図人権教育を通して育てたい資質 能力 人権教育の指導方法等の在り方について [ 第三次とりまとめ ] をもとに作成 5

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人権教育の推進のためのイメージ図

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて


必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

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基本施策情報活用能力の育成を図ります 幼児教育の推進 にあたっては 幼児期が生涯の人格形成の基礎を培う大切な時期であるとの認識のもと 子どもたちの心身の発達に資する質の高い幼児教育を推進します 2 人との絆や自然との関わりの中で伸びゆく豊かな心の育成 子どもたちが生命を大切にする心や思いやりの心 感

中学校第 3 学年社会科 ( 公民的分野 ) 単元名 よりよい社会をめざして 1 本単元で人権教育を進めるにあたって 本単元は 持続可能な社会を形成するという観点から 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を設けて探究し 自分の考えをまとめさせ これらの課題を考え続けていく態度を育てる

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

ICTを軸にした小中連携

岐阜県手話言語の普及及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関 する条例 目次前文第一章総則 ( 第一条 - 第八条 ) 第二章基本的施策の推進 ( 第九条 - 第十六条 ) 附則 ( 前文 ) 手話が言語であることは 障害者の権利に関する条約において世界的に認められており わが国においても

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7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

目 次 1 実施方針策定の趣旨 P. 1 2 振興計画に基づく取組みと求められる対応 P. 1 (1)Ⅰ 期期間中の取組み (2) 新制度のもと求められる対応 3 当面の実施方針 P. 2 (1) 基本となる考え方 (2) 当面の実施方針 4 新制度のもとでの市立幼稚園 P. 3 (1) 市立幼稚園

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乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香

しまねがめざす人絹教育-1

愛媛県学力向上5か年計画

1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

鎌倉市関谷小学校いじめ防止基本方針 平成 26 年 4 月 鎌倉市立関谷小学校

広島市障害者計画 2013 ー 2017 平成 25 年 3 月 広島市

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

スライド 1

八街市教育振興基本計画(平成26年~平成35年)

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を生かした環境を構成することも求められます 3 安全で保健的な環境次に 施設などの環境整備を通して 保育所の保健的環境や安全の確保などに努めること としています 子どもの健康と安全を守ることは保育所の基本的かつ重大な責任です 全職員が常に心を配り 確認を怠らず 子どもが安心 安全に過ごせる保育の環境

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

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31阿賀野全:方針実践のための行動計画

第2節 茨木市の現況

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

平成18年度標準調査票

もくじ はじめに 2 Ⅰ 改善基本 5 か年計画の基本構想 3 Ⅱ いじめ問題に関する基本的な考え方 4 Ⅲ 未然防止への取組 5 Ⅳ 早期発見 早期対応への取組 5 Ⅴ 関係機関との連携を強化した取組 6 Ⅵ 推進体制 検証体制を整える取組 7 改善基本 5 か年計画の見方 行動目標基本目標を達成

2、協同的探究学習について

41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

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人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

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(3) 障害を理由とする差別障害を理由とする不当な差別的取扱いを行うこと又は合理的配慮の提供をしないことをいいます (4) 障害を理由とする不当な差別的取扱い客観的にやむを得ないと認められる特別な事情なく 障害又は障害に関連する事由により障害者を区別し 排除し 又は制限すること 障害者に障害者でない

自己決定の場を設定する 自己存在感を持たせる 共感的な人間関係を育成する準備活動のどの場面で どの子どもを生かすのか 見通しを持って授業に臨む 導入の場面する 深める場面り返りの場面2 確かな学力の育成 複雑で変化の激しい現代社会に子どもたちが主体的に関わり よりよい社会を創造していくためには 一人

3. いじめの未然防止のための取組未然防止の基本とは 児童が周囲の友人や教職員と信頼できる関係の中 安心 安全に学校生活を送ることができ 規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加 活躍できるような授業づくりや集団づくり 学校づくりを行っていくことである この基本をもとに取組を進める また 本校教職員

H26研究レポート一覧(6年研)変更2017.3.22

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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北見市特別支援教育の指針 平成 25 年 11 月

第4章 道徳

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教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

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2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと


札幌市教育振興基本計画第3章

第3部 次世代育成支援対策(前期行動計画) 第3章 子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備

授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

< 先生方へ > 長崎県学力向上推進協議会では 子どもに確かな学力をつけていくためには 何 が大切か また 学力の向上を阻害している要因は何かなどについて 検討を重ね ています その中から次のようなことが指摘されました 1 家庭で毎日決まった時間に学習をする習慣をつけることが大切である 2 食事や睡

も少なくありません こうした状況に鑑み 舞鶴市は 言語としての手話の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図ることにより 全ての市民が障害の有無によって分け隔てられることなく 自分らしく安心して暮らすことができる地域社会を実現するため この条例を制定するものです 2. 条例の

計画の概要 太田市地域福祉計画 太田市地域福祉活動計画とは? 太田市地域福祉計画市民のみなさまからご意見を伺いながら作成した 今後の地域福祉の方向性 将来像を示した太田市の計画です 太田市地域福祉活動計画社会福祉法人太田市社会福祉協議会が策定した 地域の社会福祉を推進するための具体的な活動計画です

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「標準的な研修プログラム《

二さらに現代社会においては 音楽堂等は 人々の共感と参加を得ることにより 新しい広場 として 地域コミュニティの創造と再生を通じて 地域の発展を支える機能も期待されている また 音楽堂等は 国際化が進む中では 国際文化交流の円滑化を図り 国際社会の発展に寄与する 世界への窓 にもなることが望まれる

造を重ねながら取り組んでいる 人は, このような自分の役割を果たして活動すること, つまり 働くこと を通して, 人や社会にかかわることになり, そのかかわり方の違いが 自分らしい生き方 となっていくものである このように, 人が, 生涯の中で様々な役割を果たす過程で, 自らの役割の価値や自分と役割

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

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第1章 計画の目指すもの

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資料 目 次 事業方針 実施計画 みんなで福祉の風土を広げよう 住民 関係機関 団体のネットワークで身近な福祉活動を進めよう 一人ひとりの安全で安心な暮らしを守ろう Ⅳ 推進基盤の強化 主な年間行事等

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各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

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求められる整理編

である この後 市の方針案についてご意見をいただき 8 月を目途にパブリックコメントを経て9 月には最終案を決定したいと考えている 峯本座長 草津市いじめ防止基本方針策定の概要について項目ごとに意見をいただく 本日は全項目の概ね半分について 各委員に意見をいただきたい 国や県の方針にも 前段として

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

Taro-自立活動とは

はじめに 宅地建物取引業は さまざまな個人情報を取り扱う職種であり 宅地建物取引業法第 45 条には業者の 秘密を守る義務 が明記されています 平成 17 年 4 月に 個人情報の保護に関する法律 いわゆる個人情報保護法が完全施行され 個人情報を保護するための法整備がなされました また今般 同法改正

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

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Transcription:

第 2 章 人権教育についての基本的な考え方 1 人権教育がめざすもの 人権 とは 一人一人が人間らしく生きていくために 生まれながらにしてもっている大切な権利であり 人が個人として尊重され 安全で安心して生活を送るために欠くことのできないものです 全ての人は 一人一人がかけがえのない存在として認められ 自分の可能性を最大限に伸ばし 自分らしく幸せに生きたいと願っています また 一人一人の人権が尊重され 生まれてきてよかったと感じられる人生を送りたいと思っています しかし現実には 人権に関する様々な問題が存在しています 全ての人の人権が尊重され 安心して生活できる社会 を実現するために 私たち一人一人があらゆる場で人権教育に積極的に取り組み その問題を解決していくことが大切です 2 人権教育を通して育てたい資質 能力 人権教育とは 人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動 であり 国民が その発達段階に応じ 人権尊重の理念に対する理解を深め これを体得することができるよう にすることと 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律 平成 年 に示されています [ 第三次とりまとめ ] では 学校における人権教育の目標を 一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ 人権の意義 内容や重要性について理解し 自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるようになり それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるとともに 人権が尊重される社会づくりに向けた行動につながるようにすること としています この目標を達成するためには 人権に関する知的理解と 自分の大切さとともに他の人の大切さも認める人権感覚をバランスよく身に付けることが大切です 次ページの図で示しているように 人権に関する知的理解とは 知識的側面について自ら積極的に学ぶことで深まるものです また人権感覚は 価値的 態度的側面と技能的側面の学習で高められるものです こうした 人権に関する知的理解と人権感覚の両方が身に付くことによって 自分や他者の人権を守ろうとする意識 意欲 態度が生まれ 自分や他者の人権を守るための実践行動につながります - 4-4

図人権教育を通して育てたい資質 能力 人権教育の指導方法等の在り方について [ 第三次とりまとめ ] をもとに作成 5

3 人権教育の4つの視点 人権教育は 社会に存在している様々な人権課題の解決を図り 人権が尊重された社会づくりをめざしています 就学前教育 学校教育 社会教育の各分野で推進されていますが 取組を効果的に進めるために 次の 4つの視点を大切にして推進する必要があります (1) 人権が大切にされる社会をめざす ( 目的 ) 人権教育は 人権や人権問題について学習し 理解することだけで終わるのではなく 自らの生活を高め 全ての人の人権が大切にされる人権文化の豊かな社会をつくることをめざしています そうした社会を実現するためには 保育所 幼稚園等 学校 家庭 地域が一体となって取り組むことが大切です 1 人権について学習したことを生活に生かします 2 保育所 幼稚園等 学校 家庭 地域が一体となって人権尊重のまちづくりを進めます (2) 全ての人が等しく学習機会を得る ( 機会 ) うた 世界人権宣言 でも謳われているように 教育を受けることそのものが人権の一つです 全ての人々に教育を保障していくことは 人権教育を進める前提となります 同和教育のなかでは 長期欠席 不就学の子どもに教育を受ける権利を保障する取組が行 われてきました 現在においても いじめや不登校などで苦しんでいる子どもがいます そのことが理由で 学習機会が奪われることがないよう 保育や教育を保障する必要があります また 経済的 理由等から厳しい環境に置かれている子どもについても 学習の機会を充実することが求め られています 発達障害等を含め特別な教育的支援を必要とする子どもに対しては 将来の 社会参加と自立に向けて 幼児期から一人一人の特性に応じた学習の機会や学習内容も充実 していくことが求められます そのためには 常に子どもの現実から出発しつつ 一人一人の子どもの状況に応じた取組 を保育所 幼稚園等や学校全体で行っていくとともに 地域の関係者や関係機関と連携しな がら きめ細かな支援を行うことが大切です また 子どもに 確かな学力 を育むためには 学校全体として個に応じた目的意識のあ る学習指導や望ましい人間関係づくりなどを大切にし 学習意欲の向上に努めることが必要 です そのため 授業改善をさらに進め 全ての子どもに学力と進路を保障し 未来に夢を もって自己実現に向かうことができるように取り組むことが重要です 社会教育においても 全ての住民に生涯の各ステージで 人権や人権問題についての学習 6

の機会を充実することが必要です また 読み書きが困難な非識字者や外国籍の住民の方々に 生活するうえでの基礎的な能力を身に付けるための学習の場を保障することや いじめなどの理由により十分に学校に通うことができず 結果としてニートやひきこもり状態にある人々の社会的な自立を支援するための仕組みづくりも必要です 1 いじめや不登校問題の解消に向けた取組を進めます 2 発達障害等を含め 特別な教育的支援を必要とする子どもへの支援を充実します 3 放課後における学習支援などを通して 厳しい環境にある子どもの学習の機会を充実します 4 自らの希望や願いを実現させるための学力 進路の保障に向けた取組を進めます 5 生涯を通して人権について学ぶ機会を充実します トピック < 今日も机にあの子がいない> 終戦直後の混乱時には 極度の貧困等を理由に 学校に行けなかった子どもが被差別部落を中心に大勢いました その長期欠席 不就学対策として 昭和 年に全国で初めて 福祉教員が高知県で配置されました 福祉教員は 義務教育を保障するために保護者に対して 長期欠席 不 就学の子どもの出席を促すために 日々家庭訪問を繰り返し 子どもや保護者 地域に働きかけました そして 学力の向上や進路の保障に向けた取組を進めてきました 今日も机にあの子がいない とは その福祉教員たちの地道で熱心な取組をまとめた実践記録のタイトル名です < 識字学級 > 識字学級とは 差別などにより就学適齢時に満足な学習機会に恵まれず 文字の読み書きの能力を身に付けることができなかった方々に対して その力を取り戻すための学習会のことです 高知の識字 資料集 高知県教育センター 平成 2 年 によれば 識字運動とは 字を識る運動のことであるが 日本の場合 部落解放運動のなかで 部落差別によって奪われた文字を取り返す営み として重視され 識字学級を中心に取り組まれています と著されています - 7-7

(3) 人権が大切にされた環境で学ぶ ( 環境 ) 学校や地域の学習会など教育の場において 一人一人の人権が尊重された環境でなければ 教育活動は十分な効果をあげることはできません 学習者は 人権について知識や技能を学ぶだけでなく 人権が大切にされた環境のなかで学ぶ心地よさを経験することによって 人権の大切さを実感するようになります このように 学習者は 隠れたカリキュラム 教育する側が教えようと意図する しないに関わらず 学習者がその場の雰囲気や環境から学びとっていく全ての事柄のこと のなかで学んでいるということを踏まえて教育を進めていくことが大切です そのために 就学前教育及び学校教育においては 直接指導する保育者 教職員の姿勢そのものが人権教育の重要な部分であると言えます 子ども一人一人の大切さをしっかり自覚し 一人の人間として接することが大切になってきます そのため 一人一人の生活実態や 行動に至るまでの原因 背景をつかんで指導しようとしているか 互いによさを認め合い支え合える人間関係を学級に築くことができているか 自ら望ましい言語活動に心がけ 学校 学級全体の言語環境を整えようとしているか など 実践を通して自らの人権意識を見つめ直し より確かな人権感覚を身に付ける必要があります また 子ども自身が 自らの大切さや他の人の大切さを認めることができるような環境づくりに 主体的に取り組むことも重要なことです 学校における人権教育は 人権についての学習の時間の枠だけにとどまるものではありません 教科学習や特別活動をはじめ 全ての教育活動において 子どもの人権が十分に尊重される必要があります また 障害のある子どもとない子どもが共に学び 共に生きることの意義を踏まえ 教育環境や教育内容の充実に努める必要があります 生徒指導においても 自分の大切さとともに他の人の大切さを認めるという人権感覚を育成することを通して 暴力行為やいじめなどの生徒指導上の諸問題の未然防止に努めることが重要です 社会教育においては あらゆる場面で一人一人の発言の機会が大切にされる環境づくりに努めることが必要です 学習活動においては 参加体験型などの手法を用いることにより 互いの気付きや考えの深まりを大切にし 学習者自身の意識の変容や実践行動につなげるきっかけをつくることが重要です 1 実践を通して 保育者 教職員が自らの人権意識を見つめ直し より確かな人権感覚を身に付けます 2 一人一人の人権が尊重された環境のなかで学習することを通して 人権に関する知的理解と人権感覚を育みます 3 子ども自身が 自らの大切さや他の人の大切さが認められるような環境づくりを進めます 4 安全で安心して学ぶための環境を充実します - 8-8

(4) 人権や人権課題について学ぶ ( 内容 ) 私たちが自分の能力を十分に発揮し 人権教育がめざす社会をつくり上げていくためには これまでの歴史の中で確立されてきた私たちの基本的人権や その権利を行使することの意義や責任について学ぶことが大切です 現代社会には 様々な差別があり 基本的人権を侵害しています そして 社会の進展とともに新たな人権課題も生まれてきています 高知県人権施策基本方針 - 第 1 次改定版 - では これまでの県民に身近な7つの人権課題( 同和問題 女性 子ども 高齢者 障害者 HIV 感染者等 外国人 ) に 新たに3つの人権課題 ( 犯罪被害者等 インターネットによる人権侵害 災害と人権 ) が加えられました これら個別の人権課題の解決には それぞれに固有の歴史や特質などの課題があることを踏まえて 正しい理解と認識を深めることが必要です そのため 差別の現実や社会の実態から深く学ぶという視点を基本にしつつ 学習者が人権課題について学ぼうとする意欲や関心をもつことができるよう 個別的 具体的な指導を実施していくことが重要です 図 県民に身近な の人権課題 出典 : 高知県人権施策基本方針 - 第 次改定版 - 一方で 同基本方針が示している人権課題は 氷山の一角であり 根底の部分では全ての課題がつながっていると考えることができます 一つの人権課題の学習の成果をそれ以外の人権課題と重ねて考える力を育てる必要があります 学習する際は それぞれの人権課題について学習する個別的な視点と 法の下の平等や個人の尊重といった人権に関する普遍的な視点の双方が必要であり これらを相互に関連 補強させながら取組を進めることが重要です 人権や人権課題について学ぶことは 具体的な事例を通して 他者の心の痛みに共感す ることでもあり 身近なところから課題解決に向けた行動をしていくことが求められてい ます 1 基本的人権とその権利の行使や責任について学習する普遍的な視点と 個別の人権課題について学習する個別的な視点を相互に関連 補強しながら 人権についての正しい理解と認識を深めます 2 誤った認識や人権意識の欠如が偏見 差別の原因とつながっていることを理解できるようにします 3 人権課題を自分自身の問題として捉え その解決に向けた態度を育みます - 9-9

トピック < 普遍的な視点と個別的な視点 > 現在及び将来にわたって人権擁護を推進していくうえで 女性 子ども 高齢者 障害者 同和問題 アイヌの人々 外国人 感染者やハンセン病患者等をめぐる様々な人権問題は重要課題となっており 国連 年国内行動計画においても 人権教育 啓発の推進に当たっては これらの重要課題に関して それぞれの固有の問題点についてのアプローチとともに 法の下の平等 個人の尊重という普遍的な視点からのアプローチにも留意する こととされています 出典 人権教育 啓発に関する基本計画 < 人権学習を進めるために大切にしたいポイント> これまでの同和教育の実践のなかから大切にしたい視点を以下の 点に整理し 人権学習を進めるためのポイントとして示します (1) 現実や実態から学ぶ 人権について正しく学ぶとともに 人権課題の現状を正しく認識しましょう 同時に 差別や人権侵害で苦しんでいる人 いじめや家庭環境等でつらい思いをしている子どもの現実や実態から学び 課題解決に向けて取り組みましょう (2) 自分との関わりを見つめる 人権や人権課題が 決して他人事ではなく 自分と深くかかわっていることを実感することが大切です そのため 自分のこれまでの経験や体験を振り返り 考え方や言動を見つめ直しましょう (3) 知識 技能 態度 ( 人権教育を通して育てたい資質 能力 ) を身に付ける 知識 としてだけの学びではなく 技能 や 態度 と互いに関連させながら それぞれをバランスよく育み 日常生活や社会生活のなかで人権課題の解決に向けて行動できるようになることをめざしましょう (4) 参加 体験による主体的な学びを取り入れる 学習者がいきいきと参加し 体験を通して主体的 能動的に学ぶことを重視しましょう その手法として 探究的な学習などを積極的に取り入れましょう (5) 組織的 計画的に取り組む 人権教育主任を中心に組織として人権教育についての全体計画 年間指導計画を策定しましょう また 計画 実施 評価 改善 のシステムを確立し 育成すべき資質 能力などの見通しをもって 計画的に取組を進めましょう (6) 連続性と協働の視点で取り組む 子どもの成長 発達を軸として 校種間での教育の連続性を大切にしましょう 保育所 幼稚園等 学校 家庭 地域が協働して 子どもの育ちを支えていきましょう そのためにも 開かれた保育所 幼稚園等 学校づくりを積極的に進めていきましょう - 10-10