Microsoft Word - 20年度(行情)答申第585号.doc

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諮問庁 : 防衛大臣諮問日 : 平成 28 年 2 月 25 日 ( 平成 28 年 ( 行情 ) 諮問第 192 号 ) 答申日 : 平成 29 年 1 月 27 日 ( 平成 28 年度 ( 行情 ) 答申第 694 号 ) 事件名 : 洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準 運用上の留意事項等に

異議申立てしていますが, 協会 ( 原文ママ ) として黙認しています 本件に関しても, 諮問庁は国のトップなのだから, もっともっと労働問題に積極的に取り組み, 労基法厳守で, 場合により, 行政処分すべきである 警察なら, スピード違反すれば即行政処分されますが, 労基法では, 基本強い行政処分

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

て本学が過去に公表した内容は除く ) 及び 3 当該事故に係る診療科, 機構への報告日その他報告内容に係る情報として事務担当者が加筆したメモ について全部開示を求める 少なくとも患者, 医師の個人情報に係らない部分については開示すべき そもそもこの報告書は同じような事故が起きないようにするために医師

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第 3 諮問庁の説明の要旨 1 本件事案の概要本件は, 審査請求人が平成 29 年 8 月 29 日付けで法人文書の開示請求を行ったことに対し, 同年 9 月 29 日付け千大総第 307 号により, 法人文書の一部を不開示とする開示決定等処分 ( 処分 1) を行ったところ, 審査請求が提起された

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

基づき, 平成 27 年 9 月 29 日付けで, 特定労働基準監督署( 以下 特定署 という ) へ特定日までに提出された特定事業場の就業規則, 就業規則届及び意見書 36 協定書, 同月 30 日付けで, 特定署に提出された特定事業場の36 協定書 3 年分 に係る開示請求を行った (2) 三重

ありどのような証言がなされたのか ( 請求人にとって虚偽と思われる証言が無いか等 ), また産業医が本人の意見を聞かずにどう判断し診療録に記載したのかを知る権利が請求人にはあると考える 3 請求人については, 特定理由等から特定機関等が千葉大学に対して診療録の開示を求める可能性もあり得るが, 千葉大

1 本件審査請求について (1) 本件審査請求に係る開示請求は, 法に基づき, 処分庁に対し, 本件対象文書の開示を求めたもの ( 以下 本件開示請求 という ) である (2) 本件開示請求を受けて, 処分庁は, 本件対象文書を作成しておらず不存在として, 不開示決定 ( 原処分 ) を行った (

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っている以上, 被面接者においてそもそも特別な対応策を採る必要はないといえる ウよって, 本件対象文書の不開示部分は法 5 条 6 号に該当しないといえる (2) 意見書 ( 添付資料省略 ) ア裁判官の場合, 新任判事補志望者カードの全部が開示されている ( 資料 1) ことからすれば, 検事に関

理の手引 は, 開示の実施においては, 行政文書をありのまま開示する (23 枚目 ) として, 原則として加工はしない ( 同上 ) としている したがって本件対象文書の電磁的記録の開示に当たっては, 当該電磁的記録をそのままのデータ形式で開示すべきである また, 同様な趣旨で本件対象文書の電磁的

諮問庁 : 国土交通大臣諮問日 : 平成 30 年 9 月 26 日 ( 平成 30 年 ( 行情 ) 諮問第 424 号 ) 答申日 : 平成 31 年 3 月 29 日 ( 平成 30 年度 ( 行情 ) 答申第 554 号 ) 事件名 : 不動産鑑定士に対する懲戒処分について に係る決裁文書の

り公表されないことが日米両政府間で合意されており, これを公にすることは, 米国との信頼関係が損なわれるおそれがあると認められることから, 法 5 条 3 号に該当するため不開示とする決定 ( 原処分 ) を行った (3) これに対し, 異議申立人は, 国土交通大臣に対して, 原処分の取消しを求めて

消費者庁にも苦情相談を行い, 今にも消費者庁が動くであろうこと等を話し, 異議申立人に謝罪及びデータ削除を求めているとのことであった 当初監察部は, 異議申立人に謝罪に応じるよう促したが, 異議申立人が使用しているデータは, 登記事項証明書記載のデータと同一であり 法 を犯していないので謝罪には応じ

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

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として本件対象文書にかがみを加えたものを特定した 本件開示請求に対しては, 法 11 条に規定する開示決定等の期限の特例を適用し, まず, 平成 27 年 4 月 20 日付け防官文第 6779 号により, かがみについて開示決定を行った後, 同年 9 月 3 日付け防官文第 号により

問にさらされることはむしろあるべき姿であり, それによって一層公益の増進に資するともいえる 特に, 本件のような面接試験の場合には, 試験結果の開示が, 面接試験以外の事由で受験者を選抜したのではないことを示すといった効果もあり, 面接試験が適正に行われることを確保するに大きく資すると言える したが

く, 未支給年金受給権者の個人情報の開示を求めているとして, 法 12 条 自己を本人とする開示を請求することができる に当たらないため, 開示することはできないことを伝え, 取り下げの意思を確認した しかしながら, 異議申立人は, 不開示である旨の正式な回答がほしいとして, 開示請求を続けたもので

おいて開催されていた法の制度運営に関する検討会の報告 ( 平成 17 年 3 月 29 日 ) では, 法の運用に関する改善措置として, 理由付記に関して 特に, 文書不存在を理由とする不開示決定については, 例えば, 請求対象文書をそもそも作成 取得していない, 作成したが保存期間が経過したので廃

(1) 農林水産省の事務官である特定個人 Aが職務上作成した行政文書で公にできる行政文書は存在するはずであり, 公開しなければならない ( 諮問第 551 号 ) (2) 本来であれば, 開示できる文書が存在しない, 存否応答しない, 不存在と, 文書の性質によって, 処分内容が異なるはずである 特

諮問庁 : 株式会社日本政策金融公庫諮問日 : 平成 28 年 2 月 8 日 ( 平成 28 年 ( 独個 ) 諮問第 3 号 ) 答申日 : 平成 28 年 4 月 27 日 ( 平成 28 年度 ( 独個 ) 答申第 1 号 ) 事件名 : 本人に関する融資審査の検討資料の不訂正決定に関する件

ウ 特定個人 a に訂正してほしいとは, 私は書いてない これも日本年金機構の単純ミスなのか? それとも他に理由があるのか? 事実に基づいて, 説明を求める 私の公共職業安定所における氏名は, カタカナの 特定個人 b のスペースなしで管理されている 私の資格画面も氏名欄はカタカナである 国民年金保

イ不動産鑑定評価書のうち次の部分 ( ア ) 鑑定評価額並びに鑑定評価額を導くための単価 補正係数 補正事項 想定係数及び想定事項 ( イ ) 取引事例に関する情報 ( 市町村名を除く ) (3) 開示しない理由ア (2) のア当該文書の作成又は取得をしていないためイ (2) のイの ( ア ) 条

業務 とあるが, 当該支払の一時差止めに係る決定を除く と, されている すなわち, 決定に係る業務は, 事業管理課長である ウその決定に係る文書及びデータは存在する 事業管理課長の決定により, 年金機構は, 障害者の年金給付を一時差し止めるための電算処理をしている事実がある そして, その事実から

査請求人 ) が 平成 5 年分所得税確定申告書 ( 以下 本件請求保有個人情報 1 という ) の開示を求めるものである 処分庁は, 本件開示請求に対し, 本件請求保有個人情報 1は文書保存期間 (7 年 ) が満了し, 既に廃棄しているとして, 平成 27 年 12 月 2 2 日付け特定記号第

いるものである 2 意見書 1 における主張 (1) 非公開理由説明書は 判例の動向を調査した形跡もなく 単に非開示 条項を文理解釈のみに終始 主張したものにとどまる もっとも 非開示条項を悪用し 白紙または白紙状態の業務日報を全 面黒塗りにするなど決裁過程の形骸化のみならず 秋田県情報公開条例 (

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

無い (3) 特定市が振興協会会長 Aと市教育委員会とで一体に推進した当該文化事業は事業の実施前と実施後のまちの変化における事業の効果について国への報告義務があり, 公正に適法に事業を行う責務の存在は当該文化事業の目標の1は中心市街地の賑わいの促進にあって中心市街地活性化ソフト事業であって公開されて

( 別紙 ) 答申 : 行文第 24 号 諮問 : 行文第 24-1 号 答申第 1 審査会の結論実施機関が行った本件不開示決定処分については適正であったと認める 第 2 諮問事案の概要 1 行政文書の開示請求異議申立人は 平成 24 年 5 月 7 日 奈良市長 ( 以下 実施機関 という ) に

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の対象として 人事院事務総長引継書 を特定し, 同年 9 月 29 日付け行政文書開示決定通知書を審査請求人に送付した 2 審査請求人が主張する本件審査請求の趣旨及び理由審査請求人は, 事務引継書が1 名分しか存在しないという決定は不自然である, 他の職員についても事務引継書がなければ, 前任者から

12. 地価公示は 土地鑑定委員会が 毎年 1 回 2 人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め その結果を審 査し 必要な調整を行って 標準地の正常な価格を判定し これを公示するものである 13. 不動産鑑定士は 土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては 近傍類地の取 引価格から

ださい との付記があったことから, 処分庁が行政文書の特定を容易にできるよう, 審査請求人において法人設立時に提出されたものと思われる行政文書の名称を列記して記載したところである 本件請求を受けて, 処分庁は, 補正を要する事項があるとして, 平成 27 年 11 月 17 日付け特定記号第 136

文書の探索が不十分であるか, または, 対象文書を情報公開の適用除外か解釈上の不存在と判断することが違法である 本件不開示情報は, いずれも, 法 5 条各号に該当しないか, 例え該当したとしても, 開示を定めたただし書き全てに該当する 本件不開示情報は, いずれも, 法 7 条に該当する とくに,

第一審査会の結論 豊中市教育委員会が行った 内部公益通報に係る調査の実施について ( 報告 ) を不 開示とした決定は妥当ではなく 別紙に記載した部分を除き開示すべきである 第二審査請求の経過 1 開示請求審査請求人は 平成 25 年 7 月 17 日 豊中市情報公開条例 ( 以下 条例 という )

横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申

別紙 答申 1 審査会の結論 委託事業者の企画提案書 及び 選考会議の資料 について行われた部分公開の決定は 妥当である 2 異議申立ての趣旨 (1) 異議申立人 ( 以下 申立人 という ) は 神戸市情報公開条例 ( 以下 条例 という ) に基づき 以下の公開請求 ( 以下 本件請求 という

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

警備の下にあり 仮に本件対象文書が開示されたとしても院内への不法な侵入及び院内での不法な活動は困難であり 犯罪の予防 鎮圧等に支障を及ぼすとは考えられず 合理性を欠いている したがって 本件対象文書は法第 5 条第 4 号には相当せず 規程第 4 条第 3 号に定める事務局不開示情報に該当しないこと

1 審査会の結論平成 30 年 1 月 12 日付けで審査請求人が行政文書公開請求した 深沢地域整備事業に関し J R 東日本の要望 条件 要請 意向等の文書 ( 復命書含む ) 及び前記の記載がある文書 に対して実施機関鎌倉市長が平成 30 年 3 月 12 日付けで行った行政文書一部公開決定処分

(Microsoft Word - 06 \223\232\220\\\217\221\201i\214\210\222\350\201j.doc)

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第183号.doc

スライド 1

情報公開答申第733号本文(諮問第923号)

11総法不審第120号

書のみが公開されており, 設計書は事前にも事後にも公開されていない 設計書が公開されていないことにより, 測量業務における加減率 ( 耕地, 村落地, 準市街地, 市街地, 過密市街地等のどれに該当するかによる人員や作業時間 ) が不明であり, また, 測量の変化率の諸条件係数 ( 傾斜区分, 視通

Microsoft Word - 暱京髟裆 平拒16年(衄ㇳ)32.docx

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

う 9 枚の行政文書 及び開示すべきとされた 別紙に掲げる部分 の全て について, 民事裁判管轄権に関する日米合同委員会合意関連文書 ( 以下 文書 1 という ) 及び 合意に係る日米合同委員会議事録 ( 以下 文書 2 という ) を特定し, 前者を開示, 後者を不開示とする各決定 ( 原処分

Taro-答申第64号

ターの上司職員に隠匿 ( 隠滅 ) され送付がない為に, 法律に基づいた開示請求により送付をして頂きたいための開示請求であるが, 平成 19 年 10 月 22 日現在, 通帳紛失の郵便貯金 : 総合口座 特定番号 A ( 担保定額定期 : 枝番特定番号 B~Cを含む ):( 口座名義人 ) 開示請

(審42)参考 福島県内の宅地の調査

総務省が所管する地方税法ではなく 財務省が所管する国有財産法の適用を受けるとのことであり 実施機関の本件決定は失当である (2) 本件は 国税庁からの教示による公文書公開請求であり これを実施機関が非公開決定するとは言語道断である (3) 尖閣諸島の国有化は 日本と中国の外交問題に発展していることも

これを公にした場合には 政府の情勢認識 関心事項 情報収集能力等が明らかとなり 又は推察されると認められる したがって 当該不開示部分を公にすることにより 我が国の安全が害されるおそれ 又は公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき 相当の理由があるとして法 5

Microsoft Word - H30 市税のしおり最終版

(審47)参考2 福島県内の宅地の調査

答 申 第 1 審議会の結論名古屋市長 ( 以下 実施機関 という ) が 本件異議申立ての対象となる保有個人情報を一部開示とした決定は 妥当である 第 2 異議申立てに至る経過 1 平成 23 年 12 月 21 日 異議申立人は 名古屋市個人情報保護条例 ( 平成 17 年名古屋市条例第 26

を原因としたものであるのか, あるいは処分庁の事務又は事業の在り方自体に内在する問題を原因としたものであるのかを精査した上で4 号該当の適否を判断するべきである 後者を原因とした不都合であるとすれば, 開示情報により処分庁の諸活動を国民に説明する責務が全うされるように, 処分庁の事務又は事業の在り方

(審44)参考2  福島県内の宅地の調査

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

大情審答申第 号

11総法不審第120号

11総法不審第120号

情報公開に係る事務処理規則 ( 平 18 規則第 16 号平成 18 年 8 月 1 日 ) 改正平 19 規則第 52 号平成 19 年 9 月 21 日平 26 規則第 2 号平成 26 年 5 月 13 日平 26 規則第 22 号平成 27 年 3 月 31 日 第 1 章総則 ( 目的 )

2 審査請求の理由 (1) 審査請求書 ( 諮問第 586 号ないし第 589 号 ) ア審査請求の経緯 ( ア ) 特定年月日 A, 平成 26 年度司法書士試験筆記試験実施 ( イ ) 特定年月日 B, 平成 26 年度司法書士試験多肢択一式における法務省解答発表 ( ウ ) 特定年月日 C,

平成25年2月 日

答申第693号

11総法不審第120号

11総法不審第120号

不動産請求の 所有者事項 情報は, 当該不動産の登記事項のうち, 現在の所有者の氏名又は名称及び住所並びに所有者が2 人以上いる場合は所有者ごとの持分に関する情報の提供を受けることができます なお, 登記所で交付を受けることができる 登記事項要約書 とは異なります また, 所有者事項 情報請求では,

横情審答申第 1534 号 平成 3 0 年 11 月 15 日 横浜市長林文子様 横浜市情報公開 個人情報保護審査会 会長 藤原靜雄 横浜市個人情報の保護に関する条例第 53 条第 1 項の規定に基づく諮問 について ( 答申 ) 平成 29 年 5 月 1 日総職健第 86 号による次の諮問につ

地域経済分析システム () の表示内容 ヒートマップでは 表示する種類を指定する で選択している取引価格 ( 取引面積 mあたり ) が高い地域ほど濃い色で表示されます 全国を表示する を選択すると 日本全国の地図が表示されます 都道府県単位で表示する を選択すると 指定地域 で選択している都道府県

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

処分済み

第1 審査会の結論

Microsoft Word - 答申第141号.doc

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

Microsoft Word - 答申第41号.doc

処分済み

答申第203号(公表用)

第 1 基本的事項 1 業務内容についての順守事項本業務を行う不動産鑑定士又は不動産鑑定士補 ( 以下 不動産鑑定士等 という ) は 本業務が単に個別地点について行う鑑定評価と異なり 同一価格時点で大量に行う鑑定評価であり 特に面的な価格の均衡が求められる固定資産税評価のための基礎資料を作成するも

ついて その取消しを求めるというものである (2) 異議申立ての理由異議申立人が 異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な理由は 次のように要約される ア異議申立書における主張異議申立人の配偶者が一方的に有り得ない夫婦間暴力の被害申告 ( 以下 虚偽 DV 被害申告 という ) を 警察署

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

子ファイルを紙に出力する際に, 当該ファイル形式では保存されている情報が印刷されない場合が起こり得る これと同様に当該ファイル形式を他のファイル形式に変換する場合にも, 変換先のファイル形式に情報が移行しない場合が設定等により技術的に起こり得るのである 本件対象文書が当初のファイル形式を変換して複写

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11総法不審第120号

第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

ないことから明らかである イ全体設計書が請負業者の承諾もなく変更され 当初の全体設計書とは異なる工事完成後の出来形数値が記載された全体設計書が会計検査時に用いられており 違法がある ウ全体設計書の保存期間は10 年間とされているが 入札に供した全体設計書が廃棄されていることについて違法がある エ低入

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平成  年(オ)第  号

1 天神 5 丁目本件土地及び状況類似地域 天神 5 丁目 本件土地 1 状況類似地域 標準宅地

11総法不審第120号

固定資産税の課税のしくみ < 評価額と課税標準額と税額の推移 > ( 土地編 ) 課税標準額 評価額 税 額 なぜ, 地価が下落しているのに, 土地の固定資産税が上昇するの!? 2 なぜ, 平成 6 年評価額が急激に上昇したの!? 3 < 公的土地評価相互の均衡と適正化 > < 地価公示価格の一定割

Transcription:

諮問庁 : 国土交通大臣諮問日 : 平成 20 年 9 月 24 日 ( 平成 20 年 ( 行情 ) 諮問第 589 号 ) 答申日 : 平成 21 年 3 月 31 日 ( 平成 20 年度 ( 行情 ) 答申第 585 号 ) 事件名 : 特定の標準地番号に係る鑑定評価書の一部開示決定に関する件 答申書 第 1 審査会の結論特定の標準地番号に係る鑑定評価書 ( 以下 本件対象文書 という ) につき, その一部を不開示とした決定については, 異議申立人が開示すべきとする部分を不開示としたことは, 妥当である 第 2 異議申立人の主張の要旨 1 異議申立ての趣旨行政機関の保有する情報の公開に関する法律 ( 以下 法 という )3 条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し, 平成 20 年 6 月 6 日付け国広情第 63 号により国土交通大臣 ( 以下 処分庁 又は 諮問庁 という ) が行った本件対象文書の一部開示決定 ( 以下 原処分 という ) について, その取消しを求める 2 異議申立ての理由異議申立人の主張する異議申立ての理由は, 異議申立書及び意見書の記載によると, おおむね以下のとおりである 原処分は, 鑑定評価書に関する平成 15 年度 ( 行情 ) 答申第 590 号及び591 号に基づき行われたとのことであるが, 大都市と地方, 当時と現在では事情が大きく異なっている 国土交通省のウェブサイト ( 土地総合情報システム ) には, 鑑定評価書で使用している取引事例と同一の方法で入手した情報と思われる情報が掲載されているが, そこには住所として市名及び地区 大字までが表記されており, また, 最寄駅として駅名, 距離 ( 分 ) が掲載されている したがって, 鑑定評価書で不開示とされている, 所在及び地番並びに 住居表示 等の欄については, 大字又は町名までは開示すべきであり, 主要交通施設の状況の欄については, すべて開示すべきである 意見書においては, 諮問庁の理由説明書の各項目ごとに反対意見が記載されている 第 3 諮問庁の説明の要旨 1 土地価格の情報について (1) 地価公示について地価公示は, 地価公示法に基づいて, 国土交通省に置かれた土地鑑 1

定委員会が, 毎年 1 月 1 日時点における標準地の正常な価格等を3 月下旬に官報で公示するものであり, 一般の土地の取引価格に対し指標を与え, また, 公共用地の取得価格の算定に資するとともに, 不動産鑑定士等が土地についての鑑定評価を行う場合の規準となることにより, 適正な地価の形成に資することを目的としている 平成 20 年地価公示においては, 都市計画区域等の標準地 29,1 00 地点について公示されている 公示価格を算定するに当たっては, 地価公示法 2 条に基づいて, 同委員会が2 名以上の不動産鑑定士に標準地の鑑定評価を求めることとされている 同委員会は, 不動産鑑定業者の業務に従事する不動産鑑定士のうちから一定の資格要件に該当する者を鑑定評価員として委嘱しており,1つの標準地について, 通常は2 人の鑑定評価員が 標準地の鑑定評価要領 ( 平成 8 年同委員会決定 ) に定められた様式に従い鑑定評価書をそれぞれ作成し, 同委員会に提出することとされ, 鑑定評価書の提出を受けた同委員会は, その内容を審査し, 必要な調整を行って当該標準地の1 平方メートル当たりの正常な価格を判定している (2) 不動産取引価格情報の提供について不動産市場の透明化, 取引の円滑化 活性化等を図るため, 国土交通省においては, 規制改革推進のための3か年計画 ( 平成 16 年 3 月閣議決定 ) 等に基づき, 不動産取引価格情報 ( 以下 取引価格情報 という ) の提供を行っている 取引価格情報は, 平成 17 年度から三大都市圏の政令指定都市を中心に調査に着手, 平成 18 年 4 月より国土交通省のインターネットを通じて調査結果の公表を開始した 平成 19 年度からは, 地価公示対象区域と同等まで調査対象区域を拡大し, 土地情報総合システムとして, 全国の不動産取引価格の調査結果を公開している 取引価格情報は, 法務省より不動産の取引に係る登記情報の提供を受け, 取引当事者 ( 買主 ) に対して取引価格等に関する調査を行うことで収集している 調査によって得られた情報は, 利用者の使い勝手を考慮しつつも, 個別の物件が容易に特定できないよう配慮した上で, 取引された不動産の種類 ( 住宅地, 工業地, 商業地等 ) 及び内容別 ( 更地, 土地 建物一体の取引, マンション等 ) に, 住所 ( 大字又は町名まで ), 取引価格, 面積, 建物の構造, 最寄り駅からの所要時間等の情報を四半期単位ごとに取りまとめ, 平成 19 年 10 月から現在の提供方法により公開しているものである 2 本件対象文書について本件対象文書は, 大阪府阪南市の特定地番の住宅地の標準地に係る平成 17 年ないし同 20 年の鑑定評価書で, それぞれ鑑定評価の総括的な事項 2

を記載している部分 (1 頁目 ) と試算価格の算定の詳細な内訳を記載している部分 (2 及び3 頁目 ) から構成されているものである 本件対象文書 2 頁目には, 3. 試算価格算定内訳 のうち, (1) 比準価格算定内訳 について, 取引事例比較法による試算価格 ( 比準価格 ) の算定内訳等が記載されている ここで, 取引事例比較法とは, 多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い, これらに係る取引に応じて事情補正, 時点修正を行い, かつ, 地域要因の比較及び個別的要因の比較にて求められた価格を比較考量し, 対象不動産の試算価格を求める手法であり, これにより求めた試算価格を 比準価格 という 比準価格とは, 鑑定評価員が, 標準地近傍での取引事例の中から標準地の鑑定評価額を算出するのに適した取引事例を厳選した上で所要の補正を施し算出し, 地価公示における鑑定評価額を決定する上で中核を成すものであり, 取引事例の収集状況いかんが鑑定評価額の精度を左右するといっても過言ではない 比準価格算定内訳には, 不動産鑑定士が標準地の鑑定評価額を算出するために不動産鑑定評価の方法の一つである取引事例比較法により,5つの事例 ( 取引事例地 ) に係る情報 ( 当該事例地の場所, 取引の行われた年月日, 地積, 取引価格, 取引事例地の実際の取引価格から試算価格である比準価格を導き出すために行った各種補正の数値, 取引事例地の状況等 ) から試算価格である比準価格を算出したことを示す情報が記載されている 比準価格算定内訳のうち 所在及び地番並びに 住居表示 等 には取引事例地の所在 地番 住居表示が, 主要交通施設の状況 には取引事例地の最寄り駅の駅名, 駅から標準地までの距離 (50m 未満の場合は 近接 と表示), 最寄り駅からの方角 (8 方位にて表示 ) が, それぞれ記載されている なお, この外に 地積, 接面道路の状況, 法令上の規制等, 取引価格(1 平方メートル当たり ), 取引時点, 月率変動率, 時点修正, 地域要因の比較, 地域要因の比較の内訳, 比準価格決定の理由 等が記載されている 3 原処分の妥当性について諮問に当たって, 異議申立人が開示を求めている部分について, 諮問庁が検証した結果は以下のとおりである (1) 所在及び地番並びに 住居表示 等 欄の不開示情報の妥当性について原処分では, 比準価格算定内訳の取引事例地の市名を除く所在 地番及び住居表示を不開示としている ア法 5 条 1 号該当性について 3

当該欄には, 比準価格算定内訳の取引事例地の所在 地番及び住居表示が記載されており, これは何人でも閲覧ができる不動産登記簿や市販の住宅地図等と照合することにより, 当該取引事例地の所有者又は取引当事者が明らかとなることから, それぞれの取引事例地ごとに, 取引事例地の所有者又は取引当事者が個人である場合については, 法 5 条 1 号の個人に関する情報であって, 特定の個人を識別することができる情報に該当する 鑑定評価員が標準地の鑑定評価額を算定するに当たって, どの取引事例地を使用したかについては法令の規定又は慣行として公にされ, 又は公にすることが予定されている情報であるとは言えず, 同号ただし書イからハまでに該当しない よって, 法 5 条 1 号に該当するとして不開示とした原処分は妥当であると考える なお, 上記の判断は, 地価公示鑑定評価書に関する内閣府情報公開審査会の答申 ( 平成 15 年度 ( 行情 ) 第 590 号及び第 591 号 ) を踏まえたものである イ法 5 条 2 号イ該当性について本件対象文書の比準価格算定内訳に記載されている取引事例地で法人が所有者又は取引当事者であるものについては, 法 5 条 2 号の法人に関する情報であり, 個人の場合と同様, これが公にされることとなると, 不動産登記簿や住宅地図等と照合することにより, その所有者や取引当事者である法人が特定されることとなる そして, 通常法人にとっては, 個別の土地取引の状況は企業経営上の方針又は戦略に関する情報として, 競争相手等に対して秘匿しているのが一般的であることから, 上記部分が明らかとなると, これにより, 取引事例地に係る土地の取引を行った法人が特定されることから, 当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められ, 法 5 条 2 号イに該当し, 不開示とすることが妥当であると考える なお, 上記の判断は, 前述の地価公示鑑定評価書に関する内閣府情報公開審査会の答申を踏まえたものである ウ法 5 条 6 号該当性について本件対象文書には, 取引事例地の地積及び取引時点が極めて詳細かつ具体的に記載され, 当該情報は原処分において開示していることから, 異議申立人の主張する所在を開示することにより, 当該地区における取引が行われた土地の広さ等は一般人でもおおよそ認識し得るものであり, さらに, それらの情報から通常の人が一般に閲覧又は入手できる不動産登記簿や住宅地図などと照合することにより, 取引事例地がより容易に推測されるおそれがある 4

地価公示における標準地の鑑定評価のための取引事例は, 不動産鑑定士が取引当事者等に対するアンケート調査により被調査者の任意の協力を得て収集する情報 ( 平成 17 年度から国土交通省土地鑑定委員会委員長名で, 一括してアンケートを行っている ) であり, そこで収集される情報は, 取引事例者にとっては通常他人に知られたくない土地取引という私的な契約に関するものを, 物件名や個人名を特定できない形で情報提供する旨を約束の上, 任意に提供してもらうものである したがって, 仮に, 以上のような取引事例地の関係者等が推測されるような情報が公にされることとなれば, 今後アンケートに協力する者が得られなくなるなどして取引事例の収集に支障を来すおそれがあり, そうなれば, 地価公示の標準地の鑑定評価の際の重要な情報の入手が困難となり, 地価公示に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから, 法 5 条 6 号柱書きに該当し, 不開示とすることが妥当であると考える (2) 主要交通施設の状況 欄の法 5 条 6 号該当性について当該不開示部分には, 取引事例地の最寄り駅の駅名, 駅からの方角 (8 方位にて表示 ), 及び駅からの距離が記載されているところ, さらに, 本件対象文書には, 取引事例地の地積及び取引時点が極めて詳細かつ具体的に開示されていることから, 当該情報を公にすることにより, これらの情報に基づき, 一般に容易に閲覧又は入手できる不動産登記簿や住宅地図, 都市計画図等から取引事例地が推測されるおそれがある 仮に, 以上のような当該取引事例地の関係者等が推測されるような情報が公にされることとなれば, 上記 (1) ウと同様, 今後アンケートに協力する者が得られなくなるなどして取引事例の収集に支障を来すおそれがあり, そうなれば, 地価公示の標準地の鑑定評価の際の重要な情報の入手が困難となり, 地価公示に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから, 法 5 条 6 号柱書きに該当し, 不開示とすることが妥当であると考える なお, 上記の判断は, 前述の地価公示鑑定評価書に関する内閣府情報公開審査会の答申を踏まえたものである (3) 異議申立人の主張について異議申立人は, 国土交通省のウェブサイト ( 土地総合情報システム ) には, 鑑定評価書で使用している取引事例と同一の手法で入手した情報と思われる情報が掲載されていることから, 鑑定評価書においても同等の情報は開示すべきである旨を主張するが, 取引価格情報は, その所在をある程度の地域まで情報提供しなければ, その目的を達しないことか 5

ら, 住所 ( 地区 大字まで ) 及び最寄り駅からの所要時間を含めて公開しているところである しかしながら, これらの情報は, 個人情報保護の観点から, 個別の物件が容易に特定できないように配慮した上で公開されることを前提に取引当事者から取引価格情報を収集しているため, 所在以外の部分では, 取引時期を四半期単位で表示, 取引価格 ( 平方メートル単価 ) は物件の特定を避けるため上位 3 桁目を四捨五入して表示, 面積は200 平方メートル未満は5 平方メートル刻み,200 平方メートル以上は上位 3 桁目を四捨五入して表示, 鉄道との近接状況については鉄道駅名及び当該地から鉄道駅までの時間距離 ( 分 ) を,30 分未満は分単位,30 分以上 1 時間未満,1 時間以上 1 時間 30 分未満などに区分して表示するなどして, 調査によって得られた情報を個別の物件が容易に特定できないよう配慮し加工した上で公表している 一方, 地価公示鑑定評価書の比準価格算定内訳においては, 所在及び地番並びに 住居表示 等, 主要交通施設の状況, 地積, 接面道路の状況, 法令上の規制等, 取引価格, 取引時点, 月率変動率, 時点修正, 地域要因の比較 及び 比準価格決定の理由 がそれぞれ極めて詳細かつ具体的な当該取引事例地の存する地区に関する情報が記載されているが, 物件が特定できない範囲で開示 不開示の判断を行った結果として, 所在及び地番並びに 住居表示 等 の市名以外の所在 地番 住居表示及び 主要交通施設の状況 を不開示としているものである よって, 異議申立人は, 個人情報を積極的に開示しておきながら, また同一の個人情報の一方を非公開にする理由がないと主張するが, 上記のとおり, いずれの制度も物件が特定できないようにそれぞれの公開する趣旨を考慮の上, 個人情報が守られる範囲で最大限の不動産取引に係る情報を提供しているものであり, 地価公示の鑑定評価書における開示情報と取引価格情報の公表状況は異なっていることから, 両者を同一のものとして開示を求める異議申立人の主張は採用できない そもそも鑑定評価書の取引事例地に係るそれぞれの情報と取引価格情報に係るそれぞれの情報は, 制度により利用目的が異なり, そのために必要な事項の開示部分と個人情報に係る特定されないようにした部分の区分が異なっており, それぞれ全体として捉えるべきであり, 取引事例地の所在や主要交通施設の状況などある特定の事項のみで比較判断することはできないものと考える また, 異議申立人は, 大都市と地方, 当時と現在で事情が大きく異なっていると主張するが, 大都市と地方で事情が異なるという点については, 答申の際に対象となった大都市圏よりも取引の少ない地方ほど物件 6

が特定しやすくなることから, 当該情報の要保護性はより強まるものと考え, 当時と現在で事情が異なるという点については, 前述の答申後に取引価格情報の公表が始まったものを指すものと思われるが, 取引価格情報は, 提供される情報は異なるものの, 鑑定評価書の開示決定と同じく個人情報の保護を前提としていることは前述のとおりであり, 鑑定評価書の開示の判断に際して, 取引価格情報の公表に影響されるものではない 4 結論以上のことから, 本件対象文書につき, 法 5 条 1 号,2 号イ及び6 号に該当することを理由にその一部を不開示とした決定のうち, 異議申立人が開示を求める比準価格算定内訳における取引事例地に係る市名を除く所在等は同条 1 号又は2 号イ及び同条 6 号柱書きに該当し, 比準価格算定内訳における取引事例地に係る主要交通施設の状況は同条 6 号柱書きに該当するため, 不開示を維持することが妥当である 第 4 調査審議の経過当審査会は, 本件諮問事件について, 以下のとおり, 調査審議を行った 1 平成 20 年 9 月 24 日諮問の受理 2 同日諮問庁から理由説明書を収受 3 同年 10 月 27 日異議申立人から意見書を収受 4 平成 21 年 2 月 27 日本件対象文書の見分及び審議 5 同年 3 月 27 日審議第 5 審査会の判断の理由 1 本件対象文書について本件対象文書は, 平成 17 年ないし同 20 年の特定の標準地番号の鑑定評価書である 本件対象文書は, それぞれ鑑定評価の総括的な事項を記載している部分 (1 頁目 ) と試算価格の算定の詳細な内訳を記載している部分 (2 及び3 頁目 ) から構成されている 処分庁は, 原処分において, 鑑定評価員の自宅の住所については法 5 条 1 号に該当し, 鑑定評価員の印影については法 5 条 2 号イに該当し, 取引事例に係る 所在及び地番並びに 住居表示 等 については法 5 条 1 号及び2 号イに該当し, 取引事例に係る 主要交通施設の状況 及び 比準価格決定の理由 のうち特定の取引事例地の所在を示す記述については法 5 条 6 号に該当するとして不開示としている これに対して異議申立人は, 取引事例に係る 所在及び地番並びに 住居表示 等 欄については大字又は町名まで, 取引事例に係る 主要交通施設の状況 欄についてはすべて開示すべきであると主張するので, 以下, 7

本件対象文書を見分した結果に基づき, 当該部分 ( 以下 本件不開示部分 という ) の不開示情報該当性について検討する 2 不開示情報該当性について本件対象文書の比準価格算定内訳には, 不動産鑑定士が標準地の鑑定評価額を算出するために不動産鑑定評価の方法の一つである取引事例比較法により, 五つの事例 ( 取引事例地 ) に係る情報 ( 当該事例地の地番, 取引時点, 地積, 画地の形状, 接面道路の状況, 主要交通施設の状況, 法令上の規制等, 取引価格, 取引事例地の実際の取引価格から比準価格を導き出すために行った各種補正の数値等 ) から試算価格である比準価格を算定したことを示す情報が記載されていることが認められる (1) 取引事例地の 所在及び地番並びに 住居表示 等 欄についてア諮問庁は, 取引事例地の所在, 地番及び住居表示に関する情報は, 取引事例地の所有者又は取引当事者が個人である場合には, 当該個人に関する情報であって, 特定の個人を識別することができる情報であり, 法 5 条 1 号の不開示情報に該当し, 同号ただし書イないしハに該当しない旨説明する 当審査会において見分したところ, 所在及び地番並びに 住居表示 等 の欄には, 取引事例地の所在, 地番及び住居表示が記載されており, これと何人でも閲覧ができる不動産登記記録や市販の住宅地図等とを照合することにより, 当該取引事例地の所有者又は取引当事者が明らかとなることから, 当該情報は, 当該取引事例地の所有者又は取引当事者が個人である場合については, それぞれの取引事例地ごとに, 全体として当該各所有者等に係る法 5 条 1 号本文前段の個人に関する情報であって, 特定の個人を識別することができるものに該当すると認められる また, 法令の規定又は慣行として公にされ, 又は公にすることが予定されている情報であるとは言えないため, 同号ただし書イに該当せず, 同号ロ及びハに該当する事情も存しない 次に, 法 6 条 2 項による部分開示の可否を検討すると, 所在及び地番並びに 住居表示 等 欄の記載部分は, 特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分に該当すると認められるので, 部分開示の余地はない イ諮問庁は, 取引事例地の所在, 地番及び住居表示に関する情報は, 取引事例地の所有者又は取引当事者が法人である場合には, 当該法人に関する情報であり, これを開示することにより, 当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとして, 法 5 条 2 号イの不開示情報に該当する旨説明する 8

当審査会において見分したところ, 取引事例地で法人が所有者又は取引当事者であるものについては, 上記アの個人の場合と同様, そこに記載されている取引事例地の所在, 地番及び住居表示に関する情報は, これと何人でも閲覧ができる不動産登記記録や市販の住宅地図等とを照合することにより, その所有者や取引当事者である法人の特定につながる情報と認められる そして, 通常法人にとっては, 個別の土地取引の状況は企業経営上の方針又は戦略に関する情報として, 競争相手等に対して秘匿しているのが一般的であり, これを公にすれば, 当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められることから, 法 5 条 2 号イの不開示情報に該当する ウ異議申立人は, 国土交通省のウェブサイト ( 土地総合情報システム ) の取引価格情報検索サイトにおいて住所 ( 地区 大字まで ) が公開されていることから, 取引事例地の所在, 地番等については大字又は町名まで開示すべきである旨主張する 当審査会において当該検索サイトを確認したところ, 不動産取引価格情報において, 取引事例地の大字又は町名, 最寄駅の名称, 距離, 面積, 土地の形状, 取引価格 ( 総額 ) 等が公にされていることが認められる そのため, 本件対象文書の取引事例地の大字又は町名の部分を開示すると, 本件対象文書において既に開示されている地積, 画地の形状, 取引価格等の情報と照合することにより, 当該土地の特定につながることになる さらに, 本件対象文書において取引事例地の取引時点は既に開示されていることから, 不動産登記記録等と照合することにより取引当事者が特定されることとなるので, 取引事例地の大字又は町名の部分は, 上記ア及びイと同様の理由により, 法 5 条 1 号又は2 号イの不開示情報に該当すると認められる エなお, 諮問庁は, 取引事例地の市名を除く所在, 地番及び住居表示の部分は, 法 5 条 6 号柱書きにも該当すると説明するが, 上記のとおり同条 1 号又は2 号イの不開示情報に該当すると認められるので, 同条 6 号について判断するまでもない (2) 取引事例地の 主要交通施設の状況 欄について諮問庁は, 比準価格算定内訳の不開示部分については, 不動産鑑定士が取引当事者等に対するアンケート調査により被調査者の任意の協力を得て収集している情報であり, これが公にされることとなると, 取引事例地の被調査者の信頼を著しく損ね, 以後の協力を得ることが困難となるため, 鑑定評価の根幹をなす取引事例の収集に重大な支障を及ぼすこととなり, これにより地価公示の実施事務に重大な支障を来すおそれがあるとして, 法 5 条 6 号柱書きに該当する旨説明する 9

地価公示における標準地の鑑定評価のための取引事例は, 鑑定評価員である不動産鑑定士が取引の当事者に個別に聞き取りをしたり, アンケートを行うなどにより収集されるものであり, そこで収集される情報は, 取引当事者にとっては通常他人に知られたくない土地取引という私的な契約に関するものを任意で提供してもらうものであるため, 当該取引事例地の関係者等に推測されるような情報が公にされることとなれば, 今後聞き取り等に協力する者が得られなくなるなどして取引事例の収集に支障を来すおそれがあると認められる そうなれば, 地価公示の標準地の鑑定評価の際の重要な情報が入手できなくなることにより, 地価公示に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると言える 当審査会において本件対象文書を見分したところ, このうち, 取引事例地の主要交通施設の状況の記載部分には, 取引事例地の特定のきっかけとなるような極めて詳細かつ具体的な当該取引事例地に関連する情報が記述されていることが認められる そして, これが明らかにされることとなると, そこにおける記載内容と本件において既に開示されている取引事例地の取引時点, 地積, 画地の形状, 取引価格等から, 当該取引事例地が推測されるおそれがあることは否定できないところであり, これにより, 上に述べたような支障が生じるおそれがあると認められることから, 法 5 条 6 号柱書きの不開示情報に該当し, 不開示が妥当である 3 異議申立人の主張について異議申立人は地価公示制度の公益性及び国民, 納税者等の利益を守るために, 法 7 条に基づき裁量的開示をすべきである旨主張するが, 本件不開示部分の不開示情報該当性は, 上記 2で判断したとおりであり, これを公にすることに, 当該部分を不開示とすることにより保護される利益を上回る公益上の必要性があるとは認められないので, 法 7 条による裁量的開示をしなかった処分庁の判断に, 裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められない 異議申立人は, その他種々主張するが, 当審査会の上記判断を左右するものではない 4 本件一部開示決定の妥当性について以上のことから, 本件対象文書につき, その一部を法 5 条 1 号,2 号イ及び6 号に該当するとして不開示とした決定については, 異議申立人が開示すべきとしている部分は, 同条 1 号,2 号イ及び6 号に該当すると認められるので, 不開示としたことは妥当であると判断した ( 第 2 部会 ) 委員寳金敏明, 委員秋田瑞枝, 委員橋本博之 10