< 海外情勢 > [ トランプを過小評価した金正恩の誤り ] 藤井厳喜 ( 国際政治学者 ) 2 月 27~28 日ベトナムの首都ハノイで開催された米朝首脳会談は何ら前向きの成果を生み出すことなく終了した日本のマスコミは一般に交渉決裂あるいは交渉失敗という報道を流したがこれは必ずしも

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ひろとうとだ
5 years ago
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1 < 海外情勢 > [ トランプを過小評価した金正恩の誤り ] 藤井厳喜 ( 国際政治学者 ) 2 月 27~28 日ベトナムの首都ハノイで開催された米朝首脳会談は何ら前向きの成果を生み出すことなく終了した日本のマスコミは一般に交渉決裂あるいは交渉失敗という報道を流したがこれは必ずしも正確ではないしかし第 2 回目の米朝首脳会談が積極的な問題打開策を打ち出さなかったのは確かである一体何が起きたのだろうかこの間の事情を現在入手し得る情報をもとに分析してみよう現状維持を選んだ両首脳今回の米朝首脳会談が決裂したという評価は正確なものではない交渉決裂あるいは古い言い方をすれば談判決裂となれば決裂後に起こるのは米朝間の軍事紛争であるそこまでいけば確かに交渉は失敗したということになる和平交渉が失敗すれば戦争が勃発するのであるしかし今回はそうはならなかった金正恩は帰国して直ちに核実験とミサイル実験を命じたわけではない又トランプも交渉が失敗したからといって直ちに北朝鮮攻撃の準備を始めたわけでもない正確に言えば両首脳は現状維持を選択したのである両首脳の別れ際に金正恩はトランプに当面核とミサイルの実験は再開しないと明言している即ち核実験とミサイル実験に関しては凍結状態を継続するということである少なくともこれによって米朝間の戦争は当面回避できることになる金正恩が帰国した後にミサイル実験場再開の動きが見えるというがこれは第 3 回目米朝首脳会談に向けての駆け引きの一貫と考えられる行政調査新聞 (2019 年 3 月 11 日 ) 1

2 トランプ大統領はハノイに立つ直前今回の首脳会談では大きな成果が得られないかもしれないと述べていた筆者も今回の米朝首脳会談では大きな進展はなく現状維持となるだろうと予測していたこれはあちらこちらで書いたり話したりしてきた通りである即ち膠着状態が続くということであり大きな変化は起きないということである帰国したトランプ大統領は首脳会談前と変わらず金正恩のことをいい奴優れたリーダーと呼び続けているこの意味するところは第 3 回目の首脳会談はあるだろうし北朝鮮に時間を与えて核や長距離ミサイル開発放棄の決断をさせようという意図であるトランプは焦っていないし寛容さと忍耐力を持ち合わせている一方金正恩が北朝鮮に帰国した後北朝鮮メディアは米朝首脳会談の成功を報じている具体的成果は出なかったが世界の超大国アメリカを相手に丁々発止の外交を繰り広げたというニュアンスで金正恩がアジアの平和に貢献したというメッセージを流布しているということは北朝鮮の方も仕切り直して第 3 回目の米朝首脳会談に向けて準備を整えているということであろう結論としていえることは当面の間米朝間の軍事紛争は回避できるという予測であるこれだけでも 1 つの成果と言えないことはない何故金正恩はトランプを読み誤ったのか? 今回の首脳会談で金正恩は明らかにトランプの対応を誤って予測していた完全な読み違いであるそれはどういうことかと言えば金正恩は寧辺の核施設の全面放棄と引き換えにアメリカの経済制裁全面解除を勝ち取れるものと思ってハノイに乗り込んでいる謂わば小さい妥協で大きな成果を得ようとしていたのだところがアメリカ側は核施設は寧辺だけではなく多数あることを把握しておりその全面的な解体放棄を要求したここで妥協は不可能となったのであるアメリカ側がかねてから衛星情報やヒューミント ( 人間を媒介とした諜報活動のこと合法活動や捕虜の尋問等も含みスパイ活動のみを指すわけではない ) により北朝鮮の多数の核施設を把握していることは周知の事実である北朝鮮側もそれくらいのことは知っていたはずだまして米朝間では実務者協議も事前段階で行われておりアメリカが何処までの条件なら受け入行政調査新聞 (2019 年 3 月 11 日 ) 2

3 れて経済制裁を解除するかについては実務者レベルで打診が行われているはずであるにも関わらず金正恩は寧辺のみの放棄でアメリカの全面的な経済制裁解除は勝ち取れるものと誤断してハノイに乗り込んだのであったこれは実に初歩的なミスで何故金正恩がそこまで楽観的であったのかは筆者にとっても疑問であったしかし首脳会談後様々な情報を総合するに及んでこの金正恩の誤った判断の背後が見えてきた 2 月 27~ 28 日ハノイで米朝首脳会談が行なわれている正にその時にアメリカの首都ワシントンでは米議会で重要な公聴会が開催されていたトランプの個人顧問弁護士であったマイケルコーヘンという人物が議会で証言をしていたのである米民主党員や反トランプのアメリカのメインストリームメディア ( MSM) はコーヘン弁護士がロシア疑惑について爆弾発言をするものと期待していたのである確かにコーヘン弁護士はトランプ個人については詐欺師であるとか信用できないとか散々の悪口を言い立てたが肝心のトランプ選対とロシア政府の共謀関係については全面的に否定したのであるコーヘン証言はトランプを追い込もうとしていた人々にとっては全くの肩透かしなのであったしかし事前の段階でコーヘン弁護士の証言が所謂ロシア疑惑問題においてトランプを決定的に追い込むのではないかとの観測は流布されていた結論から言うと北朝鮮側はこの情報を過信してしまったのである筆者の推論するところアメリカの MSM 米民主党と北朝鮮の間には何らかの現実的なコンタクトがあったものと考えられる又突っ込んで言えばアメリカ連邦政府内の反トランプの官僚集団である所謂ディープステイトそのものが北朝鮮側にこの情報をもたらしていたのではないかと推測できるのだ北朝鮮側はこのアメリカ左翼からの情報リークを信じトランプが非常に弱い立場でハノイに来るものと勘違いしていたのであるそしてコーヘンの爆弾発言の印象を打ち消す為にトランプは北朝鮮側に大きな妥協を行なって米朝和解は出来たという外交上の勝利を宣伝したがっていると思いこんでいたつまり米朝和解トランプ外交の大成果というニュースをもってコーヘン発言を相殺するに違いないそう北朝鮮側は判断していたのであろ行政調査新聞 (2019 年 3 月 11 日 ) 3

4 うそれ故に金正恩は寧辺の核施設の放棄だけでアメリカの全面的な妥協を勝ち取れるものと誤算していたのであるこの金正恩の提案に対しトランプは即座に分江その他の核施設の存在を明示し全核施設の放棄を要求したこの時金正恩は驚愕の表情を見せたと伝えられている明らかに思惑は外れたのであるその為に首脳間の交渉は極めて短時間で終了してしまった金正恩がこれでどうだといった条件に対してトランプは全面的に NO と突き返したこれでお終いである但し両者とも次回交渉への期待はあり平和的問題解決への意志はあるので敢えて喧嘩別れとはしなかったのである 2 日目は午前中の首脳会談の冒頭で以上のようなことが起きてしまいワーキングランチも中止となった午後以降の会談もキャンセルされたこう考えてくると金正恩が犯した間違いは習近平が犯した間違いと同類である中国共産党のアメリカ情報収集も極めてワンサイドで限られたものになっていた中共指導部は先ずトランプの当選を予測できなかった第 2 に当選したトランプは極めて弱い大統領でありロシアゲート問題などで追い込まれ早期に退陣するか継続するにしても強い指導性が発揮できない弱い政権であると見くびっていたとても 2018 年 6 月以来の対チャイナ経済制裁を行なえるような強い大統領になるとは思ってもみなかったのであるこの理由も簡単で習近平指導部が第 1 にアメリカ研究に重きを置いてこなかったこと第 2 にアメリカの左翼リベラルサイドのみの分析や予測に関心を払いアメリカの保守派や右派の同行に無知であったことこの 2 つが大きな原因であるそれ故に習近平指導部はアメリカの対中経済制裁に遭遇し打つ手なしで戸惑い醜態を繰り返してきたのである今や恥も外聞もなくとにかく制裁を解除させる為にあらゆる術策を用いているという段階である以上のように見てくると金正恩も習近平もアメリカが正確に見えていなかった為に大きな外交上のミステイクを犯したと言えるだろう米中朝関係はどうなるかこれに加えてトランプが長期的に米中朝の関係をどのように考えているのか正確に把握しておくことは重要である既にこのシリーズでも指摘した通りだがトランプは中朝をひと繋がりの問題と捉えている北朝鮮が暴れまわれるのは何といってもチャイナの後押しがあるからである行政調査新聞 (2019 年 3 月 11 日 ) 4

5 チャイナからすれば北朝鮮非核化という問題にアメリカの外交力を集中させチャイナの脅威から目を逸らせたいとの思惑があるところがトランプはこの手に乗らずチャイナこそ最大の脅威であり北朝鮮はそれに付属した問題であるとの正しい認識を持っているそこでトランプは先ずチャイナを徹底的に追い込みその延長線上で北朝鮮問題の解決は簡単になるであろうと予測しその通りに行動しているつまりトランプは金正恩に対してチャイナといつまでも付き合っていても北朝鮮にろくな未来はないそれよりもアメリカと友好関係になれば金王朝体制の存続は保証するし北朝鮮も経済繁栄の道を歩むことは出来ると説得しているのである別の角度から見ればアメリカはこの非核化問題を梃として使いながら北朝鮮をチャイナから引き離したいのであるそしてアメリカサイドに引き寄せて対チャイナ包囲網の一貫に北朝鮮を加えたいという腹であるそれが何故今回の首脳会談がベトナムで開かれたかの理由にもなっている現在のベトナムは反中親米色を強めている勿論チャイナ企業もベトナムには進出しているものの南シナ海の領土紛争でチャイナ企業が焼き討ちされた事件が数年前にあったベトナムもチャイナも共産党の一党独裁であり表面的な友好関係は保っているものの現実には対立的側面が強烈であるそもそもベトナムの外交史は北のチャイナからの侵略に抵抗する歴史であるベトナムは分断国家であったが北ベトナムが南ベトナムを吸収して統一に成功したそして今や新興国として経済繁栄の道を歩んでいるその外交路線は反中親米化しているトランプとすれば北朝鮮に対してこのベトナムの路線を歩めと言いたかったのであろうそのメッセージを込めたベトナムでの米朝首脳会談開催であったのだ行政調査新聞 (2019 年 3 月 11 日 ) 5

北朝鮮に対するトランプ政権の真意 8 月 8 日北朝鮮の威嚇的な発言を受けてトランプ米大統領は次のように語っている北朝鮮はアメリカへの脅迫行為を続けるべきではないさもなければ世界が未だに目にしたことのないような炎と怒りに直面するだろうトランプ大統領の強い口調は後半だけ取り上げるとあた

北朝鮮に対するトランプ政権の真意 8 月 8 日北朝鮮の威嚇的な発言を受けてトランプ米大統領は次のように語っている北朝鮮はアメリカへの脅迫行為を続けるべきではないさもなければ世界が未だに目にしたことのないような炎と怒りに直面するだろうトランプ大統領の強い口調は後半だけ取り上げるとあた < 海外情勢 > 第二次朝鮮戦争はあるか? アメリカが北朝鮮を先制攻撃する時藤井厳喜 ( 国際政治学者 ) 7 月 4 日と 28 日に北朝鮮が ICBM の発射実験を行ないにわかに米朝間に緊張が高まってきた更に 8 月 8 日北朝鮮の軍報道官は以下のような声明を発表したアメリカに重大な警告の信号を送るため中長距離戦略弾道ミサイル火星 12 号でグアム島周辺への包囲射撃を断行する為の作戦案を慎重に検討している