3. 測定結果 3-1 多環芳香族炭化水素 (PAHs) 表 3-1 図 3-1 に松葉に含まれる PAHs 濃度を示す 合計濃度は 高濃度想定地域で最も高 く 低濃度想定地域で最も低くなった ただし個別物質別にみると必ずしもこの順番ではない 表 3-1 松葉に含まれる PAHs 濃度単位 :ng/

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臭素化ジフェニルエーテルの規制とその背景 O x PBDEs y 2007 Nihon Waters k.k. 3 臭素系難燃剤 ominated Flame Retardants (BFRs) ポリ臭素化ジフェニルエーテル (PBDEs) - pentabde - octapbde - decap

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北清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7 4

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世田谷清掃工場 平成 27 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 不燃物 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) スラグ ( ガス化溶融 )( 含

練馬清掃工場 平成 29 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

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有明清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

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01_第Ⅰ部表紙_溶け込み

Q2-4: 水銀を回収した後のガラスくず ( 破砕したもの ) や 破損した水銀使用製品 は水銀使用製品産業廃棄物になるのか 水銀使用製品産業廃棄物には卒業基 準はないのか P.3 3. 廃水銀等について P.4 Q3-1: 当社は水質汚濁防止法の特定施設からは外れているが 廃棄物処理法でも今 P.

施設名施設住所項目一般埋め立てた廃棄物廃棄物 (ton) 擁壁の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 遮水工の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 周縁地下水の水質検査結果 斜里町清掃センター最終処分場斜里町以久科北 破砕ごみ 内容 生ごみ残差 合計 点検を行った年月日

有機化学I 小テスト4 回答                  担当:石川勇人

はじめに

ドラム缶位置平面図0219

Transcription:

2016 年 6 月 21 日 (2016 年 7 月 15 日改訂版 ) 2015 年度松葉による PAHs PBDEs 分析調査結果報告書 市民参加による松葉ダイオキシン調査実行委員会事務局株式会社環境総合研究所 152 0033 東京都目黒区大岡山 1-31-9-401 Tel: 03 6421 4610, Fax: 03 6421-4611 E-mail:office@eritokyo.jp, Web:http://eritokyo.jp/ 1. 調査の目的東京 23 区清掃一部事務組合が廃プラスチックの焼却を開始する前から 廃プラ焼却に伴う環境 への影響を把握するために これまでダイオキシン類および金属類の調査を行ってきた 2015 年度には これらの物質に加え タール 原油 石油などに含まれ ゴム 可塑剤 プラ スチックの着色顔料にも用いられる多環芳香族炭化水素 (PAHs) および 臭素系難燃剤 (PBDEs) について 23 区生活クラブ生協と環境総合研究所の協同研究として松葉中の濃度調査を行った 2. 調査の内容 (1) 調査対象対象地域内のクロマツの針葉 ( ダイオキシン類分析に供した試料と同一 ) のうち 2012 年度までのダイオキシン類 金属類等の結果を参考に 想定される濃度が 低い地域 中程度の地域 高い地域に分類した 3 地域の松葉を用いた (2) 対象地域以下の3 地域に集約した3 試料を対象とした 1 低濃度想定地域 : 目黒区 + 世田谷区 2 中程度想定地域 : 大田区 + 品川区 3 高濃度想定地域 : 江東区 + 江戸川区 松葉試料は 23 区南生活クラブ生協組合員が採取した全試料から ダイオキシ ン類と金属類用の試料を計量した後 残りの試料から等量計量して使用した 一部地点については 試料が少ないため含まれないものもあった (3) 分析項目多環芳香族炭化水素 (PAHs) ポリ アロマティック ハイドロカーボン 臭素系難燃剤 (PBDEs) ポリ ブロモ ヂフェニル エーテル (4) 測定分析機関 PAHs: Maxxam Analytics Inc.( カナダ オンタリオ州 ) ISO/IEC Guide 25/17025 取得 PBDEs: AXYS Analytical Services Inc.( カナダ BC 州 ) ISO/IEC Guide 25/17025 取得 (5) 分析方法 ( 含有濃度分析 ) PAHs:CARB 429m BRL SOP-00423 PBDE:HR GC/MS AXYS METHOD MLA-033 Rev 06-1 -

3. 測定結果 3-1 多環芳香族炭化水素 (PAHs) 表 3-1 図 3-1 に松葉に含まれる PAHs 濃度を示す 合計濃度は 高濃度想定地域で最も高 く 低濃度想定地域で最も低くなった ただし個別物質別にみると必ずしもこの順番ではない 表 3-1 松葉に含まれる PAHs 濃度単位 :ng/g 分析項目低濃度中濃度高濃度 想定地域想定地域想定地域 アセナフテン 11 13 4.5 アセナフチレン 3.5 6.1 5.0 アントラセン 3.6 6.7 7.3 ベンゾ (a) アントラセン 1.2 3.6 2.7 ベンゾ (a) ピレン 1.1 5.4 3.0 ベンゾ (b) フルオランテン 3.5 8.4 7.5 ベンゾ (g,h,i) ペリレン 2.1 4.0 4.5 ベンゾ (k) フルオランテン 0.80 3.7 2.6 クリセン 11 24 28 ジベンゾ (a,h) アントラセン <0.5 <0.5 <0.5 フルオランテン 25 49 66 フルオレン 23 35 39 インデノ (1,2,3-cd) ピレン 1.3 2.0 2.3 ナフタレン 74 88 87 フェナントレン 65 110 150 ピレン 16 34 36 合計 242 393 445 図 3-1 多環芳香族炭化水素 (PAHs) 濃度の合計値比較 報告下限値未満の結果は報告下限値の半分としてグラフを作成した - 2 -

これらの中で 最も毒性 ( 発がん性 ) が高いとされ 有害大気汚染物質として大気中濃度の測定が行われているベンゾ (a) ピレンについてみると 中濃度想定地域の大田区 品川区エリアが 5.4ng/g と最も高く 低濃度想定地域 ( 目黒区 世田谷区 ) の5 倍となった 下図は 平成 26 年度の東京都内の大気中ベンゾ (a) ピレン濃度を示したものである これをみると 23 区内は多摩地域より高く 沿道局と一般局との差はそれほどみられない また 多くの地点で WHO の評価指針値 (0.11ng/ m3 ) を上回っていることが分かる また 月別では 春から夏場に高くなることも明らかになっている 今回の松葉調査結果と比較すると 一般局では 大田 品川エリアに含まれる大田区東糀谷局が高濃度となっており 次ぎに 江戸川区春江町局 世田谷区世田谷局は低めのけっかとなっていることから 大気中のベンゾ (a) ピレンの測定結果と松葉による測定結果には一定の相関が見られるが 今後さらに継続的な調査にもとづく相関関係の解明が必要である 図 3-2 平成 26 年度大気中ベンゾ (a) ピレン濃度年平均値 ( 東京都内 )( 単位 :ng/m 3 ) 図 3-3 平成 26 年度大気中ベンゾ (a) ピレン月別濃度推移 ( 東京都内 )) 出典 : 東京都環境局 有害大気汚染物質測定結果より ERI 作成 - 3 -

なお 参考までに 環境省が 2016 年 3 月に発表した 平成 26 年度大気汚染状況について ( 有害大気汚染物質モニタリング調査結果報告 ) から 全国の大気中ベンゾ (a) ピレンの濃度の推移について以下に抜粋して示す 下図は 平成 12 年度 ~ 平成 26 年度までの測定局累計別濃度の推移である いずれも年平均で 一般環境測定局が最も低く 0.49ng/m 3 ~ 0.18ng/m 3 の間となっている 次いで沿道局で 0.6ng/m 3 超 ~ 0.1ng/m 3 以下の間となっている これらに比べて固定発生源周辺濃度は高い濃度で推移しており 0.6ng/m 3 超 ~ 0.1ng/m 3 超で推移している 図 3-4 平成 26 年度大気中ベンゾ (a) ピレン年平均値推移 ( 全国 ) 出典 : 環境省平成 26 年度有害大気汚染物質測定結果より抜粋 - 4 -

3-2 臭素系難燃剤 (PBDEs) 表 3-2 図 3-5 図 3-6に松葉に含まれる PBDE 濃度より同族体濃度を示す 内訳を見ると 10 臭素化ヂフェニル エーテル ( Deca-BDE) が最も多く 次いで 9 臭 素化ヂフェニル エーテル (Nona-BDE) が多く この2 つで全体の 9 割以上を占める 難燃剤業界では 自主規制により毒性の強い四臭素化および五臭素化の PBDE は使用し ておらず 10 臭素化 PBDE のみを使用していると説明しているが それを反映した結果と なっている この 10 臭素化ヂフェニル エーテル ( Deca-PBDE) は 高濃度想定地域で最 も高く低濃度想定地域で最も低くなった 圧倒的に 10 臭素化 BDE の濃度が高いことから 使用されている難燃剤が焼却されて環境中に排出されたり 直接 埃等に混じって環境中 を浮遊していることが考えられ 10 臭素化 BDE も規制の検討対象となっている しかし 本来使用されていない低臭素化ヂフェニル エーテル類も多く検出されている ことから 10 臭素化化合物が様々なプロセスを経て分解され 有害な物質に変化してい ることも示唆される 表 3-2 松葉に含まれるPBDEs 濃度 単位 :pg/g 臭素系難燃剤 低濃度 中濃度 高濃度 (PBDEs) 想定地域 想定地域 想定地域 同族体名 臭素数 読み方 Di-BDE 36.3 37.6 31.9 Di-BDE 2 ジ ( ヂ ) Tri-BDE 117 121.4 101.7 Tri-BDE 3 トリ Tetra-BDE 121 145.2 126.2 Tetra-BDE 4 テトラ Penta-BDE 34.3 43.4 39.8 Penta-BDE 5 ペンタ Hexa-BDE 10.2 13.3 13.0 Hexa-BDE 6 ヘクサ Hepta-BDE 12.46 17.3 16.3 Hepta-BDE 7 ヘプタ Octa-BDE 30.0 35.5 28.0 Octa-BDE 8 オクタ Nona-BDE 850 932 923 Nona-BDE 9 ノナ Deca-BDE 4,990 5,210 6,090 Deca-BDE 10 デカ 合計 6,201 6,556 7,370 pg/g 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 Deca-BDE Nona-BDE Octa-BDE Hepta-BDE Hexa-BDE Penta-BDE Tetra-BDE Tri-BDE Di-BDE 0 低濃度想定地域中濃度想定地域高濃度想定地域 図 3-5 臭素数別 ( 同族体別 )PBDE 合計濃度 ( 全同族体 ) - 5 -

次ぎに 臭素数ごとの同族体別の濃度割合を以下に示す 各地域とも 10 臭素化化合物が 90% 以上 9 臭素化化合物と併せるとこの二種類で 95 % 前後を占めていることが分かる 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% Deca-BDE Nona-BDE Octa-BDE Hepta-BDE Hexa-BDE Penta-BDE Tetra-BDE Tri-BDE Di-BDE 0% 低濃度想定地域中濃度想定地域高濃度想定地域 図 3-6 臭素数別 ( 同族体別 )PBDE 濃度の構成比 (%) そこで 10 臭素化と9 臭素化化合物を除き 8 臭素化化合物以下の低臭素化化合物について同様に濃度合計と構成比を以下に示す 下図より 高臭素化化合物 (10 臭素化と9 臭素化 ) を二種類除くと 中濃度想定地域 ( 大田 品川エリア ) が高濃度想定地域 ( 江東 江戸川エリア ) を上回る濃度となった pg/g 450 400 350 300 250 200 150 100 Octa-BDE Hepta-BDE Hexa-BDE Penta-BDE Tetra-BDE Tri-BDE Di-BDE 50 0 低濃度想定地域中濃度想定地域高濃度想定地域 図 3-7 10 臭素化と 9 臭素化を除いた臭素数別 ( 同族体別 )PBDE 濃度合計 - 6 -

上記について 同族体別構成比を示したものが以下の図である 3 地域の中で低濃度想定地域 ( 目 黒 世田谷エリア ) は 3 臭素化 (Tri) の割合が若干多く 4 臭素化 5 臭素化が他の 2 地域に比べ て低くなっている 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% Octa-BDE Hepta-BDE Hexa-BDE Penta-BDE Tetra-BDE Tri-BDE Di-BDE 10% 0% 低濃度想定地域中濃度想定地域高濃度想定地域 図 3-8 10 臭素化と 9 臭素化を除いた臭素数別 ( 同族体別 )PBDE 濃度構成 (%)) 濃度や割合は小さいとは言え 毒性が高いとされる 4 5 臭素化化合物を含めて低臭素化化合物 が一定の割合で存在していることが明らかとなった意味は大きい なお 異性体についての測定結果は以下の通りとなっている 今後 異性体ごとの毒性等が明らか になってくれば貴重なデータとなると思われる 今回は初めての調査であるため 結果を示すに留め る 図 3-9 異性体別測定結果 :2 臭素化化合物類 (BR2) - 7 -

図 3-10 異性体別測定結果 :3 臭素化化合物類 (BR3) 図 3-11 異性体別測定結果 :4 臭素化化合物類 (BR4) 図 3-12 異性体別測定結果 :5 臭素化化合物類 (BR5) - 8 -

図 3-13 異性体別測定結果 :6 臭素化化合物類 (BR6) 図 3-14 異性体別測定結果 :7 臭素化化合物類 (BR7) 図 3-15 異性体別測定結果 :8 臭素化化合物類 (BR8) - 9 -

図 3-16 異性体別測定結果 :9 臭素化化合物類 (BR9) 分析を行った異性体ごとの濃度を見ると 3 地域のうち 中濃度想定地域 ( 大田 品川エリア ) が高くなっている項目が多く見られた 発生源については 清掃工場の分布に加えて その他の工場事業所などからの影響も考えられることから引き続き 国内外の学術研究成果や行政による測定調査などにも注目していくこととしたい また 環境省では 近年 廃棄物のリサイクルに関連し 自動車製品に含まれる有害物質に着目した調査も行っている 以下 環境省の関連報告書から 調査目的について抜粋する 昨今 ポリ臭化ジフェニルエーテル等の化学物質を含む廃棄物のリサイクルの在り方に関して国際的に議論が進んでおり 今年開催された残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs 条約 ) 締約国会議においても POPs 条約附属書 A に掲げられた臭素系難燃剤を含む廃棄物のリサイクル防止に向けた提言 ( ) が締約国間で共有されたところである また 他の臭素系難燃剤についても 規制の必要性について検討が進められているところである 自動車については 内装材等に難燃性が求められることから 臭素系を含めた難燃剤が用いられてきた そこで 自動車リサイクルにおける有害物質対策の検討に資するため 国際的な規制動向及び臭素系難燃剤を含有する廃棄物の分別技術等について調査を行う ( 出典 : 平成 23 年度使用済自動車再資源化に係る臭素系難燃剤等対策調査業務報告書 ) 市民 消費者は こうした動向にも関心をもっていく必要がある 今回の調査がそのきっかけとな れば幸いである - 10 -