の経営状態の改善が設備投資実施に強く影響していることが示されている 1 本論文では これらの先行研究を踏まえ 平田 (2012) のサンプル企業のうち 中小企業基本法上 中規模に定義される製造業企業の設備投資行動を促す経営環境の特徴を明らかにする 具体的には 近い将来に設備投資を実施する企業とそうし

Similar documents
Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 28 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 28 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 29 年 1~3 月期 来期平成

Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 30 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 30 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 30 年 1~3 月期 来期平成

Microsoft Word - 49_2

(Microsoft PowerPoint \201y\221\3461\216l\224\274\212\372_\225\361\215\220\217\221HP\224\305\201z.pptx)

目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

生活衛生関係営業の景気動向等調査 平成17年7~9月期

我が国中小企業の課題と対応策

(Microsoft Word - 01_\225\\\216\206.doc)

平成 22 年 11 月 12 日 問い合わせ先 国土交通省土地 水資源局土地市場課課長補佐小酒井淑乃 係長塩野進代表 : ( 内線 :30-214) 直通 : 土地取引動向調査 (*) ( 平成 22 年 9 月調査 ) の結果について 1. 調査目

表 5-1 機器 設備 説明変数のカテゴリースコア, 偏相関係数, 判別的中率 属性 カテゴリー カテゴリースコア レンジ 偏相関係数 性別 女性 男性 ~20 歳台 歳台 年齢 40 歳台

熊本商工会議所 製本第四四半期(HP用)

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

熊本商工会議所 製本第四四半期(HP・報道機関用)

経済見通し

平成 21 年第 1 回 ( 平成 21 年 2 月 1 日実施 ) 鳥取県企業経営者見通し調査報告 目次ヘ ーシ 御利用にあたって 1 1 業界の景気判断 3 2 自己企業の売上高判断 5 3 自己企業の経常利益判断 7 4 生産数量の判断 9 5 在庫水準の判断 10 6 生産設備の規模判断 1

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

新規文書1

第 70 回経営 経済動向調査 公益社団法人関西経済連合会 大阪商工会議所 < 目次 > 1. 国内景気 2 2. 自社業況総合判断 3 3. 自社業況個別判断 4 4. 現在の製 商品およびサービスの販売価格について 8 参考 (BSI 値の推移 ) 11 参考 ( 国内景気判断と自社業況判断の推

平成 22 年 5 月 7 日 問い合わせ先 国土交通省土地 水資源局土地市場課課長補佐小酒井淑乃 係長塩野進代表 : ( 内線 :30-214, ) 直通 : 土地取引動向調査 (*) ( 平成 22 年 3 月調査 ) の結果について

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

社団法人日本生産技能労務協会

(Taro-\222\262\215\270\225[.A4\207B.jtd)

<4D F736F F F696E74202D E9197BF C A89EF8C CC82CC95818B798FF38BB52E >

1. 多変量解析の基本的な概念 1. 多変量解析の基本的な概念 1.1 多変量解析の目的 人間のデータは多変量データが多いので多変量解析が有用 特性概括評価特性概括評価 症 例 主 治 医 の 主 観 症 例 主 治 医 の 主 観 単変量解析 客観的規準のある要約多変量解析 要約値 客観的規準のな

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

また 関係省庁等においては 今般の措置も踏まえ 本スキームを前提とした以下のような制度を構築する予定である - 政府系金融機関による 災害対応型劣後ローン の供給 ( 三次補正 ) 政府系金融機関が 旧債務の負担等により新規融資を受けることが困難な被災中小企業に対して 資本性借入金 の条件に合致した

Newsletterむさしの1 2.indd

イノベーション活動に対する山梨県内企業の意識調査

<4D F736F F D DC58F49817A E338C8E8AFA8C888E5A81408EE597768C9A90DD89EF8ED08C888E5A95AA90CD2E646F6378>

平成22年7月30日

「中小企業の景況感に関する調査」集計結果

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

平成 23 年 11 月 17 日 問い合わせ先 国土交通省土地 建設産業局土地市場課課長補佐松本浩 係長塩野進代表 : ( 内線 :30-214) 直通 : 土地取引動向調査 ( 平成 23 年 9 月調査 ) の結果について 1. 調査目的 本調査

M&A研究会報告2009

平成 24 年 5 月 1 日 問い合わせ先 国土交通省土地 建設産業局土地市場課課長補佐松本浩 係長長瀨裕太代表 : ( 内線 :30-214) 直通 : 土地取引動向調査 ( 平成 24 年 3 月調査 ) の結果について 1. 調査目的 本調査は

景況 貴社の景況 平成 3 年 期の 貴社の景況判断 BSI を全産でみると 大企 中堅企は 上昇 超 中小企は 下降 超となっている 先行きを全産でみると 大企 中堅企は 上昇 超で推移する 中小企は 下降 超で推移するとなっている 貴社の景況判断 BSI( 上昇 - 下降 社数構成比) ( 単位

平成10年7月8日

平成22年7月30日

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

<4D F736F F D F4390B3817A4D42418C6F896390ED97AA8D758B60985E814091E63289F AE8E9197BF E646F63>

untitled

景気見通し調査 ( 平成 25 年 3 月期 ) 調査結果 福井商工会議所 中小企業総合支援センター 調査の概要 当調査は 福井商工会議所管内の小規模事業所の短期的な景気動向を把握するため 毎年 3 月 6 月 9 月 12 月の年 4 回実施している 調査時期 平成 25 年 3 月 13 日 (

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

Microsoft PowerPoint - 001表紙.ppt [互換モード]

第 60 回法人企業景気予測調査 ( 平成 31 年 1-3 月期調査 ) 福島県の概要 平成 31 年 3 月 12 日財務省東北財務局福島財務事務所 調査要領 1. 調査の目的と根拠我が国経済活動の主要部分を占める企業活動を把握することにより 経済の現状及び今後の見通しに関する基礎資料を得ること

第2部


第2部

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

中小企業の動向

第2章 食品卸売業の経営指標

Microsoft Word 年3月期第2四半期決算 主要建設会社決算分析_ 【最終版】

金融調査研究会報告書 少子高齢化社会の進展と今後の経済成長を支える金融ビジネスのあり方

<8A C52E786C7378>

Newsletterむさしの_7.indd

PowerPoint プレゼンテーション

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

01Newsletterむさしの7.indd

第 図 (1) 経常利益の推移 経常利益の改善要因 企業収益は 交易条件の改善と固定費の抑制により改善 (22 年度対比 累積寄与差 兆円 ) 売上高要因 変動費率要因 固定費要因 ( うち人件費


H24/08/00

IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

多変量解析 ~ 重回帰分析 ~ 2006 年 4 月 21 日 ( 金 ) 南慶典

統計的データ解析

ニュースリリース 中小企業の雇用 賃金に関する調査結果 ( 全国中小企業動向調査 2013 年 月期特別調査 ) 年 4 月 8 日株式会社日本政策金融公庫総合研究所 3 割の企業で正社員は増加 3 社に 1 社で給与水準は上昇 従業員数 2013 年 12 月において

第 部 B/S とキャッシュフロー 表 B 金満家この 1 年間の投資と調達の内容 ( 昨年末 ~ 本年末 )( 単位 : 百万円 ) 車 15 家 5 銀行借入 5 内部留保 ( 注 ) 昨年末と本年初は同じ B/S この結果 本年末の B/S は表 C のようになります 表 C

Excelによる統計分析検定_知識編_小塚明_5_9章.indd

【No

Microsoft Word - 5_‚æ3ŁÒ.doc

貸出は積極的だが消費者向けの環境に変化

【大同】中小企業経営者アンケート「大同生命サーベイ」-平成28年11月度調査-~ 「景況感」と「中小企業等経営強化法の活用」についてお聞きしました ~

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

Newsletterむさしの12.indd

受付番号 123456

中小企業の雇用・賃金に関する調査結果(全国中小企業動向調査(中小企業編)2015年10-12月期特別調査)

Microsoft Word - Stattext12.doc

景気動向調査平成 3 年 1~12 月期実績 平成 31 年 1~3 月期予想 概況 業況 DI は改善 来期は悪化するもプラスを維持する見込み 今期の全業種総合業況判断 DIは 前期比 2.5 ポイント上昇の 9. と改善した 製造業は前期比 1.5 ポイント上昇の 14. 非製造業は同 2.9

3. 研究の概要等 1 章では 第 1 節で相続税法の歴史的経緯について 特に贈与の位置づけの変遷を中心に概観し 明治 38 年に創設された相続税法での贈与に対する扱いはどうであったのか また 昭和 22 年のシャベル勧告により贈与税が導入され 昭和 25 年のシャウプ勧告で廃止 その後 昭和 28

<8A C52E786C7378>

Newsletterむさしの11.indd

経済学でわかる金融・証券市場の話③

1. 社会福祉法人経営動向調査 ( 平成 30 年 ) の概要 目的 社会福祉法人と特別養護老人ホームの現場の実感を調査し 運営実態を明らかにすることで 社会福祉法人の経営や社会福祉政策の適切な運営に寄与する 対象 回答状況 対 象 特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人 489 法人 (WAM

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

Microsoft Word - å“Ÿåłžå¸°173.docx

サーバに関するヘドニック回帰式(再推計結果)

PowerPoint プレゼンテーション

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の

解答のポイント 第 1 章問 1 ポイント仮に1 年生全員の数が 100 人であったとする.100 人全員に数学の試験を課して, それらの 100 人の個人個人の点数が母集団となる. 問 2 ポイント仮に10 人を抽出するとする. 学生に1から 100 までの番号を割り当てたとする. 箱の中に番号札

景気見通し調査 ( 平成 24 年 12 月期 ) 調査結果 福井商工会議所 中小企業総合支援センター 調査の概要 当調査は 福井商工会議所管内の小規模事業所の短期的な景気動向を把握するため 毎年 3 月 6 月 9 月 12 月の年 4 回実施している 調査時期 平成 24 年 11 月 30 日

資料1

02 IT 導入のメリットと手順 第 1 章で見てきたように IT 技術は進展していますが ノウハウのある人材の不足やコスト負担など IT 導入に向けたハードルは依然として高く IT 導入はなかなか進んでいないようです 2016 年版中小企業白書では IT 投資の効果を分析していますので 第 2 章

Microsoft PowerPoint - R-stat-intro_12.ppt [互換モード]

Newsletterむさしの_2.indd

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

プレゼン

有価証券報告書・CG報告書比較分析

< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

Transcription:

中規模製造業企業の設備投資行動と経営環境 :2000 年代の個票データによる検証 * 平田博紀 ( 共栄大学 ) 要旨 本論文では 2000 年から 2009 年まで継続して 中小企業景況調査 の調査対象であった中規模製造業企業 267 社の個票回答によって構成されるパネルデータに基づき その設備投資行動を促す経営環境の特徴を検証した 具体的には 設備投資を実施した企業グループとそうでない企業グループの経営環境の違いを多変量的に判別することが可能かどうか推定した 分析の結果 中規模製造業企業において 設備投資を実施する企業とそうでない企業は 多変量的にみて 互いに異なった経営環境にあることが確認された また 中規模製造業企業が設備投資を実施する際 採算の水準 ( 経常利益 ) や長期資金借入難度の変化 ( 前期比 ) に影響を強く受けることが示唆された キーワード : 中規模製造業企業 設備投資 数量化 Ⅱ 類 経常利益 長期資金の調達環境 1 はじめに 日本企業の設備投資低迷が叫ばれるようになった 2000 年代 それまでデータの制約等によって分析対象とされてこなかった中小企業の設備投資に注目が集まるようになった 一般論としての中小企業は 大企業と比べて経営資源が乏しく 資金調達手段も限定的であり 活動の幅が小さい存在として認識されている ( 福田 粕谷 中島,2005) こうした特徴は これまで大企業を中心に展開されてきた日本企業の設備投資に関する先行研究が持つ示唆とは異なる分析結果を示す可能性を秘めていると考えられる 実際 最近の日本の中小企業の設備投資に関する研究を振り返ると 大企業よりも内部資金制約が大きく 外部資金への依存度が高いといった特徴や トービンの q やキャッシュフローに加え 金融機関の経営状態などが影響しているといった分析結果が確認できる ( 花崎 Thuy,2002 福田 粕谷 中島,2005) また これらの対象企業よりも小さな従業員数 20 人以下の小規模製造業企業を中心としたサンプルを用いて設備投資の規定要因を検証した平田 (2012) では 将来的な収益見通しや外部資金の調達環境の変化よりも 足元 * 本論文では 経済産業省中小企業庁 ( 独 ) 中小企業基盤整備機構より 中小企業景況調査 の個票回答データをご提供いただき分析を行っている ここに記して御礼申し上げる もちろん 本論文における誤りは全て筆者の責に帰するものである 1

の経営状態の改善が設備投資実施に強く影響していることが示されている 1 本論文では これらの先行研究を踏まえ 平田 (2012) のサンプル企業のうち 中小企業基本法上 中規模に定義される製造業企業の設備投資行動を促す経営環境の特徴を明らかにする 具体的には 近い将来に設備投資を実施する企業とそうしなかった企業という 2 つの企業グループの経営環境の違いを多変量的に推定し その判別が可能かどうかを検証する 使用するデータは 我が国に数多く存在するビジネスサーベイのうち 中小企業分野において 30 年以上 最大規模の調査として継続的に実施されている 中小企業景況調査 の個票回答である 2 同一企業の 10 年間の調査回答に基づいて構築されたデータベースを用いることで 本論文の推計結果を設備投資の実施に対する中規模製造業企業経営者の意思決定の統一的なパターンとして理解することができると考えられる 本論文の構成は次のとおりである まず 2 において データセットの特徴を記述統計分析に基づいて把握し その上で 次節の分析の方向性を検討する 続く 3 では 設備投資を実施した企業グループとそうでない企業グループの経営環境の違いを多変量的に判別することが可能かどうかを推定するとともに その結果から導出される中規模企業の設備投資を促す経営環境について考察する 最後に 4 では 本論文の分析結果を振り返り 今後の課題を提示する 2 データ (1) データセットの概要 使用するデータは経済産業省中小企業庁 ( 独 ) 中小企業基盤整備機構が毎年四半期に実施する 中小企業景況調査 の調査対象企業の個票回答データである 3 そして 平田(2012) において使用した 2000 年代 (2000 年から 2009 年まで ) の 40 期間 継続して回答した製造業企業 688 社のうち 中規模企業 267 社の個票回答データを本論文の分析対象とした 全業種を調査対象とする 中小企業景況調査 から製造業企業のみを分析の対象とした理由は 他の業種に比べ 設備投資のコスト負担が大きく その実施が企業の命運を賭けた重要なものになっていると予想されるためである 中小企業景況調査 の調査票にある調査項目は 対象企業の経営状態などについて 1. 1 花崎 Thuy(2002) は 資本金 1 億円未満を中小企業は 1 億円以上 10 億円未満の中堅企業と 10 億円以上の大企業と比較して 内部資金制約が大きく 外部資金への依存度が高いという特徴を持つことを明らかにしている また 福田 粕谷 中島 (2005) では 資本金 1 億円以上の非上場企業の設備投資関数の推計を行い トービンの q やキャッシュフローに加え 取引金融機関の健全性 サンプル企業の債務 総資産比率および取引銀行数が設備投資の実施に影響を及ぼすとしている 2 中小企業景況調査 は 中小企業基本法第二条にある中小企業の定義 ( 製造業の場合は 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人 ) に該当する企業を対象としている ここでいう中規模企業とは この定義のうち 小規模企業 ( 従業員の数が二十人以下 ) に該当しない企業を指す 3 中小企業景況調査 は全国約 19,000 社の中小企業を対象に毎年四半期に実施するビジネスサーベイである この調査の具体的な仕組みや概要については ( 独 ) 中小企業基盤整備機構経営支援情報センター (2013) を参照されたい 2

増加 ( 改善など ) 2. 不変 3. 減少 ( 悪化など ) の三段階尺度で回答を得るよう設定されている 既存の設備投資理論では 経営環境を示す変数がポジティブに反応した場合に設備投資が実施されるとしている点を考慮し 各調査項目の回答を逆転の上 以下の通り五段階尺度の変数に加工した 調査項目の回答に対する加工 調査回答について 以下の五段階尺度を採用した 5:2 期以上連続して改善 ( 増加 上昇 容易 ) と回答している場合 4: 改善 ( 増加 上昇 容易 ) と回答した最初の期 ( 前期に悪化 ( 減少 低下 困難 ) もしくは不変と回答した上で 今期に改善 ( 増加 上昇 容易 ) と回答した場合 ) 3: 不変と回答した場合 2: 悪化 ( 減少 低下 困難 ) と回答した最初の期 ( 前期に改善 ( 増加 上昇 容易 ) もしくは不変と回答した上で 今期 悪化 ( 減少 低下 困難 ) と回答した場合 ) 1:2 期以上連続で悪化と回答した場合 設備投資に関わる回答は 実施した期を 1 それ以外を 0 とするダミー変数とした 以下の分析で使用する調査項目のデータには次のような特徴がある まず 調査項目の採取期については 調査回答者である各企業の経営者が経営状態や自社の置かれている環境を明確に把握している時期は決算期だと考え おおよその日本の中小企業の決算時期に当たる毎年 1-3 月期の各調査項目の回答を抽出した 次に 設備投資実施に関する回答の採取期についてであるが 中小企業にとって設備投資は 非常に大きなコスト負担となる意思決定であり 慎重に慎重を重ねて実施されることが予想される つまり 設備投資とは 今日決めて 明日実行するというようなものではなく 一定の時間を必要とする意思決定である可能性が高い 本論文の問題意識は 設備投資実施を促す経営環境の把握にあるため 設備投資実施に関する回答結果は 前述の調査項目の回答の採取期 ( 毎年 1-3 月期 )+ 1 期に当たる毎年 4-6 月期とした 中小企業景況調査 では 調査対象の企業の経営状態だけでなく 金融機関からの資金調達に関する難度といった項目も調査票に含まれている このため まずは調査票において設備投資に関連する調査項目全てを対象に検証を始め 分析に使用する変数の選別を行う 4 なお 中小企業景況調査 の調査票には 経営状態の総合判断を示す業況という調査項目があるが 今回の分析では 経営環境を構成する個別の調査項目の影響を検証することを目的とし 分析の対象から外している これらの特徴を持つ中規模企業 267 社の 10 年間の個票回答データから構成されるデータセットを用いて 以下の手順で分析を行う まず 使用するデータセットの毎年の基本統計量を確認するとともに 分析のための変数選別を目的に 設備投資実施の有無による 4 福田 計 奥井 奥田 (1999) は バブル経済の崩壊以降 長期資金借入と短期資金借入の代替可能性が高まっていると指摘している そこで 中小企業景況調査 の調査項目にある短期資金の借入難度も分析対象とした 3

Mann-Whitney の U 検定と調査項目間の多分相関 (Polychoric Correlation) 分析を行う 5 その上で 10 年間のパネルデータ化を行い 設備投資実績と各調査項目の回答傾向の把握を試みる 最後に これら記述統計分析によって明らかとなった設備投資実績との関係性が低い調査項目をデータセットから削除し 残った調査項目を用いて 設備投資を実施した企業とそうではない企業の経営環境に違いがあるのかを検証する 6 (2) 記述統計分析 まず 分析対象期間各年の記述統計計量と設備投資実績に基づく調査項目の回答動向に関する検定結果を示した表 1 とそれを整理した表 2 からデータセットの特徴を確認する 設備投資実績については 2000 年から 2008 年までは概ね 80 件 ~100 件の間で安定していたものの 2009 年に 62 件と激減している これは 2008 年後半に生じたリーマンショック以降 経営環境が一変したことが影響しているのではないかと推察できる ( 表 1) Mann-Whitney の U 検定による設備投資実績別の各調査項目の回答の差を確認すると 全期間において有意差があった調査項目はないことが示されている 一方 輸出額 ( 前年同期比 来期見通し ) や採算 ( 前年同期比 来期見通し ) 資金繰り 借入金利 ( 今期比来期見通し ) といった調査項目に有意な差が認められない時期が多いことがわかる 輸出額の動向が設備投資の実施に影響しない傾向は本論文と同じ基準で選出された小規模企業を含めたサンプルを分析した平田 (2012) においても示されている しかし 中規模企業のみを抽出しても同様の結果であったことは 中小企業分野では 規模に関わらず 外需の増減によって設備投資が喚起される可能性は低いということになる こうした需要動向だけでなく 採算 ( 経常利益 ) や資金繰りの将来見通しにおいても有意な差を確認できなかったことは 設備投資の意思決定が将来の収益状況を踏まえて行われていないことを示唆する つまり 将来の需要が増加するという予測を立てなければ 企業は設備投資には踏み切らない ( 中小企業庁,2006) とする古典的な設備投資観を覆すような意思決定が 中規模製造業企業においても行われている可能性が高いと言える 7 また 借入金利の来期見通しに有意な差が認められなかったことは 中規模製造業の設備投資が手元の内部資金に依存したものとなっていることを印象づける これら有意な差が確認できない期間が多い調査項目の回答分布を見ると 資金繰り 以外は 高い場合と低い場合が入り混じっていることがわかる ( 表 2) つまり これらの調査項目の回答カテゴリー ( 改善 悪化 ) は 設備投資実施に影響を及ぼさないと推察される これを踏まえて 次に設備投資実績と各調査項目の多分相関分析の結果を確認する ( 表 3) 5 多分相関分析とは 多項の順序尺度と順序尺度の相関関係を確認する際に使用する分析手法である Mann-Whitney の U 検定は ノンパラメトリック検定の一つで 独立する 2 標本の有意差検定として使用される 6 使用するデータセットは順序変数のため 質的変数として扱う必要がある そこで 質的変数によって質的な外的基準を判別する林の数量化 Ⅱ 類と同様 説明変数をダミー変数化し 判別分析を行った 7 平田 (2012) では 中小企業の設備投資実施の意思決定には 経営状態の改善に基づく経営者のセンチメントの高揚が大きな役割を担っていることを示唆している 4

まず 毎年の相関係数の傾向を見ると 2001 年の長期資金借入難度 ( 前期比 ) と短期資金借入難度 ( 前期比 ) 2008 年の短期資金借入難度 ( 前期比 今期比来期見通し ) に見られる 0.36~0.44 という値が最大級であり ほかはすべて非常に弱い相関関係が示されている また 生産設備 ( 水準 ) や借入金利 ( 前期比 ) そして 先ほどの Mann-Whitney の U 検定において差が認められない期間が多い 4 つの調査項目と次期の設備投資実施との相関係数には 負の符号 ( 逆相関 ) を示す時期が散見される 各調査項目と次期設備投資実施との相関係数の平均値では 採算 ( 水準 ) と短期資金借入難度 ( 前期比 今期比来期見通し ) に 0.2 という値があるほかは 毎年の傾向と同様 非常に弱い相関関係 もしくは逆相関の関係にあることが確認できる 経常利益の現状 ( 赤字 トントン 黒字 ) を示す採算 ( 水準 ) に平均的に相関関係があることが確認されたことは 中規模製造業企業では 足元の利益を踏まえて設備投資の意思決定が行われていることを示唆する また 短期資金借入難度 ( 前期比 今期比来期見通し ) や長期資金借入難度 ( 前期比 ) にも他の調査項目に比べて高い相関関係が示されたことは 外部資金の調達環境の改善が次期の設備投資実施を促す可能性が高いことを窺わせる 以上の毎年のデータに関する記述統計的分析を踏まえ 以下では 分析に使用する 10 年間のパネルデータに関する記述統計的分析を試みる まず 各調査項目の回答カテゴリー別設備投資実績を表 4 に示した ここでは 各調査項目の設備投資実施企業数を見ると 回答カテゴリー 3 に多く存在していることがわかる ただし 最も設備投資実施割合が高い各調査項目のカテゴリーは 輸出額 借入金利 ( 前期比 今期比来期見通し ) 生産設備( 水準 ) 以外 4 と 5 に集中していることがわかる これらは 単に収益や資金繰り 外部資金の調達環境の改善や改善見通しによって設備投資が実施されるわけではなく 様々な要因が複雑に絡み合う中で 経営者が必要だと判断した際に設備投資が実施されていること示唆するものだと言える 実際 設備投資は生産性の向上を目指したものばかりでなく 既存設備の修繕や更新により 経営の合理化やコストダウンを図るという動きも多くある 経営状態や経営環境に変化がない もしくは悪化する中で設備投資を実施する中規模製造業企業では こうした観点が強調されている可能性も指摘できる これの考え方は 設備投資実施割合において確認された輸出額の減少や生産設備を過剰に保有しているという環境を経て 設備投資が実施されるという傾向にも合致する 一方 次期の設備投資実績の有無による各調査項目の回答数に関するカイ二乗検定の結果を見ると 借入金利 ( 今期比来期見通し ) のみ 仮説は棄却されなかった 次に パネルデータについて 各調査項目と次期設備投資実績による Mann-Whitney の U 検定を行った結果が表 5 である 各調査項目の統計量 Zを見ると すべての値の符号が負となっており 次期に設備投資を実施した企業の方が設備投資を実施しなかったよりも高い回答カテゴリーにあることがわかる そして 毎年のデータに基づいた Mann-Whitney の U 検定の結果において 次期に設備投資を実施した企業群と実施しなかった企業群の差がない時期が多かった 5 つの調査項目のうち 輸出額 ( 前年同期比 来期見通し ) 借入金利 ( 前期比 ) に有意な差が確認できなかった また 前述の表 4 のカイ二乗検定において有意差が確認できなかった借入金利 ( 今期比来期見通し ) には ここでも有意な差がないことが示された 5

最後に 表 6 を用いて 多分相関分析のよる各調査項目間の相関関係を把握する まず 次節において行う分析を意識し 相関係数の非常に高い調査項目について確認すると 売上額 と売上数量 売上額 と売上数量 長期資金借入難度( 前期比 今期比来期見通し ) と短期資金借入難度 ( 前期比 今期比来期見通し ) において 0.8~0.9 の値が高いが見られる 次に設備投資実績と各調査項目の相関関係では 採算 ( 水準 ) に 0.26 が最も高く 次いで短期資金借入難度に 0.22 となっているものの 総じて強い相関関係は確認できなかった 6

表 1 年別各調査項目の記述統計量と設備投資実績による Mann-Whitney の U 検定の結果 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 調査項目 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 売上額 2.824 1.161 1 5-1.046 0.295 2.483 1.347 1 5-2.738 0.006 2.139 1.256 1 5-3.735 0.000 2.532 1.410 1 5-1.89 0.059 * 2.929 1.395 1 5-0.305 0.760 売上数量 2.861 1.097 1 5-1.410 0.159 2.494 1.350 1 5-2.626 0.009 2.176 1.230 1 5-3.863 0.000 2.708 1.359 1 5-1.156 0.248 2.974 1.397 1 5-1.37 0.171 資金繰り 2.824 0.706 1 5-0.643 0.520 2.663 0.929 1 5-1.823 0.068 * 2.476 0.935 1 5-1.258 0.209 2.640 0.875 1 5-2.416 0.016 ** 2.865 0.857 1 5-2.586 0.0097 輸出額 2.929 0.489 1 4 0.409 0.683 2.955 0.481 1 5-1.863 0.063 * 2.899 0.528 1 5 0.575 0.565 2.974 0.454 1 5 2.18 0.029 ** 2.989 0.479 1 5 0.849 0.396 採算 2.764 0.996 1 5-1.751 0.080 * 2.382 1.222 1 5-1.958 0.050 * 2.184 1.144 1 5-2.459 0.014 ** 2.476 1.206 1 5-0.871 0.384 2.712 1.212 1 5-1.17 0.242 採算 ( 水準 ) 3.094 0.894 1 5-3.096 0.002 2.993 1.173 1 5-3.499 0.001 2.831 1.194 1 5-2.741 0.006 3.026 1.193 1 5-2.592 0.010 ** 3.172 1.217 1 5-3.066 0.002 生産設備 ( 水準 )( 注 ) 3.165 0.701 1 5 2.384 0.017 ** 3.292 0.774 1 5 1.585 0.113 3.401 0.930 1 5 1.063 0.288 3.270 0.898 1 5 2.64 0.008 3.135 0.852 1 5 0.381 0.704 売上額 2.861 0.950 1 5-2.781 0.005 2.487 1.122 1 5-1.874 0.061 * 2.551 1.220 1 5-2.348 0.019 ** 2.614 1.282 1 5-2.215 0.027 ** 2.985 1.312 1 5-0.39 0.697 売上数量 2.914 0.956 1 5-2.413 0.016 ** 2.506 1.088 1 5-1.811 0.070 * 2.599 1.208 1 5-3.084 0.002 2.682 1.238 1 5-1.481 0.139 2.963 1.226 1 5-0.046 0.963 資金繰り 2.816 0.613 1 5-1.129 0.259 2.685 0.826 1 5-1.617 0.106 2.603 0.888 1 5-1.572 0.116 2.622 0.811 1 5-1.652 0.099 * 2.869 0.752 1 5-1.244 0.213 輸出額 2.970 0.387 1 4 0.000 1.000 2.948 0.422 1 5-0.973 0.331 2.970 0.441 1 5-0.921 0.357 2.963 0.414 1 5 0.901 0.368 2.974 0.410 1 5 0.699 0.484 採算 2.760 0.851 1 5-1.350 0.177 2.446 1.037 1 5 0.201 0.841 2.438 1.156 1 5-0.954 0.340 2.491 1.060 1 5 0.681 0.496 2.820 1.099 1 5-0.576 0.564 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 2.996 0.402 1 5-2.087 0.037 ** 2.914 0.640 1 5-3.149 0.002 2.839 0.677 1 5-0.52 0.603 2.910 0.693 1 5-1.795 0.073 * 3.007 0.588 1 5-1.643 0.100 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 3.037 0.356 2 5-1.206 0.228 3.034 0.523 1 5-3.500 0.001 2.903 0.665 1 5-0.778 0.437 3.011 0.657 1 5-1.459 0.145 3.075 0.522 1 5-1.881 0.060 * 借入金利 ( 前期比 ) 2.966 0.317 1 4 1.870 0.061 * 2.850 0.625 1 5 2.194 0.028 ** 3.071 0.587 1 5 0.43 0.667 3.041 0.615 1 5 0.618 0.537 3.086 0.446 1 5 2.371 0.018 ** 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 2.966 0.428 1 5-2.298 0.022 ** 2.925 0.564 1 5-1.873 0.061 * 2.816 0.683 1 5-1.418 0.156 2.858 0.684 1 5-1.384 0.166 2.970 0.548 1 5-1.682 0.093 * 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 2.996 0.402 1 5-1.318 0.188 3.000 0.483 1 5-1.918 0.055 * 2.891 0.588 1 5-1.448 0.148 2.959 0.650 1 5-1.885 0.059 * 3.037 0.512 1 5-2.489 0.013 ** 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 3.052 0.308 2 4 1.108 0.268 2.970 0.497 1 5-0.151 0.880 3.154 0.551 1 5 0.107 0.915 3.109 0.561 1 5 0.955 0.340 3.150 0.498 2 5 1.452 0.146 設備投資実施企業数 109 83 81 83 97 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 調査項目 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 売上額 2.831 1.458 1 5-1.551 0.121 3.008 1.345 1 5-2.114 0.035 ** 2.895 1.302 1 5-0.052 0.958 2.659 1.363 1 5-2.829 0.005 1.665 1.034 1 5-2.548 0.011 ** 売上数量 2.828 1.363 1 5-0.638 0.524 2.996 1.342 1 5-2.242 0.025 ** 2.891 1.303 1 5-0.889 0.374 2.610 1.343 1 5-2.606 0.009 1.678 1.041 1 5-2.063 0.039 ** 資金繰り 2.816 0.790 1 5-1.967 0.049 ** 2.835 0.796 1 5-0.875 0.382 2.861 0.660 1 5-0.990 0.322 2.670 0.829 1 5-1.791 0.073 * 2.150 0.954 1 4-2.902 0.004 輸出額 2.925 0.492 1 5 0.919 0.358 2.989 0.487 1 5 1.588 0.112 2.966 0.462 1 5-0.818 0.413 3.011 0.494 1 5-1.401 0.161 2.749 0.678 1 4-0.258 0.796 採算 2.655 1.114 1 5-1.588 0.112 2.708 1.172 1 5-0.798 0.425 2.674 1.034 1 5-1.061 0.289 2.330 1.155 1 5-2.124 0.034 ** 1.816 1.055 1 5-1.516 0.130 採算 ( 水準 ) 3.206 1.160 1 5-3.576 0.000 3.243 1.149 1 5-1.993 0.046 ** 3.184 1.093 1 5-1.095 0.274 2.955 1.250 1 5-4.074 0.000 2.292 1.188 1 5-2.586 0.010 ** 生産設備 ( 水準 )( 注 ) 3.112 0.838 1 5 0.527 0.598 3.112 0.833 1 5 1.526 0.127 3.116 0.826 1 5 1.810 0.070 * 3.116 0.916 1 5 2.170 0.030 ** 3.618 1.013 1 5 2.456 0.014 ** 売上額 2.981 1.246 1 5-1.503 0.133 3.082 1.214 1 5-2.172 0.030 ** 3.056 1.134 1 5-1.126 0.260 2.708 1.219 1 5-1.540 0.124 1.824 1.122 1 5-2.116 0.034 ** 売上数量 2.940 1.187 1 5-0.777 0.437 3.071 1.163 1 5-1.827 0.068 * 3.026 1.125 1 5-1.736 0.083 * 2.753 1.156 1 5-2.311 0.021 ** 1.843 1.120 1 5-0.900 0.368 資金繰り 2.846 0.717 1 5-0.896 0.370 2.929 0.676 1 5 1.287 0.198 2.816 0.666 1 5-1.115 0.265 2.697 0.772 1 5-0.855 0.393 2.199 0.959 1 4-2.262 0.024 ** 輸出額 2.948 0.472 1 5 1.961 0.050 * 2.989 0.420 1 5 0.826 0.409 2.981 0.429 1 5-1.057 0.291 2.996 0.463 1 5-0.503 0.615 2.768 0.648 1 4-0.935 0.350 採算 2.700 1.026 1 5-1.117 0.264 2.843 0.984 1 5-0.976 0.329 2.764 0.958 1 5-1.075 0.282 2.438 1.093 1 5-0.484 0.629 1.936 1.093 1 5-0.709 0.478 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 3.041 0.596 1 5-1.722 0.085 * 3.000 0.513 1 5-1.975 0.048 ** 2.970 0.534 1 5-0.090 0.929 2.963 0.587 1 5-2.345 0.019 ** 2.831 0.703 1 5-1.742 0.081 * 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 3.075 0.515 1 5-1.600 0.110 3.049 0.444 1 5-1.614 0.107 3.037 0.432 1 5 0.277 0.782 3.004 0.545 1 5-3.295 0.001 2.914 0.640 1 5-2.150 0.032 ** 借入金利 ( 前期比 ) 3.019 0.479 1 5 2.351 0.019 ** 3.165 0.551 1 5-1.691 0.091 * 3.674 0.886 1 5-0.237 0.813 3.187 0.571 1 5 0.238 0.812 3.007 0.736 1 5-0.017 0.986 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 2.985 0.548 1 5-1.272 0.204 2.959 0.500 1 5-1.240 0.215 2.951 0.536 1 5-0.048 0.961 2.933 0.603 1 5-2.832 0.005 2.790 0.726 1 5-1.676 0.094 * 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 3.011 0.509 1 5-2.089 0.037 ** 3.030 0.387 1 5-1.224 0.221 3.019 0.420 1 5 0.186 0.852 2.989 0.572 1 5-3.759 0.000 2.884 0.653 1 5-1.177 0.239 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 3.086 0.446 1 5 2.061 0.039 ** 3.300 0.666 1 5-0.517 0.605 3.674 0.902 1 5 0.460 0.646 3.236 0.595 2 5-0.726 0.468 3.086 0.559 1 5-0.005 0.996 設備投資実施企業数 103 100 106 96 62 注 1:Z は Mann-Whitney の U 検定の統計量を示す * 有意水準 10% ** 有意水準 5% 有意水準 1% 注 2: 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 色掛けした箇所は 有意差が認められなかった調査項目を示している 7

表 2 設備投資実施企業の回答結果の分布位置と 設備投資実績に基づく Mann-Whitney の U 検定において有意差がない調査項目 調査項目 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 売上額 高高高高高高高高高高 4 売上数量 高高高高高高高高高高 5 資金繰り 高高高高高高高高高高 4 輸出額 低高低低低低低高高高 8 採算 高高高高高高高高高高 6 採算 ( 水準 ) 高高高高高高高高高高 1 生産設備 ( 水準 ) 低低低低低低低低低低 5 売上額 高高高高高高高高高高 4 売上数量 高高高高高高高高高高 4 資金繰り 高高高高高高低高高高 8 輸出額 同高高低低低低高高高 9 採算 高低高低高高高高高高 10 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 高高高高高高高高高高 3 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 高高高高高高高高高高 6 借入金利 ( 前期比 ) 低低低低低低高高低高 5 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 高高高高高高高高高高 5 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 高高高高高高高低高高 5 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 低高低低低低高低高高 9 差がない調査項目数 ( 各年 ) 10 5 12 9 12 11 11 16 7 8 101 設備投資実施企業数 109 83 81 83 97 103 100 106 96 62 920 注 1: 表 1 に基づき 設備投資を実施した企業の回答結果の分布の高低 ( 設備投資を実施しなかった企業と比較 ) を示 した 色掛けした箇所は 回答結果に有意な差が確認できなかった調査項目を示している 注 2: 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 年 各調査項目の差がない年数 8

表 3 年別設備投資実績と各調査項目との多分相関係数 調査項目 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年平均値 売上額 売上数量 資金繰り 輸出額 採算 採算 ( 水準 ) 生産設備 ( 水準 )(-) 売上額 売上数量 資金繰り 輸出額 採算 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 0.06 0.23 0.31 0.18 0.03 0.13 0.18 0.03 0.25 0.25 0.17 0.09 0.23 0.33 0.11 0.13 0.06 0.20 0.09 0.23 0.21 0.17 0.04 0.17 0.12 0.22 0.24 0.19 0.10 0.07 0.20 0.30 0.16-0.05 0.26-0.03-0.28-0.11-0.11-0.21 0.12 0.18 0.04-0.02 0.13 0.17 0.20 0.09 0.11 0.14 0.08 0.12 0.20 0.17 0.14 0.25 0.29 0.23 0.23 0.25 0.29 0.17 0.10 0.35 0.27 0.24-0.23-0.16-0.08-0.26-0.03-0.05-0.17-0.18-0.22-0.24-0.16 0.22 0.17 0.18 0.21 0.03 0.12 0.18 0.11 0.12 0.25 0.16 0.18 0.17 0.25 0.15 0.00 0.06 0.15 0.14 0.20 0.13 0.14 0.10 0.14 0.15 0.17 0.12 0.09-0.12 0.12 0.08 0.23 0.11 0.00 0.15 0.11-0.13-0.10-0.23-0.13 0.16 0.07 0.15 0.00 0.09-0.01 0.06-0.04 0.05 0.11 0.09 0.11 0.07 0.10 0.06 0.23 0.36 0.07 0.20 0.16 0.18 0.24 0.01 0.24 0.20 0.19 0.12 0.44 0.09 0.16 0.22 0.17 0.22-0.01 0.36 0.27 0.20 借入金利 ( 前期比 ) -0.23-0.20-0.04-0.07-0.32-0.28 0.17 0.00-0.06 0.00-0.11 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 0.25 0.25 0.14 0.16 0.17 0.14 0.15 0.02 0.29 0.17 0.17 0.15 0.26 0.14 0.22 0.32 0.23 0.17 0.00 0.40 0.14 0.20-0.13 0.00-0.03-0.11-0.19-0.24 0.05-0.08 0.07 0.00-0.07 注 : 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 9

表 4 各調査項目の回答カテゴリー別次期設備投資実績 ( 全期間 ) 項目名 売上額 計売上数量 計資金繰り 計輸出額 計採算 計採算 ( 水準 ) 計生産設備 ( 水準 )(-) 計売上額 計売上数量 計 注 1: カテゴリーは 各調査項目の回答番号を示す 注 2: 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 注 3: 有意水準 1% 設備実績カテゴリー n % カイ二乗検定 実施なし 実施 全体 実施なし 実施 全体 Z p 1 615 235 850 72.35% 27.65% 100.00% 2 233 123 356 65.45% 34.55% 100.00% 3 558 269 827 67.47% 32.53% 100.00% 4 172 121 293 58.70% 41.30% 100.00% 61.69 0.00 5 172 172 344 50.00% 50.00% 100.00% 1 581 225 806 72.08% 27.92% 100.00% 2 236 122 358 65.92% 34.08% 100.00% 3 598 280 878 68.11% 31.89% 100.00% 4 173 123 296 58.45% 41.55% 100.00% 65.69 0.00 5 162 170 332 48.80% 51.20% 100.00% 1 321 99 420 76.43% 23.57% 100.00% 2 172 67 239 71.97% 28.03% 100.00% 3 1169 677 1846 63.33% 36.67% 100.00% 4 61 44 105 58.10% 41.90% 100.00% 44.21 0.00 5 27 33 60 45.00% 55.00% 100.00% 1 65 33 98 66.33% 33.67% 100.00% 2 14 20 34 41.18% 58.82% 100.00% 3 1632 831 2463 66.26% 33.74% 100.00% 4 25 27 52 48.08% 51.92% 100.00% 16.77 0.00 5 14 9 23 60.87% 39.13% 100.00% 1 582 221 803 72.48% 27.52% 100.00% 2 223 120 343 65.01% 34.99% 100.00% 3 737 401 1138 64.76% 35.24% 100.00% 4 135 103 238 56.72% 43.28% 100.00% 42.89 0.00 5 73 75 148 49.32% 50.68% 100.00% 1 326 99 425 76.71% 23.29% 100.00% 2 154 61 215 71.63% 28.37% 100.00% 3 926 419 1345 68.85% 31.15% 100.00% 4 169 137 306 55.23% 44.77% 100.00% 110.85 0.00 5 175 204 379 46.17% 53.83% 100.00% 1 48 55 103 46.60% 53.40% 100.00% 2 51 57 108 47.22% 52.78% 100.00% 3 1237 650 1887 65.55% 34.45% 100.00% 4 140 66 206 67.96% 32.04% 100.00% 47.03 0.00 5 274 92 366 74.86% 25.14% 100.00% 1 463 175 638 72.57% 27.43% 100.00% 2 223 115 338 65.98% 34.02% 100.00% 3 769 354 1123 68.48% 31.52% 100.00% 4 149 140 289 51.56% 48.44% 100.00% 66.97 0.00 5 146 136 282 51.77% 48.23% 100.00% 1 423 167 590 71.69% 28.31% 100.00% 2 234 105 339 69.03% 30.97% 100.00% 3 815 395 1210 67.36% 32.64% 100.00% 4 140 125 265 52.83% 47.17% 100.00% 54.42 0.00 5 138 128 266 51.88% 48.12% 100.00% 10

表 4 各調査項目の回答カテゴリー別次期設備投資実績 ( 全期間 ) 資金繰り 計輸出額 計採算 計長期資金借入難度 ( 前期比 ) 計短期資金借入難度 ( 前期比 ) 計借入金利 ( 前期比 ) 計長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 計短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 計借入金利 ( 今期比来期見通し ) 計 項目名 注 1: カテゴリーは 各調査項目の回答番号を示す 設備実績カテゴリー n % カイ二乗検定 実施なし 実施 全体 実施なし 実施 全体 Z p 1 273 88 361 75.62% 24.38% 100.00% 2 162 72 234 69.23% 30.77% 100.00% 3 1234 701 1935 63.77% 36.23% 100.00% 4 55 48 103 53.40% 46.60% 100.00% 27.43 0.00 5 26 11 37 70.27% 29.73% 100.00% 1 78 44 122 63.93% 36.07% 100.00% 2 14 22 36 38.89% 61.11% 100.00% 3 1614 817 2431 66.39% 33.61% 100.00% 4 25 21 46 54.35% 45.65% 100.00% 16.76 0.00 5 19 16 35 54.29% 45.71% 100.00% 1 437 200 637 68.60% 31.40% 100.00% 2 219 114 333 65.77% 34.23% 100.00% 3 917 461 1378 66.55% 33.45% 100.00% 4 113 89 202 55.94% 44.06% 100.00% 19.43 0.00 5 64 56 120 53.33% 46.67% 100.00% 1 112 27 139 80.58% 19.42% 100.00% 2 66 16 82 80.49% 19.51% 100.00% 3 1489 801 2290 65.02% 34.98% 100.00% 4 50 49 99 50.51% 49.49% 100.00% 35.16 0.00 5 33 27 60 55.00% 45.00% 100.00% 1 67 12 79 84.81% 15.19% 100.00% 2 52 11 63 82.54% 17.46% 100.00% 3 1533 809 2342 65.46% 34.54% 100.00% 4 58 56 114 50.88% 49.12% 100.00% 35.09 0.00 5 40 32 72 55.56% 44.44% 100.00% 1 30 24 54 55.56% 44.44% 100.00% 2 50 42 92 54.35% 45.65% 100.00% 3 1455 740 2195 66.29% 33.71% 100.00% 4 111 62 173 64.16% 35.84% 100.00% 8.26 0.08 5 104 52 156 66.67% 33.33% 100.00% 1 118 37 155 76.13% 23.87% 100.00% 2 66 17 83 79.52% 20.48% 100.00% 3 1506 800 2306 65.31% 34.69% 100.00% 4 37 48 85 43.53% 56.47% 100.00% 34.78 0.00 5 23 18 41 56.10% 43.90% 100.00% 1 79 13 92 85.87% 14.13% 100.00% 2 52 17 69 75.36% 24.64% 100.00% 3 1543 813 2356 65.49% 34.51% 100.00% 4 49 53 102 48.04% 51.96% 100.00% 37.20 0.00 5 27 24 51 52.94% 47.06% 100.00% 1 13 6 19 68.42% 31.58% 100.00% 2 29 22 51 56.86% 43.14% 100.00% 3 1450 759 2209 65.64% 34.36% 100.00% 4 131 77 208 62.98% 37.02% 100.00% 3.59 0.46 5 127 56 183 69.40% 30.60% 100.00% 注 2:z はカイ二乗検定の統計量を示す * 有意水準 10% 有意水準 1% * 11

表 5 各調査項目の記述統計量と 設備投資実績に基づく Mann-Whitney の U 検定の結果 ( 全期間 ) 調査項目 記述統計 Mann-WhitneyのU 検定 平均値 標準偏差 最小値 最大値 Z p 売上額 2.597 1.368 1 5-6.96 0.000 売上数量 2.622 1.344 1 5-6.93 0.000 資金繰り 2.680 0.864 1 5-6.44 0.000 輸出額 2.951 0.459 1 5-0.40 0.692 採算 2.470 1.167 1 5-6.01 0.000 採算 ( 水準 ) 3.000 1.183 1 5-9.90 0.000 生産設備 ( 水準 )( 注 ) 3.234 0.875 1 5-6.05 0.000 売上額 2.715 1.238 1 5-6.81 0.000 売上数量 2.730 1.198 1 5-6.45 0.000 資金繰り 2.708 0.798 1 5-4.74 0.000 輸出額 2.939 0.512 1 5-0.32 0.749 採算 2.564 1.070 1 5-3.22 0.001 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 2.947 0.603 1 5-5.87 0.000 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 3.014 0.541 1 5-5.77 0.000 借入金利 ( 前期比 ) 3.107 0.635 1 5-1.42 0.156 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 2.915 0.591 1 5-5.55 0.000 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 注 1: 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 注 2: 有意水準 1% 2.982 0.527 1 5-5.92 0.000 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 3.182 0.606 1 5-0.63 0.529 設備投資実施企業数 920 12

表 6 各調査項目間の多分相関係数 ( 全期間 ) 調査項目 売上額 売上数量 資金繰り 輸出額 採算 採算 ( 水準 ) 生産設備 ( 水準 )( 注 ) 売上額 売上数量 資金繰り 輸出額 採算 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 借入金利 ( 前期比 ) 長期資金借入難度短期資金借入難度借入金利 ( 今期比来期見通し ) ( 今期比来期見通し ) ( 今期比来期見通し ) 設備実績 売上額 1.00 売上数量 0.94 1.00 資金繰り 0.58 0.57 1.00 輸出額 0.25 0.26 0.18 1.00 採算 0.68 0.65 0.68 0.22 1.00 採算 ( 水準 ) 0.51 0.50 0.58 0.14 0.55 1.00 生産設備 ( 水準 )( 注 ) -0.34-0.34-0.24-0.17-0.26-0.32 1.00 売上額 0.70 0.67 0.43 0.35 0.49 0.44-0.30 1.00 売上数量 0.66 0.71 0.41 0.35 0.47 0.43-0.30 0.93 1.00 資金繰り 0.48 0.48 0.75 0.21 0.55 0.51-0.21 0.63 0.61 1.00 輸出額 0.31 0.32 0.21 0.69 0.29 0.13-0.17 0.22 0.24 0.17 1.00 採算 0.49 0.47 0.51 0.29 0.72 0.45-0.23 0.68 0.66 0.68 0.20 1.00 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 0.22 0.23 0.47 0.11 0.24 0.41-0.14 0.21 0.18 0.40 0.09 0.22 1.00 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 0.21 0.24 0.46 0.13 0.25 0.41-0.15 0.19 0.18 0.40 0.14 0.20 0.93 1.00 借入金利 ( 前期比 ) 0.04 0.05-0.12 0.03-0.02-0.14 0.01-0.00068852 0.03-0.08 0.03-0.01-0.27-0.23 1.00 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 0.22 0.23 0.46 0.10 0.24 0.42-0.17 0.24 0.22 0.46 0.06 0.27 0.80 0.87-0.24 1.00 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 0.22 0.22 0.42 0.12 0.24 0.40-0.16 0.22 0.21 0.43 0.09 0.25 0.82 0.82-0.20 0.90 1.00 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 0.06 0.06-0.10 0.01-0.01-0.12 0.03 0.03 0.04-0.10 0.04-0.02-0.23-0.22 0.78-0.27-0.22 1.00 設備実績 0.19 0.19 0.19 0.02 0.17 0.26-0.18 0.18 0.17 0.14 0.02 0.09 0.20 0.21-0.05 0.19 0.22-0.03 1.00 注 : 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 13

3 分析 (1) 分析モデルの概要 以上において 次期の設備投資実施の有無と調査項目との関係性を年別 全期間ごとに概観してきた ここでは まず 次節に行う次期の設備投資実施企業グループとそうではない企業グループという二つの企業グループ間の多変量的な判別に使用する調査項目の選別を行う 表 7 各調査項目と設備投資実績に関する検定 相関分析の結果 調査項目 Mann-WhitneyのU 検定 多分相関係数 年別 全期間 年別 全期間 差があった年数 差がある場合 : 差がない場合: 相関係数の平均値 売上額 6 0.17 0.19 売上数量 5 0.17 0.19 資金繰り 6 0.16 0.19 輸出額 2-0.02 0.02 採算 4 0.14 0.17 採算 ( 水準 ) 9 0.24 0.26 生産設備 ( 水準 )( 注 ) 5-0.16-0.18 売上額 6 0.16 0.18 売上数量 6 0.14 0.17 資金繰り 2 0.11 0.14 輸出額 1 0.00 0.00 採算 0 0.06 0.09 長期資金借入難度 ( 前期比 ) 7 0.19 0.20 短期資金借入難度 ( 前期比 ) 4 0.20 0.21 借入金利 ( 前期比 ) 5-0.11-0.05 長期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 短期資金借入難度 ( 今期比来期見通し ) 5 0.17 0.19 5 0.20 0.22 借入金利 ( 今期比来期見通し ) 1-0.07-0.03 注 : 生産設備に関わる回答結果は逆転せずに 5 段階に加工した尺度である 表 7 に これまで行ってきたデータセットに関する記述統計分析の結果を整理した 毎 年のデータセットを用いた次期設備投資実施の有無による Mann-Whitney の U 検定の結果 10 年中 6 年以上 有意な差が認められた調査項目には 売上額 資金繰り ( 前 14

年同期比 ) 採算( 水準 ) 売上額 売上数量 長期資金借入難度 ( 前期比 ) という6つが確認された これら 6 つの調査項目は 次節の分析に使用する全期間のデータセットにおける同検定においても有意な差が示されているため その他の調査項目よりも次期の設備投資実施の有無の判別に寄与する可能性が高いと考えられる この結果を踏まえ 年別 全期間の各調査項目と設備投資実績 ( 実施の有無 ) の相関関係を確認すると これら 6 つの調査項目は 他の調査項目よりも値が比較的大きいことが分かる 変数選択を踏まえ 本論文の問題意識を検討するために用意したモデルについて説明する サンプルが持っている様々な特徴から そのサンプルがどのグループに属するかを判別する際 判別分析という手法を用いる また このモデルは ある事象の発生を予測することを目的とした研究においても利用されている分析手法である 一般に 判別分析では カテゴリカル データである目的変数と数量データである説明変数の関係を検証するモデルである しかし 本論文において使用するデータセットは 全て質的な変数であるため この特性に鑑みて分析をする必要がある そこで 次節の分析では こうしたカテゴリカル データを説明変数とする判別モデルである林の数量化 Ⅱ 類を用いて 次期 ( 毎年 4-6 月期 ) の設備投資実施の有無 ( 外的基準 ) による上記 6 つの変数のグループ間の違いを判別する (2) 検証結果 表 8 に次期 ( 毎年 4-6 月期 ) の設備投資実施の有無を外的基準とし 先述の 6 つの調査項目を説明変数とした数量化理論 Ⅱ 類の分析モデルによる推計結果と 表 4 において確認した調査項目の回答別設備投資実績を示した 推計結果については 判別的中率 64.6% と非常に高い精度とは言えないものの それなりの精度で判別できることが示されている その上で 次期の設備投資実施の有無の判別に寄与する各調査項目について確認すると 最も大きな影響を与えているのは 採算 ( 水準 )( レンジ 1.74) であり その次に長期資金借入難度 ( 前期比 )( レンジ 1.39) 売上額( レンジ 1.26) と続いている この三つの調査項目のカテゴリースコアについて検討していく 採算 ( 水準 ) の回答カテゴリーのスコアを見ると 二期連続の改善を示すカテゴリー 5( カテゴリースコア 1.23) と足元 ( 当期 ) の改善を示すカテゴリー 4( カテゴリースコア 0.60) にプラスの高い値が示されている 中小企業景況調査 の調査票において 採算 ( 水準 ) は 経常利益の状況 ( 赤字 トントン 黒字 ) を回答する調査項目である したがって 当期において経常利益が黒字であることが 次期の設備投資実施を促す要因になる可能性が高いと言える 次に高いレンジを示した調査項目は 長期資金借入難度 ( 前期比 ) である この調査項目の 中小企業景況調査 における回答は 容易 不変 困難からの選択式になっている この回答カテゴリーのスコアを見ると 足元 ( 当期 ) の長期資金の調達の容易さを示すカテゴリー 4( カテゴリースコア 0.53) に最も高いプラスの値が示されており 同じく足元の困難な資金調達環境を示すカテゴリー 2( カテゴリースコアー 0.86) はマイナスの値を示している 一方 二期連続で容易であったことを示す回答カテゴリー 5 の値はプラスであるものの小さい これは 足元の資金調達環境が企業にとって良好な場合には 次期の設備投 15

資が促されるものの その状態が続いていれば 将来的な設備投資実施がより喚起されるわけではないことを示唆している したがって 金融機関の貸出姿勢は考慮されるものの 花崎 Thuy(2002) や福田 粕谷 中島 (2005) が示すような外部資金への強い依存状態は確認されなかった 表 8 数量化 Ⅱ 類分析の結果 調査項目 カテゴリー 設備実績カテゴリー n % スコア実施なし実施全体実施なし実施全体 売上額 1 615 235 850 72.35% 27.65% 100.00% -0.12 2 233 123 356 65.45% 34.55% 100.00% 0.24 3 558 269 827 67.47% 32.53% 100.00% 0.04 4 172 121 293 58.70% 41.30% 100.00% -0.19 5 172 172 344 50.00% 50.00% 100.00% 0.09 計 売上数量 1 581 225 806 72.08% 27.92% 100.00% -0.05 2 236 122 358 65.92% 34.08% 100.00% -0.02 3 598 280 878 68.11% 31.89% 100.00% -0.22 4 173 123 296 58.45% 41.55% 100.00% 0.19 5 162 170 332 48.80% 51.20% 100.00% 0.56 計 資金繰り 1 321 99 420 76.43% 23.57% 100.00% -0.24 2 172 67 239 71.97% 28.03% 100.00% -0.13 3 1169 677 1846 63.33% 36.67% 100.00% 0.08 4 61 44 105 58.10% 41.90% 100.00% -0.34 5 27 33 60 45.00% 55.00% 100.00% 0.31 計 採算 ( 水準 ) 計売上額 計長期資金借入難度 ( 前期比 ) 計 注 : 判別的中率 =64.6% 1 326 99 425 76.71% 23.29% 100.00% -0.51 2 154 61 215 71.63% 28.37% 100.00% -0.39 3 926 419 1345 68.85% 31.15% 100.00% -0.26 4 169 137 306 55.23% 44.77% 100.00% 0.60 5 175 204 379 46.17% 53.83% 100.00% 1.23 1 463 175 638 72.57% 27.43% 100.00% -0.09 2 223 115 338 65.98% 34.02% 100.00% 0.06 3 769 354 1123 68.48% 31.52% 100.00% -0.29 4 149 140 289 51.56% 48.44% 100.00% 0.97 5 146 136 282 51.77% 48.23% 100.00% 0.31 1 112 27 139 80.58% 19.42% 100.00% -0.76 2 66 16 82 80.49% 19.51% 100.00% -0.86 3 1489 801 2290 65.02% 34.98% 100.00% 0.05 4 50 49 99 50.51% 49.49% 100.00% 0.53 5 33 27 60 55.00% 45.00% 100.00% 0.08 レンジ 0.43 0.78 0.66 1.74 1.26 1.39 売上額 についても確認すると 最も高いプラスの値を示したのは 回答カテゴリー 4( カテゴリースコア 0.97) であった この結果は 次期の受注額の増加が見込まれた場合に 次期の設備投資を実施が促されることを示している レンジの値が低かった売上額 と売上数量 についても確認しておこう 売上数量 の回答カテゴリーのスコアにおいて プラスで最も高い値を示したのは 5( カテゴリースコア 0.56) であったものの 売上額 の回答カテゴリーのスコアがプラスで最も高い値を示したのは 2( カテゴリースコア 0.24) であった これらは 過去に比べ足元 ( 当期 ) の受注量は増加しているものの 受注額は減少していることが 次期の設備投資を促す可能性を示唆している この結果は 本論文のサンプルを含む平田 (2012) とは異なるところであり 足元の受注動向に設備投資が規定されやすいのは 小規模企業に限定される可能性が高いと言える 16

4 おわりに 本論文では 経済産業省中小企業庁 ( 独 ) 中小企業基盤整備機構が実施する 中小企業景況調査 の調査対象企業のうち 同一企業の個票回答データを基に 2000 年代 10 年間のパネルデータを構築し 中規模製造企業の設備投資の実施を促す経営環境を明らかにすることを目的に分析を進めてきた データセットの記述統計分析では 輸出額 ( 前年同期比 来期見通し ) 採算 資金繰り といった調査項目の回答に 設備投資実施の有無による明確な差がないということであった そして これらの調査項目には 次期の設備投資実績との逆相関の関係が示される時期も確認された その上で 設備投資を実施した企業グループとそうでない企業グループの経営環境の違いを多変量的に判別することが可能かどうか考察した結果 経常利益の増加と足元の資金調達環境の改善が重要な要因となっていることが明らかとなった また これら二つの要因と比べるとその影響力は弱いものの 次期の設備投資実施の有無の判別に売上額 の改善が寄与していることも確認された 以上 本論文の分析結果に基づくと 利益が継続的に増加し 外部資金の貸し出し姿勢が改善した ( 良好な ) 場合に 中規模製造業企業の設備投資が促進される可能性が高いと整理できる したがって 資本金 1 億円以上の企業の設備投資の特徴を示した花崎 Thuy (2002) や福田 粕谷 中島 (2005) とは異なる結果が確認された 一方 中小企業庁 (2006) などにある将来の需要や収益予測に基づき設備投資が実施されるとする見解については 部分的な支持に留まる 本論文で使用したデータセットは 経営者の自社や経営環境に対する主観的判断に基づいたアンケート調査の回答票である そのため 今回の分析結果は 中規模製造業企業の経営者が考える設備投資実施に関わる意思決定のための判断材料と解釈できるだろう しかし この結果については 事実を反映していると捉えられる反面 経営環境に対する客観的な視点が欠けてしまっているとの指摘できる また 特定の条件下にある対象企業のみを抽出し分析したため そのサンプルバイアスの影響についても考慮する必要があると言える これらの課題については 稿を改めて検証していきたい 参考文献 [1]Hayashi,F.(1982), Tobin s marginal Q and average Q: A neoclassical interpret ation, Econometrica,50,pp.215-24. [2]Tobin,J.(1969), A General Equilibrium Approach to Monetary Theory, Journal of the Money, Credit and Banking, 1(1),pp.15-29. [3] 中小企業庁編 (2006), 中小企業白書 2006 年版, ぎょうせい. [4]( 独 ) 中小企業基盤整備機構経営支援情報センター (2013), 中小企業景況調査 30 年超の軌跡 経営者と歩む景況調査へ,( 独 ) 中小企業基盤整備機構. [5] 花崎正晴,Tran Thi Thu Thuy (2002), 規模別および年代別の設備投資行動, フィナンシャル レビュー, 第 62 号, 財務省財務総合政策研究所,36-62 頁. 17

[6] 平田博紀 (2012), 中小製造業企業における設備投資の規定要因: 経営者センチメントの影響 2000 年代の個票データに基づく分析 経営財務研究,,Vol.32,No.1 2 合併号,123-139 頁, 日本経営財務研究学会,( 株 ) 中央経済社. [7] 福田慎一, 粕谷宗久, 慶田昌之 (2007), 企業家精神と設備投資: デフレ下の設備投資低迷のもう一つの説明, 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ No.07-J-7. [8] 福田慎一, 粕谷宗久, 中島上智 (2005), 非上場企業の設備投資の決定要因: 金融機関の健全性および過剰債務問題の影響, 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ,No. 05-J-2. [9] 福田慎一, 計聡, 奥井めぐみ, 奥田健一 (1999), 長期資金と設備投資: 日本の企業別データを用いた実証分析, 郵政研究所ディスカッションペーパー シリーズ 1999-08, 郵政省郵政研究所. [10] 堀敬一, 斎藤誠, 安藤浩一 (2004), 1990 年代の設備投資低迷の背景について- 財務データを用いたパネル分析 -, 経済経営研究,Vol.25-4, 日本政策投資銀行. 18