電子コンテンツ導入・利用の 現状と課題（表紙）

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1 電子コンテンツ導入 利用の 現状と課題 早稲田大学図書館笹渕洋子 平成 27 年度大学図書館職員短期研修京都大学 : 平成 27 年 10 月 8 日東京大学 : 平成 27 年 12 月 3 日 1

2 本日の内容 1. コンテンツ整備に係る環境の変化と利用の動向 2. 電子ジャーナルの契約 3. 課題解決に向けた出口戦略 1. コンソーシアムの取り組み 2. オープンアクセスの取り組み 2

3 はじめに 電子コンテンツ契約を取り巻く 三重苦 価格の上昇 為替レートの変動 消費税課税 新聞でも話題に 海外学術誌高騰 悩む大学 寡占化 - 急な円安 通常の図書費を圧迫 ( 日本経済新聞.2015 年 5 月 16 日. 朝刊, 40 面 ) 3

4 1. コンテンツ整備に係る環境の変化と利用の動向 5,000 価格 (US$) 雑誌価格の上昇 化学 8.3% Chemistry 4,500 物理学 7.1% Physics Engineering 4,000 Biology 3,500 3,000 工学 8.8% 生物学 8.1% Astronomy Food Science Botany 2,500 2,000 1,500 1, 全分野平均 7.4% (21 年間 ) 農学 8.1% Geology Zoology Technology Math & Computing Science Health Sciences General Science Agriculture 0 Geography 年 Average Library Journal に掲載された Periodicals Price Survey を基にJUSTICE 事務局で作成 4

5 為替レートの変動 130 円 米ドル 160 円 ユーロ 200 円 英ポンド 年 年 年 三菱東京 UFJ 銀行の外国為替相場一覧表に基づき JUSTICE 事務局が作成 5

6 資料購入費の減少 全体 百万円 90,000 80, % 1.6 その他 70,000 60,000 50, データベース 電子書籍 40, 電子ジャーナル 30,000 20,000 10, 雑誌 図書 対 大学総経費比率 1 大学あたり 百万円 その他データベース電子書籍電子ジャーナル雑誌図書 文部科学省大学図書館実態調査結果報告 学術情報基盤実態調査結果報告より 6

7 購入雑誌数の推移と電子ジャーナルの導入状況 ( 一大学あたり ) 雑 ,000 電誌子タ 800 ジイ 10,000 ャート 700 ルナ数(ル 600 8,000 タ冊イ子和雑誌 ( 冊子 ) 500 ト体)ル洋雑誌 ( 冊子 ) 6,000 数国立 (EJ) 400 公立 (EJ) 300 4,000 私立 (EJ) , 文部科学省大学図書館実態調査結果報告 学術情報基盤実態調査結果報告より 7

8 電子ジャーナル利用の変化 自然科学 よく利用 ( 週 1 回以上 ) ときどき利用利用していない 人文社会科学 よく利用 ( 週 1 回以上 ) ときどき利用利用していない JANUL 2001 JANUL % 62.3% 22.3% 22.4% 33.5% 15.5% JANUL 2001 JANUL % 9.0% 18.0% 18.0% 83.5% 64.1% PULC % 17.7% 38.5% PULC % 14.5% 73.9% SCREAL % 12.5% SCREAL % 26.7% 31.9% SCREAL % 16.1% SCREAL % 26.7% 29.6% SCREAL % 4.9% 12.8% SCREAL % 21.8% 20.3% SCREAL2014 基本集計 より 8

9 電子ジャーナル利用できるタイトル電子ジャーナル利用できるタイトル数の 総タイトル数 3,000,000 推移と内訳 ( 国公私別 ) 推移と内訳 ( 国公私別 ) 平均タイトル数 12,000 2,500,000 10,000 2,000,000 1,500,000 1,000, ,000 8,000 6,000 4,000 2,000 アグリゲータ ( 私立 ) カレント ( 私立 ) アグリゲータ ( 公立 ) カレント ( 公立 ) アグリゲータ ( 国立 ) カレント ( 国立 ) 国立大学平均公立大学平均私立大学平均 0 国立公立私立国立公立私立国立公立私立国立公立私立国立公立私立 JUSTICE 契約状況調査より 9

10 電子ブックの利用状況 (2011) Q21 電子書籍 ( 文献 ) を表示できる端末を 研究 教育に 関連する資料のために利用していますか? 自然科学教員 (n=2,124) 15.6% 7.9% 47.0% 29.5% 自然科学大学院生 (n=729) 17.4% 10.3% 50.2% 22.1% 人文社会科学教員 (n=722) 19.0% 8.3% 49.2% 23.5% 人文社会科学大学院生 (n=308) 22.1% 11.0% 40.6% 26.3% 利用している 利用したことはないが 今後は利用したい 利用したことがある 利用したことはないし 今後も利用しないと思う SCREAL2011 調査報告書 : 学術情報の取得動向と電子ジャーナルの利用度に関する調査より 10

11 モバイル端末の利用状況 (2014) Q21 モバイル端末を 研究 教育に関連する 資料を読む ため に利用していますか? 自然科学教員 (n=2,143) 16.8% 16.7% 15.3% 11.7% 39.7% 自然科学大学院生 (n=737) 18.3% 17.9% 13.0% 15.5% 35.3% 人文社会科学教員 (n=616) 21.4% 17.4% 12.7% 12.5% 36.0% 人文社会科学大学院生 (n=352) 31.3% 6.3% 18.8% 12.5% 31.3% ほぼ毎日利用している 月に 1~2 回利用している まったく利用したことはない 週に 1~2 回利用している 以前利用していたが最近は利用していない SCREAL2014 基本集計 より 11

12 電子ブックの利用状況 : 提供元別 Safari (Safari TechBooks Online - O'Reilly, Google Play (Google ブックス ) Amazon Kindle Store Apple ibookstore 海外の出版社 書店のサイト 国内の出版社 書店のサイト 図書館を通じて利用 その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% その他 国内の出図書館を通版社 書店じて利用のサイト 海外の出版社 書店のサイト Apple ibookstore Amazon Kindle Store Google Play (Google ブックス ) Safari (Safari TechBooks Online - O'Reilly, Prentice Hall 等 ) 週に1 回以上利用する 0.8% 8.9% 4.1% 4.4% 1.2% 3.6% 4.2% 9.2% 月に1 2 回程利用する 0.4% 13.1% 10.0% 8.9% 2.4% 5.4% 6.6% 3.7% 利用したことがある 0.6% 19.7% 23.3% 20.6% 9.3% 11.0% 11.4% 6.8% 知ってはいるが利用したことはない 4.3% 31.6% 39.6% 39.6% 59.4% 62.8% 47.4% 30.7% 知らない 93.8% 26.7% 22.9% 26.6% 27.8% 17.2% 30.3% 49.5% SCREAL2014 基本集計 より 12

13 総タイトル数 2,500,000 電子ブック平均購入タイトル数の推移 ( 国公私立別 ) 平均タイトル数 10,000 2,000,000 8,000 1,500,000 1,000, ,000 6,000 4,000 2,000 国内 ( 私立 ) 国外 ( 私立 ) 国内 ( 公立 ) 国外 ( 公立 ) 国内 ( 国立 ) 国外 ( 国立 ) 国立大学平均公立大学平均私立大学平均 0 国立公立私立国立公立私立国立公立私立国立公立私立国立公立私立 JUSTICE 契約状況調査より 13

14 入手スピード 2. 電子ジャーナルの契約 冊子体 輸送 受け入れ業務に時間がかかる タイムラグなし 電子ジャーナル 利用場所 時間図書館の利用条件による図書館外からも 24 時間利用可能 同時アクセス不可多くの場合制限なし 将来の利用保証 現物が手元にあり安定 コンテンツは提供側にあり不安定 契約終了後は利用できない場合も 購入 基本的にタイトル単位 タイトル単位のほか パッケージ単位 論文単位でも購入可能 受入 冊子体と電子ジャーナルの比較 1 冊ごとの受け入れ業務欠号の督促業務製本業務 保存スペース必要狭隘化の課題不要 なし 欠号も生じないアクセス障害対応は必要 機器なし提供するためのシステムが必要 利用統計取得困難多くの場合取得可能 14

15 電子ジャーナルの契約モデル 個別タイトル契約 必要なタイトルのみを選択 ( 従来の冊子体購読の延長 ) 冊子 + 電子購読 電子オンリー購読等 パッケージ契約 各出版社や学会の発行する雑誌を全タイトル または分野別タイトル等のパッケージで契約 アグリゲータ契約 複数の出版社のタイトルを分野単位で横断的に集めたパッケージ Pay per View 契約 論文単位で料金を支払って利用 バックファイル契約 パッケージ契約に含まれない創刊号から一定時期までを別途契約 15

16 電子ジャーナルの支払モデル 定額制 支払額の予測が可能 予算をたてやすい 毎年価格上昇あり 従量制 利用統計により翌年の契約額を決定 支払額が変動 予算確保が困難 利用促進に足枷 Pay per view 前払いトランザクション 読みたい論文をすぐに入手できる 論文単位でみると高額 個人での利用可能 コレクションの構築 保存にはつながらない 前払いの場合繰り越しの有無あり 16

17 パッケージ契約とアグリゲータ契約 パッケージ契約 アグリゲータ契約 収録タイトル 自社のタイトルのみ 主題 分野により出版社を 横断して収録 利用可能範囲 一定時期より最新号まで ( カレント ) バックファイルは別売り 古い部分から利用可能だが 最新刊部分にエンバーゴあり 契約終了後のアクセス購読タイトルは利用可能利用不可 タイトル数 出版社の刊行タイトルほぼ全て コレクションにより大小様々 支払額高い比較的安い 17

18 パッケージ契約の価格要素 BASE PRICE FTE(Full Time Equivalent) Tier サイトライセンス プライスキャップ E-only DDP(Deeply Discounted Price) 契約開始時点で購読していたその出版社の冊子体雑誌の総額 契約額算出のベースとなる 専従 ( フルタイム ) 構成員換算数 FTE や大学の規模 利用量などにより大学をランク分け 大学などの組織単位での契約 価格上昇率の上限 (%) 冊子体を購読せず電子ジャーナルのみを契約する形態 パッケージ契約をする場合に設定される 冊子体の割引価格 18

19 イトル従来購読して 非購読誌へのアクセス料金支払額パッケージ契約 (Big Deal) の構造 契約開始時点での購読実績に基づく価格モデル ある出版社から購読しているタイトル ( もしくは購読規模 ) を維持することが条件 いない雑誌 アクセス料金の追加支払 パッケージに含まれる全タイトルを 購読 / 非購読にかかわらず利用できる 従来から 購読している ( 非購読誌 ) 従来から購読している 利用できる雑誌 ( 購読誌 ) 雑誌 ( 購読誌 ) タ19

20 パッケージ契約の課題 大手出版社による寡占 出版社主導の値上げアクセス権の保証は購読誌のみアクセスゼロのタイトルの存在タイトル単位での中止による微調整不可購読規模維持モデルの硬直化 Win-Win 関係の崩壊 20

21 3. 課題解決に向けた出口戦略 3.1 コンソーシアムの取り組み コンソーシアムとは 複数の参加機関が共同してより良い条件で電子ジャーナルなどを購入するため形成する連合体 形態 : コンソーシアムにより異なる 交渉 契約 支払などの全てを一元化 交渉を一元化 契約 支払は個別 コンソーシアム間の連携 ICOLC(International Coalition of Library Consortia) 世界の約 200 の図書館コンソーシアムが参加 21

22 大学図書館コンソーシアム連合 (JUSTICE: Japan Alliance of University Library Consortia for E-Resources) 設立 目的 JANULコンソーシアムとPULCを統合して発足 設立準備総会を開催電子ジャーナル等の電子リソースに係る契約 管理 提供 保存 人材育成等を通じて 我が国の学術情報基盤の整備に貢献する 参加費 大学の規模により 3 区分を設定し 2013 年度より徴収 参加機関 525 館 ( 現在 ) 国立 :98 公立 :68 私立 :356 その他 :3 事務局 会員館からの出向による専任職員 3 名の事務局を NII 内に設置された図書館連携 協力室に配置 22

23 JUSTICE の運営体制 連携の枠組み 国立情報学研究所 大学図書館と国立情報学研究所との連携 協力推進会議 大学図書館コンソーシアム連合 ( JUSTICE ) ( 事務局 ) 図書館連携 協力室 (3 名 ) 運営委員会 (14 名 ) 出向 (*1) *1)2015 年度は東大 阪大 明大から 会員館 会員館 会員館 国公私立大学図書館協力委員会 交渉作業部会 調査作業部会 委員 (*2) 会員館 広報作業部会 会員館 国大図協公大図協私大図協 *2) 作業部会委員は合計 28 名 JUSTICEウェブサイトより 23

24 JUSTICE の活動 (1) 出版社等との交渉を通じた電子リソースの購入 利用条件の確定 交渉を一元化 契約 支払は個別 事務局予備交渉および本交渉の実施 (2014 年度は 100 回 ) 電話 電子メールによるやりとり 2014 年度は 53 社と提案合意 版元提案説明会の開催 ( 一橋大学一橋講堂中会議場 ) 契約状況調査の実施 ( 毎年 5-6 月 ) 電子ジャーナルのバックファイルや電子コレクション等の拡充 電子リソースの管理システムの共同利用 連携 協力推進会議の電子リソースデータ共有作業部会に参加 24

25 JUSTICE の活動 (2) 電子リソースの長期保存とアクセス保証 CLOCKSS の活動への協力 電子リソースに関わる図書館職員の資質向上 NII 実務研修生の受け入れ 電子資料契約実務必携 の刊行 (2012.3) 報告会 勉強会の開催 :2013 年度 導入コンテンツ見直し事例報告会 :2014 年度 版元提案書の読み方入門 :2015 年度 電子資料契約実務研修会 in 京都 広報活動 情報収集 広報誌 Jusmine の刊行 他コンソーシアムとの情報交換 : ICOLC ミーティングへの参加 ( 大学図書館研究 に報告を掲載 ) 25

26 電子ジャーナルバックファイルの整備 年製品交渉主体 2003 Oxford University Press 電子ジャーナルバックファイル ( ) NII-REO 上でナショナルアカデミックライセンスとして提供 ( 約 200 誌 ) 2005 Springer 電子ジャーナルバックファイル ( ) 2006 Oxford University Press 電子ジャーナルバックファイル ( ) 2011 Springer 電子ジャーナルバックファイル ( ) * カレント契約とバックファイル購入のセット 2015 年 8 月より NII-REO 上でナショナルアカデミックライセンスとして提供 (1,063 誌 ) NII NII, JANUL, PULC NII, JANUL, PULC JUSTICE 提供出版社サイト NII-REO(NII Repository of Electronic Journals and Online Publications) 26

27 人社系コンテンツの整備 年製品交渉主体 C/20C House of Commons Parliamentary Papers (HCPP) ( 英国議会下院文書 ) 2010 The Making of the Modern World (MoMW) ( ゴールドスミス クレス文庫 ) C House of Commons Parliamentary Papers (HCPP) ( 英国議会下院文書 ) 2012 The Making of the Modern World II (MoMW II) ( セリグマン文庫等 ) (19 世紀後半以降 ) 2013 Eighteenth Century Collections Online(ECCO) NII, JANUL, PULC NII, JANUL, PULC JUSTICE JUSTICE JUSTICE 提供出版社サイト NII-REO(NII Repository of Electronic Journals and Online Publications) 27

28 電子ブックの整備 契約モデル 買い切り型 年間購読型 PDA(Patron-Driven Acquisition) DDA(Demand Driven Acquisition) 契約単位 タイトル単位 分野 出版年によるパッケージ 特徴 同時アクセス数 ダウンロードオプション 28

29 国内電子書籍に関する検討会の活動 出版関係者との懇談 平成 26 年度に 5 回開催 大学図書館の認識を説明し 意見交換 情報共有 JUSTICE 会員館の和図書貸出状況調査 目的 : 大学図書館が整備すべき国内電子書籍の数量 種類を推定し 出版関係者に電子化を促すための基礎データとする 対象 :JUSTICE 会員館の大学 19 大学 ( 国立 9, 公立 3, 私立 7) 方法 :19 大学から 2011~2013 年度 (3 年間 ) の和図書貸出ログの貸与を受け 大学 貸出年度 出版社等の単位毎に集計し 表 グラフを作成し 内容を分析 作業期間 :2014 年 12 月 ~2015 年 4 月 29

30 3.2 オープンアクセスの取り組み SCOAP 3 : Sponsoring Consortium for Open Access Publishing in Particle Physics 高エネルギー物理学分野 (HEP) の査読付きジャーナル論文のオープンアクセス化を目的とした国際連携プロジェクト スイスにある CERN( 欧州原子核研究機構 ) が中心となる 研究者コミュニティーによる取り組み 対象誌 :10 誌 経緯 2007 CERN 所長から日本への提案 高エネルギー加速器研究機構 国公私立大学図書館協力委員会 NII の三者が共同で EOI( 関心表明 ) に署名 連携 協力推進会議 SCOAP 3 タスクフォースが対象誌購読状況調査を実施 購読コスト削減額 ( 拠出額 ) の算出 CERN との間で MoU(Memorandum of Understanding) を取り交わす SCOAP 3 スタート NII から参加機関へ請求書送付 (3 年間はユーロ価で固定 ) 30

31 従来の購読モデル NII ウェブサイトより 31

32 SCOAP 3 のモデル NII ウェブサイトより 32

33 CLOCKSS Controlled Lots of Copies Keep Stuff Safe アクセスの保障と恒久的保存の課題解決に向けた取り組み 出版社と図書館の共同プロジェクト ダークアーカイブ : 何らかの事情が発生した場合に限り出版社に代わって電子資料をオープンアクセスで提供 国立情報学研究所がアジアにおけるノードとなり 日本の実務レベルの窓口を担当 参加機関 :91 機関 ( 現在 ) 33

34 CLOCKSS 概念図 NIIより提供 34

35 参考情報 SCREAL(Standing Committee for Research on Academic Libraries, 学術図書館研究委員会 ) Web サイト JUSTICE Web サイト 大学図書館コンソーシアム連合 (JUSTICE)- 活動の概況 / icsfiles/afieldfile/2014/04/25/ _1.pdf 尾城孝一. NEXT JUSTICE.NII 学術情報基盤オープンフォーラム SCOAP 3 (SPARC Japan 国際学術情報流通基盤整備事業サイトより ) 35