発電機の無効電力制約を考慮した潮流計算法

2015 年 2 月 13 日東京国際フォーラムホール B 明星大学理工学部電気電子工学系伊庭健二

蓄電池は系統に必要か? 蓄電池はいらない? という議論がかつてあった 高価であり再エネのコストを不要に押し上げる? 欧州には北欧の水力 仏の原子力 広大な系統網がある? 確かに現在は高価であるが 同時同量を満たすために 孤立系統の国内では不可欠 ドイツでも数百 MW 級のエネルギー貯蔵を開発予定 欧州では FIT が終了し電池のニーズが高まる機運がある 良い蓄電池 安い蓄電池がない 日本は蓄電池電池先進国である 現在では認識が変わった 他国も開発に全力を注いでおり 安価な製品が出ている 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 2

蓄電池以外の電力貯蔵技術 エネルギー貯蔵目的 出力変動抑制目的 揚水発電 (Pumped Storage Hydro) 国内で開発が続いている 圧縮空気貯蔵 ( Compressed Air Energy Storage :CAES) 鉱山跡地など岩塩層に圧縮空気を貯蔵 ガスタービンのコンプレッサーの代用に 熱貯蔵 (Thermal storage system) 太陽熱発電の一部に導入 ( 溶融塩蓄熱 ) 水素貯蔵 トルエンや MCH などの液体としてタンクに貯蔵 フライホイール (Flywheels) キャパシタ (Capacitors) 電気二重層キャパシタ 北電京極発電所 H26.10 運開 200MW x 3 スペインヘマソラール太陽熱発電

米国の開発の経緯 ( 車載用 Li-ion) A123 System 社のリチウムイオン電池 DOE の融資を受けるも 2012 年 12 月破産 LG 化学子会社 Compact Power Li-ion 電池工場 米政府から 1.5 億ドル 州税や市税などで 1.8 億ドルの融資 2010 年起工式 オバマ大統領も出席し 雇用創生を賛辞 工場は EV 用電池をまだ製造していない DOE は LG に対し補助金の一部返還を命じた テスラモーターズの開発する蓄電池 2020 年完成予定 総工費 50 億ドルの工場は 世界最大の Li-ion 電池の生産能力を備える見込み 日本のパナソニックがパートナーに 車載用の Li-ion 電池は日本企業が今もトップシェアだが携帯電話用などでは韓国サムスン電子や LG 電子などの韓国企業に押され逆転された 車載用電池でも韓国勢にシェアを奪われる可能性もある 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 4

電力用大型蓄電 NAS 電池 ( 日本ガイシ ) エネルギー容量の大きな電池 = 電力向き 国内 280MW 海外 170MW 計 450MW : 3000MWh 海外はまだ少ないがアブダビ イタリアで大規模商談 2011 年 9 月 21 日に火災事故 : 対策を施し運転再開 安全性 経済性を増した新型製品の開発が進んでいる レドックスフロー (RedoxFlow) 電池 ( 住友電工 ) バナジウムの高騰もありコスト高になった 一時生産中止になるも 復活し 北電 / 南早来変電所に15MW 60MWhを設置 実証へ タンク増設でWh 容量の増減可能 瞬時に定格の1.5 倍 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 2 倍 5

2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 6 系統運用面からみた利用技術 負荷平準化 需要家への働きかけ = ピーク調整契約 再生可能エネルギーの出力平準化 短周期変動への寄与 再生可能エネルギーの余剰吸収 1 日 2 日分のエネルギーを蓄積 下げしろ対策 瞬動予備力 運転予備力 電力系統の需給バランス = 周波数維持 流通設備の過負荷緩和と新増設先送り 需要のそばの電源として活用

負荷平準化 1500 1000 500 夏季平日パターン 3500 3000 2500 2000 1500 06/7/14 シミュレーション ( 負荷追従運転 ) 実績 ( ハ ターン ) 0-500 -1000-1500 [MWh/day] 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 0 70 60 50 40 30 20 10 0 Jul-03 Jan-04 ピーク調整契約対応明星パターン平準化対応標準パターン 1000 500-500 -1000-1500 P-Received NAS-Charge NAS-Discharge Jul-04 Jan-05 Jul-05 Jan-06 Jul-06 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 7 0 0:00 Jan-07 2:00 4:00 Jul-07 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 2006/7/14 夏の重負荷時 Jan-08 Jul-08 Jan-09 Jul-09 0:00 7 年間の運用実績 Jan-10

ピークシフト 負荷平準化 = ピークカット & ボトムアップ ピークシフト = ダックカーブ問題 PV 普及で昼間需要の減少と夕刻需要増が起きる 急峻な電力不足が起き 既存火力も追従できない 移行する時間は 5-6 時間程度で良い Duck Curve: かも あひる 出典 : カリフォルニア ISO 火力発電が需要増加に追従できない 電力貯蔵に周波数調整を期待 PV 出力好調時に火力発電の最低出力を需要が下回る 電力貯蔵に長時間の余剰吸収を期待 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 8

2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 9 再生可能エネルギーの出力平準化 電池と PCS ともに高速に追従し変動を抑制できる しかし風力等の変動幅は大きく kw 容量が大量に必要 電池無の標準偏差電池有の標準偏差風車総出力 設備容量 0:00 4:00 8:00 12:00 16:00 20:00 0:00 出力の標準偏差で平準化効果を定量化

2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 10 再生可能エネルギーの出力平準化 電池と PCS ともに高速に追従し変動を抑制できる しかし風力等の変動幅は大きく kw 容量が大量に必要 風力発電の出力平準化の例 風車総出力蓄電池出力電池有の発電所出力 WF 設備容量 3:00 3:10 3:20 3:30 3:40 3:50 4:00 4:10 4:20 4:30 4:40 4:50 電池最大 6MW WF 定格出力の 20% 定格出力 AC4,000kW/6,000kWh : 最大出力 6,000kW

再生可能エネルギーの出力平準化 平準化時の充電放電のサイクルが短い場合は電池運用効率は低く 50% 以下になる 電池の特性ではなく PCS の低出力時効率によるものと思われる 放電 [kws] 充電 [kws] 電池の運用効率 [%] 50 40 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 11 30 20 10 0

再生可能エネルギーの余剰吸収 kwh 容量の必要容量は膨大 揚水発電で確保する kwh 容量は 1 箇所の蓄電池ではカバーできない 葛野川揚水発電所 400MW x 4 =1600MW( 予定 ) 発電計測時間は 3~5 時間? = 6400 MWh/day 2MW 17=34MW 7h 238MWh 82m 33.5m 六ヶ所村二又風力発電所併設 NAS 電池 日産リーフ 蓄電池でカバーする場合は分散化が必要 最適分散配置問題 24 kwh 一般家庭 2 日分 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 12

海外に向けた利用技術 車載用蓄電池の無電化地域への活用 世界の人口 70 億人のうち 13 億人が無電化地域に在住 日本の支援は大規模電源に向けられやすいが 送配電インフラも整っていない地域も多い 安価で環境負荷の軽い RE と蓄電池の組合せが有望 Autonomous and Independent electric Power grids Generation and Charging Station Direct Power Supply by Distribution Lines Battery Charging Indirect Power Supply by Batteries 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 13

島嶼 離島に向けた利用技術 単独系統でコスト高に苦しむ離島 グリッドパリティは達成しやすい ユニバーサルサービスの維持と自助努力 安価で環境負荷の軽い RE と蓄電池の組み合わせが有望 観光資源を損なう火力電源増強 風力発電所 太陽光発電所 火力発電所配電塔 22kV 架空送電線 22kV ケーブル線 6.6kV ケーブル線 島嶼 離島で成功すれば 内陸にも導入できる 面積 205 km 2 人口 55,000 人 系統規模 50 MW 太陽光発電容量 4 MW (8%) 風力発電容量 蓄電池容量 既設火力発電機 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 4.2 MW ( 5 Towers) NAS 電池 : 4 MW リチウムイオン電池 : 200 kwh テ ィーセ ル : 61.5 MW カ スターヒ ン : 15.0 MW 14

2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 15 島嶼 離島に向けた利用技術 来間島再生可能エネルギー 100 パーセント自活実証事業 宮古島市のリチウムイオン電池を用いた連系線潮流制御の例 36 分

蓄電池 : 今後の課題 他国の追従に負けないか? 太陽光パネル 日本が先行したが 米国の国を挙げた支援策は脅威 コスト競争に勝つ差別化の切り札は 安全性 火災事故は起こりうるという認識に立つべきでは? 日本ガイシ 2011 年 9 月 21 日に火災事故 多様な運用条件で長期に実証試験を継続する 様々な用途にひとつの電池を使えないか? 併用できるもの 使い分ける技術で容量を節約する 分散配置 集中配置の得失を明らかにして最適化する 高い安全性を工学的に担保する 安全な環境で運用実証を継続する 配置計画 利用 運用技術を向上する 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 16

高い安全性を工学的に担保する システムアシュアランス 安全性 信頼性の確保 経済性と安全性 信頼性の両立という視点から製品 システムを設計 製造していることを客観的 かつ定量的に説明するためのフレームワーク 製品が寿命を迎えるまで 安全性 信頼性を合理的に示し 保証する 1 使用条件の定義付け 2 リスクを挙げその低減策 対策を検討 3 低減を検証し 記録 ドキュメントにする 4 認証を受ける 安全性 信頼性を担保する対策を論理的に説明できる 安全を担保する範囲 責任の範囲を限定できる 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 17

安全な環境で運用実証を継続する エネ庁来年度補正予算で 300 億円 大型蓄電池実証事業 北海道電力 & 住友電工のレドックスフロー 15MW 60MWh 南早来変電所 東北電力 & 東芝のリチウムイオン 40MW 20MWh 西仙台変電所 1 NAS 電池 1 ヶ所 2 リチウムイオン電池複数個所 初期故障や稀な運用条件で出現する故障を発見できる 安全性 信頼性を実証試験で確認できる 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 18

安全な環境で運用実証を継続する 経産省グローバル認証基盤整備事業 国内に大型蓄電池の試験評価を行う拠点整備を平成 25 年度補正予算で措置 独立行政法人製品評価技術基盤機構 (NITE) 大阪市咲洲コスモスクエア地区に世界最大級の大型蓄電池の試験 評価施設を整備 大型蓄電池の性能及び安全性に関するグローバルな試験 評価が行える施設 ( 安全性試験設備 振動試験設備等 ) を整備 大型蓄電池システムの公的な試験評価が可能に 安全性に関する国際標準化 普及基盤構築へ 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 19

配置計画 利用 運用技術の向上 NEDO 海外実証の運用実績の集積 国内 4 実証の運用実績 横浜スマートシティプロジェクト (YSCP) の蓄電池 SCADA 分散する蓄電池を仮想的に集約して一括制御 複数の蓄電池を集約し系統の安定運用に活用 需要家側蓄電池 合計 650kW の Li-ion 蓄電池 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 20

配置計画 利用 運用技術の向上 蓄電池の使用頻度 季節 時間には特徴がある 一例として 北海道 東北の風力発電所は夏季にはほとんど発電しない 夏季には違う用途で活用することもできる 充放電量 [MWh] 放電 [MWh] 充電 [MWh] 発電電力量 [MWh] 発電電力量 [MWh] 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月 平準化用蓄電池の充放電電力量と WF の発電電力量の月別推移 2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 21

2015/2/13 NEDO FORUM2015 明星大伊庭健二 22 配置計画 利用 運用技術の向上 組み合わせて多目的に運用する技術 設備容量を圧縮し コストの低減を図る 多様なサービスに活用し 対価を得てコストの低減を図る 個々に設備を保有した場合 対価 インセンティブの付与 アグリゲーターとの契約で 電力会社の契約で 活性化の図られた電力市場で 協調して運用した場合 技術的問題の解決 即応性 信頼性 地域性 ( 電圧問題 )