家庭生ごみ 堆肥化 飼料化 バイオプラスチック化 水素化 炭化 固形燃料化 流体燃料化 ( メタン エタノール ) 3 廃食用油廃食用飼料化 BDF 化 4 木質系 5 汚泥系 製材廃材 建設廃材 剪定枝 堆肥化 木質材料化 堆肥化 木質材料化 堆肥化 飼料化 ボイラー発電 ( 薪 チップ ペレット

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第 3 章隠岐の島町のエネルギー需要構造 1 エネルギーの消費量の状況 ここでは 隠岐の島町におけるエネルギー消費量を調査します なお 算出方法は資料編第 5 章に詳しく述べます (1) 調査対象 町内のエネルギー消費量は 電気 ガス 燃料油 ( ガソリン 軽油 灯油 重油 ) 新エ ネルギー (

ツールへのデータ入力前にすべきこと 一般廃棄物処理に係るフロー図を作成 < 収集 : 直営 > < 直接搬入 > 粗大ごみ **t <A 破砕施設 : 直営 > <D 最終処分場 > 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 燃やすごみ **t アルミ缶 **t スチール缶 **t びん

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

教務厚生常任委員会行政視察報告書 1. 視察期間 平成 26 年 10 月 14 日 ( 火 ) から 10 月 16 日 ( 木 ) まで 2. 視察事項 ( 視察地 ) 及び選定理由 (1) 幼保一体化施設 コロポックルの森 について ( 北海道登別市 ) 登別市では 新たに建設する市立保育所を

福井県建設リサイクルガイドライン 第 1. 目的資源の有効な利用の確保および建設副産物の適正な処理を図るためには 建設資材の開発 製造から土木構造物や建築物等の設計 建設資材の選択 分別解体等を含む建設工事の施工 建設廃棄物の廃棄等に至る各段階において 建設副産物の排出の抑制 建設資材の再使用および

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バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

資料4 国土交通省資料

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24 ごみ減量分野様式 2 ごみゼロをめざすまち 分野目標 1 ごみゼロ都市 なかの を実現するために 区民 事業者 区が連携して3Rの取組みを進め ごみの排出量が減少するまちをめざす 2 循環型社会を実現するために 資源の再使用 再生利用などの資源の有効利用が広がっているまちをめざす 成果指標 区

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参考資料2 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2016年

はじめに

目 次 1 計画策定の意義 1 2 基本的方向 2 3 計画期間 2 4 対象品目 各年度における容器包装廃棄物の排出量の見込み 4 6 容器包装廃棄物の排出の抑制の促進するための方策に 関する事項 5 7 分別収集をするものとした容器包装廃棄物の種類及び当該容器 包装廃棄物の収集に係る

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周南市版地域ケア会議 運用マニュアル 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議は 地域包括支援センターまたは市町村が主催し 設置 運営する 行政職員をはじめ 地域の関係者から構成される会議体 と定義されています 地域ケア会議の構成員は 会議の目的に応じ 行政職員 センター職員 介護支援専門員 介護サービ

1 プロジェクト実施者の情報 1.1 プロジェクト実施者 ( 複数のプロジェクト実施者がいる場合は代表実施者 ) ( フリガナ ) エンジニアウッドミヤザキジギョウ実施者名キョウドウクミアイエンジニアウッド宮崎事業協同組合住所 宮崎県都城市吉尾町 プロジェクト代

日本機械学会 生産システム部門研究発表講演会 2015 資料

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資料 3 1 ごみ減量化についての課題分析 1) 原因の抽出 課題 : どうして 家庭ごみの排出量が減らないのか? ごみが 減らな い原因 1 使い捨て製品やすぐにごみになるものが身の回りに多い 2ごみを減らしたり リサイクルについての情報が少ない 3 分別収集しているごみの品目が少なく 資源化が十

産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項 ( 管理体制図 ) ゼロエミッション推進体制 ( 第 2 面 ) 滋賀水口工場長 定期会議事務局会議 1 回 /W 担当者会議 1 回 /M 推進報告会 1 回 /2M 推進責任者 : 工務安全環境部長 実行責任者 : 安全環境課長 事務局 中間膜製造部機

答申

平成 29 年 7 月 地域別木質チップ市場価格 ( 平成 29 年 4 月時点 ) 北東北 -2.7~ ~1.7 南東北 -0.8~ ~ ~1.0 変動なし 北関東 1.0~ ~ ~1.8 変化なし 中関東 6.5~ ~2.8

目 次. 計画策定の意義 2. 基本的方針 3. 計画期間 4. 対象品目 5. 各年度における容器包装廃棄物の排出量見込み ( 第 8 条第 2 項第 号 ) 2 6. 容器包装廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項 ( 第 8 条第 2 項第 2 号 ) 3 7. 分別収集をするものとした容

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1. 実施事業ごとにみた検証 検討 再構築にあたっては ごみ処理基本計画 ( 中間見直し ) に記載される実施事業ごとに実効性等を踏まえ (1) スケジュールの修正を要する実施事業 (2) 達成状況により目標値を改める実施事業 (3) 新たに取り組む実施事業 の 3 つに分け検証等を行いました (1

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畜産環境情報 < 第 63 号 > 1. 畜産の汚水から窒素を除去するということはどういうことか 2. 家畜排せつ物のエネルギー高度利用 南国興産を例に 3. 岡山県の畜産と畜産環境対策 4. 兵庫県の畜産と畜産環境対策について

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(1) 住民は有料化をどう考えているか 循環型社会の形成に関する世論調査 ( 内閣府平成 13 年 ) ごみ問題にどの程度関心があるか 非常に関心がある (32) ある程度関心がある (58) あまり関心がない (8) まったく関心がない わからない (2) ごみの有料化 に対してどのように思うか

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目標を達成するための指標 第 4 章計画における環境施策 一般廃棄物焼却量 ( 家庭 事業所 ) ごみ 資源物の総排出量 平成 27 年度 (2015 年度 ) までに平成 15 年度 (2003 年度 ) に比べ 30% 削減平成 27 年度 (2015 年度 ) までに平成 15 年度 (200

併せて 先進事例を統一的なフォーマットでデータベース化する また 意欲ある地域が先進的な取組みを行った人材に 目的に応じて容易に相談できるよう 内閣官房において 各省の人材システムを再点検し 総合的なコンシェルジュ機能を強化する 各種の既存施策に加え 当面 今通常国会に提出を予定している 都市再生法

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資料2 再生利用対象製品の追加について

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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(1) 当該団体が法人格を有しているか 又は法人格のない任意の団体のうち次の1~2の要件を全て満たすもの 1 代表者の定めがあること 2 団体としての意思決定の方法 事務処理及び会計処理の方法 並びに責任者等を明確にした規約その他の規定が定められていること (2) 関係市町村との協議体制を構築してい

資料 3 ー 1 環境貢献型商品開発 販売促進支援事業 環境省市場メカニズム室

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資料 4 平成 26 年報告書に提言された取組のうち 回収率目標達成アクションプラン以外の取組状況について 平成 29 年 12 月 4 日 経 済 産 業 省 環 境 省

渡良瀬遊水地のヨシ等利活用再生可能エネルギー導入計画 概要版 本業務は 渡良瀬遊水地のヨシをはじめ市内で排出される各種バイオマスを活用することにより い かなるエネルギー利用が可能になるのか その方向性と具体的な燃焼設備導入のモデルケースを想定す るとともに これによる地域活性化の可能性を検討した

大規模災害等に備えたバックアップや通信回線の考慮 庁舎内への保存等の構成について示すこと 1.5. 事業継続 事業者もしくは構成企業 製品製造元等の破綻等により サービスの継続が困難となった場合において それぞれのパターン毎に 具体的な対策を示すこと 事業者の破綻時には第三者へサービスの提供を引き継

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常磐町内会説明会 会議要旨

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計画の策定にあたって 本計画は 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第 6 条第 1 項の規定される網走市における一般廃棄物処理に関する基本計画です 網走市では 平成 4 年に策定した基本計画に基づき ごみの減量化の推進 リサイクルセンターや最終処分場を整備するとともに 平成 16 年度にはごみ処理の

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B.2 モニタリング実績 (1) 活動量 ( 燃料消費量 生成熱量 生産量等 ) 記号 モニタリング項目 定義 単位 分類 1 モニタリング方法 概要 頻度 実績値 モニタリング実績 計測対象期間 ( 年月日 ~ 年月日 ) 備考 F PJ,biosolid プロジェクト実施後のバイオマス固形燃料使

様式第二号の十四 ( 第八条の十七の三関係 )( 第 1 面 ) 特別管理産業廃棄物処理計画実施状況報告書 平成 30 年 7 月 20 日 広島県知事 様 提出者 住所 氏名 広島県安芸高田市甲田町下甲立 1624 湧永製薬株式会社広島事業所 代表取締役 湧永寛仁 電話番号

これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

農山性化1 農山漁村の 6 次産業化の考え方 雇用と所得を確保し 若者や子供も集落に定住できる社会を構築するため 農林漁業生産と加工 販売の一体化や 地域資源を活用した新たな産業の創出を促進するなど 農山漁村の 6 次産業化を推進 現 状 農山漁村に由来する様々な地域資源 マーケットの拡大を図りつつ

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社会通信教育に関する実態調査 報告書

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取組みの背景 これまでの流れ 平成 27 年 6 月 日本再興戦略 改訂 2015 の閣議決定 ( 訪日外国人からの 日本の Wi-Fi サービスは使い難い との声を受け ) 戦略市場創造プラン における新たに講ずべき具体的施策として 事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化 が盛り込まれる 平成 2

資料 2-2 成長戦略改訂に向けた地域活性化の取組みについて ( 案 ) 内閣官房地域活性化統合事務局 成長戦略の改訂に向け これまでの施策の成果が実感できない地方において 新たな活力ある地域づくりと地域産業の成長のためのビジョンを提供しその具体化を図る 超高齢化 人口減少社会における持続可能な都市

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〔表紙〕

新ごみ処理施設の整備に向けた 施設整備の基本方針 資料 施設整備の基本方針 ( 案 ) (1) 施設整備の目的泉佐野市田尻町清掃施設組合 ( 以下 本組合 という ) 及び熊取町では 泉佐野市 田尻町及び熊取町から発生する一般廃棄物 ( ごみ及びし尿処理汚泥 ) を泉佐野市田尻町清掃施

RIETI Highlight Vol.66

図 12 HACCP の導入状況 ( 販売金額規模別 ) < 食品販売金額規模別 > 5,000 万円未満 ,000 万円 ~1 億円未満 億円 ~3 億円未満

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スライド 1

4 事業化プロジェクト 既存施設改造 乳牛 豚ふん尿食品残渣 肉牛ふん尿 液分 固液分離機固形分 固形分 ガスホルダ- 500m 3 500m 3 バイオガスメタン発酵槽廃熱 2,100m 3 600m 3 消化液 堆肥製造設備堆肥舎固形燃料製造設備 発電機 80kW 70kW 25kW 3 台 滅

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

1

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

【HP公表 最終版の公表前確認修正有り】 北陸取組み(個票)

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

12年~16年

資料2 食品廃棄物系バイオマスのエネルギー利用システムについて

家庭ごみ有料化制度の 導入是非の検討について


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記 1. 適用対象本通知は 製造販売業者等が GPSP 省令第 2 条第 3 項に規定する DB 事業者が提供する同条第 2 項に規定する医療情報データベースを用いて同条第 1 項第 2 号に規定する製造販売後データベース調査を実施し 医薬品の再審査等の申請資料を作成する場合に適用する GPSP 省

1 平成 22 年度の取組み結果 平成 22 年度の取り組み結果は 下記のとおりです 温室効果ガスの総排出量 平成 22 年度 温室効果ガス総排出量 (t-co2) 26,876 27, % 具体的取り組み 平成 22 年度 電気使用量 (kwh) 37,334,706 38,665,4

社会学部紀要 3号/5.新野

1 貴重な自然環境を継承するため 保全活動に取り組みます 指標目標の推移 指標目標 米代川やきみまち阪 風の松原などの豊かな自然を他に誇れると思う市民の割合 ( 市民意識調査 ) 松くい虫被害量 計画策定目標値 H20 年度 H21 年度 H22 年度 H23 年度 H24 年度 H19 年度 (H

2 マンション管理業界の課題マンション管理業界の課題理事会理事会理事会理事会とのとのとのとのコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーション管理員管理員管理員管理員とのとのとのとのコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーション学習学習学習学習 研磨研

卵及び卵製品の高度化基準

様式第二号の二(第八条の四の四関係)

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概要:プラスチック製容器包装再商品化手法およびエネルギーリカバリーの環境負荷評価(LCA)

Ⅰ 家庭ごみ有料化の目的                                                         

県内事例 県内事例 10 事 例 稲わらを活用した堆肥の製造 事業主体 藤崎町 運営 藤崎町稲わら利用組合 所在地 バイオマス資源 稲わら 鶏糞 籾殻 利活用方法 堆肥化 事業 青森県南津軽郡藤崎町大字西豊田 1-1 稲わらに発酵鶏糞と籾殻を混ぜて堆肥を製造し 町内の野菜畑やりんご

食品廃棄をめぐる現状

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第 3 章廃棄物系バイオマス利活用のための処方箋の作成 本章における今年度の研究内容 廃棄物系バイオマス利活用の実態を診断し その診断書を基に改善点を抽出した処方箋を作成するための診断フローを試案し いくつかの日本国内の事例について検証した 1. はじめに 社会的に廃棄物系バイオマスの利活用を推進する目的には 大きく分けて以下の 5 つが挙げられる 1) 地球温暖化防止 : 地球温暖化の要因である二酸化炭素排出量の抑制 2) 循環型社会形成 : 資源の使い捨て社会から循環利用 (3R) 社会への移行 3) 戦略的産業育成 : 多様な産業の連携による新産業の育成や新素材等の開発 4) 農山漁村活性化 : 地域雇用の創出 資源の新たな価値創造 地域経済の活性化 5) 廃棄物の処理処分の代替 : 処理処分施設が無いため 処理処分の一つの方法として再生可能でカーボンニュートラルなバイオマスの利活用は 地球環境問題解決の糸口となるだけでなく エネルギー供給の多様化や 新たな産業 雇用の創出 新たな資源価値の創造によって 農山漁村の活性化に寄与することが期待される 特に人の生活に伴って発生する廃棄物系バイオマスは 廃棄物の適正処理の面からも積極的な利活用が推進されるべきである一方で 様々な制約によって利用が促進されていないケースが見受けられる 全国の 318 か所のバイオマスタウンでも 地域社会の中で廃棄物系バイオマスの循環がすすみ 関連施設が持続的に稼働している成功と見なせる自治体は決して多くないことが昨年の研究成果から明らかとなった 2. 対象とする廃棄物系バイオマスの種類 この研究で対象とする廃棄物系バイオマスは 1 家畜排せつ物 2 食品工場残渣 水産廃棄物 家庭生ごみ 3 廃食用油 4 製材残材 建設発生木材 剪定枝および刈草 5 下水汚泥等とした 5つの廃棄物系バイオマスの現在の利活用方法を表 3-1 に示す 表 3-1 廃棄物系バイオマスの分類と典型的な利活用方法 分類 1 家畜排せつ物 2 生ごみ等 対象材料 マテリアル利用 利用形態 エネルギー利用 家畜排せつ物堆肥化炭化 メタン発酵 食品加工残渣 水産廃棄物残渣 堆肥化 飼料化 バイオプラスチック化 堆肥化 飼料化 バイオプラスチック化 水素化 炭化 固形燃料化 流体燃料化 ( メタン エタノール ) 水素化 炭化 固形燃料化 流体燃料化 ( メタン エタノール ) 12

家庭生ごみ 堆肥化 飼料化 バイオプラスチック化 水素化 炭化 固形燃料化 流体燃料化 ( メタン エタノール ) 3 廃食用油廃食用飼料化 BDF 化 4 木質系 5 汚泥系 製材廃材 建設廃材 剪定枝 堆肥化 木質材料化 堆肥化 木質材料化 堆肥化 飼料化 ボイラー発電 ( 薪 チップ ペレット ) ガス化発電 水素化 固形燃料化 液体燃料化 ( メタノール エタノール ) ボイラー発電 ( 薪 チップ ペレット ) ガス化発電 水素化 固形燃料化 液体燃料化 ( メタノール エタノール ) ボイラー発電 ( 薪 チップ ペレット ) ガス化発電 水素化 固形燃料化 液体燃料化 ( メタノール エタノール ) 下水汚泥堆肥化炭化 メタン発酵 し尿堆肥化炭化 メタン発酵 3. 処方箋 の定義 医師によるいわゆる 処方箋 とは ( 医薬品に関する ) 指示 ( 薬の ) 使い方や処方 調合法を示している 一方 広義で 改革 プランなどにかかわる 処方箋 としてみると やり方 策 (~の) 道筋 ( を指す ) 計画案 改善策 ( 経済 ) 蘇生法等の意味で用いられる 廃棄物系バイオマス利活用のための処方箋作りの 処方箋 とは 広義の意味で定義している また 診断において 健康 ( 事業の成功? 継続的な実施?) をどうとらえるかという点に留意する必要がある 参考までに WHO の健康の定義を表 3-2 に挙げる 表 3-2 WHO の健康の定義 WHO の健康の定義 : Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. ( 健康とは 病気でないとか 弱っていないということではなく 肉体的にも 精神的にも そして社会的にも すべてが満たされた状態にあることをいいます ( 日本 WHO 協会訳 )) これをバイオマス利活用にあてはめると 肉体的: バイオマス利活用の具体的な手法が確立している 精神的: その地域でバイオマスを利活用しようという風土が育っている 社会的: 多くの住民がバイオマス利活用に参画している ということで 健康体 の定義には 単にバイオマス利活用のシステムだけの構築だけでなく 精神面で 地域住民のバイオマス資源に対する意識が高い ということも必要ではないかと考えられる 13

4. 処方箋作成の着眼点 日本各地のバイオマスタウンで取り組まれている様々な廃棄物系バイオマス利活用事例を診断し 社会 経済 技術の側面から課題を抽出した処方箋を作成し 成功に導く方策を示すことに重点を置いている 各側面の着眼点は次のとおり i) 技術面 種類 賦存量等バイオマスのマテリアルバランスを踏まえた処理方針 収集 運搬の効率化と最適化( 集約型 分散型等 ) カスケード利用による効率的な資源活用 ii) 経済面 収集 資源化 エネルギー化 流通等に関する補助施策 費用対効果 低コスト手法 地域活性化 地域還元 iii) 社会面 運営手法( 官主導 民営 官民連携 住民参加等 ) 環境負荷低減 雇用創出 環境教育 産業振興 観光促進 5. 処方箋作成までの手法 既存のマニュアル 評価書を参考としながら 具体的に以下のような項目でとりまとめていく 1) 検討手順 ( フロー ): 評価 検討の手順をわかりやすくフロー化する 2) チェック 評価項目 : 対象地域のバイオマス賦存量等の現状に応じて 最適な手法取り組み方法選定の基準 参考事例を整理する 3) 対応例 ( メニュー ): 選定された手法に対し 先進優良事例等を参考にした対応集を作成する 内容は詳細に整理し 取り組みにあたって参考とする事例や技術的手法等を整理する 6. 処方箋作成作業上での留意点 問診票による現状把握 課題抽出 及び診断評価に基づいて作成された処方箋については 画一的なものにならないよう 地域の特性 資源 課題に十分留意し 可能な限り多様な視点からの処方箋 ( 対策 ) を示すこととする アジアへの展開にあたっては 対象地域の気候や土地柄といった環境条件の違いを十分考慮したものとする 従って 日本国内の事例から蓄積された処方箋を海外で活用するのではなく 処方箋作成までの手法をアジアに展開させていく視点を持つこととする 14

7. 処方箋作成までの診断の流れ 処方箋を作成するためには まず廃棄物系バイオマス利活用の現状を把握し ( 問診 ) 調査をまとめた結果 ( 診断書 ) を作成する その結果に基づき課題を解決に導く方策 ( 処方箋 ) を提示する * 処方箋作成までの3ステップにおける取り組み 1 問診票 : 着目する項目の設定 フローに従った漏れのない流れ 分野別検討 2 診断書 :1に対する評価の基準 手法の設定 3 処方箋 :2で 課題あり と診断された項目に対する改善策 やり方の提示 ( 先進事例の取り組みを優良事例としてとりまとめる ) 今年度は 自治体を対象に診断手順の検討を行った 診断システムによる処方箋作成の流れを図 3-1 に示す 図 3-1 処方箋作成に至る診断フロー ( 自治体の例 ) 問診による効果 : バイオマス利活用の流れに沿って 網羅的にチェックすることで 地域の抱える 病状 ( 課題 ) を把握する( 気付く ) ことができ それぞれの課題ごとに治療例を示すことができる 処方箋の効果 : 各地の廃棄物系バイオマスの利活用が円滑に推進される 15

8. 診断フローによる診断から処方箋作成に至るプロセスの検証 本研究の診断フローに従い 問診 診断 処方箋作成に至る一連の流れの中で予想される廃棄物系バイオマスの利活用の課題と解決策について下に記す ケース1: 家庭から出る生ごみの堆肥化事業診断結果から想定される課題 1, 住民協力が得られず家庭生ごみのみの量の確保ができない 2, 臭気問題 3, 市の収集作業員不足のため生ごみ回収が困難 4, 生ごみへの異物の混入が多く 安定した品質の堆肥が生産できない 5, 安定した生産量に対して需要量は季節性があり不安定 6, 販売ルートがなく 事業の採算性がとれない 処方箋で提示可能な解決策の例 ( 優良事例 : 滋賀県甲賀市 ) 背景 : 市の焼却施設の許容量に問題があり 新しいごみの分別回収方法の一つとして家庭生ごみの堆肥化を検討した 1, 分別が簡単で手間がかからないため住民協力が得やすかった 2, 投入した生ごみを種堆肥で覆う独自のやり方を導入した結果 臭気が殆ど気にならない ( 臭気による苦情はない ) 3, 収集運搬を民間に委託しているため市職員の負担はない 4, 生ごみへの異物の混入がもともと少なく 堆肥の販売を目的としていないため 品質のばらつきは問題とならない 5, 生産した堆肥は 生ごみを覆う種堆肥として再利用や ガーデニングの肥料として家庭での利用頻度も高いため安定した需要がある 6, 市民に無料配布しているため事業採算性にこだわりがない 16

ケース2: 家畜排せつ物のメタン発酵事業診断書から想定される課題 1, まとまった量の確保ができない 2, 原材料のばらつきがある ( 水分量 異物の混入など ) 3, 自治体の財政状況から施設の建設が困難 4, 施設の維持管理に問題 5, メタン発酵後に生成する消化液の利用先がない 処方箋で提示可能な解決策の例 ( 優良事例 : 北海道鹿追町 ) 背景 : 家畜排せつ物から出る悪臭による市への不評と 焼却炉から基準値以上のダイオキシンが発生したことからメタン発酵による家畜排せつ物の処理を検討した 1, 周辺の酪農家から安価で家畜排せつ物処理を請け負っているため 安定した量が見込める 2, 契約先の酪農家の家畜の種類と排せつ物の性質を把握しているため原料の質は安定 3, 建設費用を国 (1/2) と北海道 (1/4) からの補助金で賄っているため 町からの持ち出しは少ない ( 全経費の 1/4) 4, 施設の維持管理について10 年間の品質契約をプラントメーカーと結んでいるため 保証期間内は修理には殆ど経費がかからない 5, 消化液の処理を請負った酪農家の所有する牧草地に散布して農地還元している 9. 次年度に向けた処方箋づくり課題 9-1. 問診対象の事業主体と処方箋の提示のありかたの検討全国の自治体によるアンケート調査をどのように進めるか またどの部署にアンケート形式の問診票を送るかにより課題に直面しているかどうかの結果は変わることが予想される 慎重に事前調査をしてから対象相手を選ぶ 加えて 診断する事業主が自治体 民間企業 NPO などでは目標が大きく異なるため 処方箋の作り方ではその点も留意して行う必要がある 17

9-2. 処方箋作成の基となる解決策のデータベース化処方箋を作成するにあたり 今年度は 2 つの優良事例 ( 滋賀県甲賀市 北海道鹿追町 ) から問題解決のポイントを得たが より様々な課題の解決に対応するため 多くの優良事例から解決のポイントを抽出しデータベース化する必要がある 対象とする廃棄物系バイオマス 5 種類 ( 家畜排せつ物 食品工場残渣 水産廃棄物 家庭生ごみ 廃食用油 製材残材 建設発生木材 剪定枝および刈草 下水汚泥等 ) について また事業主体について利活用に繋がる成功ポイント集を作成し 其々組織の実情に適した実行可能な処方箋を提示できるように成功ポイントのバリエーションを広くする優良事例の調査も引き続き行う 9-3. アジアにおける廃棄物系バイオマス利活用定着に資する情報の収集日本の優良事例から抽出した成功の秘訣をそのままアジアの国々で実行するには 社会の仕組みや制度 住環境や人々の習慣が大きく異なることから アジアでの普及にもつながる成功ポイントについても検討する 18