改訂にあたって 日本循環器学会合同研究班の 不整脈薬物治療に関するガイドライン は,2004 年に初版が発表された. このガイドラインは, 科学的な情報と知識に基づいた病態生理学的なアプローチを目指すSicilian Gambitの概念を基盤としており, エビデンスを重視する欧米のガイドライン (A

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1 不整脈薬物治療に関するガイドライン (2009 年改訂版 ) Guidelines for Drug Treatment of Arrhythmias(JCS 2009) 合同研究班参加学会 : 日本循環器学会, 日本小児循環器学会, 日本心臓病学会, 日本心電学会, 日本不整脈学会 班長児玉逸雄名古屋大学環境医学研究所心 血管分野 班員 相 澤 義 房 新潟大学大学院医歯学総合研究科循 環器学分野 新 博 次 日本医科大学多摩永山病院内科 循 環器内科 井上博富山大学第二内科 小川聡国際医療福祉大学三田病院 奥村謙弘前大学循環器内科 加藤貴雄日本医科大学内科学第一 神谷香一郎名古屋大学環境医学研究所心 血管分野 班員 犀 川 哲 典 大分大学循環病態制御講座 杉 薫 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科 住 友 直 方 日本大学小児科学系小児科学分野 中 谷 晴 昭 千葉大学大学院医学研究院薬理学 三田村 秀 雄 東京都済生会中央病院 山 下 武 志 心臓血管研究所付属病院循環器内科 協力員 小 原 俊 彦 日本医科大学付属病院内科 髙 橋 尚 彦 大分大学第一内科 外部評価委員 大江透心臓病センター榊原病院 笠 貫 宏 早稲田大学理工学術院大学院先進理 工学研究科生命理工学専攻 橋本敬太郎横浜薬科大学臨床薬理学 平岡昌和厚生労働省労働保険審査会 堀江稔滋賀医科大学呼吸循環器内科 ( 構成員の所属は 2009 年 8 月現在 ) 目 次 Sicilian Gambit の意義 4 2. 我が国のエビデンス 8 3. 薬剤選択に影響を及ぼす病態 心機能, 腎機能, 肝機能, 妊娠 上室期外収縮 心房細動 心房粗動 発作性上室頻拍 心室期外収縮 持続性心室頻拍 多形性心室頻拍 心室細動 無脈性心室頻拍 徐脈性不整脈 小児の不整脈 用語解説 : 基礎 用語解説 : 臨床 主な抗不整脈薬の文献的考証 抗不整脈薬の適用, 用法 用量 : 成人 抗不整脈薬の適用, 用法 用量 : 小児 ( 無断転載を禁ずる ) 1

2 改訂にあたって 日本循環器学会合同研究班の 不整脈薬物治療に関するガイドライン は,2004 年に初版が発表された. このガイドラインは, 科学的な情報と知識に基づいた病態生理学的なアプローチを目指すSicilian Gambitの概念を基盤としており, エビデンスを重視する欧米のガイドライン (ACC/AHA/ESC) とは大幅に異なっている. その後, 我が国でも独自のエビデンスを求める活動が本格的に始まった. その嚆矢は, 心房細動に対する薬物治療のあり方を検証したJ-RHYTHM 試験 (2003~2005 年 ) であり, その成果を活用して 心房細動治療 ( 薬物 ) ガイドライン の全面改訂が行われた (2008 年発表 ). 今回の 不整脈薬物治療に関するガイドライン2009 年版 は, 部分改訂版であり,Sicilian Gambitによる論理的な薬剤選択という基本骨格は変えずに,2004~ 2008 年に発表された重要な学術情報をできるだけ多く盛り込むようにした. ただし, 心房細動に関しては, 心房細動治療 ( 薬物 ) ガイドライン 最新版に合わせて, 大幅に書き改め, エビデンス重視の構成とした. 日本循環器学会から2004~2008 年度に新たに発表された他の不整脈関連ガイドラインとの整合性にも留意した. 不整脈薬物治療に関するガイドライン は, 今後, 論理的な思考の利点と, エビデンスに基づく治療指針をバランス良く組み合わせたガイドラインへと進化させる必要がある. 今回の改訂は, そのための第一歩であり, エビデンスに関しては, 限られた章での導入にとどまっている. この点については次回の改訂の重要な課題としたい. Ⅰ 序文 不整脈に対する薬物治療は,20 世紀の終盤から大きな混乱期に突入した. その直接のきっかけは CAST である 1),2). それまで, 治療の現場で最も広く用いられてきた Na チャネル遮断を主作用とする薬物 (Vaughan Williams 分類のⅠ 群薬 ) を心筋梗塞後の不整脈患者に使用すると, 予想に反して生命予後が悪化することが大規模臨床試験の結果として報告された. これを契機として, 不整脈の薬物治療を根本から見直そうとする試みが欧州心臓病学会と米国心臓病学会を中心に始まった. その中心となる活動のひとつがSicilian Gambitであり, 従来の経験的な不整脈治療から, 科学的な情報と知識に基づいた病態生理学的なアプローチへの脱皮を目指している 年から2000 年までに計 4 回の会議が開催された 年からは,Sicilian Gambitの理念に基づいた新しい不整脈治療のあり方を, 我が国でも検討するための 抗不整脈薬ガイドライン委員会 が日本心電学会の小委員会として発足した. そして,1997 年から始まった日本循環器学会診療基準委員会 Sicilian Gambitに基づく抗 不整脈薬選択のガイドライン作成 研究班と合同して作業を進め,2000 年 3 月にはCD-ROM 版 抗不整脈薬選択のガイドライン が発表された 3). 日本循環器学会を中心とする 年度合同研究班 不整脈薬物治療に関するガイドライン は, この流れを受けついで発足したものであり,2004 年にガイドラインの初版を発表した 4). 不整脈治療に関する過去 10 年の世界的な動向は, 大きく3つに分けて考えることができる. ひとつは心房細動や心室頻拍 細動治療に関する大規模臨床試験の結果が, つぎつぎと報告され, 基礎研究のデータに基づいた理論的な考え方や, 経験だけでは得られない重要な事実が示されるようになったことである. 個々の患者に対して, 最も適切な治療を行うためには, 論理と経験に加えて, それを実証する証拠 ( エビデンス ) を必要とする時代に入った. これらのエビデンスは, 今のところ大部分が欧米の臨床試験で得られたものであり, 不整脈発生の原因となる疾患の違いや, 医療環境の違い, 人種差などを考慮すると, それらの報告をそのまま日本人にあてはめることは問題がある. このような背景の中で, 我が国における心房細動治療のエビデンスを求めて,J- RHYTHM 試験 (2003 年 1 月 ~2005 年 6 月 ) が行われた. ふたつめは, カテーテルアブレーションと, 植込み型ペ 2

3 不整脈薬物治療に関するガイドライン ースメーカ, 植込み型除細動器 (ICD) に代表される非薬物療法のめざましい進歩である. 上室性の頻脈性不整脈性については, まずカテーテルアブレーションによる根治の可能性を考える時代に入っており, その適用範囲は心房細動にまで広がっている. 心室性不整脈による突然死に対しては, 生命予後改善の点でICD の優位性が確立された. しかし, 非薬物療法には侵襲に伴う事故のリスクや, 生活の質 (QOL) に対する不安, 医療経済への大きな負担などの問題があり, 一般医療の現場では, 今後もやはり薬物が不整脈治療戦略の中心となると考えられる. 第三は, 不整脈の発生のメカニズムに関する基礎研究の進歩である. 特に不整脈発生基質の成立に関わる部分 ( メカニズムの上流,upstream) の研究が進歩し, イオンチャネルの遺伝子異常に基づく重症不整脈の実態や, 心房細動, 心肥大, 心不全などの病態に伴う心筋の電気的リモデリングの概念が整備されてきた. これらの上流 (upstream) を標的とした薬物治療の試みも, 既に始まっている. ガイドライン作成の基本方針 1. Sicilian Gambitの概念を基盤とした2004 年版 不整脈薬物治療に関するガイドライン 4) の基本骨格を保ちつつ, それ以後に報告された臨床試験のエビデンスや, 非薬物治療の進歩, 基礎研究の進歩を踏まえて, 現時点における最善の指針を作ることを目指した. 2. 本ガイドラインは, 循環器専門医を主な対象とするが, 同時に循環器以外 ( 救急医療など ) の医師の診療にも役立つことを願って作成した. 3. 本ガイドラインは科学的情報と知識に基づいた論理的な薬剤選択を重視して作成したため, 大部分の章では手技 治療の有効性と有用性についての推奨クラス ( クラスⅠ~Ⅲ) とエビデンスレベルが記載されていない *. 4. このガイドラインは, 薬物療法を積極的に奨めるものではなく, 主治医が治療適応ありと判断した場合に, 安全かつ有効な薬剤を選ぶ情報を提供することを企図したものである. また, あくまでも標準的な薬物治療指針であり, 使用にあたっては, 症例に応じた柔軟な対応をしていただきたい. 5. 第一選択薬, 第二選択薬として挙げた薬剤は, 不整脈発生のメカニズムと薬物の薬理作用から, 薬効が期待できることを優先した. このため一部, 保険適用が認められていない薬物も含まれている. それらの薬物に関しては, そのつど明示するようつとめた が, 最終的には添付文書を確認の上処方していただきたい. 6. はじめに, 不整脈の種類ごとに薬物選択の実際をフローチャートで表示しながら記載した. これらはすべて成人を対象としたガイドラインである. フローチャートの同一枠内における薬剤は我が国における発売順を重視して列挙した ( 優先順位ではない ). ただし, キニジンとプロカインアミド ( 経口 ) については, 我が国の使用実態を考慮し, 下位に配列するか, あるいは省略した. 大規模臨床試験 (J- RHYTHM) で我が国の使用実態が明らかになっている心房細動については, 使用頻度を重視した配列とし, 使用実態のない薬剤は掲載しなかった. 7. 小児の不整脈薬物治療ガイドラインに関しては, 独立した章として記載した. 8. 解説は以下の5 項目を記載した. 1) 用語解説 ( 基礎 ) 2) 用語解説 ( 臨床 ) 3) 主な抗不整脈薬の文献的考証 4) 抗不整脈薬の適応, 用法 用量 : 成人 5) 抗不整脈薬の適応, 用法 用量 : 小児 * 各論 2. 心房細動 の章では推奨度とエビデンスレベルを下記の基準で記載した. 推奨度クラスⅠ クラス Ⅱ クラス Ⅱa クラス Ⅱb クラス Ⅲ 手技, 治療が有効, 有用であるというエビデンスがあるか, あるいは見解が広く一致している手技, 治療の有効性, 有用性に関するエビデンスあるいは見解が一致していないエビデンス, 見解から有用, 有効である可能性が高いエビデンス, 見解から有用性, 有効性がそれほど確立されていない手技, 治療が有効, 有用でなく, ときに有害であるというエビデンスがあるか, あるいは見解が広く一致している エビデンスレベルレベル A 400 例以上の症例を対象とした複数の多施設無作為介入臨床試験で実証された, あるいはメタ解析で実証されたものレベル B 400 例以下の症例を対象とした複数の多施設無作為介入臨床試験, よくデザインされた比較検討試験, 大規模コホート試験などで実証されたものレベル C 無作為介入臨床試験はないが, 専門医の意見が一致したもの 3

4 Ⅱ 総論 1 Sicilian Gambitの意義 1 はじめに 抗不整脈薬に関わる多くの大規模臨床試験の成績に基づいたガイドライン作りが欧米で進められてきた. 一方, エビデンスに基づくガイドライン作成とは異なるものの, 欧米の心臓電気生理学領域の著名な研究者を集めて過去 4 回開催されたSicilian Gambit 会議からの提言は Cardiac Arrhythmia Suppression Trial(CAST) 以後の抗不整脈薬療法を大きく変えたといって過言でない.1996 年 10 月に開催された第 3 回 Sicilian Gambit 会議に, 日本からも初めて委員 ( 平岡昌和, 小川聡 ) の参加が認められたことを契機に, 我が国でもSicilian Gambitに基づいた独自のガイドライン作成を目的に財団法人日本心臓財団研究助成による 抗不整脈薬ガイドライン委員会 Sicilian Gambit 日本部会 が組織され1996 年 4 月から活動を開始した. この委員会は, 新規抗不整脈薬を含めて現在我が国で使用可能なすべての薬剤について,Sicilian Gambitの概念に則り, 基礎的ならびに臨床電気生理学的作用, 薬物動態, 心血管系への作用, 副作用等について独自に調査し, そのデータベースを基に適正な抗不整脈薬の使用を進めるための実践的ガイドライン作成を目的とした. 本委員会は1996 年 10 月には日本心電学会の小委員会として承認され (~1999 年 9 月 ), さらに 1997 年 4 月には日本循環器学会診療基準委員会 Sicilian Gambitに基づく抗不整脈薬選択のガイドライン作成 研究班が発足し (~ 1999 年 3 月 ), 両委員会が共同してガイドライン作りを進めた. その研究成果として,2000 年 3 月にCD-ROM 版 抗不整脈薬選択のガイドライン が発表された 3). Sicilian Gambitは不整脈の発生機序に基づく論理的薬剤使用を推奨するもので, エビデンスに基づいたガイドラインとは根本的に異なるが, 不整脈診療における意義と有用性は証明されつつあり, 今回のガイドライン改訂にあたっても, その根幹となる概念である. 2 Vaughan Williams 分類 Vaughan WilliamsとSinghが抗不整脈薬をその作用に基づいて4 群に分類したのは1970 年代前半である ( 表 1) 5),6). 以来,Vaughan Williams 分類として抗不整脈薬の分類法の標準として用いられてきた. この分類法は各種薬剤の薬理学的作用の特徴を簡潔に表現している点で優れており, 多くの臨床家により利用されてきた. しかし本分類法が提唱されたのは現在ほど多くの薬剤がなかった時代であり, また電気生理学的知識も今ほど豊富ではなかった. その後, 新しい抗不整脈薬を分類するにあたって必ずしもこの枠組にあてはめられないことがあることが指摘され, いくつかの修正も行われてきた. 本分類法では, 抗不整脈薬をⅠ 群からⅣ 群までに大別した. Ⅰ 群に分類される抗不整脈薬はNa チャネル遮断を主たる作用とする薬剤で, 心房筋, 心室筋,Purkinje 線維に対して活動電位第 0 相脱分極の最大立ち上がり速度を減少させ, 伝導速度を低下させる. 活動電位持続時間 (APD) に対しては, キニジン, プロカインアミド, ジソピラミド等は延長, リドカイン, メキシレチン等は短縮させる作用を有する.Singhは前者をⅠa 群, 後者を Ⅰb 群とした 6). その後,APD に対しては一定の作用を持たないが, 強い伝導抑制作用を持つ薬剤が開発され Ia Ib Ic 表 1 Vaughan Williams による抗不整脈薬分類 Ⅰ 群薬 Ⅱ 群薬 Ⅲ 群薬 Ⅳ 群薬 キニジンプロカインアミドジソピラミドアジマリンシベンゾリンピルメノールリドカインメキシレチンアプリンジンフェニトインプロパフェノンフレカイニドピルジカイニド プロプラノロールナドロール アミオダロンソタロールニフェカラント ベラパミルジルチアゼムベプリジル 4

5 不整脈薬物治療に関するガイドライン Ⅰc 群として新たにつけ加えられた. プロパフェノン, フレカイニド, ピルジカイニド等がこれに属する. ただし, こうしたAPD に対する作用は主としてK チャネルに対する遮断作用に関係するもので, 本来のNa チャネル遮断薬の細分類法としては適当ではない. また,APD に対する作用は心房筋, 心室筋,Purkinje 線維で各々異なっており, 実験条件でも差が見られること等, 問題がないわけではない. 例えば, プロパフェノンは我が国では当初 Ⅰa 群薬として発売が開始されたが, 欧米では前述の通りⅠc 群薬と位置づけられており, 現在では我が国でもⅠc 群とされるようになった. Ⅰ 群薬の特徴として,Naチャネル遮断に伴い細胞内 Naが減少するため,Na-Ca 交換機構が働き細胞内 Caが減少して心筋収縮力の低下が生じることがある.Na チャネル遮断作用による伝導抑制作用に直接関連する催不整脈作用と並んで, 重大な副作用の1つである. Ⅱ 群に分類される抗不整脈薬はβ 受容体遮断を主たる作用とする薬剤である. カテコラミンによる心筋細胞の β(β1) 受容体刺激は, アデニール酸シクラーゼを活性化し,cAMP 産生を増大させ, 内向きCa 電流を増加させる. その結果, 洞結節をはじめとする生理的自動能や病的心筋での異常自動能を亢進させる. また, 再分極に関与する種々のイオンチャネル (I to,i K,I Cl 等 ) を活性化することによりAPD を短縮させる. これによる不応期の短縮はリエントリー性不整脈を促す.Ⅱ 群抗不整脈薬はこうしたカテコラミン作用に拮抗することにより, 頻脈性不整脈を抑制する.β 遮断薬の中にはプロプラノロール等, 高用量ではⅠ 群の Naチャネル遮断作用を示すものが多い. ただし通常の用量では純粋なβ 遮断薬と考えてよい. Ⅲ 群に分類される抗不整脈薬は再分極を遅らせ,APD の延長を主たる作用とする薬剤と定義される.APD を延長させて不応期をのばすことによりリエントリー性不整脈を治療する. アミオダロン, ソタロール等がこれに含まれる. 近年の研究成果により, こうした薬剤の主たる作用がK チャネル遮断作用によるものであることが判明し, 現在ではK チャネル遮断薬とⅢ 群薬が同義語として使用されるようになっている. アミオダロンは心筋に存在する数種類のK チャネルのいくつかを非特異的に遮断する薬剤である. 我が国で開発されたニフェカラントはI Kr のみを遮断する薬剤として知られる. Ⅲ 群薬はⅠ 群薬や他の抗不整脈薬と異なり, 心筋収縮力の抑制作用がない利点を持っている. アミオダロンには心機能低下例での収縮力改善効果があることが示されている. 一方,Ⅲ 群薬に共通する重大な副作用として QT 時間延長に伴う多形性心室頻拍 (torsade de pointes, TdP) がある. 各 Ⅲ 群薬によってこの催不整脈作用の発現率には差があり,K チャネル選択性や併せ持つ他の作用によるものと想像されている. 中でもβ 遮断作用を有するアミオダロンとソタロールでTdPの合併率が低いのが特徴である.Ⅲ 群薬のこの他の問題点として有名なのが遅い心拍時ほどAPD 延長作用が強く出る, いわゆる逆頻度依存性特性を持つ薬剤が多いことである. このため, 洞調律時に著明なQT 延長が出現しTdPを合併する危険が高くなるだけでなく, 本来抗不整脈作用を発揮してほしい頻拍発作時に薬剤作用が減弱する欠点につながる. アミオダロンにはこの特性は少ない. さらに, カテコラミン刺激などの外向き再分極電流が活性化される状況で作用が減弱することも欠点の1つである. 突然死の発生とカテコラミン刺激との関連性が知られている中で,Ⅲ 群薬を突然死の予防に使用する際の問題点であり, ここでもβ 遮断作用を有するアミオダロン, ソタロールの有効性が確認されていることと一致する. Ⅳ 群に分類される抗不整脈薬はCaチャネル遮断を主たる作用とする薬剤と定義される. これにはベラパミル, ジルチアゼム等の一般的 Caチャネル遮断薬に加えて, ベプリジルも含まれる. 前者はCaチャネルが主体の房室接合部が関与する頻拍症, すなわち発作性上室頻拍の治療に用いられるが, 後者はⅢ 群作用も有しており, その他の組織の関与するリエントリー性頻拍への効果も期待できる. 通常の薬効はL 型 Caチャネル遮断作用によるものが主体であるが, ベプリジルは T 型 Caチャネル遮断作用も有することが知られ, 心房細動時の電気的リモデリングの予防あるいはその回復に効果があることが注目されている. 3 Vaughan Williams 分類の問題点 前述のごとく,Vaughan Williams 分類にはいくつかの問題点が指摘されている. 第一には, 各群の分類基準に整合性がない点が挙げられる.Ⅰ 群とⅣ 群がイオンチャネル遮断作用,Ⅱ 群がβ 受容体遮断作用,Ⅲ 群が活動電位に対する電気生理学的作用 (APD) に基づいているという点である. 第二は, 複数の作用を併せ持つ薬剤をどこに分類したらよいかという問題である. 便宜上その薬剤の主たる作用で分類することになるが, 実際にどの作用が抗不整脈的に働いているかを個々の例で立証することは難しい. アミオダロンが代表的なもので,Ⅲ 群薬とはされているもののⅠ 群からⅣ 群までのすべての作用を有しており, 前述のごとくβ 遮断作用の意義も高いことが推測されており, あるいはすべての総合作用として 5

6 有効性が高い可能性もあろう. またⅣ 群に分類されてはいるもののベプリジルにもⅠ 群,Ⅲ 群作用が認められる. こうしたことから, 同一群に属していても異質の薬剤が含まれていることは明白である. 同じⅠc 群薬のプロパフェノンとフレカイニドでも, 前者にはβ 遮断作用があり, 一方, フレカイニドにはK チャネル遮断作用がある点などの相違点がある. 4 Sicilian Gambit による抗不整脈薬の新しい分類枠組み こうしたことが, 古典的な薬剤分類法から脱し, 抗不整脈薬の研究, 開発, 治療に関わる様々な領域での知識を従来以上にうまくまとめることのできる新しい分類体系への展開を模索する動きを加速させることとなり, Sicilian Gambitへとつながったことは前述の通りである.Sicilian Gambitでは, スプレッドシート方式ですべての薬剤のチャネルや受容体への作用を詳細に記載している ( 表 2). ただし, 特別なグループ分けをしてあるわけではなく,Vaughan Williams 分類に慣れた臨床医にとってこの表だけを見て, 患者を前にしてどの薬剤を選 択したらよいのかを一見して読み取れないという危惧がある. しかし, この表によればVaughan Williams 分類に則っていては選択からもれてしまう薬剤や, あるいは逆に禁忌とされる薬剤群の中にも使用可能な薬剤があることなども明確になり, 臨床的にはSicilian Gambitの新分類法の価値は高い. この表では, 一番左の列に薬剤名が記載され, 次いでチャネル, 受容体, ポンプに対する作用を示す欄が並び, 右半分には左室機能, 洞調律への影響, 心外性の副作用の有無, さらにはPQ,QRS,QT 等の心電図上の指標に対する効果を示す欄が設けてある.Naチャネルに対する作用が一番左で, これをさらにNa チャネルへの結合解離動態の差からfast,intermediate,slow に分けている. 次いでCaチャネル,K チャネルへの作用と続き, さらに洞結節でのペースメーカ電流 (I f ) への作用を挙げているのが特徴である. 受容体に対する作用では, Vaughan Williams 分類で挙げられていなかったα 受容体, ムスカリン受容体, プリン受容体への作用も含まれている. 最後にNa/Kポンプへの作用を載せることにより, ジゴキシンをこの表に含めることができている. 各 表 2 Sicilian Gambit が提唱する薬剤分類枠組 ( 日本版 )( 文献 3 より一部改変して引用 ) イオンチャンネル受容体ポンプ臨床効果心電図所見 薬剤 Na Na-K 左室 Ca K If α β M 2 A 1 Fast Med Slow ATPase 機能 洞調律 心外性 PR QRS JT リドカイン メキシレチン プロカインアミド A ジソピラミド A キニジン A プロパフェノン A アプリンジン I シベンゾリン A ピルメノール A フレカイニド A ピルジカイニド A ベプリジル ベラパミル ジルチアゼム ソタロール アミオダロン ニフェカラント ナドロール プロプラノロール アトロピン ATP? ジゴキシン 遮断作用の相対的強さ : 低 中等 高 A = 活性化チャネルブロッカー I= 不活性化チャネルブロッカー = 作動薬 6

7 不整脈薬物治療に関するガイドライン 作用の強弱は3 色の色分けで示されている. 薬剤名が左端に縦に並べてあるが, この順はNaチャネルに対する作用を主作用とし, その結合解離動態の fastのものを最初に, 以下順にintermediate,slow のものへ, 次いでCaチャネル,K チャネルへの作用を主とする薬剤が並んでいる. 5 Sicilian Gambit の基本概念 1989 年のCAST 以来, 抗不整脈薬の使用そのものについての懸念が世界中を駆けめぐったが, その混乱期にあってその後の抗不整脈薬療法のあるべき道を探るため 1990 年に開かれたのが第 1 回 Sicilian Gambit 会議であった. その基本概念は不整脈診療における従来の経験的アプローチを改め, より論理的かつ病態生理学的な抗不整脈薬療法を推奨したものである. すなわち,1 不整脈の機序 の決定,2 治療に最も反応しうる電気生理学的指標である 受攻性因子 の同定,3 治療の 標的 としての細胞膜レベルのチャネルや受容体の決定を行い, 最終的に,4この標的に作用する 薬剤 を抗不整脈薬一覧表から選択するという論理過程である. 例えば, 心房細動や心室細動の機序はリエントリーであることが知られている. リエントリーを維持する電気生理学的因子の中で, 特に治療しやすい因子 ( 受攻性因子 ) は伝導性か不応期の2つである. 伝導性, 特に異常心筋での遅い伝導がリエントリーに関与している際には, 伝導を遮断すれば不整脈は停止する. そのための標的分子は一般的にはNaチャネルであり,Na チャネル遮断作用を有する薬剤を選択すればよい.CAST では, 突然死をもたらすリエントリー性不整脈を予防するために強力なNaチャネル遮断薬を用いて梗塞心での遅い伝導を抑制したわけで,Sicilian Gambitの論理通りとも言える. しかし, 一方ではNa チャネル遮断薬の伝導抑制が催不整脈作用を惹起することが明らかにされた. そこで, 第 1 回 Sicilian Gambit 会議では, 致死的不整脈予防には第二の受攻性因子である 不応期 を攻撃目標として, 再分極過程を遅延するK チャネル遮断薬へ大きな期待をかけた 7). その結果, 多くのK チャネル遮断薬の開発が進められるようになった. その頃,K チャネル遮断作用を主体としたアミオダロンの有効性が既に臨床的に評価されていたことも, アミオダロンの持つ重篤な副作用のない純粋な K チャネル遮断薬への期待に拍車をかけることになった. しかし, このK チャネル遮断薬についても, 洞調律時に著明なQT 間隔の延長が生じtorsade de pointes(tdp) 型心室頻拍を合併することが明らかとなった. これは純粋なK チャネル遮断薬, 特に遅延整流 K チャネルの速い 成分 (I Kr ) を主として遮断する薬剤の問題であることがその後明らかにされたが, これによる死亡例や失神例が報告された.1994 年に発表されたSWORD 試験が純粋なI Kr 遮断薬 d- ソタロールによる突然死増加を明らかにしたことを受けて, 実質的にほとんどすべてのK チャネル遮断薬の治験は中止に追い込まれた 8). ところがその後心筋 K チャネルの研究が進み, 色々な病態で生じるリエントリー性不整脈の発生に関与する特異的 K チャネル等も明らかにされてきた. 特に, 遅延整流 K チャネルの遅い成分 (I Ks ) は, アミオダロンもこれへの遮断作用を有しており, 新しい薬剤の標的分子として注目されている. さらに電気的リモデリングの概念が導入され, 心房細動時の治療の標的としてI Kr の意義が再認識されるようになり, 現在はK チャネル遮断薬に再度関心が高まりつつある 年に開かれた第 3 回会議では, 特定の方向への薬物開発を推奨はしていないが, 心房細動を中心に最近研究が進展している電気的リモデリングの概念を治療に活かすことが議論された. すなわち, 電気的リモデリングの過程では薬剤の標的となりうるチャネルの機能や蛋白発現に変化が生じ, 例えば心房細動慢性期になるとNa チャネルの発現が減少してくることも判ってきた. その状況では, いくらNaチャネルを標的とした薬剤を投与しても不応期の延長効果は見られない. したがって, 現段階では不整脈そのもの, あるいはその背景にある病態の進行につれて起きてくる分子レベルの変化の解明が必須であると結論された. それにより, 各状況に応じて最適な薬剤を決めることができ, 開発が必要な薬剤のプロフィールも自ずから明らかになる. この第 3 回会議はもうひとつ重要な新しい提案をした. それは, 現状ではリモデリングの過程で的確な薬剤選択ができないことを踏まえ, 不整脈の発生をもたらす病態そのものの進行を抑える治療戦略の提案である. 前述の4 段階の論理過程での薬剤選択を downstream approach( 下流アプローチ ) として捉え, これが実際に不整脈が起こるようになってしまった場合の治療法であるのに対して, 病態に対する心臓の適応過程が破綻することを防ぐことによって不整脈の発生を予防しようと云う upstream approach( 上流アプローチ ), すなわちより上流での治療の意義を強調している 9). 心筋梗塞例であれば不整脈の基質になる梗塞巣の拡大を抑え, 線維組織の増生や心室拡張を抑制することが慢性期の致死的心室性不整脈の発生を予防する近道だとする考え方である. この目的には, 早期の血行再建術やβ 遮断薬,ACE 阻害薬, アンジオテンシンⅡ(A- Ⅱ) 受容体拮抗薬が 7

8 使用される 年に開催された第 4 回会議では, 遺伝子レベル, 分子レベルでの新しい不整脈の治療戦略を提唱している. 6 Sicilian Gambit の臨床応用 Sicilian Gambitが提案した薬剤一覧表には従来の Vaughan Williams 分類と比較して臨床的に有用な様々な情報が含まれている. 例えば,Naチャネル遮断薬についてみても, 薬剤の結合 解離動態の差異 ( 活性化チャネルに結合するか不活性化チャネルに結合するか, チャネルからの解離が速いか遅いか, 中間的か ) が明示されており, 薬効ならびに副作用 ( 陰性変力作用, 催不整脈作用 ) の判断材料となる. 一般的には, 解離の速い薬剤 (fast kinetic drugs) はこれらの副作用が少ない代わりに, 切れ味が劣り, 解離の遅い薬剤 (slow kinetic drugs) はその逆と考えてよく, 症例に応じた選択が可能となる. 標的 となるチャネル, 受容体さえ明確にできれば薬剤選択は比較的容易である. ここで問題になるのが前述したK チャネルサブタイプの選択性である. 最近の知見では, 発作性心房細動例の多くで迷走神経がその発生に関与しているとされ, 迷走神経の興奮はアセチルコリン感受性 K チャネル (I K,ACh ) の活性化によって心房筋の活動電位を短縮させ, 不応期を短くして心房細動を発生させる. 心筋虚血の際にはATP 感受性 K チャネル (I K,ATP ) の活性化を介して心室筋活動電位が短縮し心室細動を発生させる. なお, Na チャネル遮断薬の中には,I K,ATP 遮断作用を有するもの ( キニジン, プロカインアミド, ジソピラミド, シベンゾリン ) があることが知られている. さらには交感神経活性の亢進はI Ks 活性化を介してこの変化を増強する. したがって各病態で不応期を延長させる治療には K チャネルサブタイプ選択性に関する知識が必要となる. Vaughan Williams 分類のⅠa 群に属する薬剤のK チャネルサブタイプ選択性にかなりの多様性があり, 病態ごとの使い分けが可能となる. 例えば, 迷走神経緊張が関与しているような心房細動症例には,I K,ACh を抑制できる薬剤が有用となる. しかもムスカリン受容体 (M 2 ) を介した抑制ではなく, 直接チャネルを遮断する作用のあるキニジン, シベンゾリンの有効性も期待できるが, 臨床的にどこまで差があるかは今後の検討課題である. アミオダロンが心房細動の予防にも有効なことはよく知られており, アミオダロンと類似したK チャネル抑制作用を有するベプリジルも現在注目されている. 7 おわりに 以上,Sicilian Gambitの概念に基づく不整脈の論理的治療法は, 基礎的な電気生理学の知識を要求されるなど難解な点も多いが, これに基づいた我が国のガイドラインが広く臨床家に利用されることが望まれる. そのためには, このガイドラインを利用して治療した際の有効率や副作用発生率の検討が必要である. 心房細動を対象としたJ-RHYTHM 試験は心房細動治療 ( 薬物 ) ガイドライン (2001 年版 ) 10) に準拠した薬物使用を推奨したが, 結果的に高い洞調律維持効果が証明された. この他, 心房筋のリモデリングが進行しNa チャネル遮断薬が無効と考えられる持続性心房細動例を対象としたJ-BAF 試験で,K チャネル遮断作用の強いベプリジルの高い除細動効果が証明された点もSicilian Gambitの概念と一致している. 今後の多くのエビデンスの集積によって,Sicilian Gambitの概念の臨床的意義が証明されることであろう. 2 我が国のエビデンス我が国の不整脈診療では, 日本人を対象としたクリニカルエビデンスに乏しい点が問題とされてきたが,21 世紀になりようやく我が国においても科学的な方法に基づいた臨床試験がなされるようになった. 現在のところ, 心房細動を対象とした臨床試験に留まるが, 大規模臨床試験といえるJ-RHYTHM 試験, 臨床治験に位置づけられるベプリジルを用いたJ-BAF 試験ならびにフレカイニドを用いた二重盲検試験の三つの臨床試験が科学的レベルとして適正な臨床試験に位置づけられる. 1 J-RHYTHM 試験 1プロトコール 11) 欧米からの大規模臨床試験発信を受けて企画された大規模臨床試験である. 我が国の心房細動患者特性, 我が国で利用可能な抗不整脈薬を用いた場合に, 欧米と同様な結果が得られるかを検証した試験であるが, 同時に本試験では患者のquality of life(qol) を治療目的とした場合の洞調律維持治療 (rhythm control) と心拍数調節治療 (rate control) の臨床的有効性も1つの研究目的として取り上げられた. 通常治療が必要と考えられる心房細動患者はすべて適合対象とされ, 発作性 持続性心房細動の診断別に登録され, 無作為化により洞調律維持治療 (rhythm control) 8

9 不整脈薬物治療に関するガイドライン か心拍数調節治療 (rate control) に割り付けられた. い ずれの群においても抗血栓療法, 抗不整脈薬療法は, 基本的に我が国のガイドラインに従うこととされた. 我が国の心房細動患者の生命予後は, 欧米の臨床試験結果より良好であるという前提のもとに, 一次エンドポイントは, 患者の生命予後のみならず患者の QOL を内包したものとなっている. 具体的な一次エンドポイントの内容としては, 死亡, 脳梗塞, 全身性塞栓症, 入院を要する大出血, 利尿剤静注を要する心不全, 割り付けられた治療方針に対する患者忍容性であり, 評価項目としてこれらの複合エンドポイントが設定されている. 患者の忍容性を一次エンドポイントに含めたこと, ならびに治療が盲検化されていないことは, 解析結果に医師 患者間の情報バイアスがかかる可能性を否定できず, 本試験の大きな限界とも言える. この点については, 患者のQOL をより緻密に評価する目的で心房細動特異的質問表 (AFQLQ) によるアンケート調査を行っている 12),13). 14) 2 試験の主要結果 1,065 例 ( 発作性心房細動 885 例, 持続性心房細動 180 例 ) が登録され, 最終的に発作性 823 例, 持続性 163 例の計 986 例が解析対象となった. ただし, 持続性心房細動については, 目標症例数を大幅に下回ったためその結果は参考程度に留めるべきである. 発作性心房細動の患者背景としては, 平均年齢約 65 歳, 男性が約 70% を占め, 年齢は米国 カナダで行われたAFFIRM 試験 15) よりも約 5 歳若年であった. 基礎心疾患を持つものは20% 以下, 高血圧合併は約 42% であり,AFFIRM 試験登録患者より合併心疾患, 高血圧ともに低い数字であった. 脳梗塞のリスクとしてCHADS2 スコアが0 点の患者が43%,1 点の患者は約 35% であり, 脳梗塞のハイリスク群は多く含まれていない. 持続性心房細動の患者背景もほぼ同様であった. 洞調律維持治療群では試験登録時に, 発作性で約 90 %, 持続性で約 80% の患者でⅠ 群薬が用いられており, 我が国での医療の特徴を示している. したがって本試験は主としてⅠ 群薬の試験であり, この使用状況は欧米における臨床試験で用いられている薬物とは大きく異なる我が国の特徴と考えられる. 一方で, 心拍数調節治療群では, 発作性心房細動でβ 遮断薬が約 50% 用いられ, 残りをジギタリス剤とCaチャネル遮断薬が二分する投薬状況であった. 対照的に, 持続性心房細動では3 種類の薬剤がほぼ3 分する投薬を受けていた. 発作性心房細動における平均経過観察期間は578 日で, 死亡, 塞栓症, 大出血, 心不全入院, 患者による忍 容性 ( 割り付けられた治療方針でのQOL 低下 ) という複合エンドポイントにおける両治療方針の優劣が検討された. 複合エンドポイントの評価に関する限り, 洞調律維持治療群でのevent-free survivalが心拍数調節治療群に比べ有意に良好であった (p=0.0073, 図 1A). しかし, 各評価項目において両群を比較した場合には, 死亡 塞栓症 大出血 心不全入院の発生頻度に両群の差はなく, 本試験の主要結果は欧米の大規模臨床試験と同一のものであった ( 図 1B 左 ). 複合エンドポイントで有意差が見られた理由は, 患者の忍容性に基づく治療継続率が洞調律維持治療群で心拍数調節治療群より良好であったためである ( 図 1B 右 ). 持続性心房細動の結果は, 症例数が不十分であるものの, 欧米の試験結果と同様死亡 塞栓症 大出血 心不全入院の発生率に関して心拍数調節治療群が良好な傾向を示したばかりでなく, 患者の忍容性においても心拍数調節治療群が良好な治療継続率を示す傾向を示した. なお, 発作性心房細動における患者アンケート調査で得られた QOL スコアは, 症状の頻度において洞調律維持治療群で有意に心拍数調節治療群を上回っていたが, 症状のつらさ, 精神不安感 日常生活制限については両群で有意な差は観察されなかった. 16) 2 J-BAF 試験 1 プロトコール ベプリジルは欧米ではほとんど用いられていない抗不整脈薬であるが, 我が国では持続性心房細動に対する低用量投与が経験的に用いられている.J-BAF 試験はこの経験的に用いられているベプリジルの効果を科学的に検証した臨床試験である. 対象となった患者は持続 1 週間以上 1 年未満の持続性心房細動を有し, 左房径が50mm 以内, 左室駆出率が 40% 以上の患者である. 心房細動の持続は, 携帯型心電計を毎日記録することによって確認された. 患者は無作為二重盲検法により, プラセボ群, ベプリジル100mg 群,200mg 群の三群に分けられ,12 週間にわたる継続投与を受けると同時に, 毎日および症状時の携帯型心電計による記録が行われた. 本試験の主要評価項目は持続性心房細動の停止率であり, 副次評価項目は心房細動特異的質問票 (AFQLQ) によるQOL 評価, 洞調律復帰後の心房細動再発率, ならびにベプリジルの安全性であった. 9

10 A 1.0 図 1 J-RHYTHM 試験の主要結果 Event-free Survival log-rank test p= A: 複合エンドポイントにおける event-free survival curve. B: 左 : 死亡 塞栓症 大出血 心不全入院における event-free survival curve. 右 : 患者の忍容性における event-free survival curve ,000 1,200 No. at risk B Event-free Survival log-rank test p= Event-free Survival log-rank test p= ,000 1, ,000 1,200 2 試験の主要結果解析対象となった患者は90 例であり ( プラセボ群 : 29 例,100mg 群 :32 例,200mg 群 :29 例 ), 平均年齢は約 63 歳, 男性が80% を占めた. 虚血性心疾患の合併率は約 6% と低く, 平均左房径 43mm, 平均左室駆出率は63% と心機能が良好な患者が多く含まれていた. 本試験の主要評価項目である持続性心房細動の停止率には明瞭な用量反応関係を認めた ( 図 2).100mg 投与により患者の約 40%,200mg 投与により約 70% で持続性心房細動が洞調律に復した. 心房細動停止に至る時間 経過は, 全例でほぼ6 週間以内であり, それ以降の心房細動停止は極めてまれであった. 副次評価項目である QOL 評価は, 症状の頻度とつらさにおいて200mg 群はプラセボ群に比べ有意な改善を認めたが, 精神不安感 日常生活制限においては改善する傾向に留まった. 洞調律復帰後の心房細動再発率は比較的高く, 心房細動の再発を認めなかった症例は,100mg 群で8%,200mg 群で 21% であり, 薬物投与にも関わらず1 週間以上持続する心房細動の再発を見た患者はそれぞれ45%,15% であった. 残る患者は治療期間中持続 7 日以内の発作性心房細動として再発した. 薬物投与の中止は200mg 群で29 10

11 不整脈薬物治療に関するガイドライン 図 2 J-BAF 試験の主要結果 ( 治療期における心房細動停止率 ) % 100mg mg 例中 7 例と多く見られ, このうち 5 例はベプリジルに関 連した副作用によるものであった.4 例は薬物による著 明な QT 延長が中止原因であり,1 例は治療開始後 35 日 目に心室頻拍による突然死を生じている. したがって本試験はベプリジルの臨床的有用性を十分に示したとは言えず, むしろその使用にあたっては慎重な態度と注意深いモニタリングが必要であることを喚起している. 17) 3 フレカイニドを用いた二重盲検試験 1 プロトコール 本試験は欧米で心房細動治療に対して用いられているフレカイニドが, 日本人においても同等の効果ならびに用量反応関係を有するかを検証するために, 二重盲検試験として計画された. 本試験の対象は, 少なくとも心電図で確認された発作性心房細動 粗動が2 回以上ある患者であり, そのうち 1 回は携帯型心電計で心房細動が記録された患者である.NYHA Ⅲ,Ⅳの心不全, 陳旧性心筋梗塞, 心拍数 40/ 分未満の洞徐脈は除外されている. 携帯型心電計による心房細動発作の記録後, 患者は無作為化二重盲検法により, プラセボ群, フレカイニド 50mg 群,100mg 群, 200mg 群に振り分けられ,4 週間の薬物投与を受けた. 携帯型心電計は, 毎日および症状発現時に継続して記録された. 主要評価項目は症候性心房細動 粗動無再発率であり, 副次評価項目として症候性発作性心房細動 粗動再発までの時間, 平均発作回数, 無症候性および症候性心房細動 粗動無再発率, 再発までの時間, 症候性心房細動 粗動発作持続時間, ならびに症状があげられている. 2 試験の主要結果 解析対象となった患者は123 例であり ( プラセボ群 : 32 例,50mg 群 :26 例,100mg 群 :32 例,200mg 群 : 33 例 ), その平均年齢は約 59 歳, 男性が約 80% を占めた. 高血圧合併例は約 40% であり, 弁膜症 心筋症の合併例は少数であった. 本試験の主要評価項目である症候性心房細動 粗動無再発率は明瞭な用量反応関係を認め, この結果は欧米において報告された結果とほぼ同等であった ( 図 3). 症候性心房細動 粗動再発までの時間においても用量反応関係を認め,100mgを超える投与群はプラセボ群に比べ有意に延長していた. 無症候性を含む心房細動 粗動再発率, 再発までの時間, ならびに平均発作回数のいずれにおいても良好な用量反応関係が認められた. なお, 治療期間中の死亡, 催不整脈作用による心室性不整脈は全例で認められなかったが, 試験の解析症例数が少なく, 本試験のみから安全性が十分確立されたとは言えない. 図 3 フレカイニド二重盲検試験の主要結果 ( 症候性心房細動 粗動無再発率 ) mg 100mg 200mg 3 薬剤選択に影響を及ぼす病態 心機能, 腎機能, 肝機能, 妊娠 心機能低下例や, 肝あるいは腎機能低下例, または妊娠中の症例に対して抗不整脈薬治療を行う際には, 不整脈の治療適応を制限すべきであり, 自覚症状が著しく強いか, 血行動態に悪影響を及ぼす頻脈性不整脈が治療対象となる. 11

12 1 心機能低下例における抗不整脈薬の選択 抗不整脈薬の種類により心機能への影響が異なり, 一般にslow kineticsのna チャネル遮断作用を持つ抗不整脈薬は心機能抑制が強い ( 表 2). そこで心機能低下例に抗不整脈薬治療を行う際に,fast kineticsのnaチャネル遮断薬かk チャネル遮断薬を選択する.K チャネル遮断薬は不応期延長作用により抗不整脈作用を示すので, 心機能にはほとんど影響を及ぼさない.K チャネル遮断薬はむしろ活動電位の2 相 ~3 相を延長させるので, プラトー相における細胞内へのCa 流入が増加して収縮力が増大すると考えられている. 心筋梗塞後で心機能が低下している患者に対する抗不整脈薬の有用性について, それまでに報告された試験の成績をもとにメタ解析を行った結果では,Naチャネル遮断薬は予後を悪化させ, Caチャネル遮断薬も有用性が認められなかった. しかし,β 遮断薬とK チャネル遮断薬は予後を改善する可能性が示唆されている 18). このような観点から心機能低下例には心機能抑制の少ないリドカイン, メキシレチン, アプリンジン, アミオダロン, ベプリジル, ニフェカラント, あるいはβ 遮断作用をもつソタロールが選択できる. ただし, ベプリジルはその催不整脈作用から, またソタロールはその陰性変力作用から, それぞれ うっ血 性心不全, 重篤なうっ血性心不全 への投与は禁忌とされている. 心機能低下の程度として, 左室駆出率 (LVEF) が40~50% で心胸郭比 (CTR) が50~60% の範囲にあってNYHA 分類のⅠないしⅡ 度を軽度心機能低下とし,LVEF が40% 未満でCTRは60% より大きく NYHA ⅢないしⅣ 度を中等度以上の心機能低下とする. 急性心不全に対しては利尿薬,ACE 阻害薬, カテコラミン等を投与し, 上室性頻拍があれば心拍数調節のためにジギタリス投与を行う. 慢性心不全に対しては継続的にACE 阻害薬,β 遮断薬, 利尿薬投与を行うが, ループ利尿薬は低 K 血症を生じやすいので, 腎障害がなければ抗アルドステロン製剤が勧められる. 2 肝 腎機能障害例への抗不整脈薬投与 抗不整脈薬の薬物動態は, 薬物の吸収, 体内分布, 薬物除去から成っており, それぞれの区分で肝臓あるいは腎臓の働きにより影響を受ける. 抗不整脈薬の薬物動態の特徴としては,1 有効血中濃度の幅が狭い,2 容易に中毒濃度に達する,3 半減期が短い,4 遊離型薬剤の血中濃度が臨床効果とよく相関することがあげられる 19). 治療濃度と中毒濃度が近いことから腎障害時あるいは肝障害時には容易に抗不整脈薬の副作用 ( 表 3) が出現しやすい. 肝障害あるいは腎障害のある場合には抗不整脈薬の使用も制限されることになる. 腎障害時や肝障害時 表 3 抗不整脈薬の種類と特徴 抗不整脈薬左室への影響排泄経路 (%) 催不整脈要因心臓外の副作用 リドカイン 肝 (QRS 幅拡大 ) ショック, 嘔吐, 痙攣, 興奮 メキシレチン 肝 (QRS 幅拡大 ) 消化器症状, 幻覚, 紅皮症プロカインアミド 腎 (60), 肝 (40) QT 延長,QRS 幅拡大 SLE 様症状, 顆粒球減少, 肝障害, 血圧低下 * ジソピラミド 腎 (70) QT 延長,QRS 幅拡大口渇, 尿閉, 排尿困難, 低血糖 キニジン 肝 (80), 腎 (20) QT 延長,QRS 幅拡大 Cinchonism( 眩暈など ), 消化器症状 プロパフェノン 肝 QRS 幅拡大筋肉痛, 熱感, 頭痛, 悪心, 肝障害 アプリンジン 肝 QRS 幅拡大 (QT 延長 ) しびれ, 振顫, 肝障害, 白血球減少 シベンゾリン 腎 (80) QRS 幅拡大頭痛, 眩暈, 口渇, 尿閉, 低血糖 ピルメノール 腎 (70) QT 延長,QRS 幅拡大頭痛, 口渇, 尿閉 フレカイニド 腎 (85) QRS 幅拡大眩暈, 耳鳴, 羞明, 霧視, 下痢 ピルジカイニド 腎 QRS 幅拡大消化器症状, 神経症状 ( ともに少ない ) ベプリジル 肝 QT 延長, 徐脈眩暈, 頭痛, 便秘, 肝障害, 倦怠感, 肺線維症 ベラパミル 肝 (80), 腎 (20) 徐脈便秘, 頭痛, 顔面のほてり ジルチアゼム 肝 (60), 腎 (35) 徐脈消化器症状, ほてり ソタロール 腎 (75) QT 延長, 徐脈 気管支喘息, 頭痛, 倦怠感 アミオダロン 肝 QT 延長, 徐脈 肺線維症, 甲状腺機能異常, 角膜色素沈着, 血圧低下 * ニフェカラント 腎 (50), 肝 (50) QT 延長口渇, ほてり, 頭重感 β 遮断薬 肝, 腎徐脈気管支喘息, 血糖値低下, 脱力感, レイノー現象 アトロピン 腎頻脈口渇, 排尿障害, 緑内障悪化 ATP 腎徐脈頭痛, 顔面紅潮, 悪心, 嘔吐, 気管支攣縮 ジゴキシン 腎ジギタリス中毒食欲不振, 嘔吐 催不整脈要因の ( ) は過量投与時にみられる. * 静注 12

13 不整脈薬物治療に関するガイドライン の抗不整脈薬の血中濃度推移の把握は難しく, 経験的に投与量を減量するか, 使用を控えているのが現状である. しかし, 抗不整脈薬の有効性には個人差があり, 腎障害あるいは肝障害のある症例でも不整脈を抑制するために腎排泄あるいは肝代謝の抗不整脈薬を使用しなければならないときもある. そのためには, 血中濃度モニターは最低限必要であるが, 臨床薬物動態 20),21) を詳細に把握しなければならない. 肝代謝の抗不整脈薬と腎排泄の抗不整脈薬 ( 表 3) を知ることにより, 肝 腎障害時に使用する抗不整脈薬を選択することができる. 1 腎機能障害の指標と投与量の目安腎障害のある例では肝代謝の抗不整脈薬を使用することが勧められる. しかし, 抗不整脈薬には腎排泄の薬物も多く, 症例によっては腎排泄の抗不整脈薬しか有効でない場合もある. そのような症例では腎機能障害の程度によって投与量と投与間隔を調節しなければならない. 腎機能障害の程度はクレアチニンクリアランス (Ccr) によって表されるが,Ccrがおおよそ50 ml/min 以上であれば常用量を投与してもよく,Ccrが50~20 ml/min の間であれば中等度腎機能障害として通常投与量の2/3 ~1/2 量を投与するか, 投与間隔を少しあけて投与すべきである. また,Ccrが20 ml/min 以下であれば高度腎機能障害として常用量の1/3 量以下を注意深く投与するか, 隔日に投与すべきである 19),20). 外来診療でCcrを測定する余裕がないときには, これまでの経験から, 血清クレアチニン (Scr) が1.3 mg/dl 以下であればCcrは50 ml/min 以上 ( 軽度腎機能障害 ) であると考えてよく,Scrが1.3~2.0 mg/dlであれば Ccrは20~50 ml/min( 中等度腎機能障害 ) にあるものと考えられる.Scrが2.0 mg/dl 以上であればCcrは20 ml/min 以下 ( 高度腎機能障害 ) と考えてよい ( 表 4). さらに慢性腎不全になって血液透析や腹膜透析を受けている例で抗不整脈薬治療をしなければならない場合もある. 透析で除去されない抗不整脈薬であれば, 少量にして投与間隔をあけて投与することになるが, 透析である程度除去されてしまう抗不整脈薬では, 透析と不整脈の出現しやすい時間との兼ね合いで投与量と投与間隔を調節することになる. 血液透析では使用されるダイアライザーの種類により除去率は異なると考えられるが, いずれにしても随時抗不整脈薬の血中濃度を測定して投与量を調節することが必要である. 過剰投与を避けるため 透 析 表 4 腎機能 肝機能障害別の薬剤選択 ( 文献 3 より改変 ) 腎機能障害 クレアチニン > 2.0 mg/dl クレアチニン 1.3~2.0 mg/dl 高度ビリルビン > 3 mg/dl 肝機能障害 中等度ビリルビン 2~3 mg/dl 軽度ビリルビン 1~2 mg/dl リドカイン メキシレチン プロカインアミド ジソピラミド キニジン プロパフェノン アプリンジン シベンゾリン ピルメノール フレカイニド ピルジカイニド ベプリジル ベラパミル ジルチアゼム ソタロール * アミオダロン ニフェカラント β 遮断薬 アトロピン ATP ジゴキシン 使用可能 慎重投与 : 投与量の設定に注意 禁忌 * 注 ) ソタロールは血中濃度を下げる目的で透析を行うことがある. 13

14 に, その抗不整脈薬の副作用に精通していることが, 有効で副作用のない抗不整脈薬治療を進める上で重要である. 2 肝機能障害の指標と投与量の目安肝機能障害のある症例ではできるだけ腎排泄の抗不整脈薬を選択することが望ましいが, 不整脈の種類や抗不整脈薬の薬効によっては肝代謝のものを使用せざるを得ないこともある. そのようなときの抗不整脈薬投与の目安は肝疾患の種類と門脈圧亢進の程度に左右される. 肝臓疾患の種類により肝障害の指標は異なる. 急性ウイルス性肝炎では抗不整脈薬投与量設定のために役立つ指標はないようであるが, 慢性肝炎の場合と同様に血清アルブミン値が肝臓の薬物代謝能力を表す指標となる. AST,ALT などの肝酵素値の変動は肝代謝能力の指標にはなりにくい. 肝硬変の場合にも肝酵素値より血清アルブミン, ビリルビン値, プロトロンビン値などが肝機能障害の指標となる. 薬物代謝能力の指標として門脈圧が亢進しているときの肝機能障害の程度を表すChildの分類 22) が用いられている. 肝機能障害があるときにはアプリンジン, アミオダロンなどの肝機能障害が生じやすい抗不整脈薬は特別の配慮を要する ( 表 4). 肝代謝の抗不整脈薬を使用しなければならないときには血清ビリルビン値を指標にして投与量を慎重に調節する.Child 分類のA( 軽度肝機能障害 ) ではビリルビン値が 1 ~2 mg/dlであり, 肝機能障害はあるので通常量の 2/3 量から抗不整脈薬を投与するのが無難である.Child 分類の B( 中等度肝機能障害 ) ではビリルビン値が2~3 mg/ dl であり, 通常投与量の1/2~1/3にしたほうがよい. Child 分類のC( 高度肝機能障害 ) ではビリルビン値が 3 mg/dlより高値となり, ソタロールとニフェカラント以外の抗不整脈薬の投与は禁忌で, 生命の危険があるか, 血行動態を著しく障害する頻脈性不整脈があるときには, カテーテルアブレーションなどの非薬物療法を選択すべきである 19),20). 3 妊婦に対する不整脈治療 妊娠により血管内容量は増加し, 腎血流量は増加して抗不整脈薬の腎排泄は促進される. また, プロゲステロンにより肝代謝が亢進して薬剤のクリアランスは促進される. さらに血漿蛋白濃度の低下により薬剤の蛋白結合は減少し, 組織と血漿中の薬物分布は変化する. 薬物代謝が促進する結果, 薬物血中濃度は低下する. しかし, 原則として, すべての抗不整脈薬は妊婦と胎児に対して毒性をもつと考えなければならない. したがって, 可能 ならば薬物治療を避けるべきで, 不整脈を助長する生活習慣の改善を優先させる. それにもかかわらず, 症状が著しく強く, 不整脈が妊娠継続の支障になる場合に抗不整脈薬が使用される. 使用できる抗不整脈薬の条件として半減期が短く, 妊婦に対する使用経験が集積されていることがあげられる. 米国 FDA の薬剤安全性に関する分類 23),24) では, 妊婦へのリスクが報告されていないのはリドカインと一部のβ 遮断薬, ソタロールであるが, ジゴキシンも安全といわれている. 一方, フレカイニド, ベプリジル, ベラパミル, ジルチアゼム, ニフェカラントは禁忌と考えられる. 一般に胎児の器官形成に関与する妊娠初期の10 週までの期間に催奇性のある抗不整脈薬の使用を避ける. 妊娠後期には抗不整脈薬の使用も可能となる. Ⅲ 各論 1 上室期外収縮 1 はじめに 心房 ( 肺静脈, 上大静脈および冠状静脈洞を含む ), および房室接合部を起源とし, リエントリー, トリガードアクティビティ, 異常自動能等による早期収縮を上室期外収縮と呼ぶ. 最近の発作性心房細動に対する臨床電気生理学的検討から, 肺静脈や上大静脈などの大血管が上室期外収縮の起源になる場合が多いことがわかってきた 25). 上室期外収縮は心室期外収縮と並んで臨床上多くみられる不整脈である. 上室期外収縮は加齢とともに頻度が増加する. 2 病態 臨床的意義 基礎心疾患を有さない症例にみられる単発性の期外収縮は, 自覚症状が強い場合を除けば通常臨床的意義は少ない. しかし自覚症状が非常に強い場合や, 頻度が高く血行動態や心機能に悪影響を及ぼす場合, 発作性心房細動 / 粗動のトリガーとなる場合は治療の対象となる 26). 特に僧帽弁狭窄症など心房に負荷がかかる基礎心疾患を有する患者の上室期外収縮は心房細動に移行しやすい. いったん心房細動が生じると心房筋にリモデリングが生じ, これが心房細動をより発生 持続しやすくさせる 27). このような観点からも心房期外収縮から心房細動 14

15 不整脈薬物治療に関するガイドライン への移行を予防することは臨床的に重要である. 表 5に上室期外収縮の原因となる病態および誘因をあげた. これらの患者においては誘因の除去および病態に対する治療が優先されるべきである. 表 5 上室期外収縮の原因となる病態 誘因心臓弁膜症 - 僧帽弁狭窄症など先天性心疾患 - 心房中隔欠損症など虚血性心疾患陳旧性心筋梗塞狭心症高血圧心筋症特発性二次性心筋炎, 心膜炎心臓手術後慢性閉塞性肺疾患甲状腺機能亢進症電解質異常疲労, ストレス, 喫煙, 飲酒, カフェイン飲料など 上室期外収縮の発生には自律神経機能も関与する. ホルター心電図を用いた日内変動の解析では, 夜間に比し昼間に頻発する患者が多く, その発生に交感神経緊張が関与している場合が多いことが示唆される 28). その一方で, 夜間に生じやすい発作性心房細動の発症には迷走神経の緊張が関与することが報告されている 29). 3 薬物治療の実際 図 4に上室期外収縮治療の治療方針を示す 3). 虚血関与の可能性あるいは心筋梗塞の既往を重視している. このような場合は, 治療対象がたとえ上室期外収縮であっても,CAST の結果に鑑みて解離速度の遅いNa チャネル遮断薬 (slow kinetic drug) の使用は避けるべきである. 虚血がない場合の薬物療法の適応および薬剤選択のポイントは, まず不整脈に伴う症状の程度と共存する基礎心疾患の有無および種類であり, 次が心電図所見および心機能, そして発作性心房細動 / 粗動の有無である. 基礎 図 4 上室期外収縮の治療方針 ( 文献 3 より改変 ) Na intermediate Na slow Na intermediate Na intermediate Na intermediate Na slow / 15

16 心疾患がなく発作性心房細動 / 粗動の合併がない場合は基本的には無治療でよい. しかし自覚症状が強い場合は第一選択薬としてβ 遮断薬が, 第二選択薬としてジソピラミド, シベンゾリン, ピルジカイニドなどの slow kinetic drugが, 第三選択薬としてプロパフェノンやアプリンジンなどのintermediate kinetic drugが推奨される. これに対して, 基礎心疾患のある場合は自覚症状の有無にかかわらず薬物治療を考慮する必要がある. 心機能が正常で, かつ虚血関与の可能や心筋梗塞の既往がない場合, 第一選択はβ 遮断薬, 第二選択はslow kinetic drug, 第三選択がintermediate kinetic drugとなる. 軽度の心機能低下がある場合もβ 遮断薬が第一選択となるが, 第二選択は intermediate kinetic drugであり,slow kinetic drugは第三選択である. 心機能が正常 ~ 軽度低下であっても, 虚血関与の可能性や心筋梗塞の既往がある場合は, 第一選択薬はβ 遮断薬で, 第二選択薬はin- termediate kinetic drug となる. 心機能が中等度以上低下している場合には, 心不全および心機能低下に対するアップストリーム治療を優先する. 心筋保護の観点からβ 遮断薬,ACE 阻害薬, アンジオテンシンⅡ 受容体拮抗薬の使用を考慮する. 発作性心房細動 / 粗動の合併の有無は上室期外収縮の治療の適応を考える上で極めて重要なポイントであり, 発作の頻度, 持続, 発作時の心室レートなどを十分考慮して薬物治療の適応があるかを判断し, 投与に際しては, 年齢, 性, 肝 腎機能を加味して最終的な投与薬を決める. ジギタリスは経験的に上室性不整脈に多く用いられてきた. しかし, 最近の臨床研究の結果を見ると, ジギタリスが発作性心房細動 / 粗動への移行を阻止する効果は他の抗不整脈薬に比し優位なものではなく, 積極的には推奨しがたいと思われる 30). ただし, 心不全例ではジギタリスを第一選択とする場合もありうる. 2 心房細動 1 はじめに 心房細動の出現は単に不快な不整脈として患者個人の QOL を低下させるだけでなく, 重篤な脳梗塞を合併することがある. その結果, 生命予後に影響を与えるのみならず, 身体障害者や要介護患者の増加につながるなど様々な社会的問題を引き起こす可能性もある. 2 病態 臨床的意義 心房細動の電気生理学的メカニズムは未だに解明され ていない部分も少なくないが, 空間的にも時間的にも変動する複数のリエントリーが成立しており, 心房は統率のない興奮に陥っている 31). このため心電図ではP 波は消失し, 心房は局所的には250~350 回 / 分またはそれ以上の高頻度で興奮するようになる. 心房細動の発症とその維持には, トリガーとなる異常興奮と, 心房でリエントリーが成立するための心房筋の電気生理学的および構造的変化 ( 不整脈基質 ) が関わっている. 統率のない速い不規則な心房興奮のため, 有効な心房収縮はみられなくなる. 心房収縮の消失は心房内の血流低下を来たし, 血栓形成の原因となる. また心室充満における心房寄与が消失することによって1 回駆出量が減少する. 一方, 心室拍数は房室結節の伝導能によって規定されるが, 発作性心房細動では 120~150/ 分以上の頻脈を来たすこともあり, 心房収縮の欠如と併せて急性左心不全の原因になる. この影響は特に左室拡張能の低下した高齢者や肥大心などでより顕著となる. 運動時に心室拍数が急激に上昇すると, 易疲労感や運動能の低下をもたらすが, 心室拍数の速い (130/ 分以上 ) 心房細動が安静時にも長期的に持続すると, 頻脈による左室収縮能の低下をもたらす ( 頻脈誘発性心筋症 ) 32). 特殊な例として, 不応期が房室結節のそれより短く, 伝導能の良好なケント束を有するWPW 症候群では, 心房細動時に極度に高頻度の興奮がケント束を介して心室に達し, 心室細動を来たす危険がある 33). 心房細動は基本的に慢性進行性疾患として様々な臨床像を呈する. その自然歴は加齢, 基礎疾患の有無, 医療行為の介入により修飾を受ける. 基礎疾患としては弁膜疾患, 高血圧, 冠動脈疾患, 心不全, 心筋症, 呼吸器疾患, 甲状腺機能亢進症など多岐にわたり, それぞれの上流 (upstream) での管理が下流 (downstream) としての心房細動の動静に大きく影響を与える.Upstream 治療の中では高血圧や心不全の例に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE 阻害薬 ) やアンジオテンシンⅡ(A Ⅱ) 受容体拮抗薬 (ARB) などの投与が心房細動新規発症の抑制に有用であることが判明している. 治療に先だって, 対象となる心房細動がどのような背景のもとに, いつから出現し, どのくらい持続しているものかを把握することは極めて重要である. 混乱を防ぐために本ガイドラインでは以下の分類を採用する. 非弁膜症性心房細動 : リウマチ性僧帽弁疾患, 人工弁および僧帽弁修復術の既往を有さない心房細動 孤立性心房細動 :60 歳未満で臨床所見と心エコ 16

17 不整脈薬物治療に関するガイドライン ー所見で高血圧を含めて心肺疾患の全くない状 34) 態 初発心房細動 : はじめて心電図上心房細動が確認されたもの. 心房細動の持続時間を問わない. 発作性心房細動 : 発症後 7 日以内に洞調律に復したもの 持続性心房細動 : 発症後 7 日を超えて心房細動が持続しているもの 永続性心房細動 : 電気的あるいは薬理学的に除細動不能のもの 3 薬物治療の実際 1 改訂のポイント 前回のガイドライン作成後, 欧米からは ACC/AHA/ ESC ガイドラインが 2006 年に改訂され 35), 基礎疾患に 基づく治療法の分類が発表されたが, そこで推奨されている薬剤の多くは日本で保険適用が認められていない. 一方, 日本からは発作性心房細動と持続性心房細動という2つの病型に分けて, 洞調律維持 ( リズムコントロール ) 治療と心拍数調節 ( レートコントロール ) 治療を比較したJ-RHYTHM が行われ, 新たなエビデンスが得られた 14). 続いて持続性心房細動に対するベプリジルの用量依存性除細動効果を明らかにしたJ-BAF の結果が発表された 16). 先に発表された心房細動治療 ( 薬物 ) ガイドライン 2008 年改訂版 36) もそのような変化に対応したものであるが, 本改訂版もそれに準拠した内容とした. 抗不整脈薬治療に関する特に大きな改訂は, 発作性心房細動と持続性心房細動に分けて議論したことである. また前回のガイドラインでは心房細動の停止薬と再発予防薬を分けて議論したが, 臨床現場では停止に有効であった薬剤をそのまま予防に使用することが多いため, 本ガイドラインでは両者を区別しなかった. 肥大心, 不全心, 虚血心といった器質的心疾患例に伴う心房細動の管理については, 個々のエビデンスが乏しいものの, 注意点は類似していることから今回は共通したアプローチを提言した. なお, 少しでも混乱を避け, 単純化することが重要と考え, 推奨薬剤の数を減らし, 使用頻度の少ない薬剤はあえて列挙しなかった. 2 抗血栓療法 薬物治療としては抗不整脈薬よりも抗血栓療法の方がより重要であり, その記述を先にする. 非弁膜症性心房細動では, それが発作性であるか持続 性, あるいは永続性であるかによってではなく, 個々の症例ごとの脳梗塞のリスク評価を行った上で適切な抗血栓療法を選択することが奨励されている. その判断基準にCHADS 2 スコアが提唱され, 積極的に活用されている 37),38).( 表 6,7). これは心不全 (Congestive heart failure), 高血圧 (Hypertension), 高齢 (Age 75 歳 ), 糖尿病 (Diabetes Mellitus), 脳卒中 (Stroke/TIA) の頭文字をとって命名されたスコアで, 前 4つの項目には1 点を, 脳梗塞発症リスクの高いStroke/TIAの既往には2 点を付与し, 合算して算出する. 点数が高いほど脳梗塞発症のリスクが高くなる. 本ガイドラインでも非弁膜症性心房細動におけるリスク評価にCHADS 2 スコアを取り入れ ( 図 5),TIAや脳梗塞の既往がある例ではそれだけで抗凝固 ( ワルファリン ) 療法の適応ありとしたほか, 図 5 右から2 番目の欄に含まれる項目の中 2つ以上のリスクに該当する場合は, ワルファリン療法を勧め, 1つの場合は, 同療法を考慮してよいとした. リスクの程度が十分検討されていない図 5 右端の欄に示された5 つの項目に関しては, 該当する場合は, 同療法を考慮してもよい. ワルファリン療法を行う場合は, 従前通りINR2.0 ~ 3.0でのコントロールが推奨される ( クラスⅠ, エビデンスレベルA). また70 歳以上の症例ではINR1.6 ~2.6 でのコントロールが勧められる ( クラスⅡ a, エビデンスレベルC). 抜歯に際しては, 至適治療域にINR をコントロールした上であれば, ワルファリン内服継続下で行うことが勧められている ( クラスⅡ a, エビデンスレベルB). CHADS 2 スコア 表 6 CHADS 2 スコアにおけるリスクと配点 Congestive heart failure 1 Hypertension 1 Age 75 y 1 Diabetes Mellitus 1 Stroke/TIA 2 表 7 CHADS 2 スコアと脳梗塞年間発症率 患者数 (n =1733) 脳梗塞発症例 発症率 * % 信頼区間 (1.2 ~ 3.0) (2.0 ~ 3.8) (3.1 ~ 5.1) (4.6 ~ 7.3) (6.3~11.1) (8.2~17.5) (10.5 ~ 27.4) *exponential survival model National Registry of Atrial Fibrillation(NRAF) 登録者の解析 17

18 図 5 心房細動における抗凝固療法 TIA 2 75 %FS 25% = 図 6 除細動時の抗凝固療法 心房細動の持続時間によって異なるアプローチが選択される. また除細動後にもワルファリン投与の継続が推奨されている. INR INR INR 実線は推奨, 破線は考慮可を指す. 心房粗動や発作性心房細動例でも同様に治療する. 単独の抗血小板療法はワルファリン禁忌時に考慮しても良い. ワルファリン療法への抗血小板薬の追加は以下の場合に考慮しても良い.1INR2.0 ~3.0 でのコントロール中に血栓 塞栓症を発症した場合.2 非塞栓性脳梗塞や TIA( 一過性脳虚血発作 ) の既往があり抗血小板薬が必要な場合.3 虚血性心疾患を合併している場合.4 ステント療法後. 抗血小板療法については,Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial(JAST 研究 ) の結果, 心房細動の抗血栓療 法としての意義が疑問視されるようになった 39). この試 験では, アスピリンを低リスク心房細動症例に投与しても非投与群に優る脳梗塞予防効果を示すことができず, むしろ重篤な出血性合併症を増やす結果が示された. 一方,48 時間以上続く, あるいは持続時間不明の心房細動に対する除細動に伴う血栓塞栓合併の危険性が指摘されている 40). このリスクはCHADS 2 スコアが低くても存在すると考えられており, ワルファリン療法で最低 3 週間,PT-INRを2.0~3.0に保った後に除細動を試みるか ( クラスⅠ, エビデンスレベル B), さもなければ直前に経食道心エコー法によって左心耳内血栓の有無を確認するアプローチが勧められている ( クラスⅡa, エビデンスレベルB) 41) ( 図 6). 除細動後にはさらに最低 4 週間のワルファリンを継続するが ( クラスⅠ, エビデンスレベルB), その後にも無症候性心房細動発作の再発を生じることがあり, 安易に中止することは危険である. 3 心拍数調節のための薬剤 我が国で行われた大規模試験 J-RHYTHM は, 安静時心拍数 60~80/ 分を目標にした心拍数調節 ( レートコントロール ) 治療と, 洞調律維持をめざすリズムコントロ ール治療の2つの治療法の優劣を, 発作性心房細動と持続性心房細動の2 種類の患者群別に, 死亡, 症候性脳梗塞, 全身性塞栓症, 大出血, 心不全による入院, 被験者の基本的治療法に対する忍容性の限界を複合エンドポイントとして比較したものである 14). その結果, 持続性心房細動においては, 両者のアプローチの間に有意差を認めなかったものの, 心拍数調節治療によってこれらイベントがより回避される傾向が示された (p=0.08). 心房細動例における心拍数調節のための攻撃目標は房室結節にあり, 薬剤としてはCaチャネル遮断薬のほか, β 遮断薬やジギタリスなどが有効である. 一般にジギタリスは副交感神経系の活性時に効果を発揮するため, 活動時の徐拍作用は弱い. そのため心機能良好な例のレートコントロールではジギタリスよりもβ 遮断薬やCaチャネル遮断薬の投与を優先し ( クラスⅠ, エビデンスレベルB), ジギタリスはβ 遮断薬やCaチャネル遮断薬だけでは不十分な際に補強する形で併用する ( クラスⅡa, エビデンスレベルB)( 図 7). 急速に徐拍化させる必要がある場合には静注薬が使用される.Caチャネル遮断薬のベラパミル5~10mgを2 分間かけて静注するか, ジルチアゼム0.25mg/kgを2 分間かけて静注する.β 遮断薬の静注は日本ではプロプラノロールが使用されることが多く, その場合には総量 0.15mg/kgを2mgずつ, 間欠的に静注する. 心不全を合併している例や心機能の低下した例にはジゴキシンの静注が用いられることが多いが, その場合には0.25mgを2 時間ごとに目標心拍数に達するか, 総量 1mgまで静注する. 特殊な場合としてWPW 症候群では,Na チャネル遮断薬やK チャネル遮断薬による副伝導路の伝導抑制がレートコントロールにつながる ( 図 7). 静注薬としてはピルジカイニド, シベンゾリン, ジソピラミド, フレカイニドなどに加えプロカインアミドも使用できるが, いずれも徐拍化にとどまらず除細動効果を発揮する可能 18

19 不整脈薬物治療に関するガイドライン 図 7 心房細動心拍数調節のための治療選択肢 Ca NaK Na(±K) チャネル遮断薬 =Na チャネル遮断を主作用とする Ⅰ 群抗不整脈薬 (K チャネル遮断を伴うものと伴わないものとがある ) 図 8 孤立性心房細動に対する治療戦略 性もある. 最終的には高周波カテーテルアブレーションにより副伝導路を遮断することが望ましい. 4 洞調律維持のための薬剤 1) 孤立性心房細動の洞調律維持 1 発作性心房細動発作後短時間で自然停止する心房細動や, 初発の発作性心房細動に対しては必ずしも薬剤治療を施す必要はない. しかし比較的強い症状を伴う心房細動発作を繰り返す例に対しては, 薬剤による洞調律維持 ( リズムコントロール ) が重要となる. 特にJ-RHYTHM において, 発作性心房細動例に対しては洞調律維持治療の方が心拍数調節治療よりも有意に優れていたが, その主たる原因は忍容性の改善であった 14). 孤立性発作性心房細動に対してはトリガーと基質の両方に対して抗不整脈効果を発揮するNa チャネル遮断薬, それもチャネルからの解離が遅いslow kinetic 薬の効果 が高い ( クラスⅠ) 17),42). また迷走神経の活性化に伴う夜間や食後の心房細動には,M 2 受容体拮抗作用のある薬剤が奏功することもある 43). 本ガイドラインでは孤立性の発作性心房細動に対する第一選択薬として, ピルジカイニド, シベンゾリン, プロパフェノン, ジソピラミド, フレカイニドを掲げた ( 図 8). ただちに停止をもくろむ場合には静注が相応しいが, 単回経口投与法 (pill-in-the-pocket) が奏功することもある 42),44)-47). 後者の方法は自宅あるいは外出先で発作が出現した際に, 患者本人が通常 1 日量の1/2~2/3を単回で内服して発作を止めようとするものである. この方法を採用する場合には, 経口後 6 時間以内に催不整脈作用などの副作用なしに停止することを最初だけでも監視下で確認しておくことが望まれる. 再発予防には停止薬と同様の薬剤を経口で投与するやり方が一般的であるが, 患者の年齢, 腎機能や肝機能などを考慮して薬剤やその投与量を加減する必要がある. またNaチャネル遮断薬の投与に際して 19

20 は, それによって心房細動を心房粗動に移行させたり, 洞結節機能不全による洞停止を助長したり,Brugada 症候群ではST 上昇を増強して, ときに致死性不整脈を誘発する危険性のあることを留意すべきである 48)-50). 2 持続性心房細動心房細動が1 週間以上持続した例で, リモデリングが進行した心房筋では, 抗不整脈薬による除細動が困難になる. 比較的早期では発作性心房細動に使用する薬剤をそのまま試すことができるが, より長期の持続例での効果は期待できず, むしろ心拍数調節治療によってQOL が確保されることが多い ( クラスⅠ). 持続性心房細動は原則心拍数調節治療が勧められるが, 洞調律維持を追求するのであれば電気ショックが必要となることが多い. また, ベプリジル ( アプリンジン併用可 ) や 51),52), 保険適用外ではあるがソタロール 52), アミオダロン ( 経口 ) 53),54) などによる薬理学的除細動の有効性も報告されている ( クラスⅡa)( 図 8). ベプリジルは通常 100mg から投与を始め,QTに注意しながら可能ならば200mg まで増量する. 無効の際にはアプリンジンの追加が奏功することがある ( クラスⅡ b). ソタロールも 80mg から開始し, 同様に160mg~320mgまで増量可能である. いずれの薬剤も分 2で投与するのが一般的である. アミオダロンを使用する場合には400mgから開始し,2 週間後から200mgに減量するのが一般的であるが, 有効な場合にはさらに100mgまで減量することもある. 2) 器質的心疾患を有する心房細動の洞調律維持肥大心, 不全心, 虚血心といった背景が存在する場合には, 一旦, 心房細動が発生すると, たちまち病態が悪化するため, 緊急に停止を試みるには電気ショックが用いられる ( クラスⅠ). しかしながらその再発防止は困難であるのみならず, これら基礎疾患の存在下には抗不整脈薬による危険な心室性催不整脈作用や, 陰性変力作 用を示しやすい点も問題となる. 基礎疾患のある例では, まずその原因を改善する治療 (upstream approach) が施されるべきであり, 虚血心では虚血の改善が最優先され, 肥大心や不全心ではACE 阻害薬やARB 55)-58), あるいは β 遮断薬 59) などの使用がまず検討されなければならない ( 図 9). 次には副作用の少ない薬剤を利用した心拍数調節治療が勧められるが, 特に発作性心房細動を呈し, 症状が強い場合には, 抗不整脈薬による洞調律維持を追求せざるを得ない場面もあり, アプリンジン, ベプリジル, ソタロール, アミオダロンなどが候補となりうる ( 図 9) 35),60)-63). ただし, ベプリジルはその催不整脈作用から, またソタロールはその陰性変力作用から, それぞれ うっ血性心不全, 重篤なうっ血性心不全 への投与は禁忌とされている. ベプリジルにはQT 延長からtorsade de pointes(tdp) をもたらす副作用が少なからずあることが報告されており 16), 心電図上のQT 間隔を頻回にモニターし, 慎重に投与する必要がある. 4 非薬物治療の適応 心房細動のアブレーションでは, 上室性頻拍のアブレーションに比べて難易度が高く, また, 重大な合併症が生じる危険性もやや高いため, 患者が受ける利益と不利益を十分に説明した上で適応を決定する必要がある 64). また, 心房細動の再発, 脳梗塞発症に関する長期予後や, 心房機能に関する長期予後もいまだ明らかでない. 現段階ではクラスⅠの適応はなく, 有症状かQOL 低下を伴う発作性心房細動で, 薬物治療抵抗性 (2 剤以上 ) か, あるいは副作用のため薬物が使用不能な例がクラスⅡa の適応となる 65). できれば左房径が45mm 以下で, 左房内に血栓がない75 歳以下の例が望ましい. また特殊な例としてパイロットなど職業上制限となる場合もクラス Ⅱaとする. 一方, 慢性心房細動に関するアブレーショ 図 9 器質的心疾患に伴う心房細動に対する治療戦略 20

21 不整脈薬物治療に関するガイドライン ンについては十分なコンセンサスが得られているとはいえず, 有症状かQOL 低下を伴い, 薬物治療抵抗性または副作用のため薬物が使用不能な例がクラスⅡbの適応となる 65). 薬物治療が有効な心房細動や,QOL の著しい低下を伴わない心房細動はクラス Ⅲと位置づけられる. 3 心房粗動 1 はじめに心房粗動は心房拍数が240~440/ 分の規則正しい上室 頻拍と定義される. 心電図上は, 心房拍数が240~340/ 分の比較的に遅い粗動 (Type 1) と,340~440/ 分の速い粗動 (Type 2) に分類される 66).Type 1はさらに下壁誘導にて典型的な陰性鋸歯状の粗動波を呈する通常型 (common type) 心房粗動と, 通常型以外の粗動波を呈する非通常型 (uncommon type) 粗動に分類される. Type 1 粗動の多くは, 下大静脈と三尖弁輪間の解剖学的峡部 cavotricuspid isthmus(cti) を含む三尖弁輪を興奮が周回する右房内リエントリーを機序とするため 67)-69), 峡部依存性心房粗動 (CTI-dependent atrial flutter) とも呼ばれる 70). 右房内の興奮旋回が反時計方向であれば陰性鋸歯状の粗動波を ( 通常型心房粗動 ), 時計方向であれば陽性の粗動波を呈する ( 非通常型粗動 ). なお非通常型心房粗動には右房上部, 右房自由壁, 左房におけるリエントリーを機序とするものもある 71). Type 2 粗動は心房細動に近い頻拍で, その機序は個々の例で異なる. 一方, 開心術の既往を有する患者に心房粗動や心房頻拍を認めることがある. 峡部依存性心房粗動のこともあれば, 右房壁の切開創, 瘢痕組織を周回するリエントリー性頻拍 (incisional reentrant tachycardia 72) ) のこともある. 2 病態 臨床的意義 心房粗動の症候は粗動時の房室伝導に依存する.2: 1 房室伝導を示すと心室拍数は約 150/ 分となり, 動悸や呼吸困難, 胸痛, 心不全, 血圧低下などを来たす. 運動時や房室伝導が良好な場合は1:1 伝導のために心室拍数が300/ 分にも達し, 血圧低下や失神など重篤な状態に陥る場合がある. 一方,4:1 伝導で心室拍数が100/ 分以下になると無症候の場合が多い. 心房細動の約 1/3 の頻度で血栓塞栓症を合併する ( 後述 ) 70). 発症年齢は心房細動と同様に60 歳以上に多く, 基礎心疾患や開心術の既往を有する例を認めることが多いが, 孤立性の場合も少なくない. 心房細動に合併する場合も多く, 心房細動に対するⅠ 群抗不整脈薬, 特にⅠ c 群薬投与後に細動が粗動化する場合も認められる. 3 薬物治療の実際 1 受攻性因子と抗不整脈薬の効果 峡部依存性心房粗動では粗動周期の約 20% に相当す る興奮間隙を認める 73). さらに CTI を含む右房下部の伝 導は他の部位に比して遅い ( 相対的伝導遅延部位 ) 67),74). 以上より, 受攻性因子は心房筋の不応期と右房下部の相対的緩徐伝導で, 前者を標的としてK チャネル遮断薬が, 後者を標的として解離速度の遅いNaチャネル遮断薬 (intermediate~slow kinetic drugs) が選択される. 不応期に対する効果としては,Ⅲ 群薬のイブチリドやドフェチリドの有効性が報告されている 75)-77) ( いずれも我が国では使用不可 ). 一方, 相対的緩徐伝導に対する効果としては, 強力なNaチャネル遮断薬を用いても伝導ブロックを来たすことは容易でなく, フレカイニド静注の有効率は10~28% にすぎない 78). 2 治療の進め方 ( 図 10) 心房細動と同様に, 頻脈かどうか, 血行動態が安定しているかどうか, 合併する疾患は何か, そして血栓塞栓症のリスクはどうか, を考慮し治療方針を決定する 70). 洞調律復帰後は, 再発予防のための治療や抗凝固療法が必要かどうか個々の症例で検討する. 図 10 心房粗動治療の進め方 ( 文献 70 より引用 ) DC DC 21

22 1) 血行動態が不安定な心房粗動の治療方針心室拍数の過度の増加 (100/ 分以上 ) のために心不全やショックとなった場合, あるいは急性心筋梗塞に合併した場合など, 不安定な症例ではDC ショックにより粗動を速やかに停止させる. 静脈麻酔後, 心電図 R 波に同期して50 J で通電する. 2) 血行動態が安定している心房粗動の治療方針心室拍数が100/ 分以上の場合は, まず心室拍数調節を目的とし, 房室結節を抑制する薬物を投与する ( 図 11). 症状から比較的緊急を要する場合は静注薬を用いる.WPW 症候群に合併した心房粗動の治療は後述する. 心室拍数が99/ 分以下の場合は, 以下に述べる抗不整脈薬投与,DC ショック, ペーシングのいずれかの方法により洞調律に復帰させる. なお発症後 48 時間以上経過していると思われる場合は左房内血栓の存在を疑い, 心房細動に準じて抗凝固療法を行う 36),70). 3) 洞調律復帰を目的とした薬物治療 ( 図 11) まず心房筋の不応期延長を目的とし, 中等度以上の K チャネル遮断作用を有する薬剤を選択する. 静脈内投与が可能な製剤はニフェカラントとプロカインアミドであ る ( ニフェカラントは保険適用外 ). 心房粗動 (Ⅰc 群薬投与後の粗動を含む ) に対するニフェカラント静注の停止効果を検討した最近の我が国からの報告によると, 31 例中 24 例 (77%) において投与後 60 分以内に ( 平均 13 分後 ) 粗動が停止し, 洞調律に復帰している 79). ニフェカラントはQT 間隔を延長し,torsades de pointes を来たす可能性があるので注意する. なお我が国では使用できないが,Ⅲ 群薬のイブチリドが8 例中 8 例で (100%), ドフェチリドが10 例中 7 例 (70%) で粗動を停止させたことが最近我が国から報告されている 77). 第二選択薬としては, 相対的緩徐伝導の抑制を目的とし, 解離速度が比較的遅いNa チャネル遮断薬 (intermediate~slow kinetic drugs) を用いる. 抗不整脈薬の投与に際しては, 投与後の粗動周期の延長と, 抗コリン作用を有する薬剤では房室伝導促進作用により心室拍数が増加し, 時に1: 1 房室伝導を来たす可能性があることに注意する. これを避けるために予め房室結節抑制薬を投与し, 房室伝導を抑制しておく. 以上の薬剤が無効な場合には,DC ショックか高頻度心房ペーシングにより粗動を停止させる. ペーシング療法においても, 抗不整脈薬 ジソピラ 図 11 安定した心房粗動に対する洞調律復帰を目的とした薬物治療 100/ 99/ K Na intermediate slow K Na intermediate slow DC 22

23 不整脈薬物治療に関するガイドライン ミド ( 静注 ), プロカインアミド ( 静注 ), プロパフェノン ( 経口投与 ) を前投与すると粗動が停止しやすくなる 80)-82). 4) 再発予防を目的とした治療 ( 図 12) 心房粗動を助長する全身的要因があればこれを治療する. 抗不整脈薬療法としては, 心機能に応じて薬剤を選択する. 心機能正常例および軽度低下例では, 心房筋の不応期を延長させる目的で,K チャネル遮断作用が中等度以上で, かつ房室結節伝導を抑制するベプリジル, ソタロールが第一選択薬として挙げられる ( ともに心房粗動には保険適用外 ). 両薬ともにQT 間隔延長に注意する. 第二選択薬としては, 相対的緩徐伝導を抑制し, 心房粗動の引き金となる心房期外収縮抑制を目的とし, Naチャネル遮断薬が挙げられる. ジソピラミド以下 8 種類のNa チャネル遮断薬が示されているが, 前述の理由により房室結節抑制薬との併用が必要である. 第三選択薬としてアミオダロンが挙げられ, 前向き臨床試験 (LADIP 研究 ) の結果では ( 平均 13か月間 ),70.5% の症例で粗動再発を認めなかったことが示されている 83) ( 我が国では肥大型心筋症に合併した場合に保険適用となる ). 心機能が中等度以上低下している例では,WPW 症候群 ( デルタ波 ) がなければ第一選択薬は房室結節抑 制薬としてジゴキシンが挙げられる. これと併用する形で心機能抑制作用が比較的に弱いプロカインアミドかキニジンが第二選択となる. 非薬物療法 : 峡部依存性心房粗動はCTIに対するカテーテルアブレーションにより根治可能である. 成功率は 90% 以上で, 合併症もほとんど認められないため, 現在は抗不整脈薬療法よりカテーテルアブレーションが第一選択の治療法となっている 65),70). 抗不整脈薬療法とカテーテルアブレーションの再発予防効果を前向きに比較した臨床試験において, 平均 21か月後の洞調律維持率は薬剤群が36%, アブレーション群が80% で, アブレーション治療の有用性が示されている 84). アミオダロンとアブレーションの再発予防効果を前向きに比較検討した最近のLADIP 研究では, 平均 13か月間の再発率はアミオダロン群が29.5%, アブレーション群が3.8% で, アブレーション治療がより有効であった 83). 5)WPW 症候群に伴う心房粗動の治療副伝導路を介する伝導のために心室拍数が過度に速くなることが多く, 緊急の治療を要する. 薬剤による心室レートコントロール目的では,WPW 症候群に伴う心房細動の治療と同様にジゴキシン, ベラパミルは避け,β 遮断薬を投与する. 再発抑制のための治療はWPW 症候 図 12 再発予防のための薬物治療 ( 文献 3 より改変 ) K Na intermediate slow WPW WPW 23

24 群を伴わない場合とほぼ同様であるが ( 図 12), 心機能低下が中等度以上の場合の第一選択, 第二選択のジゴキシンは避ける. なおWPW 症候群はほとんどの例でカテーテルアブレーションにより根治可能で, また峡部依存性心房粗動も根治可能であるため, 特に合併例に対してはアブレーション治療による根治が第一選択の治療となる 83). 6) 抗凝固療法の適応心房粗動に伴う血栓塞栓症, 脳梗塞の発生頻度は心房細動の約 1/3とされている 85). 比較的多数例を対象とした後ろ向き検討の結果では, 血栓塞栓症のリスクは1.7 ~7.0% と報告され, 特に48 時間以上心房粗動が持続した症例でリスクが高くなる 86). また心房粗動に対する DC ショック後の血栓塞栓症の発生頻度は, 十分な抗凝固療法を受けていない場合,2.2 % と報告されている 87),88). 洞調律復帰後,28% の症例で心房収縮が欠如しており ( 心房スタニング ), 血栓塞栓症のリスクとなることが指摘されている 89). 血栓塞栓症の危険因子に関しては, 塞栓症を発症した心房粗動 12 例と発症しなかった169 例の背景因子を単変量解析すると, 高血圧, 器質的心疾患, 左室駆出率低下, 糖尿病が有意な危険因子であり, 多変量解析では高血圧が独立した危険因子であったことが報告されている 87). 心房粗動に対する抗凝固療法の適応は未だ確立されていないため, 現時点では心房細動に準じて決定する必要がある 85). 心房細動と同様の血栓塞栓症のリスクを有する持続性心房粗動, 再発性心房粗動に対してはワルファリン療法を行う ( 詳細は心房細動の項目参照 ). 心房粗動を停止させる場合, 粗動が48 時間以上持続していればワルファリンを3 週間以上投与し, 停止後も4 週間継続する. 4 発作性上室頻拍 1 はじめに 発作性上室頻拍は, 頻拍発作の維持に心房が不可欠なものの総称である. 房室結節リエントリー, 房室回帰, 心房内リエントリー, 異所性自動能亢進が機序となる. 発作性上室頻拍の約 90% は房室結節リエントリー性頻拍 (AVNRT) あるいはWPW 症候群に伴う房室回帰性頻拍 (AVRT) である. 2 病態 臨床的意義 発作性上室頻拍では心拍数が150~200/ 分となり, 動悸, 胸部不快感などの症状を生じる. 発作時, 一般的に 血圧は低下するが, ときに血行動態の悪化 ( 収縮期血圧 80 mmhg, 肺水腫など ) や狭心症発作などを引き起こし, 緊急的な対策が必要となることがある. 3 薬物治療の実際 約 90% の例で房室結節リエントリーあるいは房室回帰が原因である. したがって, これらの例では房室結節の伝導を抑制することで発作は停止可能であり, 房室結節活動電位が 受攻性因子 となりCaチャネルが 標的分子 となる.WPW 症候群による房室回帰性頻拍では副伝導路も頻拍発生の 不可欠な要素 である. したがって, 副伝導路の不応期延長あるいは伝導抑制も頻拍抑制に有効で,K チャネル遮断薬やNa チャネル遮断薬の効果が期待できる. 薬物治療は発作の停止と発作間欠期 ( 慢性期 ) の再発予防に分けて考える. ほとんどの発作性上室頻拍はカテーテルアブレーションで根治できるので, 薬物治療の意義は発作の停止にほぼ限られてきた. まれにアブレーションが不成功に終わる例やアブレーションを希望しない例では, 抗不整脈薬による発作の予防が行われる. 発作の頻度が低く, 短時間で停止して自覚症状が軽微な例では発作間欠期の治療は必要ではない. 1 発作の停止 ( 図 13) 3) 上室性頻拍の発作を停止するにあたり, 緊急的な対策の必要性の有無 ( 上述 ) をまず見極める. 1) 緊急的な停止を要する場合発作の停止を急ぐ必要がある場合には,DC ショックや高頻度ペーシングにより発作を停止させる. 2) 緊急的な停止を要しない場合緊急的な発作停止の必要がない場合には, 迷走神経反射や抗不整脈薬による停止を試みる. 1 迷走神経反射薬物治療に先立ち反射性の迷走神経緊張を試みる. 息こらえ (Valsalva 手技 ), 顔面を冷水に浸す ( 顔面浸水 ), 嘔吐反射, 深呼吸, 頚動脈洞マッサージ ( 頚動脈の血管雑音のないことを確認し, まず右側から試みる. 無効なら左側を試みる ), トレンデレンブルグ体位 90) などが有効なことがある. 眼球圧迫は, 網膜剥離の危険があることや疼痛を来たすので, 勧められない.Valsalva 手技以外の手技の有効性はそれほど高いものではない (Valsalva 手技 54%, 右頚動脈洞マッサージ15%, 顔面浸水 15 % など ) 91). 2 抗不整脈薬静注迷走神経緊張が無効な場合には,ATP(10mgを1~2 24

25 不整脈薬物治療に関するガイドライン 図 13 発作性上室頻拍の停止 ( 文献 3 より改変 ) 80 mmhg a Valsalva DC DC a ATP Na 秒で. ただし保険適用外 ) あるいはCaチャネル遮断薬 ( ベラパミル5mg, ジルチアゼム10mg, いずれも5 分前後で ) 静注を試みる. これらにより90% 以上の例の発作を停止できる 92),93). ベラパミルは比較的心拍数が遅い発作 ( 心拍数 <186/ 分 ),ATPは心拍数が速い発作(>166/ 分 ) の停止に有効である 94). ジゴキシンは静注しても効果が発現するまでに30~60 分を要するので, 使用される機会はほとんどなくなった (CD-ROM 版から改変 ). 房室回帰性頻拍の停止にもATP(100%) とベラパミル (94%) の有効性が高く,Na チャネル遮断薬の効果はそれほど高くはない (40~60%) 95). なおベラパミルは, 血圧低下例や, 左室機能低下例,β 遮断薬投与例, 心房細動の既往のある顕性 WPW 症候群, 小児には使用しない 85). 以上の治療で発作が停止できない場合には, 房室結節リエントリー性頻拍あるいは房室回帰性頻拍以外の頻拍の可能性が高く,Na チャネル遮断薬の効果が期待できる. 3 抗不整脈薬単回経口投与 (Pill in the pocket) 発作頻度が低く, 発作時の血行動態は安定しているが自覚症状が強い例では, 継続的な抗不整脈薬による予防の代わりに, 発作時に患者自らが抗不整脈薬を頓服して発作を停止させる対応もある 96). ベラパミルやβ 遮断薬のほかプロパフェノンなどが有効である. あらかじめ有効性と安全性を確認した上で試みる. 薬物治療にもかかわらず発作が停止しない場合には DC ショックあるいは高頻度ペーシングによる停止を行う. 2 慢性期の治療 ( 発作再発の予防. 図 14,15) 3) 高い有効性と安全性を持ってカテーテルアブレーションによる根治療法が可能であるので, 発作頻度の高い例や発作時に症状の強い例,QOL 低下の著しい例, 薬物治療が無効あるいは副作用のため使用できない例などにはアブレーションを勧める 65). 発作の持続時間が短く, 症状の軽い例では積極的な再発予防は必ずしも必要ではない. 積極的な再発予防が必要でない例を除き, アブレーションを希望しない例やアブレーションが不成功に終わった例では抗不整脈薬による再発予防を行う. 1) 心機能が中等度以上低下している場合陰性変力作用の少ないNa チャネル遮断薬が第一選択となる ( 図 14,CD-ROM 版を改変 ). ただし房室結節リエントリー性頻拍の場合には第一選択薬はジゴキシンとなり,Na チャネル遮断薬は第二選択薬とする ( 図 14). 2) 心機能が正常 ~ 軽度低下の場合 ( 図 15) 1 頻拍中の P 波が見えないか QRS 波直後に出現する場合房室結節リエントリー性頻拍 ( 通常型 ) がこのタイプの頻拍の代表である. 潜在性 WPW 症候群の房室回帰性頻拍もこれに準じて対応する. 房室結節の伝導を抑制するβ 遮断薬,Caチャネル遮 25

26 図 14 発作性上室頻拍の予防 ( 文献 3 より改変 ) P QRS WPW 15 Na intermediate Na intermediate 図 15 発作性上室頻拍の予防 ( 図 14 の続き. 文献 3 より改変 ) P QRS WPW P QRS WPW intermediate ~ slow intermediate ~ slow 断薬, ジゴキシンが第一選択薬となり,K チャネル遮断作用が中等度以上の薬剤あるいはNa チャネル遮断薬 (intermediate~slow kinetic drugs) が第二選択薬となる. 2 WPW 症候群 ( 顕在性 ) および頻拍中のP 波がQRS 波の直前に出現する場合 WPW 症候群では上室頻拍発作から心房細動への移行が起こりうるので, そのような場合に心室拍数を増す可能性のあるジゴキシンや Caチャネル遮断薬の予防的投与は行わない. 副伝導路の不応期を延長するためにK チ ャネル遮断作用のある薬剤が第一選択薬となり,Na チャネル遮断薬 (intermediate~slow kinetic drugs) を第二選択薬とする. 頻拍中のP 波がQRS 波直前にある頻拍には心房内リエントリー, 洞房結節リエントリー, 稀有型房室結節リエントリー性頻拍が含まれるが, 稀有型房室結節リエントリー性頻拍は前項 1と同様に扱う. 心房内リエントリー, 洞房結節リエントリーでは心房筋の不応期延長が再発予防に有効であり,WPW 症候群と同様の薬剤が選択 26

27 不整脈薬物治療に関するガイドライン される. 洞房結節リエントリーでは Ca チャネル遮断薬 やβ 遮断薬の効果も期待できる. 自動能亢進による心房頻拍は一般に抗不整脈薬の再発予防効果が弱いので, アブレーションを考慮する 97). 3) 抗不整脈薬による再発予防効果抗不整脈薬の経口投与による再発予防効果は欧米の成績では60~75% 以上とされている ( 表 8) 98). 電気生理検査で有効性の認められた抗不整脈薬を投与した場合の 99) 再発予防効果は高いことが予想されるが, 松川の成績ではⅠ 群薬,Caチャネル遮断薬による再発予防効果は, 平均 39か月の追跡期間で68 例中 34 例 (50%) であった. しかし,3 分以内の自然停止と再発なしを有効とした伊東らの検討 100) では,Ⅰ 群薬,Caチャネル遮断薬は平均 28か月の追跡で108 例中 91 例 (84%) に有効であった. 欧米の1995 年以降の成績 101)-103) では, フレカイニドとプロパフェノンは80% を超す有効性が報告されている. 心疾患のない例の場合, 有効性を重視すれば図 15 の薬剤選択順位は変わってくる. 発作性上室頻拍はカテーテルアブレーションにより大部分の例で根治が期待できるので, 抗不整脈薬による再発予防は例外的な治療方針となっている. 5 心室期外収縮 1 はじめに 心室期外収縮 単形性非持続性心室頻拍の治療に関しては, 自覚症状の強さに加えて, 基礎心疾患の有無, 種類, 重症度, 時期などによって治療適応の有無, 考えられる発生機序, それに基づく治療法が大幅に異なるのが特徴である. 重篤な基礎心疾患がなく, 期外収縮に伴う自覚症状が軽度で患者がそれを容忍できる場合には, あえて抗不整脈薬による薬物治療を行わず, 生活習慣の改善や軽い精神安定剤のみで様子を見ることも多い. 一方, 薬物治療に抵抗し自覚症状が強くQOL が著しく低下す 表 8 抗不整脈薬による発作性上室頻拍の予防 ( 長期効果 ) 薬剤用量 (/ 日 ) 予防効果 ベラパミル 240 ~ 480mg > 70% ジルチアゼム 90 ~ 270mg 60% ナドロール 80 ~ 160mg > 60% プロカインアミド 1,000 ~ 2,000mg > 60% フレカイニド 200 ~ 400mg > 65% プロパフェノン 450 ~ 900mg > 75% ( 文献 98 より引用 ) 注 各薬剤の用量は日本人には多すぎることに注意. る場合や, 患者が非薬物治療による根治を強く希望する場合には, 最近ではカテーテルアブレーション治療も有力な選択肢の1つになってきた 65). 薬物治療に際して,Sicilian Gambitの概念を当てはめて病態生理学的にかつ理論的に治療法を選択するには, 発生機序を明確にする必要がある 7),8). したがって発生機序の明らかでない多くの心室期外収縮 単形性非持続性心室頻拍に関しては, 経験的な治療法選択に頼らざるを得ないのが現状である. 2 病態 臨床的意義 心室期外収縮とともにここに挙げた非持続性心室頻拍は,6 連発程度までの単形性心室頻拍で心室期外収縮と同一形態を示し, 頻拍中の心拍数が極端に多くなく (150/ 分を超えない程度 )QRS の変形を伴わない場合で, この範疇に入るものは心室期外収縮と同じストラテジーで対処することとした. それ以外の非持続性心室頻拍や心機能低下を伴う例に関しては, 欧米における大規模試験のエビデンス 104)-108) を考慮すれば, 非薬物治療を含めた別の治療戦略を考えるべきである. 治療適応ありと判断し, 薬物治療を選択する場合には, 以下の考え方に従って用いる薬剤を選ぶのがよい. 3 薬物治療の実際 1 特発性心室期外収縮 特発性単形性非持続性心室頻拍 ( 図 16) 基礎心疾患がない例における心室期外収縮 単形性非持続性心室頻拍は, 特発性で一般に予後はよいと考えられている. したがって, 自覚症状がないか軽度の場合はあえて薬物投与を行う必要はない. むしろ, 睡眠不足や喫煙など不整脈を悪化させる生活習慣の改善を指導すべきである. 動悸などの症状が中等度または高度の場合, 不整脈の存在によってQOL が低下し患者が薬物による治療を望む場合には, 以下の手順に従って用いる薬剤を選択する. 特発性心室期外収縮 特発性単形性非持続性心室頻拍に関しては, その期外収縮ないし心室頻拍のQRS 波形を分析することによって発生機序をある程度推測することが可能であるので, それに従って病態生理学的アプローチで選択すべき薬剤を特定することができる. 1) 右脚ブロック 左軸偏位 (RBBB+LAD) 型 QRS 波形の場合発生機序は左脚後枝領域のCa 電流依存性組織におけるリエントリーと考えられる. 病態生理学的に考えれば, 27

28 図 16 基礎心疾患を伴わない ( 特発性 ) 心室期外収縮 単形性非持続性心室頻拍 ( 文献 3 より改変 ) RBBB + LAD LBBB + RAD Ca Na slow Na intermediate-fast Ca Na slow Na intermediate-fast Na slow Na intermediate-fast 受攻性因子はCa 電流依存性組織における伝導性であり, 治療の標的分子はCaチャネルということになる. したがって, 第一選択薬としてはCaチャネル遮断を主作用とするベラパミル, ジルチアゼム, ベプリジルが挙げられる. 続いて,Ca 電流を抑制するβ 遮断薬が第二選択として用いられる. これらが無効の場合には経験的に Na チャネル遮断薬が用いられるが, 病態生理学的理論に基づく選択ではない. 2) 左脚ブロック 右軸偏位 (LBBB+RAD) 型 QRS 波形の場合多くはカテコラミン依存性であるので, 第一にβ 遮断薬またはβ 遮断作用を有するプロパフェノンを選択する. また遅延後脱分極 (DAD) によるトリガードアクティビティを機序とすることも多いので, 第二選択としてはDAD に関与するCa 電流を抑制することを目的に Caチャネル遮断を主作用とするベラパミル, ジルチアゼム, ベプリジルが選ばれる. これらが無効の場合には Na チャネル遮断薬が用いられるが, やはり病態生理学的理論に基づく選択ではない. 3)その他のQRS 波形の場合期外収縮波形が上記 1),2) のいずれにも分類できない場合には, その発生機序を推定することが困難である. したがって, 運動時, 興奮時など交感神経緊張時に期外収縮が多く発生することが分かっている例ではβ 遮断薬を優先的に用いるが, その他では理論に基づく選択ではないものの, 第一選択として幅広い抗不整脈効果を示す Na チャネル遮断薬を用いてよい. 2 虚血性心疾患に伴う心室期外収縮虚血性心疾患を基礎に有する例における心室期外収縮は, ほとんどがリエントリーをその発生機序とすると考えられるが, 異常自動能やトリガードアクティビティによるものもあり鑑別は困難である. 薬剤の選択に当たっては, 虚血状態にあるか否かすなわち期外収縮の発生に虚血が関与しているか否かの判断と, 心機能低下の有無を正確に評価することが重要である. 心筋梗塞あるいは狭心症で, 虚血発作に伴って期外収縮が発生するような場合には, まず虚血の改善が先決である. 虚血の関与が不明な場合にも, あわてて抗不整脈 28

29 不整脈薬物治療に関するガイドライン 薬を投与するのではなく各種検査を行って評価するとともに, 必要に応じて冠動脈造影を行って虚血があれば積極的に血行再建を図るべきである. 1) 心筋梗塞急性期 ( 発症 48 時間以内 )( 図 17) 心筋梗塞急性期に発生する心室期外収縮に関しては, 従来同様 Lown 分類の重症度を参考にして治療方針を決定する. この時期には, 重症度の高い心室期外収縮が致死性不整脈の心室頻拍や心室細動の引き金になることがある. したがって,Grade 1 では経過観察,Grade 2 ~5 では心電図を注意深く連続監視し, 心室頻拍や心室細動の危険性が高いと判断した場合に抗不整脈薬静脈内投与 図 17 心筋梗塞急性期の心室期外収縮 単形性非持続性心室頻拍 ( 文献 3 より改変 ) Lown Grade 48 Lown Grade2 5 を考慮する. 薬物を選択するに際し必ずしも明確なエビデンスはないが, 虚血に陥った心筋では膜電位が浅くNa チャネルが不活性化状態にある心筋細胞が多いと考えられるので, これに親和性の高いリドカインが用いられる. リドカインに関してはこれまでに多数の使用実績があることに加え, 陰性変力作用が弱く, 心機能抑制を来たす危険性が少ないことも選択の理由である. また欧米を中心にプロカインアミドも使用される. しかし, 非持続性心室頻拍が多発し, 持続性心室頻拍 心室細動の発生が危惧される場合には, 最近の我が国での成績 109)-111) や欧米におけるエビデンス 112),113) を考慮し, ニフェカラント静注やアミオダロン静注も積極的に考慮すべきである. なお, 虚血に対する再潅流療法後に発生する不整脈に対しては,ATP 感受性 K チャネル開口薬のニコランジルの併用が奏功することがある. 2) 心筋梗塞亜急性期 ( 発症 48 時間 ~1か月 )( 図 18) この時期には虚血の関与, 心機能を再評価し, 積極的に虚血の解除, 心機能の改善を図ることが重要である. 現病の治療を進めるのと並行して突然死のリスク評価を定期的に行い, 不整脈に対する治療方針を決定する. 通常は3 連発未満の期外収縮のみであれば経過観察でよい 図 18 基礎心疾患を有する心室期外収縮 単形性非持続性心室頻拍 ( 心筋梗塞亜急性期を含む )( 文献 3 より改変 ) Na slow Na fast-intermediate a Na fast-intermediate a a Ca K Na fast-intermediate a Na fast Na fast 注 ) 心筋梗塞の既往または中等度以上の心機能低下がある場合 1Na チャネル遮断薬で生命予後を改善するというエビデンスはないので, 長期使用は控えるべきである. 2アップストリームアプローチとしてβ 遮断薬,ACE 阻害薬,A- Ⅱ 受容体拮抗薬の併用を積極的に考慮する. 3 心臓電気生理学的検査で薬剤抵抗性持続性心室頻拍 / 心室細動が誘発される例では,ICD の適用を考慮する. 29

30 が, 非持続性心室頻拍 ( 心室期外収縮 3 連発以上 ) を認める場合には治療適応を考慮する. 不整脈に伴う自覚症状が中等度以上の場合, あるいは非持続性心室頻拍が重症型 ( 頻拍レートが 120~200/ 分では5 連発以上,200/ 分以上では3 連発以上を重症型とする ) の場合には, 積極的に治療を行う. 実際の治療法選択にあたっては, 図 18に示すように心機能の状態を重視し, 心機能低下の有無とその程度を勘案して選択順位を決定する. なお,CAST その他の大規模試験のエビデンスから 1),2),114),slow kineticのnaチャネル遮断薬は禁忌と考えるべきである. 特に不整脈に伴ってめまい 失神を来たす例では, 必要に応じて心臓電気生理学的検査等を行って突然死のリスクを詳細に評価し, 致死性不整脈が誘発されるなど高リスクと判断された場合は, アミオダロン, ソタロールを第一選択として用いる. 薬剤を適正に用いても効果が不十分で, 持続性心室頻拍や心室細動発生の危険性が高いと判断された場合はICD を考慮する. 1 心機能正常例心機能が正常に保たれていれば,β 遮断薬あるいは fast~intermediate kineticのna チャネル遮断薬を第一選択として用いることができる. 第二選択としては強いβ 遮断作用を持ったK チャネル遮断薬のソタロールが挙げられる. 2 心機能軽度低下例心機能が多少なりとも低下している例では, 陰性変力作用の強い薬剤により心不全を引き起こす危険性がある.Fast kinetic drug など心機能抑制作用の少ないものを用いることは可能であるが, 心機能に注意し長期使用は控えるべきである. なお原疾患に対する治療として, 低用量のβ 遮断薬,ACE 阻害薬,A- Ⅱ 受容体拮抗薬の併用を積極的に考慮する. 3 心機能中等度以上低下例心機能が中等度以上に低下している例で, 期外収縮に伴う自覚症状が強く治療が必要と判断された場合には, 陰性変力作用の少ない一部のNa チャネル遮断薬は使用可能で, メキシレチンなどが考慮されるが, 生命予後を改善するというエビデンスはなく, 長期使用は避けるべきである. 非持続性心室頻拍ではアミオダロンが推奨される 115),116). また電気生理学的検査等でリスクが高いと判断された場合には,ICD 植込みを考慮する 106). 3) 心筋梗塞慢性期 ( 発症 1か月以降 ) この時期に心室期外収縮や非持続性心室頻拍を見た場合にも, やはりそれらの不整脈に虚血が関与していないかどうか, 心機能の低下がないかどうかの評価が重要で ある. 虚血の解除や心機能の改善を積極的に進めるのと並行して, 不整脈に対する薬物治療の適応があると判断したら, ほぼ前項の心筋梗塞亜急性期の治療方針に準じて考えればよい. 3その他の心疾患に伴う心室期外収縮心筋症, 弁膜症など心筋梗塞以外の心疾患に伴う心室期外収縮に関しても, 基本的には, 前述の心筋梗塞亜急性期における心室期外収縮の治療方針に準じて判断してよいが, やはり薬剤が長期予後を改善するというエビデンスはない. 薬物治療の適応ありと判断した場合にも, 特に心筋症など重篤な基礎心疾患を有する例においては, 陰性変力作用の強い薬剤は避けるなど心機能を十分に考慮に入れた薬剤選択が不可欠である. またこの際, 低用量のβ 遮断薬,ACE 阻害薬,A- Ⅱ 受容体拮抗薬の併用も積極的に考慮する必要がある. 6 持続性心室頻拍 1 はじめにヒス束の分岐部以下を起源とするwide QRS 頻拍で, 30 秒以上持続するか, それ以内でも停止処置を必要とする心室頻拍と定義される. 一般的には頻拍中は単一波形 ( 単形性 ) を示し, 上室頻拍に脚ブロックや副伝導路経由の心室興奮を伴った場合と鑑別が必要である. 鑑別ができない場合には心室頻拍として扱う方が無難である. 2 病態と臨床的意義 持続性心室頻拍は不整脈による突然死の主因で, 突然出現する 117),118). 頻拍レートが200 拍 / 分を超えると高率に失神を来たす. 心機能の低下例では, より低い頻拍レートでも重症となる. 持続性心室頻拍の基礎疾患は心筋梗塞, 心筋症, 催不整脈性右室心筋症, 心臓手術後 ( ファロー四徴症, 大血管転位など ), 原因不明のものなど多彩である 119). 抗不整脈薬の催不整脈作用による例もある. 機序はほとんどリエントリーで, 電気生理学的検査で証明できる 119). 心筋は島状または索状に線維組織に囲まれ, 伝導遅延を来たしリエントリー回路の形成に関与する. 左室起源の特発性心室頻拍もリエントリーを機序とするが,Caチャネル遮断薬が有効な病的 Purkinje 組織が関与する 120),121). 右室流出路起源の特発性心室頻拍は運動やカテコラミンで誘発され, トリガードアクティビティを機 30

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<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6> 2012 年 4 月更新作成者 : 宇根底亜希子 化学療法看護エキスパートナース育成計画 1. 目的江南厚生病院に通院あるいは入院しているがん患者に質の高いケアを提供できるようになるために 看護師が化学療法分野の知識や技術を習得することを目的とする 2. 対象者 1 ) レベル Ⅱ 以上で各分野の知識と技術習得を希望する者 2 ) 期間中 80% 以上参加できる者 3. 教育期間 時間間 1 年間の継続教育とする

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