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1 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 得失点経緯が勝敗に及ぼす影響について 鈴木淳平 年 7 月 27 日から 8 月 12 日まで イギリスのロンドンにて第 30 回オリンピック夏季大会が開催された このロンドンオリンピックは インターネットやソーシャルメディアの世界的な普及後 初となる大会であった 世界中が 4 年に一度のビッグイベントに注目する中 Facebook twitter YouTube などを駆使した情報発信がオリンピックそのものにどのように作用するかも大きな関心を集めた大会で ソーシャリンピックス (socialympics) という別名も生まれた しかし ソーシャルメディアによる不適切な発言などのいくつかの事件が事前に起こっていたため あらゆる参加者の私的な情報発信手段としてインターネットやソーシャルメディアを使用することに関しては 細かな規約が設けられ規制がおこなわれた その一方で 試合結果などの様々な記録や情報をテレビなどの既存のメディア以外でリアルタイムに知ることができた 特に テレビで放映予定のない試合が インターネットでライブストリーミング放映されたことは革命的であった 日本国内での関心度の高い競技種目やメダル獲得の確率が高い試合はテレビ放映されるが そうでない試合は放映されない バレーボールに関して言えば 女子日本チームの出場試合は放映されたが 日本チームが出場しない男子の試合が全セット放映されたのは決勝戦のみであった 2. 今回のオリンピックでは NHK と民放 gorin.jp ( は テレビでは放映されない試合を中心にインターネットでライブストリーミングによる生

2 鈴木淳平 中継をおこなった これまでにも主要世界大会のライブストリーミング中継や YouTube などの動画ビューワーに投稿された試合を閲覧する事ができたが オリンピックでは初めてのことであった 今や世界の隅々までインターネットが普及し 見たいモノが見たい時に見る事ができる時代である 現代スポーツの競技現場において 対戦相手の最新情報を得ることは多大なアドバンテージとなるため 非常に画期的な事である またオリンピック閉会後 YouTube 公式オリンピックチャンネル (Official Olympic Channel by the IOC の開設や IOC の HP ( での閲覧も可能になり ほぼ全ての試合 全てのシーンを高画質でしかも無料で視聴する事ができるようになった 3. データバレー データビデオ (Data Project 社製 イタリア ) というバレーボールのデータ分析ソフトウェアが世界中に普及して久しい バレーボールのデータとは ゲームで出現するあらゆるプレー要素の結果とその評価 映像等であり これらのデータをパソコンに入力し 速やかに統計処理が行える また パソコン入力データとビデオカメラを同期することにより 試合前のシミュレーションや試合後のフィードバックに必要な場面の映像を即座に呼び出せ ビデオクリップ編集も短時間で行うことができる 今日 世界レベルで戦う各チームとも アナリストと呼ばれるデータ分析専門のスタッフを 1 名 数名帯同させている アナリストは試合中 コート外の所定の場所に陣取りパソコンにプレー結果とその評価を入力していく そしてコートサイドのベンチスタッフが持つコンピュータと無線で接続して アナリストが入力したデータを瞬時に処理 分析 フィードバックすることができる コートサイドとベンチスタッフ間でリアルタイムに技術統計データを視認し 戦術の分析と選択に活用する 常時インカムを通じてアナリストから戦術選択に有用な情報が監督およびコーチらベンチスタッフに提供されている 複数名のアナリストを帯同させることが可能であれば プレー結果を入力するタイピストと 戦術分析 選択と情報伝達を行うアナリストとを分業させて支援することも行われている さらに 最近では ipad 等のタブレット型端末を手に コートサイドからフィードバックを行う事例も出てきている

3 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 今日 国際大会に出場するほぼ全てのチームがデータバレーのユーザーであり 日本においては V プレミアリーグに所属する全てのチームや大学トップレベルのチームがユーザーである 世界最高峰のプロリーグであるイタリアセリエ A 男女 ヨーロッパバレーボール連盟の公式統計ソフトウェアでもある データバレーはもはやバレーボール界のスタンダードである 吉田 5) は 球技系スポーツにおける戦術分析の目的を次のようにまとめている 1) ゲーム分析 スカウティング活動を通して自分チームの課題や 次回対戦する相手チームの特徴 弱点を解明する 2) ゲーム分析 スカウティング活動は 球技の競技力向上にとって非常に大きな意味を持ち 分析活動には映像の活用が一般的に行われている 3) 特にオリンピックレベルの戦いとなると 専門の分析スタッフを帯同させてビデオカメラやパソコンを駆使し詳細な映像分析を行っているのが現状である すなわち データバレーの活用等で徹底的にスカウティングを行うことと アナリストの戦術支援は バレーボールの競技力向上のために極めて重要なのである すでに チームや個人のプレーを評価する指標は世界共通となり 収集されたデータや映像のウェブ上での共有化や チーム ( アナリスト ) 間の相互情報提供も盛んに行われるようになっている 年の北京オリンピック決勝において ブラジルスタイル をマスターしたアメリカが 2002 年から 2007 年まで王座に君臨してきたブラジルを下し金メダルを獲得した ブラジルが取り組んできたバレーを さらに体格が大きく しかも平均年齢が高く経験のあるアメリカの選手がマスターし ブラジルを上回った末の勝利であった 6) いわば 大型化したブラジルスタイル のアメリカが北京オリンピックで優勝したことで ブラジルスタイル がトップレベルのバレーボールの潮流であると証明する形になった 続くロンドンオリンピックに至るまでの世界トップレベルでのバレーボールの戦略 戦術のトレンドは ブラジルスタイル のマスターとプレーヤーの大型化で

4 鈴木淳平 あった ブラジルスタイル とは コート内の 6 人全員が協力して 9m のネット幅とアタックエリアを最大限に使いオープンスペースを作り セッターのトスの分散化と高速化により アタッカーをフルに参加させてスピーディーに攻撃するスタイルである この ブラジルスタイル の模倣と確立がロンドンに至るまで世界各国で試行され続けてきた 各主要国際大会等で垣間みられた各国の バレースタイル はまさしく ブラジルスタイル が それぞれの国やクラブでアレンジされたものであった ブラジルスタイル がトップの潮流であることは確かであるが 現時点で既にバレーボールはスピード化 大型化している 今後もしばらくは大型チームの 新戦術を大型化が凌駕する 時代が続く可能性は高い しかしながら これまでのトレンドを打ち破る新しい戦略 戦術の開発についてもおおいに注目していきたい 5. 4) 1999 年のスコアリングシステムのルール改正に伴う戦術の変遷について 吉田 はラリーポイントシステムのゲームにおける戦術として すべての試合状況下で 得点する技術 が重要であり 単独の戦術を使い続けずに ゲーム中のデータをもとに局面に応じて最適と考えられる戦術を選択しなければならないと報告した ハイレベルな国際大会では 複数の戦術を用い インサイドワークとして何度も戦術の変更が繰り返される混合戦術が戦術選択の基本となり 戦術の選択を誤らないことと 複数の戦術に対応できる能力が勝敗を分ける ラリーポイント制で勝利を収めるためには 25 回という限られた回数の中で サービスをキープし 相手を突き放す戦術をいかに素早く採用できるかが重要となってくる 世界的に男子の戦術は 1 5 システムの分業制で統一されている 各国がオリジナルな戦術を用いる女子と違い 男子はチーム戦術が明確なため それぞれのポジションで高いレベルの選手を集めることができたかどうかが問題となる そのため ナショナルチームの短い招集期間でも 男子はチーム力を反映しやすく これが 五輪成績と世界ランクに高い相関関係がある要因と考えられる 男子は五輪に合わせた 4 年周期のナショナルチーム強化よりも 多くの選手をレベルの高いプロリーグで鍛えさせ その恩恵に恵まれて帰ってきた選手によって 毎年一定レベルの

5 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 成績を国際大会で維持しているチームが 五輪でも好成績となっている ( 表 2) 6. FIVB は 1947 年に6 人制の国際ルールを制定した その後 様々なルール改正を経てきたが 近年において特に重要な変更は次の 2 点である 年リベロ制の導入 サーブのネットインを許容 年ラリーポイントシステムの導入 スコアリングシステムはサイドアウトシステムであったが 試合時間が一定せず テレビ放映権が売りにくかったことからラリーポイントシステムに変更された FIVB( 国際バレーボール連盟 ) は 今後のバレーボールのより一層の発展のためには 観衆がより感動するアスレティックショー (Spectacular Athletic Show) にしなければならない という考え 7) のもと 試合時間の短縮や 連続得点によるスピード感を出すためにラリーポイントシステムを導入した プレーの成否が必ずどちらかのチームの得点として加算されていくので 観衆に取っては分かりやすい側面がある しかし ラリーポイント制のゲームにおいては サーブ権に関係なく全て得点または失点となるため 従来にはない新しい戦術や得点プラン ゲーム分析のためのデータ収集方法など 様々な場面についての再考が求められた 4) 7. 世界ランキングは FIVB が選定した試合での獲得ポイントによって決定される ( 表 1) 4 年に一度開催される世界 3 大大会に加え 毎年開催のワールドリーグ 各大陸選手権 世界選手権とオリンピックの出場権を争う各大陸予選と世界最終予選の結果をポイント化し ランキングを決定している バレーボールの主要世界大会は以下の 4 大会である 世界選手権 (World Championships 1949 年 ~ 4 年に一度開催 ) 夏季オリンピック (Olympic Games 1964 年 ~ 4 年に一度開催 )

6 鈴木淳平 ワールドカップ (World Cup 1965 年 ~ 4 年に一度開催 ) ワールドリーグ (World League 1990 年 ~ 毎年開催) 初開催年が古い世界選手権が もっとも権威のある大会 とされているが どの大会も競技レベルも注目度も高く 世界ランキング上位国同士の戦いは非常にハイレベルな試合となる それぞれが同一年に重ならずに 4 年に一度開催されてきたが ワールドカップに関してのみ 1991 年の開催からオリンピックの前年に変更され 上位 3 チームに対して翌年のオリンピック出場資格が与えられるようになった この 3 大大会に比べ ワールドリーグの歴史は浅いが 毎年開催されているため最も開催数が多くなった これらの大会戦績を FIVB のランキング システムによりポイント化され世界ランキングが決定されている また 1993 年からはワールドグランドチャンピオンズカップ ( 通称グラチャン ) が 4 年に一度日本で開催されているが 低迷した日本チームが世界の強豪に挑戦するというコンセプトの大会としてスタートし イベ 表 1. 最新の世界ランキング 更新 (FIVB HP より抜粋 ) 1) FIVB Senior World Ranking Men As per august 13,2012 Olympic World Games League World Cup Cont.Ch. World Ch *Rk 100% 100% 100% 100% 75% R. Diff. Teams Total R. Pts. R. Pts. R. Pts. R. Pts. R. Pts. 1 0 Brazil Russia Italy Poland USA Cuba wq Serbia Bulgaria Argentina Germany Japan * Previous Ranking July

7 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 ント的な要素が強いため 3 大大会に比べて歴史も浅く格が劣る大会とされ 世界ランキングには反映されない ラリーポイントシステムに改正後の世界トップレベルの男子バレーボールは ブラジルに牽引されてきた ブラジルスタイルがいわば現代バレーボールの最強のチーム像であるということは戦績 ( 表 1 表 2) を見れば一目瞭然である 表 2. ラリーポイントシステムに改正後の世界大会の結果 優勝 2 位 3 位 1999 World League イタリア キューバ ブラジル World Cup ロシア キューバ イタリア 2000 World League イタリア ロシア ブラジル Olympic Games ユーゴスラビア ロシア イタリア 2001 World League ブラジル イタリア ロシア グラチャン キューバ ブラジル ユーゴスラビア 2002 World League ロシア ブラジル ユーゴスラビア World Ch. ブラジル ロシア フランス 2003 World League ブラジル セルビア モンテネグロ イタリア World Cup ブラジル イタリア セルビア モンテネグロ 2004 World League ブラジル イタリア セルビア モンテネグロ Olympic Games ブラジル イタリア ロシア 2005 World League ブラジル セルビア モンテネグロ キューバ グラチャン ブラジル アメリカ イタリア 2006 World League ブラジル フランス ロシア World Ch. ブラジル ポーランド ブルガリア 2007 World League ブラジル ロシア アメリカ World Cup ブラジル ロシア ブルガリア 2008 World League アメリカ セルビア ロシア Olympic Games アメリカ ブラジル ロシア 2009 World League ブラジル セルビア ロシア グラチャン ブラジル キューバ 日本 2010 World League ブラジル ロシア セルビア World Ch. ブラジル キューバ セルビア 2011 World League ロシア ブラジル ポーランド World Cup ロシア ポーランド ブラジル 2012 World League ポーランド アメリカ キューバ Olympic Games ロシア ブラジル イタリア

8 鈴木淳平 本研究の目的は 世界トップレベルのゲームを観察し バレーボールの競技力向上に有用な示唆を得ることである 本研究では 2012 年ロンドンオリンピック男子バレーボール競技におけるベスト 8 以上のチームの対戦試合 ( 準々決勝から決勝まで ) を対象とし スコアリンググラフ 8)9)10) を作成し 得失点の経緯が勝敗に及ぼす影響について調査した なお オリンピック開催中は ライブストリーミングによる生中継を録画 調査し オリンピック閉会後は 録画したビデオおよび YouTube 視聴による調査を行った 筆者の先行研究では セットごとの得失点の経緯をグラフ化したスコア経過グラフ ( 以下 スコアリンググラフ ) を作成し 得失点の経緯がゲーム展開及ぼす影響を分析し ゲーム運びを巧くするための方法を考察し 以下の結論を得た 8)9)10) 1) 連続得失点がゲームの得失点の大半を占め なかでも 2 ~ 3 連続得失点が高頻度で出現する 2 連続得点したら貪欲に 1 点でも多く稼ぐ努力をし 1 失点後は最短でサイドアウト ポイントを取り 連続失点の減少と大量連続失点を防ぐ 2) 連続得点を自責ミスで終える場合と 連続失点が自責ミスで始まる場合は チームの勢いを停滞もしくは減退させかねないため 極力避けるべきである 3) 第 1 セットアップが大きなアドバンテージとなる セットを落とさずに勝つ場合と セットを落としても勝つ場合の双方において重要である 4) セットアップで先行することに成功したら そこからは冷静な判断に基づく戦略 戦術を駆使して 最短でゲームを終わらせることが望ましい 仮に セットダウンからゲームが始まっても考え方は同様である いかに失点 失セットを抑え 最短でゲームに勝利するかが重要である 先行研究から得たこれらの示唆に照らし合わせ ロンドンオリンピックベスト8 以上のチームの対戦試合からスコアリンググラフを作成し そのゲーム展開を分析し考察した

9 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 1. 試合結果 セットカウントと合計得点は下記の通りである 2012 年 8 月 8 日 Quarterfinal( 準々決勝戦 ) ブラジル 3( )0 イタリア 3( )0 ロシア 3( )0 ブルガリア 3( )0 アルゼンチンアメリカポーランドドイツ 2012 年 8 月 10 日 Semifinal( 準決勝戦 ) ロシア 3( )1 ブラジル 3( )0 ブルガリア イタリア 2012 年 8 月 12 日 Bronze Medal Match(3 位決定戦 ) イタリア 3( )1 ブルガリア Gold Medal Match( 決勝戦 ) ロシア 3( )2 ブラジル 次に 各試合のセットごとのスコア 連続得点を表 3 から表 6 に示した

10 鈴木淳平 表 3. Quarterfinal( 準々決勝戦 ) ブラジル 3( )0 アルゼンチン BRA ARG セット セット スコア スコア 連続 連続 イタリア 3( )0 アメリカ ITA USA セット セット スコア スコア 連続 連続 ロシア 3( )0 ポーランド RUS POL セット セット スコア スコア 連続 連続 ブルガリア 3( )0 ドイツ BUL GER セット セット スコア スコア 連続 連続

11 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 表 4. Semifinal( 準決勝戦 ) ロシア 3( )1 ブルガリア RUS BUL セット セット スコア スコア 連続 連 続 ブラジル 3( )0 イタリア BRA ITA セット セット スコア スコア 連続 連 続 表 5. Bronze Medal Match(3 位決定戦 ) イタリア 3( )1 ブルガリア ITA BUL セット セット スコア スコア 連続 連 続 表 6. Gold Medal Match( 決勝戦 ) ロシア 3( )2 ブラジル RUS BRA セット セット スコア スコア 連 続 連 続

12 鈴木淳平 8 試合計 28 セットのゲームから以下の結果を得た 1) 連続得失点がゲーム中の得失点の大半を占めた 2) 連続得点を自責ミスで終える場合と 連続失点が自責ミスで始まる場合は 勝ちセットよりも負けセットにおいてより多く発生していた 3) 決勝戦以外の 7 試合計 23 セットにおいては 第 1 セットアップしたチームが勝利した 総得点および連続得点の合計回数は勝利チームが上回った 4) 決勝戦は稀に見る逆転劇であった 第 1 第 2 セットを連続で失ったが 第 3 セットのマッチポイントを逆転で取り返し 第 3 セットから 3 連続で奪取した逆転勝利であった 5) 決勝戦以外の 7 試合においては 総得点および連続得点の合計回数は勝利チーム ( ロシア ) が上回ったが 決勝戦においてのみ異なっていた 合計得点が同じで 連続得点の合計回数は負けたチーム ( ブラジル ) が上回った 6) ブラジルは 8 チーム中もっとも連続失点が少ないチームであった 2. 第 1 第 2 セット連取で先行したブラジルは 悲願の優勝へ向けてひた走る スコア 内容ともにブラジルのシステムは基本的に機能していたと考えられる 逆にロシアは是が非でもセットを取り返したい そこでロシアは 不調であった選手のポジションを変更し 別ポジションで先発出場している選手をそのポジションに変更して起用した この変更は これまでの世界レベルの試合では極めて稀な策である 通常 同じポジションでの控え選手との交代起用 戦略システム 個人戦術で機能しなかった点の修正などである しかしロシアは 一見奇策とも取れる大胆な変更で 大逆転勝利を掴むことができたのである この変更が奏効し 第 3 セット終盤のブラジルの数回の金メダルポイントを阻止し逆転したのであるから 用意されたオプションの一つであったと考える方が妥当であろう ブラジルから残り3 セットを連取するための取って置きのジョーカーを切ったのである そしてブラジルは ロシアの切り札に最後まで対応できなかった

13 ロンドン五輪におけるバレーボールのゲーム分析 過去の調査でも明らかであるが 大概の試合において勝利チームが総得点および連続得点の合計回数で負けチームを上回る そして 米沢ら 11) が明らかにしたように 連続失点が多いほど負ける確率が高くなる 本研究においても 決勝戦以外ではそうであった しかし セットスポーツであるが故に稀ではあるがその逆転現象は起こりうる それがロンドンオリンピックの男子決勝戦という大舞台で起きたのだ 両チームの総得点は同じで 連続得点の合計回数は負けたチームが上回った ブラジルは 1 点の取り方を計算し尽くし とにかく無駄なミスをしないという事が証明されたのであるが 結果は皮肉なものであった ロシアは 2011 年のワールドリーグからチャンピオンとなったが その現状に満足せずに 様々な オプション を用意してオリンピックに臨んでいた こうした取り組みはロシアだけではなく 他国もオプションを用意していた 現代のトップレベルのバレーボールゲームにおいては チーム 選手の能力を最大限に発揮させると同時に 相手を効果的に封じ込め機能させないためのオプションを用意し実行している こうした戦略はもはや世界ではあたりまえとなっている 1) FIVB Homepage 2) 吉田清司 バレーボールゲームのシミュレーション ラリーポイント制ゲームの予測 専修大学社会体育研究所報第 46 号 p ) 吉田清司 25 点ラリーポイント制ゲームのシミュレーション 日本男子チームのゲームプラン Coaching & Playing Volleyball 第 3 号 バレーボール アンリミテッド

14 鈴木淳平 4) 吉田清司 バレーボールゲームのルール改正に伴う戦術の変遷について専修大学体育研究紀要 (25) p ) 吉田清司 球技系スポーツの戦術分析 (1) アテネオリンピック バレーボール男子における世界の潮流 専修大学社会体育研究所報(52) p ) 吉田清司 トップアナリストが見る 北京オリンピック世界の技術 男子編月刊バレーボール 12 月号 日本文化出版 p ) 砂田孝士著者代表 詳解 6 人制バレーボールのルール 大修館書店 p ) 鈴木淳平 バレーボールのゲーム分析 得失点の経緯がゲーム展開に及ぼす影響 駒澤大学保健体育部研究紀要(18) p ) 鈴木淳平 バレーボールのゲーム分析 (2) 得失点の経緯とゲーム展開の関連性について 駒澤大学保健体育部研究紀要(19) p ) 鈴木淳平 バレーボールのゲーム分析 世界一決定戦での得失点の経緯とゲーム展開の研究 駒澤大学総合教育研究部紀要 11) 米沢利広 俵尚申 : バレーボールゲームの 流れ に関する研究 - 連続失点と勝敗の関係から - 福岡大学スホーツ科学研究 41(1) pp