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区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

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欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

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0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

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架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

2008年6月XX日

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

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(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

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無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

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と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

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国 アメリカ ロシアに次いで世界第 4 位の電力消費国となっている (2014 年 ) 国内の電力供給に関しては 1,114,408GWh の需要に対して供給量は 1,090,851GWh と 2.1% の不足 供給能力もピーク時 153,366MW の需要に対して 148,463MW と 3.2%

は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

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令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

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Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

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Microsoft Word - 事前評価

第1章 評価の目的と実施方法

2 1 図 2 連邦政府と地方との役割分担 ( 出典 :FEMA) 2 2. 米国の危機管理システムの変遷 1950 Disaster Relief Act Civil Defense Act National Flood Insurance Act

研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

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知創の杜 2016 vol.10

参考 生活支援制度 と り災証明書に記載された住家の被害程度 の対応表 ( 目安 ) この表は 生活支援制度 と り災証明書に記載された住家の被害程度 との対応について 目安として作成したものです 各支援制度の詳細な適用条件については 3 生活支援制度一覧 (P.5~) に記載している各制度の お問

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

豊橋市 PPP/PFI 手法導入優先的検討方針 効率的かつ効果的な公共施設等の整備等を進めることを目的として 多様なPPP/P FI 手法導入を優先的に検討するための指針 ( 平成 27 年 12 月 15 日民間資金等活用事業推進会議決定 ) に基づき 公共施設等の整備等に多様なPPP/PFI 手

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手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

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事業事前評価表

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宅地の補修工事に関する費用の貸付 被害建物に関する相談窓口 応急仮設住宅の提供 被災者生活再建支援金 住宅の応急修理制度 住宅の補修工事に関する費用の貸付 ( り災証明書の提出が必要です ) 被災家屋等

支援 及び 不均衡の是正と安全な社会造りへの支援 の中で重点分野として掲げており また JICA も国別分析ペーパーの協力プログラムにおいて 首都圏の都市基盤整備プログラム や 地方開発 拠点都市圏整備プログラム の中で開発課題として位置づけている 上水道セクターにおいては 日本は下記 3.(9)

資料 - 5 討議議事録 (M/D)

の無償資金協力で整備されたニバンガⅢ 号 (2015 年 ) 及びマヌフォラウ号 (2002 年 ) が担っているが これら定期船 2 隻は 1 回の航海で複数の離島に寄港するため 限られた時間内での離島訪問等には対応できないため マナウイ号が補完的な役割を担っている しかしながら マナウイ号は現在

H28秋_24地方税財源

事業事前評価表

4-(1)-ウ①

事業事前評価表

ており 公共交通機関の拡充等のインフラ整備を通じて大都市圏を中心とした混雑緩和 物流改善が必要であるとしている 本事業はこれら方針及び分析に合致する なお 我が国はこれまで対フィリピン円借款による旅客輸送 システム整備として LRT1 号線増強事業 (I) (II) (L/A 調印 :1994 年

国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

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平成18年度標準調査票

1. の概要 ( 目的に沿って ) 1.2 学習 改善 (learning) 事後評価の結果は 関係者へのフィードバックを通じ 以下のように活用される (PDCA の C から A へ ) 提言 : 対象事業の改善 教訓 : 将来 ( あるいは実施中の ) 類似事業の改善 上記に加えて 評価結果を

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政策目標 6-2: 開発途上国における安定的な経済社会の発展に資するための資金協力 知的支援を含む多様な協力の推進 1. 政策目標の内容自由かつ公正な国際経済社会の実現やその安定的発展に向け 開発途上国における貧困の問題や気候変動等の地球環境問題等の課題への対応を含む国際的な協力に積極的に取り組むこ

システムの開発は 国内において 今後の普及拡大を視野に入れた安全性の検証等に係る研究開発が進められている 一方 海外展開については 海外の事業環境等は我が国と異なる場合が多く 相手国のユーザーニーズ 介護 医療事情 法令 規制等に合致したきめ細かい開発や保守 運用までも含めた一体的なサービスの提供が

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チェック式自己評価組織マネジメント分析シート カテゴリー 1 リーダーシップと意思決定 サブカテゴリー 1 事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている 事業所が目指していること ( 理念 ビジョン 基本方針など ) を明示している 事業所が目指していること ( 理念 基本方針

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

事業事前評価表

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事業事前評価表

Microsoft PowerPoint - 04-検討プロセス及び検討体制

Transcription:

円借款用 事業事前評価表 1. 案件名国名 : ネパール連邦民主共和国案件名 : 緊急学校復興事業 L/A 調印日 :2015 年 12 月 21 日承諾金額 :14,000 百万円借入人 : ネパール国政府 (The Government of Nepal) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における震災復興及び教育セクターの開発実績 ( 現状 ) と課題 2015 年 4 月 25 日 首都カトマンズ北西約 80 キロを震源とするマグニチュード 7.8 ( 米国地質調査所 ) の地震が発生し その後の余震の影響もあり 死者 8,702 人 負傷者 22,303 人 全壊家屋約 50 万戸 半壊家屋約 26 万戸となるなど 甚大な被害が生じた 1 ネパール政府は 世界銀行 UNDP JICA 等の支援を受けて災害後ニーズ調査 (Post Disaster Needs Assessment 以下 PDNA という ) を実施し 今般の地震による被害総額は 7,065 億ネパールルピー ( 約 8,689 億円 ) 復旧 復興のための資金ニーズは 6,695 億ネパールルピー ( 約 8,235 億円 ) と算出した また アジア開発銀行 ( 以下 ADB という ) は同国の 2014/2015 年度 (2014 年 6 月 ~2015 年 7 月 ) の実質 GDP 成長率予測値を 0.8% 下方修正し 3.8% とするなど 同国経済への影響が見込まれている これら総被害額及び総復興額のうち 教育セクターについては被害総額が 313 億ネパールルピー ( 約 384 億円 ) 復旧 復興のための資金ニーズが 397 億ネパールルピー ( 約 488 億円 ) とされ 全体の復旧 復興のための総資金ニーズの 5.9% を占めており 住宅に次いで 2 番目に復旧ニーズの高いセクターとされている 教育セクターにおける被害状況に関しては 全壊あるいは大きな被害を受けた教室数が 31,000 教室以上 それ以外の被害を受けた教室が 16,700 教室以上 その他トイレ 給水設備 学校家具などの損壊が確認されている 被害のあった学校の生徒たちは 竹やビニールシート等で作られた仮設教室で授業を受けている状況である (2) 当該国における震災復興及び教育セクターの開発政策と本事業の位置づけネパール政府は国家開発戦略における最上位の計画として 第 13 次計画 (2013/14 ~2015/16 年度 ) を掲げ 貧困削減に向けた主要戦略のひとつとして教育セクター開発を据え また 災害による被害を軽減するための法 行政制度の整備 情報通信体制の確保 災害準備及び対応の能力向上が不可欠としている その他 災害リスク管理国家戦略 (2009 年 ) において災害に対し強靭な社会を構築することをビジョンとし そのための行政機構の確立 政策及び法司法体制の強化 中央政府から一般家庭まで災害リスク管理を可能とする環境の整備を行い セクター毎の開発計画及び貧 1 出典 :PDNA 調査報告

困削減計画に沿った開発プロセスにおける災害軽減のメインストリーム化を目指している また 教育セクターの観点からは 学校セクター改革計画 (School Sector Reform Plan 以下 SSRP という 2009 年 ~2015 年 ) において 基礎教育の完全普及と教育の質の向上を主要な柱とし 就学前教育から中等 職業教育 ノンフォーマル教育までを視野に入れた包括的な計画を策定している 本事業は 上記の開発政策に沿うと共にネパール政府が取り組む復旧 復興支援の一環として 地域防災力の向上を図るものである (3) 当該国における震災復興及び教育セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績我が国の 対ネパール連邦民主共和国国別援助方針 (2012 年 4 月 ) における重点分野として 地方 農村部の貧困削減 が 開発課題として 教育 保健サービスの向上 が定められ その下に 万人のための教育 プログラムを設けて 基礎教育への支援を実施することとしており 本事業は本方針に合致する また JICA 国別分析ペーパー (2014 年 4 月 ) において 地方 農村部の貧困削減のため 教育や保健等の基礎的社会サービスの向上が重点課題であると分析している 我が国が 2015 年 3 月に主催した第 3 回国連防災世界会議では 仙台宣言 及び 仙台防災枠組 2015-2030 が採択され 1 災害リスクの理解 2 災害リスク管理のための災害リスクガバナンス 3 強靭化に向けた防災への投資 4 効果的な応急対応に向けた準備の強化と より良い復興 2 (Build Back Better 以下 BBB という ) を推進することが定められ また我が国政府は 仙台防災協力イニシアティブ を提唱し BBB を推進することとしている 今回のネパール地震は第 3 回国連防災世界会議直後の大規模災害であり 日本政府としてもネパールの復興を積極的に支援する姿勢を示している 具体的には 2015 年 5 月にバクーにて開催された第 48 回 ADB 年次総会において麻生副総理から支援国会合の呼びかけを行った結果 同年 6 月 25 日にカトマンズにて行われた支援国会合をネパール政府と共催し 総額 320 億円を超える支援を表明した JICA はこれまで 技術協力プロジェクト 小学校運営改善プロジェクト ( フェーズ 1,2) での学校運営改善の普及展開にかかる支援 個別専門家( 教育アドバイザー ) による政策 制度面のインプット 無償資金協力 第 1 2 次基礎初等教育プログラムにおける小学校建設計画 第 1 2 次 万人のための教育 支援のための小学校建設計画 基礎教育改革プログラム支援のための学校改善計画 による小学校建設を通じて 基礎教育分野の中でも特にアクセス ( 学校 教室数の不足等 ) マネジメント ( 参加型の学校運営 ) に関する支援を行ってきた さらに 貧困削減戦略無償による SSRP への財政支援を通じ 基礎教育の質とアクセス改善や学校修復等を支援している 2 災害以前の状態に復旧するのではなく 脆弱性の再現を防ぎ 災害と貧困のスパイラルからの脱却と持続的開発を目指し 災害に強い社会の構築を目指すこと

(4) 他の援助機関の対応今般の地震被害への支援策として 世界銀行は 住宅復興事業 金融セクター強化を目的とした災害後第 2 次金融セクター安定化支援 既往融資案件の組み替え等 総額 500 百万米ドルの支援を実施する ADB は 1 学校再建 農村道路整備 公共施設再建のための 200 百万米ドルの地震緊急支援借款 (Earthquake Emergency Assistance Project 以下 EEAP という ) 2 学校改修 農業生産者等の生計回復 震災復興に向けた防災能力の構築支援等のための 15 百万米ドルの貧困削減日本基金 (JFPR) 等 総額最大 600 百万米ドルの支援を行っている (5) 事業の必要性上記のとおり 本事業は 我が国政府が 2015 年 3 月に発表した 仙台防災協力イニシアティブ の基本方針である BBB のコンセプトに基づき 地震被害を受けた学校施設の再建 耐震化を支援することにより 早期の震災復興を促進するものであり 同国の復旧 復興ニーズ 我が国及び JICA の援助方針 分析に合致することから JICA が本事業の実施を支援する必要性 妥当性は高い 3. 事業概要 (1) 事業の目的本事業は 2015 年 4 月から 5 月に発生したネパール地震により特に甚大な被害を受けた郡において 地震被害を受けた学校施設等の再建 耐震工事を行うことにより 支援対象校の再建 修繕 耐震性強化を図り もって教育環境の復興及び建物の強靭化を通じた同地域の持続的な社会 経済成長に寄与するもの (2) プロジェクトサイト / 対象地域名震災被害の大きい 14 郡 ( バクタプール郡 ダディン郡 ドラカ郡 ゴルカ郡 カトマンズ郡 カブレ パランチョーク郡 ラリトプール郡 マクワンプール郡 ヌワコット郡 オカルドゥンガ郡 ラムチャプ郡 ラスワ郡 シンズリ郡 シンドパルチョーク郡 ) 等 (3) 事業概要 1) ネパール地震により被害を受けた学校施設等の再建 耐震化を以下のとおり実施する - 学校施設等の再建 耐震化 - 関連する資機材の供与 2) コンサルティング サービス ( 詳細設計 入札補助 施工監理 環境社会配慮等 ) (4) 総事業費 16,522 百万円 ( うち 円借款対象額 :14,000 百万円 )

(5) 事業実施スケジュール 2015 年 12 月 ~2020 年 10 月を予定 ( 計 59 月 ) 本事業の対象学校施設等の完工時 をもって事業完成とする (6) 事業実施体制 1) 借入人 : ネパール国政府 (The Government of Nepal) 2) 保証人 : なし 3 3) 事業実施機関 : 財務省又はその後継機関 4) 操業 運営 / 維持 管理体制 : 教育省教育局 (Department of Education 以下 DOE という ) (7) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境社会配慮 1 カテゴリ分類 FI 2 カテゴリ分類の根拠本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) 上 JICA の融資承諾前にサブプロジェクトが特定できず 且つそのようなサブプロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるため 3 その他 モニタリング本事業では 実施機関及び実施遂行機関である DOE が 円借款で雇用されるコンサルタントの支援を受けつつ ネパール国内法及び 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) に基づき 各サブプロジェクトについてカテゴリ分類を行い 該当するカテゴリに必要な対応策がとられることとなっている なお サブプロジェクトにカテゴリ A 案件は含まれない 2) 貧困削減促進 : 特になし 3) 社会開発促進 ( ジェンダーの視点 エイズ等感染症対策 参加型開発 障害者配慮等 ) ジェンダー活動統合案件 : 教員 学生数に応じた十分な数の女子トイレの整備を支援する事業を含む (8) 他ドナー等との連携 ADB が本事業とパラレルで EEAP(200 百万米ドル : うち学校再建には 82 百万米ドルを充当 ) を実施予定 (2015 年 8 月 21 日 Loan Agreement 調印済み ) であり EEAP と緊密に連携を進める予定 具体的には 東西に分けて優先対象郡を設定 ( 東側を ADB 西側を JICA) 本事業における対象学校の選定基準及び選定手順は EEAP に準じる 学校の標準設計を DOE ADB JICA で協働して策定することなどを予定して 3 ネパール政府は復興庁 (Reconstruction Authority) を設立する意向でおり 設立後は同庁が実 施機関となる見通し

いる また 世界銀行が学校を含む建物の被害状況にかかる詳細調査を実施中であり そ の結果を参考にする予定 (9) その他特記事項 特になし 4. 事業効果 (1) 定量的効果 1) アウトカム ( 運用 効果指標 ) 指標名 基準値目標値 (2022 年 ) (2015 年実績値 ) 事業完成 2 年後 対象郡における耐震設計の校舎 ( 数 ) 0 増加 初等教育 男子 91.7 女子 92.5 初中等教育における男女の N/A 4 中等教育 就学率 (%) 男子 37.8 女子 39.0 (2014/15 の対象 14 郡にお ける実績値の平均 ) (2) 定性的効果 教育環境の復興 同地域の持続的な社会 経済開発 BBB の実現 (3) 内部収益率 サブプロジェクトが特定できないため 算出せず 5. 外部条件 リスクコントロール (1) 前提条件 :ADB の協調融資が同じタイミングで決定される (2) 外部条件 : 学校建設に必要な資材や燃料等が滞りなく入手できる 6. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用 (1) 類似案件からの教訓過去の自然災害に対する復旧支援事業 ( フィリピン国台風ヨランダ災害復旧 復興計画等 ) から 事業実施にあたっては 1 先方関係機関で構成する進捗管理委員会の立ち上げと定期的な開催 2 復旧 復興需要に伴う物価の高騰 3 災害リスクを踏まえた復興支援等に配慮する必要があるとの教訓が得られている 4 2015 年 12 月現在 震災後の男女の就学率は計測されていない 計測が行われた時点の数値を 本項の参照値とする

(2) 本事業への教訓の活用上記を踏まえ 本事業では 協調融資相手である ADB と協議の上 1 円滑な事業実施のための実施 モニタリング体制の構築 2 資材 人件費の高騰を考慮した積算 3BBB のコンセプトに基づき 地震以外の災害リスクも加味した復興支援の展開を検討する予定である 7. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる指標 1) 対象郡における耐震設計の校舎 ( 数 ) 2) 初中等教育における男女の就学率 (%) (2) 今後の評価のタイミング : 事業完成 2 年後 ( 事後評価 ) 以上