撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,

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年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

最高裁○○第000100号

最高裁○○第000100号

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

<4D F736F F D208FA495578CA0904E8A FD782C982A882AF82E991B98A F9E8A7A82CC8E5A92E82096F6E05694FC89C02E646F63>

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

最高裁○○第000100号

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

0A8D6C A49256C A0

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

(Microsoft Word -

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

判決【】

<4D F736F F D F93FC82E D835382CC82DD816A2E646F63>

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yYOI\201z \224\273\214\210\201m\210\323\217\240\214\240\201n.doc)

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

1を原告 Aの負担とし, 原告 A 以外の原告らに生じた各費用の5 分の4と被告に生じた費用の3 分の2を被告の負担とし, その余を原告 A 以外の原告らの負担とする 4 この判決は, 第 1 項 ~に限り, 仮に執行することができる 事実及び理由 第 1 請求 被告は, 原告 A に対し,158

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

登録番号第 号出願日平成 15 年 8 月 25 日登録日平成 17 年 5 月 13 日登録商標 商品及び役務の区分第 24 類指定商品織物, 布製身の回り品, かや, 敷布, 布団, 布団カバー, 布団側, まくらカバー, 毛布, 織物製いすカバー, 織物製壁掛け, カーテン,

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

最高裁○○第000100号

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

めた事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実 ) (1) 当事者ア原告は, 映画プロデューサーである ( 甲 1,2) イ被告は, 新聞社であり, ウェブサイト 朝日新聞デジタルAJW を運営するものである (2) 原告の著

CAFC Update(135)

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

登録番号第 号指定商品 役務第 25 類被服, 空手衣第 41 類空手の教授, 空手の興行の企画 運営又は開催登録商標別紙原告商標目録 1 記載のとおりイ本件商標権 2( 以下これに係る登録商標を 本件商標 2 という ) 出願年月日平成 16 年 10 月 15 日登録年月日平成

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

<4D F736F F D B192988DEC82CC90AC94DB B F C815B83588ECA905E8E E968C8F816A95DB8DE22E646F63>

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

問 2 戦略的な知的財産管理を適切に行っていくためには, 組織体制と同様に知的財産関連予算の取扱も重要である その負担部署としては知的財産部門と事業部門に分けることができる この予算負担部署について述べた (1)~(3) について,( イ ) 内在する課題 ( 問題点 ) があるかないか,( ロ )

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

最高裁○○第000100号

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

平成  年(オ)第  号

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

事実及び理由控訴人補助参加人を 参加人 といい, 控訴人と併せて 控訴人ら と呼称し, 被控訴人キイワ産業株式会社を 被控訴人キイワ, 被控訴人株式会社サンワードを 被控訴人サンワード といい, 併せて 被控訴人ら と呼称する 用語の略称及び略称の意味は, 本判決で付するもののほか, 原判決に従う

4B 電通の部長らとともにタレントの所属事務所に絵コンテを持参し 撮影内容を説明した上で タレントのCM 出演の了解を獲得 5B 電通のミーティング( プリ プロダクション ミーティング ) に参加 当該ミーティングにおいて制作予算及びCM 制作の進行予定が確定 ( この会議にも原告は参加せず )

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

平成20年7月11日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

1 被告は, 別紙被告製品目録 1 記載のごみ箱 ( 色違い含む ) を製造し, 販売し, 輸入し, 又は広告宣伝してはならない 2 被告は, 前項のごみ箱及びその半製品 ( 同目録 1 記載の基本的構成態様及び具体的構成態様を具備しているが, 製品として完成するに至らないもの ) 並びにこ れらの

12-12.indd

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

(イ係)

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

平成 27 年 12 月 9 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 11 月 6 日 判 決 東京都荒川区 < 以下略 > 原 告 株式会社オールビユーテイ社 同訴訟代理人弁護士 山 本 隆 司 同 植 田

に含まれるノウハウ コンセプト アイディアその他の知的財産権は すべて乙に帰属するに同意する 2 乙は 本契約第 5 条の秘密保持契約および第 6 条の競業避止義務に違反しない限度で 本件成果物 自他およびこれに含まれるノウハウ コンセプトまたはアイディア等を 甲以外の第三者に対する本件業務と同一ま

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

東京地方裁判所委員会 ( 第 36 回 ) 議事概要 ( 東京地方裁判所委員会事務局 ) 第 1 日時平成 27 年 10 月 22 日 ( 木 )15:00~17:00 第 2 場所東京地方裁判所第 1 会議室第 3 出席者 ( 委員 ) 貝阿彌誠, 足立哲, 大沢陽一郎, 大野正隆, 岡田ヒロミ

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

F54D3D DD700104A2

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

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D-109 カタログ編集著作物 著作権 著作者人格権侵害損害賠償請求事件 : 東京地裁 平成 26( ワ )22603 平成 28 年 2 月 16 日 ( 民 46 部 ) 判決 < 一部認容 > キーワード 表現の著作物性, 個性の発揮, 思想又は感情の創作的表現, 編集著作物の複製権 翻案権 譲渡権, 氏名表示権 同一性保持権, 民法 709 条 著作権法 114 条 2 項 3 項 ( 損害額の推定 使用料相当額 ) 主文 1 被告は, 原告に対し,180 万円及びこれに対する平成 25 年 11 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 原告のその余の請求を棄却する 3 訴訟費用はこれを5 分し, その1を原告の, その余を被告の各負担とする 4 この判決は, 第 1 項に限り, 仮に執行することができる 事案の概要 本件は, 別紙カタログ目録記載 1のカタログ ( 以下 原告カタログ という ) の著作権者である原告が, 同目録記載 3のカタログ ( 以下 被告カタログ という ) を被告が作成, 配布した行為が原告の著作権 ( 編集著作物である原告カタログ全体並びにこれに掲載された文章及び図表に係る複製権又は翻案権及び譲渡権 ) 並びに著作者人格権 ( 氏名表示権及び同一性保持権 ) の侵害に当たると主張して, 被告に対し, 民法 709 条及び著作権法 114 条 2 項,3 項に基づき, 損害賠償金の一部である1000 万円及びこれに対する不法行為の後である平成 25 年 11 月 1 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 なお, 書証の枝番は省略する 以下同じ ) (1) 当事者ア原告 ( 株式会社ジャパンコーラー ) は, アメリカ合衆国のKohler Co.( 以下 米国コーラー社 という ) の日本正規代理店として, 米国コーラー社製品の輸入販売を行う株式会社である ( 甲 3) イ被告 ( 日鉄住金物産マテックス株式会社 ) は, 鉄鋼 非鉄その他金属の製造加工関連設備, 機器及びそれらの関連資材の販売, 仕入販売代行業及び輸出入業等を行う株式会社であり, 米国コーラー社の販売代理店である (2) 原告カタログア ( ア ) 原告は, 原告カタログの旧版である別紙カタログ目録記載 2のカタログ ( 以下 旧原告カタログ という ) を制作する際,1 株式会社フェアグラウンドに対して製品説明の文章の作成を,2Xに対してレタッチ及び写真 1

撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,15,2 1) ( イ ) 原告代表者及び従業員は, 職務上, 原告カタログを企画して作成し, 平成 25 年 1 月 30 日, 原告名義を付して完成させた その際, 原告の従業員らは, 上記のデザインを利用した上でレイアウト作業をモンデザインにさせるとともに, 上記の写真の一部及び製品説明の文章を利用して原告カタログを作成した モンデザインは, 原告に対し, 上記レイアウト作業に係る成果物の納品時に, この成果物の著作権を譲渡した ( 甲 3,15) イ原告カタログは, 顧客に対して無償で配布されるものである ウ原告カタログには, 別紙侵害部分対照表の番号 1から18までの 原告表現 欄に記載された配列, 製品, 文章及び図表 ( 以下, それぞれを同対照表の番号に従い 原告表現 1 などという ) が掲載されている 原告表現 1 ~3はカタログに掲載する製品等の選択配列に係る編集物, 原告表現 4~1 2は製品説明等の文章, 原告表現 13~18は図表である エ原告カタログは, 米国コーラー社の In the Bathroom 及び In the Kitchen と題するカタログ( 以下 USカタログ という ) 等の記載から製品を選択して掲載したものである USカタログ記載の製品及び原告カタログ記載の製品は, 別紙 USカタログ品番目録 ( バス ) 及び同 ( キッチン ) 記載のとおりである (3) 被告カタログア被告は, 被告カタログを作成し, 平成 25 年 10 月頃, 発行した イ被告カタログは, 顧客に対して無償で配布されるものである ウ被告カタログには, 別紙侵害部分対照表の番号 1から18までの 被告表現 欄に記載された配列, 製品, 文章及び図表 ( 以下, それぞれを同対照表の番号に従い 被告表現 1 などという ) が掲載されている 一方で, 被告カタログに原告の名称は記載されていない 2 争点 (1) 原告表現 1~18の著作物性 ( なお, 被告は, 被告カタログの作成に当たり原告カタログを参考にしたことを認めており, 原告の著作権 著作者人格権侵害の主張に対し著作物性以外の点は具体的に争っていない ) (2) 損害額 判断 1 争点 (1)( 原告表現 1~18の著作物性 ) について (1) 編集物 ( 原告表現 1~3) についてア別紙 USカタログ品番目録, 大 中 小分類対比目録及びレイアウト対比 2

目録, 証拠 ( 甲 21) 並びに弁論の全趣旨によれば, 原告カタログは,US カタログの各題号を大分類とした上, 日本の住宅事情, 生活習慣, 原告担当者の経験に基づく米国コーラー社らしさに関する認識その他の事情を考慮してUSカタログにおける中分類の一部を選択した上でこれと異なる順に配列し, 各中分類に含まれる製品及び小分類の一部を選択して配列したものであり, ページごとの構成は, 製品を2 列及び5 行に配列する構成その他の基本的な構成を決めた上で, 適宜写真を挿入するなどしてこれを変化させた構成を設けたものと認められる したがって, 原告カタログに掲載する製品の分類, 選択及び配列に作成者の個性が表現されているということができるから, これら選択及び配列は, 思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当である イ原告は, 特定の製品につき価格, サイズ, 材質等と製品写真を基本情報とした点にも創作性があると主張するが, 製品のカタログにおいてはこうした情報を掲載するのが一般的であることを踏まえると, この点について作成者の個性が表現されているということはできない ウ他方, 被告は, 上記アは米国コーラー社の製品を扱う関係者の間では常識的な事情に基づくごく一般的な分類や配置であり, 創作性がないと主張する しかし, 具体的な分類の態様, 製品の配列等が米国コーラー社製品を扱う者にとって常識であるとうかがわせる証拠はなく, 被告の主張を採用することはできない エ原告表現 1~3( 上記イの部分を除く ) と被告表現 1~3を対比すると, 被告表現 1 及び2は, 小分類名, 品番及び製品名の選択配列のうち一部 ( 別紙大 中 小分類対比目録及び同品番 製品名対比目録において 原告カタログ 欄と 被告カタログ 欄を結ぶ直線のないもの ) を除き, 原告表現 1 及び2と同一であると認められる また, 被告表現 3は, 赤枠で囲まれた部分以外は写真や文字のフォント等に一部異なる点があるが, 概ね原告表現 3に一致している そして, 被告カタログの作成に当たり被告が原告カタログを参考にしたことを認めていることに照らすと, 被告表現 1~3は, 原告カタログに依拠して作成されたものであって, 上記原告表現 1~3の複製に当たると判断するのが相当である (2) 文章 ( 原告表現 4~12) についてア原告表現 4は米国コーラー社の歴史の概要とアメリカや日本における顧客, 製品の種類等について述べるもの, 原告表現 5は原告カタログに掲載された製品の素材について説明するもの, 原告表現 6~12は原告カタログに掲載された製品のうち特定のシリーズの特徴を紹介するものであって, 別紙言語表現対比目録の原告カタログ欄記載のとおり, いずれもその言葉の選択及び表現方法に工夫がみられるから, これらの各表現は作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められる イこれに対し, 被告は,USカタログの英文を参照したものであること, 一 3

般的な説明が含まれていること, 比較的短文であることを理由に, 原告表現 4~12が著作物性を欠く旨主張するが, これらに記載された内容を文章化するに当たり個別の言葉や表現に選択の幅があるといえるから, 被告の主張は失当である ウ原告表現 4~12と被告表現 4~12を対比すると, 被告表現 4は原告表現 4と大きく異なるが, 被告表現 5~12は, わずかに別紙言語表現対比目録の下線部が異なるほかは, いずれも原告表現 5~12と同一である したがって, 被告表現 5~12は原告表現 5~12の複製に当たると判断するのが相当である (3) 図表 ( 原告表現 13~18) についてア原告表現 13( 図表 1) は,1 頁全体を縦方向に均等に2 分割し, 左側に上から 品番について, カタログの表示について, マークのご案内, 製品について の説明を順次記載し, 右側に上記 カタログの表示について の記載項目に対応する製品写真, 製品名その他の記載の例として, 上から バスの場合, 水栓, シャワー, トイレの場合, 洗面器の場合, キッチンシンクの場合 を記載したものである こうした表現は, 製品カタログに記載される情報を分かりやすく1ページにまとめて表現する点において表現上の工夫があるから ( なお,USカタログには原告表現 13に対応する図表は見当たらない 甲 11), 作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当である 原告表現 17( 図表 5) は, Bathroom 及び Showeri ng の分類に属する製品の色又は表面加工について, 原告表現 18( 図表 6) は Kitchen の分類に属する製品の色及び表面加工について, それぞれを正方形の枠内に示して整列させたものであり, 製品の色や表面加工の種類を分かりやすく一覧できるようにまとめてある点において表現上の工夫があるから ( なお,USカタログに掲載された色見本は, 色の分類及び配列順並びに枠の形状が原告表現 17 及び18と異なっている 甲 11), 作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められる イ一方, 原告表現 14( 図表 2) は アンダースコアバス の製品につき, サイズ, 重量及び容量, 品番, 価格, 税込み価格, 材質並びに色を, 原告表現 15( 図表 3) はトイレシートの機能の有無及びその解説を, 原告表現 16( 図表 4) は原告カタログ9~21 頁に掲載された製品の品番に対応する部材の名称, 品番, 価格及び税込み価格をそれぞれ表形式で整理したものであるところ, 製品に関する情報を表形式で整理することが一般的であることに加え, その表現も文字又は写真を黒色の細罫線又は太罫線で区切ったありふれたものであるといわざるを得ないから, これらの点に作成者の個性が発揮されているということはできない ウこれに対し, 原告は, 原告表現 14~16につき, 製品を紹介するためにあえてこのような図表形式を採用した点や, 掲載する製品等の選択及び配列 4

に創作性がある旨, 被告は, 原告表現 13,17 及び18につき, 米国コーラー社製品について説明するにはそのような表現が不可欠であり, 又は製品カタログにおいて一般的な表現である旨主張するが, 以上に説示したところに照らし, いずれも採用することはできない エ原告表現 13,17 及び18と被告表現 13,17 及び18を対比すると, 別紙図表対比目録記載のとおり, 被告表現 13は文字のフォント又は色, 写真, 罫線の太さ又は色の一部のみが, 被告表現 17 及び18は正方形枠の面積が異なるほかはいずれも同一であると認められる ( 甲 3,5) したがって, 被告表現 13,17 及び18は原告表現 13,17 及び18の複製に当たると判断するのが相当である (4) 著作権及び著作者人格権の侵害の成否以上によれば, 被告表現 1~3,5~13,17 及び18を含む被告カタログを作成した行為は原告表現 1~3( 前記 (1) イの部分を除く ),5~1 3,17 及び18に係る原告の複製権の侵害に, 被告カタログを配布した行為は譲渡権の侵害に当たる また, その一部を改変した点において原告の同一性保持権を, 被告カタログに原告の名称を表示しなかった点において氏名表示権を侵害するというべきである 2 争点 (2)( 損害額 ) について (1) 著作権侵害に基づく損害ア著作権法 114 条 2 項に基づく損害原告は, 著作権法 114 条 2 項にいう 利益 には消極的利益も含まれることを前提に, 少なくとも原告カタログの作成費用が被告の 利益 に該当すると主張する そこで判断するに, 同項は, 著作権侵害行為による侵害者の利益額を権利者の損害額と推定することによって損害額の立証負担の軽減を図る趣旨の規定であるから, 同項所定の 利益 は 損害 に対応するものであることが前提となると解される ところが, 原告は被告による著作権侵害行為の有無にかかわらず原告カタログの作成費用の負担を免れないのであるから, 原告カタログの一部を複製して被告カタログを作成したことにより被告が当該部分に関する作成費用の支出を免れたとしても, そのために原告に原告カタログの作成費用に相当する額の損害が生じたということはできない そうすると, 上記の支出を免れたことによる被告の利益は, 同項所定の 利益 となり得ないというべきである イ同条 3 項に基づく損害 ( ア ) 原告は, 原告カタログも被告カタログも無償で頒布されていることを踏まえると, 原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の損害が発生しており, その額は原告が原告カタログの複製を許諾する対価, すなわち, 原告カタログの作成費用に基づいて算定されるべきであると主張する 5

( イ ) そこで判断するに, 前記前提事実 (1) のとおり, 原告と被告は共に米国コーラー社の我が国における販売代理店であって, 競合関係にあるから, 原告が原告カタログの全部又は一部の複製を被告に対して許諾することは通常考えられないところである そうすると, 被告による前記複製権及び譲渡権の侵害行為により原告に損害が発生したとみることができるから, 原告は被告に対し著作権の行使につき受けるべき金銭の額の損害賠償を請求し得ると解するのが相当である ( ウ ) しかし, 原告カタログ及び被告カタログはいずれも顧客に無償で配布されるものであり, そのような製品カタログの使用料等を算定する基準が明らかでないことに照らすと, 上記損害額を立証するために必要な事実を立証することは, その性質上極めて困難であるというべきである そこで, 著作権法 114 条の5に基づき相当な損害額を検討するに, 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,1 原告カタログは2 年ごとに改訂されること ( 甲 3,4,19),2 原告は原告カタログの作成のために500 万円程度の費用を要したこと ( 甲 9,21~114,117, 乙 19 なお, 原告は原告カタログの作成費用につき他社への依頼分 256 万 2000 円, 従業員の作業等分 461 万 7677 円の合計 717 万 9677 円を要したと主張するところ, 後者については, 従業員等が多大な労力を費やしたことは認められるものの, これにより人件費が増加するなど現実の出費が生じたことを示す証拠はないので, 約半分の限度で相当と認める ),3 被告は, 平成 25 年 10 月 31 日に被告カタログ3000 部の納品を受け, 翌 11 月 1 日開催の記念パーティーで約 200 部配布するなどした後, 原告から警告を受けたため被告カタログの回収及び廃棄に努めたが, 約 650 部は配布先から回収されていないこと ( 甲 8, 乙 12~15),4 被告は平成 26 年 3 月 3 1 日に被告カタログと内容の異なる新たなカタログの納品を受けたこと ( 乙 18),5 被告カタログの作成費用 ( 他社への依頼分 ) は278 万 2500 円であったこと ( 乙 12), 以上の事実が認められる 上記事実関係によれば, 原告は無償配布する原告カタログの作成費用を2 年間の営業活動により回収することを企図していたと解されるところ, 被告カタログの配布期間中これを妨げられたとみることができる これに加え, 被告カタログの作成部数及び原価 (1 冊当たり約 927 円 ), 被告カタログには被告表現 4など原告カタログと異なる部分が少なからず存在すること ( 甲 3,5) を考慮すると, 原告の損害額は120 万円であると認めるのが相当である ウ他の損害について原告は, 原告の顧客を奪われたことによって営業上の利益が得られなくなったことも損害に当たると主張する しかし, 被告が現に原告の顧客を奪って原告に営業上の損害を被らせたことをうかがわせる証拠がないことに照らすと, 上記イの損害に加えて, そのような損害が生じたと認めることはでき 6

ない (2) 著作者人格権侵害に基づく損害前記 (1) イ ( ウ ) に判示した被告カタログの作成及び配布の経過その他本件の諸事情を踏まえると, 氏名表示権及び同一性保持権の侵害によって生じた損害の額はそれぞれ15 万円 ( 合計 30 万円 ) と認められる (3) 弁護士費用本件訴訟の経過, 上記 (1) 及び (2) の損害額その他本件の諸事情を踏まえると, 原告に生じた弁護士費用のうち30 万円を被告の負担とすべき損害と認めるのが相当である 3 結論以上によれば, 原告の請求は180 万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから, 主文のとおり判決する 論説 1. 本件当事者の原告も被告も 米国コーラー社が製造する商品の輸入会社であり 原告は日本正規代理店 被告は販売代理店と判決文に記載されているから 日本国内で販売する当該商品については競合関係にあることを被告は最初から判っていたのである にもかかわらず 被告が作成頒布した日本語カタログの内容は 原告が独自に制作したカタログの編集物に対し著作権侵害をしたのである 原告発行のカタログ名は 1 THE BOLD LOOK OF KOHL ER 2011-2012 であるのに対し 被告発行のカタログ名は KOH LER であった そして その中の侵害部分については 添付した別紙 対照表に記載されているが 判決はこの表を対照して認否を記載しているのである 2. 裁判所はまず 原告カタログを制作した各業者から その成果物を受領した際に その成果物に係る著作権の譲渡を受けたことを確認している けだし 中には注文主から請け負ったカタログ制作会社から 著作権の譲渡を受けたとする書面 ( 契約書 ) を入手することを忘れている者がいるからである したがって 裁判所がこの事実認定から入ったことは 著作権侵害訴訟の第一歩を忘れてならないことを 当事者に認識させたことになる 3. さて 判決は 争点 1の原告表現 1~18の著作物性について (1) 編集物 (1~3),(2) 文章 (4~12),(3) 図表 (13~18) に区分して判断している 3.1 まず 編集物性 については 別紙 侵害部分対照表 1~3に見るとおり 原告カタログは USカタログから 日本の住宅事情, 生活習慣, 原告担当者の経験に基づく米国コーラー社らしさに関する認識その他の事情を考慮し USカタログにおける中分類の一部を選択した上で これと異なる順に配列し 7

各中分類に含まれる製品及び小分類の一部を選択して配列したもので ページ毎の構成は基本的な構成を決めた上で 適宜写真を挿入するなどして変化させた構成とした したがって 原告カタログに掲載する製品の分類, 選択及び配列に作成者の個性が表現されているということができるから これら選択及び配列は 思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当である と認定したのである これに対し 被告カタログは 原告表現 1~3と被告表現 1~3とを対比すると 被告表現 1と2は 小分類名, 品番及び製品名の選択配列のうち一部を除き 原告表現 1と2と同一であり また被告表現 3は赤枠で囲まれた部分以外は写真や文字フォント等に一部異なる点があるが 概ね原告表現 3に一致している そして 被告カタログの作成に当たり被告が原告カタログを参考にしたことを認めているに照らすと 被告表現 1~3は 原告カタログに依拠して作成されたものであって 上記原告表現 1~3の複製に当たると判断するのが相当である と判断したのである 3.2 文章表現 については 別紙 対照表 4~12のうち 原告表現 6 ~12は 原告カタログに掲載製品のうち特定シリーズの特徴を紹介するもので いずれもその言葉の選択及び表現方法に工夫が見られるから これらの各表現は作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められる と認定したのである そこで 原告表現 4~12と被告表現 4~12とを対比すると 4と4とは大いに異なるが 被告 5~12は原告 5~12とは目録の下線部が異なるほかはいずれも同一であるから 被告表現 5~12は原告表現 5~12に当たるとするのが相当である と判断したのである 3.3 図表表現 については 別紙 対照表 13~18のうち 原告表現 13( 図表 1) は 製品カタログに記載される情報をわかり易く1ページにまとめて表現する点において 表現上の工夫があるから 作成者の思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当である と認定したのである 原告表現 13,17,18と被告表現 13,17,18とを対比すると 別紙 対照表 のとおり 被告 13は文字のフォント, 色, 写真, 罫線の太さ又は色の一部のみが 被告 17,18は正方形枠の面積が異なるほかは いずれも同一であると認められるから 被告表現 13,17,18は原告表現 13,17,1 8の複製に当たる と判断するのが相当であるとした 3.4 以上の理由により 裁判所は原告の主張を肯認し 被告は原告の編集物著作権を侵害していると判断したのである すると 被告が行った原告の著作権侵害は 本権としては複製権と譲渡権の侵害となり 著作者人格権では原告の同一性保持権と氏名表示権の侵害となる と裁判所は認定したのであり 妥当な判断であるといえるのである 4. 次の争点は損害額であるが 判決は合計 180 万円と判示したのである 8

4.1 著作権侵害に基づく損害について 原告は法 114 条 2 項を適用し 同項にいう利益には消極的利益である原告カタログの作成費用が被告の利益に該当すると主張したが これに対し裁判所は 被告が 原告カタログの一部を複製して被告カタログを作成したことにより被告が当該部分の作成費用の支出を負われたとしても そのために原告に原告カタログの作成費用に相当する額の損害が生じたということはできない そうすると 上記の支出を免れたことによる被告の利益は 同項所定の 利益 となり得ないというべきである と認定したのである また 原告は法 114 条 3 項に基づく損害の主張をしたが 本件当事者はわが国においては競合関係にあり 原告が原告カタログの全部又は一部の複製を被告に許諾することは通常考えられないことであるから 被告による複製権と譲渡権の侵害行為によって原告に損害が発生したと見ることができるから 原告は被告に対し著作権の行使につき受けるべき金銭の額の損害賠償を請求し得ると解するのが相当である と 裁判所は説示したのである しかし ここは本件についての法 114 条 3 項の適用をめぐる問題であるから 先に不可といいながら 後では可ということは矛盾ではないか それとも裁判所の真意は 法 114 条 3 項の適用は競合者間では通常考えられないことであるのだが それを無視すればそういう関係者であってもよいのではないか ということなのだろうか 4.2 ところで 原告カタログも被告カタログも 需要者 取引先には無償で配布されるものであるから 商品カタログについての使用料を算定する基準は明らかでなく 損害額を立証することは性質上極めて困難である と裁判所は認定した後 法 114 条の5に基づき相当な損害額について検討したのである そして いろいろ考慮した結果 損害額は120 万円であると認めるのが相当である と判断したのである 4.3 次に 著作者人格権の侵害に基づく損害として裁判所は 氏名表示権及び同一性保持権の侵害によって生じた損害額は それぞれ15 万円 2=30 万円と認定したのである さらに裁判所は 弁護士費用については 損害額その他本件の諸事情 を踏まえると 30 万円を被告の負担すべき損害と認めるのが相当であると認定したのである 4.4 しかしながら なぜ 著作者人格権侵害の損害額が30 万円, 弁護士費用が30 万円と算定するのが相当といえるのか 的確な理由は全く述べられていないから 理解に苦しむところである それらの金額についてはあえて 相当 とはいえても 妥当 とはいえない と筆者は思うのである 牛木理一 9

カタログ目録 ( 別紙 ) 1 カタログ名 THE BOLD LOOK OF KOHLER 2 013-2014 発行者原告 2 カタログ名 THE BOLD LOOK OF KOHLER 2 011-2012 発行者原告 3 カタログ名 KOHLER 発行者 被告 10

侵害部分対照表 ( 別紙 ) 番号 原告表現 被告表現 1 別紙大 中 小分類対比目録の 原告別紙大 中 小分類対比目録の 被告カタログ 欄記載の分類カタログ 欄記載の分類 2 別紙品番 製品名対比目録の 原告カ別紙品番 製品名対比目録の 被告カタログ 欄記載の品番及び製品名タログ 欄記載の品番及び製品名 3 別紙レイアウト対比目録各ページ上段別紙レイアウト対比目録各ページ下段 4 別紙言語表現対比目録記載 1の 原告別紙言語表現対比目録記載 1の 被告カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 5 別紙言語表現対比目録記載 2の 原告別紙言語表現対比目録記載 2の 被告カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 6 別紙言語表現対比目録記載 3の 原告別紙言語表現対比目録記載 3の 被告カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 7 別紙言語表現対比目録記載 4の 原告別紙言語表現対比目録記載 4の 被告カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 8 別紙言語表現対比目録記載 5の 原告別紙言語表現対比目録記載 5の 被告カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 9 別紙言語表現対比目録記載 6の 原告別紙言語表現対比目録記載 6の 被告カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 別紙言語表現対比目録記載 7の 原告別紙言語表現対比目録記載 7の 被告 10 カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 別紙言語表現対比目録記載 8の 原告別紙言語表現対比目録記載 8の 被告 11 カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 別紙言語表現対比目録記載 9の 原告別紙言語表現対比目録記載 9の 被告 12 カタログ 欄の 内容 欄カタログ 欄の 内容 欄 13 別紙図表対比目録記載 原告図表 1 別紙図表対比目録記載 被告図表 1 14 別紙図表対比目録記載 原告図表 2 別紙図表対比目録記載 被告図表 2 15 別紙図表対比目録記載 原告図表 3 別紙図表対比目録記載 被告図表 3 16 別紙図表対比目録記載 原告図表 4 別紙図表対比目録記載 被告図表 4 17 別紙図表対比目録記載 原告図表 5 別紙図表対比目録記載 被告図表 5 18 別紙図表対比目録記載 原告図表 6 別紙図表対比目録記載 被告図表 6 ( 以下別紙省略 ) 11