平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

最高裁○○第000100号

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

最高裁○○第000100号

最高裁○○第000100号

最高裁○○第000100号

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

発信者情報開示関係WGガイドライン

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

最高裁○○第000100号

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

インターネット上の誹謗中傷対応の基礎(Web公開用)

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

判決【】

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

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なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

ます 運送コンシェル は会員の皆さまの IP アドレス クッキー情報 ご覧になった広告 ページ ご利用環境などの情報を会員の皆さまのブラウザから自動的に受け取り サーバ ーに記録します 取得情報の利用目的について 運送コンシェル または 運送コンシェル が認める団体( 以下 運送コンシェル 等 とい

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

(イ係)

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次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

イ -3 ( 法令等へ抵触するおそれが高い分野の法令遵守 ) サービスの態様に応じて 抵触のおそれが高い法令 ( 業法 税法 著作権法等 ) を特に明示して遵守させること イ -4 ( 公序良俗違反行為の禁止 ) 公序良俗に反する行為を禁止すること イ利用規約等 利用規約 / 契約書 イ -5 (

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

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主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

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き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

期分本税 831 万 1900 円の合計 以下 本件租税債権 という ) (3) 東京国税局国税徴収官 B( 以下 B 徴収官 という ) は 同局特別国税徴収官 C( 以下 C 特官 という ) の決定に基づき 平成 20 年 3 月 6 日 原告がA 証券に対して有していた本件証拠金の返還請求権

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Ⅱ. 法第 3 条の 2 等の適用についての考え方 1. 法第 3 条の2 第 1 項の考え方について本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の 2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

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求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

を参酌して 景品表示法上の適否を判断することとする 2. 基本的考え方 (1) 景品表示法による規制の趣旨景品表示法第 5 条は 自己の供給する商品等の内容や取引条件について 実際のもの又は競争事業者のものよりも 著しく優良であると示す又は著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を不当表示として

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

3 被告は, 原告に対し, 金 3453 万 2652 円及びこれに対する平成 23 年 12 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件訴訟は, 原告が, 被告の製造販売に係るデジタルカタログについて, 原告の特許権を侵害している旨主張して, 被告に対し

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

拍, 血圧等 ) を, ユーザー本人または当社の提携先からと提携先などとの間でなされたユーザーの個人情報を含む取引記録や, 決済に関する情報を当社の提携先 ( 情報提供元, 広告主, 広告配信先などを含みます 以下, 提携先 といいます ) などから収集することがあります 4. 当社は, ユーザーが

別紙 答申 1 審査会の結論 委託事業者の企画提案書 及び 選考会議の資料 について行われた部分公開の決定は 妥当である 2 異議申立ての趣旨 (1) 異議申立人 ( 以下 申立人 という ) は 神戸市情報公開条例 ( 以下 条例 という ) に基づき 以下の公開請求 ( 以下 本件請求 という

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事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

用語説明 レンタルサーバー 簡単に説明すると レンタルサーバーはインターネット上に借りる部屋のよう なものです その部屋にホームページのファイル類をおきます ドメイン ドメインとは インターネット上の表札や住所のようなものです サーバーをレンタルした時点で サーバー会社の名前が含まれたドメインがあ

本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引な勧誘により 購入者等が望まない契約を締結させられることを防止するため 事業者が勧誘行為を始める前に 相

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

資料 10-1 海外事業者を相手方とした発信者情報開示 差止請求について ( 神田弁護士ヒアリングメモ ) 平成 30 年 8 月 6 日 1. クラウドフレアに対する発信者情報開示請求について 自分が弁護士として権利者から海賊版サイトに関する相談を受けた場合 まず, サイト管理者の連絡先を調査し,

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

平成  年(オ)第  号

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平成 26 年 10 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 26 年 ( ワ ) 第 11026 号発信者情報開示等請求事件 口頭弁論終結日平成 26 年 8 月 27 日 判 決 大阪市 < 以下略 > 原 告 株式会社 P G Sホーム 同訴訟代理人弁護士 神 田 知 宏 大阪市 < 以下略 > 被 告 さくらインターネット株式会社 同訴訟代理人弁護士 小 栗 久 典 主 文 1 被告は, 原告に対し, 別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 請求主文同旨第 2 事案の概要本件は, 原告が, 別紙ウェブページ目録記載の閲覧用 URLにより表示されるウェブページ ( 以下 本件ウェブページ という ) をトップページとするウェブサイト群 ( 以下 本件サイト という ) の記載により, 不正競争防止法 2 条 1 項 14 号若しくは13 号の不正競争が行われ, 又は原告の名誉権が侵害されたと主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 法 という ) に基づき, 被告に対し, 本件ウェブページが蔵置されたサーバー領域 ( 以下 本件サーバー という ) の契約者に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である ( なお, 当庁は, 民事訴訟法 11 条の規定により, 本件につき管轄権を有す 1

る ) 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いがないか, 証拠により容易に認められる ) (1) 原告は, 住宅ペイント, 一般住宅 マンション ビルのトータルリフォーム等を業とする法人である ( 甲 1) (2) 被告は, 本件サーバーを保有 管理する法人である ( 争いがない ) (3) 本件サイト本件ウェブページ ( 甲 4の1) は, みんなのおすすめ, 塗装屋さん と題する本件サイトのトップページであり, 口コミランキング のウェブページ ( 甲 4の3) へのリンクがある 口コミランキング のウェブページには, 口コミランキング一覧 として塗装業者のランキングが記載されており,1 位は オンテックス,2 位は 住友不動産,3 位は 積水ハウス, 以下,10 位までの塗装業者名が記載されているが, 原告の名称は記載されていない ( 甲 4の3 以下 本件ランキング という ) 本件ウェブページには, 掲載業者一覧 のウェブページ( 甲 4の4) へのリンクがあり, 掲載業者一覧 のウェブページには, 平成 26 年 4 月 3 0 日当時, 原告の名称が記載されていた ( 甲 4の4 なお, 平成 26 年 6 月 5 日時点では, 掲載業者一覧 のウェブページから原告の名称は削除されている 乙 1 ) 掲載業者一覧 のウェブページには, 原告の口コミのウェブページ ( 甲 4の5) へのリンクがあり, 原告の口コミのウェブページには, 原告の口コミ13 件が記載されていた ( 甲 4の5 なお, 平成 26 年 8 月 27 日時点では, 原告の口コミのウェブページは存在しない 弁論の全趣旨 ) (4) 本件サイトの口コミランキングで1 位と表示されている オンテックス は, 一般住宅 ビル マンションのトータルリフォームを業とする, 株式会社オンテックス ( 以下 オンテックス という ) である ( 甲 3, 甲 4の3) 2

オンテックスは, 原告と競争関係にある ( 甲 1,3, 弁論の全趣旨 ) (5) 被告は, 本件サーバーの契約者の住所氏名等の情報を保有している ( 争いがない ) 2 争点 (1) 権利侵害の明白性 (2) 発信者情報開示を受けるべき正当な理由第 3 争点に関する当事者の主張 1 争点 1( 権利侵害の明白性 ) について ( 原告の主張 ) (1) 営業誹謗行為 ( 不正競争防止法 2 条 1 項 14 号 ) ア虚偽の事実 ( ア ) 本件サイトは, 口コミ件数 をもとにランキングが作成されている, いわゆる口コミランキングサイトだと書かれている ( 甲 4の2) しかし,1 位の オンテックス の口コミ数は108 件, 以下,2 位の 住友不動産リフォーム が 48 件,3 位の 積水ハウス が 16 件, 4 位の 積水化学工業 が8 件,5 位の 大和ハウス工業 が5 件であるのに対し ( 甲 4の3), ランキング圏外,11 位以下の原告は ( 甲 4 の4), 口コミ総数が 13 件 である ( 甲 4の5) そうすると, 本件ランキングが真実 口コミ件数 を基準にランキングを決めているのであれば, 原告は4 位となるはずであって, 原告が ランキング圏外 の企業であり, 11 位以下 の企業であるとの事実は, 虚偽の事実である ( イ ) 比較広告の適法性昭和 62 年 4 月 21 日 比較広告に関する景品表示法上の考え方 ( 公正取引委員会 ) によると, 比較広告は,1 内容の客観的実証性,2 比較数値の正確かつ適正な引用,3 比較方法の公正性を基準に判断される 3

しかるに, 本件ランキングは, 口コミ件数 以外の何らかの要素で決められているため,1 客観的実証性に欠け, 上記のとおり2 数値も正確に引用されておらず, 何を比較しているのか判然としないため,3 比較方法の公正性も欠く したがって, 本件ランキング自体も, 虚偽の事実である ( ウ ) 本件サイトでは, 各企業のページで, サイト訪問者が口コミを入力するという体裁になっている ( 甲 6の1ないし3) しかし, 入力欄にあるのは 名前 メールアドレス ウェブサイト コメント 欄であり, 地域を入力する欄がない にもかかわらず,1 位の企業の口コミでは, 必ず, 日付, 地域, コメントが表示されている ( 甲 6の1) 日付は入力日だとしても, 地域は入力項目ではないにも拘わらず, 常に表示されている この点に注目して1 位以外の企業について口コミを見ると, 地域の部分に 匿名 と表示されたものや ( 甲 6の2), Aⅰ と表示されたものが見つかる ( 甲 6の3) そうすると, 本件サイトを訪問して口コミを入力する多数の者が 名前 欄に地域名を入力していることになり, 極めて不自然である したがって, 口コミ自体, 本件サイトの管理者が入力した虚偽のものと理解するのが合理的である その上で, 本件サイトの管理者は 口コミ数 でランキングを決めていると書いているのだから, 本件ランキング自体が虚偽の事実の摘示である イ営業上の信用 ( ア ) 口コミの数が圧倒的に多い1 位の企業 ( 口コミが108 個ある, 甲 6 の1) に比べ, 口コミの数が13 個 ( 甲 4の3) しかなければ, それだけ利用者が少なく, 事業規模の小さな企業だと一般消費者は理解するの 4

だから, 営業上の信用は害される 現在では, 原告の会社名が削除されることで, 口コミが1つもない, それだけ利用者もいない規模の会社だと一般消費者に理解されるから, 営業上の信用は害される ( イ ) また, 比較広告で低いランキングと表示されること自体が, それだけ評価の低い企業だと一般消費者は理解することから, 営業上の信用を害する ウ競争関係 ( ア ) 本件サイトの管理者は, オンテックスの依頼に基づき, 又は, 仮にそうでないとしてもオンテックスを利するために, 本件サイトを作成している ( イ ) ワードプレスのテーマ名本件サイトは, ブログ作成ツールである WordPress ( 甲 5の1 以下 ワードプレス という ) を使って作成されており,H TMLソースの随所に /wp-content/themes/ /wp-content/plugins/ 等, ワードプレスの標準フォルダ名が記述されている ( 甲 5の2) ワードプレスでオリジナルのデザインを作る場合は, wp-content/themes/ の中に独自のフォルダを作り, ここに画像ファイルなどを保存する仕組みになっている フォルダ名は自由に設定できるが, 通常は, デザインのテーマの名前を付ける ( 甲 5の3) しかるに, 本件サイトの画像ファイル等は, wp-content/themes/ontex/ フォルダの下位フォルダに保存されている オンテックスのロゴだけでなく, 他社のロゴも含め, 全ての画像が ontex フォルダの下位フォルダに保存されている ( 甲 5の4,5) この事実は, 本件サイトのテーマ ( 目的 ) が ontex であることの証左であり, 本件サイトがオンテックス支援のためのサイトであることの 5

証左である ( ウ ) 本件ウェブページのタイトル等本件ウェブページのタイトル (<title> タグの値 ) は, おすすめの外壁塗装 リフォーム業者の口コミ 評判 評価 全国版オンテックス他多数あり, 同じく説明 (<meta> タグの description) は, オンテックスなど複数の企業の口コミが掲載されています 外壁塗装のリフォームを実施された方の口コミ 評判 おすすめの業者を評価 共有し これから外壁塗装 リフォーム業者を選定する方へのサイトです, 同じくキーワード (<meta> タグの keywords) は オンテックス, 口コミ, おすすめ外壁塗装屋さん, 外壁塗装, 口コミ, 評判 評価 リフォーム, 全国 となっている ( 甲 5の2) メタタグの keywords は, ウェブページの検索キーワードを示すもので, 検索サイトにおいて keywords に指定したキーワードが検索されたとき, 当該ウェブページが検索結果として表示されやすくなる また, メタタグの description は, 検索サイトにおいて, ウェブページのタイトルとともに表示される内容である 本件ウェブページでは,keywords に オンテックス が指定されているため, 検索サイトで オンテックス をキーワードとして検索すると, 本件ウェブページのタイトルや説明が検索結果として表示され, これに誘導された閲覧者が本件ページを開くと, ランキング1 位としてオンテックスが表示される, という導線が想定されている エ営業者にあらざる共犯者原告とオンテックスはリフォーム事業において競争関係にあることから, オンテックスに競業上の利益を得させている本件サイトの管理者は, たとえオンテックスの依頼に基づかないとしても ( 依頼に基づくならばもちろん ), 営業者にあらざる共犯者 として不正競争防止法 2 条 1 項 14 号 6

の誹謗者に当たる (2) 優良誤認行為 ( 不正競争防止法 2 条 1 項 13 号 ) 本件ランキングは, ランキング1 位の企業について, 口コミが一部上場企業をはるかに超える108 個もあり (2 位の住友不動産が48 個,3 位の積水ハウスが16 個,4 位の積水化学工業が8 個,5 位の大和ハウス工業が5 個 ), それだけ利用者が多く, 他の事業者よりも著しく役務の質が優良であると, 一般消費者に印象づけている 特に ランキングベスト5 で No.1 との表示が, 一般消費者をして, 役務の質が著しく優良であると印象づけている しかるに, 上記 (1) のとおり, 本件ランキングは口コミ数で順位を決めていると書きながら, 実際には口コミ数に基づいておらず, また, 上記のとおり, 本件サイトを訪問した者が口コミを書いているのではなく, 多くの口コミは本件サイトの管理者が書いたものであり, 誤認させる に当たる (3) 本件ランキングによる名誉権侵害原告は, 本件ランキングの圏外に表示されることにより, それだけ一般消費者に利用されていない, 需要の少ない企業という印象を受けることから, 社会的評価が低下する しかるに, 上記 (1) のとおり, 本件ランキングは恣意的な調査結果が生じうるような事情があることから, ランキングは真実ではなく, 違法性阻却事由はない (4) 原告に対する口コミによる名誉権侵害ア 2012 年 8 月 7 日の口コミ原告に関する2012 年 8 月 7 日の口コミ ( 甲 4の5 以下 本件口コミ1 という ) は 見積もった壁面の面積が実際の面積のおよそ 2 倍, 足場代等をゼロにするといっても これではたまらない 見積の盲点だと思う と指摘しており, 一般読者の普通の注意と読み方を基準にする 7

と, 原告は消費者の不知に乗じて実際の壁面の2 倍の面積で見積を書いておきながら, 諸経費を無料にすると言って有利誤認行為をしていると読めることから, 原告の社会的評価を低下させ, 名誉権を侵害する しかるに, 原告の見積書には足場代, シート代 ( 飛散防止養生ネット代 ) 等が計上されており ( 甲 9の1ないし5), また, 壁の面積については総面積から窓やドア等の開口部を非塗装面として差し引くため, 実際の面積より少なくなるのであり, 実際の面積の2 倍で見積もるという事実はなく, 有利誤認行為をしている事実はないことから ( 甲 8), 本件口コミ1に違法性阻却事由はない イ 2012 年 8 月 9 日の口コミ原告に関する2012 年 8 月 9 日の口コミ ( 甲 4の5 以下 本件口コミ2 といい, 本件口コミ1と合わせて 本件口コミ という ) は 8 月 7 日に入力された方と全く同意見, もともと 足場代やシート代をただにする話で 塗装の単価を設定している と指摘しており, 一般読者の普通の注意と読み方を基準にすると, 原告は, 塗装単価を高く設定しておきながら, 足場代やシート代を無料にすると言って有利誤認行為をしていると読めることから, 原告の社会的評価を低下させ, 名誉権を侵害する しかるに, 原告の塗装単価は, 月刊積算資料 SUPPORT ( 一般財団法人経済調査会発行 ) において公表しており ( 甲 7), 料金の客観性は市場原理により担保されている また, 上記のとおり, 原告は足場代, シート代 ( 飛散防止養生ネット代 ) を受領しており ( 甲 9の1ないし5), 有利誤認行為をしているとの事実はないから ( 甲 8), 本件口コミ2に違法性阻却事由はない (5) 上記 (1) ないし (4) のいずれかの理由により, 本件サイトに係る侵害情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかである ( 被告の主張 ) 8

本件サイトの記載は認め, その余は不知, 否認ないし争う なお, 本件サーバーについて被告と利用契約を締結している者 ( 以下 本件利用者 という ) に被告が問い合わせたところ, 本件サイトを管理する者 ( 以下 本件サイト管理者 という ) と本件利用者は別の主体であり, 本件利用者は, 本件サイトの内容や運営には一切関与していないとの回答を得ている 2 争点 2( 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由 ) について ( 原告の主張 ) 原告は, 本件サイト管理者 ( 上記 1(1) ないし (3) の場合 ) 又は本件口コミの各投稿者 ( 上記 1(4) の場合 ) に対し, 権利侵害を理由として不法行為に基づく損害賠償請求等の準備をしている そのためには, 本件サーバーの契約者 ( 本件利用者 ) に関する発信者情報が必要であって, 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある ( 被告の主張 ) 争う 第 4 当裁判所の判断 1 争点 1( 権利侵害の明白性 ) について (1) 原告に対する口コミによる名誉権侵害についてア本件口コミ1について本件サイト中に存在した, 原告に関する2012 年 8 月 7 日の口コミ ( 本件口コミ1) は, 関西 とのみ記載された投稿者から投稿された体裁の, 飛び込みの営業で キャンペーン価格で という / 見積もりをとったら おどろき 単価はそこそこだが 見積もった壁面の面積が実際の面積のおよそ2 倍 こちらが我が家の壁面の面積など知らないと思ったのかしら / 足場代等をゼロにするといっても これではたまらない 見積の盲点だと思う / 依頼するなら気をつけた方がいいでしょう というものであった ( / は改行を示す 甲 4の5) 9

本件口コミ1は, 一般読者の普通の注意と読み方を基準にすると, 原告が, 実際の壁面の2 倍の面積で ( それに単価を乗じた不当に高額の ) 見積書を作成し, 足場代等を無料にすると言って ( 不当に高額な見積りから割り引いたように見せかけ ) 不当な営業行為を行っているとの事実を摘示するものであり, 原告の社会的評価を低下させるものである 原告代表者の陳述書 ( 甲 8) 及び原告の見積書 ( 甲 9の1ないし5) によれば, 原告の使用している見積書には 仮設足場 の欄があり, これを無料にするとの営業行為は行っていないこと, また, 壁の面積については総面積から窓やドア等の開口部を非塗装面として差し引くため, 実際の面積より少なくなるのが通常であり, 壁面の面積を実際の面積の2 倍で見積もるという営業行為も行っていないことが認められるから, 本件口コミ1 について違法性を阻却する事由も存在しないと認められる イ本件口コミ2について本件サイト中に存在した, 原告に関する2012 年 8 月 9 日の口コミ ( 本件口コミ2) は, 関西 とのみ記載された投稿者から投稿された体裁の, 8 月 7 日に入力された方と全く同意見です / もともと 足場代やシート代をただにする話で 塗装の単価を設定しているようです / 仕上りに関しては問題ありませんでした というものであった ( / は改行を示す 甲 4の5) 本件口コミ2も, 一般読者の普通の注意と読み方を基準にすると, 原告が, 塗装単価を ( 実質的に足場代やシート代を含めるように不当に ) 高く設定し, 足場代やシート代を無料にすると言って ( 不当に高額な見積りから割り引いたように見せかけ ) 不当な営業行為を行っているとの事実を摘示するものであり, 原告の社会的評価を低下させるものである 月刊積算資料 SUPPORT 2012 年 5 月号 ( 甲 7), 原告代表者の陳述書 ( 甲 8) 及び原告の見積書 ( 甲 9の1ないし5) によれば, 原 10

告の使用している見積書には 仮設足場 飛散防止養生ネット の欄があり, これらを無料にするとの営業行為は行っていないこと, 原告の塗装単価は公表されており, 実質的に足場代やシート代を含めた不当に高額の設定にはしていないことが認められるから, 本件口コミ2について違法性を阻却する事由も存在しないと認められる (2) 以上によれば, 本件口コミが原告の名誉権を侵害することが明らかであるから, その余の点について判断するまでもなく, 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき ( 法 4 条 1 項 1 号 ) の要件を充足する 2 争点 2( 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無 ) について原告は, 本件口コミの投稿者に対し, 損害賠償請求権等を行使する意向を示しているところ, その準備のためには, 被告から本件サーバーについて被告と利用契約を締結している者 ( 本件利用者 ) の情報を得, 本件利用者から本件サイト管理者の情報を得, 本件サイト管理者から本件口コミ投稿者の情報を得ることが必要であると認められるから, 本件利用者に係る氏名又は名称, 住所の情報は, 法 4 条 1 項, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令 1 号の その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称, 同 2 号の その他侵害情報の送信に係る者の住所 として, 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき ( 法 4 条 1 項 2 号 ) の要件を充足する 本件口コミが本件サイトから既に削除されている ( 弁論の全趣旨 ) としても, 本件口コミの投稿者に対し, 本件口コミによって過去に原告が被った損害の賠償請求をするため, 原告に本件利用者に係る発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められることに変わりはない 3 以上によれば, 本件請求は理由があるからこれを認容することとし, 主文の 11

とおり判決する 東京地方裁判所民事第 29 部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 西村康夫 裁判官 石神有吾 12