鹿児島の海を見て
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Variation of the sea surface temperature distribution across the Kuroshio in the Tokara Strait. 抄録 永田豊 Nagata Yutaka 東京大学理学部地球物理学教室 Geophysical Institute, Univ. of Tokyo 竹下克一 Takeshita Katsuichi 鹿児島県水産試験場 Kagoshima Prefectural Experimental Fishery Station 鹿児島県水産試験場では, 鹿児島と那覇の間に就航しているカーフェリー エメラルドあまみ に水温計をとりつけ, 1978 年 10 月からトカラ海峡を横切る表面水温分布の観測を行なってきている. この論文では, 1978 年 10 月から 1981 年 9 月まで の 3 力年の観測資料を解析した結果から, トカラ海峡での表面水温分布とその変動特性を論じる.<BR> 通常, 黒潮の強流 帯の北側にはっきりとした温度フロントが形成されるが, その位置は変動性に富み, 主として佐多岬付近から中の島の間を 行き来している. 一般にこのフロントが北進するときには, その動きは比較的遅く, 2 日間隔の観測から容易にその移動を追う ことができるが, フロントが南に移るときはフロントの構造自体が不明確になる場合がある. 多くの場合, フロントの南への移 動は, 黒潮の温度フロントに二重構造が生じ, その北側のフロントが弱まると同時に南側のフロントが強まるという形で起こる ことが示され, フロントの移動というよりは交代と解釈しうるようである.<BR> 黒潮を横切る表面水温の水平のコントラストは, 8 月から 10 月にかけて非常に弱く, それ以外の時期にははっきりしている. 表面水温自体は測線全体にわたって 8 月に最高 値を示すから, 温度コントラストの季節変動の位相は, 水温のそれよりも 1 ないし 2 カ月の遅れをもっている. 水温コントラスト の弱い期間と強い期間との間の遷移は非常にはっきりしていて, 年により生起日に若干の変動があるが, 短い時間内に起こ る. このような水温コントラストの変動特性は, 黒潮フロント沖合の表面水温変動がきわめて正弦的であるのに対して, 九州 の沿岸付近のそれがいちじるしい歪を持つことに起因している. 沿岸水位の季節変動にも黒潮をはさんで同様の変動パター ンの違いが認められる.<BR> 黒潮北縁の温度フロントが移動する佐多岬付近から中の島にいたる海域の表面水温には, 数 十日の周期を持つ短周期変動がしばしば観測される. この変動はある限られた時期をとると非常に規則的に見えることが多 いが, その変動特性は年によって大きく変化する.<BR> 以上の結果はトカラ海峡を横切る表面水温の連続的な観測が, そこ を流れる黒潮の流軸の変動や. 大隅分枝流の出現と消滅などをモニターするのに非常に有効であることを示すものである. 収録刊行物 日本海洋学会誌 日本海洋学会誌 41(4), 244-258, 1985 The Oceanographic Society of Japan 47
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