社会インフラとしての ネットワークシステム

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1 Network System as Social Infrastructure System あらまし ITシステムが複雑化し, お客様から保守サービスに関する様々な要望 期待が寄せられている 富士通エフサスでは, サーバやストレージから構成される情報システムに加えて, ITのバックボーンであるキャリアシステム, 従来のPBX 技術からIP 化の著しいテレフォニーシステム, ライフラインに直結した公共複合システムなどの様々なお客様システムにおいても安定稼働を実現するために, お客様の特徴に合わせた体制を構築し柔軟な保守サービスを提供している また, お客様の強い要望であるマルチベンダのハードウェア製品保守について応えるべく, 富士通製品で培った保守ノウハウを生かしたサービスを提供している 本稿では, 当社 CEによる直接保守サービスの提供状況や, 今後ますます多様化するに対するサポート活動について紹介する Abstract Customers demands and expectations for maintenance services have increased because information technology (IT) systems have become complex. Fujitsu FSAS matches its service to a customer s circumstances to achieve stable operation of a variety of customer systems through a flexible maintenance service. Such systems include information systems consisting of servers and storage devices, telecommunication carriers systems, which are the backbone of IT, telephony systems, which have changed rapidly from public branch exchange (PBX) to Internet protocol (IP) technology, and public lifeline systems. Fujitsu FSAS customer engineers (CEs) make the best use of maintenance knowhow cultivated through supporting Fujitsu products to maintain products from multiple vendors in order to meet the strong demands from customers for multivendor hardware environments. This paper introduces an example of Fujitsu FSAS s CE services and mentions its future activities related to maintenance services. 渡辺徹 ( わたなべとおる ) ( 株 ) 富士通エフサス NGNサポート統括部所属現在, キャリアネットワークシステムのサポート業務に従事 中山季男 ( なかやますえお ) ( 株 ) 富士通エフサス NGNサポート統括部所属現在,PBXや公共複合システムなどのサポート業務に従事 笹谷幸雄 ( ささやゆきお ) ( 株 ) 富士通エフサス NGNサポート統括部所属現在, キャリアネットワークシステムのサポート業務に従事 FUJITSU. 60, 2, p (03, 2009) 181

2 まえがき富士通エフサスは, 社会生活や経済活動の基盤として不可欠な社会インフラ ( 学校や病院, 道路, 港湾, 河川, 上下水道, 電気, ガス, 電話など ) を支えるITシステムの保守に携わり, 安定運用に貢献している これらのITシステムは, サーバとストレージ製品を組み合わせたシステムと, 電話やインターネットといったネットワークシステムに大別される 本稿では, の動向とそのシステムサポートに対する取組みについて紹介する ネットワークシステムのサポートに求められる要件は, お客様の運用方針やシステム規模などの条件によって以下のように異なっている (1) ネットワークシステムの中でとりわけ規模の大きいキャリア ( 通信事業者 ) のシステムはライフラインである 業務や日常生活や緊急時の連絡手段として欠くことのできない電話サービスにトラブルが発生した場合, 社会に与える影響は非常に大きい (2) 企業内のネットワークシステムである内線網は業務に欠かすことのできないインフラであり, 従来の交換機からIP 技術によるテレフォニーシステムへの置換えが著しい (3) ネットワークのスキルを生かした公共複合システムは, 電力 ガス 水道といったライフラインや, ダム, 河川といった治水設備を監視するために構築されており, 日常の正常性確認から大規模災害などでの被害状況の迅速な把握を行うために重要な役割を果たしている 次章よりそれぞれのシステムに対する具体的な取組みについて紹介する キャリアシステムサポート通信事業を展開されているお客様のシステムは, ITインフラのバックボーンであり重要な社会インフラである オープン化,IP 化に伴い, キャリアのシステムは, キャリア仕様の専用交換機により実現していた電話回線網からIPネットワークを介した技術とサービスに置き換えられている 動画再生でもスト サービスプロバイダ サービス基盤 IP ネットワーク アクセス インターネット サーバ 高性能 ( コア ) 汎用 ( エッジ ) フォトニックアクセス :ADSL,FTTH モバイルアクセス 図 -1 キャリアIPネットワークイメージ Fig.1-Image of IP network by telecommunication carriers. レスを感じない高速通信サービスに加え, 携帯電話も多機能化し, 音声通話のみならずインターネットを介した新たなサービスを開発 提供する機運が高い その実現手段として国際標準 (ITU-T) のNGN (Next Generation Network) に準拠したネットワークが2008 年度より導入され, 商用サービスを開始した ( 図 -1) このような背景の中, キャリアが採用する設備は音声信号を主に扱っていた時代のキャリア仕様の交換機に替わり, 汎用製品 ( サーバ ) とキャリア対応の高性能 サーバ ( 富士通では UB300,GeoStreamおよびCisco 製キャリア向けを提供 ) が併せて採用されている さらにキャリア向けソフトウェアを載せて, 高性能 高品質 高可用性を実現し, エンドユーザの要望に応えている このようなキャリアシステムのサポートでは, 以下の点に重点を置く必要がある 不具合発生時の迅速な被疑箇所の特定 被疑製品の迅速かつ的確な原因究明 根本原因の究明と再発防止策の展開富士通エフサスは, このようなお客様のニーズに対応するべくCSD(Carrier system SupportDesk) を立ち上げ, 運用している その体制イメージを 182 FUJITSU. 60, 2, (03, 2009)

3 ャリア部品配送キコール オンサイト CSD 故障受付/ 調査 診断/ 対処提案 専任 CE オンサイト修理 パーツセンター 部品配送 開発部門 OSC 図 -2 CSD 体制概要 Fig.2-System of carrier system SupportDesk. 図 -2に示す CSDには以下のようなスキル ノウハウを有するエンジニアを配置している キャリアシステムの理解 システム設計ノウハウ ハードウェアスキル ソフトウェアスキル(OS, ミドルウェア, アプリケーション ) ネットワークスキルこれらのスキル ノウハウを持ったエンジニアが連携し, システムや製品の動きを把握しながら迅速に被疑箇所を特定する その後に, 汎用製品であればOSC(One-stop Solution Center: 汎用製品のサポート受付窓口 ) と, 高性能製品やキャリア向けソフトウェアであれば開発部門が連携し, 詳細調査と対処方法を検討する その結果, オンサイト対応が必要な場合にはキャリアシステムを理解した専任 CEを現地派遣し, 必要に応じて交換部品も同時に配送し, 迅速な復旧作業を実現している 故障原因の詳細解析や根本原因究明, 再発防止対策についてもCSDが徹底してフォローしていく体制を構築しており, お客様のニーズに応えるよう対応している キャリアネットワークのサポートに向けては専任 CEのスキルアップが重要である 富士通エフサスは,Cisco 社のネットワーク技術認定資格 (CCIE: Cisco Certified Internetwork Expert/CCNP:Cisco Certified Network Professional/CCNA : Cisco Certified Network Associate) の取得者育成に力を入れている 2008 年 11 月現在でCCIE 取得者 45 名を筆頭に資格取得者を育成しており, さらなる資格所有者を増員すべく取り組んでいる これらスキルを持った CEが,CSDと密な情報連携を行うことで, レベルの高いサポートをキャリアに提供している キャリアを取り巻く技術環境は, 日々変化 進化しており, CSDもその流れに対応できるよう今後もスキルアップを図り, サポート品質の向上に努める テレフォニーシステムサポート企業のお客様のインフラの一つであるテレフォニーシステムにおいて, 富士通は数万を超えるお客様に,PBX( 構内交換機 ) を採用いただいている 電気や水道のライフラインと同様に安定かつ長期的な稼働が要求されるシステムであり,15 年を超えて長期にわたって稼働しているケースもある 保守形態は, 宅内配線や電話の移動などの工事を含む要素が多くあるため, 機器販売から工事 保守を含めた富士通パートナによる体制が主体であり, 富士通エフサスのサポートもパートナと連携した体制となっている また, お客様自身が保守を行う自営保守システムが多いのも特徴である 一方, 企業ネットワークは,IPネットワークの普及に伴い,IPをベースとしたネットワーク構築/ 再構築が進んでいる また, 音声とデータを統合する VoIP ( Voice over Internet Protocol ) ネットワーク環境へ変化していく中で, 企業内コミュニケーションにおいても個々のお客様のワークスタイルやビジネススタイルが変化しており,ITインフラシステムとの融合で多様なコミュニケーションが取れるIPテレフォニーシステムへと変化している ( 図 -3) このような新たな環境の変化において, これからのPBXに求められるのは, もしもし はいはい の電話だけのシステムから, 最適なVoIP ネットワークの構築とオフィスアプリケーション / 業種アプリケーションとの連携 融合であり,ITシステムの一部としてのシステムである 富士通は, 音声 / 画像 / データのあらゆるコミュニケーションを一つに統合するIPテレフォニーシステムを提供している 保守サービス部門においても, 電話システムのみの技術者から, 音声とデータを統合したネットワークシステム全体をサポートできる技術者を養成し, FUJITSU. 60, 2, (03, 2009) 183

4 従来 PBX IP テレフォニーシステム 公衆網 アナログ電話機 多機能電話機 アナログ電話機 多機能電話機 IP ネットワーク スイッチ アプリケーションサーバ IP 電話機 PBX PHS PHS IP 電話機 無線 LAN 携帯電話 図 -3 テレフォニーシステム構成 Fig.3-Structure of telephony system. 雨量計 貯水量 130 水位 35.7 流量 85.6 水位計 風向風速計 情報収集装置 無線装置 処理系サーバ ダム表示板 交通情報 2km 先渋滞道路表示板 情報提供先 官公庁 自治体 地域住民 監視カメラ 映像伝送装置 光アクセスリング 気象情報 道路 センサ系 データ収集系 ネットワーク系 データ処理系 情報提供系 図 -4 公共複合システム構成 Fig.4-Complex system for public works. サポートに従事している 今後も多種多様な形態のお客様システムのサポートサービスの向上に向けて, 技術サポート窓口の一本化, 情報提供 公開の強化など, 円滑で高品位なサポート環境の提供に力を入れていく 公共複合システムサポート公共複合システムは, 社会インフラの様々な情報を管理するシステムであり, ライフラインを確保する電力 ガス監視 / 水道管理システム, 官公庁 自治体のダム / 河川管理, 地震 / 環境監視システム, さらにビル管理システムとその適用範囲は多岐にわたっている 計測技術をベースにネットワーク技術や情報処理 技術 映像技術を組み合わせて, 遠方にある計測器のデータ収集, 設備の監視および制御を行うシステムである ( 図 -4) お客様ごとの個別システムであり, ハードウェア ソフトウェアを含めたシステム全体を熟知した専任技術者によって24 時間 365 日対応のサポートサービスを提供している また, システムはセンサ系 収集系 ネットワーク系 処理系 情報提供系と多品種の機器で構成されている このため, このようなシステムを保守するには, 幅広い製品知識が必要である とくに外部センサなどは他社製品のためマルチベンダ機器対応が必須となっている これら社会インフラの情報を監視 管理する公共 184 FUJITSU. 60, 2, (03, 2009)

5 複合システムは自然災害や環境汚染などの社会問題を解決する手段として今後も確実に増え続けることが想定される さらにこれからも進化を遂げるネットワークや処理装置に対応するため, 保守技術者のシステムスキルを向上させ, 高品質な保守サービスの提供を継続していく むすび本稿では, のサポートについて, お客様の多様化する要望に応える取組みについて紹介した 今後も多機能化 複雑化するネットワーク技術や ITシステムのスキルを高め, 安定稼働によるお客様満足度の向上を目指し活動していく所存である FUJITSU. 60, 2, (03, 2009) 185