インドネシア共和国市民警察促進プロジェクト(フェーズ2)事前評価調査・実施協議報告書

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インドネシア共和国市民警察活動促進プロジェクト ( フェーズ 2) 事前評価調査 実施協議報告書 平成 19 年 10 月 (2007 年 ) 独立行政法人国際協力機構社会開発部

序 文 インドネシア共和国 ( 以下 インドネシア と記す ) の治安維持は 30 年余りにわたって 国軍の一部である警察が担ってきました しかしながら 国全体の民主化の進展に伴い インドネシア国家警察は国軍から分離され 大統領直轄の機関として再編されました インドネシア国家警察は今後 市民警察として国民の信頼を得るとともに 治安維持に努めることが きわめて重要な課題です こうした背景から同国政府はインドネシア国家警察の組織 制度 人員の改革を精力的に実行するとともに 我が国にその改革への支援を要請してきました これを受けて 我が国は2001 年よりインドネシア国家警察長官アドバイザーを派遣するなど インドネシア国家警察改革支援プログラム を実施してきました 市民警察 とは市民からの基本的信頼を得ることを究極の目的とし 市民の要望に対する迅速な対応かつ誠実な対応をすることです 我が国はプログラムの中枢をなす活動として モデル警察署 である両ブカシ警察署において 市民警察としての活動の推進を 組織運営 現場鑑識 及び 通信指令 の各分野にて実践する インドネシア市民警察活動促進プロジェクト を2002 年 8 月より5 年の協力期間で実施してきました 今回 さらに同案件で培った知見 経験を基に 全国普及に向けてのリファレンス モデルとして確立することをめざし インドネシア共和国政府より引き続き技術協力プロジェクトの実施が要請されました これを受けてJICAは 2007 年 5 月に第一次 同年 6 月に第二次の事前評価調査団を現地に派遣し プロジェクトの妥当性を確認するとともに プロジェクト活動の骨格について インドネシア側と協議を重ねてきました この結果 2007 年 8 月 1 日から5 年間にわたって インドネシア市民警察活動促進プロジェクトフェーズ2 を実施することで合意し 2007 年 7 月 31 日 JICA インドネシア事務所坂本隆所長 とインドネシア国家警察のDrs. Tjuk Sugiarso 計画開発担当次長が討議議事録 (R/D) などの署名を取り交わしました また この署名式典には竹内直人インドネシア国家警察長官アドバイザーも参列し連署しました 本報告書は二次にわたった事前評価調査団の調査 協議結果と それに基づくR/D 事業事前評価表などを取りまとめたものであり 今後のプロジェクトの展開に広く活用されることを願うものです 最後に これまで本プロジェクトの実施にあたり ご協力いただいた内外の関係者各位に対し 心から感謝の意を表します 平成 19 年 10 月 独立行政法人国際協力機構社会開発部長岡﨑有二

目 次 序文目次略語一覧地図写真 第 1 章事前評価調査団の派遣 1 1-1 調査団派遣の背景と目的 1 1-2 第一次事前評価調査 1 1-2-1 調査団の構成 2 1-2-2 調査日程 2 1-2-3 調査概要 2 1-2-4 協力計画 団員所感 3 1-3 第二次事前評価調査 4 1-3-1 調査団の構成 5 1-3-2 調査日程 5 1-3-3 調査概要 5 1-4 インドネシア国家警察改革支援プログラム に関する検討 6 1-5 案件概要 7 1-6 評価 5 項目による事前評価 9 第 2 章実施協議結果 12 付属資料 1. 第一次事前評価調査関連資料 15 1-1 対処方針会議資料 15 1-2 調査日程 17 1-3 協議 ヒアリング記録 18 1-4 第一次事前評価調査時 M/M 35 2. 第二次事前評価調査関連資料 43 2-1 対処方針会議資料 43 2-2 調査日程 45 2-3 協議 ヒアリング記録 46 2-4 第二次事前評価調査時 M/M 57 3. 事前評価調査表 87 4.R/D 及び実施協議時 M/M 95 4-1 R/D 95 4-2 M/M( 英文プロジェクト ドキュメント含む ) 107

5. プロジェクト ドキュメント ( 和文 ) 155

略語一覧 略語原文 ( インドネシア語および英語 ) 和訳 AKPOL Akademi Kepolisian(Police Academy) 警察士官学校 BKPM Balai Kemitraan Polisi dan Masyarakat (Police-Citizen Partnership Center) 警察 市民パートナーシップセンター ( インドネシア版交番 ) BPRs Bekasi Police Resorts 両ブカシ警察署 BRIMOB Brigade Mobil(Mobile Brigade) 機動隊 DAC Development Aid Committee 開発援助委員会 FKPM Forum Kemitraan Polisi dan Masyarakat (Police-Community Partnership Forum) 警察 市民パートナーシップフォーラム ( 交番運営委員会 ) INP Indonesian National Police インドネシア国家警察 IOM International Organization of Migration 国際移住機構 JCC Joint Coordinating Committee 合同調整委員会 JICA Japan International Cooperation Agency 独立行政法人国際協力機構 KKN Korupsi, Kolusi, Nepotisme 汚職 癒着 縁故主義 (Corruption, Collusion, Nepotism) MD Man Day 人日 MM Man Month 人月 M/M Minutes of Meetings 協議議事録 OECD Organization of Economic Cooperation and 経済協力 開発機構 Development OJT On-the-Job Training 実践的実地教養 PDM Project Design Matrix プロジェクト デザイン マトリックス POLDA Kepolisian Daerah 州警察本部 (Regional Police Department) POLMAS Perpolisian Masyarakat (Community Policing by the Indonesian Police) インドネシア版市民警察活動 POLRES Kepolisian Resor(Police Resort) 警察署 POLSEK Kepolisian Sektor(Police Sector) 分署 POSPOL Pos Polisi(Police Field Office) 警察官派出所 PPSS Pendidikan Perwira Polri Sumber Sarjana (School for Bachelor s Police Officers) 大卒 短大卒者初任科学校 PROPENAS Program Pembangunan Nasional (National Development Program) ( インドネシア ) 国家開発計画 PTIK Perguruan Tinggi Ilmu Kepolisian (Police Science College) 警察大学院大学

R/D Record of Discussions 討議議事録 SECAPA Sekolah Calon Perwira (Police Officers Candidate School) SELAPA Sekolah Lanjutan Perwira (Police Lower Level Management School) SEPOLWAN Sekolah Polisi Wanita (Police Women School) SESPATI Sekolah Staf dan Pimpinan Administrasi Tingkat Tinggi (Top Level Management School of Police Staff & Command College) SESPIM Sekolah Staff dan Pimpinan (Upper Level Management School of Police Staff & Command College) SPN Sekolah Polisi Negara (National Police School) 士官候補生学校 幹部警察学校 女性初任科学校 警察指揮幕僚学校上級幹部専科 警察指揮幕僚学校 初任科学校 TOT Training of Trainers 講師養成研修 WG Working Group ワーキング グループ

インドネシア共和国位置図 The Republic of Indonesia メトロブカシ警察署 ブカシ県警察署 本計画対象地位置図 Location Map of Project Site

第一次調査団 : メトロブカシ警察署長と面談 第一次調査団 : メトロブカシ警察通信指令室にてプルバヤ通信指令室長の説明

第二次調査団 : メトロブカシ警察署長と面談 警察プログラム第 51 回 WG 定例会 (2007 年 6 月 25 日 )

インドネシア国家警察本部における協議 ( 左 : スナルノ計画開発部長 中央 : マクブル国家警察副長官 ) 第二次調査団 :M/M 署名

第 1 章事前評価調査団の派遣 1-1 調査団派遣の背景と目的インドネシア共和国 ( 以下 インドネシア と記す ) の治安責任は 過去 30 年余りにわたって国軍 ( 陸 海 空 警察 ) が担ってきた 1998 年のスハルト政権の終焉後の民主化の進展を受け 2000 年 8 月の国民協議会の決定によりインドネシア国家警察 (Indonesian National Police: INP) は国軍から正式に分離独立し 大統領の直轄機関として再編され 国内治安の責任を委ねられることとなった 国内で多発する一般犯罪に対応し 市民の安全を確保するうえでインドネシア国家警察の役割は従来に増して大きくなっているが 分離独立したばかりのインドネシア国家警察にとって いかにして国内治安を向上させ かつ 民主的な警察サービスを提供するかが大きな課題となっている このような状況のもと 今後 国家警察が 市民警察 として国民の信頼を得て インドネシアの治安を確保していくことは 同国民の安全な生活の確保はもとより 政治的安定や投資の促進による経済発展にとってもきわめて重要な課題であることから インドネシア政府は 国家警察の組織 制度 人員の改革への支援を我が国に要請してきた 同要請に応え 我が国は2001 年より インドネシア国家警察改革支援プログラム ( 以下 JICA 協力プログラム と記す ) を実施してきている 我が国はJICA 協力プログラムの中枢をなす活動として モデル警察署 である両ブカシ警察署において 市民警察としての活動の推進を 組織運営 現場鑑識 及び 通信指令 の各分野にて実践する インドネシア市民警察活動促進プロジェクト ( 以下 プロジェクトフェーズ1 と記す) を2002 年 8 月より5 年の協力期間で実施してきた 今回 さらに同案件で培った知見 経験を基に 全国普及に向けてのリファレンス モデルとして確立することをめざし インドネシア政府より引き続き技術協力プロジェクトの実施が要請された これを受けてJICAは インドネシア市民警察活動促進プロジェクトフェーズ2 ( 以下 プロジェクトフェーズ2 と記す) の妥当性を確認するとともに プロジェクトフェーズ2を含む JICA 協力プログラム全体の方向性 枠組み及びJICA 協力プログラムを構成する案件についての活動内容 位置づけについて インドネシア政府側と協議を行い 基本合意を得ることを目的として事前評価調査団を現地に派遣した 今次調査はJICA 協力プログラムについての議論を行うこともあり インドネシア政府側との協議を円滑に進めるために2007 年 5 月 同年 6 月の二次にわたる現地調査を実施した 第一次事前評価調査では今次調査の進め方及び協力内容についての日本側第一次案の説明 インドネシア政府側関係機関との意見交換 関連情報収集を目的として実施された 第一次調査の結果を受けて 第二次事前評価調査ではJICA 協力プログラムの基本枠組み及びプロジェクトフェーズ2の協力枠組み プロジェクト ドキュメント案 討議議事録 (Record of Discussions:R/D) 案 についてインドネシア政府側と基本合意することを目的として行われた 1-2 第一次事前評価調査調査においては JICA 協力プログラムについての大枠 プロジェクトフェーズ2の内容のうち主にプロジェクトフェーズ1との違い プロジェクトフェーズ2 開始までの今後の調査及び文書による合意形成の段取りを説明し インドネシア側と認識を共有し 協議議事録 (Minutes of

Meetings:M/M) に取りまとめた そのほか 両ブカシ警察署 (Bekasi Police Resorts:BPRs) の現場視察 及び関係機関に対する聞き取りを行うとともに プロジェクト マネージャー及びプロジェクトフェーズ1 専門家チームとともにプロジェクトフェーズ2のプロジェクト デザイン マトリックス (Project Design Matrix:PDM) について検討を行った 1-2-1 調査団の構成氏名 担当業務 所属 出宮良平 警察協力立案 警察庁長官官房国際課警部 熊谷晃子 協力計画 JICA 社会開発部第一グループガバナンスチーム長 平川貴章 評価分析 インテムコンサルティング株式会社社会開発部コンサルタント 1-2-2 調査日程 2007 年 5 月 20 日 ( 日 )~5 月 30 日 ( 水 ) 日程詳細については付属資料 1-2 調査日程 参照 1-2-3 調査概要 JICA 協力プログラムの概念図 ( 付属資料 1-4 第一次事前評価調査時 M/M 参照) を用い 国家警察改革プログラム とそのビジョン その中でのJICA 協力プログラム その中のコンポーネントであるJICAの各技術協力の相互の関係性 ともにめざしている目標 ( いわゆる JICAプログラム目標 ) について インドネシア側ワーキング グループ (Working Group:WG)( インドネシア国家警察本部政策戦略部のほか 鑑識ほか関係各部 ジャカルタ警視庁 両ブカシ警察署含む ) に説明し 基本的な合意を形成した 面談 協議の詳細については付属資料 1-3 協議 ヒアリング記録 を参照のこと 国家警察改革プログラム は インドネシアの警察改革そのものを指す大きな概念であり その中にJICAの協力プログラムが含まれ プログラム目標にある インドネシア各地の警察署と警察官により それぞれの地域特性に応じた適切な市民警察活動が展開されるための 実効性のある仕組み 体制が確立される ことをめざして 個々の協力コンポーネントが相互作用しながら実施されること また プロジェクトフェーズ2の実施にあたり プロジェクトフェーズ1との違いとして 両ブカシ警察署という現場で得られるよい経験をインドネシア全土に広め その教訓をフィードバックするという点 そのためにプロジェクトフェーズ2においては インドネシアの市民警察活動のショーケース またよい現場実習の場として 警察大学院大学 Perguruan Tinggi Ilmu Kepolisian(Police Science College):PTIK に配属されるインドネシア版市民警察活動 Perpolisian Masyarakat(Community Policing by the Indonesian Police):POLMAS 専門家の教学活動と協働すること 国別特設研修を通した普及を行っていくこと 等を確認した プロジェクトフェーズ2PDMの検討段階では プロジェクトフェーズ1との違いとして上

記のほか 市民警察活動 の中の重要な要素である 地域住民や関係行政機関との連携 も含めており プロジェクトフェーズ1の専門家にもその重要性が共有され この内容を含む形でプロジェクトフェーズ2の協力内容を取りまとめた WGとの協議 両ブカシ警察署及び傘下の分署 警察 市民パートナーシップセンター ( インドネシア版交番 ) Balai Kemitraan Polisi dan Masyarakat(Police-Citizen Partnership Center): BKPM 警察官派出所 Pos Polisi(Police Field Office):POSPOL のほか インドネシア国家警察本部鑑識課 同市民指導課 ジャカルタ警視庁人事部 オペレーション部 警察大学院大学を訪問し 同様にJICA 協力プログラムと各コンポーネントであるプロジェクト並びに相互の関係の説明 今後のスケジュールを説明のうえ 問題点や要望のヒアリングを行った 特記しておくべき点としては 依然として機材供与に対する期待が高いため 当調査団からは 日本の交番の警察官も建屋は小さく簡素なところに詰め パトロールも自転車で住宅地回りをしているなどの例を出し むしろBKPMのような建屋のほうが立派であることを指摘 道具がなくても実施できる市民警察活動があるためそういう点にも留意して進めてほしいことを説明し あわせて プロジェクトフェーズ2では大規模な機材導入は考えていない点も説明した 鑑識に関しては 全国レベルで実施する 調整会議 への専門家の参加 コーチングクリニック ( 巡回教養 ) の実施への協力などが要望としてあがっていた プログラムの一環として 成果普及の観点から プロジェクトフェーズ2の活動との兼ね合いを勘案しながらの対応可能性はあると考えられる また鑑識からは同様に 無償資金協力で入れた機材のアフターサービスや消耗品購入についてのコンタクト先の情報提供を要望された 今後日本製の機材活用も念頭にあるとの話もあり 無償資金協力部を通じ対応する必要がある 警察大学院大学では 派遣予定の個別専門家の部屋 ミーティングルーム スタッフも用意され 受入れを待っていた 警察大学院大学の教学への 両ブカシ警察署での実践のフィードバックにつき基本的な理解が得られた 日本人専門家には 日本版市民警察活動の特徴に関するレクチャー が期待されているが 具体的には専門家が来訪したあとに 専門家の得意分野も勘案して活動をすり合わせていくことにしたいとのことであった なお 警察大学院大学では研究 論文作成もしているが 参考文献がないため この部分での支援も期待するとのことであった インドネシア版市民警察活動を考えるにあたり 国際移住機構 (International Organization of Migration:IOM) の方法 日本の方法などの比較研究も実施するという観点では 日本の文献整備の必要性が認められた 1-2-4 協力計画 団員所感今回 JICA 協力プログラムの大枠 各協力案件の関係性について インドネシア側と認識を共有する場をもてたのは幸いであった 他方 今回の調査団は JICA 協力プログラムの考え方の説明と認識の共有 その中での新規プロジェクトの内容について調整することが目的に入っていたが 他方 調査団の名称は新規プロジェクトの第一次事前調査であり さらに JICA 協力プログラムがどこまでオーソライズされているものかということもあいまって どこまでをマンデートとしてよいか若干の困惑を持ちながら進めた感も否めない M/M 表紙の記載ぶりにも工夫が必要であった ( 表紙の部分では目的の記載に JICA 協力プログラム と

記載せず 文章で表現 ) また インドネシア側は やむをえないこととはいえ 無償資金協力と技術協力の区別がなされていない部分もあった WGで インドネシア側より行われた成果発表では 成果を提示するパワーポイントに記載されていた金額は無償 1 期 2 期の金額であったし 協議の場で 次はいくら 何を供与するのかということを質問してきたところもあった したがって 明らかに混同している相手には誤解を解く説明を行い M/Mに記載する図示にも 新たな無償資金協力による機材の供与があると誤解されないための書きぶりも必要となった 今後も 混同と誤解を解き 間違った期待と失望をされないような説明が折に触れ必要になると考えられる 幸いにして 現在 インドネシア版市民警察活動 (POLMAS) の推進が政策として進んでおり 機材とは別の次元で実施すべき市民警察活動 日本の経験が十分貢献できるプログラム内容と 2010 年までに達成すべき政策が一致していることから 無償資金協力がないことが直ちに日本の協力に対する期待の激減とならない状況ではあるため 十分な説明を行い 効果的な協力内容の調整を進めることは可能であると思われる インドネシア国家警察関係の協力では 意思決定がWGでなされるため たとえプロジェクトフェーズ2の協力内容であっても 現場である両ブカシ警察署だけではなんら意思決定につながる協議はできず また インドネシア国家警察本部 両ブカシ警察署の上部機関であるジャカルタ警視庁との関係などもあり 単純な協議と決定ができない構造となっている 今回の調査団では WGとの協議が設定できた日時は 団員がそろった初日 しかも最初の2 時間程度のみであったため M/Mに記載できるのはそこで協議したことのみであって 例えばプロジェクトフェーズ2のPDM 案をM/Mに添付することはできなかった インドネシア国家警察長官アドバイザーが個別専門家として派遣され インドネシア国家警察上層部もプロジェクトに関与していることで 広く普及することなどプログラムとして広がりを持てている点で大変有効である一方 先方のアポイントの日時の設定に融通がきかないなかで いかに各種協議の順番などをうまく配置していくかということが今後も各種調査を進めるにあたり必要になると考える 1-3 第二次事前評価調査第二次事前評価調査は 第一次事前評価調査に引き続き 事前にインドネシア国家警察側に本件協力枠組みに関する一連の関連文書を配布のうえ R/D 署名に向けての基本合意を得ることを目的とした

1-3-1 調査団の構成氏名 担当 所属 岡﨑有二 総括 JICA 社会開発部部長 竹内直人 警察協力立案 1 警察大学校国際警察センター所長 出宮良平 警察協力立案 2 警察庁長官官房国際課警部 岩間創 協力計画 JICA 社会開発部第一グループガバナンスチーム職員 平川貴章 評価分析 インテムコンサルティング株式会社社会開発部コンサルタント 1-3-2 調査日程 2007 年 6 月 17 日 ( 日 )~6 月 28 日 ( 木 ) 日程詳細については付属資料 2-1 調査日程 参照 1-3-3 調査概要 2007 年 8 月 25 日午前中にはWGにおいてM/M 案に基づきJICA 協力プログラム基本枠組みについて説明し 基本的合意を得た また 午後には人事担当次長 ( 代行 ) オペレーション担当次長とそれぞれ意見交換を行った 26 日には両ブカシ警察署を訪問 その後ジャカルタ警視庁副総監を表敬訪問し プロジェクトフェーズ2 実施において 日本側 インドネシア側の双方で尽力する旨確認した 27 日にはM/M 署名後 インドネシア国家警察副長官への表敬訪問が実現した 面談 協議の詳細については付属資料 2の 2-3 協議 ヒアリング記録 を参照のこと 今次現地調査は 第一次調査以降 PDMを含む協力の基本枠組みについて事前に関係者間で概ね合意点に達しており 協議において意見の相違はほとんどなく 基本的には順調に協議を進めることができた 以下 協議の中で特筆すべき諸点を列記する (1)JICA 協力プログラムについては第一次調査時に説明をしていることもあり 今次調査においても異論なく受け入れられた (2) 主要幹部自らPOLMAS 推進の基本文書である737 通達を引用し 同文書の方向性と整合性をもった協力の実施について要望がなされ インドネシア国家警察のPOLMAS 政策に対する意欲の高さを改めて確認できた (3)POLMAS 推進の観点から 複数の幹部やプロジェクトの直接のカウンターパートであるブカシ県警察署長から村落レベルでの活動の推進 具体的には 駐在所 の試行について要望がなされた 日本側としても総論としてその必要性については認識しているが 今後具体的にどのように支援を進めていくのかについて早急に具体的な検討に入る必要がある

(4) 一方 両ブカシ警察署での成果を全国に普及するための活動実施について複数の幹部から要望があった この点は (JICA 協力プログラムとしての ) プロジェクトフェーズ2 の主要な取り組みであるところ 具体的進め方 ( 両ブカシ警察署等経験の抽出及び研修等を通じた普及活動の具現化 ) を早急に検討する必要があると感じた (5)( 日本側事前段階の全体投入計画策定の必要性 ) 今後 日本側関係者間で必要となる作業として プロジェクトフェーズ2 全体投入計画の精緻化 2007 年度投入計画の確定があり 現地滞在中 調査団から現地プロジェクトフェーズ1 専門家に対し 早急な検討について依頼した 調査団からは昨今の予算管理に関する議論 円滑な事業運営管理の観点からみた有用性について説明し 専門家からも一定の理解を得た 一方 本件のように先方の意識改革に主眼を置いた協力の場合 実際の活動計画策定にあたっては 動きながら考える 形で進めざるを得ない側面もある点専門家からの意見があり この点について認識をもつ必要があると感じた 1-4 インドネシア国家警察改革支援プログラム に関する検討今次調査においては プロジェクトレベルの議論で終わることなく プログラムレベルでの基本合意をインドネシア側と形成することに努め 所定の成果をおさめた 以下 両者が文書において確認した説明を記載する ( 付属資料 2-4 第二次事前評価調査時 M/M Annex1 を参照のこと ) インドネシア国家警察は自らの市民警察化への移行を達成するため 現在 改革努力を進めているところである JICAとしては インドネシア国家警察がPOLMAS 通達として制定した政策に沿い 市民から信頼される警察活動を実践していくため これまでの協力経験 日本警察としての知見を十分踏まえた包括的 複合的な支援をJICA 協力プログラム インドネシア国家警察改革支援プログラム として実施している JICA 協力プログラムの目標として以下のとおり設定する インドネシア各地の警察署と警察署員により それぞれの地域特性に応じた適切な市民警察活動が展開されるための実効力のある仕組み 体制が確立する この目標を達成するため 具体的な活動としては 大きく次の2つの柱で進めている 第一の柱としては モデル構築ポーション が挙げられる モデル構築ポーションでは活動の現場を特定し 日本警察から派遣される専門家と当該地域のインドネシア側警察関係者が日々ともに業務を遂行し 市民警察活動の モデル もしくは 道場 として市民警察活動の強化をめざすものである 具体的には都市部 農村部等インドネシアにおける多様な社会状況を持ち合わせた地域を対象としたプロジェクトフェーズ2 及び短期滞在者が多く存在する地域を対象とした バリ島 安心なまちづくりプロジェクト などを実施していく 第二の柱としては 全国普及ポーション が挙げられる 全国普及ポーションにおいては市民警察活動がインドネシア全土で普及していく仕組みづくりを支援していくものであり 第一の柱であるモデル構築ポーションで実証された経験 知識を基に 必要に応じ 調査 研究を行ってその抽出を進め 研修によりインドネシア各地で市民警察化を推進する中心的人材の育成をめ

ざす 今後全国普及に向けた具体的な取り組み方法について関係者間で検討する必要があるが インドネシア国内 警察大学院大学 (POLMAS 研究開発センター ) 両ブカシ警察署など で行う研修 ( 講義 訓練 ) と日本国内で行う研修 ( 講義 訓練 )( 従来の国別特設研修に類するもの ) 及び必要に応じ第三国での研修を有機的に組み合わせ より戦略的に実施していくことを検討していきたい また 市民警察活動に関する調査 研究や各種研修の計画立案 運営実施管理を担う日本人専門家 (POLMAS 活動強化専門家 ) の派遣を予定している こうした活動を全体管理し インドネシア国家警察に対する包括的な政策助言を行うとともに JICA 協力プログラム全体について 指揮 運営管理を担うため 引き続きインドネシア国家警察長官アドバイザーを派遣する 1-5 プロジェクト案件概要プロジェクトフェーズ2の協力内容として 以下のとおりインドネシア側と合意した (1) 協力の目標 1) 上位目標インドネシア各地の警察署と警察署員により それぞれの地域特性に応じた適切な市民警察活動が展開されるための実効力のある仕組み 体制が確立される < 指標 > 市民警察活動に関する適切な施策の進捗状況 2) プロジェクト目標 モデル警察署 である両ブカシ警察署において 市民から基本的信頼を得るための 市民警察活動 が強化される < 指標 > ブカシ住民および地方行政機関による両ブカシ警察署の警察活動に対する評価 市民警察活動 に対する両ブカシ警察署員の意識の変化 (2) 成果 ( アウトプット ) と活動 1) 成果 1 両ブカシ警察署幹部の業務管理能力が向上する < 成果 1の指標 > 市民警察活動に向けた各種取組みの進度 適切な人員配置の進捗状況 < 活動 1> 分署の適切な業務管理方法の策定 BKPMなどでの適切な警察活動規準の策定 両ブカシ警察署幹部を対象とした業務管理方法に係る教育訓練の実施 2) 成果 2 両ブカシ警察署において 市民警察化に向けた現場 (BKPMなど) での警察活動の機能が改善される < 成果 2の指標 > 現場鑑識臨場数および対照可能な指紋採取ができた件数 鑑識係員による高度な現場鑑識技術の習得およびその活用度 制服警察官による現場保存の技術レベル BKPMな

どでの巡回連絡活動や相談受理などを含む各種取扱いの実施回数 両ブカシ警察署管内における無線連絡の頻度およびその内容 ( 特に重大事件 ) 現場で勤務する署員を対象にした教育訓練の実施回数 < 活動 2> BKPM 分署 警察署及び州警察本部間の報告連絡体制の確立 警察活動にかかる各種教材 資料の作成 改定 教育訓練の実施 各種警察活動に係るモニタリングの実施 警察無線機器の維持 管理体制の確立 3) 成果 3 地域住民や地方行政機関との良好な関係 ( パートナーシップ ) が構築される < 成果 3の指標 > 広報 啓発活動の実施回数 FKPM( 警察 市民パートナーシップフォーラム ) 会合 参加型セミナー ワークショップなどの実施回数 < 活動 3> 広報 参加型セミナーなどを含む情報発信に係る活動の実施 FKPM 会合などを介した地域防犯団体との協議の実施 4) 成果 4 プログラム内の連携を図り 市民警察化に向けた警察活動に関連した研修体制が整備 改善される < 成果 4の指標 > 研修参加者による研修内容の評価 技術指導者の活用度 < 活動 4> 警察活動に関する研修計画の策定 研修教材 資料の作成 研修指導者の育成 活用 (3) 投入 ( インプット ) 1) 日本側 ( 総額約 7.8 億円 ) a) 長期専門家プロジェクト リーダー / 組織運営 現場警察活動 現場鑑識 業務調整 b) 短期専門家総合現場鑑識 ( 指紋 写真 検視など ) 無線通信網整備 地域防犯など c) 本邦研修組織運営 現場警察活動 現場鑑識など d) 機材供与教育 訓練用教室資機材 通信指令関連資機材 鑑識資機材 現場警察活動に必要な資機材など e) 在外事業強化費世論調査費用 現地セミナーの開催 マニュアル作成など 2) インドネシア側 a) カウンターパートの人材配置 プロジェクト ディレクター( インドネシア国家警察本部計画開発担当次長 )

副プロジェクト ディレクター( ジャカルタ警視庁副総監 ) プロジェクト マネージャー( メトロブカシ警察署署長 ブカシ県警察署署長 ) 各分野におけるカウンターパート b) プロジェクト実施に必要な執務室及び施設設備の提供 c) その他運営 経常費用 電気 水道などの運用費 プロジェクト実施に必要な資機材 1-6 評価 5 項目による事前評価 (1) 妥当性プロジェクトフェーズ2は 以下の理由から妥当性が高いと判断できる 2004-2009 年度国家中期開発計画 内の 警察人材開発プログラム において 国家警察人材の育成及び国家警察の能力開発が掲げられ プロフェッショナルな警察組織を構築することをめざしている また POLMAS 通達 では 地域社会の安全と秩序及びその住民の生活の平穏を脅かすそれぞれの社会的問題を解決する過程において 警察官と地域住民との間で対等なパートナーシップを構築することにより 犯罪そのものを減らすとともに 犯罪への不安感を軽減させることが重要であると謳っている 本プロジェクトは 当該開発計画及び通達が示す方向性 ニーズとの整合性がある 本プロジェクトがめざすべき方向性は 外務省の 対インドネシア国別援助計画 及び JICA 国別事業実施計画 の内容とも合致している (2) 有効性プロジェクトフェーズ2は 以下の理由から高い有効性が見込まれる 複数の成果により相乗効果を生むことがプロジェクト目標であり それを達成するために 1 両ブカシ警察署幹部の業務管理能力の向上( 成果 1) 2 市民警察化に向けた現場警察活動の機能改善 ( 成果 2) 3 地域住民や地方行政機関との良好な関係の構築 ( 成果 3) 及び4 警察活動に関連した研修体制の整備 改善( 成果 4) の4つの成果項目が設定されている 1 及び2に関しては 両ブカシ警察署内の人材に係る能力開発であり 3に関しては 両ブカシ警察署の外側にも目を向け ブカシ地域社会とのパートナーシップの構築をめざしたものである このように 両ブカシ警察署内及びブカシ地域社会に対して両側面から協力を推し進めていくことにより インドネシア全国の モデル警察署 として役割を果たすことが期待される また 4では 上記 1から3で得られた モデル警察署 での経験や成功事例などを他地域で勤務する警察関係者と共有できるように 両ブカシ警察署内で研修体制を整備する このように 各成果が達成されることにより その相乗効果としてプロジェクト目標である モデル警察署である両ブカシ警察署での市民警察活動の強化 が達成されるデザインとなっている したがって 成果 1から4を効果的に組み合わせることにより 協力期間終了時にプロジェクト目標が達成される見込みは高い (3) 効率性プロジェクトフェーズ2は 以下の理由から効率的な実施が見込まれる

プロジェクトフェーズ1では 市民警察活動の基礎を築き上げてきたため そこで培われた多くの経験や教訓を有効に活用するとともに 育成された人材や各分野で開発された教材を効果的に活用することにより 効率的な活動が期待される IOM アジア財団 パートナーシップなどドナー間で類似した活動を重複させないために 他ドナーと十分なコミュニケーションを図り 適切な調整を行うことは効率性の面できわめて重要である プロジェクトの開始とともに ドナー間との連携及びコミュニケーションを的確に行えるような環境を整えていく必要がある (4) インパクトプロジェクトフェーズ2の実施によるインパクトは 以下のように予測される 本プロジェクトは 市民警察活動の全国展開を視野に入れてデザインされている すなわち 成果 4で示すように 両ブカシ警察署での経験や成功事例を抽出し 全国レベルでの研修体制を整備することをめざし 両ブカシ警察署における技術指導者の育成や研修教材の開発を進める予定である このような取り組みを通じ インドネシア各地の警察署員に対して指導できるような体制が整備されれば 上位目標である 適切な市民警察活動を全国展開するための仕組みづくり の達成が期待できる 上位目標に至るための外部条件として インドネシア国家警察及びジャカルタ警視庁が 本プロジェクトの成果を活用して市民警察活動に係る施策を策定する が挙げられている インドネシア国家警察及びジャカルタ警視庁による自助努力に依存する部分が大きいが 2005 年に POLMAS 通達 が出され ジャカルタ警視庁をはじめ全国での展開が開始されており モデル警察署としての知見が生かされることが期待される (5) 自立発展性プロジェクトフェーズ2の自立発展性は 以下のとおり期待される 妥当性でも述べているが 2004-2009 年度国家中期開発計画 及び POLMAS 通達 の政策支援を受けることにより 本プロジェクトの実施期間中及び協力期間終了後も インドネシア側からの政策的な支援は見込まれる 本プロジェクトに対しては インドネシア国家警察幹部だけではなく 国会議員を含む多方面からの視察 見学者が多い このように 両ブカシ警察署関係者は 警察内外から注目を集めているという意識があるため プロジェクト活動に対する彼らのインセンティブにつながっている また 成果 4の活動では 市民警察活動に関連した研修を指導する技術指導者を育成し かつ組織としての知見の蓄積を図っていくため (TOTの実施) プロジェクトフェーズ2 終了後もこれらの指導者を中心とし 警察関係者への指導を行うことができる したがって プロジェクトに対する両ブカシ警察署のオーナーシップは高く プロジェクト活動の継続性は見込まれるであろう 成果 2の活動の一部として プロジェクトフェーズ1に引き続き現場鑑識についての取り組みを行う予定である 現場鑑識活動が真にインドネシア国家警察に定着するためには 本プロジェクトですすめている技術力の向上 意識変化 指導員育成に加え 実際の捜査活動において利活用される必要があるところ この点についてインドネシア国家

警察ひいてはインドネシア刑事司法界の動向についても継続的に注視が必要と思われる また 成果 2の活動では 両ブカシ警察署において無線機器の維持 管理体制を確立することになっている 無線機器の維持 管理体制が構築されない限り 実効性のある通信指令体制が構築されることは困難であり ひいては市民警察活動の定着 普及にも影響をおよぼしかねないところ この点に対しては継続的にみていく必要がある

第 2 章実施協議結果 2007 年 5 月 6 月に実施した事前評価調査時の協議結果を基に プロジェクト立ち上げのための最終的な実施協議がJICAインドネシア事務所とインドネシア国家警察との間で行われ 基本的な協力枠組みについて正式に合意に至った 同協議に基づき 2007 年 7 月 31 日付で協力枠組み文書であるR/Dの署名がジャカルタにおいてJICAインドネシア事務所坂本隆所長 インドネシア国家警察のDrs. Tjuk Sugiarso 計画開発担当次長との間で執り行われた インドネシア国家警察長官アドバイザーである竹内直人専門家も証人として署名を行った 署名されたR/D 及びM/M は付属資料 4 R/D 及び実施協議時 M/M を参照のこと また 実施協議時 M/Mで確認されたプロジェクト ドキュメントの和訳を付属資料 5として添付する