申告が不要となる手続きの簡素化が図られたことが挙げられます 以上の要件が奏功し データが公表されている平成 27 年 4 月 ~9 月までの半年では 件数で約 2,274.9 千件 金額で453.5 億円と 半年間で前年度実績を上回る実績を残している 12 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号
FOCUS 地域 & 経済 図表 4 ふるさと納税の推移 ( 全国 ) 金額 ( 億円 ) 件数 ( 千件 ) 500 金額件数 450 400 2400 2200 2000 1800 350 300 250 200 150 1600 1400 1200 1000 800 600 100 50 0 400 200 0 平成 20 年度 平成 21 年度 平成 22 年度 平成 23 年度 平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度 平成 27 年度 注 : 平成 27 年度は4 月 ~9 月まで半年間の数値 のです またこのふるさと納税の急増について 総務省が実施した ふるさと納税に関する現況調査結果 ( 平成 27 年 10 月 23 日公表 ) によりますと 調査に回答した732 団体 (41%) で 返礼品の充実 をあげ 287 団体 (16%) で 収納環境整備 をあげています ちなみ収納環境の整備とは クレジットでの納付や電子申請の受付などの手続きの簡素化 利便性の向上を意味しています 図表 5は 都道府県別のふるさと納税の受入れ額と受入れ件数を見たものです ランキングのグラフ等に置き換えることはしませんが 受入れ額の上位の都道府県を見てみますと 最も多いのが北海道で147.5 億円と頭一つ抜けています 次いで東京都が103.3 億円で続いています 以下 山形県 (87.2 億円 ) 長野県 (76.0 億円 ) 宮崎県 (63.8 億円 ) など兵庫県 岩手県や鳥取県まで8 都県が50 億円以上の受入れ額を記録しています また下位の方では 大分県が9.0 億円 青森県が8.8 億円と10 億円に達していない県が最下位の富山県 (5.2 億円 ) まで7 県あります ちなみに最上位の北海道と最下位の富山県とは ざっと30 倍の違いがあります 次に受入れ件数についてみますと 当然のことながら受入れ額が上位の道府県が多く顔を出しているわけですが 最も多いのが北海道で60. 4 万件 次いで山形県の53.1 万件と この上位 2 道県が50 万件を超えています 以下 宮崎県の38.4 万件 鳥取県の36.2 万件と続き 長野県 (29.6 万件 ) 愛媛県 (23.3 万件 ) までの上位 6 道県が20 万件以上となっています その後鳥取県や佐賀県など10 府県で10 万件を超えています 少ない方では 福井県が1 万件に達せず9,584 件で最も少なく また1 万件台に受け入れ額が第 2 位だった東京都 (1.3 万件 ) など富山県 京都府 徳島県 香川県や沖縄県となっています 受入れ額と受入れ件数の関係を見ると 東京都が受入額第 2 位の103.3 億円ながら 受入れ件数が43 位の13,357 件となっており 興味深いところです 単純計算ですと 東京都内の各自治体 ( 東京都も1 自治体 ) 受入れ額が1 件につき 平均 76.1 万円とかなりの高額 ( ちなみに北海道は1 件当り2.4 万円 ) であることがわかります また愛媛県は受け入れ金額が18.9 億円 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号 13
都道府県名 金額 件数 北 海 道 14,751,912 604,336 青 森 県 882,643 24,523 岩 手 県 5,558,064 82,718 宮 城 県 2,867,569 66,556 秋 田 県 1,229,935 54,466 山 形 県 8,721,543 530,637 福 島 県 3,581,379 48,118 茨 城 県 2,150,978 102,116 栃 木 県 1,484,762 20,240 群 馬 県 2,486,505 45,059 埼 玉 県 1,604,332 52,208 千 葉 県 2,602,237 49,704 東 京 都 10,333,019 13,577 神奈川県 3,445,151 35,933 新 潟 県 2,054,438 66,786 富 山 県 518,136 10,253 石 川 県 771,473 22,199 福 井 県 743,046 9,584 山 梨 県 1,553,975 79,428 長 野 県 7,597,762 295,812 岐 阜 県 2,281,247 74,173 静 岡 県 3,626,559 167,289 愛 知 県 2,537,100 112,610 図表 5 都道府県別ふるさと納税額と件数 ( 平成 20 年度 ~ 27 年度上期 ) ( 単位 : 千円 ) 都道府県名 金額 件数 三 重 県 1,924,254 88,748 滋 賀 県 1,128,177 33,341 京 都 府 1,546,828 18,932 大 阪 府 4,743,811 110,143 兵 庫 県 6,057,064 172,458 奈 良 県 1,009,054 37,156 和歌山県 1,358,703 57,575 鳥 取 県 5,467,377 362,362 島 根 県 3,349,134 199,719 岡 山 県 2,798,303 95,683 広 島 県 2,217,359 29,879 山 口 県 1,229,910 64,775 徳 島 県 739,164 13,592 香 川 県 584,975 12,294 愛 媛 県 1,894,540 232,752 高 知 県 2,138,112 125,504 福 岡 県 3,231,443 101,422 佐 賀 県 4,524,769 175,943 長 崎 県 4,123,951 116,962 熊 本 県 1,098,805 33,417 大 分 県 905,469 31,449 宮 崎 県 6,368,621 383,997 鹿児島県 3,007,041 91,429 沖 縄 県 999,485 13,338 ( 出所 : 総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果 ( 平成 27 年 10 月 23 日 ) より当研究所作成 ) とランキング29 位ながら受入れ件数が6 位と健闘しています 最後に我が埼玉県はと 見ますと受入れ金額が16.0 億円で先ほどの愛媛県についで30 位 受入れ件数は5.2 万件 28 位となっています ⑵ 埼玉県内の実態県内では鶴ヶ島市が受け入れ件数 金額ともにトップでは 次に埼玉県内の市町村について見てみましょう 図表 6は さきほどの都道府県と同様に埼玉県及び県内市町村のふるさと納税の受入れ件数と受入れ額を見たものです 受入れ件数が最も多いのが鶴ヶ島市の14,310 件 次いで宮代町が11,071 件と この2 市町のみが1 万件を超えています 以下 幸手市の9,973 件 羽生市の3,852 件が続き 大きく離れて埼玉県が1,805 白岡市 1,581 件 美里町 1,211 件と7つの自治体で1,000 件を超えています 受入れ額でも鶴ヶ島市が2.5 億円とトップで 次いで所沢市が1.3 億円 宮代町の1.2 億円 幸手市と蕨市の1.1 億円と上位 5 市で1 億円を超えています 上位に顔をだしている市にヒアリングをした結果 鶴ヶ島市では クレジットカードでの決済機能に加え ドコモの携帯電話による寄附ができるシステムなど利便性に加え 市内業者による鉄道模型の返礼品が人気となっていることが要因と分析しています 宮代町では初期の平成 20 年度から地道に取り組み ニュースレターなどによりきめ細かくリピーターにサービスを続けてきた結果と見ています また返礼品では 米や巨峰などの農産物やアミューズメント施設のチケットが人気であるとしています 幸手町では 返礼品は米の1 種類でありますが 宮 14 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号
FOCUS 地域 & 経済 図表 6 埼玉県内のふるさと納税の件数 金額上位 20 自治体 順 位 自治体名 件 数 1 鶴ヶ島市 14,310 2 宮 代 町 11,071 3 幸 手 市 9,973 4 羽 生 市 3,582 5 埼 玉 県 1,805 6 白 岡 市 1,583 7 美 里 町 1,211 8 深 谷 市 920 9 富士見市 698 10 久 喜 市 673 11 坂 戸 市 640 12 伊 奈 町 514 13 鴻 巣 市 486 14 草 加 市 397 15 日 高 市 353 16 さいたま市 307 17 川 口 市 289 18 蓮 田 市 262 19 熊 谷 市 188 20 入 間 市 182 県 全 体 52,208 ( 出所 : 総務省ふるさと納税ポータルサイトより当研究所作成 ) ( 平成 20 年度 ~ 27 年度上半期 ) ( 単位 : 千円 ) 順位 自治体名 金額 1 鶴ヶ島市 250,054 2 所 沢 市 125,340 3 宮 代 町 123,295 4 幸 手 市 112,721 5 蕨 市 112,529 6 埼 玉 県 92,725 7 春日部市 63,054 8 戸 田 市 51,872 9 新 座 市 47,571 10 羽 生 市 42,080 11 深 谷 市 40,205 12 川 口 市 38,302 13 川 越 市 37,138 14 美 里 町 34,935 15 さいたま市 34,244 16 本 庄 市 33,219 17 越 谷 市 27,334 18 白 岡 市 22,317 19 入 間 市 21,673 20 日 高 市 21,208 県全体 1,604,332 代町同様にリピーター向けに継続的な取り組みが奏功しているとしています 所沢市では居住者の一人から1 億円の寄附が大きく押し上げています 3 寄附者から見たふるさと納税の実態 これまでは ふるさと納税を受け入れる側 ( 寄附金を受けた自治体 ) から これまでの動向を見て来ました 次に視点を変えてふるさと納税の寄附者 ( 居住する都道府県 ) 別の動向について見たいと思います ⑴ 寄附者には三大都市圏の住民が多い図表 7は 平成 20 年から26 年までに ふるさと納税の寄附者を居住地の都道府県別に上位 20 都道府県を 図表 8は その人たちの行った寄附金の合計額の上位 20 都道府県について表してあります 居住地都道府県別に見たふるさと納税を行った人たちの数は 最も多いのが東京都で29 万 7 千人 次いで神奈川県の16.4 千人 大阪府の12.8 千人と以上が10 万人以上です 以下は 愛知県 千葉県 埼玉県 兵庫県と北海道と続き 北海動までの9 都道府県で寄附者が5 万人を超えていることがわかります 次に実際のところいくら寄附をしているのか 金額ベースで見ますと 東京都 ( 都民 ) が 416.8 億円と2 位の神奈川県の127.3 億円の3 倍を超える金額です 3 位の大阪府までが100 億円を超えています 以下 愛知県の91.4 億円 千葉県が72.3 億円 北海道 64.8 億円 埼玉県の62.8 億円 そして兵庫県 61.8 億円までが50 億円を超えていることがわかります 当然 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号 15
ふるさと納税 ( 寄附 ) に係る寄附金控除の適用状況 ( 平成 20 年 ~ 26 年都道府県別上位 20) 図表 7 適用者数図表 8 寄附金額 ( 単位 : 億円 ) 図表 9 住民税控除額 ( 単位 : 億円 ) 順位 都道府県名 人数 1 東京都 296,678 2 神奈川県 163,959 3 大阪府 127,557 4 愛知県 94,946 5 千葉県 90,032 6 埼玉県 88,385 7 兵庫県 72,769 8 北海道 56,272 9 福岡県 42,902 10 広島県 38,947 11 京都府 34,868 12 静岡県 31,919 13 岐阜県 22,072 14 茨城県 21,957 15 奈良県 21,103 16 長野県 19,354 17 三重県 19,273 18 岡山県 17,120 19 滋賀県 16,163 20 群馬県 15,762 * 寄附者の居住する都道府県別に集計した 順位 都道府県名 金額 1 東京都 416.8 2 神奈川県 127.3 3 大阪府 110.4 4 愛知県 91.4 5 千葉県 72.3 6 北海道 64.8 7 埼玉県 62.8 8 兵庫県 61.8 9 福岡県 44.7 10 静岡県 31.5 11 京都府 30.4 12 広島県 23.4 13 岐阜県 21.3 14 茨城県 18.8 15 長野県 16.7 16 宮城県 16.3 17 新潟県 16.1 18 群馬県 15.9 19 奈良県 15.7 20 滋賀県 14.8 * 寄附金控除の申告があった寄附金を集計した 順位 都道府県名 金額 1 東京都 151.7 2 神奈川県 52.6 3 大阪府 46.3 4 愛知県 34.1 5 千葉県 30.0 6 埼玉県 27.6 7 兵庫県 26.6 8 北海道 19.1 9 福岡県 15.3 10 京都府 12.3 11 静岡県 10.8 12 広島県 9.7 13 岐阜県 7.2 14 茨城県 7.1 15 奈良県 7.1 16 宮城県 6.1 17 群馬県 5.9 18 長野県 5.7 19 三重県 5.6 20 滋賀県 5.4 * 寄附者の居住する都道府県別に集計した * 寄附金控除の申告があった寄附金を集計した ( 資料 : 総務省ふるさと納税ポータルサイトより当研究所作成 ) のごとく寄附者の人数が多い都道府県が 寄附金額も多いという結果となりましたが 上位に顔を出している自治体は首都圏を始め いわゆる三大都市圏の自治体となっています ちなみに首都圏 ( 東京都 神奈川県 埼玉県 千葉県 ) の一都三県を合計しますと 寄附者の人数が 63.9 万人で全体の42.1% 寄附金額が679.1 億円で全体 1,467.5 億円の実に46.7% を占めています 4 都県で 47 都道府県分の半分に近い数値をあげています 地域別には 人口分布が大きいとは言え 一都三県に大きく偏っていることがわかります ⑵ 住民税控除額も巨額ふるさと納税の寄附者は 居住地の住民税 ( 都道府県民税と市町村民税 ) が控除されることになります ここでは平成 20 ~ 26 年度の寄附金控除の申告があった寄附金を居住地の都道府県別に集計しました 住民税控除額の最も大きいのは 東京都の151.7 億円 次いで神奈川県の52.6 億円 大阪府の46.3 億円 愛知県 34.1 億円 千葉県 30.0 億円と上位 5 都県で30 億円を超えています 埼玉県は27.6 億円で第 6 位となっています 静岡県までの上位 11 都道府県が 10 億円以上となっていることがわかります 住民税控除額は 寄附者の居住している都道府県や市区町村から見れば 本来は入ってくるべき税金ですが ふるさと納税によって入って来なくなっている金額の総計であると言えます ( 注 : 地方交付税を受けている自治体は75% が国から地方交付税の増額によって補填されます ) ( 以下 次号に続く ) 16 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号