( 無断転載を禁ず ) このたびは体験入学をご利用いただきありがとうございます 体験 入学は 第 1 回講義にご参加いただけますが このテキストでは第 1 回講義 第 2 回講義で学習する内容を掲載しています ぜひ 次回 ( 第 2 回 ) の講義内容もお見通しいただければと思います
3 級商業簿記 3 級学習進度表 ( 基本講義 ) 講義回学習テーマ ( 商業簿記 ) 重要度 テーマ 1 簿記の基礎知識 第 1 回 テーマ 2 日常の手続き Ⅰ テーマ 3 日常の手続き Ⅱ( いろいろな帳簿 まで ) テーマ 3 日常の手続き Ⅱ( 試算表の作成 より ) 第 2 回 テーマ 4 商品売買 Ⅰ テーマ 5 商品売買 Ⅱ テーマ 6 現金 第 3 回 テーマ 7 当座預金 テーマ 8 小口現金 第 4 回 テーマ9 テーマ10 手形 Ⅰ 手形 Ⅱ 第 5 回 テーマ11 テーマ12 その他の期中取引 Ⅰ その他の期中取引 Ⅱ テーマ 13 その他の期中取引 Ⅲ 第 6 回 テーマ 14 試算表の作成 Ⅰ テーマ 15 試算表の作成 Ⅱ 第 7 回 テーマ16 テーマ17 決算の手続きⅠ 決算の手続きⅡ 第 8 回 テーマ18 テーマ19 決算の手続きⅢ 決算の手続きⅣ 第 9 回 テーマ 20 決算の手続き Ⅴ 第 10 回 テーマ21 テーマ22 決算の手続きⅥ 伝票式会計
01 T h e m e 簿記の基礎 ここでは, 簿記の目的と簿記の5 要素と財務諸表の基礎について学習します 特に簿記の5 要素はも Check っとも重要なので, 十分理解してください Date.1 / Date.2 / Date.3 / 1 簿記とは 1. 簿記とは簿記とは, 帳簿記入 という言葉からつくられた造語といわれ, 帳簿に記入するためのルールを定めたものです 会社や商店 (= 企業 ) では, その活動から生じるいろいろな事柄を整然と記録しなければならないので, 簿記は企業の活動を支える重要な役割を果たしています 現在, 簿記といえば帳簿に記入するだけでなく, 帳簿に記録し, これを報告する という一連の手続きまでを指しています ざいむしょひょうここで報告するために作成される報告書のことを財務諸表 (Financial Statement:F/S) といいます 2. いろいろな簿記企業にはいろいろな業種があります それらの業種に応じて用いられる簿記にもいろいろと種類があります 商品売買業やサービス業などで用いられる簿記を商業簿記, テレビや自動車を造る製造業などで用いられる簿記を工業簿記といいます このテキストでは, 商業簿記を学習していきます 3. 簿記の目的簿記は会社や商店の日常的な活動を記録しますが, 最終的には次のような報告書にまとめるのがその目的です 2
⑴ 貸借対照表の作成 ( 財政状態を明らかにすること ) 会社や商店は, 所有する土地 建物などがどれだけあるか, また, どれだけの借金があるりがいかんけいしゃかを企業を取り巻くさまざまな人 ( 利害関係者という ) に報告しなければなりません このたいしゃくたいしょうひょうバランスシートために作成されるものが貸借対照表 (Balance Sheet:B/S) であり, 会社や商店の資産や借金のバランスのことを財政状態といいます ⑵ 損益計算書の作成 ( 経営成績を明らかにすること ) 会社や商店は, 財政状態を明らかにするとともに, どれだけもうけが出たか, または損をしたかという状況 ( 経営成績という ) を利害関係者に明らかにしなければなりません このそんえきけいさんしょために作成されるのが損益計算書 (Profit and Loss Statement:P/L) という報告書です Theme 01 簿記の基礎 supplement 利害関係者とは 簿記は, あらゆる利害関係者に対して役立つ情報を提供します ❶ 利害関係者とは 企業には個人商店や株式会社などさまざまな形態があり, 規模が大きくなればなるほど, 企業の財政状態や経営成績に関心をもっている人々が増えていきます このような人々のことを利害関係者といいます ❷ 簿記と利害関係者 簿記によって会社や商店の財政状態や経営成績を明らかにすれば, 次のように, あらゆる利害関係者に役立つ情報を提供することができます 経営者 経営者はこれまでの活動を振り返って, 将来の新しい経営方針を立案することができます 債権者 銀行などの債権者は, 会社や商店に対して融資を決定するときに, その企業の信用状態を判断することができます その他 国や地方公共団体は, 会社や商店に対して税金を割り当てるときに, その税額を決定することができます 基本例題 01 check! 次の文章の ( ) 内に適切な語句を記入しなさい 企業の活動を帳簿に記録して報告書を作成することを ( 1 ) といい, 商品売買業やサービス業で行われる ( 1 ) を ( 2 ) といいます また,( 1 ) の目的は報告書を作成して, 企業の財政状態や ( 3 ) を明らかにすることです ( 1 ) は, あらゆる ( 4 ) に対して, 役立つ情報を提供するため, 社会的にきわめて重要な役割を果たしています 1( )2( )3( )4( ) 3
調達源泉( 注 ) 期首資本金は 500,000 円である 運用形態1,130,000 1,130,000 2 簿記と会計期間 企業は継続して活動を行うため, 通常 1 年ごとに区切りをつけて, 報告書を作成し, 財政状態かいけいきかんや経営成績を明らかにします この定期的に区切られた期間を会計期間といいます きしゅきまつきちゅう会計期間のスタートを期首, ゴールを期末, 期首と期末の間を期中といいます とうきぜんきじきよくきまた, 現在の会計期間を当期, 一つ前の会計期間を前期, 一つ後の会計期間を次期または翌期といいます 3 級は個人商店を前提とするため, 暦にしたがって1 月 1 日から12 月 31 日までが一つの会計期間となります なお, 会社などの法人企業は,4 月 1 日から翌年の3 月 31 日など任意の期間を定めることができます 3 簿記の 5 要素と財務諸表 簿記では, 財政状態や経営成績について, 財政状態を示すものとして資産 負債 純資産 ( 資本 ), 経営成績を示すものとして収益 費用の5つの要素に分類し, 貸借対照表や損益計算書などの財務諸表に記載します 1. 貸借対照表 ⑴ 貸借対照表とは企業の期末における財政状態を明らかにした報告書を, 貸借対照表 (B/S) といいます 貸借対照表東京商店平成 1 年 12 月 31 日 ( 単位 : 円 ) 資 産 金 額 負債及び純資産 金 額 現 金 50,000 買 掛 金 200,000 貸 付 金 150,000 借 入 金 300,000 売 掛 金 80,000 資 本 金 630,000 備 品 200,000 車両運搬具 300,000 建 物 200,000 土 地 150,000 4
貸借対照表は, 資金をどこから得たかという調達源泉と, その資金をどのように使っているかという運用形態を示しています 調達源泉 ( 資金の出どころ ) 負債, 純資産 ( 資本 ) みち運用形態 ( 資金の使い途 ) 資産 ⑵ 資産とは資産とは, 企業の活動に役立つもの ( いわゆる財産 ) をいい, 企業が所有する土地 建物など有形のものと, 貸付金のような無形のものに分けられます たとえば, 店舗や倉庫などの建物, 商品配達用のトラックなど, 商売をするうえで長く利用されるものが有形の資産です また, お金を貸し付けたり, 代金後払いで商品を販売するなど, 将来, 現金で回収できるという権利が無形の資産です このような資産の増減を記録するときは, 資産 と一括するのではなく, 一つ一つその資産の内容に合わせて, 建物, 貸付金などと名前をつけます これを勘定科目といいます 以下, 資産の主な勘定科目を示しておきます 現金 : 紙幣や硬貨などの通貨繰越商品 : 期首 ( 期末 ) 在庫商品の原価貸付金 : 取引先などへ現金を貸し付けた際に生じる権利 ( 債権 ) 売掛金 : 代金後払いの約束で商品などを販売した際に生じる権利 ( 債権 ) 備品 : 商売のために備えてある棚, 事務机, パソコン, コピー機などの物品車両運搬具 : 商品配達用のトラックやオートバイなどの運搬具建物 : 商売のための店舗や倉庫などの建築物土地 : 店舗, 倉庫などの敷地や駐車場の用地 Theme 01 簿記の基礎⑶ 負債とは負債とは, 将来, 現金などで支払わなければならない義務 ( 債務 ) をいいます 具体的には, 銀行からの借入金や代金後払いの約束で購入した際に生じる支払い義務をいいます たとえば, 商売上の資金が不足し, 銀行から現金などを借り入れたとき, この借り入れた資金は返済期日までに返済しなければならないので, 負債となります 以下, 負債の主な勘定科目を示しておきます 借入金 : 銀行などから資金を借り入れた際に生じる返済義務 ( 債務 ) 買掛金 : 代金後払いの約束で商品などを購入した際に生じる支払い義務 ( 債務 ) ⑷ 純資産 ( 資本 ) とは純資産 ( 資本 ) とは, 資産の総額から負債の総額を差し引いたものをいいます その内訳は, 商売をはじめたときの出資額 ( 元入れ ) と, その後のもうけとして増えた分です このことから, 負債のことを他人資本というのに対して, 純資産 ( 資本 ) を自己資本ということもあります なお, 個人商店の純資産 ( 資本 ) に属する勘定科目は資本金のみです * 貸借対照表では期首の資本金と区別する意見から, もうけを 当期純利益 と別表示することもあります 5
⑸ 貸借対照表に関係する算式 1 純資産 ( 資本 ) 等式前述したように, 純資産 ( 資本 ) は資産の総額から負債の総額を差し引いたものなので, 次のような算式をつくることができます この算式を純資産 ( 資本 ) 等式といいます 資産の総額 - 負債の総額 = 純資産 ( 資本 ) の総額 2 貸借対照表等式純資産 ( 資本 ) 等式のうち, 負債の位置を置き換えることで次のような算式が求められます これを貸借対照表等式といいます 資産の総額 = 負債の総額 + 純資産 ( 資本 ) の総額 これらの等式は, 貸借対照表の左側の総額と右側の総額がつねに等しい, というルールか ら導き出されるものです これを 貸借平均の原理 といいます 2. 損益計算書 ⑴ 損益計算書とは 企業の一会計期間における経営成績を明らかにした報告書を, 損益計算書 (P/L) といい ます 損益計算書東京商店平成 1 年 1 月 1 日から平成 1 年 12 月 31 日まで( 単位 : 円 ) 費用金額収益金額売上原価 240,000 売上高 390,000 支払手数料 25,000 受取手数料 20,000 支払利息 15,000 当期純利益 130,000 410,000 410,000 損益計算書は, 一会計期間の間に発生した収益と費用を示しますが, この差額を当期純利 益 ( または当期純損失 ) といい, 損益計算書では朱記されます ⑵ 収益とは収益とは, 商品を販売したり, また取引の仲介をするなどして得た収入で, 純資産 ( 資本 ) を増やす原因となるものをいいます 以下, 収益の主な勘定科目を示しておきます 売上 : 商品の販売高 ( 売価 ) 受取手数料 : 取引の仲介などにより得たマージン受取利息 : 預金の利子や貸付金の利子 6
⑶ 費用とは費用とは, 店舗の家賃や広告費など, 収益を得るために費やされたものであり, 純資産 ( 資本 ) を減らす原因となるものをいいます 以下, 費用の主な勘定科目を示しておきます 仕入 : 商品の仕入高 ( 原価 ) 支払家賃 : 店舗や倉庫などの賃借料給料 : 雇い入れている従業員に支払った給料支払手数料 : 取引の仲介などにより支払った手数料支払利息 : 銀行などから借り入れた借入金にともなう利子なお, 費用には現金などの支払いがともなわないものもありますが, 詳しくは後述します Theme 01 簿記の基礎⑷ 損益計算書に関係する算式損益計算書もまた, 貸借対照表と同じように右側と左側の総額は等しい, という貸借平均の原理にしたがって, 次のような算式をつくることができます 費 用 + 当期純利益 = 収益 ( 注 ) 損益計算書, 貸借対照表については, テーマ 21 で詳しく学習します ⑸ 損益計算書と貸借対照表の関係損益計算書で計算された当期純損益と, 貸借対照表で計算された当期純損益は必ず一致します これは企業の活動について, 現金や売掛金などの債権, 買掛金などの債務のほかに, 仕入れや売上げなどから生じる変動とその原因を貸借平均の原理によって組織的に記録 計算しているためです このような記録 計算をする簿記を複式簿記といいます 貸借対照表 負 債 資 産 500,000 期首純資産 1,130,000 500,000 当期純利益 期末純資産130,000 一致 損益計算書 費用 280,000 収益 410,000 当期純利益 130,000 7
supplement 純損益の計算 ざいさんほうそんえきと損益 会社がいくらもうけたか, という純損益の計算方法には, 財産法 ❶ 財産法による純損益の計算 ほう法の2つがあります 財産法とは, 期末純資産 ( 資本 ) の額から期首純資産 ( 資本 ) の額を差し引くことで, 一会計期間の損益を求める方法です この方法は, もうけていればそれだけ現金などの資産が増え, 損をしていればそれだけ現金などの資産が減っているという考えにもとづいています 期末純資産 ( 資本 ) の額 - 期首純資産 ( 資本 ) の額 = 当期純利益 ( マイナスのときは当期純損失 ) 設例 次の資料により, 当期の純損益を求めなさい 期首資産 期首負債 期首純資産 期末資産 期末負債 期末純資産 純損益 ⑴ 80,000 円 30,000 円 50,000 円 85,000 円 30,000 円 55,000 円? 円 ⑵ 100,000 円 68,000 円 32,000 円 98,000 円 68,000 円? 円? 円 解答 ⑴ 期末純資産 ( 資本 )55,000 円 - 期首純資産 ( 資本 )50,000 円 = 当期純利益 5,000 円 期首資産 80,000 ( 期首 )B/S 期首負債 30,000 期首純資産 50,000 当期純利益 5,000 期末資産 85,000 ( 期末 )B/S 期末負債 30,000 期末純資産 55,000 ⑵ 期末資産 98,000 円 - 期末負債 68,000 円 = 期末純資産 ( 資本 )30,000 円 期末純資産 ( 資本 )30,000 円 - 期首純資産 ( 資本 )32,000 円 = 当期純損失 2,000 円 期首資産 100,000 ( 期首 )B/S 期首負債 68,000 期首純資産 32,000 当期純損失 2,000 期末資産 98,000 ( 期末 )B/S 期末負債 68,000 期末純資産 30,000 8
❷ 損益法による純損益の計算 純資産 ( 資本 ) は, 収益による資産などの増加と費用による資産などの減少が原因で増減します 損益法とは, その考え方を用いて, その増加原因である収益の総額と減少原因である費用の総額とにより, 純損益を求める方法です 収益の総額 - 費用の総額 = 当期純利益 ( マイナスのときは当期純損失 ) Theme 01 簿記の基礎なお, 純資産 ( 資本 ) の増減の結果から求める財産法と, その原因から求める損益法の計算結 果は必ず一致します 設例 次の資料により, 当期の純損益を求めなさい 期首純資産 期末資産 期末負債 期末純資産 収益の総額 費用の総額 50,000 円 85,000 円 30,000 円 55,000 円 83,000 円 78,000 円 解答 期末純資産 ( 資本 )55,000 円 - 期首純資産 ( 資本 )50,000 円 = 当期純利益 5,000 円 または 収益の総額 83,000 円 - 費用の総額 78,000 円 = 当期純利益 5,000 円 ( 期首 )B/S 期首資産 期首負債 期首純資産 50,000 P/L 当期純利益 5,000 費用の総額 78,000 収益の総額 83,000 ( 期末 )B/S 期末負債 30,000 期末資産 85,000 期末純資産 55,000 9