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今日, 医療をとりまく環境は大きく変化している とりわけ人口の高齢化, 人々のニーズの多様化, 医療の高度化 専門化, 医療機関における在院日数の短縮化とそれに伴う臨床業務の過密化, 患者の自宅を含む医療の場の広がりと医療機関どうしの連携などといった近年の流れは, すべての医療現場にやむことなく押し寄せている 私たち医療者は, 医療の本質をしっかり踏まえながら, 今の医療に求められているもの, 期待されているものを的確にとらえ, 応えていかなければならない このようななかで, チーム医療の一翼を担う看護師の資質向上はきわめて重要である 看護師には, 単に知識をもつだけでなく, それを行動に結びつけられる思考力をもち, どのような状況においても最善の看護を提供できる応用力が求められている そして, 看護基礎教育には, そのような看護師へと成長していくための基盤を与えることが期待されていることは, 厚生労働省の 看護基礎教育のあり方に関する懇談会 の論点整理 (2008 年 ) においても確認されているとおりである そのような看護基礎教育の重要性に照らして, 本シリーズの 成人看護学 をどのように編集するかという課題は, 挑戦しがいのある, かつ大きな責任を伴う課題であるといえる そのような思いで, 私たちは2007 年, 本シリーズ 成人看護学 各論の再編成にあたった その際, 検討を重ねた結果, 看護を行ううえでの基礎知識として必要な 疾患の診療 を扱う第 1 編と 疾患をもつ患者の看護 を扱う第 2 編の2 編編成とし, 器官系統別の巻構成とした 現行カリキュラムの区分で言えば, 人体の構造と機能 にあたる内容の一部, 疾病の成り立ちと回復の促進 にあたる内容の一部, およびそれらを踏まえた 成人看護学 の内容になる この基礎知識にあたる第 1 編から看護編である第 2 編へと内容がつながってこそ, この構成が生かされる 2007 年の再スタート時に特に意識したこの点を, 今回の改訂にあたりいっそう押し進めるよう努めた 2007 年に目指した第 1 編と第 2 編をとおした内容のつながりは, 今日求められる根拠をもった看護のために重要である 内容のつながりとはどういうことかといえば, その一つは 人体の構造と機能 にあたる知識と 疾病の成り立ちと回復の促進 にあたる知識のつながりである 人体における生理的な過程が, 病気の原因となる何らかの要因の作用を受けて, どのように変化するのかという観点から, 解剖生理学の知識と症状や疾患の知識を一本につなげておくことはこの分野の学習の基本といえる もう一つは, 上記のような症状や疾患についての知識と, それを踏まえた看護編
とのつながりである 疾患をもった患者の身体において進行している生理的 病理的過程はどのようなもので, その結果もたらされる状態とはどのようなものか, それらが患者の生命と生活にどのような影響を与えるかを把握し, それに応じて, 患者一人ひとりに個別の看護上の対策を挙げ, 組み立てていく力が, これからの看護には必要である このような思考ができる力は, 多くの職種が協働して患者の治療と世話にあたる医療のなかでしっかりとコミュニケーションを図り, さらにはリーダー, コーディネーターの役割を果たしていくうえでも必要な素養である 看護の職能が, これまで以上に高度で専門的な方向に広がろうとする動きが盛んである マニュアル的なものを覚えるのでなく, 上に述べたような, なぜ患者がこのような状態になっているのか, それに対してどのような看護を行っていけばいいのかを思考できる力を養っておくことは, そのような時代の看護基礎教育にふさわしい 本書の内容はそのような明日を生きるナースの基礎をつくる糧となるものと確信している 今回の改訂にあたり, 第 1 編と第 2 編をとおした内容の積み上げ 連携 整合性をとることにさらに努めたことのほか, 本書全体をとおして, 知識量の豊富さを目指すのでなく, 基本的なことの深い理解が得られるよう, 記述のメリハリをつけることを心がけた また, いきなり器官の構造と機能から入るのでなく, 新たに序章を設け, 患者がどのような困難をもって生活することになるのか, どのような医療が提供されるのか, というマクロな視点からみたイメージをもって本書の内容に入っていけるようにした さらに第 1 編 第 2 編とも, 検査 に関連する章と 治療 処置 に関連する章を合体してコンパクト化を図った 激変する診療技術, 医療提供体制等々の現状に即応して記述内容を改めたことは言うまでもない 患者の状態を深く理解し, いかなる状況においても最善の看護が提供できるための基礎知識と思考力を身につけるうえで, 本書が役立つなら幸いである 2010 年 11 月 15 日編者ら
目次 序章女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために 1 Ⅰ 女性のライフサイクルと疾患小林拓郎 A 女性の生涯 1 幼年期, 少女期 2 思春期 3 成熟期 4 更年期 5 老年期 B 女性生殖器疾患の年齢的な特徴 1 年齢的区分による病態の変化 2 思春期, 更年期に多発する疾患の背景 3 年齢的区分による性器出血の病態 2 2 2 2 3 3 3 4 4 4 5 4 それぞれの年齢的区分でみられる主な疾患 6 Ⅱ 女性生殖器疾患の特性と近年の傾向竹村禎子 6 A 女性生殖器疾患の近年の動向 6 B 女性生殖器疾患をもつ患者の特徴 7 Ⅲ 女性生殖器疾患をもつ成人と医療のかかわり 8 1 子宮がん検診で, 子宮頸部がんが発見されたAさん 8 2 卵巣がんで手術後, 外来化学療法を受けているBさん 10 第 1 編 女性生殖器疾患とその診療 第 1 章女性生殖器の構造と機能小林拓郎, 綾部琢哉 13 Ⅰ 女性生殖器のしくみ 14 D 骨盤底 24 A 外性器 14 E 乳房 ( 乳腺 ) 25 1 恥丘 14 1 乳房の発育 25 2 大陰唇 15 2 乳房の構造 25 3 小陰唇 15 3 副乳 25 4 腟前庭 15 Ⅱ 女性生殖器の担う機能 26 5 外尿道口 15 A 女性ホルモンと機能 27 6 バルトリン腺 15 1 末梢内分泌腺の種類とそのホルモン 7 陰核 15 の生理作用 27 8 処女膜 16 2 卵巣ホルモン 28 9 会陰 16 3 末梢内分泌腺の調節機序 30 B 内性器 16 4 下垂体ホルモンの種類とその生理作 1 腟 16 用 30 2 子宮 18 5 下垂体機能の調節機序 30 3 卵管 20 6 ホルモン分泌の自動制御 ( フィード 4 卵巣 21 バック ) 33 C 尿路 22 B 月経の生理と機能 34 1 尿道 22 1 排卵ならびに月経発来の機序 34 2 膀胱 23 2 月経周期自動性の機序 35 3 尿管 23 3 月経の周期性の障害 36
iv 目次 4 排卵と月経の関係 ( オギノ説 ) 36 3 性分化の過程 40 5 基礎体温とホルモン 36 4 性腺の分化 40 6 月経の生理 37 5 性管の分化 42 C 性の分化 発育 39 6 外性器の分化 44 1 ヒトの染色体構成 39 7 視床下部の機能的性分化 45 2 性の決定 39 8 思春期前後における性の発育 45 第 2 章女性生殖器疾患で生じる主な症状小林拓郎, 綾部琢哉 49 Ⅰ 性徴の異常 A 性分化の異常による性機能異常症 1 性腺形成の障害による性発育異常症 50 50 2 月経困難症 Ⅲ 帯下 1 生理的帯下 65 66 66 ( 性腺形成異常症 ) 2 性管分化の障害による性発育異常症 3 性管発育の障害による性発育異常症 B 性発育 ( 第 2 次性徴 ) の異常による性機 50 50 53 2 帯下の種類 3 病的帯下 Ⅳ 性器出血 1 性器出血とは 67 67 68 68 能異常症 1 性早熟 ( 早発思春期 ) 2 性遅熟 ( 遅発思春期 ) Ⅱ 月経の異常 A 初経発来年齢の異常 1 早発月経 2 晩発月経 B 月経周期の異常 1 無月経 C 月経持続日数の異常 1 過短月経 2 過長月経 D 月経血量の異常 1 過少月経 2 過多月経 E 無排卵性月経 F 月経随伴症状 1 月経前症候群 ( 月経前緊張症 ) 53 53 54 54 55 55 56 56 56 63 63 63 63 63 64 64 64 64 2 原因疾患と性器出血の特徴 Ⅴ 骨盤内疼痛 1 下腹痛 2 腰痛 Ⅵ 排尿障害 1 頻尿と尿意頻数 2 排尿痛 3 排尿困難 ( 尿閉 ) 4 尿失禁 Ⅶ 下腹部膨隆 1 下腹部全体の膨隆 2 腹腔内腫瘤による膨隆 Ⅷ 外陰部瘙痒感 1 外陰部瘙痒感の原因と頻度 2 外陰部瘙痒感の種類 3 2 次的変化 4 外陰部瘙痒感に対する処置 68 69 69 70 71 71 71 71 71 71 71 72 72 72 72 73 73 第 3 章女性生殖器疾患の主な検査と治療法小林拓郎, 綾部琢哉 75 Ⅰ 診察の方法 A 問診 1 問診の内容 2 問診票の活用 B 婦人科診察法 76 76 76 76 76 1 外診 2 内診 3 直腸診 4 腟鏡診 Ⅱ 検査の種類と方法 76 76 79 79 81
目 次 v A 子宮消息子検診法 81 I 内分泌機能検査 95 B 診査穿刺法 82 1 基礎体温測定 95 C 細胞診 ( スメアテスト ) 83 2 子宮頸管粘液検査 96 D 組織学的検査 84 3 ホルモン測定法 97 1 診査切除術 84 4 間脳 下垂体 卵巣系機能検査 99 2 内膜診査掻爬術 E 分泌物の細菌学的検査 84 85 Ⅲ 女性生殖器疾患の主な治療法 A 婦人科的一般治療 104 104 1 一般細菌検査法 86 B ホルモン療法 105 2 トリコモナス検出法 86 1 排卵誘発法 105 3 カンジダ検出法 86 2 黄体機能不全に対する療法 108 4 クラミジア 淋菌同時検出法 86 3 ホルモン補充療法 109 F 内視鏡検査法 86 4 月経移動 109 1 コルポスコピー 86 5 子宮内膜症に対するホルモン療法 110 2 ヒステロスコピー 87 6 子宮筋腫に対するホルモン療法 111 3 カルドスコピー 87 7 経口避妊薬 ( 低用量ピル ) 112 4 ラパロスコピー 87 C 化学療法 115 G 卵管疎通性検査法 88 1 婦人科感染症に対する化学療法 1 卵管通気法 ( ルビンテスト ) 89 ( 抗菌療法 ) 115 2 卵管通水法および卵管通色素法 90 2 婦人科悪性腫瘍に対する化学療法 3 子宮卵管造影法 90 ( 抗腫瘍療法 ) 117 H 婦人科画像診断 91 D 化学療法併用放射線療法 119 1 骨盤内血管造影法 91 E 放射線療法 120 2 超音波断層法 91 F 手術療法 120 3 CT 検査 92 1 手術の種類 120 4 MRI 検査 92 2 手術時の麻酔 122 5 PET 検査 94 第 4 章主な女性生殖器疾患の診療小林拓郎, 綾部琢哉, 喜多恒和 125 Ⅰ 性感染症 126 3 外陰炎 131 1 淋疾 ( 淋菌感染症 ) 126 4 外陰 腟カンジダ症 132 2 梅毒 127 5 急性外陰潰瘍 132 3 軟性下疳 128 6 外陰白斑症, 外陰萎縮症 133 4 クラミジア感染症 128 7 バルトリン腺囊胞 133 5 外陰ヘルペス 128 8 バルトリン腺炎 133 6 尖圭コンジローマ 129 9 尖圭コンジローマ 133 7 後天性免疫不全症候群 (AIDS, エ 10 外陰がん 133 イズ ) 8 外陰 腟カンジダ症 129 130 Ⅲ 腟の疾患 A 腟炎 134 134 9 トリコモナス腟炎 130 1 トリコモナス腟炎 ( 腟トリコモナス Ⅱ 外陰の疾患 130 症 ) 134 1 外陰の奇形 ( 半陰陽 ) 130 2 カンジダ腟炎 ( 腟カンジダ症 ) 134 2 処女膜閉鎖 ( 鎖陰 ) 131 3 非特異性腟炎 135
vi 目次 4 老人性腟炎 B 腟の損傷 1 分娩時の腟損傷 2 性交による腟損傷 C 腟瘻 D 腟の発生 発育の異常 E 腟の腫瘍 1 良性腫瘍 2 悪性腫瘍 Ⅳ 子宮の疾患 A 子宮の奇形 B 子宮の位置異常 1 子宮後転症 ( 子宮後傾後屈 ) 2 子宮下垂および子宮脱 3 子宮内反症 C 子宮の炎症 1 子宮頸部の炎症 2 子宮体部の炎症 3 子宮内膜炎 4 子宮筋層炎 D 子宮腟部びらん 1 真性びらん 2 仮性 ( 偽牲 ) びらん E 機能性子宮出血 1 増殖期内膜からの機能性出血 2 分泌期内膜からの機能性出血 F 子宮内膜症 G 子宮の良性腫瘍 1 頸管ポリープ 2 子宮筋腫 H 子宮の悪性腫瘍 1 子宮頸がん 2 子宮体がん, 子宮内膜がん 3 子宮肉腫 4 絨毛がん I 絨毛性疾患 1 全胞状奇胎 ( 全奇胎 ) 2 部分胞状奇胎 ( 部分奇胎 ) 3 侵入 ( または破壊 ) 胞状奇胎 4 存続絨毛症 5 絨毛がん ( 絨毛上皮腫 ) Ⅴ 卵巣の疾患 135 136 136 136 136 136 136 136 137 137 137 138 138 139 141 141 141 141 141 142 142 142 142 143 144 145 145 147 147 148 151 152 161 164 165 166 166 166 167 167 167 170 A 非新生物性卵巣腫瘤 ( 貯留囊胞 ) 170 B 卵巣腫瘍 ( 新生物 ) 171 1 良性囊胞性腫瘍 174 2 良性充実性腫瘍 174 3 境界悪性腫瘍 ( 5 年生存率が50% 前後のもの ) 175 4 悪性腫瘍 ( 5 年生存率が10% 以下のもの ) 175 Ⅵ 卵管, 骨盤腹膜および骨盤結合織の疾患 177 A 付属器炎 177 1 卵管炎 178 2 卵管囊胞腫 178 B 骨盤腹膜炎 179 C 骨盤結合織炎 179 Ⅶ 不妊症 180 A 妊娠成立の障害 180 1 女性側の不妊の原因 180 2 男性側の不妊の原因 181 3 男女両性の不妊の原因 182 4 機能性不妊 182 B 不妊症の検査 182 1 女性側の検査 182 2 男性側の検査 183 3 総合的検査 183 C 不妊原因に対する治療 184 1 女性側の不妊原因に対する治療 184 2 男性側の不妊原因に対する治療 184 D 人工授精 184 1 AIHの適応 184 2 AIDの適応 185 3 人工授精の実施法 185 4 人工授精の問題点 185 E 生殖補助医療 (ART) 186 1 生殖補助医療の種類 186 2 生殖補助医療の手技 187 3 生殖補助医療の臨床成績 188 4 生殖補助医療の問題点 188 Ⅷ 不育症 189 Ⅸ 更年期障害 190 Ⅹ 骨粗鬆症 192
目 次 vii 第 2 編 女性生殖器疾患患者の看護 第 1 章看護の基本竹村禎子 195 Ⅰ 患者の特徴と看護の役割 196 1 身体的側面 206 A 生じやすい身体的問題 196 2 心理 社会的側面 207 B 生じやすい心理 社会的問題 197 Ⅲ 疾患の経過と看護 210 C 看護の目的と援助活動 198 A 急性期の患者の看護 210 1 身体的問題に対する看護の目的と 1 急性期に抱えやすい問題 210 援助活動 198 2 急性期の看護の目的と援助 211 2 心理 社会的問題に対する看護の B 回復期の患者の看護 215 目的と援助活動 199 1 回復期に抱えやすい問題 215 Ⅱ 必要な情報とアセスメントの視点 199 2 回復期の看護の目的と援助 216 A 患者の一般的背景 200 C 慢性期の患者の看護 218 B 主訴と現病歴 201 1 慢性期に抱えやすい問題 218 1 主訴 201 2 慢性期の看護の目的と援助 219 2 現病歴 203 D 終末期の患者の看護 220 C 健康歴 204 1 終末期に抱えやすい問題 220 1 既往歴と疾患の悪化要因 204 2 終末期の看護の目的と援助 221 2 家族の健康歴 205 Ⅳ 女性生殖器疾患患者が利用できる社 3 本人の健康認識と健康管理 205 会資源 223 D 現在の情報 206 第 2 章主な症状に対する看護竹村禎子 225 Ⅰ 月経異常 226 1 症状観察のポイント 234 A 必要な情報とアセスメントの視点 226 2 日常生活への影響 236 1 症状観察のポイント 227 B 看護の方法と根拠 236 2 日常生活への影響 228 1 症状軽減の方法と看護 236 B 看護の方法と根拠 229 2 症状を悪化させない看護 237 1 症状軽減の方法と看護 229 3 日常生活の自立を支える看護 237 2 症状を悪化させない看護 229 Ⅳ 骨盤内疼痛 237 3 日常生活の自立を支える看護 229 A 必要な情報とアセスメントの視点 237 Ⅱ 帯下 230 1 症状観察のポイント 238 A 必要な情報とアセスメントの視点 230 2 日常生活への影響 239 1 症状観察のポイント 231 B 看護の方法と根拠 240 2 日常生活への影響 232 1 症状軽減の方法と看護 240 B 看護の方法と根拠 233 2 症状を悪化させない看護 240 1 症状軽減の方法と看護 233 3 日常生活の自立を支える看護 241 2 症状を悪化させない看護 233 Ⅴ 排尿障害 241 3 日常生活の自立を支える看護 233 A 必要な情報とアセスメントの視点 241 Ⅲ 異常性器出血 233 1 症状観察のポイント 242 A 必要な情報とアセスメントの視点 233 2 日常生活への影響 242
viii 目次 B 看護の方法と根拠 243 2 症状を悪化させない看護 246 1 症状軽減の方法と看護 243 3 日常生活の自立を支える看護 246 2 症状を悪化させない看護 3 日常生活の自立を支える看護 243 243 Ⅶ 下腹部膨隆 A 必要な情報とアセスメントの視点 246 246 Ⅵ 外陰部瘙痒感 244 1 症状観察のポイント 247 A 必要な情報とアセスメントの視点 244 2 日常生活への影響 247 1 症状観察のポイント 244 B 看護の方法と根拠 248 2 日常生活への影響 245 1 症状軽減の方法と看護 248 B 看護の方法と根拠 246 2 症状を悪化させない看護 248 1 症状軽減の方法と看護 246 3 日常生活の自立を支える看護 248 第 3 章主な検査と治療に伴う看護竹村禎子 249 Ⅰ 診察時の看護 250 G 画像診断時の看護 267 A 問診 250 1 骨盤内血管造影時の看護 267 B 外診 251 2 超音波診断時の看護 269 C 内診 251 H 内分泌機能検査時の看護 270 Ⅱ 検査時の看護 A 診査穿刺 ( ダグラス窩穿刺 ) 時の看護 255 255 Ⅲ 主な治療 処置に伴う看護 A 婦人科処置を受ける患者の看護 272 272 B 細胞診 ( スメアテスト ) 時の看護 256 1 腟洗浄法 272 C 組織学的検査時の看護 257 2 腟タンポン 273 1 診査切除時の看護 257 3 腟座薬, 腟錠 273 2 診査搔爬術時の看護 258 4 子宮内洗浄法 273 D 分泌物の細菌学的検査時の看護 258 B ホルモン療法を受ける患者の看護 274 1 一般細菌検査時の看護 258 1 必要な情報とアセスメントの視点 274 2 トリコモナス検出時の看護 259 2 看護の方法と根拠 274 3 カンジダ検出時の看護 260 C 化学療法を受ける患者の看護 274 4 クラミジア検出時の看護 261 1 必要な情報とアセスメントの視点 274 E 内視鏡検査時の看護 261 2 看護の方法と根拠 275 1 コルポスコピー施行時の看護 261 D 放射線療法を受ける患者の看護 275 2 ヒステロスコピー施行時の看護 262 1 必要な情報とアセスメントの視点 275 3 カルドスコピー施行時の看護 263 2 看護の方法と根拠 276 4 ラパロスコピー施行時の看護 264 E 手術を受ける患者の看護 277 F 卵管疎通性検査時の看護 264 1 手術時の一般的看護 277 1 卵管通気法 ( ルビンテスト ) 時の看 2 各種手術を受ける患者の看護 284 護 265 F リハビリテーション時の看護 289 2 卵管通水法および卵管通色素法時 G 救急時の看護 ( 大量出血時の看護 ) 290 の看護 265 1 必要な情報とアセスメントの視点 290 3 子宮卵管造影法時の看護 266 2 看護の方法と根拠 290
目 次 ix 第 4 章女性生殖器疾患をもつ患者の看護竹村禎子 293 Ⅰ 子宮筋腫 ( 子宮平滑筋腫 ) 患者の看護 A 必要な情報とアセスメントの視点 295 295 Ⅲ 子宮内膜症患者の看護 A 必要な情報とアセスメントの視点 309 310 B 看護の方法と根拠 298 B 看護の方法と根拠 312 1 看護目標 298 1 看護目標 312 2 看護計画 実施 298 2 看護計画 実施 313 Ⅱ 子宮がん ( 子宮頸がん ) 患者の看護 A 必要な情報とアセスメントの視点 301 302 Ⅳ 腟炎患者の看護 A 必要な情報とアセスメントの視点 315 315 B 看護の方法と根拠 305 B 看護の方法と根拠 318 1 看護目標 305 1 看護目標 318 2 看護計画 実施 306 2 看護計画 実施 318 索 引 321
序章 女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために
2 序章女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために Ⅰ 女性のライフサイクルと疾患 A 女性の生涯 女性の生涯は, 男性のそれに比べて比較的明瞭な年齢的区分を示し, これを, 幼年期, 少女期, 思春期, 成熟期, 更年期, 老年期の 6 期に区分することができる ( 図 1) ないぶんぴつこのように女性の一生の区分が比較的明瞭なのは, その背景となる内分泌 ( ホルモン ) の機能の消長が, 年齢の経過とともに比較的特異的に変動するためであり, 特に生殖機能の消長は月経の有無と明らかに一致する 1. 幼年期, 少女期 幼年期, 少女期 (childhood) では性器以外には男女の区別はない 身体の発育は著明であるが, 生殖能力はまったく欠如する この時期の女性を少女とよぶ 2. 思春期 思春期 (puberty) は青春期ともいわれ, 初経の発来する少女期の後期から, 生殖能力の完成する成熟期への移行期であり, からだのなかのホルモンの働きに激しい変動のみられる時期である この期になると, 第 1 次性徴である内外性器の急速な発育とともに, 第 2 次性徴としての骨盤の発育, 皮下脂肪の蓄積, 乳房の肥大, 図 1 女性の生涯の年齢的区分
Ⅰ 女性のライフサイクルと疾患 3 陰毛の発生などを生じ, 女性らしいからだとなる 年齢的には12~13 歳頃から17~ 18 歳頃までの時期である 3. 成熟期 思春期を経て, やがて女性は成熟期 (maturity) に入る 成熟期とは, 生殖能力の発現する時期からそれが消失する閉経期 (menopause) に至るまでの時期で, 女性の本質的な生命活動である妊娠, 分娩, 授乳という一連の生殖現象の営まれる時期である 4. 更年期 長い成熟期が終わり, やがて女性は卵巣の働きを中心として全身のホルモン環境に変動をきたし, 次第に内分泌 ( ホルモン ) 活動は減退し, やがて月経は閉止 ( 閉経 ) して老年期に入る この成熟期から老年期に移行する時期を更年期 (climacterium) といい, この期の女性を更年期女性とよぶ 日本人女性の閉経年齢は45~54 歳にピークが存在する 図 2からも明らかなように, その年齢分布は広範囲にわたり, 一般に更年期を何歳頃から何歳頃までと決めることは困難である 5. 老年期 更年期を経て, やがて女性としての生殖機能は完全に消失し, いわゆる老年期せいせん (senium) に入る 女性は男性に比較して性腺の機能, すなわちホルモン活動は比 患者の理解1 構造と機能2 症状3 序検査 治療4 疾患と診療1 看護の基本2 症状と看護3 検査 治療と看護4 患者の看護図 2 わが国の女性の閉経年齢の分布
4 序章女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために 較的急速に低下する このように女性は年齢的区分が比較的明瞭であるが, その理由は, 女性としての精神的ならびに身体的特徴を裏づけるホルモン活動, 特に卵巣の働きが, ある一定の時期を境として, かなり急激な変動を遂げるためである 換言すれば, 女性の生涯はホルモンによって支配されているといえる B 女性生殖器疾患の年齢的な特徴 女性生殖器疾患の特性を理解するには, 女性生殖器の構造が関連する病変, そして女性生殖器のホルモン変動, つまり生理学的な要因が関連する病変という, 2 つの側面からのアプローチが不可欠である なかでも女性の年齢と関係の深い後者について知ることは, 患者の心身の支援を業とする看護師には, 特に重要である そこで以下に, 女性生殖器疾患と年齢との関係についてまとめることとする それは女性にあっては, 幼年期, 少女期, 思春期, 成熟期, 更年期, 老年期という年齢的区分が比較的明瞭に認められ, この年齢的区分によって疾患の種類や症状の出現にもかなりの差が認められるからである 1. 年齢的区分による病態の変化 ないぶんぴつ 女性の年齢的区分が比較的明瞭なのは, その背景にある内分泌機能が年齢によっ て大きく変化するためである このことは疾患の病態にも強く影響し, その結果, 同一疾患でも年齢によって症状に大きな差のあることは注目すべきことである りんきんたとえば, 女性性器への淋菌の感染は, 成熟女性では尿道炎の形をとることが多ちつえんいが, 幼女や少女にみられる淋菌感染は外陰炎や腟炎となって現れる また, 老年期女性では老人性腟炎がしばしば認められるが, これらはいずれも卵巣機能との関係においてみられる病像の違いである たいげ成熟女性の帯下の増加の原因として重要な位置を占める子宮腟部びらんも, 卵巣機能に密接な関係を有し, 胎児期に胎盤から卵胞ホルモン ( エストロゲン ) の供給を受けていた新生児のほとんどの例には存在するが, 生後日がたつにつれて消失する そして思春期になると再び発生頻度が増加し, 成熟女性の大多数に認められるようになる その後, 卵巣機能の低下する更年期には子宮腟部びらんは減少し, 閉経期後の女性にはほとんど認められなくなる 2. 思春期, 更年期に多発する疾患の背景 成熟期を中心とした前後の 2 つの移行期, すなわち思春期と更年期は, 卵巣機能を中心とし, からだ全体の内分泌環境が急激に変動する時期であり, その影響で自律神経機能が障害を受けやすい 自律神経失調症や更年期障害などの原因も, この時期におけるホルモンバランスの失調と考えられている
Ⅰ 女性のライフサイクルと疾患 5 また, 若年性出血や更年期出血などのいわゆる機能性出血も, この移行期にみられる特異な疾患の一つである 3. 年齢的区分による性器出血の病態 出生から老年期に至るまでの, 女性の性器出血を主訴とする疾患の種類やその頻度は, 図 3に示すとおりである 図の左は出生から更年期に至るまでの女性で月経のある者を対象とした場合, 右は閉経した更年期から老年期に至る女性を対象とした場合である 年齢による頻度の違い, 閉経前後での頻度の違いが大きいことがわかる 1 思春期 成熟期女性の性器出血思春期 成熟期女性の性器出血を主訴とする疾患は, 炎症, 異常妊娠, 機能性出しゅよう血, 良性腫瘍などであるが, それぞれの占める割合は年齢により変化し, 加齢ととしきゅうきんしゅけいかんもに良性腫瘍 ( 子宮筋腫, 頸管ポリープなど ) による性器出血の頻度が増加する 2 閉経後女性の性器出血ここで注目すべきは, 閉経前と閉経後の違いである 同じ年代 (40~59 歳 ) に属していても, 月経の有無で性器出血の原因となる疾患の頻度には大きな差が認められる すなわち閉経前の女性に異常な性器出血を認めた場合には, それが子宮がんなどの悪性腫瘍である確率は約 1/10であるが, 閉経後の女性の場合には, その確率は,1/2 以上である 閉経前 閉経後 % % 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 年齢 0~19 20~2930~3940~49 50~59 40~49 50~59 60~69 : 子宮がん, その他の悪性腫瘍 : 子宮筋腫 ポリープなどの良性腫瘍 : 性器の炎症による出血 : 子宮外妊娠, その他の異常妊娠 : 機能性出血, その他原因不明 患者の理解1 構造と機能2 症状3 序検査 治療4 疾患と診療1 看護の基本2 症状と看護3 検査 治療と看護4 患者の看護図 3 性器出血を主訴とする疾患の年齢的区分による頻度
6 序章女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために 4. それぞれの年齢的区分でみられる主な疾患 1 少女期の主な疾患ちつえん少女期にも性器の疾患は少なくない 少女の外陰 腟炎は細菌感染によるものもしゅあるが, 異物による腟炎もまれにある 幼女, 少女で卵巣に良性あるいは悪性の腫よう瘍が生じることや, 外性器の形態異常 ( 奇形 ) がみられることもある 2 思春期の主な疾患 初経の発来をきたす卵巣の内分泌機能の急激な変動により, この時期には自律神経機能の変調を起こしやすく, 自律神経失調症の訴えをする者がしばしばいる 一方, 卵巣機能がたとえ活動を開始したとしても, その働きは安定せず, 種々の月経異常や若年性出血といわれる機能性出血の発症頻度が高い 3 成熟期 更年期の主な疾患外性器, 内性器を含め, あらゆる女性生殖器疾患がみられる 特に妊娠, 出産という産科領域の異常との関連で, 思春期や閉経期の女性にはみられない多くの疾患が発現する 4 老年期の主な疾患卵巣機能の欠如による老人性腟炎や悪性腫瘍が多い Ⅱ 女性生殖器疾患の特性と近年の傾向 A 女性生殖器疾患の近年の動向 わが国では, 昭和 56 年から死亡原因の第 1 位は悪性新生物が占めており, それによる死亡者数は年間 30 万人を超えている これに対して国は種々のがん対策を推進してきたが, 平成 19 年にはがん対策基本法が施行され, 同年 がん対策推進基本計画 が策定された この基本計画においては, がん検診受診率を50% 以上とするという目標などが掲げられている その一環として, 平成 21 年 7 月に厚生労働省は大臣を本部長とする がん検診 50% 推進本部 を設置し, 普及, 啓発活動を実施している このような動きのなかで, 女性特有のがん検診率は低い状態にある ( 平成 19 年実施の 国民生活基礎調査 によれば, 子宮がん検診受診率は21.3%) ため, 平成 21 年度女性特有のがん検診推進事業実施要綱 が厚生労働省から出され, 子宮がん検診手帳とがん検診無料クーポン券を一定年齢の女性に配布するようになった また近年, 子宮頸部がんの予防が推進されている このがんのもたらす大きな問題は,
Ⅱ 女性生殖器疾患の特性と近年の傾向 7 死亡率が増加しているというだけでなく, 生殖機能がある20 歳代から40 歳代の女性に罹患率が増加している点である 言うまでもなく, この年代における罹患率, 死亡率が高ければ, 出生率にも影響を及ぼすため, 人口動態にもかかわってくる そのため, 厚生労働省は 子宮頸がんの予防 ( ヒトパピローマウイルスの予防ワクチン ) を推奨している 一方, わが国では性感染症 (STD) の若年齢感染が問題になっている 性器クラミジアの無症候感染者が女子高校生の約 13% 程度いるという報告もあり ( 厚生労働省研究班 ), 思春期からのSTD 予防教育や性教育の重点化は喫緊の課題といえる 確かに性器クラミジア感染は全体的な性感染症のなかでは減少傾向ではあるが, 男女とも最も多い性感染症であることに変わりはない なお,HIV 感染症者, エイズ患者は増加が続いているという報告 ( 厚生労働省エイズ動向委員会 ) も看過することはできない B 女性生殖器疾患をもつ患者の特徴 女性生殖器疾患をもつ人の基本的特性は, 以下の視点で考えていく必要がある 1どのような生命危機があるか 2 身体的苦痛はどうか 3 心理的苦痛はどうか 4どのような生活を強いられているのかつまり, 女性の健康障害について個別のアセスメントを考えていく視点は, その女性の身体的 心理的 社会的 ( 環境的 ) 文化的な特徴と発達段階に注目し, 総合的に判断し, 援助計画を展開することが重要である それを整理すると以下のようになる 女性生殖器疾患患者の生命危機とは, 当然生死にかかわる状態の患者であり, 生命維持が困難な場合をいうが, 婦人科領域では, 悪性腫瘍患者がその対象になる たとえば, 子宮がん進行度ステージⅣ( 子宮頸部がんおよび子宮体部がん ), 卵巣がん進行度ステージⅢ,Ⅳの患者が該当する この時期の人は, 化学療法や放射線療法の副作用に直面しながら, 女性生殖器悪性腫瘍の進行に伴い, 子宮頸部がんであれば子宮直腸瘻, 卵巣がんであれば腹膜播種などを起こし, リンパ管閉塞によるたいげ外陰部や下肢の浮腫などが生じ, 性器出血や帯下の悪臭などを起こす このように婦人科領域のがんは, 生殖機能に直面した問題に関連しながら, 局所的臓器の二次的合併症を起こす 隣接する機能障害としての膀胱障害や直腸障害の問題は基本的欲求が充足できないだけではなく, 日常生活レベルの低下つまりセルフケア能力の低下を生じてしまう原因になり, 身体的な苦痛やQOLの低下を生じる また, がん患者は, 疾病による不安や死に対する恐怖によって抑うつ状態になり意思決定の能力が低下しつつあるため, 総合的な看護アセスメントを行っていく 患者の理解1 構造と機能2 症状3 序検査 治療4 疾患と診療1 看護の基本2 症状と看護3 検査 治療と看護4 患者の看護
8 序章女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために ことが求められる 女性生殖器疾患のもたらす身体的苦痛は, 原疾患に起因する性器出血と下腹部の疼痛が主なものであり, それらを主訴として受診をする人が多い この場合は何らかの生殖器の解剖生理的な変化を異常としてとらえ, 苦痛 として苦しみを患者は感じている また, 婦人科領域の内診, 直腸診検査により苦痛を感じる場合があるため, 手順などを説明するとともに苦痛の緩和に努めることが大切である それには患者の置かれている状況を観察し, 適切なアセスメントに基づいて問題点を明らかにしていくことが必要である 一方, 女性生殖器疾患のもたらす心理的苦痛は, 自分が女性としての役割が果たせない苦しみ, 女性として他者に認めてもらえなくなるだろう苦しみ, 女性であることを自分自身で認められない苦しみなど, 女性意識を背景にしたものである また, 疾患だけではなく, その治療方法もメンタルヘルスに何らかの影響を及ぼしていることが多い そのため, 感情の変化や行動の変化に注意しながら, アセスメントする必要がある 女性生殖器疾患をもった人の生活は, その女性が現在, どのようなライフステージにあるかによって異なる 特に,20 歳代から40 歳代で婦人科疾患の手術や化学療法, 放射線療法を受けた人は, 家事や子育て, あるいは生活のための労働に従事しなければならないという状況に置かれることが多く, 外来化学療法を受けながらの在宅生活では副作用や二次合併症に耐えながら生活をしなくてはならない したがって, その女性の社会的背景や環境についての情報を得て, 個別的で, かつ患者に心身の負担がない充実性のあるQOLが維持増進できる支援を考えていくことが必要である 性活動は, 成人の生活では重要な位置を占める それだけに婦人科領域の疾患は, 病変部が生殖器であるため, 両性にとっての望ましい性生活の維持は大きな課題となる 患者の性についての背景を把握する際にはプライバシーを厳守したうえで誠実な態度でかかわる必要がある 治療中や退院後の性生活は, 女性として悩むところであるが, 患者自身から口にすることには抵抗もあるため, 医療者側から配慮して指導を行うことが望ましい Ⅲ 女性生殖器疾患をもつ成人と医療のかかわり 1. 子宮がん検診で, 子宮頸部がんが発見された A さん 40 歳, 既婚 小学 5 年生の息子 1 人と夫との 3 人暮らし キーパーソンは夫と実母
Ⅲ 女性生殖器疾患をもつ成人と医療のかかわり 9 症パートで週に 3 回飲食店で働いている 平成 22 年 7 月子宮がん検診を受けた結果, 子宮頸部がんであることがわかった 夫と同席する場で医師から説明があり, 子宮がんの進行期 Ⅱbであり, 治療としては, 手術療法による広汎子宮全摘出術および骨盤リンパ節の郭清を行うことが伝えられた 手術後は放射線療法を行う予定である 現在, 婦人科領域におけるがんの告知は患者本人に対して行われていることが多しゅよういが, 悪性腫瘍を告知された患者の, 心理的動揺は避けられない 子宮は外見上は見えないが, 女性の生殖機能の臓器としては重要な役割を果たしており, 女性にとっては乳房とともに大切な臓器である それだけに, 一部臓器の障害というとらえ方では, 患者の苦痛に沿った看護の展開は難しい インフォームドコンセントや治療内容の開示など患者の知る権利についての理解は深まりつつある現在だが, 生殖器の異常は, 女性にとって痛切な思いを抱かせるため, 早期から心理的な援助を行うことが優先される このような状況で, 今回のAさんに対しては, 以下の 3 つの側面を予測したアセスメントをする 1) 身体的視点まず, 身体的視点として次の点があげられる 140 歳という年齢であり, 生殖能力が十分に果たせる年代での悪性腫瘍の発覚であること, 子宮を摘出しなくてはならず, 選択肢がないこと 2 広汎子宮全摘出術であり, 子宮の周囲を広範囲に切除するため, 排尿障害や排便障害が術後に生じる可能性があること 3 骨盤リンパ節の郭清により下肢, 外陰部にリンパ浮腫をきたすことがあること 4 術後は床上安静を強いられるため, 肺静脈血栓症を起こす可能性があること 5 麻酔方法を含め, 侵襲性の高いことおしん 6 放射線療法による膀胱炎, 直腸炎, 食欲低下, 皮膚炎, 悪心などの有害事象が発生する可能性があること 2) 心理的視点また, 心理的視点として次の点があげられる 1 本人の意志とは無関係に悪性腫瘍によって生殖能力を失わざるを得なくなり, 子どもを産むことができなくなる悲しみがあること 2 子宮頸がんになり, がんである悲しみ, 死に対する恐怖感を抱きやすいこと 3 子どもに対する愛着心の変化や心配があること 4 夫に対する妻役割や女性役割喪失感や罪悪感があること 5 手術療法に対する不安や疼痛に対する心配があること女性として子宮を失うことは悲観的な状態であり, かつ女性性を喪失する心理的なダメージが大きい 婦人科がんは, 抑うつ状態を発症する可能性が高いことや, 一時的な感情的動揺, 徘徊などの精神的異常が起こり得ることも念頭に入れておく 患者の理解1 構造と機能2 状3 序検査 治療4 疾患と診療1 看護の基本2 症状と看護3 検査 治療と看護4 患者の看護
10 序章女性生殖器疾患をもつ成人を理解するために 必要がある 3) 社会環境的視点そして, 社会環境的な視点として次の点があげられる 1A さんのキーパーソンは夫と実母であるため, 心理的サポートについて医療者と話し合いながら, 協力してもらえるように促す 2 今後行っていくがん治療の経済的サポートとして, ソーシャルワーカーの協力があることを伝える Aさんの場合は急性期に当たっており, がんが転移しないうちに, 早期に手術が施行される それだけに術前の看護における精神的援助は重要で, 患者の抱いている不安の軽減は生きようとする力を維持させるためにも必要である インフォームドコンセントを密に行い, 医療従事者間の情報を共有していくことが重要である 2. 卵巣がんで手術後, 外来化学療法を受けている B さん 38 歳, 未婚, 教員 キーパーソンは同居している実母 平成 21 年 9 月卵巣がんで手術後, 現在は, 通院により外来化学療法を受けている 治療としては, 卵巣がんの標準治療であるTC 療法 ( パクリタキセル (PTX) とカルボプラチン (CBDCA)) が行われており, 3 週間ごとに 6 回を目標に治療を受けている 2002 年の診療報酬改定で 外来化学療法加算 (300 点 ) がなされ,2004 年には機能評価施設基準が削除され一般病院での算定が可能となったことで,Bさんの例のような, 外来での化学療法が増加している 手術療法では完治ができず, 化学療法の併用が必要になる卵巣がんのような場合には, 長期間化学療法が適応となるため, そのつど化学療法のスケジュールを理解しているか確認し, 治療や副作用 ( 有害事象 ) に対する不安を軽減するように努める必要がある また, 化学療法による副作用に対するセルフケアができるよう生活の指導を行っていくことも不可欠である Bさんのケースに対しては, 以下の 3 つの側面を予測したアセスメントをする 1) 身体的視点まず, 身体的視点として次の点があげられる 1 抗がん剤投与時のアレルギー反応が起こりやすいので注意深い観察をする 2TC 療法は, 手指のしびれ, 味覚の変化が主に起こるため, 事前説明をする必要があるおしんおうと 3パクリタキセルは, 消化器症状 ( 悪心 嘔吐, 便秘, 下痢 ), 骨髄抑制 ( 白血球減少, 貧血, 血小板減少 ), 感染症などの副作用が起こりやすいので, これらの症状が出たら受診するように指導する 4TC 療法は, 投与時間が長く 5 時間かかるだけでなく, 特にパクリタキセルはろうしゅつ排尿を促進するため, トイレ移動時の血管外漏出には注意をし, 観察を行って
Ⅲ 女性生殖器疾患をもつ成人と医療のかかわり 11 症いく 5この化学療法開始後 2, 3 週間後には脱毛が発現しやすいが, 治療後には発毛することを説明しておく必要がある 6 化学療法期間は, 体力の低下や貧血症状がみられるため, 転倒等の安全に関しても留意する 2) 心理的視点また, 心理的視点として次の点があげられる 1 抗がん剤の副作用による苦痛は, 身体的苦痛のみならず, この治療の場合は 脱毛 というボディーイメージの変化をもたらすため, メンタルヘルスケアを重視する必要があること 2 疾患に対する不安を抱くことも避けられないが, 卵巣がんは抗がん剤が効きやすいがんであることを理解してもらい, 悲観的にならないように配慮すること 3) 社会環境的視点そして, 社会環境的な視点として次の点があげられる 1 外来化学療法を受けている患者 家族が利用できる社会資源, つまり訪問看護などの在宅医療サービス, 訪問介護 福祉用具の賃与などの在宅介護サービスなどについて活用するように指導をする 2キーパーソンである母親の年齢を考えれば体力的にも援助してもらえることには限界があることを考慮し, 社会資源の活用を検討する 3TC 療法 ( 3 週間ごとに 6 回繰り返す必要がある ) を受ける間, 骨髄抑制など副作用の観察のためほぼ毎週の通院が必要になるため, 仕事 ( 教員 ) への影響を考えいつから仕事に復帰できるかなど, 可能であれば職場の上司も交えて話し合いをする しゅよう Bさんのように, 外来化学療法は婦人科の悪性腫瘍患者に対しても行われてい る 化学療法の治療は疾患により異なるため, 副作用とその出現時期も異なる この点を具体的に理解しておくことは看護アセスメントしていくうえで不可欠となる 在宅治療による管理は患者のセルフケア能力に左右されるため, 生活環境の調整も大きな援助の一つである 円滑に外来化学療法を受けられるように, 心理的な援助を含めたかかわりが重要である 患者の理解1 構造と機能2 状3 序検査 治療4 疾患と診療1 看護の基本2 症状と看護3 検査 治療と看護4 患者の看護
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