ホワイトペーパー 3 次元 CAD システムを選択するための 9 つの基準 B Y L. S T E P H E N W O L F E, P. E. 概要 さまざまな製造業種において 今日使われている CAD システムの半数から少なくとも三分の一が 3 次元 CAD です 残りは 2 次元 CAD 作図システムです 1 2 次元の方が効率的な作業も常に存在しますが この数字は 多くの組織がまだ 3 次元手法を活用する余地を残していることを示唆しています これから 3 次元を導入しようとする組織にとって良いニュースは これまで 10 年 20 年に渡って 3 次元手法を使用してきたエンジニア達の知識と経験を生かすことができるということです 本稿では 2 次元 CAD ユーザーが最初の 3 次元システムを購入する際に考慮すべき 9 つの基準をまとめました 2
1. 3 次元設計の有効性と効率性 3 次元 CAD の中核となるのは製品設計 検証 作図 金型設計 NC ツールのプログラミングから検査まで 製造のあらゆる側面で使用されることになる 3 次元のマスターモデルです この 3 次元モデルはあなたの会社の製品に含まれるあらゆる部品とそれらの関係を正確に表したものでなくてはなりません 最大限の効率化を図るには 設計者は製品の品質に妥協することなく できる限り少ない工数で 3 次元モデルを設計できなくてはなりません CAD ソフトウェアを評価する際には あなたの会社が製造する各種製品を それぞれのソウトウェアパッケージでいかに効率的に作成できるかを確認してください 水平グラインダーの 3 次元 CAD モデル ( 画像提供 :Vermeer Environmental Equipment of Pella 米国アイオワ州 ) CAD ソフトウェアを評価する際には あなたの会社が製造する各種製品を それぞれのソフトウェアパッケージでいかに効率的に作成できるかを確認してください たとえば 板金部品を製造しているならば それらを作成し 自動的にフラットパターンを生成するための専用ツールに注目してください スタイリッシュな製品を設計しているならば 自由曲面のサーフェスとブレンドを作成するツールをよく調べてください 機械設計を行っている場合には 多数の部品を組み合わせ ファスナー等の購入部品をライブラリから挿入する手順が簡単に行えるかどうかを確認してください PremaCare 保育器の 3 次元モデル ( 画像提供 :360 Grader Produktdesign ノルウェーオスロ市 ) 3 次元 CAD システムを選択するための 9 つの基準 2
また 変更は必ず発生するため 部品やアセンブリを変更するのがどの程度難しいかを評価してください たとえ 20% 程度でも少ない工数で設計できる CAD システムは 効率の悪いシステムと比較して大きなコスト上のメリットをもたらします 最も高い価値を提供する 3 次元 CAD とは 優れた技術的能力と リーズナブルな所有コストを組み合わせたものとなります 2. 顧客やサプライヤとの互換性 今日では 垂直統合型の製造業はほとんどありません ほとんどのメーカーは部品 金型 サブシステム 製造装置 設計サービスのコミュニティに依存しており 多くの場合それは世界中に分散しています あなたの会社がサプライヤ側か顧客側かに関わらず 顧客やサプライヤと 3 次元 CAD ファイルをやりとりすることでメリットを得ることができます 可能であれば 業界やサプライヤコミュニティで広く使われている CAD システムを選択してください 可能であれば 業界やサプライヤコミュニティで広く使われている CAD システムを選択してください これにより システムから別のシステムへとファイルを変換する必要がなくなります 変換には時間がかかり エラーが発生する場合もあります また 各システムの他システムからのファイルインポート機能もチェックしてください STEP IGES VDA IDF 等の国際標準規格をサポートしていることを確かめましょう そして インポートされた形状の破損を修復するツールの使いやすさと効果を評価してください 複数の CAD システムから多数のファイルを変換しなければならない場合には 各 CAD システム付属の直接変換ツールを確認するとともに 変換に特化したサードパーティ製ツールもチェックしてください データ交換機能の評価を製品のジオメトリデータに限定しないようにしてください ファイルのプロパティや部品表のインポート エクスポートが便利に行えるかどうかも確認します 顧客やサプライヤと CAD ファイルでやりとりすることにより 作図を手作業でやり直す場合と比較して何千時間 何週間ものスケジュールの短縮が可能になります 製品とプロセス双方を 3 次元化することにより 製品コストの削減と同時に より良い製品作りが可能になります SolidWorks edrawings のようなデータ交換ツールにより ユーザーは顧客やサプライヤとのコラボレーションが可能になります 3 次元 CAD システムを選択するための 9 つの基準 3
3. 社内標準に適合する作図ツール 設計を行うのが 3 次元であっても サプライヤや工場の作業者は図面を必要とします 明確な図面とは 3 次元モデルではわかりにくい情報 すなわちクリティカルな寸法や幾何公差 材料 表面仕上げの仕様 硬化プロセスや熱処理の注記等を示したものです 購入する 3 次元システムが 現在使用している寸法 幾何公差 文字設定 部品表に対する規格にあった図面を作れるかどうか確認してください また PDF DXF DWG 等 よく使われているフォーマットに図面をエクスポートできるかどうかも確かめてください 購入するシステムから PDF DXF DWG 等 よく使われているフォーマットに図面をエクスポートできるかどうかも確かめてください 蒸気機関車の主連棒の詳細設計図面 ( 画像提供 :David Wardale 氏 5AT Project) 4. 信頼性と安定性 3 次元設計システムは 2 次元作図システムよりも複雑です コード量も多く バグを取り除くのもより困難です 残念ながら 他の多くのシステムや機械のような信頼性を評価するための標準的手段が CAD にはありません システムの不安定性やバグについて頻繁に報告されていないか ユーザーフォーラムを調べてみましょう 地域の企業や同業種の企業で 3 次元 CAD を使っているところがあれば どのくらいの頻度でクラッシュやフリーズが起こるか聞いてみましょう 大規模なアセンブリを作成する企業の場合には 購入する CAD システムで大規模アセンブリを効率的に処理できるかどうかを忘れずにチェックしてください 部品点数の多い複雑な設計を扱おうとすると非常に遅くなるシステムもあります 製品に複雑な自由形状 ヘリカルスイープ 穴やその他のフィーチャーの配列が含まれる場合には特に アセンブリのパフォーマンスに注意してください 導入しようとする 3 次元 CAD システムが大規模アセンブリを扱えるかどうか確認します ( 画像提供 :Gerhard Schubert GmbH ドイツ ) 3 次元 CAD システムを選択するための 9 つの基準 4
5. 良好なビジネス関係 現実問題として CAD ソフトウェアサプライヤと顧客間の最も大きな摩擦原因のいくつかは 技術的なものではなく ビジネス上の問題です 一部の航空会社が預かり手荷物やフライトの変更 飲み物 毛布などで追加料金を取って顧客に不満を抱かせるように 一部の CAD サプライヤは ほとんどの顧客が必要とするようなソフトウェアやサービスから追加料金を徴収します このような問題を回避しコストを抑えるには 必要なものがすべて入った わかりやすいソフトウェアパッケージを提供するサプライヤを探してください CAD をフルタイムで必要としないエンジニアがライセンスを共有できるよう フローティングライセンスの条件もチェックしてください また 有能な設計者がソフトウェアを会社でも自宅でも面倒なく使えるかどうかも確認しておきましょう 6. ビジネスに役立つ付属アプリケーション 設計の自動化と解析に特化したソフトウェアを使用することにより 3 次元 CAD の生産性はさらに向上します 物理運動 原動力 応力 変形 振動 温度 流体力学等の物理的挙動をシミュレートする必要がある場合 統合された解析ツールを持ったソフトウェア または使用したい解析ソフトウェアと効率的なインターフェイスを持ったソフトウェアを選択してください 物理運動 原動力 応力 変形 振動 温度 流体力学等の物理的挙動をシミュレートする必要がある場合 統合された解析ツールを持ったソフトウェア または使用したい解析ソフトウェアと効率的なインターフェイスを持ったソフトウェアを選択してください 金型 型押しダイ コンベヤー 製造装置等 共通のタイプからの変化形である製品を作る企業の場合には これらの製品の設計を自動化するソフトウェアが統合されているシステムを選択してください 数名以上の設計者がいる組織では CAD ツールと統合された製品データ管理 (PDM) ソフトウェアが必要になります 2 次元 CAD システムのファイルはファイルディレクトリで管理できます しかし 3 次元 CAD システムのファイル間の関係は非常に複雑であるため それらを整理 保存する自動化されたシステムが必要となります PDM を使用しないと 設計者は誤ってお互いの作業結果を上書きしてしまう危険があり 毎年数百時間の無駄につながります 統合された PDM ソフトウェアにより複数の設計者グループが共通プロジェクトで効率的な共同作業を実施できます PDM システムは単なるファイルの保存と整理以上の機能を提供します PDM システムにより 再利用可能な既存の部品を探し出せるため 設計者の重複作業がなくなります また コスト見積のための材料リストを生成したり データを MRP(Manufacturing Resouce Planning) システムに送ることもできます より高度な PDM システムソフトウェアでは 変更管理プロセスを自動化することにより 古くなったデータや非公開情報が工場やサプライヤに送られるのを防ぐことができます 3 次元 CAD システムを選択するための 9 つの基準 5
最後に 対象のシステムが 包括的で使用法がドキュメント化された API(Application Programming Interface) を備えているかどうかを確認してください 優れた API があれば自社で設計自動化プログラムを作成することができます また サードパーティが特殊なアプリケーションを CAD システムに統合する場合のコストも安くなります 設計の自動化により 既存の設計を再利用して 3 次元 CAD モデル 図面 部品表を含む新しいコンフィギュレーションを作成できます 7. 短期間で習得可能であること 3 次元設計手法の導入にはトレーニングと経験が必要です したがって 機能がしっかりしていると同時に 習得の簡単なシステムを選択してください システム全体に渡ってユーザーインターフェイスが一貫しているものを選びましょう 設計と作図の手順が開始から終了まで論理的に流れることを確認してください 中には 隠れた落とし穴や不具合により設計者が作業の途中で妨害され 最初からやり直しとなるようなシステムがあります また トレーニング資料を自社で作成するのにも費用がかかります 付属のチュートリアル コンピュータベースの豊富なトレーニング資料 作業者が質問をし 回答を得られる活発なオンラインコミュニティを持ったシステムを選択してください 付属のチュートリアル コンピュータベースの豊富なトレーニング資料 作業者が質問をし 回答を得られる活発なオンラインコミュニティを持ったシステムを選択してください さらに 地域の学校や大学で教えられているシステムを選択すれば すぐに仕事ができる学生を雇うことができます 8. 投資を保護する革新的な研究開発部門 コンピュータ技術は常に変化しつづけています CAD ベンダーがこうした技術変革を活用できない場合 数年の内にあなたの組織は時代遅れで保守コストのかかる CAD システムを抱えることになります 製造業界をリードしてきた実績があり 大規模かつ先進的な研究開発チームを持つサプライヤから購入するようにしてください 9. 頼りになる代理店 CAD ソフトウェア代理店と良好な関係を築く取り組みは 購入した瞬間から始まります 3 次元設計への移行を成功させるために必要な支援スキルと経験を持った代理店から購入しましょう 代理店がトレーニングとサポートを提供した実績のある 3 次元ユーザーの数を調べてください 質の高いトレーニングコースがあるか確認してください その代理店のサポートするユーザーグループはありますか? 設計と製造のプロセスを改善するためのトレーニングを継続的に開催しているでしょうか? 3 次元設計への移行を成功させるために必要な支援スキルと経験を持った代理店から購入しましょう 技術スタッフの経歴を尋ね 購入前に面談してみましょう 代理店の技術スタッフが困難な問題を解決する能力を持っているか ユーザー事例を調べてみましょう 優れたローカルサポートが存在するかどうかは 3 次元への移行がリスクの大きい非生産的なものとなるか 現在そして将来的なビジネス上の目標に対する前進となるかの違いをもたらします 3 次元 CAD システムを選択するための 9 つの基準 6
経験豊富な代理店は 3 次元を初めて導入する顧客の短期間での生産性向上を支援することができます ( 画像提供 :CADVenture, Inc 米国オハイオ州ウィロビー ) それぞれの組織にあった選択 上記の基準のすべてがあらゆる組織に当てはまる訳ではありません 賢い選択を行うには それぞれの企業の設計開発ニーズに対する慎重な検討と深い知識が必要です どのような組織にとっても 最も大きな間違いは 3 次元システムを比較検討することなく選択することです 少なくとも 3 社のベンダーを評価し 各ソフトウェアパッケージの機能と代理店サポートの能力について調べてください 3 次元システムを 2 度導入しなければならない事態は悲劇です このような組織は通常 ブランドの好みによる感情的な判断や あまりにも少ない基準に基づいて選択をしています 不用意に選択した 3 次元システムで必要なことができない または機能の不備により余計な手間がかかることに気がついた後で 新しいツールを購入し 習得しなければならないことになるのです 少なくとも 3 社のベンダーを評価し 各ソフトウェアパッケージの機能と代理店サポートの能力について調べてください 1 CAD/CAM Publishing, Inc. による公開財務データの分析に基づく 2 3 次元 CADシステムを使用するエンジニアに対して著者が行った面談と調査に基づく L. Stephen Wolfe 氏はカリフォルニア州サンディエゴ在住のメカニカルエンジニアです 彼は Computer Aided Design Report および Product Data Management Report( 現在の CADCAMNet オンライン ) の創始者であり発行人でした 20 年以上にわたり これらの刊行物は CAD 業界において Consumer Reports のような役割を果たしてきました Wolfe 氏は CAD/CAM システムの選択方法について 2 冊の本 The Smart Manager s Guide to Selecting and Purchasing CAD Systems( 賢いマネージャのための CAD システム選定 購入ガイド ) と The CAD/CAM Strategic Planning Guide (CAD/CAM 戦略策定ガイド ) を出しています 彼は現在メカニカルエンジニアリングソフトウェア分野のコンサルタントとしてユーザーが要件を定義し 独自の調査を行い ソフトウェアサプライヤを探し 交渉し 新しいソフトウェアを効率的に導入するのを支援しています 本社 Dassault Systèmes SolidWorks Corp. 300 Baker Avenue Concord, MA 01742 USA Phone: +1-978-371-5011 Email: info@solidworks.com 日本本社 Phone: +81-3-5442-4001 Email: info@solidworks.co.jp 大阪オフィス Phone: +81-6-7730-2702 Email: info@solidworks.co.jp SolidWorks は Dassault Systèmes SolidWorks Corp. の登録商標です その他すべての会社名および製品名は各所有者の商標または登録商標です 2011 Dassault Systèmes. All rights reserved. MKCRTWPJPN0111