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1 放射線の性質と生体への影響 本章の目標 放射線について分類し それぞれの特徴について学ぶ 放射線が物質に衝突すると エネルギーを与える 生体分子との衝突により 直接的 間接的に及ぼす 傷害と それに伴う生体機能障害について学ぶ 放射線の性質と生体影響に関する基本的知識に基づき 放射線の有効利用と放射線障害の未然防止のた めの方策について学ぶ 8.1 放 射 線 の 性 質 と 分 類 放射線は粒子の流れである粒子線と エネルギーの流れである電磁波の二 つに大きく分けることができる 粒子線には いずれも物質をイオン化する 離放射線の種類を列挙でき 能力 すなわち電離能力がある 電磁波は その波長の長さによって性質が 大きく異なる 図 8.1 電磁波のうち X 線と c 線には電離能力があり 通 人に影響を与える電 る 非電離放射線の種類 を列挙できる 常電離能力のない電磁波とは区別して扱われる 電離能力のある放射線を電 離 放 射 線 ionization radiation と い い そ う で な い も の を 非 電 離 放 射 線 nonionizing radiation という 単に放射線というときには 一般に電離放 射線を意味する 放射能とは 不安定な原子核が安定な原子核へと変化 壊 変 する際に放射線を放出する能力 またはその強さを意味する 放射能を もつ物質を放射性物質 radioactive material 放射能をもつ元素を放射性 同位元素 radioisotope ; RI あるいは放射性核種 radioactive nuclide とい う 8.2 電 離 放 射 線 の 性 質 と 分 類 電離放射線には粒子線と電磁波があり 粒子線はさらに荷電粒子線と非荷

2 106 8章 放射線の性質と生体への影響 図 8.1 電磁波の波長特性と利用 電粒子線に分類される 図 8.2 α線やβ線などの荷電粒子線は原子や分子 を直接電離することができるので 直接電離放射線とよばれる これに対し γ線や X 線などの電磁波や中性子線のような非荷電粒子線は 一度原子の 束縛電子や原子核と相互作用して荷電粒子線を発生させ 二次的に生じた荷 電粒子線が物質に電離作用を及ぼす このため間接電離放射線とよばれる α 線 原子核の a 壊変に伴って放出される +2 価の電荷をもつ荷電粒子線であり 本体はヘリウムの原子核 陽子 2 個と中性子 2 個が結合したもの である a 線は 衝突した原子の軌道電子をはじきだして電離させる作用が強い また 質量が大きいため物質を透過しにくく 数十 mm の空気層 または薄いゴ ムや紙などで十分に遮蔽される 一方 短い飛距離の間に全エネルギーを失 うため 比電離は非常に大きく 内部被ばくには十分注意する必要がある 図 8.2 電離放射線の分類

3 電 離 放 射 線 の 性 質 と 分 類 β 線 原 子 核 の b - 壊 変 b + 壊 変 の 際 に 高 速 で 飛 びだす 陰 電 子 および 陽 電 子 をそ れぞれ b - 線,b + 線 といい, 両 者 を 総 称 して b 線 という.b - 線 は -1 価, b + 線 は +1 価 の 電 荷 をもつ. 高 速 の b - 粒 子 は, 物 質 を 透 過 する 際 に 物 質 構 成 原 子 との 間 にクーロン 力 を 及 ぼしあい, 相 手 原 子 を 電 離 あるいは 励 起 した り, 自 身 が 散 乱 したりする.また, 原 子 核 近 傍 を 通 過 すると 核 のもつ 電 場 で 減 速 され,エネルギー 消 失 に 相 当 する 電 磁 波 ( 制 動 X 線 )が 放 出 される.b + 線 は 周 囲 の 陰 電 子 と 結 合 して 消 滅 する 場 合 がある( 陽 電 子 消 滅 ). 消 滅 にあた り, 両 電 子 の 質 量 に 相 当 する 0.51 MeV のエネルギーをもった 消 滅 放 射 線 が 2 本, 互 いに 反 対 方 向 に 放 射 される.b 線 の 透 過 性 は a 線 よりは 高 いが,c 線 に 比 べはるかに 低 い. 2 MeV 程 度 の 高 エネルギー b 線 の 空 気 中 での 最 大 飛 程 は 約 2 m であり,10 mm 厚 のプラスチック 板 で 遮 蔽 される.ただし,b 線 放 出 核 種 を 取 り 扱 う 際 には,それ 自 身 の 遮 蔽 とともに 二 次 的 に 発 生 する 電 磁 波 への 配 慮 が 必 要 である γ 線 高 い 励 起 エネルギー 状 態 にある 原 子 核 が,より 低 い 励 起 状 態 あるいは 基 底 状 態 に 転 移 する 際 に 放 射 される 電 磁 波 で,a 壊 変 または b 壊 変,あるいは 核 反 応 に 付 随 して 放 出 される.c 線 は 電 磁 波 であると 同 時 に 光 子 であるが,そ の 波 長 は X 線 とほぼ 同 じかさらに 短 い. 原 子 核 内 から 放 出 されるものを c 線 とよび, 原 子 に 起 因 する X 線 と 区 別 される.c 線 が 物 質 中 を 透 過 するとき, 光 電 効 果,コンプトン 散 乱, 電 子 対 生 成 などの 現 象 によりエネルギーを 失 う. c 線 は,a 線 や b 線 と 比 べると 透 過 性 がはるかに 高 く,その 遮 蔽 には 鉛 など 原 子 番 号 の 大 きいものが 有 効 である X 線 c 線 と 同 じく 電 磁 波 の 一 種 で,c 線 が 原 子 核 内 から 放 出 されるのに 対 し, X 線 は 原 子 核 外 で 発 生 するものをいう. 電 子 と 原 子 の 非 弾 性 散 乱 や 電 子 の 内 部 転 換 などによって 電 子 が 励 起 されたり, 電 子 が 原 子 から 弾 き 飛 ばされたり した 状 態 から 安 定 な 状 態 に 戻 る 際 に,エネルギーが 電 磁 波 のかたちで 放 出 さ れたものが X 線 である.X 線 と c 線 の 物 理 的 性 質 は 本 質 的 に 同 じである 中 性 子 線 核 分 裂 などに 伴 い 放 出 される 中 性 子 を 中 性 子 線 という. 電 荷 をもたないた め 物 質 透 過 性 に 優 れ, 標 的 原 子 の 原 子 核 と 容 易 に 直 接 反 応 を 起 こす. 中 性 子 の 遮 蔽 には, 水 素 あるいは 水 を 多 く 含 んだ 物 質 ( 水,コンクリート,パラ フィンなど)が 用 いられる.これは 水 素 が 中 性 子 とほぼ 同 じ 質 量 で, 中 性 子

4 108 8章 放射線の性質と生体への影響 を減速する効果がきわめて高いためである 透過性が高いのは X 線や c 線 と同様であるが 吸収線量が同じであれば 生体影響は中性子線のほうがは るかに大きい 中性子のエネルギーが高い場合には 陽子や重荷電粒子など の二次粒子も発生する 陽 子 線 重 粒 子 線 加速器を用いて陽子あるいはヘリウムイオン 炭素イオン ネオンイオン などを光速に近い速度まで加速すると 透過力の高い電離放射線が得られる それぞれを陽子線 ヘリウムイオン線 炭素イオン線などとよび 総称して 重粒子線という 身体の深部まで到達し 標的部位にのみ集中した照射が可 能であることから がんの放射線治療法への利用が期待されている 8.3 放 射 線 被 ば く 線 量 の 概 念 電離放射線被ばくに 放射性物質の物理的性質を表現するために壊変速度をベクレル Bq 1 秒 おける線量と生体損傷の関 当たりの個数 で表すのに対し 生体影響やその防護を考える場合には 受 係を体外被ばくと体内被ば くに分けて説明できる け手の立場での放射線量の尺度が必要となる 吸収線量は純粋に物理量であ るのに対し 等価線量と実効線量は放射線の生体影響の尺度であり 吸収線 量に一定の係数を乗じることで算出される指標である 吸 収 線 量 単位質量 kg の物質に吸収された放射線のエネルギー J で表される 式 8.1 吸収線量 D の単位はグレイ Gy である 1 Gy = 1 J/kg 等 価 線 量 同じ吸収線量でも 放射線の種類やエネルギーによって生体影響は異なる そこで放射線の種類およびエネルギーによる放射線荷重係数 wr を定め 表 8.1 吸収線量 D にこれらの係数をかけて等価線量 H を求める 式 8.2 単位はシーベルト Sv で表す H = wr # D 実 効 線 量 さらに放射線に対する組織 臓器の相対的な感受性を組織荷重係数 wt

5 放射線被ばく 表 8.1 放射線荷重係数 放射線の種類 放射線荷重係数 wr X 線 c 線 b 線 電子 すべてのエネルギー 陽子 2 MeV a 線 重原子核 中性子線 エネルギーに応じて 表 8.2 組織荷重係数 組織 臓器 組織荷重係数 wt 生殖腺 赤色骨髄 結腸 肺 胃 膀胱 乳房 肝臓 食道 甲状腺 皮膚 骨表面 残りの組織 として定める 表 8.2 全身の被ばくを評価するためには 被ばくした組 織 臓器の等価線量 Ht を 組織荷重係数で荷重して 身体のすべての臓 器 組織について合計する 式 8.3 この総和を実効線量 E といい 単位 はシーベルト Sv で表す wt # Ht E =! 内 部 被 ば く と 外 部 被 ば く 体外に存在する放射性物質や X 線発生装置などから放射線を受けること を外部被ばく 体外被ばく といい 食物や空気中に含まれる放射性物質を体 内に取り込み それから発せられる放射線を体内で受けることを内部被ばく 体内被ばく という 外部被ばくは放射線を受けているときに限られるが 内部被ばくは放射性物質が体内にあるかぎり続く 放射線防護を考えるうえ で この二つを区別して考えることは重要である c 線や X 線は物質透過性が高く 外部被ばくによって体内深部の細胞にも 影響を与えうるため 外部被ばくに注意する必要がある 一方 a 線は飛程 が短く 直接皮膚と接触させなければ 外部被ばくによる影響を受けること 図 8.3 日常生活と放射線 109

6 110 8章 放射線の性質と生体への影響 はほとんどないが 体内に取り込まれた場合には 周辺の細胞に莫大なエネ ルギーを与えるため 内部被ばくの影響はきわめて大きい 等価線量におい て放射線荷重係数が大きいのはこのためである 日 常 生 活 に お け る 放 射 線 被 ば く 天然には 地球誕生以来大地に存在している放射性物質からの放射線や 宇宙空間から地球に到達する宇宙線などの放射線があり これらを天然放射 線という これに対し 原子炉や加速器などの放射線発生装置から人工的に 発生させる放射線を人工放射線という ヒトは常に天然放射線に暴露されている 天然放射線による人体の被ばく 線量は地域によって異なるが 実効線量で表すと 1 年間に平均 2.4 msv であ る 図 8.3 内訳は 外部被ばくによるものが 宇宙線 0.39 msv 大地から の放射線 0.48 msv であり 内部被ばくによるものが 食物の摂取 0.29 msv 空気の吸入 1.26 msv である 日常生活においては 天然放射線による被ばくのほかに X 線検査など医 療用放射線による被ばくがあり 日本における年間平均被ばく量は 2 msv である 職業として放射線や放射性物質を扱う場合の職業被ばくは 5 年間 で 100 msv かつ年間 50 msv を限度とすることが放射線障害防止法 障防法 により定められている ヒトの放射能 食物の摂取や空気の吸入により天然放射性物質 を取り込んでいるヒトの身体は 常に放射能を発 生している そのおおよその程度を算出してみよ う A Bq λn 0.693/T ω /M g M / u T s ω 40 K の質量ω 例題 体重 60 kg のヒトに含まれる K の放射能 g Bq を求めよ ただし ヒトを構成する元素の 半減期 T うち 19 K は 0.3 重量 を占め K に占める K と K の天然存在比は と K の半 減期は 年として計算せよ 解説 壊変定数λ 壊変原子数 N 半減期 T s 放射性核種の原子質量 M unit 放射性核種の質 量ω g とすると 放射能 A Bq は以下の式から s K の原子質量 M 40 をそれぞれ上式に代入して A / Bq 5.5 kbq となる 算出できる

7 外部被ばくによる放射線の生体影響 外 部 被 ば く に よ る 放 射 線 の 生 体 影 響 1895 年にレントゲンが X 線を発見して以来 放射線は医学 薬学分野を はじめ広く利用されてきた しかしその一方で 放射線がヒトに対しさまざ まな有害作用をもたらすことが報告されてきた 放射線研究の初期には 研 究者自身に起こる脱毛 炎症 びらんなどの皮膚障害 1945 年の原子爆弾 投下では 急性放射線障害のみならず 白血病や甲状腺がんなど晩発性の放 射線障害 1999 年の東海村におけるウラン加工工場で発生した臨界事故では 中性子線被ばくによる作業員の死亡などである こうした放射線による生体影響は その影響が被ばくした個人のみに現れ るか 子孫にまで及ぶかにより 身体的影響と遺伝的影響に大別される 身 体的影響はさらに 被ばくしてから影響が現れるまでの時間により急性障害 と晩発性障害に分類される 遺伝的影響とは 精子や卵子などの生殖細胞の 遺伝子に障害が生じたのち 受精を介して障害が子孫に現れることをいう ま た 1990 年 の 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 International Commission on 勧告により 放射線の生体影響は放射線防 Radiological Protection ; ICRP 護の観点から確率的影響と確定的影響とに分類される 放 射 線 の 生 体 へ の 作 用 過 程 放射線の生体影響は 放射線エネルギーが生体構成分子に吸収されること 図 8.4 放射線による生体への作用過程 111

8 112 8章 放射線の性質と生体への影響 により始まり 影響の程度は基本的にその吸収線量に依存する 作用過程を 分類すると 物理的過程 秒 化学的過程 秒 生 化学的過程 数秒 数分 急性障害過程 数分 数日 晩発性障害過程 数 か月 数十年 となる 図 8.4 物理的過程では 放射線のエネルギーが生 体分子の化学構造とは無関係に 核酸 タンパク質などの生体高分子や水分 子に与えられ これらの分子を電離または励起する 化学的過程では 分子 の電離または励起に引き続き 反応性に富むさまざまなイオン 自由電子 ラジカル種などが生成する 生化学的過程では イオンやラジカル種が周囲 の分子と反応し 機能性分子の構造異常や機能低下を招く その後 生体分 子の損傷に修復が追いつかなければ 細胞の死や組織 臓器の不全から個体 の死につながる 遺伝子の損傷は がんの発生や奇形発生などの遺伝的障害 に結びつくことが多い 放射線被ばく後 生物学的変化が現れるまでに長い 潜伏期間を要し 数十年を経過して現れる晩発性障害もある 水 の 放 射 線 分 解 生体の は水であることから 放射線による水分子の変化は そ の後の生体影響に大きな影響を及ぼす 放射線により 水の電離と解離が起 こる 第 1 段階 二次的な連鎖反応により反応性に富むラジカル種が生じ 第 2 段階 生体分子との反応により各種の傷害をもたらす 第 3 段階 第 1 段階 H2 O H2 O+ + e- H2 O H2 O H + OH 第 2 段階 H2 O+ H+ + OH e- + H2 O e- + H+ e + nh2 O - e- + O2 H + OH HO + OH H + H H2 O- H + OH- H e-aq 水和電子 O2 H2 O H2 O2 H2 第 3 段階 RH + OH RH + H R + O2 ROO + RH H2 O + R R + H2 ROO ROOH +R

9 外部被ばくによる放射線の生体影響 生 体 高 分 子 の 傷 害 高分子化合物に対する放射線のおもな作用は 主鎖と側鎖の切断である これらの作用は線量依存的であり 分子内あるいは分子間の架橋反応を起こ し 分子体積の縮小や粘度の低下などの現象が生じる DNA に放射線が当 たると 各所にラジカルを生じ 塩基の脱離 リン酸基の切断 塩基の脱ア ミノ化 水素結合の開裂 1 本鎖切断 2 本鎖切断 分子内および分子間架 橋などが起こる 生体には各種の傷害修復系が存在する DNA 修復系は多岐にわたり 塩 基損傷に対する光回復反応 除去修復 組換え修復などのシステムがある これらは鋳型となる DNA 鎖が正常であれば 時間をかけて正常回復する DNA 鎖切断のなかで 2 本鎖切断を引き起こした場合には 相同組換え修復 系による修復が行われる しかしこの修復機構では 鋳型による DNA 合成 が行われないことから 修復エラーも起こりやすくなる 電離放射線による DNA の変化が遺伝子突然変異として定着すると 機能 性タンパク質の欠損や異常タンパク質の生成をもたらすほか 発がんの可能 性を高める また生殖細胞に生じた場合には 遺伝的影響が起こる可能性が ある 直 接 作 用 と 間 接 作 用 放射線が生体分子を直接攻撃することで電離または励起し 傷害をもたら すことを直接作用というのに対し 放射線が水分子の電離または解離を介し てフリーラジカルや活性酸素種を生成し 生体分子を攻撃することを間接作 用という 同じ吸収線量であっても 放射線の種類やエネルギーの違いによ り生体影響に量的な差が生じる 放射線が単位長さあたりに平均して失うエ ネルギーを線エネルギー付与 linear energy transfer ; LET といい 放射 線が局所に与えるエネルギー量の違いを表し 線質の違いを知る指標とされ る X 線 c 線 b 線は低 LET 線 a 線 中性子線 陽子線 重粒子線は高 LET 線である LET が高くなるほど生体への影響は大きいが 高 LET 線に よる生体影響は直接作用に基づく割合が高く 低 LET 線による生体影響で は 直接作用と間接作用の両機構が関与する 間 接 作 用 の 修 飾 効 果 a 希釈効果 一定線量下で酵素やウイルスの懸濁液を放射線照射した場合 傷害を受け る溶質分子数は濃度に無関係に一定となる このことを希釈効果という こ 響に変化を及ぼす因子 酸 れは 間接作用を介して水中に生成されるラジカル種の量が一定となるため できる 電離放射線の生体影 素効果など について説明 であると考えられる 直接作用では 傷害を受ける溶質数は濃度とともに増

10 114 8章 放射線の性質と生体への影響 加する b 酸素効果 放射線による生体影響を酸素の存在下と非存在下で比較した場合 酸素存 在下のほうが大きくなることを酸素効果という これは 酸素存在下でラジ カル種の生成が増加するためと考えられる 酸素効果の割合は酸素増感比 oxygen enhancement ratio ; OER で表示され 式 8.4 低 LET 線で大き く 通常 の数値を示す LET が 100 kev/nm 以上では OER は 1 となる 無酸素状態である作用を引き起こすのに必要とする線量 OER 酸素存在下で同一作用を引き起こすのに必要とする線量 8.4 c 温度効果 照射系を凍結したり低温にしたりした際 放射線の生物作用が低下するこ とを温度効果という 低温にすることによりラジカル種の反応性が下がり 作用が低下するものと考えられる がん細胞は正常細胞と比較して熱に弱く 温度を上げて 43 放射線照射すると増感作用がみられる これも温度効 果によるものと考えられている d 保護効果 照射時にラジカル種と反応する物質 たとえば還元型グルタチオンなどの ラジカル捕捉剤 が共存すると 放射線の作用が低下する このような物質 は保護物質とよばれ 照射前に照射系に添加されて効果を示す e 増感効果 保護物質とは反対に 照射前に添加することにより放射線の作用を高める 物質があり 増感物質とよばれる 5-ブロモデオキシウリジンやニトロイ ミダゾールなどが増感作用を示す 細 胞 に 対 す る 影 響 細胞レベルの放射線影響では 細胞自身の性質が強く反映する とくに細 胞増殖との関連が強い 細胞の一般的性質と放射線影響を理解することは 組織 臓器レベルでの放射線影響を考えるのに役立つ a 細胞周期と放射線感受性 細胞が分裂したのち 再び分裂を終了するまでの期間を細胞周期という 大きく四つの過程に分けられる 図 8.5 G1 期 細胞分裂が完全に終了し 次の分裂に必要な DNA 合成が始まるま での準備期間 この期間に細胞の分化を決定したり 静止期 G0 期 への移行を決定したりする

11 外部被ばくによる放射線の生体影響 8. 4 図 8.5 細胞分裂周期 S 期 G1 期のあとに続き 細胞分裂に先立って DNA 複製が行われる期間 G2 期 S 期に続き 細胞分裂に必要なタンパク質が合成される細胞分裂準 備期間 M 期 細胞分裂が行われる期間 放射線感受性は細胞分裂周期により異なる 図 8.6 M 期は最も感受性が 高く G1 初期から中期にかけていったん低下し G1 後期から S 期にかけて 再び感受性が高まる S 期に入ると再び感受性が低下し この状態が G2 期 まで続く G0 期は一般に感受性が低い 分裂移行過程にある細胞集団に放射線を照射すると 細胞の M 期への移 行が遅れ G2 期に停止する このように分裂が通常より遅れることを分裂 遅延という 哺乳類培養細胞を用いた実験では 1 Gy で約 1 時間 10 Gy で約 10 時間の分裂遅延があるとされている 分裂遅延を生ずる線量を上回る放射線を細胞が受けた場合には 細胞は分 裂を停止する この停止状態が長く続き 細胞死に至らないものは 増殖能 の失われた G0 期の細胞となる また 照射後数回分裂したのちに死に至る 図 8.6 細胞分裂周期と放射線感受性 115

12 116 8章 放射線の性質と生体への影響 図 8.7 放射線照射された細胞の SLD 回復 こともある これは増殖死とよばれ 通常数十 Gy 以下の線量で起こるが 線量が少ないほうが死に至るまでの分裂回数が多いとされている 大線量の放射線を受けた場合 細胞は次の分裂期に入ることなく死に至る これを間期死という 成人の神経細胞や筋肉細胞の場合には 数十 数百 Gy の線量で核が濃縮し 細胞膜が縮み 最終的には崩壊する リンパ球や 若い卵母細胞のように分裂能がかぎられた細胞では 比較的低線量 0.2 でも間期死がみられる 0.5 Gy b 細胞障害からの回復 放射線を受けても細胞死に至らない細胞は 元の細胞と同様の性質に回復 エルカインド サ ッ ト ン する この回復現象は E lkind と S utton による分割照射実験により明らか にされた 図 8.7 の曲線①は 培養 CHO 細胞に 1 回照射した場合の生存率 を表し 曲線②は 5 Gy の照射十数時間後に 2 回目の照射を行った場合の 生存率曲線である 1 回目の照射後に損傷の回復がなければ 2 本の曲線は 重なるはずであるが 分割照射後の生存率曲線も 1 回照射後にみられる曲線 と同様の肩をもつ曲線となった これは 1 回目の照射後に死に至らなかった 細胞の損傷が 十数時間の間に元の状態へ回復したことを示している この ような障害を亜致死損傷 sublethal damage ; SLD といい この回復現象 を SLD 回復またはエルカインド回復という 低 LET 放射線では この SLD 回復がみられるため 同一線量が照射される場合 高線量率を短時間 で照射するよりも 低線量率で長時間にわたり照射したほうが 細胞障害は 小さく現れる これを線量率効果という 高 LET 放射線では SLD 回復お よび線量率効果は ないか小さい 個 体 へ の 影 響 哺乳動物は多細胞生物であり 複数種の細胞から構成されている これら

13 外部被ばくによる放射線の生体影響 の細胞は 細胞分裂の特徴から 分裂細胞 休止細胞 非分裂細胞の 3 種類 に分類できる リンパ組織 腸管上皮 皮膚組織など 絶えず盛んな細胞分 射性核種の標的臓器 組織 裂を繰り返している組織や器官では 放射線の感受性が高い 肝臓 腎臓 を説明できる をあげ その感受性の差異 膵臓 甲状腺など 細胞周期の休止期にいる細胞から構成される組織や器官 では 通常細胞分裂しないが 損傷やある種の刺激に応じて分裂を開始する ことができる このような組織の放射線感受性は中程度である 神経や筋肉 組織では 細胞は分裂能を失い 死を迎えるまで定められた機能を全うして いる このような組織や器官では 放射線感受性はきわめて低い a ベルゴニー トリボンドーの法則 ベ ル ゴ ニ ー ト リ ボ ン ド ー B ergonie と Tribondeau は ラット精巣に 226 Ra からの c 線を照射し 分 化過程における生殖細胞に対する放射線の影響を検討し 次の三つの法則を 導いた i 分裂頻度の高い細胞ほど放射線感受性が高い ii 将来分裂能の 大きい細胞ほど放射線感受性が高い iii 形態 機能の未分化な細胞ほど放 射線感受性が高い この結果 未分化で細胞分裂が盛んな細胞は感受性が高 いと結論できる しかしリンパ球は例外で 分裂能はほとんどないが 放射 線に対する感受性は高い b 各組織の放射線感受性 各組織が放射線を受けた場合 その感受性 表 8.3 に応じて機能的障害と 形態学的障害が生ずる 一般的には機能的障害が起こりやすく この障害は 可逆的である 1 造血臓器 血液成分は骨髄でつくられ 成熟後 末梢に移行する リ ンパ節 脾臓 胸腺も造血系に含まれる これらの器官はいずれも放射線感 受性が高い 骨髄中の細胞の感受性は 細胞の種類により多少異なり 赤血 球系 白血球系 血小板系の順となる 大量の放射線照射により 全血球の 減少とともに造血にかかわる赤色骨髄が障害を受け 再生不良性貧血となる 末梢血中には 血漿と血球成分が存在し 放射線感受性はリンパ球 顆粒球 白血球 血小板 赤血球の順となる この感受性は 細胞自身の感受性と は異なり 各細胞の寿命が関係する 各血球系細胞の寿命は リンパ球 数 表 8.3 組織による放射線感受性の比較 放射線感受性 高い やや高い 中程度 やや低い 低い 電離放射線および放 組 織 リンパ組織 造血組織 生殖腺 腸上皮 発育中の胎児 水晶体 口腔粘膜 毛根ろ胞 膀胱上皮 食道上皮 皮膚上皮 汗腺 唾液腺 毛細管上皮 脳 脊髄 肺 肝臓 胆嚢 腎臓 胸膜 甲状腺 膵臓 関節 軟骨 筋肉 神経組織 脂肪組織 結合組織

14 118 8章 放射線の性質と生体への影響 図 8.8 亜致死線量を全身に被ばくしたあとの血球成分の変動 非照射群の細胞数を 100 とする 時間 4 か月 顆粒球 6 10 日 血小板 10 日 赤血球 4 か月 といわ れている 放射線を全身照射した場合 図 8.8 に示すような血球成分の変動 を示す 致死線量の放射線に暴露した個体に ほかの健常個体から採取した 骨髄細胞 造血系幹細胞 を移植することにより 死を回避することができる これを放射線キメラという 2 消化管 消化管の放射性感受性は十二指腸が最も高く 小腸 食道 大腸 胃の順となる 動物で 10 Gy 以上の全身照射を受けると腸壁 主とし て小腸上皮 絨毛基底部に存在するクリプト細胞が障害を受け 上皮細胞 の補給が停止し 体液の流失 下痢 外部からの細菌の侵入により死に至る ことがある これを腸死または腸管死という 3 リンパ器官 脾臓 胸腺 リンパ節はリンパ器官とよばれ 放射線感 受性はいずれも高く 被ばくにより顕著な縮小がみられ 免疫機能も低下す る 4 皮膚 放射線による皮膚障害は皮膚炎とがんである 皮膚炎には 急 性皮膚炎と慢性皮膚炎がある 急性皮膚炎は 1 回に大量の放射線被ばくを 受けた場合に生じ その障害の程度は線量により異なり 表 8.4 に示すよう に 4 度に分類される 慢性皮膚炎は小線量を長時間にわたり被ばくしたとき に生じるが 症状は線量により異なる 軽度のものは乾性皮膚炎であり つ 表 8.4 放射線による急性皮膚炎 皮膚障害 の度数 症状 病的変化 線量 Gy 第1度 第2度 第3度 第4度 脱毛 紅斑 色素沈着 水疱形成 潰瘍形成 毛嚢障害 皮膚毛細管の変化 表皮の変化 皮膚全層の変化

15 外部被ばくによる放射線の生体影響 表 8.5 照射線量と男性生殖器障害 表 8.6 照射線量と女性生殖器障害 照射線量 Gy 男性生殖器障害 照射線量 Gy 女性生殖器障害 短期間の一時的不妊 数年 1 2 年 の長期不妊 永久不妊 短期間の一時的不妊 数年 1 2 年 の長期不妊 永久不妊 40 歳台 永久不妊 20 歳台 8. 4 いで角皮形成などを生ずることもある さらに線量が大きくなると 湿性皮 膚炎 慢性潰瘍などの症状を呈することがあり 慢性皮膚炎が長期間継続す ると皮膚がんの発生につながることが多い 5 生殖腺 細胞再生系組織の代表であり 男女生殖腺ともに放射線感受 性は高い 男性生殖器である睾丸において 精子形成は 精原細胞から精母細胞 精 子細胞 精子の順に行われる ベルゴニー トリボンドーの法則に従い 未 分化で増殖能の高い精原細胞が最も感受性が高く 分化成熟するほどに感受 性は低下する 精原細胞が障害を受け これに続く細胞の補給が断たれると 精子数が減少し やがて不妊になる 表 8.5 に 1 回照射による線量と男性生 殖器障害を示す 一方 雌性哺乳動物では 胚子期に卵原細胞から卵母細胞へと成熟してい るため 成体に達した卵巣には成熟度の異なる卵母細胞が存在し 順次排卵 される 放射線感受性は 若い卵母細胞ほど高くなる 表 8.6 に 1 回照射に よる線量と女性生殖器障害を示す 6 肝臓 潜在的再生系の代表的組織であり 放射線感受性は比較的低い か つ て は 肝 臓 の 貪 食 能 を 利 用 し た 放 射 性 コ ロ イ ド ト ロ ト ラ ス ト 232 の非特異的取り込みによる肝臓機能診断が臨床応用されたが その ThO2 後 これらの患者に肝がんや胆管がん あるいは肝硬変が多発し 肝臓での 内部被ばくが問題となったことがあった 7 甲状腺 健常成人では数十 Gy の線量でも顕著な変化は生じないが 機能亢進症患者では感受性が増大する 幼小児期の甲状腺は放射線感受性が 高く 被ばく後 甲状腺機能低下などの早期障害をきたす場合がある ヨウ 素の特異的集積性から甲状腺が内部被ばくの標的器官であること また頸部 への放射線照射あるいは広島および長崎での原爆による被爆者に晩発性障害 として甲状腺腫瘍の発生率が高いことが報告されている 8 水晶体 眼に対する放射線障害として問題となるのは水晶体である 水晶体上皮細胞が放射線被ばくにより変性し 水晶体内にとどまると 後極 の皮膜下に集まりレンズの混濁を生じる この混濁が強くなったものが放射 線白内障であり 発生までの潜伏期は長く ヒトでは 6 か月 数十年 平均 119

16 120 8章 放射線の性質と生体への影響 2 3 年とされている 白内障の発生には閾値があり ICRP 勧告では高 LET 放射線で 5 Gy 以上とされている 9 骨 成長後の放射線感受性は低い しかし 胎児期あるいは成長期に ある骨は感受性が高く 成長阻害 壊死 骨粗しょう症 骨腫瘍などの晩発 性障害が発生する このうち骨腫瘍は 45 Ca 90 Sr 32 P 226 Ra などの骨に集 積性を示す核種 向骨性元素 bone seeker の内部被ばくにより発生する場 合が多い 身 体 的 効 果 a 急性放射線死 放射線による急性障害のうち 最も激しいものは急性放射線死である マ ウスに全身照射した場合の線量と死に至る時間は図 8.9 に示すとおりである 1 骨髄死 5 10 Gy の放射線を照射すると 2 3 週間で死亡する 骨 髄造血幹細胞の減少に続き 末梢血中の白血球や血小板などが減少する こ の死は無照射個体からの骨髄の移植により防ぐことができることから この 線量域での死は骨髄死とよばれる ヒトの場合 Gy の被ばくによ り生じ 大部分が約 4 週間で死亡する 2 腸 管 死 Gy の線量域の放射線照射により 4 6 日くらい で下痢を起こし死亡する 腹部あるいは腸管のみに照射を行っても 同様の 症状を呈して死亡することから 腸管死あるいは腸死とよばれる ヒトの場 合には 5 20 Gy の被ばくで生じ 1 3 週間で死亡する 3 中枢神経死 100 Gy の線量を超えると 1 2 日間に興奮状態 異常 図 8.9 マウスでの急性放射線死

17 外 部 被 ば く に よ る 放 射 線 の 生 体 影 響 運 動,てんかん 様 発 作, 昏 睡 などの 神 経 症 状 を 示 し 死 亡 する. 頭 部 だけを 照 射 することにより 同 様 の 症 状 を 呈 して 死 亡 することから, 中 枢 神 経 死 とよば れる.ヒトの 場 合,20 Gy 以 上 の 全 身 被 ばくにより 生 じる. ( 4 ) 分 子 死 :1000 Gy ほどの 大 線 量 になると, 生 体 高 分 子 の 変 性 と 不 活 性 化 が 起 こり, 多 くの 場 合, 照 射 中 に 死 亡 する.これを 分 子 死 とよぶ. (b) 急 性 放 射 線 障 害 の 症 状 半 致 死 量 から 致 死 線 量 の 放 射 線 を 全 身 に 受 けた 場 合 にみられる 急 性 放 射 線 障 害 の 症 状 は, 被 ばく 後 の 時 間 に 依 存 して 変 化 する. ( 1 ) 前 駆 期 : 被 ばく 後 数 時 間 以 内 に, 吐 き 気, 嘔 吐 などの 放 射 線 宿 酔, 精 神 不 安 などの 自 覚 症 状 が 現 れるが, 外 見 上 はなんら 顕 著 な 変 化 はみられない. ( 2 ) 潜 伏 期 : 初 期 に 現 れた 症 状 は 回 復 するが,リンパ 球 数 の 減 少 などの 血 液 変 化 が 出 現 し, 数 日 から 10 日 間 ほど 続 く. ( 3 ) 発 症 期 : 潜 伏 期 が 過 ぎると, 食 欲 減 退, 下 痢, 皮 膚 の 紅 斑, 内 出 血, 発 熱, 菌 血 症 ( 敗 血 症 )などの 重 篤 な 症 状 を 呈 するようになり, 死 に 至 ること もある(10 日 数 週 ). ( 4 ) 回 復 期 : 症 状 の 増 悪 期 を 過 ぎると, 次 第 に 回 復 する( 数 か 月 以 上 ).し かし, 晩 発 性 障 害 が 発 生 する 可 能 性 はある. (c) 晩 発 性 障 害 放 射 線 照 射 を 受 けた 個 体 に, 被 ばく 後 数 か 月 数 十 年 経 過 して 症 状 が 現 れ る 場 合 を 晩 発 性 障 害 という.また 低 線 量 率 で 長 期 間 被 ばくした 場 合,あるい は 線 量 が 少 ないために 顕 著 な 早 期 効 果 がみられなかったものでも 晩 発 性 障 害 を 発 生 する 場 合 がある.この 障 害 として, 発 がん, 寿 命 の 短 縮, 白 内 障, 再 生 不 良 性 貧 血 などがあげられる. (d) 胎 児 への 影 響 胎 児 期 は, 受 精 卵 が 細 胞 分 裂 を 繰 り 返 して 増 殖 し, 個 々の 組 織 器 官 に 分 化 し, 個 体 へと 発 達 を 遂 げる 過 程 である. 一 般 にこの 時 期 の 放 射 線 感 受 性 は 高 いが, 被 ばくの 時 期 により 障 害 の 現 れ 方 は 異 なる. 通 常, 受 精 後 から 出 生 までを 三 つの 時 期 に 区 切 り, 各 時 期 での 影 響 が 区 別 される. ( 1 ) 着 床 前 期 : 受 精 後 ただちに 細 胞 分 裂 が 始 まるこの 時 期 は, 放 射 線 感 受 性 がきわめて 高 い.0.1 Gy 程 度 の 低 線 量 の 被 ばくでも 胚 は 死 亡 し, 流 産 す る 確 率 が 高 い. ( 2 ) 器 官 形 成 期 : 神 経 その 他 の 器 官 が 形 成 される 時 期 である.この 時 期 の 放 射 線 被 ばくでは, 一 部 の 細 胞 は 死 滅 するが, 胚 は 生 き 残 る.とくに 神 経 系 や 眼,あるいは 骨 の 障 害 が 多 く, 小 頭 症, 知 的 障 害, 骨 の 発 育 不 全 などを 伴 う 奇 形 が 発 生 する. ( 3 ) 胎 児 期 :この 時 期 になると, 放 射 線 感 受 性 は 次 第 に 低 下 するが, 成 人 よりはなお 高 い. 生 まれた 胎 児 に 外 見 上 の 異 常 はみられないが, 1 Gy 以 上

18 122 8章 放射線の性質と生体への影響 の被ばくでは発育遅延 寿命の短縮 白血病 発がんなどの晩発性障害が現 れることがある e 遺伝的影響 放射線被ばくした本人のみに影響が止まらず その子あるいは子孫にまで 及ぶ影響を 一般に遺伝的影響という 精巣や卵巣への放射線の非致死的障 害 たとえば生殖細胞に遺伝子突然変異や染色体の異常を誘発すると 次世 代あるいはそれ以降の世代に継承される可能性がある f 確定的影響と確率的影響 放射線の生体影響は 放射線防護の観点から確定的影響と確率的影響に分 けられる 図 8.10 確定的影響は 一定の放射線量 閾値 以下では臨床的 所見は認められないとされる影響で 急性障害はすべて確定的影響に含まれ る これに対し がんや遺伝的影響では閾値の存在が明らかではないことか ら 安全性を考えて どのような低線量でも被ばく量に比例してその影響が 現れる確率がある すなわち閾値はないものと仮定されている これを確率 的影響という 確率的影響は 被ばく線量の増加とともに影響の発生確率の みが増加し 重篤度は変化しない 確定的影響において 急性放射線障害の閾値は msv 以上と考え られており 低線量レベル 200 msv 以下 での放射線被ばくが急性障害を引 放射線ホルミシス 放射線による生体影響は これまで高線量領域 動物あるいは細胞を用いた実験レベルでは 0.01 における影響を低線量領域に外挿する結果 放 0.5 Gy の線量域でさまざまなホルミシス現象が 射線は たとえ微量であっても生体に障害をもた 報告されている 放射線ホルミシスが実際に確認 らす という考え方が放射線防護の観点から受け されれば これまで確率的影響とよんでいる発が 入れられてきた しかし中国広東省の高放射線地 ん影響についても 閾値を設ける必要が生じる 域においては 対照地区より発がん率が低い と 放射線ホルミシスを裏づける科学的証明が必要で いう調査報告があり 日本の三朝ラジウム温泉地 ある 参考 Jpn. J. Cancer Res., 83, 区においても 胃がんや肺がんなどある種のが んの発生率が対照地区と比較して有意に低い と いう調査結果が報告されている 右図 動物実験モデルでは 低線量放射線の前照射に よる高線量照射に対する抵抗性の発現 免疫の賦 活化などが報告されており 放射線被ばくに対す る適応応答が観察される このような生体に有益 な応答反応を 放射線ホルミシス とよぶ 低線量 三朝温泉地区住民のがん死亡率調査 とは通常 0.02 Gy 以下の線量と考えられるが 日本の平均値を 1 として死亡率を表す

19 内部被ばくによる放射線の生体影響 図 8.10 確定的影響 ① と確率的影響 ② き起こす可能性はきわめて低い 一方 がんや白血病 および遺伝的障害を 考える場合には 確率的影響の考え方から低線量レベルでも発生する確率が あることになる しかしその確率はきわめて小さく 自然発生レベルと区別 することがなかなか難しい 8.5 内 部 被 ば く に よ る 放 射 線 の 生 体 影 響 内部被ばくによる放射線の生体影響は 外部被ばくと基本的に同じである が 暴露から排泄までの体内動態 とくに標的部位への蓄積性が生体影響を 大きく左右する 放 射 性 核 種 の 標 的 臓 器 お よ び 組 織 体内での放射線源となる放射性物質は 主として経口 経気道 経皮の 3 電離放射線および放 射性核種の標的臓器 組織 をあげ その感受性の差異 を説明できる 表 8.7 放射性核種の標的臓器と半減期 核種 3 H C 32 P 59 Fe 90 Sr 131 I 137 Cs 226 Ra 239 Pu 14 親和性臓器 物理的半減期 生物学的半減期 Tp Tb 全身 全身 骨 肝臓 脾臓 骨 甲状腺 筋肉 骨 骨 12 年 5700 年 14 日 45 日 29 年 8日 30 年 1600 年 年 12 日 40 日 1155 日 600 日 50 年 138 日 70 日 45 年 200 年 有効半減期 Te 12 日 40 日 14 日 42 日 18 年 8日 70 日 44 年 200 年 1/Te = 1/Tp + 1/Tb

20 124 8章 放射線の性質と生体への影響 経路で体内に摂取される その後 体内組織に均一に分布する場合もあるが 特定の組織に集積することがある 標的器官となる組織 あるいはその周辺 組織の放射線に対する感受性が高い場合 身体的障害の原因となることが多 い 身体的障害のおもな原因となる臓器や組織を決定器官 あるいは決定臓 器という 表 8.7 同一核種であっても 物理的 化学的性状あるいは体内 摂取経路によって 決定器官が変わる場合がある 放 射 性 物 質 の 有 効 半 減 期 体内に取り込まれた放射性物質からの放射能は 核種の壊変 物質の代謝 排泄により減少する この放射能が半分になるまでに要する時間は有効半減 期 Te とよばれ 物理学的半減期 Tp と生物学的半減期 Tb が関与し Te Tp Tb の間には次の関係式が成立する 式 8.5 1/Te = 1/Tp + 1/Tb 8.5 内部被ばくによる障害を防護する目的で 放射線源を積極的に体外に除去 排泄する必要がある そのためには 同種または同属の非放射性物質を多量 に投与することが考えられる 生物学的半減期が長いものに対しては 適当 なスカベンジャーを用いて排泄を促す必要がある とくに骨に集積性を示す 90 Sr 226 Ra 239 Pu などが問題であり これらに対しては EDTA などのキレー ト剤が使用される 8.6 電 離 放 射 線 の 防 護 電離放射線を防御す る方法について概説できる 放射線の影響からヒトの健康および環境を守るという放射線防護に関する 日本の法整備と管理体制は 職業人および一般公衆に対する線量限度などの 観点から示された 1990 年の ICRP 勧告に準じている この勧告では 次の 3 点が目標として掲げられている i 便益をもたらす放射線被ばくを伴う 行為を不当に制限することなく人の安全を確保すること ii 個人の確定的 影響の発生を防止すること iii 確率的影響の発生を容認できるレベルに制 限すること これらの目標達成のためには 被ばく線量の低減が必要である が 放射線源が体外にある場合と 体内に取り込まれた場合とでは その手 段 方法は異なる 外 部 被 ば く に 対 す る 放 射 線 防 護 の 方 法 外部被ばくが問題となるのは おもに X 線 c 線および中性子線など透過 力の強い放射線と b 線である 透過力の強い放射線は全身被ばくをもたらす 一方 b 線は皮膚表面近くで吸収されるため 皮膚への被ばくとして取り扱

21 8. 7 電離放射線の医療への応用 125 われる 外部被ばく低減の 3 原則は 時間 距離 遮蔽である 時間は 作 業者が放射線にさらされる時間の短縮 遮蔽は 放射線源と作業者の間に遮 蔽物を設置すること 距離は放射線源と作業者の距離をとることにより 作 業時の空間線量率を低減することを意味する また不必要な線源の除去など 適切な管理も外部被ばく防護となる 外部被ばくの防護には 3 原則の一つ を行うのではなく 適切に組み合わせることが望ましい 内 部 被 ば く に 対 す る 放 射 線 防 護 の 方 法 内部被ばく量低減のためには 放射性物質を体内に摂取しないようにする ことが対策となる 摂取経路としては 経口 経気道 経皮の三つが考えら れるが 発生頻度から見ると吸入 経気道 摂取が最も問題となる このため の対策として 放射性物質の密封系への閉じ込めのほか 吸入防止用のマス クや負圧換気装置を用いることなどがあげられる 8.7 電 離 放 射 線 の 医 療 へ の 応 用 疾病の診断や治療において 放射線や放射性物質は重要な役割を果たして いる 電離放射線の医療領域への応用について 具体例を一部紹介する の応用ついて概説できる X 線 診 断 X 線の空気透過性は高いが 密度の高いものには一部吸収される 水に吸 収される X 線量を 1 とすると 筋肉や軟部組織では水とほぼ同等であるの に対し 骨では約 5 倍である その透過量の違いを可視化することにより 人体の内部構造を描出するのが X 線診断である 造影剤を用いない単純撮 影と 造影剤で人工的にコントラストをつくる造影検査がある 単純撮影の 代表例は胸部像であり 空気を多く含む肺は X 線を透過して黒く写り 肺 がんや肺結核の腫瘤がある場合には 白い陰の異常陰影として検出される 造影剤としては 原子番号が大きく化学的に安定で かつ生体に無害なバリ ウムやヨウ素化合物がよく用いられ 消化管造影や血管造影が行われている X 線 CT X 線診断では 三次元の身体を二次元に投影するため 像の重なりが避け ら れ な い こ れ を 解 決 す る 方 法 と し て X 線 CT computerized tomograが開発された X 線 CT では 多方向から照射 phy コンピュータ断層撮影 して透過強度を測定し その分布を三次元的に再構成する 被写体は鮮明な 二次元断層像として描画され 診断精度は飛躍的に向上した より正確な診 断のために造影剤を併用することが多い 電離放射線の医療へ

22 126 8章 放射線の性質と生体への影響 核 医 学 診 断 核医学は放射性物質を用いて疾病の診断および治療を行う医学の一分野で 診断には放射性物質を体内に投与する in vivo 診断と 血液や尿を試料と する in vitro 診断とがある 核医学で用いられる放射性物質は 放射性医 薬品とよばれる in vivo 診断では 体内に投与した放射性物質から放出さ れる c 線を体外で検出し その分布を画像化する 画像として情報を得る手 法をシンチグラフィーとよぶ 得られる画像は X 線 CT や磁気共鳴画像 magnetic resonance imaging ; MRI と類似しているが これらがおもに 形態情報を与えるのに対し 核医学画像は組織の血流 エネルギー代謝 受 容体分布など 生理機能を表現しているところに大きな違いがある たとえ ば ヨウ素が甲状腺に特異的に取り込まれることを利用して ヨウ化ナトリ ウム 123 I は甲状腺機能検査に用いられる in vivo 診断用放射性医薬品には 体外からの検出を必要とするために c 線あるいは陽電子 陽電子消滅に由来 する消滅放射線を検出 を放出し かつ不要な被ばくを避けるために a 線や b- 線を放出せず 半減期の短い核種が用いられる 実際には 使用量の約 85 が 99m Tc 製剤である シンチグラフィーには 二次元投影と断層撮影が あり c シングルフォトン 放出核種による断層撮影法を SPECT single photon emission computed tomography 陽電子 ポジトロン 放出核種 によるものを PET positron-emission tomography と呼ぶ 従来の核医学 検査は シングルフォトン核種によるものが大半であったが 近年グルコー ス誘導体 18 F-FDG : fluorodeoxyglucose を用いた PET 検査によるがん診 断が注目を集め 急速に普及している が ん の 放 射 線 治 療 放射線治療は 外科療法や化学療法 抗がん剤 と並んで がん治療の 3 本 柱の一つである 放射線治療はがん治療のなかで最も身体の負担が少なく 末期がん患者 老齢者 合併症がある患者にも適用が可能なこと また外科 療法と異なり臓器の形態や機能の温存が可能で 患者の QOL の維持に貢献 できるなど大きな利点をもつ ほとんどすべてのがんが 何らかのかたちで 放射線治療の対象となりうる 根治療法のほか 緩和 対症療法としても有 効である 新 し い 放 射 線 治 療 a 定位放射線照射 高線量の放射線を病巣のみに集中照射する新しい放射線治療法であり 誤 差 1 mm 以下のきわめて高精度での照射により患部を切り取るように治療で きるということで ラジオサージャリー 放射線外科 radiosurgery ともい

23 電離放射線の医療への応用 8. 7 われる はじめに 201 個の 60 Co 線源から放出される細いビーム状の c 線を 患部に集中照射させるガンマナイフが開発され その後コバルト線源の代わ りに高エネルギー X 線治療装置 線型加速器 リニアック を使用するライ ナックナイフ サイバーナイフ も開発され使用されている 頭蓋内病変を 開頭することなく病変部のみ破壊することが可能であり 手術に伴う合併症 がない 脳深部の治療も可能となるなど 多くの利点をもつ 最近は 体幹 部病変にも応用されはじめた b 陽子線治療 重粒子線治療 従来の放射線外部照射治療では 病巣が比較的深部で近くに放射線感受性 の高い組織があると 治療に十分な線量を照射できないという欠点があった 陽子や重粒子 炭素 ネオン ケイ素 アルゴンなど を加速器で光速に近い 速度まで加速して得られる粒子線は この欠点がなく がん病巣のみに大量 の放射線を照射できる きわめて大規模な施設を必要とする治療であるが 2006 年現在 日本では 5 施設が陽電子治療を 1 施設が重粒子線治療の臨 床研究を進めており 高度先進医療の適用を受けるまでに至っている 薬 物 動 態 試 験 へ の 応 用 a エリスロマイシン呼吸試験 erythromycin breath test エリスロマイシンは 代謝産物の一部が呼気中に排泄されることを利用し て 肝臓の代謝酵素活性評価に使用される 14 C-N-エリスロマイシンは CYP3A4 により脱メチル化されて最終的に 14 CO2 を生成し 呼気中に排泄さ れる 被験者の呼気中に含まれる放射能を測定することにより CYP3A4 活 性を定量的に評価することができる b X 線 CT によるアミオダロンの肝臓蓄積の評価 不整脈治療薬アミオダロンは 脂溶性が高く 脂肪組織 肝臓 肺に高濃 度に集積し 間質性肺炎 肺線維症 肝障害などの副作用を高頻度に発生す る 肝臓で代謝され胆汁中へ排出されるものの 消失半減期は 日と 長く 脂肪組織などの蓄積部位からの緩慢な消失がみられる アミオダロン にはヨウ素原子が含まれることから 図 8.11 X 線 CT により肝臓への蓄積 を画像化し 定量することが可能であり 血中濃度の推定ならびに副作用発 現を抑制する薬剤投与計画に結びつけることができる 図 8.11 アミオダロン 127

24 128 8章 放射線の性質と生体への影響 8.8 非 電 離 放 射 線 の 性 質 と 生 体 影 響 非電離放射線の種類 を列挙できる 放射線のうち 照射された物質に電離作用を及ぼさない放射線を非電離放 射線という 非電離放射線はいずれも光子とよばれる質量のないエネルギー の波 電磁波 である 波長によってエネルギーが規定され 波長が短ければ エネルギーは強く 長くなるに従って弱くなる 電磁波の波長は 1 nm から 10 km まで幅があり 波長によって分類される 図 紫 外 線 紫外線の種類を列挙 太陽光線のうち 最も短い波長領域にある非電離放射線が紫外線 ultra し その特徴と生体に及ぼ である 太陽光線は IARC による発がん要因の分類でグループ violet ; UV す影響について説明できる 1 に分類され ヒトへの発がん要因とされており その原因となっているの が 紫 外 線 で あ る 紫 外 線 は 波 長 に よ り UVA nm UVB 280 UVC 320 nm nm に分類される 太陽光線のうち波長 290 nm 以 下の電磁波はオゾン層に吸収され地上に到達しないので 地球上の生物に大 きな影響を及ぼしているのは UVA と UVB の一部である UVA は軟質ガラ スも透過するので 屋内にいても被ばくする a UVA 光子エネルギーは弱いが 波長が長いため皮膚深部まで到達でき 約 30 が真皮底部にまで届いているといわれている UVA 照射は突然変異を 誘発し 動物実験でマウスに皮膚がんを誘発することが示されている UVA の波長領域は DNA の紫外部吸収曲線とはほとんど重ならないため DNA に直接作用するのではなく 細胞内在性の光増感物質が UVA によって励起 されて発生する活性酸素やラジカル種などが二次的に引き起こす傷害が 変 異や発がんの原因と考えられている さらに皮膚内のメラニンを酸化するこ とによって皮膚に即時型黒化のサンタンを起こす 光増感物質としてソラレ ンを用いた PUVA 療法は 皮膚病の治療に用いられるが 薬剤や香水成分 が光増感物質として働き 光線過敏症を引き起こすこともある b UVB 光子エネルギーが大きく UVA よりも大きな生体影響を及ぼす UVB は DNA の吸収波長を含んでおり 直接 DNA に吸収されて DNA 塩基の修飾や 鎖切断を引き起こす 代表的な傷害として ピリミジン塩基が並んだ配列に 形成されるシクロブタン型ピリミジンダイマーと ピリミジン塩基の 6 位と 4 位の炭素が結合した 6-4 光生成物がある これらの傷害は通常 除去修 復機能によって修復されるが 修復されずに残った場合は突然変異を誘発し 皮膚がんの原因となると考えられている 実際 除去修復機能が欠損してい る遺伝病である色素性乾皮症 xeroderma pigmentosum syndrome ; XP の

25 8. 8 非電離放射線の性質と生体影響 129 患者は わずかな太陽光に暴露されても皮膚がんを発症する UVB は 皮膚に発赤 腫脹 水泡といったサンバーンを引き起こしたのち メラニン色素沈着による遅発型黒化のサンタンを起こす UVB の繰返し照 射は コラーゲンやエラスチン ムコ多糖の構造変化による皮膚の光老化を 引き起こす UVB 照射したマウスは移植片の拒絶や感作が起こらない こ れは UVB が表皮内のリンパ球に作用して免疫機能を低下させ 局所ならび に全身性の免疫抑制作用を示すことによる また UVB は角膜に吸収され やすく 雪目 とよばれる角膜炎など眼の光障害の原因となる さらに活性 酸素の発生や酸化作用も示し 老人性白内障の主要因となる UVB は 皮 膚内のビタミン D 活性化反応に関与するため かつてはくる病の予防に 日 光浴 が推奨されていたが 日射量が特別少ない地域以外では UVB 量が不 足することはないので 現在では皮膚がんの予防のためにも 紫外線暴露を 避けることが望ましい とされている c UVC オゾン層に吸収されるため自然界で暴露されることはないが 人工光源に よる障害が起こる可能性がある 光子エネルギーが大きく DNA の吸収 ピークと重なる波長域にあるので UVB より低線量で大きな生体影響をも たらす その傷害は UVB とほとんど同じである とくに水銀放電によって 発生する紫外線は 254 nm にピークがあり 致死作用が強いので 殺菌灯と して医療や研究の場で使用されている 可 視 光 線 可視光線は太陽光線をプリズムで分光したときに 色として見える波長領 の電磁波である 生体成分には 特異的な波長の光を吸収 域 nm することによって励起され 光エネルギーを生体反応のエネルギーに変換し たり 生体内シグナル伝達に関与したりする発色団をもっている成分がある 可視光線そのものは通常人体に有害性はないが 可視光暴露によって生体 分子が励起 分解され 活性酸素やラジカル種の産生 あるいはアレルギー 原因物質を生成して細胞障害を引き起こし 光線過敏症と呼ばれる症状を呈 することがある 一方 この性質を利用して局所で薬物の活性化を行い 抗 生物効果を期待する光線力学的治療 photo dynamic therapy ; PDT に利用 する研究が とくに短波長領域の可視光線について行われている 赤 外 線 電磁波のうち 780 nm より長く 1 mm より短い領域の波長をもつ放射線 を赤外線 infrared ray ; IR という 太陽光赤外線は 水や二酸化炭素に吸 し その特徴と生体に及ぼ 収されるため 地上に到達する波長は限られたものになっている 赤外線は 赤外線の種類を列挙 す影響について説明できる

26 130 8 章 放 射 線 の 性 質 と 生 体 へ の 影 響 あらゆる 物 体 から 放 出 されており, 地 球 温 暖 化 で 問 題 となっている 温 室 効 果 ガスは, 地 球 から 放 出 される 赤 外 線 を 吸 収 して 地 球 を 暖 める 役 割 をしている. 赤 外 線 は 波 長 により, 近 赤 外 線 ( nm)と 遠 赤 外 線 ( m)に 分 類 される. 近 赤 外 線 は 可 視 光 線 に 近 い 波 長 をもつので 可 視 光 に 似 た 性 質 が あり,リモコンや 赤 外 線 カメラに 用 いられている. 遠 赤 外 線 は 熱 線 としての 性 質 をもつので, 電 子 レンジなどものを 温 めるために 用 いられている. 赤 外 線 による 健 康 被 害 としては, 照 射 局 所 の 皮 膚 のやけどや, 直 視 し 続 け た 場 合 に 起 こる 網 膜 のやけどがある.また 長 時 間 の 暴 露 は 熱 による 水 晶 体 の タンパク 質 の 変 性 を 引 き 起 こし, 紫 外 線 と 同 様 に 白 内 障 を 起 こす. 紫 外 線 と 異 なり 急 激 な 痛 みを 伴 わないので, 気 づかないうちに 進 行 している 場 合 があ る.ガラス 工 業 や 製 鉄 作 業 に 従 事 している 人 が 罹 患 しやすい. 1. 電 離 放 射 線 と 非 電 離 放 射 線 の 違 いについて 説 明 せ よ. 2. 電 離 放 射 線 の 直 接 作 用 と 間 接 作 用 について 説 明 せ よ. 3. 電 離 放 射 線 の 間 接 作 用 の 修 飾 効 果 について 説 明 せ よ. 4. ベルゴニー トリボンドーの 法 則 について 列 挙 し, 細 胞 レベルの 放 射 線 感 受 性 について 概 説 せよ. 5. 組 織 器 官 レベルの 放 射 線 感 受 性 について 概 説 せ よ. 6. 確 率 的 影 響 と 確 定 的 影 響 について,それぞれの 定 義 と 具 体 的 な 身 体 的 影 響 について 説 明 せよ. 7. 電 離 放 射 線 防 護 の 方 法 について, 外 部 被 ばくと 内 部 被 ばくに 区 別 して 説 明 せよ. 8. 紫 外 線 を 波 長 特 性 から 分 類 し,それぞれの 生 体 影 響 について 説 明 せよ.

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