LNGチェーンにおける事業者の変化とわが国の課題に関する調査

世界の LNG 市場の現状と展望 2007 年 8 月 28 日 戦略 産業ユニット石油 ガス戦略グループ森川哲男 1

報告の構成 需給動向 - 輸出入量 - 需給バランス - 需給バランス - アジアの LNG 需給バランスを見る上でのポイント 価格動向 市場動向 2

1. 需給動向 (1) 輸出入量 100 万トン 180 国別輸出量 100 万トン 180 国別輸入量 160 160 140 120 100 80 60 40 20 トリニダード トバゴ アルジェリア インドネシア カタール オーストラリア マレーシア 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 エジプトナイジェリア オマーン UAE ブルネイ 140 120 100 80 60 40 20 ( 出所 )GIIGNL 2000 年以降で年率 8% の伸び率 存在感を増す大西洋市場 フランス アメリカ 日本 韓国 スペイン 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 インド 台湾 3

1. 需給動向 (2) 需要見通し オアセジアアニ ア 欧州 北中南米 ( 万トン ) 2006 年 2010 年 2020 年 2030 年 輸入量 低需要ケース高需要ケース低需要ケース高需要ケース低需要ケース高需要ケース 日本 6,219 6,000 6,400 6,300 7,300 6,400 7,600 韓国 2,561 2,700 2,900 3,400 4,000 3,800 4,600 台湾 771 1,000 1,200 1,400 1,600 1,500 1,800 インド 616 800 1,000 1,200 1,500 1,800 2,800 中国 75 600 900 1,000 1,600 2,000 3,300 他 - - - 800 1,000 1,000 1,500 小計 10,242 11,100 12,400 14,100 17,000 16,500 21,600 フランス 1,096 1,200 1,400 1,400 1,600 1,500 2,000 イタリア 239 600 800 900 1,300 1,200 1,800 スペイン 1,837 2,000 2,200 2,400 2,800 2,800 3,500 イギリス 255 500 600 1,300 1,800 2,200 3,000 他 876 900 1,100 1,300 1,500 1,600 2,000 小計 4,303 5,200 6,100 7,300 9,000 9,300 12,300 アメリカ 1,198 2,900 3,400 7,000 8,400 9,000 12,000 カナダ - 50 100 1,000 1,200 1,300 1,600 メキシコ 59 350 450 800 1,100 1,000 1,400 他 78 200 200 300 900 800 1,300 小計 1,335 3,500 4,150 9,100 11,600 12,100 16,300 合計 15,880 19,800 22,650 30,500 37,600 37,900 50,200 ( 出所 ) 日本エネルギー経済研究所 アジア 太平洋市場及び大西洋市場の天然ガス需給動向調査 2030 年にかけて年率 4~5% の伸び率 2020 年にはアメリカの輸入量が世界一の可能性 4

5 IEEJ: 2007 年 8 月掲載 1. 需給見通し (3) LNG 需給バランス ( 世界 ) ( 出所 ) 日本エネルギー経済研究所 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 20052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024202520262027202820292030事業化検討中プロジェクト既存 SPA HOA 締結済プロジェクト高需要ケース低需要ケース ( 万トン ) 供給ポテンシャルは豊富にあるが 新規プロジェクトがスムーズに立ち上がることが重要

6 IEEJ: 2007 年 8 月掲載 1. 需給見通し (3) LNG 需給バランス ( 欧米 ) ( 出所 ) 日本エネルギー経済研究所 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 20052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024202520262027202820292030事業化検討中プロジェクト既存 SPA HOA 締結済プロジェクト高需要ケース低需要ケース ( 万トン ) 2008 年以降急激に増加する供給能力 増加能力の大部分が売主が自社でマーケティングする LNG

7 IEEJ: 2007 年 8 月掲載 1. 需給見通し (3) LNG 需給バランス ( アジア ) ( 出所 ) 日本エネルギー経済研究所 アジア 太平洋市場及び大西洋市場の天然ガス需給動向調査 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 20052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024202520262027202820292030欧米向け売主自社マーケティング契約事業化検討中プロジェクト既存 SPA HOA 締結済プロジェクト高需要ケース低需要ケース ( 万トン ) アジア向け既存 SPA HOA 締結済プロジェクトだけでは 2012 年頃まで需給がタイト 欧米向け契約がどの程度流入するかがキーポイント

1. 需給見通し (4) アジアの LNG 需給を見る上でのポイント 短中期的要因 - インドネシアの契約更改問題 - 米英市場の需給 - カタールの動き - 原子力発電所稼働状況 - 冷暖房度日 中長期的要因 - 経済成長 -LNG プロジェクトコストの上昇 - 原油価格 - 排出権取引制度枠組み 8

1. 需給見通し (4) アジアの LNG 需給を見る上でのポイントインドネシアの契約更改問題 仕向地プロジェクト名契約満了年 契約量 ( 万トン / 年 ) 契約相手 契約更新可能性 日本 韓国 台湾 Arun II 2009 96 東北電力 (83) 東京電力 (13) 小 (Arun)/Bontang (73 年契約 ) 2010 845 関西電力 (257) 中部電力 (215) 九州電力 (156) 大阪ガス (130) 新日鉄 (62) 東邦ガス (25) 300~600 万トンに削減? Bontang 中部電力 (168) 関西電力 (88) 2011 357 (Badak 増量 ) 東邦ガス (56) 大阪ガス (45) Bontang 大阪ガス (126.5) 東京ガス (92) 2013 230 (Badak IV) 東邦ガス (11.5) Bontang 広島ガス (21) 大阪ガス (11) 2015 40 (MCGC) 日本ガス (8) Arun III 2007 230 KOGAS 小 Arun/Bontang (Korea II) 2013 205 KOGAS Bontang (Badak Ⅴ) 2017 100 KOGAS Bontang (Badak III) 2009 165 CPC 小 Bontang (Badak VI) 2017 184 CPC 主要供給国であるインドネシアの輸出量削減は 短中期的需給バランスの撹乱要因 9

20082016201820202022202420262028006欧米市場 ( アメリカ含む ) 向け契約量 030IEEJ: 2007 年 8 月掲載 1. 需給見通し (4) アジアの LNG 需給を見る上でのポイント 米英市場の需給 米国市場 - ( 万トン ) 14,000 12,000 2アメリカ向け契約量 10,000 高需要ケース 8,000 低需要ケース 6,000 4,000 2,000 0 2010201220142( 出所 ) 日本エネルギー経済研究所 短期的に需要見通しを超える契約量 Henry Hub 価格のレベルによっては一定量の転売が 10

20082016201820202022202420262028006欧米市場 ( イギリス含む ) 向け契約量 030IEEJ: 2007 年 8 月掲載 1. 需給見通し (4) アジアの LNG 需給を見る上でのポイント米英市場の需給 英国市場 - ( 万トン ) 3,500 3,000 2イギリス向け契約量 2,500 高需要ケース 2,000 低需要ケース 1,500 1,000 500 0 2010201220142( 出所 ) 日本エネルギー経済研究所 2012 年頃までは供給過多の状況が継続 相対的に低いNBP 価格 他市場へLNGが転売 11

1. 需給見通し (4) アジアの LNG 需給を見る上でのポイントカタールの動き プロジェクト名 (Train 名 ) 液化能力 ( 万トン / 年 ) 生産開始 ( 年 ) 出資者 予定仕向地 RasGas 3 (Train 6) 780 2008 年第 4 四半期 Qatar Petroleum (70), ExxonMobil(30) アメリカ RasGas 3 (Train 7) 780 2009 年第 4 四半期 Qatar Petroleum(70), ExxonMobil(30) アメリカ Qatargas II (Train 1) Qatargas II (Train 2) Qatargas 3 780 780 2007 年末 780 2008 年末 2009 年第 1 四半期 Qatar Petroleum(70), ExxonMobil(30) Qatar Petroleum(65), ExxonMobil(18.3), Total(16.7) Qatar Petroleum(68.5), ConocoPhillips(30), 三井物産 (1.5) イギリス イギリス アメリカ メキシコ アメリカ Qatargas 4 780 2009 年末 Qatar Petroleum (70), Shell(30) アメリカ 世界一の供給力を持ち 欧米アジア市場間アービトラージを志向するカタールの動きはアジアの需給バランスにとっての大きな不確定要素 12

1. 需給見通し (4) アジアの LNG 需給を見る上でのポイント LNG プロジェクトコストの上昇 ( 出所 )Poten & Partners 世界的な経済成長 エネルギープロジェクトの増加等によって 資機人材が不足 LNGプロジェクトコスト上昇 プロジェクト遅延要因に 13

報告の構成 需給動向 価格動向 -LNG 輸入価格 - 米英スポット価格 - アジア向け長期契約価格 市場動向 14

2. 価格動向 (1) LNG 輸入価格 $/MMBtu 14 12 10 8 6 4 2 0 15 1997 年 1 月 1997 年 7 月 1998 年 1 月 1998 年 7 月 1999 年 1 月 1999 年 7 月 2000 年 1 月 2000 年 7 月 2001 年 1 月 2001 年 7 月 2002 年 1 月 2002 年 7 月 2003 年 1 月 2003 年 7 月 2004 年 1 月 2004 年 7 月 2005 年 1 月 2005 年 7 月 2006 年 1 月 2006 年 7 月 2007 年 1 月 日本 EU アメリカ JCC 原油価格と乖離する日本向け LNG 価格 ボラティリティの高いアメリカ向け価格

2. 価格動向 (2) 米英スポット価格 (2004~2007 年 ) $/MMBtu 35 30 25 輸入インフラ低稼働 寒波 貯蔵設備火災 新規パイプライン 暖冬 20 15 10 ハリケーン 寒波 暖冬 域内生産回復 5 0 2004 年 1 月 2004 年 4 月 2004 年 7 月 2004 年 10 月 2005 年 1 月 2005 年 4 月 2005 年 7 月 2005 年 10 月 2006 年 1 月 2006 年 4 月 2006 年 7 月 2006 年 10 月 2007 年 1 月 2007 年 4 月 2007 年 7 月 Henry Hub NBP 日本向け LNG 2006~2007 年冬季 : 暖冬 新規インフラ運開によって価格は落ち着いて推移 米英市場からアジア市場へのスポット流入量が増加 16

2. 価格動向 (3) アジア向け長期契約価格 アジア向け長期契約価格と原油価格 原油価格高騰や LNG 需給逼迫を反映し アジア向け長期契約の原油リンク割合が上昇 ( 出所 )LNG Focus 17

報告の構成 需給動向 価格動向 市場動向 - 非伝統的取引拡大の可能性 - 産ガス国の資源ナショナリズム 18

3. 市場動向 (1) 非伝統的取引拡大の可能性 伝統的取引形態 長期契約 Take or Pay 仕向地条項 石油リンク価格 非伝統的取引形態 スポット スワップ 先物 ハブ価格 Storage Hub Floating Storage 将来の LNG 取引形態 19

3. 市場動向 (1) 非伝統的取引拡大の可能性伝統的取引形態の背景 原油原油石油製品 石油製品 石油製品 ガス ガス LNG LNG ガス 新規のガスプロジェクトの場合には 基本的にバリューチェーン全体のアレンジが必要 結果として余剰供給力は発生し難い 20

3. 市場動向 (1) 非伝統的取引拡大の可能性伝統的取引形態の背景 EU15 と日本のエネルギーミックス 14% 24% 30% 8% 10% 1% 5% 37% EU15 内 :1973 年外 :2005 年 54% 石油石炭天然ガス原子力他 13% 15% 18% 3% 日本内 :1973 年外 :2005 年 77% 48% 17% 21% 天然ガス導入当時に主要競合燃料であった石油 石油リンク価格の起源 21

3. 市場動向 (1) 非伝統的取引拡大の可能性非伝統的取引の背景 輸入国電力 ガス市場の規制緩和 - 競争力のある LNG を柔軟な条件で調達することの重要性 - 新規事業開拓の必要性 LNG コスト競争力の向上 - 投資リスクの低下 - コスト構造の変化に対応して事業展開 新興 LNG 市場の拡大 - 需給バランスへの影響 - 受入基地開発の必要性 - 新しいビジネスモデルの模索 22

( 万トン ) 30,000 25,000 3. 市場動向 (1) 非伝統的取引拡大の可能性売主自社マーケティング LNG 20,000 15,000 欧米向売主 買主契約 欧米向売主 = 買主契約 10,000 5,000 0 アジア向け売主 買主契約 アジア向け売主 = 買主契約 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 特に欧米向の売主 = 買主 ( 売主自社マーケティング ) 契約は 価格次第で仕向地が変更 (= スポット / 短期取引にカウント ) されやすい 23

3. 市場動向 (1) 非伝統的取引拡大の可能性 MMcm 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 1北米 欧州 インド 台湾 韓国 日本 LNG 取引全体に占めるスポット取引の割合 スポット取引 18.0% 16.0% 14.0% 12.0% 10.0% 8.0% 6.0% 4.0% 2.0% 0 995 2006 年のスポット比率は 16% 1996199719981999 自社マーケティング LNG 転売型スポットが急増 20002001200220032004200520060.0% 24

3. 市場動向 (4)LNG 市場のグローバル化 LNG フロー スワップやバックホール機会の拡大 余剰供給力程度や価格差によっては流動性向上が加速化 25

3. 市場動向 (4)LNG 市場のグローバル化 LNG 価格 市場価格 vs 石油リンク 市場価格 石油リンク 欧米市場 vs アジア市場 石油リンク 徐々にではあるが影響力を増すハブベースの市場価格 26

3. 市場動向 (5) 産ガス国の資源ナショナリズム GECF Gas OPEC? ドーハ会議で Gas OPEC 検討作業部会設置 27

3. LNG 市場の変化 (5) 産ガス国の資源ナショナリズム主要産ガス国の輸出概要 ロシア イラン カタール アルジェリア インドネシア 既存市場 欧州 アジア 欧州 アジア 新規市場 アジア 北米 欧州 アジア 欧米 北米 北米 輸出方法 パイプライン パイプライン LNG 併用 LNG 石油政策との関係 短中期的には十分な天然ガス輸出余力 国内の石油依存度大 十分な天然ガス輸出余力 十分な天然ガス輸出余力 国内の石油依存度大 輸入国との外交関係 欧米と対立欧米と対立大きな問題なし大きな問題なし大きな問題なし Gas OPEC 結成やガスカルテルの実効性にはハードルが高いが 投資環境の悪化は懸念材料 28

まとめ 需給動向 - アジア市場 : アジア向け供給力だけでは 2012 年頃までタイト - 欧米向け契約量がどの程度流入するのか? - アジアの需給バランスに影響を及ぼすインドネシア 米英市場 カタール LNG コスト etc 価格動向 - 2006~2007 年は落ち着いていたが - 石油価格に対して割安な日本向け LNG 価格と揺り戻し 29

まとめ 市場動向 - 非伝統的取引 : 余剰供給力と市場間価格差が前提 - 産ガス国の資源ナショナリズム : ガスカルテルにはハードルが高いが 投資環境の悪化がもたらす中長期的な投資不足には要注意 30

ご清聴有難うございました お問合わせ :report@tky.ieej.or.jp 31