不動産98_論説_吉田.ec7

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せいごろうちゃわんや
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1 46 特集経済社会の変容と不動産専門職能の今後論説 RoleandDutyasspecialistsofrealestatelaw ShuheiYOSHIDA:A torneyatlaw 吉田修平 * 1. 資格の現状について本稿では法務の専門家として弁護士と司法書士を取り上げることとする 1 弁護士の資格は司法試験の合格及び司法修習の終了により, 司法書士の資格は司法書士試験の合格により得られることとなる 1 2 司法試験は, 司法書士試験とともに難関とされてきたが, 近年の司法改革により, 司法試験は旧試験から新試験に変更された 2 新司法試験については, 法科大学院 ( ロースクール ) を修了した者に限り受験資格が与えられるこことなり, また, 合格者数を旧試験時代の 500 人程度から2000 人以上に増やしたために, 分母が小さくなり, かつ, 分子が大きくなった結果, 合格率は従来の2~3% 台から大変高くなってきている平成 23 年度の出願者数は1 万 1891 名であり, 受験者数は8765 名であるところ, 合格者数は2063 人となっている合格率は, 受験者数に対して23.5% であるなお, 旧試験の廃止に伴い,2011 年から司法試験予備試験が実施されており, 法科大学院を修了しなくとも予備試験を受験することにより新司法試験の受験資格を得られることとなっているまた, 司法試験においては, 試験に3 回不合格をするか, 又は司法試験の受験資格の取得後 ( ロースクール修了後 )5 年間の経過により受験資格が失われることとなっている 3 司法書士試験については, 筆記試験とその筆記試験に合格した者を対象とした口述試験が実施される平成 23 年度の出願者数は3 万 1228 名であり, 受験者数は2 万 5696 名であるところ, 合格者数は879 名となっている合格率は, 受験者数に対して3.4% の難関となっている 2. 弁護士司法書士と不動産に関連する業務との関わりについて 1 弁護士について弁護士は, 不動産に関連する業務と関わる場合, 1まず不動産の売買に関与することが考えられる主に売買契約書のチェックや作成等がその業務の内容となる 2また, 不動産の賃貸借契約 ( 土地の賃貸借建物の賃貸借 ) についての関与が次に考えられる売買の場合と同様に, 賃貸借契約書のチェック及び作成等の業務である 3また, 賃吉田修平 * ( よしだしゅうへい ) 正会員弁護士 1 司法書士の場合は, 試験の合格者以外にも, 一定の経歴を有している者については, 司法書士の資格を取得することも可能である例えば, 裁判所事務官裁判所書記官法務事務官検察事務官等に従事した者等である 2 旧試験は, 平成 23 年度まで施行され, 平成 23 年度の合格者を以て旧試験は終了することとなった

2 47 貸借契約の解除に伴い, 目的不動産の明渡しを求める裁判手続きへの関与が次に考えられる不動産明渡訴訟の訴訟代理人としての業務であるが, 前記 12が紛争の予防的な側面からの業務であるのに対し, 不動産明渡訴訟の訴訟代理人業務は, 事後的な紛争解決の業務であり, 従来から弁護士の職務の中心的なものとされているものである 4また, 最近では, 様々な新しい, または, 複雑な制度 ( 不動産の信託受益権の譲渡契約やサブリース契約及び中間省略登記の代替手段を用いたスキーム等 ) についての関与が考えられるすなわち, 目的不動産を最も有効に活用するためにはどうしたらよいか, あるいは目的不動産を最も高く, または, 安全に売却流動化するためにはどうしたらよいのかという戦略的問題について, 計画の初期の段階から関わることにより, 依頼者にとって最も適切妥当で, かつ, 適法なスキームを作成する等の作業である 2 司法書士について司法書士の場合には,1 不動産登記に関し, 法務局に提出する書類の作成業務 ( 登記手続き代行業務 ) が最も中心的な業務であったが, その後, 司法書士法及び裁判所法の改正により司法書士の業務が拡大されてきているこれも司法改革の一連の流れの一つといえるものであるが,2 簡易裁判所における訴額 140 万円を超えない民事訴訟訴え提起前の和解 ( 即決和解 ) 保全手続き及び調停の訴訟代理権 ( 上訴や再審強制執行を除く ) が付与される ( 司法書士法 3 条 1 項 6 号 ) 3また, 訴訟代理権を行使し得る内容の案件については, 法律相談や裁判外の和解もできることとされている ( 同条同項 7 号 ) 4さらに, 不動産登記法の一部を改正する法律 ( 平成 17 年 4 月 13 日法律第 29 号 ) 3 によって, 筆界特定手続の導入に伴い, 司法書士は筆界特定手続に関与することができるようになった ( 筆界特定手続において法務局等に提出する書類の作成や, 筆界特定手続きにおいて一定額以下の利益を対象とする物についても相談に応じたり, または, 代理をする業務である司法書士法 3 条 1 項 4 号及び8 号 ) なお, 司法書士が上記の訴訟代理権を得るためには, 法務省令で定める法人が法務大臣の指定を受けて実施する研修の過程を修了し, かつ, その業務を行うのに必要な能力を有することを認定するための法務省の認定試験に合格した司法書士会の会員であることが必要とされている ( 認定司法書士同法 3 条 2 項 ) 5また, 成年後見制度が改正されたことに伴い, 近年, 司法書士を成年後見人に選任するケースが増えており, 成年後見人は成年被後見人の代理人として行動することになるため, 成年被後見人が不動産を所有し賃貸等している場合には, その不動産の賃貸借契約に必然的に関与することになるし, また, 不動産を売却等して成年被後見人の例えば介護費用に充てるようなケースにおいては, 不動産の売買に関与する場合も生じてくるのである 3. 弁護士司法書士という資格者に関する問題点弁護士司法書士という専門職能家と不動産関連業務との関わりにおいて, 以下のような問題点があると考えられる 1 専門職能家として求められる専門性に欠ける場合があるのではないか 1 不動産に関し, 弁護士司法書士等の法務専門家が関わる場合, まず, 第一に, 対象となる法領域が非常に広いということが挙げられるその結果, 非常に幅が広く, かつ高いレベルでの専門的な知識経験が必要とされることになるのであ 3 筆界特定手続とは, 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地において, 筆界の現地における位置を特定すること

3 48 る例えば, 不動産を貸す場合には民法, 借地借家法等が問題になってくる売却する場合には, 登記との関連では不動産登記法, 売買当事者に個人が存在した場合には消費者契約法等が問題になってくるほか, それらの取引については, 各種の税法の知識も当然必要になってくる ( 不動産取得税固定資産税その他 ) また, 対象不動産が区分所有建物であれば, 区分所有法も対象になるし, 考えるべきスキームが信託受益権の譲渡等の場合には, 信託法その他の知識も必要になってくる対象不動産に担保権が付されている場合には, 民法等の規定の他, 仮登記担保法も知らなければならないまた, 取引の当事者に企業が存在する場合には, その取引を行うために取締役会の承認が必要になるのかなどの会社法の知識も必要になることがある特殊なケースとしては, 都市計画法や土地収用法が問題になってくるケースも存在する高齢者のために終身借家契約による賃貸建物を提供する場合には, 高齢者住まい法が問題になってくるほか, 相続遺言などの問題も存在してくる ( 相続税等についても知識が必要となってくる場合がある ) これらの非常に広い法領域について, 不動産と関連する部分に関し高い知識と経験が求められるが, そのような知識と経験を十分に持つ法務の専門家は非常に少ないのが現状であると思われる 2また, 不動産には, 多数の利害関係人が関与することが多い例えば, 地主のAが土地を所有しており, その土地を借地人のBに貸し, 借地人は建物を建て, 賃貸人として借家人のCに建物を貸し, さらに借家人のCは, その建物をサブリースとして転借人のDに貸すというケースが考えられるまた, 土地や建物という資産に対し, 担保権を設定して貸付を行っている銀行等も存在してくるのである 3その結果, 不動産に法務の専門家が関わる場合には複雑な事案となることが多く, また, 多岐の分野に渡り問題が生ずることがあるため, 単に法律を知っているだけでは処理のできないケースもしばしば生ずるのである特に, 弁護士として不動産の明渡訴訟に関与し一定の和解金の支払いにより解決を見た場合を想定しても, その和解金の取得に対しいかなる課税がなされるのかも考えなければ, 最終的に依頼者の満足を得られないことになってしまうのである 4そして何よりも, 不動産は居住の用に供するものであるから極めて重要な資産になるし, 企業の場合には, そこで営業を行う拠点になってくるまた, 不動産は, 自動車等の耐久消費財と比べて価値がはるかに高いものが多いため, 依頼者の人生における重要度は大変高いものになるのであるつまり, 生半可な知識でいい加減なアドバイスをすることは許されないことになる 2 広い視野高い視点が求められるのではないか 1 広い視野と高い視点が求められる理由上記 1のような, 不動産に法務の専門家が関わる場合の特殊性を踏まえた場合, さらに, 法務の専門家には広い視野と高い視点が求められることになると思われる単に法律を知っているというだけでは済まないということであるつまり経済的感覚も求められるのである法務専門家も経済社会の一員として存在している以上, 自らの行動が経済社会にどのような影響を及ぼすかを知らねばならないことは当然であるたとえば, 弁護士として世のため人のため尽くすことを, 人権の擁護と社会的正義の実現と称するのであるが, それは単に法律のことしか知らないという専門馬鹿としてだけ存在すれば良

4 49 いということではなく, 逆に, 法律を超えた社会全体の発展への寄与という高い視点や, その制度についての経済的効果がどのように生ずるかという広い視野が欠かせないものとなるこのような観点からすると, 最近の事例において, 以下のような問題点があることが指摘できるのではないであろうか 2 定期借家権の創設について定期借家権は, 平成 12 年 3 月 1 日より施行されることとなったこの定期借家権の創設に関して 4 は, 従来から存在する普通借家権しか存しないことを憂慮して制度の改正が行われたものであるが, 弁護士会等の従来の法律家は定期借家権に対し反対の論陣を張っていた ( 少なくも, 公式の場で賛成したことはなかった ) 賃借人という弱者の居住の保護に欠けるということであったが, 実態は過度の借家人保護の結果, 戦前は80% 弱の借家率であった我が国が, 戦後は 40% 弱の借家率に下がってしまい, 賃貸人の多くが一度貸したら返ってこない貸家になることを恐れ貸出を渋るようになってしまったため, 多くの国民 ( 潜在的な借家人 ) が, 狭いウサギ小屋のような貧弱な借家に甘んじるか, あるいは高いコストと値下がりのリスクを負担しつつ持家を取得するしかなかったのであるそこで, 戦前から同種の制度があり, また世界的な標準でもあるところの定期借家権の創設の運動が生じてきたのであるが, 弁護士会や多くの法律家は反対をしていた 5 現在, 定期借家権は施行後 12 年が経過するに至っているが, 弱者である居住者にとって酷な事態が生じている等の報告はなされていない逆に, 多くの良質な貸家住宅が供給され, 国民にとっての選択肢が増えていることは間違いないと思われるこの定期借家権の創設には多くの経済学者が賛成をしていたことを踏まえるならば, 弁護士等の法務の専門家が, 自分が得意とする分野にだけ閉じ籠り, 広く世の中の動向, 特に経済に与える影響に目を向けなくて良いわけがないことは明白であると思われる 3 中間省略登記の代替手段平成 17 年の不動産登記法の改正により, 従来行われていた中間省略登記の方法が法務局により受理されない取扱いとなってしまった中間省略登記とは,AからB,BからCへ不動産が売却された場合,A B C 三者の合意により, 登記をB を経由することなく,AからCへ直接移転させることを指すこれにより,AからB,BからCという2 回の登記移転を行わないで済むため, 登録免許税その他の費用が削減できることが利点とされていた不動産登記法の改正により, 中間省略登記ができなくなることについては, 国会等で十分な論議がされていないどころか, 問題となることすら全く認識されていなかったことが, 民主主義国家として大きな問題であるとともに, 専ら転売目的で不動産を購入しているBにとっては, エンドユーザーであるCを見つけて, 目的不動産をCに転売すれば良く, それにより自己の目的は完結するのであり, 一旦, 自己の下に登記を移転する必要性はないまして, そこで登録免許税等の費用や不動産取得税等の負担をする意思がないのは明白であるところが, 中間省略登記を行えないこととしてしまったため, このような転売目的による売 4 正当事由 ( 借地借家法 28 条 ) が存在しなければ期間が満了しても更新の拒絶をすることができず, また, 正当事由はなかなか認められないため, 借家人が自発的に退去することを承諾しない限り, 一度貸したら返ってこない借家となってしまっていた 5 阿部泰隆野村好弘福井秀夫編定期借家権 (1998 年, 信山社 ) 定期借家権構想の経緯と意義( 久米良昭福井秀夫 ) p15~

5 50 買が急速に冷え込む事態となってしまった通常, エンドユーザーのCは, 不動産を所有しているA を直に見つけることは不可能に近く, であるからこそ仲介の労を取る業者としてBの存在価値があるところ, このような法務当局の扱いは不動産の売買取引を大きく減少させることとなってしまったそこで, 平成 19 年中間省略登記の代替手段として第三者のためにする契約を用いた直接移転売買方式が提唱され, それにより, 不動産売買の活性化に資するものとなったのである 6,7 ところが, このような中間省略登記の代替手段を創設することに対し, 多くの司法書士会が反対の論陣を張ったのである 8 司法書士という業務からすれば,1 回の登記移転が行われるより,2 回の登記移転が行われる方が, 更に高い収入を得られるという経済合理性があることは理解できるしかし, そのことにより多くの国民にとっては不動産取引の阻害要因となってしまうことは大変問題であるすなわち, 登記業務に関わる専門職能家としては, 逆に, このような中間省略登記に代わる代替手段の推進こそ行うべきであり, そのような広い視野と高い視点を持つことが要求されているものと考えられる 4. 将来の課題など弁護士司法書士という法務の専門家の今後についてであるが, まず, 第一, に他の職能集団との連携により, チームとして不動産関連業務に対応していくことが考えられる上記 3 記載の通り, 多岐の分野に渡る複雑な問題が発生してくるものである以上, スキームの作成にせよ紛争の解決にせよ, 例えば税務問題であれば税理士, 不動産の価格の評価については不動産鑑定士等の, 他の専門家集団との緊密な連携が必要となることは論を待たないまた, 今後, 我が国の不動産の取引を活性化する為には,( そのことにより地価も上昇すると思われるが ) 外国からの投資を誘因する必要があるすると, 外国人に対しグローバルな視点から不動産取引に関するスキームの説明をすることも必要とされることになるその場合, 諸外国における不動産制度との比較対照等も行いつつ説明する必要も生じてくるであろうから, 国際的な知識も必要とされることになると思われるそして, 外国人に対する説明も含めて広く深い知識と経験に基づいた説明力が求められるのではないであろうかこれらの力を養成する為には, 研修制度を充実させることも当然であるが, やはり個々の弁護士司法書士が強い意欲を持って日々の研鑽を積んでいくしかないと思われるただ, 制度として考えた場合, 例えば不動産法務士等の名称の新しい資格の創設を検討し, 一定の研修と認定試験の下に, 更に高い専門性を持った不動産法務の専門家 ( 職能専門家 ) を養成していくということも考えられてよいのではないか 6 福井秀夫吉田修平編著中間省略登記の代替手段と不動産取引 (2007 年, 住宅新報社 )P8~ 中間省略登記と規制改革 ( 福井秀夫 ) 7 中間省略登記の代替手段とは, 上例のAとBとの間の売買契約に第三者のためとする契約を特約として付し,Aは, 買主のBではなく,Bの指定する第三者であるCに対し, 直接, 目的不動産の所有権と登記を移転させる方法である前掲中間省略登記の代替手段と不動産取引 p42~ 中間省略登記の代替手段に関する法的諸論点と契約書式( 吉田修平 ) 8 前掲中間省略登記の代替手段と不動産取引 p94~ ジャーナリズムから見た中間省略登記( 遠藤信明 )

〔問　1〕　Ａ所有の土地が，ＡからＢ，ＢからＣへと売り渡され，移転登記も完了している

〔問　1〕　Ａ所有の土地が，ＡからＢ，ＢからＣへと売り渡され，移転登記も完了している ( 宅建 ) 要点解説講義要点確認テスト 1 権利関係 1 問題制限時間 20 分問 1 意思無能力者又は制限行為能力者に関する次の記述のうち民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか 1 意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合その者が意思能力を回復した後にその意思表示を取り消すことができる 2 未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合その未成年者が婚姻をしていても