食糞性コガネムシの輝く色 構造色のメカニズム 赤嶺 し Seago et al. 5 真由美 近 雅博 は上記の単純 な多層膜による干渉とは異なる 干渉メカニズム circularly polarizing reflectors もこの範疇 に含めている このことについ ては後述する 2 Three-dimensional photonic crystals は 密に集まったオパー ルに類似した六角形の配列ある いは菱形の格子状の構造をして おり 宝石のようなきらびやか な反射を生じる photonic crystals は日本語では単にフォト ニ ッ ク 結 晶 と さ れ て い る 6 Seago et al. 5 は 1次 元 の 図1 Trypocopris 口絵図 3 4 と同じセンチコガネ族のセンチコガ ネ Phelotrupes laevistriatus Multilayer reflectors や Diffraction gratings に対して Three-dimensional 3 次元 と Circularly polarizing reflectors は 光学異方性をも いう用語は本タイプの特徴を捉えていることから った 1 種類の高分子が鞘翅の表面に平行な面内で 3 次元フォトニック結晶と呼ぶことを薦めてい 整列し その整列方向が鞘翅の表面に垂直な軸に る 対して回転しているラセン構造である この構造 はコレステリック液晶と同じ構造であるためコレ 3 Diffraction gratings 回折格子 は 平行な 畝または溝の微細配列からなる構造をしており ステリックタイプと呼ばれる3 誘電体多層膜タイプでは 各層からの反射光 白い光を分散させる 白い光は多くの異なる波長 は偏光を示さないが コレステリックタイプか から構成されるので 回折され虹のような全スペ らの反射光は円偏光 多くの場合 左円偏光 クトル反射となる この構造から生じる色は可視 を示す この性質の違いから右円偏光板を用い 領域のスペクトル色の並びとまったく同じことか て 誘電体多層膜タイプかコレステリックタイ ら 他 2 つのタイプと区別される この特徴から プかをほぼ見分けることが可能となる 口絵図 他 2 つの構造から生じる色と厳密に区別するため 1は 主にヨーロッパに分布するセンチコガネ に Seago et al.5 は spectral iridescence という用 族の Trypocopris pyrenaeus 左 と南アフリカに 語の使用をおこなっている 分布する Gymnopleurus humanus 右 である こ 食糞性コガネムシに見られる構造色の メカニズム Seago et al.5 で Multilayer reflectors にまとめら れたいくつかのタイプのうち 食糞性コガネムシ では 現在のところ Simple multilayer reflectors と れらを右円偏光板を通して撮影した場合 T. pyrenaeus 左 では色彩は失われなかったが G. humanus 右 では色彩が失われた 口絵図2 このことから前者は 誘電体多層膜タイプ 後者 はコレステリックタイプと判断できた 両種とも各生息地において地理的色彩変異を示 Circularly polarizing reflectors の 2 つが知られてい すことが知られているが G. humanus では この る Simple multilayer reflectors は 上記の 地理的色彩変異が緯度の低下に伴う気温と相関し Multilayer reflectors の定義そのものであり 誘電 ていることが報告されている2 コレステリック 体多層膜タイプ3 あるいはもっと単純に多層膜構 タイプは形成過程で温度に影響されることが知ら 造 れていることから この結果は幼虫期に体験した 1 6 と呼ばれているものである 一方 昆虫と自然 45 14 2010 11