SIS-AFM 測定の概略手順について Code:0903-QAI-002/1012-Rev.2 Rev.2 2010 年 12 月発行エスアイアイ ナノテクノロジー株式会社 Copyright(C) SII NanoTechnology Inc., 2010 はじめに本書では NanoNavi II/IIs ステーションと下記のいずれかのユニットの組み合わせによるシステムにおいて SIS-AFM(Sampling Intelligent Scan AFM) 測定を行うための操作手順の概略を説明しています 対象ユニット : S-image Nanocute( 光てこ方式 ) SPA-400 E-sweep SPA-300HV L-trace II 1. NanoNavi IIs ステーションは Nanocute 専用です 2. Nanocute では 光てこ方式の選択 ( または機能拡張が必要です ) SIS-AFM の機能は AFM ソフトウェアに組み込まれます このため 本書は下表に示す AFM 用 のクイックガイドを追補する形で作成されています 必ず併せてお使い下さい 使用ユニット クイックガイドの番号 S-image Q-161 Nanocute Q-201 SPA-400 Q-61 E-sweep Q-1XX(Q-111) SPA-300HV Q-11 L-trace II Q-191 また本書では SIS-AFM の動作の概要についても記載しています (p.13~15) 併せてご覧下さい SIS-AFM の測定手順使用するユニットによって 測定手順の内容が異なります L-trace II のときは p.2~4 S-image Nanocute( 光てこ方式 ) SPA-400 SPA-300HV のときは p.5~8 E-sweep のときは p.9~12 をそれぞれお読み下さい SIS-AFM-1
1. L-trace II のときこの項は イージーメニューを使用する前提で記載されています イージーメニューを使用すると 主な測定パラメータは自動設定されます (1) システムを起動し 試料とカンチレバーをユニットにセットします 作業の際は クイックガイド Q-191 の 1. システムを起動します ~ 4. 試料をセットします の各項を参照して下さい 2. 初期設定を行います の手順 (2) で 電流像を測定する場合は Current(Nano) を 形状像のみ測定する場合は AFM を選択して下さい (2) 測定パラメータを設定します 作業の際は クイックガイド Q-191 の 5. 測定条件を設定します を参照して下さい (3) よろしければ クイックガイド Q-191 の 6. イメージを測定します の アプローチ の項に従って測定領域にアプローチして下さい なお アプローチの前に [ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) の [SIS モード ] リストボックスで On を選択しておいて下さい( 次頁の図参照 ) 1. アプローチを マニュアル で行った場合は アプローチした後に SIS モードを On に切り換えて下さい 2. [SIS モード ] リストボックスで On を選択すると トレース測定 および アクティブトレース測定 は行えません [ 走査モード ] リストボックスで選択はできますが 測定スタート時にメッセージではじかれます (4)[ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) のパラメータを設定します ( 次頁の図参照 ) 退避量 10nm( 標準値 ) 退避速度 16μm/sec 前後水平移動中に力を検知した時の 探針 試料間を離す距離と速度を設定します なお 退避量の適切な値は 探針が試料から引き離される位置までの距離に相当します この距離はフォースカーブを測定するとわかります 右図の例では 35nm 程度になります 保持時間 電流像を測定するとき :1.0msec( 標準値 ) 形状像のみ測定するとき :0.0msec 探針と試料の接触を保持する時間を設定します 35nm 程度 探針が引き離される位置 オートリニアライズ CL On( 推奨 ) L-trace II はクローズドループスキャナ (Accurate スキャナ ) を標準装備しているので CL On を選択すると 計測誤差を小さくすることができます SIS-AFM-2
[ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) その他のパラメータについて 走査周波数 SIS-AFM では この値は水平方向のみの移動速度を定めます このため 設定値が同じでも 実際の移動速度は DFM 時より遅くなります また SIS モードの原理上 移動速度は一定にはなりません これらの理由で SIS-AFM では AFM 時よりリニアライズの精度が低下する場合があります 測定精度が必要な場合は [ オートリニアライズ ] リストボックスで CL On を選択して測定することをおすすめします ( 上記参照 ) X データ数 /Y データ数原理上 データ点数が増えるとその分測定時間も長くなります すなわち Y データ数だけでなく X データ数も測定時間に影響します バイアス電圧( 電流像測定時 ) 試料に応じて設定して下さい 通常は 初めは低めに設定し 電流が流れ始めるまで少しずつ上げていきます SIS-AFM-3
下図で 各パラメータと SIS-AFM の動作の関係を示します 探針 退避速度 走査周波数 I ゲイン 退避量 試料表面 保持時間 SIS-AFM の動作とパラメータの関係 (5) よろしければ クイックガイド Q-191 の 6. イメージを測定します の イメージの測定 の項に従って測定し 必要なら イメージのバッチ処理 の項に従ってバッチ処理して下さい 測定時の注意 1. たわみ量が大きすぎると 動作が不安定になり 測定が正しく行えなくなる場合があります ( 探針と試料が接しなくなります ) このときは たわみ量を小さくして下さい ただし 小さくすると 探針を試料により押し付けることになるので 探針が磨耗しやすくなります 2. イメージに突起状のノイズが乗る場合は 退避量および退避速度を大きくして下さい (6) 測定されたイメージデータを保存するときは クイックガイド Q-191 の 7. 測定イメージを保存します の項に従って保存して下さい (7) 終了するときは クイックガイド Q-191 の 8. 終了します の項に従って作業して下さい SIS-AFM-4
2. S-image/Nanocute( 光てこ方式 )/SPA-400/SPA-300HV のとき (1) システムを起動し 試料とカンチレバーをユニットにセットします 作業の際は ユニットに合 わせて 以下に示す各クイックガイドの項を参照して下さい 使用ユニット クイックガイドの番号 参照する項目 S-image Q-161 1. システムを起動します ~ 3. レーザー光軸を調整します Nanocute Q-201 1. システムを起動します ~ 3. レーザー光軸を調整します SPA-400 Q-61 1. システムを起動します ~ 3. レーザー光軸を調整します SPA-300HV Q-11 1. 配線を確認します ~ 5. レーザー光軸を調整します (2) よろしければ 各クイックガイドの 測定領域にアプローチします に従って測定領域にアプローチして下さい なお アプローチの前に 次の各パラメータを設定しておいて下さい ( 次頁の図参照 ) [ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) のパラメータ I ゲイン 0.1( 標準値 ) SIS-AFM では この値によって探針 試料間を近づける速度が定まります 値を大きくすると 速くなります ただし 大きくし過ぎるとイメージに突起状のノイズが乗ることがあります P ゲイン 0.05 以下 A ゲイン S ゲイン ゼロ A ゲインおよび S ゲインは必ずゼロにして下さい SIS モード On 1. On を選択すると トレース測定 および アクティブトレース測定 は行えません [ 走査モード ] リストボックスで選択はできますが 測定スタート時にメッセージではじかれます 2. アプローチを マニュアル で行う場合は Off を選択します たわみ量を適切な値に設定した上でアプローチし その後 On に切り換えて下さい (3) 測定パラメータを設定します 設定の仕方および下記にないパラメータの設定については各クイックガイドの イメージを測定します を参照して下さい 走査周波数 走査エリアが 20μm 以下のとき 1Hz 20μm 以上のとき 0.5Hz( 標準値 ) SIS-AFM では この値は水平方向のみの移動速度を定めます このため 設定値が同じでも 実際の移動速度は AFM 時より遅くなります また SIS モードの原理上 移動速度は一定にはなりません これらの理由で SIS-AFM では AFM 時よりリニアライズの精度が低下する場合があります 測定精度が必要な場合は クローズドループスキャナ ( オプション ) を使用し [ オートリニアライズ ] リストボックスで CL On を選択して測定することをおすすめします ( 後述の オートリニアライズ の項参照 ) SIS-AFM-5
退避量 10nm( 標準値 ) 退避速度 16μm/sec 前後水平移動中に力を検知した時の 探針 試料間を離す距離と速度を設定します なお 退避量の適切な値は 探針が試料から引き離される位置までの距離に相当します この距離はフォースカーブを測定するとわかります 右図の例では 35nm 程度になります 保持時間 電流像を測定するとき :1.0msec( 標準値 ) 形状像のみ測定するとき :0.0msec 探針と試料の接触を保持する時間を設定します 35nm 程度 探針が引き離される位置 [ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) ( 以下次頁 ) SIS-AFM-6
オートリニアライズ On または CL On ( 推奨 CL On はクローズドループスキャナ使用時のみ) S-image/Nanocute/SPA-400 でクローズドループスキャナ ( オプション ) を使用しているときは CL On を選択すると 計測誤差を小さくすることができます S-image/SPA-400 では クローズドループスキャナの取扱説明書参照 Nanocute では ハードウェアガイド M-11 参照 その他のパラメータについて X データ数 /Y データ数原理上 データ点数が増えるとその分測定時間も長くなります すなわち Y データ数だけでなく X データ数も測定時間に影響します バイアス電圧( 電流像測定時 ) 試料に応じて設定して下さい 通常は 初めは低めに設定し 電流が流れ始めるまで少しずつ上げていきます 下図で 各パラメータと SIS-AFM の動作の関係を示します 探針 退避速度 走査周波数 I ゲイン 退避量 試料表面 保持時間 SIS-AFM の動作とパラメータの関係 ( 以下次頁 ) SIS-AFM-7
(4) よろしければ 各クイックガイドの イメージを測定します の項に従って測定して下さい 測定時の注意 1. たわみ量が大きすぎると 動作が不安定になり 測定が正しく行えなくなる場合があります ( 探針と試料が接しなくなります ) このときは たわみ量を小さくして下さい ただし 小さくすると 探針を試料により押し付けることになるので 探針が磨耗しやすくなります 2. イメージに突起状のノイズが乗る場合は 退避量および退避速度を大きくして下さい (5) 測定されたイメージデータを保存するときは 各クイックガイドの 測定イメージを保存します の項に従って保存して下さい (6) 終了するときは 各クイックガイドの 終了します の項に従って作業して下さい SIS-AFM-8
3. E-sweep のとき (1) システムを起動し 試料とカンチレバーをユニットにセットします 作業の際は E-sweep のクイックガイド Q-1XX(Q-111) の 1. システムを起動します ~ 5. レーザー光軸を調整します の項を参照して下さい (2) よろしければ 各クイックガイドの 測定領域にアプローチします に従って測定領域にアプローチします 作業の際は E-sweep のクイックガイド Q-1XX(Q-111) の 6. イメージを測定します AFM 測定 の 1. アプローチ条件を設定します 2. アプローチします の項を参照して下さい なお アプローチの前に 次の各パラメータを設定しておいて下さい ( 次頁の図参照 ) [ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) のパラメータ I ゲイン 0.1( 標準値 ) SIS-AFM では この値によって探針 試料間を近づける速度が定まります 値を大きくすると 速くなります ただし 大きくし過ぎるとイメージに突起状のノイズが乗ることがあります P ゲイン 0.05 以下 A ゲイン S ゲイン ゼロ A ゲインおよび S ゲインは必ずゼロにして下さい SIS モード On 1. On を選択すると トレース測定 および アクティブトレース測定 は行えません [ 走査モード ] リストボックスで選択はできますが 測定スタート時にメッセージではじかれます 2. アプローチを マニュアル で行う場合は Off を選択します たわみ量を適切な値に設定した上でアプローチし その後 On に切り換えて下さい (3) 測定パラメータを設定します 設定の仕方および下記にないパラメータの設定については E-sweep のクイックガイド Q-1XX(Q-111) の 6. イメージを測定します AFM 測定 の 3. イメージ測定条件を設定します の項を参照して下さい 走査周波数 走査エリアが 20μm 以下のとき 1Hz 20μm 以上のとき 0.5Hz( 標準値 ) SIS-AFM では この値は水平方向のみの移動速度を定めます このため 設定値が同じでも 実際の移動速度は AFM 時より遅くなります また SIS モードの原理上 移動速度は一定にはなりません これらの理由で SIS-AFM では AFM 時よりリニアライズの精度が低下する場合があります 測定精度が必要な場合は クローズドループステージ ( オプション ) を使用することをおすすめします ( 以下次頁 ) SIS-AFM-9
退避量 10nm( 標準値 ) 退避速度 16μm/sec 前後水平移動中に力を検知した時の 探針 試料間を離す距離と速度を設定します なお 退避量の適切な値は 探針が試料から引き離される位置までの距離に相当します この距離はフォースカーブを測定するとわかります 右図の例では 35nm 程度になります 保持時間 電流像を測定するとき :1.0msec( 標準値 ) 形状像のみ測定するとき :0.0msec 探針と試料の接触を保持する時間を設定します 35nm 程度 探針が引き離される位置 [ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) ( 以下次頁 ) SIS-AFM-10
オートリニアライズ On( 推奨 クローズドループステージ使用時は必ず Off ) クローズドループステージ ( オプション ) を使用しているときは 必ず Off にして下さい クローズドループ制御は専用のステージコントローラから行います E-sweep 用クローズドループステージの取扱説明書参照 その他のパラメータについて X データ数 /Y データ数原理上 データ点数が増えるとその分測定時間も長くなります すなわち Y データ数だけでなく X データ数も測定時間に影響します バイアス電圧( 電流像測定時 ) 試料に応じて設定して下さい 通常は 初めは低めに設定し 電流が流れ始めるまで少しずつ上げていきます 下図で 各パラメータと SIS-AFM の動作の関係を示します 探針 退避速度 走査周波数 I ゲイン 退避量 試料表面 保持時間 SIS-AFM の動作とパラメータの関係 ( 以下次頁 ) SIS-AFM-11
(4) よろしければ E-sweep のクイックガイド Q-1XX(Q-112) の 6. イメージを測定します AFM 測定 の 4. 測定します の項に従って測定して下さい 測定時の注意 1. たわみ量が大きすぎると 動作が不安定になり 測定が正しく行えなくなる場合があります ( 探針と試料が接しなくなります ) このときは たわみ量を小さくして下さい ただし 小さくすると 探針を試料により押し付けることになるので 探針が磨耗しやすくなります 2. イメージに突起状のノイズが乗る場合は 退避量および退避速度を大きくして下さい (5) 測定されたイメージデータを保存するときは E-sweep のクイックガイド Q-1XX の 7. 測定イメージを保存します に従って保存して下さい (6) 終了するときは E-sweep のクイックガイド Q-1XX の 8. 終了します の項に従って作業して下さい SIS-AFM-12
SIS-AFM の動作の概要 SIS-AFM(Sampling Intelligent Scan AFM) では 自由端に探針を有するカンチレバーを 毎に試料に対して上下させます ( 図 1) そして 探針が試料表面に近接または軽く接触してたわみ量が所定量まで減衰した時 ( 保持時間が設定されている場合は その時間分接触を保持してから ) にデータを取得します このように動作させることにより SIS-AFM には次のような効果があります 毎に探針を上下方向に移動させるので やわらかい試料や凹凸の大きな試料をより安定に測定できる ( 保持時間を設定 ( 例 1.0mesc) にしたとき ( 主に電流像測定時 )) 保持時間だけ待つことにより接触状態が安定してから信号を測定するので 電流像等を安定に測定できる 探針 走査周波数 I ゲイン 退避量 試料表面 保持時間 図 1 SIS-AFM における探針の基本動作 ( 以下次頁 ) SIS-AFM-13
また 試料表面の水膜の影響をより確実に排除するため で探針を試料に対して上下させるとき 最初に一度探針を引き上げてから試料に接近させる データ取得後 次のに移動する前に探針を引き上げるという動作を行います ( 図 2) Z 測定 次のへの移動 前のからの移動 t 図 2 での探針の動作 ( 以下次頁 ) SIS-AFM-14
さらに 探針の上下動作量を少なくし 測定時間の増加を抑えるため 1 つのから次のへの移動中に探針と試料との接触を感知したら 探針を引き上げる方向のみ動作する片方向サーボにより探針を引き上げて退避させた後 移動を続行します 図 3 では 上向きの矢印 ( ) で示した位置でこの動作が行われています なお 退避速度は [ 測定条件パネル ] ダイアログ ( 詳細表示 ) で設定します 退避速度 試料表面 図 3 片方向サーボによる探針の退避動作 SIS-AFM-15