貝毒のリスク管理の見直し 平成 27 年 6 月 農林水産省消費 安全局畜水産安全管理課 1 目次 Ⅰ 貝毒とは Ⅱ 貝毒をめぐる国際的な動き Ⅲ 下痢性貝毒の規制見直し Ⅳ 生産段階における貝毒のリスク管理 2
Ⅰ 貝毒とは ホタテガイやカキなどの貝類が毒を持ったプランクトンを補食すると 体内 ( 特に中腸腺 ) に毒が蓄積する 毒が蓄積した貝類をヒトが食べると 中毒症状を引き起こすことがあり 原因毒及びその症状により麻痺性貝毒 下痢性貝毒等に分けられる 麻痺性貝毒の主な症状 : 唇 顔面 四肢末端のしびれ感 めまいなど 下痢性貝毒の主な症状 : 下痢 吐き気 嘔吐 腹痛など 毒は熱に安定で 一般的な調理加熱では分解しない 3 貝毒のリスク管理に関する取組みの経緯 我が国では 昭和 50 年代に下痢性貝毒が発見され 多くの食中毒事例を確認 ( 二枚貝の主要産地では 麻痺性貝毒を頻繁に確認 ) 厚生労働省は 食品衛生法に基づき 麻痺性及び下痢性貝毒に関する規制値を設定 農林水産省は 規制値を超える貝類が出荷されないよう 生産海域における監視 出荷規制等を内容とする通知を発出 各都道府県及び漁業関係者が連携してリスク管理を進めてきた結果 毒化した貝が流通することはほとんどなかったが 一昨年度 25 年ぶりに麻痺性貝毒が発生した海域があるなど 毒化状況の変化に対応したリスク管理を検討する必要 4
貝毒のリスク管理体制の概要 規制値以下の貝類が出荷されるよう 都道府県において 出荷前に貝毒検査を行い 規制値超過の場合には出荷規制する監視体制を構築 有毒プランクトン 規制値 検査法監視を設定 通知 貝毒検査 有毒プランクトン監視 貝毒検査 厚労省 有毒プランクトン 貝毒検査 都道府県 / 生産者 貝毒発生の予察のため 原因プランクトンの監視 貝毒検査 農水省 監視生産段階のリスク管理方法を通知 規制値超過 規制値以下 出荷の自主規制 原則 3 週連続規制値以下で再開 認定処理場又は指定処理場において中腸腺の除去をしたもののみ 出荷 都道府県等による流通品の抜取検査 ( 輸入品も含めた流通品を監視 ) 5 ( 参考 ) 過去 年間の出荷の自主規制 1. 出荷を自主規制した道府県数 年次 H17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 麻痺性貝毒 11 12 11 15 11 11 9 下痢性貝毒 3 5 2 7 5 6 5 4 6 6 2. 出荷を自主規制の件数 ( ) 自主規制件数 40 30 20 0 37 麻痺性貝毒下痢性貝毒 37 26 29 32 33 20 21 25 18 18 8 4 6 5 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 ( ) 各生産海域における貝毒検査において 規制値の超過が確認され 出荷規制された件数 6
( 件数 ) 40 35 30 ( 参考 ) 過去 30 年間の出荷の自主規制 ~ 麻痺性貝毒 ~ 北海道 東北 北関東 東海 関西 中国 四国 九州 25 20 15 5 0 H26 H25 H24 H23 H22 H21 H20 H19 H18 H17 H16 H15 H H13 H12 H11 H H9 H8 H7 H6 H5 H4 H3 H2 H1 S63 S62 S61 S60 S59 S58 S57 S56 S55 S54 S53 ( 年 ) 7 ( 件数 ) 40 35 ( 参考 ) 過去 30 年間の出荷の自主規制 ~ 下痢性貝毒 ~ 北海道 東北 北関東 東海 関西 中国 四国 30 25 20 15 5 0 H26 H25 H24 H23 H22 H21 H20 H19 H18 H17 H16 H15 H H13 H12 H11 H H9 H8 H7 H6 H5 H4 H3 H2 H1 S63 S62 S61 S60 S59 S58 S57 S56 S55 S54 S53 ( 年 ) 8
Ⅱ 貝毒をめぐる国際的な動き 近年 下痢性貝毒の検査法について 国際的に より高感度 高精度な機器分析法の導入が進められている 貝毒の基準値 CODEX 委員会 ( 1) は 2008 年に貝毒の毒素群ごとの基準値を設定 毒素群の名称 最大基準値 貝毒の検査法 CODEX 委員会は 20 年に各毒素群の分析法の性能基準を採択 サキシトキシン (STX) 群 ( 麻痺性貝毒 ) オカダ酸 (OA) 群 ( 下痢性貝毒 ) ドウモイ酸 (DA) 群 ( 記憶喪失性貝毒 ) ブレベトキシン (BTX) 群 ( 神経性貝毒 ) アザスピロ酸 (AZP) 群 ( 2) 0.8 mg STX 当量 /kg 0.16 mg OA 当量 /kg 20 mg DA/kg 200 MU/kg 0.16 mg/kg (CODEX STAN 292 2008Ⅰ 5.2) 麻痺性貝毒についてはマウス試験が行われているが 下痢性貝毒については 我が国の他 米国 EU 豪州等が機器分析法に移行 1 Codex 委員会とは 国際食品規格を策定する国際的な政府間機関 2 アザスピロ酸による中毒症状は 下痢性貝毒によく似る 9 マウス試験法と機器分析法の比較 現場では 下痢性貝毒の検査法が マウス試験法から機器分析法に移行することによって検査時間が短くなる! 検査法 利点 欠点 マウス試験法 ( 腹腔内投与 ) マウスに対する複数の毒成分を一括で検出 高価な分析機器は不要 毒成分ごとの測定ができない 使用するマウスにより 結果のばらつきがある 検出感度が低い 機器分析法 毒成分ごとの定量が可能 検出感度が高い 検査時間が短い 作業の自動化が可能 高価な分析機器が必要 貝の毒成分の同定 定量には標準品が必要
Ⅲ 下痢性貝毒の規制見直し 厚生労働省は 食品健康影響評価等を踏まえ 平成 27 年 3 月 6 日付けで以下の通り通知 下痢性貝毒の規制値は 可食部当たり 0.16mgOA 当量 /kg 下痢性貝毒の検査法は 提示する性能基準を満たすこと (LC MS/MS を用いた検査法を例示 ) 麻痺性貝毒の規制値 (4MU/g) と公定法であるマウス試験法については 変更はなし なお 下痢性貝毒の検査法については 一定期間 マウス試験法の実施も認められる 11 Ⅳ 生産段階における貝毒のリスク管理 平成 27 年 3 月 6 日に通知の枠組を体系的に整理 旧通知 水産庁長官通知 (S54.5) 貝毒の監視 ( 対象種 検査法等 ) 規制値超過時は出荷を自主規制 加工処理した規制値以下の製品は出荷可能 水産庁次長通知 (S54.5 H25.12 最終改正 ) 生産海域区分 3 週連続規制以下で出荷を再開 ホタテガイの加工処理場の認定又は指定し 処理要領を作成 搬送票の添付と安全証紙の貼付 水産庁部長 課長通知 (8 本 ) 対象種はホタテガイ以外も含む 新たに毒が確認された種への注意 新通知 消費 安全局長通知 貝毒の監視 ( 対象種 生産海域区分 検査法等 ) 出荷の自主規制と再開 加工処理した規制値以下の製品は出荷可能 監視を通じた科学的知見の収集 畜水産安全管理課長通知 ホタテガイの加工処理場の認定又は指定 搬送票の添付 安全証紙の貼付 ガイドライン ( 畜水産安全管理課長通知 ) 通知の内容を的確に実施するために必要な知見や留意点等を整理 12
生産段階における貝毒のリスク管理の流れ 都道府県において 各生産海域の貝毒監視体制を構築 プランクトンの発生 密度上昇等 貝毒が一定量を超えた場合 規制値を超えた場合 3 週連続規制値以下 貝毒発生の予察 貝毒検査 ( 週 1 回 ) 監視強化 自主規制 出荷の再開 規制値以下の場合 出荷 有毒部位の除去等の処理 ( ホタテガイ ) 処理場の認定又は指定 処理要領の作成 搬送票の添付 ( 周年 ) 安全証紙の貼付 ( 周年 ) 出荷 海洋環境調査 ( 水温 塩分等 ) プランクトン調査 科学的知見の蓄積 13 監視の対象種 新通知の概要 漁業 養殖業 遊漁の対象となっている二枚貝等から貝毒の監視の対象種を選定する 監視を行う生産海域の設定二枚貝等の生産状況 貝毒や原因プランクトンの発生状況などを勘案し 貝毒の監視を行う生産海域を設定する 貝毒の監視方法生産海域で調査点を定め 貝毒が蓄積するおそれのある期間は少なくとも週 1 回 二枚貝等の検査を行い 貝毒の発生状況を監視する 検査法 貝毒の監視 麻痺性貝毒は従来のマウス試験法又はそれと同等以上の方法とする 下痢性貝毒は厚労省の示す性能基準を満たす方法( 機器分析法 ) ( ) とする スクリーニング法の導入も可能とする ( ) 当面の間 従来のマウス試験法での検査も認められている
監視の強化 貝毒の監視の結果 可食部の毒量が一定以上 ( 麻痺性貝毒は2MU/g ( 1) 下痢性貝毒は0.05mg/kg) を超えた場合は 調査点の増加や検査間隔の短縮等を行い 監視を強化する 出荷の自主規制 二枚貝等における可食部の毒量が規制値 ( 麻痺性貝毒は 4MU/g 下痢性貝毒は 0.16mg/kg ( 2) ) を超えた場合には 当該生産海域における二枚貝等の出荷の自主 規制を行う 出荷の自主規制解除 貝毒の監視強化及び出荷の自主規制 ( 1) 麻痺性貝毒の 1MU( マウスユニット ) は マウスが 15 分で死亡する毒力 ( 2) 当面の間 従来のマウス試験とその規制値 (0.05MU/g) も認められている 下痢性貝毒の 1MU は マウスが 24 時間で死亡する毒力 原則として3 週連続の規制値以下で出荷を再開できる 別途 科学的知見等に基づき再開する場合は 十分注意する 15 貝毒が蓄積する毒部位の除去等の処理 貝毒が中腸腺等に偏在する二枚貝等については 出荷の自主規制期間中 であっても 中腸腺の除去を適切に行い 可食部に含まれる毒量が規制値 以下となる場合には 十分な管理措置を講じて出荷することができる 科学的知見の収集 都道府県は 貝毒の発生状況に応じた管理措置の見直しのため 貝毒の 監視等を通じて科学的知見を収集 蓄積する 16
これまでの取組 今後の対応方向 新しい規制値 検査法の導入 新たな通知 ガイドラインの発出 平成 26 年度 ~28 年度に実施しているレギュラトリー新技術開発事業において必要なデータを収集し 今後 ガイドライン等に反映 生産海域において より効果的な管理措置を実施 貝毒の発生状況や生産実態に応じて より合理的な管理措置を選択 機器分析法等の活用により 貝毒によるリスクをより一層低減 安全な二枚貝等の出荷 流通の確保 17 ( 参考 ) レギュラトリーサイエンス新技術開発事業 貝毒リスク管理措置の見直しに向けた研究 1. 実施期間平成 26 年度 ~28 年度 2. 事業内容 1 麻痺性及び下痢性貝毒を対象として これまでの科学的知見を収集 整理するとともに 複数の都道府県の沿岸域においてフィールド調査を行い 貝類中の毒量と原因プランクトン密度との相関 貝類体内での貝毒の分布や消長 同一海域の個体ごとの毒量のばらつき等の科学的データを収集 分析 2 上記 1 で得られた科学的知見に基づき より合理的 効果的なリスク管理措置を検討 各県には 引き続きご協力をお願いいたします 得られた成果については 広く情報提供していく予定です 18