かびと生活表. 昆虫類 ( 室内塵性ダニ類を含む ) の加害対象による分類分類加害対象と生態的特徴 ) 衛生害虫細菌真菌ウィルスを媒介する 2 吸血する 3 刺したり咬んだりする 4 寄生する寄生虫の中間宿主になる 6 皮膚炎を起こす 7アレルゲンとなる 2) 家屋害虫 8 建材や家具

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ゆきえいさか
5 years ago
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1 Vol.6, No.2(3) 特集室内環境に発生する昆虫とカビとの関係 ( 株 ) エフシージー総合研究所暮らしの科学部副部長環境科学研究室室長川上裕司はじめに現代日本の住宅の多くは高断熱高気密住宅になり年間を通して住居内の寒暖差を縮めることに成功し居住者の快適性が高まったようですその弊害として従来問題視されていなかった mm に満たない小さな昆虫類や室内塵性ダニ類にも快適な生活環境を提供したと言えましょうこれを反映するように室内生息型の昆虫やダニが引き起こす刺咬害不快感アレルギーが問題視されはじめ室内環境におけるアレルゲンの上位にダニカビハウスダストが挙げられるようになりました, 2) ハウスダストの中には昆虫の死骸や破片が沢山含まれています筆者は住居や公共施設などの室内環境中に生息する昆虫類と室内環境カビの両者について同時並行で長年研究していますが両者は別個に存在するわけではなくむしろヒトの生活環境を巧みに利用してお互いに複雑に関わり合って生活していると考えています. 室内環境に生息する昆虫類地球上には約 80 万種の昆虫が現存するといわれていますが既知種の数倍にあたる約 00 万種が存在するという説もあります 3) 地球上での進化と繁栄の観点から見ると脊椎動物の頂点が人類で無脊椎動物の頂点が昆虫類です地球上の動物の 80% が昆虫類であり地球は昆虫の惑星であるとも言えましょう室内環境に生息する昆虫類は生態や加害対象によって衣類害虫食品害虫家屋害虫衛生害虫不快害虫に分類されます( 表 ) また昆虫の発生型からは. 住居内発生型 ( 畳敷物住宅建材などから発生する ) 2. 屋外発生侵入型 ( 庭やベランダで発生して室内に侵入する ) 3. 物品付着侵入型 ( 外部から持ち込まれる家具商品梱包材などから発生する ) の 3 つの型に分類できます建物が都市部にあるか田園地帯にあるかという立地条件や建築構造の違いによっても室内環境で見られる昆虫の種類は違ってきます代表的な種を表 2 に示します 3) 2. 室内生息性昆虫とカビとの関わり室内生息性昆虫とカビとの関係で筆者がこれまでに研究対象としてきたのはタバコシバンムシ (Lasioderma serricorne 英名 Cigarette beetle; 図 A) ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella 英名 Indian meal moth) コナナガシンクイ (Rhizopertha dominica 英名 lesser grain borer) ヒラタチャタテ(Liposcelis bostrichophila 英名:booklouse; 図 C) な 9

2 かびと生活表. 昆虫類 ( 室内塵性ダニ類を含む ) の加害対象による分類分類加害対象と生態的特徴 ) 衛生害虫細菌真菌ウィルスを媒介する 2 吸血する 3 刺したり咬んだりする 4 寄生する寄生虫の中間宿主になる 6 皮膚炎を起こす 7アレルゲンとなる 2) 家屋害虫 8 建材や家具を食害したり汚染したりする 3) 食品害虫 9 食品を食害したり汚染したりする 4) 衣類害虫衣類や敷物を食害したり汚染したりする ) 不快害虫 * 室内に侵入するなど不快感を与えるが刺咬害や皮膚炎の原因とならない * 不快害虫を衛生害虫に統合する考え方もある表 2. 昆虫類 ( 亜綱 - 下綱 - 目 - 種 ) の分類と室内環境で見られる代表種亜綱 Subclass 下綱 Infraclass 目 Order 種 Species ( 代表種 ) 双関節丘亜綱 Dicondylia 無翅下綱 Asterygota 双関節丘亜綱 Dicondylia 有翅下綱 Pterygota シミ目 ( 総尾目 ) Thysanura 2 ゴキブリ目 ( 綱翅目 ) Blattaria 3 シラミ目 ( 虱目 ) * Anoplura(Phthiraptera) 4 チャタテムシ目 ( 噛虫目 ) * Psocoptera カメムシ目 ( 半翅目 ) Hemiptera 6 コウチュウ目 ( 鞘翅目 ) Coleoptera 7 ノミ目 ( 隠翅目 ) Siphonaptera 8 ハエ目 ( 双翅目 ) Diptera 9 チョウ目 ( 鱗翅目 ) Lepidoptera ハチ目 ( 膜翅目 ) Hymenoptera ヤマトシミセイヨウシミマダラシミチャバネゴキブリクロゴキブリワモンゴキブリトビイロゴキブリアタマジラミコロモジラミケジラミヒラタチャタテホンチャタテカツブシチャタテスカシチャタテトコジラミタバコシバンムシコナナガシンクイコクヌストモドキヒメマルカツオブシムシなど多数ネコノミイヌノミイエバエキイロショウジョウバエホシチョウバエセスジユスリカノシメマダラメイガイガコイガクロアリガタバチシバンムシアリガタバチイエヒメアリ * 最近の分類ではシラミ目とチャタテムシ目をひとつにしたカジリムシ目 ( 咀顎目 Psocodea) が提唱されている 96

Vol.6, No.2(3) A C 図. A; タバコシバンムシ,B; タバコシバンムシの体毛に自ら出した粘着物質 ( 矢印 ) で付着するカビ胞子,C; ヒラタチャタテ,D; アスペルギルスコニカス (Aspergillus conicus) どですタバコシバンムシ ( 以下本種と称する ) は体長.7 ~ 3.

らの捕獲調査によって住宅に極めて普通に生息するだけでなく店舗オフィスビル小学校幼稚園病院スポーツ施設美術館駅舎児童公園など何処にでも普通に生息する昆虫であることが明らかになりました本種は都市部の住居では 4 月下旬から月上旬まで発生します 4-6) 本種は生活環境に普通に生息することから

住宅が密生する東京都内の方が郊外や近県よりも沢山捕獲される傾向にありますコナナガシンクイについては前 2 種ほどではありませんが住居内の台所で普通に捕獲されます 9, ) ゴキブリ類は細菌のキャリアーとして知られていますがクロゴキブリのように良く目立つ大型のゴキブリ類が気密性の高い住宅に侵入し

室内生息性のチャタテムシの仲間にはヒラタチャタテカツブシチャタテソーメンチャタテウスグロチャタテホンチャタテなど種が存在しますがこれらはカビを食べることが知られています特に本や紙作品のフォクシング (foxing: 褐色斑点による汚損劣化 ) の起因菌であるアスペルギルスレストリクティ節 (Aspergillus

3 Vol.6, No.2(3) A C 図. A; タバコシバンムシ,B; タバコシバンムシの体毛に自ら出した粘着物質 ( 矢印 ) で付着するカビ胞子,C; ヒラタチャタテ,D; アスペルギルスコニカス (Aspergillus conicus) どですタバコシバンムシ ( 以下本種と称する ) は体長.7 ~ 3.mm の茶褐色楕円形の小さな甲虫です広食性で穀類とその二次加工食品漢方生薬ドライフラワーなどの乾燥植物質から鰹節などの動物質まで食害事例は多岐にわたります 99 年以前には昆虫研究者の間でも乾燥葉タバコの害虫食品工場で時々発生する食品害虫まれに住宅の畳から発生する害虫との認識しかありませんでした筆者らの捕獲調査によって住宅に極めて普通に生息するだけでなく店舗オフィスビル小学校幼稚園病院スポーツ施設美術館駅舎児童公園など何処にでも普通に生息する昆虫であることが明らかになりました本種は都市部の住居では 4 月下旬から月上旬まで発生します 4-6) 本種は生活環境に普通に生息することから有害な微生物を体表面に付着させてキャリアーとなるのではないかとの仮説を立て本種から微生物を分離して同定する研究を始めま B D したこの結果本種の体表面から多種の真菌 ( カビコウボ ) が分離され体表面と消化管からは種前後の細菌とコウボが分離されました 7, 8) 本種とノシメマダラメイガについては住宅が密生する東京都内の方が郊外や近県よりも沢山捕獲される傾向にありますコナナガシンクイについては前 2 種ほどではありませんが住居内の台所で普通に捕獲されます 9, ) ゴキブリ類は細菌のキャリアーとして知られていますがクロゴキブリのように良く目立つ大型のゴキブリ類が気密性の高い住宅に侵入し繁殖するケースは減少傾向にあるようですゴキブリ類に替わって存在すら知られていない小さな昆虫類が台頭してきたように考えていますこれらの昆虫類はヒトの生活環境に適応したライフサイクルをもつ都市型昆虫であるといえますそしていずれもカビなどの微生物のキャリアーとなりうる存在であると考えています 9, ) 室内生息性のチャタテムシの仲間にはヒラタチャタテカツブシチャタテソーメンチャタテウスグロチャタテホンチャタテなど種が存在しますがこれらはカビを食べることが知られています特に本や紙作品のフォクシング (foxing: 褐色斑点による汚損劣化 ) の起因菌であるアスペルギルスレストリクティ節 (Aspergillus section Restrictii) に属するカビの仲間 ( アスペルギルペニシリオイデス A. penicillioides アスペルギルスコニカス A. conicus( 図 D) など ) を餌にしているようです近年ヒラタチャタテは新たなアレルゲンであることが筆者らの研究で明らかになりましたが菌食性であることがアレルゲン性と何か関係しているかもしれません ) 3. タバコシバンムシから分離されたカビとマ

4 かびと生活イコトキシン産生能筆者は 996 年から現在まで様々な室内環境とその周辺で本種を捕獲してカビの分離を行ってきましたこれまでに分離されたカビは約 60 種を数えましたアスペルギルス属のカビが種分離されましたが本属のカビはマイコトキシンを産生する種が多いことでも知られています筆者は食品衛生上問題視されているオクラトキシンを産生するアスペルギルスオクラセウス (A. ochraceus) を付着させていることが多いことに注目しましたオクラトキシンは A B C TA の 4 つの型があり発ガン性遺伝毒性腎毒性催奇形性生殖毒性神経毒性などが報告されていますオクラトキシンが消化管経由で生体に吸収された場合高い濃度で腎臓に分布し更に細胞での DNA および RNA の合成を阻害することも知られています 2) A. オクラセウスの胞子を本種に人為的に付着させてみますとこのカビに寄生されて体節からカビ菌糸が発生しましたまた採集してきた本種の体表面を走査型電子顕微鏡で観察してみると毛根のくぼみで発芽する胞子や体毛に付着するアスペルギルスの胞子を確認することができました ( 図 B) カビが出した粘着物質によって体毛に固着している様子はあたかもカビの意思によるものと見て取れました 3) 液体クロマトグラフタンデム質量分析装置 (LC/MS/MS) によって本種由来の A. オクラセウスのオクラトキシン A と B の産生量を分析した結果を表 3 に示しますここに示す値は大麦で培養した場合の産生量です虫由来株のオクラトキシン A の分析値を土壌由来株 ( 基準株 ) と比較してみると産生量が極めて高い株が存在することが判りました肺アスペルギルス症の起因菌として医真菌学上重要視されているアスペルギルスフミガタスも本種の体表面から分離されますこのカビはフミトレモルゲンベルクロゲングリオトキシンなどの 4 種類のマイコトキシンを産生しますこれらは強い痙攣を引き起こしたり免疫機能を阻害したりすることが知られていますが虫由来の A. フミガタスがマイコトキシン陽性株であることが明らかになっています ) カビ側に立った昆虫への付着のメリットを考えた場合以下の 3 つの仮説を類推することができます. 昆虫類の移動分散採餌に伴って体表面に付着するカビ胞子も広範囲に移動分散することができる 2. 空気の流れに左右される不確定な空中浮遊胞子とは異なる運搬様式によって昆虫付着胞子は新たな基質や食品での繁殖が容易になる 3. カビ自らが放出した粘着物質によって本種の体毛にしっかりと貼り表 3. タバコシバンムシ分離 A. ochraceus の ochratoxin A 産生能が高い上位 6 株株番号捕獲場所捕獲期日 ochratoxin A 住所年月生成量 (mg/g) 産生能神奈川県相模原市 (Y 宅 ) 埼玉県上尾市 ( 小学校 ) 埼玉県上尾市 ( 小学校 ) 神奈川県相模原市 (Y 宅 ) 神奈川県相模原市 (Y 宅 ) 神奈川県相模原市 (Y 宅 ) 標準株 NBRC a) 基質 ( 大麦 )g あたりの生成量 b)nbrc44 株を基準とした 0.0 ~ 0. 未満 :+ 0. ~. 未満 :++. ~ 未満 :+++ ~ 未満 :++++ 以上 : b)

5 Vol.6, No.2(3) 30 3 付いたカビ胞子の様子は何等かの意図があるものと考えています筆者らの最近の DNA 分析による研究からオクラトキシンを産生する種は A. オクラセウスではなく近縁のアスペルギルスウエスターディジキア (A. westerdijkiae) であることが判ってきましたおわりに国際的な物流の動きは海外の製品工場と家庭の茶の間を直結させることになり外来種の室内への侵入を容易にしました輸入家具の検査は植物防疫法の対象外で輸入業者の自主検査任せであることから多くの製品が梱包から開封まで度も検品されずに消費者の手元に届くのが現状です高度経済成長期に住宅建材のラワン材とともに侵入し日本に定着してしまったヒラタキクイムシ (Lyctus brunneus) の例があるように今後も新顔の昆虫が室内環境に侵入して来ることが懸念されますまた熱帯地域から輸入されている外国産の甲虫が体表面にダニを寄生させていることは稀なことではなく細菌カビウイルスを付着させてくる可能性がないとは断言できません全く輸入規制のないペット昆虫の微生物検査や輸入規制について検討することが望まれます参考文献 ) 川上裕司 (07) 室内環境中に見られるダニ類と小昆虫類室内環境 ) 小屋二六永倉俊和編集 (998) 気管支ぜん息に関わる家庭内吸入アレルゲン現在の知見とその対策公害健康被害補償予防協会 ( 現 ( 独 ) 環境再生保全機構 ). 3) 川上裕司杉山真紀子 (09) 博物館美術館の生物学カビ害虫対策のための IPM の実践雄山閣 74. 4) 川上裕司中野敬一 (996) 一般住宅の屋内とその近縁屋外におけるタバコシバンムシの生息調査 ( 第報 ) 家屋害虫 8-8. ) 川上裕司中野敬一 (997) 一般住宅の屋内とその近縁屋外におけるタバコシバンムシの生息調査 ( 第 2 報 ) 家屋害虫 ) 川上裕司加瀬泰行 (998) 住宅と山林におけるタバコシバンムシの生息調査家屋害虫 -9. 7) 川上裕司清水一郎ら (02) タバコシバンムシから分離された真菌類衛生動物 ) 川上裕司本堂朋子ら (04) タバコシバンムシ Lasioderma serricorne Fabricius から分離された細菌と酵母菌家屋害虫 ) 川上裕司髙橋治男 (07)Aspergillus ochraceus の carrier としての衛生害虫マイコトキシン ) 川上裕司 () 第 4 章住居に発生する昆虫と微生物との関係住居医学 (Ⅴ)( 筏義人吉田修編 ) 米田書店. ) Fukutomi Y., Kawakami Y., et al. () Allergenicity and cross-reactivity of booklice (Liposcelis bostrichophila ): A common household insect pest in Japan. Int Arch Allergy Immunol, 7, ) 中島正博 (0) オクラトキシンA-その発癌性と汚染実態マイコトキシン ) Nakagawa A., Kawakami Y., et al. (08) Adhesion rate and the adhesion patterns of the fungi spore on the body surface of the cigarette beetle, Lasioderma serricorne. J. med. Entomol. zool, 9,

生活科学研究室01

生活科学研究室01 In vitro 株式会社エフシージー総合研究所食品料理研究室 http://www.fcg-r.co.jp/lab/foods/ 調理科学的評価官能評価レシピ開発栄養評価などさまざまな角度から食品や料理栄養調理器具を調査研究していますまた毎日産経新聞に料理レシピを提供し約 2 万点のデータベースを構築そのレシピはリーフレットや web などに幅広くご利用いただいています