NIKON の自動感度制御機能ニコン D90 D610 (P S A M モード ) の例 v10 フィルム時代の感度設定はフィルムの銘柄により決まっていました たとえば ISO400 のフィルムなら 1 本を通して ISO400 の感度設定で使うことが普通でしたが デジタルカメラになってからは コマ毎に ISO 感度を変える ことも可能となり 大変便利になりました しかし 便利な半面 感度設定の戻し忘れ をしてしまったことはありませんか 屋内から屋外への撮影などで高感度から標準感度へ さらに高感度へと 感度設定の煩わしさ を感じたことがありませんか 今回 ご紹介の 自動感度設定 機能を使えば それらの煩わしさから解放され より撮影に集中できると思います 自動感度設定 は 単なる オート感度 ではなく 感度上限 +SS 低速限界 をセットで機能させるものです 本編はニコン D90 を基本にして作成していますが 新しい NIKON 自動感度制御 を追加しました ニコンデジタルカメラをお使いの方に 多少なりともお役に立てればと思います ISO 感度 ( 固定 ISO 感度 ) の変更方法は 2 通りある A ISO ボタン と メインコマンドダイヤル を使う方法 モニターが消えている状態 ( ) で ISO ボタン 1 を押しながら メインコマンドダイヤル 2 を回すと 上部の 表示パネル 3 の ISO 感度数値が変化しますので 希望値を表示させたら設定完了です モニターが点灯中は ISO ボタン などが有効になりません モニターを消灯するには シャッターボタンを半押 図 1 しする 3 2 図 2 MENU ボタン 4 5 図 3 1 マルチセレクター D90 取説より B メニューから変更する方法 ( 後述の感度自動制御設定も同じ画面でできる ) MENU ボタン 4 を押す ( 図 4 5 など表示されるメニュー画面は前回表示した画面 ) 黄色表示が左のタブ側 ( 図 5) に来るように操作する ( マルチセレクター 5 などを使う ) 撮影メニューアイコンを黄色表示 OK ボタンを押して 撮影メニューを表示する ( 図 8) 1
MENU ボタンを押したときの表示例 ( 前回使用した画面が出るため変化する ) 図 4 図 5 黄色 ( 選択 ) 表示の移動の仕方 黄色表示の上下移動は マルチセレクターかメインコマンドダイヤル ( ) を使用する 図 6 タブアイコン メニュー項目 現在の設定内容を表示している 黄色表示の タブアイコン メニュー項目 間の横移動は マルチセレクターを使用する 移動は マルチセレクターを使うことが基本ですが 上下移動はメインコマンドダイヤルを回した方が操作しやすい 図 7 マルチセレクター OK ボタンの代わりにを押しても同じ D90 取説より 撮影メニュー の項目が表示されたら メインコマンドダイヤル を回して ISO 感度設定 を黄色表示 ( 図 8) にして OK ボタン を押して設定画面を表示する ( 図 9) 図 8 ISO 感度設定を黄色表示にして OK ボタンを押して ISO 感度設定画面 ( 図 9) を表示する 2
図 9 ISO 感度を黄色表示にして OK ボタンを押して表示された数値から希望の ISO 感度を選び ( 黄色表示 ) OK ボタンを押す 図 10 ISO 感度の設定は A B どちらでも行っても同じことです 上記の A B による ISO 感度は 撮影者が決定する固定感度です 感度自動制御 を使うと 撮影者の意を反映してカメラが適正感度を算出します です ( オート ) 感度自動制御の設定は 次の方法で行う P S A M モードのみ 上記同様に 撮影メニュー を表示して ISO 感度設定 を黄色表示 OK ボタンを押して ISO 感度設定 画面を表示 感度自動制御 を黄色表示 ( 図 11) して OK ボタン押し 表示項目から する を選択して OK ボタンを押す ( 図 12) 図 11 感度自動制御を黄色表示 ( 図 11) にして OK ボタンを押して表示された する しない から する を選び ( 黄色表示 ) OK ボタンを押して ON を表示する 図 13 が表示されたら設定完了です 感度自動制御が未設定の画面 図 12 自動制御を解除したい場合は しない を選択して OK を押す D610 では ISO ボタンとサブコマンドダイヤルでも ON OFF ができます 上下限の設定 ISO 感度は高感度になるほどノイズが発生して画質が低下してしまいます また シャッタースピードが低速になるほどブレが目立ちます 感度自動制御では 撮影シーン応じて ISO 感度やシャッタースピードに上下限を設定することができます 図 13 感度自動制御が設定済みの画面 制御上限感度感度を上げ過ぎないように上限を指定します ( カメラの推奨感度内 D90 なら ISO3200 まで D610 なら 6400 までが無難ですが カメラや後処理により異なります ) 低速限界設定シャッタースピードの低速側の限界を指定します 使用レンズの焦点距離やブレ補正の有無を考慮して決めます D7100 以降 AUTO も選択可となり ズームにもオート対応するようになりました (6 頁 ) 3
制御上限感度の設定 図 14 制御上限感度 を黄色表示にして OK ボタンを押し 表示される ISO 感度 ( 図 15) から希望の数値を選択して OK ボタンを押す 図 14 になる 図 15 D610 の場合 選択の幅が広くなりますがほぼ同様に選択することができます 低速限界の設定 図 16 低速限界設定を黄色表示にして OK ボタンを押し 表示されるシャッタースピードから希望の数値を表示 ( 図 17) して OK ボタンを押す 図 16 になる 図 17 D610 の場合 ほぼ同様に選択することができますが この他に オート があります 巻末に追加しました < 参考 :1> 各数値の選び方図 18 1 2 3 1 撮影者が決めた ISO 感度が表示される 感度自動制御が OFF の場合は この感度で撮影が行われる ( 固定 ) 感度自動制御が ON の場合は ここに表示されている感度から制御が開始される ( オート ) 画質優先なら ここへは ISO100 か ISO200 がよい ( カメラによる ) 左図のような場合は ISO200 から ISO3200 間で制御される 2 感度自動制御でカメラが選択する感度の上限数値を決める 使用カメラの推奨範囲がよい ( 拡張部分は使わない RAW などで後処理前提なら拡張数値も使える ) 3 使用するレンズの焦点距離や手ぶれ補正の有無 被写体ぶれなどを考慮して決める ズームレンズの場合は 望遠側の焦点距離が分母に入るような SS が目安になるが レンズに手ぶれ補正があれば 1 2 段分は遅くできる ( カメラによりオートもある ) < 参考 :2> ISO 優先順位 図 19 左の例のように ISO 感度より制御上限感度が低い場合には 制御上限感度が優先され ISO1600 以下で撮影される (ISO1600~ISO200 の間で制御されるが 制御のスタートは ISO1600 となり 露出オーバーは ISO 値を下げて対応し 露出不足の場合は 不足のままシャッターが切れる ISO1600 以上には対応しない ) ISO3200 を使いたい場合には 自動感度制御を OFF にします 感度自動制御の制御上限で設定した感度が 優先されます!! 4
< 参考 :3> 制御上限感度の優先 設定例 図 20 図 21 設定例 1 ISO 感度 で 800 を設定 制御上限感度 で 400 を設定していたら カメラは制御上限の ISO400 でスタートして 露出オーバーがあれば自動制御が機能して ISO400 以下で撮影される ISO400 で露出不足があっても感度アップはせずに 露出不足のままシャッターが切れる ( この場合の感度制御範囲 ISO200~ISO400) 設定例 2 ISO 感度 で 400 を設定 制御上限感度 で 800 を設定していたら カメラは ISO 感度設定の 400 でスタートして 露出不足があれば自動制御が機能して ISO800 以下で撮影される さらに ISO400 で露出オーバーなら ISO200( カメラの標準感度 ) まで感度を下げる ( この場合の感度制御範囲 ISO200 ~ISO800) < 参考 :4> 撮影情報画面の ISO 感度の赤字表示 ( トラブルではありません!!) 図 22 撮影情報画面の ISO 感度の赤字表示は 感度自動制御が機能してカメラが ISO 感度を決定した場合の感度表示です ISO ボタンで設定した ISO 感度で撮影できた場合には 白字です また 下記の ISO-AUTO の点滅もありません 感度自動制御 が ON でも この時 カメラに設定した ISO 感度で撮影可能な場合には 感度自動制御は作動しません カメラは 撮影者の決めた ISO 感度で撮影したいのですが その感度では無理でしたので 感度を変えましたよ と点滅で表示しているのです < 参考 :5> < 参考 :5>ISO-AUTO の点滅 ( トラブルではありません!!) カメラに設定されている ISO 感度 ( ) では撮影できない場合 感度自動制御が開始されます ファインダー下部と表示パネルの ISO-AUTO が点滅して 感度自動制御の作動を知らせます カメラに設定されている ISO 感度で撮影できる場合は 点滅はしません ( 感度自動制御が作動していないため ) 点滅 図 23 上部表示パネル ファインダー内 ISO 感度 とは 前記の A B で設定した感度のことで 撮影者が決定する ISO 感度です 感度自動制御は まず撮影者の決定した ISO 感度から制御を開始します ISO-AUTO 点滅は 感度自動制御が作動したこと示しています オートモードやシーンモードの ISO-AUTO では点滅しません 感度自動制御 制御上限感度 (ISO 値 ) 低速限界設定 ( シャッタースピード ) の関係 ISO 感度 シャッター スピード 制御上限感度 > ISO 感度 の場合 ISO 感度で設定した感度から感度自動制御を開始する ISO200~ 制御上限感度で制御される ISO 感度 > 制御上限感度 の場合制御上限感度から制御を開始する ISO200~ 制御上限感度で制御される P A モードでは 低速限界設定で指定したシャータ スピードから自動感度制御が開始されます 低速限界設定で指定したシャータ スピードで感度を制御上限感度まで上げても露出不足なら 低速限界設定で指定したシャータ スピードより低速になる シーンモード オートモード 5
低速限界のオート設定 (D610 の P A モードで FX レンズ使用の場合 ) 図 23 図 24 ISO 感度設定 を選択して OK ボタンを押す 図 24 が表示される 感度自動制御 を選択して OK ボタンを押す 図 25 図 26 する を選択して OK ボタンを押す 図 26 が表示される 低速限界設定 を選択して OK ボタンを押す 図 27 が表示される 図 27 図 28 オート を選択して OK ボタンを押す 図 28 が表示される マルチセレクターを使って黄色の を左右に移動して シフト位置を選択し OK ボタンを押す 図 29 図 30 高速側 ( 図 30) でシャッタースピードが速くなり 低速側 ( 図 29) で遅くなる 1 目盛で 1 段分シフト 2 目盛で 2 段分シフトする 設定を確定するには マルチセレクターの OK ボタンを押す必要がある 確定されると下側の黄色マークも移動します ( 図 29) 28mm-70mm ズームを使用し 図 28 の標準設定で使用した時の低速限界 SS は 広角側 28mm を使用した時の低速限界 SS は 1/30 中間 50mm を使用した時の低速限界 SS は 1/50 望遠側 70mm を使用した時の低速限界 SS は 1/80 分母が およそレンズの焦点距離になっている 28mm-70mm ズームを使用し 図 29 の低速側へ 1 目盛シフトした時の低速限界 SS は 広角側 28mm を使用した時の低速限界 SS は 1/15 中間 50mm を使用した時の低速限界 SS は 1/25 望遠側 70mm を使用した時の低速限界 SS は 1/40 分母が およそレンズの焦点距離の 2 分の 1 になっている (1 段分低速へシフト ) 28mm-70mm ズームを使用し 図 30 の高速側へ 1 目盛シフトした時の低速限界 SS は 広角側 28mm を使用した時の低速限界 SS は 1/60 中間 50mm を使用した時の低速限界 SS は 1/100 望遠側 70mm を使用した時の低速限界 SS は 1/160 分母が およそレンズの焦点距離の 2 倍になっている (1 段分高速へシフト ) SS はシャッタースピードの略 6
図 31 高速側でシャッタースピードが速くなり 低速側で遅くなる 1 目盛で 1 段分シフト 1 目盛で 2 段分シフトする 設定を確定するには マルチセレクターの OK ボタンを押す必要がある 図 32 28mm-70mm ズームを使用し 図 31 の低速側へ 2 目盛シフトした時の低速限界 SS は 広角側 28mm を使用した時の低速限界 SS は 1/8 中間 50mm を使用した時の低速限界 SS は 1/13 望遠側 70mm を使用した時の低速限界 SS は 1/20 分母が およそレンズの焦点距離の 4 分の 1 になっている (2 段分低速へシフト ) 28mm-70mm ズームを使用し 図 32 の高速側へ 2 目盛シフトした時の低速限界 SS は 広角側 28mm を使用した時の低速限界 SS は 1/125 中間 50mm を使用した時の低速限界 SS は 1/200 望遠側 70mm を使用した時の低速限界 SS は 1/320 分母が およそレンズの焦点距離の 4 倍になっている (2 段分高速へシフト ) 図 33 低速限界のオート設定を標準以外にシフトしている場合に 図 33 の様に AUTO の右上にアステリスク (*) が付きます M S モードでは コマンドダイヤルで選択したシャッタースピードが優先される A P モードで制御上限感度に達しても露出不足の場合は 低速限界設定より遅いシャッタースピードになります DX レンズ使用の場合は 上記のシャッタースピードの分母が FX レンズの 1.5 倍になり より高速になりました (D610 で検証済 ) 段とは何か 1 目盛変えることで 露出量が 2 倍または 2 分の 1 になる この単位を 1 段と言います 絞り シャッタースピードに使用し さらに ISO 感度にも使う 段 は アナログ時代の 1 段表記を基にした単位です (EV に相当 ) 露出と表現 ( 被写界深度やブレ ) に関連して使われる 1 段目盛の絞り環 1 段目盛のシャッターダイヤルとフィルム感度 (ISO 感度相当 ) デジタルカメラの液晶パネルに表示される絞り値 (1/3EV 表記 ) は 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.5 2.8 3.2 3.5 4 4.5 5 5.6 6.3 7.1 8 9 10 11 13 14 16 18 同じくシャッタースピード (1/3EV 表記 ) は 1 1.3 1.6 2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 15 20 25 30 40 50 60 70 100 125 160 200 250 320 400 500 640 800 1000 1250 1600 2000 ISO 感度表示は 100 125 160 200 250 320 400 500 640 800 1000 1250 1600 2000 緑色部分が 1 段 (1EV) 間隔になり その間の数字は 1/3 段間隔になります 絞り 5.6 から 1 段分絞り込む ということは 絞り 8 にすることです ( 隣の 6.3 ではありません!) 半絞り 1/2EV のことです ( 上記は 1/3EV 表記ですが 1/2EV 表記もあります ) 7
感度自動制御下のマニュアルモードは AE モード? フィルム時代のマニュアルモードといえば 絞りとシャッタースピードを調整して適正露出を決めていた 例えば 絞り f8 シャッタースピード 1/250 で適正露出だった場合に 絞りを 1 段 (1 絞り ) 絞り込む (f11) と露出計は 1 段 (1EV) アンダーを表示するものだった さて デジタルカメラの場合はどのようになるのだろうか 上記の操作をデジタルカメラ (D90) で検証してみたら 1 ISO 感度固定 ( 感度自動制御を使わない ) の場合フィルムカメラと同様に露出メーターが 1EV アンダーを示していた 2 感度自動制御を使った場合同様の操作を行ってみたが 露出メーターは中央の ±0 を表示して変化が無かった 絞りやシャッタースピードを前後に振っても同様だった これは露出量の過不足に対して 感度自動制御が機能して適正露出を維持しているのです 3 フィルム時代のマニュアルモードしか思いつかない私には 理解し難い M モードでしたが これが意外に 便利モード ということが分かりました 絞り と シャッタースピード を同時に指定して使える 両優先 AE モード ということでした P モードのプログラムシフトより 直感的で使いやすいと思います 感度自動制御が ON のマニュアルモードは 絞り シャッタースピードを指定できる 両優先 AE モード です 感度自動制御が OFF のマニュアルモードは フィルム時代のマニュアルモード と同様に使えます 感度自動制御が ON のマニュアルモードでは 絞り値やシャッタースピードを調整しての露出補正はできません 露出補正は 露出補正ボタン + メインコマンドダイヤル を使って行うことになります 完 デジタルカメラの進歩は著しく 特に高感度時のノイズの低減などによる画質向上には目を見張るものがあります フィルム時代のコマごとの露出調整は 絞り と シャッタースピード の二つの要素を調整することでした 現在では 感度 も露出調整の 1 要素になり 絞り シャッタースピード 感度 =ISO の 3 要素を使って露出調整を行えるようになったのです 今回 D610 を例に低速限界の AUTO 設定を加えましたが 他のニコン機種でもほぼ同様な設定手順になるかと思います 各機能をカメラで確認を繰り返しましたが まだまだ未検証な部分があります お気付きの点はご指摘いただければ幸いに存じます 2014. 5. 27 第 10 版 8