授業料等不徴収協定に基づく派遣交換留学終了報告書 留学フ ロク ラム名授業料等不徴収協定に基づく派遣交換留学 所属 ( 本学 ) 理工学研究科土木工学専攻 留学先国ドイツ 現在の学年 修士 2 年 留学先大学ミュンヘン工科大学 留 学 期 間 2012 年 10 月 1 日 ~ 2013 年 9 月 30 日 1. 留学先大学についての概略派遣先のミュンヘン工科大学は 主にミュンヘン中心部に位置しています 主要なキャンパスは Theresienstraße と Garching の 2 つです しかし キャンパスは点在しており 一部の学部はミュンヘン市外にもキャンパスがあります 私が所属した土木工学専攻の授業は主に Theresienstraße キャンパスで行われました 一方で 所属していた地盤工学研究室は中心部から S-Bahn で 15 分ほどの Pasing に所在しており Pasing では研究のみが行われています ミュンヘン工科大学は 1868 年 バイエルン王ルートヴィヒ 2 世により創立されました 学生の数は 2 万弱 教員数 450 程度で 12 の学科を有し 大学の規模は世界的には中規模程度といわれています 図 1 Garching キャンパス内のすべり台 2. 留学前の準備留学期間は 1 年間を計画し 修士修了を一年延長することをはじめから決めていました 英語以外の言語をもうひとつ学びたいと考えていたので 英語とドイツ語両方を学ぶには少なくとも一年必要だと感じたからです また 修了を一年延長することで 留学先では単位互換に縛られず 土木以外でも自分の興味のある分野について学ぶことができると考えました 語学については 英語は留学前の半年間英会話スクールに通って会話力を重点的に向上させるようにしました ドイツ語は 文法は独学で 会話は東工大で開講されている学部の授業に週 1 回出席しました 語学力は留学した年の 2 月の時点で TOEFL ibt 68 独検 4 級でした 専門分野については 授業の履修と研究室所属両方行う予定で準備しました 研究室は 留学先大学と東工大で所属している研究室に関わりがなかったので インターネットで検索し メールや電話で連絡を取ることで受け入れを許可していただきました
ビザについては 日本のドイツ大使館で両親からの生活費支援の保証書を発行し 手続きはドイツで行いました 住居については 7 月に留学先大学に寮を希望する旨を伝え 留学先大学から支給されました 3. 留学中の勉学 研究留学中は週 2 回研究室へ行き それ以外の時間は授業を履修しました 3-1) 授業について授業履修科目と結果について以下表 1 に示します 授業は東工大での専門の地盤工学ではなく 計算力学に関する授業を履修しました 履修した専門の授業はすべて英語で行われました 自分の専門とは少し異なった授業だったので はじめは少し戸惑いましたが 慣れると 講義は東工大のときの学部の授業と同じような印象でした ひとつ大きく東工大と異なったのは 授業によっては Tutorial といって Tutor と一緒に練習問題を解く時間があることでした しかし 講義も Tutorial も出席は一切とらなかったので 講義資料のみで勉強して試験だけ受けている学生も多くいるようでした グループで作業をする授業もいくつかありましたが 英語で専門分野について話し合いをするのは 互いの意図していることを理解できないことが多々あり少し苦労しました しかし 授業については全体的に日本とあまり変わらないという印象でした 専門の授業の他に週 2 コマドイツ語の授業を履修しました ドイツ語の授業では 他の国からの留学生の友達をたくさん作ることができたので 語学の上達はもちろんのこと 交友関係を広げるという意味でも大変意味のあるものだったと感じます 表 1 授業履修科目学期 Summer semester Winter semester 授業科目名 Computational Fluid Dynamics Isogeometric Structural Analysis and Design Unsaturated soil mechanics German as a foreign language B1.1 Computation in Engineering 1 Turbulence Modeling Fluid Mechanics Continuum Mechanics Material Mechanics Introduction to Finite Element Method German as a foreign language A2.2 3-2) 研究について研究室はミュンヘン工科大学の地盤工学系研究室 (TUM Zentrum Geotechnik) に所属しました 研究では大きく分けて 2 つのプロジェクトを行いました 一つ目の研究は ケルンにおける広大な石炭採炭跡地を埋め戻し 高速道路を建設するプロジェクトに関する数値計算です プロジェクトはドイツの電力会社 RWE の委託のものでした 埋め戻す範囲が広大であったため 時間依存性や 計算に必要なパラメータ
の不確実性を考慮した計算を行う必要があり わたしは解析ソフトを用いた計算と 得られたデータの整理などを行いました 企業へのプレゼンはドイツ語で指導教官が行い 発表用スライド作りの手伝いなども行いました 建設事業は現在も継続しており 観測や 観測結果に基づいた再計算も行われています 二つ目の研究は Deutsche Bahn( ドイツ鉄道 ) の鉄道盛土の試料を用いた 不飽和土のサクションの直接測定の実験です 実験は修士の学生と共同で行いました 不飽和土のサクションは テンショメータと呼ばれる計器で直接測定することが可能です こちらの研究は 先述の研究と異なり実験室で作業することが中心でした 私が所属していた研究室では 実験は技術者ではなく主に技官により行われており ほとんどの技官はドイツ語のみを話したため コミュニケーションをとるのに苦労しました 今回は実験室でのサクション測定のみで帰国となりましたが 今後そのデータを用いて現場の鉄道盛土の安定解析などが留学先大学の修士学生によって行われる予定です 図 2 実験室の様子 4. 留学中に行った勉学 研究以外の活動ミュンヘン工科大学では 日本語の授業が多く開講されており ミュンヘン工科大学の日本語講師の方と日本人留学生で 日本語を履修しているドイツ人学生に向けたイベントを開催し 日本の大学を紹介するなどしてドイツ人学生との交流を深めました また ミュンヘンにはいくつかの日本企業が支社を持っていたため 日本企業の方を招待したドイツ人学生向けのイベントなども行いました さらに 日本語を学んでいるドイツ人学生と言語を教えあうことで ドイツ語のコミュニケーション能力の向上に努め 互いの文化について理解を深めることができました ミュンヘンでは 年に一度の Oktoberfest を含め 年に数回 Bier Fest が開催されるので 余暇は友人とビールを飲みながら交流を深めました また ミュンヘンはアルプスに近く 週末には友人と山登りに出かけ ヨーロッパの自然を楽しみました ミュンヘンは自然がとても多く 夏の週末や授業後には公園やビアガーデンで時間を過ごすことが多くありました 冬は気温が大変低く 毎日雪が降っていましたが ドイツ国内は鉄道を用いると安く移動することができるので ドイツ国内のさまざまな都市を訪れ クリスマスマーケットを楽しみました ミュンヘンで有名なものとして ビールのほかにサッカーがあります ミュンヘンには FC Bayern と 1860 という 2 つのチームがありますが 昨シーズンは FC Bayern が三冠を達成し 街はパレードなどで大変盛り上がりました 私は 一度実際にチャンピオンズリーグをスタジアムで観戦する機会があり 日本ではテレビで観戦していたものを実際にみることができ 大変感激しました
図 3 Oktoberfest の様子 図 4 欧州 CL 観戦時の様子 5. 留学費用について奨学金は JASSO から月 8 万円 12 ヶ月 渡航費として工学系から 20 万円支給していただきました どちらも給与の奨学金です 生活費は 基本的な出費は 定期代が月 45 ユーロ 健康保険が月 80 ユーロ 家賃が月 250 ユーロでした 食費なども含めて ほとんど JASSO からの奨学金で賄うことができました 旅行などで足りない分は 留学前にしていたアルバイトの貯金で賄いました 6. 留学先での住居について交換留学の制度を利用した留学でしたので 住居は留学先大学の国際室から支給されました 申し込みは留学する年の 7 月に留学先大学の国際室に寮を希望する届けを出しました 支給された住居は学生寮の個人部屋で キッチン シャワー トイレも部屋についていました 学生寮なので 居住者はすべて学生で 留学生とドイツ人の割合は半分ずつ程度でした 場所は 最寄り駅から徒歩 2 分程度 最寄り駅は大学の最寄り駅から地下鉄で 15 分程度でした 家賃は月額 250 ユーロで ミュンヘンではとても安い寮でした 寮には 1 階に共有ルームがあり 月 1 回程度パーティーが開かれ 寮の学生と交流することができました しかし 寮の学生は多くの人がドイツ語を話したため 寮の話し合いなどはすべてドイツ語で行われ 理解するのが大変でした パーティーでも公用語は主にドイツ語 寮の管理会社との手続きもドイツ語で行う必要があり 大学の授業が英語で行われていてもドイツ語を学ぶ必要性を強く感じました 7. 留学先での語学状況授業 研究では主に英語を用いました 英語は 2 月の時点で TOEFL ibt68 でしたので 全く十分ではありませんでした 特に 試験の際に覚える英単語数の多さに苦労しました また 会話においても 会話のスピードに追いつくことができずに苦労しました 研究では 実験を行う際にドイツ語で技官の方と話す必要があり また 研究の資料も一部ドイツ語でした 生活においても 保険や寮 病院などほぼすべての手続きはドイツ語で行う必要があり とても苦労しました 出発前はほぼ文法のみを学んでいたので ドイツ語でのコミュニケーションがはじめはとても難しかったです 文法だけでなく会話について出発前に学んでくるべきだったと後悔しています ドイツ語のタンデムパートナーを留学初期に探しましたが 予定があわず続きませんでした しかし ドイツ人の友人にはできるだけドイツ語で話しかけることで 留学終了時には日常的な会話はなんとかドイツ語でできるようになりました
8. 単位認定 在学期間について 4 つの授業 ( 自専攻 2 科目 他専攻 2 科目 ) について単位認定を行いました 在学期間は 1 年延長する予定です 9. 就職活動について在学期間を延長する予定でしたので 留学先で就職活動は行っていません 10. 感想留学をする以前は 英語を含め 外国語を学ぶことに対してあまり興味が持てませんでしたが 今回留学したことで 他国のいろいろな技術や文化を知るために外国語を習得することの大切さを知ることができました 英語は特に さまざまな国の人とコミュニケーションをとる大事なツールであると痛感しました 他国の人とコミュニケーションをとることは自分が想像していた以上に刺激的で 他国のことだけでなく日本についても さらにいろいろなことを知りたいと思うようになりました また 今回の留学で得た最も大きなことは 語学を学ぶことの楽しさを知ることができたことだと思います 英語はもちろんですが 特に現地の言葉であるドイツ語を学ぶことで 現地の文化をより深く知ることができ 言葉が少しわかるようになってからの留学生活は 留学初期に比べて大変充実したものとなりました 研究活動や授業では いままでとまったく違った環境で 自分だけが周囲と違った教育を受けているという状況に戸惑うこともありましたが 異なる環境でもひとつひとつ丁寧に学んでいくことで 日本で学んだ知識を生かしながら研究や授業履修ができることがわかりました 留学を通して 日本にいても日々努力していくことが海外で活動する上でも重要になると実感し 残りの東工大での学生生活において いままで以上に丁寧に勉学に励みたいという気持ちが強くなりました また 研究をしている上で感じたのが 他の学生や指導教官に相談することの大切さです 相談することは日本での研究においてももちろん大切なことですが 外国にいると言葉の問題もあり いろいろなことを一人で解決したいと思ってしまうことが多々ありました しかし 言葉が完璧でなくとも 相談することで得られるものは大変多く 相談する一歩を踏み出すことや 粘り強く説明することの大切さを強く感じました この留学の経験は 私にとってとても新鮮で 自分のいままでの考え方を変える大きなものとなりました この経験を糧にし 海外に出ても恥ずかしくない立派な日本人技術者になることのできるように 残りの学生生活を充実させたいと思います