2010年度版　レポートの書き方の手引き

Transcription

1 レポートの書き方の手引き 配布する レポート形式ファイル を用いて作成すること 見やすく 読みやすいレイアウトになるように工夫すること レポートとは データから論理的に言えることを書くものである 明確な部分と明確でない部分がはっきり分かるようにすること レポートは感想文ではないことを肝に銘じること 1. 文体 表現方法について ~である 調で書く です ます調 体言止め 主語 述語 目的語を意識して書く ただし 主語に 私 が来ることはほとんどない 一文を短くする シンプルな文章がベスト 小説のような装飾はしないこと 文章が長くなると主語 述語 目的語の関係性が分かりにくくなる ( 書き手 読み手ともに ) 記号 数字 英語は半角を使用する 半角記号の後ろには半角スペースを入れる ( 例外あり ) 同一の指標に関しては有効数字の桁数を揃える 以下のような文体 表現方法を行ってはいけない 口語的表現 指示語の多用 無用な略語 同じ事柄を 2 種類以上の用語で書く 差別的表現 2. 本文の内容について本授業におけるレポートは, 基本的に以下にのっとったものである 日本心理学会が発行する学術誌 心理学研究 の 執筆 投稿の手引き ただし, 教員から指示があった場合はそれに従うこと 2-1. 問題 目的 問題 目的では その研究を行う問題意識 ( その研究を行う動機 ) や意義 ( 研究の目的 ) また関連する先行研究について述べる 1

2 1 研究の背景 2 先行研究で分かっていること 3 先行研究では明らかになっていない点を指摘 4 その点を扱う意義 5 研究の目的を明確に記述 なぜこの研究を行うのかという必然性と その研究結果からどのような問題が解明されるのかを分かりやすく書く 2-2. 方法 実際に行った方法が読み手も再現可能であるように記述する 実験に関係のないことに関しては記述しなくてよい (ex. 部屋に入って ) 教示文をそのまま記載すると文章が読みにくくなるため 再現可能な範囲で簡略化すること いまから単語を見せるので覚えてください と伝えた 呈示される単語を記憶するように教示した 全て文章で記述し 箇条書きや体言止めは原則使用しない 過去形で記述すること 必要に応じて, 小見出しを使って わかりやすく表現する小見出しの例 : 参加者 装置 材料 刺激 実験計画 手続きなど 方法の書き方の例方法参加者 : 大学生 84 名 ( 男性 50 名, 女性 34 名 ; 平均年齢 20.4 歳, SD = 1.2) が実験に参加した 材料 : ナカニシヤ出版 教材心理学 内のミュラー リヤー錯視刺激を用いた ( 図 1) 標準刺激の主線の長さは 2

3 2-3. 結果 実験や調査から得られた事実について記述する 得られた数字を羅列するのではなく その数字が意味することについて記述すること 干渉条件の反応時間 (M = 秒, SD = 4.72) が統制条件の反応時間 (M = 秒, SD = 3.90) よりも長かった 全て文章で記述し 箇条書きや体言止めは原則使用しない 過去形で記述すること 結果の内容を分かりやすくするために, 適切な図表を作成して載せること 図表を載せるだけではなく 必ず文章化すること 図表を載せたことを文章中に明記すること ex.) 図 1 に示す を分析対象とした ( 図 1) 図や表は, それに言及している結果の文章の近くに載せることが望ましい 大きすぎて 1 ページに入りきらない場合以外は ページをまたがないように 図の作り方 図のみの通し番号 ( 図 1, Figure 1, Fig.1) とタイトルをつけること 通し番号とタイトルは図の下に入れること 軸の目盛りやタイトルもきちんと入れること 見やすくなるように線の太さや種類などを工夫すること 縦軸ラベル ( 必要な場合は単位も ) 日本語は縦書き, 英語は下から上へ横書き 平均反応時間 ( 秒 ) 標準偏差 or 標準誤差のバー ( 必要な場合のみ ) グラフエリアの枠線を消す 0 統制条件 干渉条件 図 1 各条件における平均反応時間および標準偏差 横軸ラベル 図の通し番号とタイトル 3

4 表の作り方 表のみの通し番号 ( 表 1, Table 1) とタイトルをつけること 通し番号とタイトルは表の上に入れること 表は横線のみで構成し 縦線は極力用いないこと 表 1 各条件における平均反応時間および SD 干渉条件 統制条件 M SD M SD 反応時間 ( 秒 ) 誤答数 ( 個 ) 同一データに関して, グラフと表の両方を記載することは基本的にありません レポートに数字を記載する場合は, 各指標で有効数字 ( 小数点以下の桁数 ) を揃える 小数の記載方法 1 を上回ることが可能な統計量について 1 未満の数を表す場合は, 小数点の前にゼロを付す t 値,F 値,1 を上回ることが可能な SD SE 1 を超えることがない統計量の場合は, 小数点の前に 0 を付さない 相関係数 (r =.34), 有意確率 (p =.031), 割合 (.50) など なお統計的検定を行った場合には, 用いた検定方法とその結果を記すこと 統計的検定の結果の書き方の例 色名単語条件と無意味単語条件の平均反応時間に対して 対応のある t 検定を 分析対象は何か? 行った検定方法は何か? 行った結果 色名単語条件の反応時間が無意味単語条件の反応時間よりも有意に長 かった (t (83) = 12.76, p <.001) さらに 検定の結果は? t 検定の場合 t ( 自由度 ) = t 値, 有意確率 なお, 統計記号はイタリック ( 斜体 ) で表記する ( ギリシャ文字は除く ) e.g.) t, F, r, p, SD 4

5 有意確率 (p 値 ) の記載方法 正確な p 値を小数点以下 2 桁ないし 3 桁で報告する (p =.004) ただし,p 値が.001 未満の場合には,p <.001 と表記する 従来は, 有意な場合は p <.05, p <.01, p <.001 のいずれかを, 有意でない場合は n.s. が使用されてきた ( 現在の論文の大多数は未だこのような表記方法であるものが多い ) しかし,APA 論文作成マニュアル第 2 版からは, 正確な p 値を報告することが推奨されている 2-4. 考察 結果に基づいて 問題 目的に対してどのような成果が得られたのかを述べる 考察の冒頭で 目的および主要な結果について簡潔にまとめてあることが望ましい 原則として現在形で記述する ただし 結果のまとめや実験の内容についての記述は過去形にする 研究結果や文献などを論理的な根拠として論を展開する 自分の考えによって記述した部分と 文献を参照あるいは引用した部分とが読み手に区別できるように記述する 主観のみを述べた感想文にならないように注意すること 2-5. 引用文献の書き方 本文中での引用の仕方 ( 石王敦子 (1990). 線画 - 単語課題における聴覚 - 視覚間ストループ干渉, 心理学研究, 61, より抜粋 ) ストループ干渉とは 色単語を印刷している色と色単語が不一致の時に 色命名が妨害 されることをいう (Stroop, 1935) Cowan & Barron (1987) は 色と色単語について聴覚 - 視覚間の干渉を調べた 引用したことが分かるように明記する 著者が 3 名以上いる場合は 初出では全員の姓名をあげ 2 度目からは 他 ( 年数 ) ( et al., 年数 ) と第一著者のみを示す 初出 ( 文中に文章として入れる場合 ) 無藤 仲 大渕 (2003) は... Muto, Naka, & Ohbuchi(2003) は... 初出 ( 括弧内に文献を示す場合 ) ( 沖田 椎名 下仲,2003) (Okita, Shiina, & Shimonaka, 2003) 2 度目以降 ( 文中に文章として入れる場合 ) 沖田他 (2003) は... Okita et al.(2003) は... 2 度目以降 ( 括弧内に文献を示す場合 ) ( 沖田他, 2003) (Okita et al., 2003) 直接引用 ( 文献の文章をそのまま引用する場合 ) では 引用した部分を引用符 ( ) で 括り 引用を明確にする 5

6 引用文献一覧の書き方 レポートに引用した文献は, レポート末尾に一覧として全て挙げる 著者の姓によるアルファベット順に並べること 同姓の著者の場合はファーストネームのアルファベット順に, 同一著者の複数の文献は発表年次の古いものから並べること レポートを書くに当たって参考にした文献は, 引用文献とは別に参考文献として示してもよい 記載順は 雑誌の場合は 著者名 ( 刊行年次 ). 表題雑誌名 ( 外国雑誌の場合には斜体 ), 巻, ページ. 著書の場合は 著者名 ( 刊行年次 ). 著書名出版社 ( 出版社が外国の場合は所在地も示す ) 著者の分担執筆の場合は 著者名 ( 刊行年次 ). 表題編者名 ( 編 ) 著書名出版社 ( 出版社が外国の場合は所在地も示す ) インターネットの引用 電子媒体からの引用は極力避ける 削除されて 他の人が閲覧できない 著者が明らかでない場合が多い等 引用する場合には, 著者名, 年号, 資料題名, サイト名, アップデート日, <URL>, ( 資料にアクセスした日 ) としてあげる Ex) American Psychological Association (2004). APA topic: ADHD. American Psychological Association < (February 25, 2004) 孫引きについて孫引きは極力避け できるだけ原典に当たるようつとめる必要がある 3. レポートや論文を書く上での参考文献 American Psychological Association (2010). Publication manual of the American Psychological Association (6th ed.). Washington, DC: Author. ( アメリカ心理学会. 前田樹海 江藤裕之 田中建彦 ( 訳 ) (2011). APA 論文作成マニュアル第 2 版医学書院 ) 松井豊 (2010). 心理学論文の書き方卒業論文や修士論文を書くために改訂新版河出書房新社日本心理学会 (2015) 年改訂版投稿 執筆の手引き日本心理学会 < (2016 年 4 月 27 日 ) 6

7 4. 実際にレポートや論文を書く手順 1 まずは方法から書く 方法は変わることはないので 忘れる前に書いてしまう 2 結果を次に書く 結果も変わることはないが 目的に合った形に後で修正する必要 3 目的を明確にした上で問題 目的を書く 目的に上手くたどり着くように先行研究を配置する 4 目的に合った考察を書く まず目的 結果をまとめ それらを考察していく 5 引用文献リストを作る 忘れがち注意 時間に余裕があるうちに作ること 6 全体を他人のつもりで読み返す 論理展開 文体 ( 一文の長さ 助詞 接続詞など ) 7 図表を挿入し 配置を確認する 最初に入れるとずれるので 最後で OK 縦横比が崩れないように注意 7

8 心理学研究の投稿 執筆の手引きより 8