DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

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2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

第1 入間市の概要

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

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サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

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3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

針刺し切創発生時の対応

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平成 19 年 8 月 2 日厚生労働省健康局結核感染症課課長三宅智殿社団法人日本小児科学会会長別所文雄要望書 DPT, MR 等混合ワクチンの推進に関する要望 ( 既罹患者への混合ワクチン接種 ) 定期予防接種対象疾患であるジフテリア (D) 百日咳(P) 及び破傷風 (T) については かつては DPT 混合ワクチン DT 混合ワクチン またはそれぞれの単味ワクチンが定期予防接種の対象ワクチンとなっていましたが 現在では第 1 期接種としては DPT ワクチンのみが 第 2 期の接種としては DT トキソイドのみが定期予防接種の対象ワクチンと規定されています したがって 上記疾患の中で一つでも罹患したことのある者は その疾患については定期予防接種の対象者から外れることになり 法に定められた予防接種の機会を失わざるを得ない状況になっております なお破傷風罹患者は少ないものの 破傷風の場合には罹患しても免疫を獲得しないため その後にもトキソイドの接種が唯一の免疫獲得方法です さらに風疹 ( または麻疹 ) 既罹患者に対する定期予防接種対象ワクチンは 麻しん ( または風しん ) 単味ワクチンとされているところですが 事実上単味ワクチンは現場において非常に入手し難い状態になりつつあり 今般の麻疹流行時などでは 麻しん単味ワクチン接種の確保に難渋した例が多数見られました 感染症予防の重要性から予防接種対象疾患が多くなる一方 接種回数を減らすことによって被接種者の利便性の確保と接種率の向上 そして注射という行為に伴う接種時のリスク あるいは紛れ込み事故などのリスクを減らす等の理由により 世界的に混合ワクチンの開発導入が進んでおり WHO においても積極的に推奨しているところです 海外においては DPT+IPV, DPT+Hib+IPV, DPT+HB+IPV, HB+HA, MMR などを認可実用化している国が増加しています (IPV: 不活化ポリオワクチン Hib: ヘモフィルインルエンザ b 菌ワクチン HB: B 型肝炎ワクチン HA: A 型肝炎ワクチン MMR: 麻疹 ムンプス 風疹混合ワクチン ) この時に罹患歴を考慮しこれを除こうとすると 例えば 5 種類の混合ワクチンを考えても 理論上 その対象となる 5 種の疾患別にその罹患部分のワクチンを除いた混合ワクチンを用意する場合 31 種類の混合ワクチンが必要となってしまい その用意は現実的ではありません 実際に海外での接種においては 既罹患者にわざわざ当該ワクチン接種を

行う必要は通常ないという考えは当然あるものの ( 例 麻疹既罹患者にわざわざ麻疹ワクチンを接種する必要はない等 ) 罹患歴を考慮して既往者には当該ワクチンが含まれるワクチンを接種しないとすることはありません ( 参考 米国小児科学会発行 Red Book 2006, USA: p: 35 既に免疫を得ているものが そのワクチンを受けると有害であるというエビデンスは ほとんどのワクチンにおいて無い 7 歳以上に対して破傷風 ジフテリア混合ワクチンを使用する場合は DTaP より 成人用 Tdap が勧められる P: 508 百日咳罹患者の免疫の長期持続については不明であるため DTaP シリーズを既罹患者にも完了すべきことをすすめている専門化がいる Tdap: 百日咳 成人用ジフテリア 破傷風混合ワクチン ) わが国においては 現状の予防接種法施行令第 1 条の 2 において 既罹患者に対しては当該疾病に対するワクチン接種の対象としないとされていることについて 既罹患者に対するその対象ワクチンを含む混合ワクチンの接種の安全性に関する懸念から規定されたのではないか とする考えが一部にありますが 本条は制定当時単味ワクチンしかなく かつ義務接種であったかつての状況下においては 罹患によって免疫がついている者に対しワクチン接種を免除するという意味で規定されたと考えることが妥当です 混合ワクチンが接種ワクチンの中で重要な位置を占め また今後もわが国において現状以上に混合ワクチンが実用化されるであろう中 その対象となる疾患の一部に既に罹患している場合において その接種の対象から除外する積極的理由はないものと考えます なお BCG に関しては かつてのツベルクリン反応などによる既感染者のスクリーニングを廃し direct immunization を導入 コッホ現象に関する注意を別途定めています これらのことから 本学会としては それぞれに適切な免疫をより効率良く人々に獲得 してもらうためには 対象となる疾患の一部に罹患歴がある者でも その疾患に対するワ クチンを含む混合ワクチンの接種を定期予防接種の対象とされるよう 強く要望致します

既罹患者に対する混合ワクチンの接種についてその安全性に関する見解 ( 別途 ) ワクチンの副反応は 大別して 以下の 3 種類に分類できる 1 物理的な作用による副反応注射針等の物理的作用による接種行為により生じる副反応例 ) 神経損傷 迷走神経反射等 2 ワクチン主成分による副反応ワクチン主成分である免疫を付与するために使用される生物由来の抗原物質による副作用例 ) 生ワクチン病原体による感染症状等 3 添加物及び残存物質による副反応添加物 ( 保存剤 安定剤等 ) 及び製造過程での残存物質( ニワトリ胚成分 抗生物質等 ) による副作用例 ) 局所の腫脹 アレルギー反応等 ワクチンの対象疾患の一部に対し未罹患である者と既罹患である者の混合ワクチン接種時のリスク比較 1 物理的な手段による副反応接種の手段は全く変わらないため リスクは変わらない 2 ワクチン主成分による副反応予防接種は ワクチン接種により対象となる細菌 ウイルスの免疫を得ようとするものであり 接種前にすでに罹患しその免疫ができている者に対し ワクチン主成分が投与されることによる副反応は想定されない ( 年長者におけるジフテリアの過剰免疫反応を除く ) 又 未罹患者へのワクチンについてのリスクは変わらない 3 添加物及び残存物質による副反応罹患の有無により そのリスクは変わらない なお 混合ワクチンをその対象となる疾患毎に単味ワクチンを接種した場合 上記 2 3のリスクは不変であるが 1のリスクは接種回数に応じ増加するため 混合ワクチン接種により接種回数を減じるほうが リスクは少ない 以上の理由により 本学会としては 混合ワクチンを接種する場合においては すでにある感染症に罹患し 当該感染症に対する抗体を保有する者が 当該感染症に対するワクチンを含む混合ワクチンを接種した場合と 当該感染症に対するワクチンを除いたワクチンを接種した場合とで 安全性に相違はないと考える

参考 : 厚生労働科学研究新興 再興感染症研究事業 成人麻疹の実態把握と今後の麻疹対策の方向性に関する研究 (H13- 新興 -8 主任研究者 高山直秀 ) 平成 14 年度報告書 ( 陸上自衛隊における集団麻疹予防接種について 岡部信彦ら ): 平成 13 年 5 月沖縄県の陸上自衛隊の部隊で麻疹流行があり 30 歳未満の隊員 509 名が麻疹予防接種をうけた そのなかの 471 名が接種前に抗体調査を受け うち 463 名 (98%) が既接種または既罹患者であったことが確認された これらを含む接種者 476 名に接種当日から 6 週間後までの間 副反応の有無の調査が行われたが 確認された副反応は発熱 (12 人 ) 接種部腫脹(14 名 ) のみであった すでに麻疹 風疹に免疫をもっている米国大学生及びオーストラリアの小 中学校生徒に麻疹ワクチンまたは MMR ワクチンを集団接種した複数の報告でも 発熱 発疹など通常期待される以上の副反応はみられず その頻度は 1 回目の接種で期待されるより少ないことが確認されている (Chen et al. Vaccine 1991 Adverse events following measles-mumps-rubella and measles vaccinations in college students ほか ) これまでのわが国での予防接種事故救済のうち 既罹患者に対して接種したことによる 救済例は見当たらない 海外でのキャッチアップキャンペーンなどにおいて 既罹患者への接種が著しい副反応 をきたしたとの報告に接したことがない

百日咳罹患児に対する DTP ワクチン接種後の有害事象 有害事象 発熱 局所反応 臨床的百日咳 DTP ワクチン接種前 PT 抗体陽性児 (n = 2) 0 0 PT 抗体陰性児 (n = 10) 0 1 検査で確定した百日咳患児 DTP ワクチン接種前 PT 抗体陽性児 (n = 4) 0 0 PT 抗体陰性児 (n = 3) 0 0 岡田賢司 ( 未発表データ )

MR 混合ワクチンの安全性 - 抗体陽性者への接種後の副反応 - 副反応 第 2 期接種前抗体陽性児 (n = 131) 全身反応 発熱 #1 4.6% 発疹 #2 5.3% 局所反応 #3 発赤 13.6 ~ 18.6% 腫脹 8.0 ~ 13.6% #1 ワクチン接種 4~12 日後の因果関係が否定できない発熱 #2 ワクチン接種 4~12 日後の因果関係が否定できない発疹 #3 ワクチン接種 3 日以内に出現した反応 厚生労働科学研究新興 再興感染症研究事業 麻疹 風疹 (MR) 混合ワクチンの接種 効果 安全性 接種率に関する研究 ( 主任研究者加藤達夫 ) 平成 18 年度報告書 ( 岡田 賢司 ) に一部追加

麻疹罹患児への MR ワクチン接種 既往歴 麻しん EIA 抗体価 風しん EIA 抗体価 関連ある 前 後 前 後 有害事象 1 麻しん 43.9 51.9 < 2 23.4 なし 2 麻しん 80.8 142.0 2.1 10.5 なし 3 麻しん 56.4 70.9 < 2 24.8 なし 厚生労働科学研究新興 再興感染症研究事業 麻疹 風疹 (MR) 混合ワクチンの接種効果 安全性 接種率に関する研究 ( 主任研究者加藤達夫 ) 平成 18 年度報告書に追加