Frontier Simulation Software for Industrial Science

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1 地 球 シミュレータ 産 業 利 用 シンポジウム2010 スーパーコンピュータでインフルエンザウイルス の 変 異 の 仕 組 みを 探 る 田 中 成 典 神 戸 大 学 大 学 院 システム 情 報 学 研 究 科 計 算 科 学 専 攻 計 算 生 物 学 講 座

2 インシリコ バイオロジー(In Silico Biology) コンピュータの 中 で 生 命 現 象 を 再 構 築 する さらに 生 命 現 象 を 外 部 からコントロールしたりデザイ ンしたりする バイオインフォマティクス バイオシミュレーション システム 生 物 学 我 々のグループでは 主 に 原 子 分 子 レベルから(ボト ムアップで) 生 命 現 象 を 記 述 する バイオシミュレーショ ン を 行 っています

3 生 体 系 の 第 一 原 理 ボトムアップ シミュレーション 物 理 学 の 基 礎 方 程 式 (シュレディンガー 方 程 式 ニュ ートン 方 程 式 )に 基 づき できるだけ 恣 意 性 なしに 分 子 原 子 電 子 のレベルから 生 体 系 のシミュレーションを 行 う ( cf., E-CELL )

4 生 体 高 分 子 の 第 一 原 理 計 算 の 必 要 性 ポストゲノム 時 代 の 計 算 構 造 生 物 学 生 命 現 象 の(インシリコ)ボトムアップ 的 アプローチ 原 子 分 子 レベルからの 基 本 的 理 解 分 子 に 語 らせる 生 化 学 反 応 を 扱 う 上 での 電 子 状 態 ダイナミクスの 重 要 性 医 療 創 薬 環 境 問 題 への 応 用 疾 患 の 分 子 メカニズム テーラーメイド 医 療 (SNPs) 特 に 生 活 習 慣 病 ( 糖 尿 病 肥 満 動 脈 硬 化 等 ) 感 染 症 など Structure-Based Drug Design, Virtual Screening 化 学 物 質 の 生 体 への 影 響 の 定 量 的 モデリング 酵 素 反 応 の 分 子 設 計 エンジニアリング

5 タンパク 質 の 振 舞 いは 電 子 が 決 める タンパク 質 は 生 命 を 司 る 重 要 な 構 成 要 素 タンパク 質 は 通 常 数 千 個 以 上 の 原 子 からなる 巨 大 分 子 原 子 の 間 に 働 く 力 は 糊 の 役 割 をしている 電 子 が 決 めている( 従 来 は 電 子 を 考 えない 近 似 的 な 取 り 扱 い) 医 薬 品 分 子 はタンパク 質 と 相 互 作 用 ( 阻 害 活 性 化 )する( 精 確 な 記 述 が 必 要 ) 原 子 間 に 働 く 力 タンパク 質 と 薬 の 相 互 作 用

6 電 子 の 振 舞 いを 記 述 する 量 子 力 学 シュレディンガー 方 程 式 (1926 年 ) H E 原 子 核 1 個 電 子 1 個 の 水 素 原 子 を 紙 と 鉛 筆 で 解 くことから 始 まった! タンパク 質 は1 万 個 以 上 の 電 子 を 含 む Erwin Schrödinger ( ) 1933 年 ノーベル 物 理 学 賞 80 年 間 の 科 学 技 術 ( 物 理 学 化 学 コンピュータ 科 学 etc.)の 進 歩 により タンパク 質 の 電 子 の 振 舞 いも 解 けるようになった! 1999 年 :フラグメント 分 子 軌 道 (FMO) 法 巨 大 な 高 分 子 を 多 数 のフラグメント(アミノ 酸 など)に 分 割 して それぞれのフラグメントを 並 列 的 に 計 算 する ( 超 ) 並 列 コンピュータの 活 用

7 タンパク 質 の 計 算 から 薬 の 設 計 へ 医 薬 品 候 補 分 子 とタンパク 質 の 結 合 を 計 算 高 精 度 高 速 のドッキング 予 測 生 理 条 件 下 ( 水 溶 液 中 )のシミュレーション 分 子 間 相 互 作 用 の 定 量 的 解 析 阻 害 活 性 化 などの 機 能 予 測 創 薬 の 経 験 則 (QSARなど)との 組 み 合 わせ 薬 物 代 謝 (CYP)のシミュレーション 次 世 代 インシリコ 創 薬 へ コンピュータの 高 性 能 化 が 後 押 し ムーアの 法 則 :1.5 年 で2 倍 の 性 能 ペタ 級 (10 万 コア 超 ) 並 列 計 算

8 理 論 計 算 に 基 づく 次 世 代 創 薬 手 法 の 確 立 インフルエンザウイルスの 変 異 に 備 える 対 パンデミック 創 薬 の 実 現 抗 がん 物 質 と 受 容 体 がん 細 胞 DNA の 相 互 作 用 解 析 に 基 づく より 良 い 抗 がん 剤 の 理 論 設 計 パーキンソン 病 など 神 経 変 質 疾 患 の 発 症 機 構 を 分 子 レベルで 解 明 ウィルス 表 面 の タンパク 質 の 変 異 を 第 一 原 理 計 算 で 予 測 受 容 体 や がん 細 胞 DNA を 標 的 とした 抗 がん 剤 の 設 計 原 因 タンパク 質 の 挙 動 を 第 一 原 理 分 子 動 力 学 で 解 明 FMO 計 算 によって 次 世 代 スパコンの 能 力 をフル 活 用 ユーザーフレンドリー な FMO 計 算 環 境 の 創 薬 現 場 への 普 及 インシリコ 理 論 創 薬 の 信 頼 性 向 上 統 合 可 視 化 環 境 計 算 高 精 度 化 と 手 法 の 拡 張 フラグメント 分 子 軌 道 (FMO) 法 インシリコ スクリーニングの 速 度 精 度 向 上 超 並 列 FMO 計 算 医 薬 品 候 補 物 質 の 正 確 で 効 率 的 な 探 索 超 高 速 処 理 による 統 計 的 な 議 論 電 子 相 関 動 力 学 計 算 物 性 値 算 定 法

9 量 子 力 学 の 基 礎 :シュレディンガー 方 程 式 i e 2 /r ij j N 個 の 原 子 核 とn 個 の 電 子 から 成 る 分 子 系 を 量 子 論 で 記 述 する 方 程 式 いかにして 解 くのか?! (あるいは 解 けるのか?!) Z A e 2 /r ia Z B e 2 /r jb H E A Z A Z B e 2 /R AB B H N A 2 A 2M n i i 2 2 A, i Z r A Ai i j 1 r ij A, B Z AZ R AB B ( r, r2,, rn ; R1, R2,, R 1 N 電 子 を 波 動 関 数 として 記 述 する ) (シュレディンガー)

10 ハートリー フォック 近 似 : 軌 道 と 平 均 場 HF ˆ { N i c pi p p i 1 1 M M f h 2J j K j j j i } f i i (ハートリー) (フォック) 電 子 の 波 動 関 数 を1 個 の 電 子 配 置 で 近 似 (ハートリー フォック) 原 子 の 軌 道 から 分 子 の 軌 道 を 線 形 結 合 で 表 現 係 数 を 決 定 電 子 間 の 相 互 作 用 は 平 均 的 な 場 として 考 慮 される HF 1 ( 1,2) 1(1) 1(2) (1) (2) (1) (2) 2 H H

11 電 子 相 関 ( 電 子 間 相 互 排 斥 効 果 )の 考 慮 Post HF I T I I { HF a ab, i, ij } I E Corr E PostHF E HF 平 均 場 近 似 からの 差 を 取 込 む ( 電 子 相 関 ) HF 基 底 配 置 に 励 起 配 置 を 加 えて 展 開 する メラー プレセットの2 次 摂 動 が 便 利 (MP2) (メラー) (プレセット) さらに 多 電 子 の 励 起 HF a i ab ij MP2では2 電 子 励 起 のみ 考 慮

12 電 子 数 の 壁 電 子 相 関 効 果 を 入 れた 高 精 度 計 算 では 計 算 時 間 は 電 子 数 (N)の5 乗 (N 5 ) 程 度 で 増 加 する もし 電 子 10 個 の 系 の 計 算 に1 秒 かかるとすると 電 子 1000 個 の 系 の 計 算 には 317 年 (!)かかる この 壁 を 克 服 するには 困 難 を 分 割 する 1000 個 の 電 子 を10 個 ずつ100 組 に 分 けて それぞれが ほぼ 独 立 に 計 算 できるようにすれば 理 想 的 には100 秒 程 度 で 計 算 が 終 了 する これを 計 算 精 度 を 落 とさずに 実 現 するには? フラグメント 分 子 軌 道 法 による( 超 ) 並 列 計 算

13 Fragment molecular orbital (FMO) method 巨 大 生 体 高 分 子 を 多 数 のフラグメントに 分 割 する Fragmentation for peptide Good scalability: O(N) (O(N 2 )) Good accuracy: a few kcal/mol Fragmentation for DNA (K. Kitaura et al., Chem. Phys. Lett. 312 (1999) 319.)

14 Fragment Molecular Orbital Method Divide a molecule into fragments N pieces of fragments (monomers) [N(N-1)/2] pieces of fragment pairs (dimers) FMO Total Energy (FMO2) E I E I E IJ EI EJ I J I J JI IK K Environmental electrostatic potential Environmental electrostatic potential

15 FMO Method and Its Energy Analysis (IFIE) IJ I IK J K Divide a molecule into fragments N pieces of fragments [N(N-1)/2] pieces of fragment pairs Total Energy:Calculated from energies of fragment and fragment pair E = S E IJ (N 2)S E I E I>J I X : energies of a fragment and a fragment pair. Inter-Fragment Interaction Energy (IFIE): DE IJ = (E IJ E I E J ) + (V IJ V I(J) V J(I) ) V X : Electrostatic potential from surrounding fragments. E X = E X V X

16 FMO 計 算 の 組 合 せ 並 列 化 (on ABINIT-MPX) 極 めて 効 率 の 高 い 並 列 化 Original system Fragment dimer parallelized フラグメント 添 字 が 分 配 される Fragment momer parallelized parallelized Processor Processor group 2 電 子 積 分 添 字 が 分 配 される

17 なぜ 電 子 相 関 効 果 が 重 要 か? DNA Base Pair Stacking 塩 基 スタッキング: 分 散 力 の 重 要 性 weakly bound Cytosine Cytosine Guanine Guanine HF or DFT cannot describe the weak attraction due to van der Waals (dispersion) interaction appropriately. As for FMO-MP2 description for vdw interaction, see, e.g., K. Fukuzawa et al., J. Comput. Chem. 27 (2006) 948.

18 Electron Correlations Electron correlations play important roles for the descriptions of weak molecular interactions associated with hydrogen bonding and van der Waals (dispersion) forces. Watson-Crick pair Ligand binding DNA base stacking HF or DFT Implementation of MP2 into FMO (ABINIT-MPX)

19 インフルエンザ ~ 迫 る 脅 威 ~ 間 断 なき 新 型 の 出 現 とパンデミック( 大 流 行 )の 脅 威 1918 年 : スペイン 風 邪 (H1N1 亜 型 )の 世 界 的 流 行 6 億 人 が 感 染, 万 人 に 上 る 死 者 1957 年 : アジア 風 邪 (H2N2 亜 型 )の 出 現 流 行 1968 年 : 香 港 風 邪 (H3N2 亜 型 )の 出 現 流 行 それぞれ 死 者 100 万 人 2005 年 : H5N1 亜 型 鳥 インフルエンザウイルスのトリからヒト, さらに,ヒトからヒトへの 感 染 が 確 認 2008 年 : 1 月 現 在, 新 型 ウイルスでの 死 者 100 名 超 2009 年 6 月 : WHOが 新 型 ウイルス(ブタ 由 来 H1N1 亜 型 )によるパンデミックを 宣 言 2010 年 5 月 9 日 現 在 214の 感 染 国 と 地 域 で18,036 人 以 上 の 死 者 を 確 認 (8 月 10 日 WHOがパンデミック 終 結 を 宣 言 )

20 ( 感 染 特 異 性 )

21 インフルエンザウイルスの 構 造 インフルエンザウイルス ウイルスは 膜 に 覆 われた 球 状 の 構 造 膜 表 面 からは, 三 量 体 タンパク 質 ヘマグル チニン(HA)や 四 量 体 タンパク 質 ノイラミニ ダーゼ(NA)がスパイク 状 に 突 き 出 している HAはウイルスの 細 胞 侵 入 時 に 宿 主 細 胞 表 面 のシアル 酸 を 認 識 し, 細 胞 膜 に 結 合 する HAは 抗 原 として 中 和 抗 体 に 認 識 される ( 抗 原 抗 体 反 応 ) HA:ウイルスが 吸 着 する 過 程 で 重 要 NA: 増 殖 したウイルスが 脱 出 する 過 程 で 重 要

22 インフルエンザウイルスHAとシアル 酸 の 結 合

23 インフルエンザHA- 糖 鎖 レセプターのFMO 計 算 Iwata, Fukuzawa, Nakajima et al., Comp. Biol.Chem. 32, (2008) H3 avian HA Receptor 結 合 サイト *3+3=6 量 体 *( ) 3=490 残 基 *11948 原 子 HA:81 残 基 受 容 体 SIA-GAL :60 原 子 α2-3(avian) α2-6(human) HA- 糖 鎖 レセプターの 結 合 エネルギー (kcal/mol) [FMO-MP2/6-31G] 受 容 体 H3トリHA H1ヒトHA H1ブタHA H5トリHA トリ ヒト

24 IFIE(kcal/mol) TYR98 GLY135 SER136 SER137 ALA138 TRP153 HIS183 GLU190 GLN191 THR192 ASN193 LEU194 TYR195 VAL196 GLN197 ALA198 PRO221 TRP222 VAL223 ARG224 GLY225 GLN226 PRO227 GLY228 IFIE(kcal/mol) TYR98 GLY135 SER136 SER137 ALA138 TRP153 HIS183 GLU190 GLN191 THR192 ASN193 LEU194 TYR195 VAL196 GLN197 ALA198 PRO221 TRP222 VAL223 ARG224 GLY225 GLN226 PRO227 GLY228 トリH3HAと 糖 鎖 受 容 体 の 相 互 作 用 解 析 IJ IJ DP V フラグメント 間 相 互 作 用 エネルギー(IFIE): D EIJ E' IJ E' I E' J Tr 全 てのフラグメントペアに 対 して 自 動 的 に 算 出 複 雑 な 生 体 高 分 子 の 相 互 作 用 をフラグメント 単 位 で 解 析 できる IFIEs between Avian/Human receptors and the residues in 自 由 に 組 み the binding 合 わせることが site of H3 avian HA 可 能 (IFIE sum) IFIE IFIE total はAvianが 大 きい Avian : kcal/mol Human: kcal/mol IFIE IFIEs ; IFIEavian-IFIEhuman Amino acid residue avian human H3 avian HAのReceptor 結 合 特 異 性 : Human < Avian 2. Avian receptor とHuman receptorでは TYR98, SER137,ALA138, HIS183, GLU190, GLN226との 相 互 作 用 に 違 い SER137 HIS183 GLN ( IFIE = IFIEavian-IFIEhuman) GLU190 Amino acid residue

25 TYR95 VAL135 THR136 ALA137 ALA138 TRP153 HIS183 GLU190 GLN191 GLN192 ASN193 LEU194 TYR195 GLN196 ASN197 GLU198 PRO221 LYS222 VAL223 ARG224 ASP225 GLN226 ALA227 GLY228 IFIE(kcal/mol) IFIE(kcal/mol) TYR95 TRP153 HIS183 VAL135 THR136 ALA137 ALA138 GLU190 GLN191 GLN192 ASN193 LEU194 TYR195 GLN196 ASN197 GLU198 PRO221 LYS222 VAL223 ARG224 ASP225 GLN226 ALA227 GLY228 ヒトH1HAと 糖 鎖 受 容 体 の 相 互 作 用 解 析 IFIE IFIEs between Avian/Human receptors and the residues in the binding site of H1humanHA 1. IFIE total はHumanが 大 きい Avian : kcal/mol Human: kcal/mol avian human H1 human HAのReceptor 結 合 特 異 性 : Human>Avian IFIE IFIEs; IFIEavian Amino acid - IFIEhuman residue LYS222 ASP Avian receptor とHuman receptor LYS222, ASP225との 相 互 作 用 に 違 い ( IFIE = IFIEavian-IFIEhuman) Amino acid residue シアル 酸 認 識 の 宿 主 結 合 特 異 性 の 理 論 予 測 と 重 要 なアミノ 酸 の 特 定 が 可 能

26 インフルエンザ 抗 原 (HA) 抗 体 複 合 体 PDB ID:1EO8 H3N2 A/Aichi/2/68 インフルエンザHA(HA1およびHA2)と, BH151 抗 体 のV 領 域 の 軽 鎖 重 鎖 のタンパク 複 合 体 * HA1 上 には, 大 きく 五 つの 抗 原 領 域 と 呼 ば れる, 抗 体 が 抗 原 を 特 異 的 に 認 識 して 結 合 する 部 位 が 存 在 することが 実 験 的 に 確 認 さ れている. 抗 原 領 域 上 ではHAの 変 異 が 特 に 頻 繁 に 起 こっている. *D.Fleury et al., PROTEINS: Structure, Function, and Genetics 40, (2000). 計 算 はFMO-MP2/6-31G, 6-31G*で 行 った. 1EO8とその 抗 原 領 域

27 インフルエンザウイルスの 抗 原 - 抗 体 のFMO-MP2 計 算 インフルエンザ ヘマグルチニン(HA) タンパク 質 とFabフラグメントの 複 合 体 抗 原 :HA1( 緑 ) HA2( 赤 ) 抗 体 :H 鎖 (ピンク) L 鎖 ( 黄 ) 世 界 最 大 のFMO-MP2/6-31G 計 算 921 残 基 14,086 原 子 78,390 基 底 PCクラスタ(Opteron 2GHz, 16プロセッサ) でのベンチマークタイミング 時 間 (8.3 日 ) 地 球 シミュレータ 512ノード(4,096プロセッ サ)でのベンチマークタイミング(NES) 53.4 分! MP2-IFIE(フラグメント 間 相 互 作 用 )によって 抗 原 - 抗 体 反 応 の 様 相 を 詳 細 に 解 析 ウイルスの 変 異 予 測 や 薬 の 開 発 結 合 面 Neuraminidase (NA) Lipid Bilayer [PDBID: 1EO8] Hemagglutinin (HA) Nucleoprotein (NP) 1 2 Polymerase 3 (PB1,PB2,PA) PB2 PB1 PA HA NP NA M1 NS1 M2 NEP NEP Membrane Protein 2 (M2) 7 RNA 8 Matrix Protein (M1)

28 抗 原 領 域 ごとのIFIE Sumの 値 1EO8のHA1 上 に 存 在 す る 各 抗 原 領 域 ごとに IFIE sumの 値 を 求 めた E 領 域 とそれに 挟 まれた 間 の 部 分 の 残 基 の IFIE sumが 顕 著 に 大 きい. 各 抗 原 領 域 ごとの IFIE Sum 抗 原 や ドメインの 領 域 名 左 記 の 領 域 に 該 当 する 残 基 番 号 IFIE Sum [kcal/mol ] A B C 53-57, E 領 域 とその 間 の 残 基 は 抗 体 から 特 異 的 認 識 ( 引 力 的 相 互 作 用 )を 受 ける! ( 以 下 62 85を E 近 傍 と 定 義 する) D E 62-65, E+Eの 間 HA1 Total HA2 Total

29 IFIE Sumと 抗 原 領 域 の 対 照 (a) 全 アミノ 酸 の 解 析 HA1 上 の 全 アミノ 酸 残 基 の IFIE Sumのグラフ 抗 原 領 域 E 近 傍 の 残 基 では 特 異 的 安 定 化 が 見 られた. (b) 全 疎 水 分 極 残 基 の 解 析 HA1 上 の 疎 水 分 極 ( 非 荷 電 ) 残 基 のIFIE Sumのグラフ やはり 抗 原 領 域 E 近 傍 の 残 基 で は 特 異 的 安 定 化 が 見 られた.

30 変 異 予 測 へ 向 けて 変 異 体 のウイルスの 生 存 には, 以 下 の 制 約 が 伴 う と 考 えられる.( 有 利 な 変 異 ) 第 一 条 件 :ウイルスが 生 存 に 必 要 な 機 能 を 保 存 第 二 条 件 : 抗 体 に 認 識 されにくい 性 質 をもつ 変 異 の 発 生 についての 理 論 的 仮 定 と 予 測 手 法 第 一 条 件, 第 二 条 件 をともに 満 たしたものが 変 異 体 ウ イルスとして 出 現 しやすいのではないか. 変 異 体 の 出 現 は 自 然 淘 汰 の 結 果 で 抗 体 との 相 互 作 用 を 減 弱 させる( 引 力 を 弱 める/ 反 発 を 強 める) 方 向 に 進 みやすいのではないか. 本 研 究 では 第 一 条 件 をランダム 一 アミノ 酸 置 換 実 験 によって 第 二 条 件 をFMO 計 算 により 検 討 した.

31 変 異 予 測 のスキーム HA 上 のある 残 基 の 変 異 変 異 後 のHAの シアル 酸 結 合 活 性 あり 抗 体 との 強 い 引 力 相 互 作 用 あり 変 異 が 生 じる 可 能 性 が 高 い なし なし ( 反 発 弱 い) 理 由 : HAがシアル 酸 結 合 活 性 を 失 うと ウイルスは 細 胞 に 侵 入 不 可 能 となり 増 殖 できない 変 異 は 不 可 能 である 変 異 は 可 能 だが 相 対 的 に 生 じにくい 理 由 : HAが 抗 体 から 受 ける 強 い 引 力 相 互 作 用 から 逃 れられない ため

32 アミノ 酸 変 異 の 許 容 非 許 容 一 アミノ 酸 変 異 体 作 成 実 験 * *K. Nakajima et al., J. Virol. 77 (2003) HA 上 の 約 200のアミノ 酸 部 位 にランダムに 一 アミノ 酸 変 異 を 導 入 変 異 型 HAが 赤 血 球 凝 集 反 応 を 示 す H3N1 型 インフルエンザ ウイルス A/Aichi/68 変 異 型 HAが 赤 血 球 凝 集 反 応 を 示 さず 変 異 後 も, HAが 細 胞 結 合 能 保 存 許 容 変 異 ( 変 異 が 許 容 される) 非 許 容 変 異 ( 変 異 が 許 容 されない) 変 異 後 に, HAは 細 胞 結 合 能 喪 失 変 異 導 入 部 位 と 自 然 界 での 主 要 な 変 異 部 位 を 対 照 26 部 位 が 一 致 一 致 した26 部 位 のうち24 部 位 が 許 容 変 異. ウイルスの 変 異 体 は, 許 容 部 位 のアミノ 酸 が 変 異 したものである. 変 異 体 は 第 一 条 件 をほぼ 満 たしていることが 確 認 された.

33 抗 原 領 域 E 近 傍 での 変 異 部 位 の 変 遷 変 異 年 代 と 置 換 実 験 結 果 抗 原 領 域 E 近 傍 では,1968 年 のH3 型 インフルエン ザウイルスの 出 現 から,1997 年 までの 間 に 主 として 左 図 の 残 基 が 順 に 変 異 し,その 部 位 が 変 異 した 系 統 が 生 存 している. なお 左 図 で 緑 に 塗 りつぶしたものは, 許 容 部 位 で あることが 実 験 で 示 されている. 本 研 究 では 抗 原 領 域 Eおよびその 間 に 存 在 する24の 残 基 について, 抗 体 との 引 力 斥 力 の 指 標 としてIFIE sumの 値 を 使 用 し, 過 去 の 変 異 の 理 論 的 説 明 を 試 みた.

34 Comparison to historical events Charged Hydrophobic Polar (K. Takematsu et al., J. Phys. Chem. B 113 (2009) 4991.) FMO-MP2/6-31G*

35 地 球 シミュレータを 用 いた 大 規 模 FMO-MP3 計 算 ( 上 から 見 た 図 ) 電 子 相 関 を 取 り 入 れた 大 規 模 量 子 化 学 計 算 HA3 量 体 -Fab 抗 体 (1KEN;2351 残 基 ) NA-タミフル 複 合 体 (2HU4;386 残 基 ) HA3 量 体 :128ノード( 計 1024プロセッサ)を 用 いてFMO-MP3/6-31Gが5.8 時 間 NA 単 量 体 :64ノード( 計 512プロセッサ)を 用 いてFMO-MP3/6-31Gが1.1 時 間

36 Hybrid Parallelization with MPI-OpenMP Inter-fragment: MPI; Intra-fragment: OpenMP Hybrid parallelization Target system Parallelized by fragment indices Fragment momer (or dimer) MPI OpenMP Parallelized by integral indices Processor group Memory saving by sharing MP3 arrays among threads OpenMP is promising for acceleration on multi-core chips CPU0 CPU1 CPU2 CPU3 従 来 の 並 列 化 (MPI) メモリ SMP 並 列 化 (OpenMP) CPU0 CPU1 CPU2 CPU3 メモリ MPI 通 信

37 Computation time on ES SYSTEM LEVEL NODES TIME(h)(MP3/2) NODE RAT. TFLOPS HA1 FMO-MP FMO-MP (x1.6) 2.27 FMO-MP2* FMO-MP3* (x2.0) 3.02 FMO-MP FMO-MP (x1.6) HA3 FMO-MP FMO-MP (x1.3) 1.66 FMO-MP FMO-MP (x1.3) NA FMO-MP FMO-MP3* nodes = 512VPUs, 6-31G or 6-31G* basis set, Cys-Cys = 1 fragment HA1 (14086 atoms, 921 residues, AOs for 6-31G, AOs for 6-31G*) HA3 (36160 atoms, 2351 residues, AOs for 6-32G) NA (5792 atoms, 386 residues, AOs for 6-31G, AOs for 6-31G*)

38 HAタンパク 質 三 量 体 と 抗 体 の 計 算 結 果 Fab 抗 体 HA 三 量 体 ( 抗 原 ) (-30~30kcal/molで 色 付 ) 左 図 : 赤 色 のアミノ 酸 残 基 抗 体 と 引 力 的 な 相 互 作 用 青 色 のアミノ 酸 残 基 抗 体 と 反 発 的 な 相 互 作 用 赤 色 のアミノ 酸 残 基 が 突 然 変 異 を 起 こせば 抗 体 圧 から 逃 れることができる ウイルス 変 異 の 予 測 ワクチン 開 発 へ 中 右 図 : 単 量 体 間 の 相 互 作 用 解 析 三 量 体 としての 機 能 の 理 解 に 役 立 つ

39 HA 三 量 体 複 合 系 ドメイン 間 相 互 作 用 黄 色 部 分 vs. 各 アミノ 酸 のIFIE(フラグメント 間 相 互 作 用 エネルギー) IFIE sum(kcal/mol) 相 互 作 用 ドメイン HF MP2 MP3 Fab(I):HA(I) Fab(I):HA(II) Fab(I):HA(III) Fab(II):HA(I) Fab(II):HA(II) Fab(II):HA(III) 相 互 作 用 ドメイン HF MP2 MP3 HA(I):HA(II) HA(II):HA(III) HA(I):HA(III) Fab(I):Fab(II) HA 全 体 :Fab 全 体

40 インフルエンザウイルス 表 面 タンパク 質 のFMO 計 算 FMO 計 算 による 相 互 作 用 エネルギー 解 析 は インフルエンザHAおよびNAに 関 わる 特 異 的 分 子 認 識 の 解 明 に 役 立 つ (1) 宿 主 受 容 体 のシアル 酸 認 識 の 種 特 異 性 および 認 識 に 重 要 なアミノ 酸 の 特 定 ヒト 型 ウイルスH1: トリ 型 ウイルスH3: ブタ 型 ウイルスH1: (2) 抗 原 変 異 予 測 への 展 開 ヒト α 2-6 結 合 > トリα 2-3 結 合 Lys222, Asp225 ヒト α 2-6 結 合 < トリα 2-3 結 合 Glu190, Glu226,etc ヒト α 2-6 結 合 > トリα 2-3 結 合 FMO 計 算 と 血 球 吸 着 反 応 実 験 を 組 み 合 わせることで ウイルス 変 化 の 歴 史 と 理 論 予 測 値 が 一 致 する 結 果 が 得 られた これらの 成 果 を 踏 まえ 国 立 感 染 症 研 と 共 同 で 新 型 インフルエンザのワクチン 開 発 の ための 計 算 を 実 行 中 (3) HA3 量 体 -Fab 抗 体 およびNA-タミフル 複 合 体 の 大 規 模 MP3 計 算 タンパク 質 の 機 能 ドメインの 丸 ごと 計 算 が 可 能 となり 今 後 様 々な 生 命 現 象 のメカニズム 解 明 に 寄 与 すると 期 待 できる 生 命 科 学 における 量 子 化 学 計 算 が 実 用 化 の 領 域 に!

41 ペタスケール 並 列 シミュレーション 技 術 による 次 世 代 創 薬 手 法 の 創 成 開 発 者 占 有 並 列 マシン FMO 法 次 世 代 スパコン 次 世 代 スパコンをフル 活 用 する 並 列 シミュレーション ソフトを 開 発 創 薬 研 究 の 速 度 と 確 度 の 向 上 により 同 一 費 用 で 探 索 候 補 分 子 種 を 数 十 倍 に 増 やせる 創 薬 研 究 探 索 研 究 放 射 光 スクリーニン グ 大 型 実 験 施 設 のプロジェクトと 連 携 中 性 子 回 折 リード 化 合 物 最 適 化 NMR 細 胞 レベル 副 作 用 評 価 新 薬 創 製 ips 細 胞 由 来 機 能 細 胞 治 験 大 型 放 射 光 施 設 (SPring-8,KEK) 中 性 子 回 折 施 設 (J-PARC) NMR 基 盤 施 設 ( 理 研, 横 市 大 ) 人 へのリスクのある 治 験 の 患 者 さんの 数 は 最 小 限 で 済 む

42 謝 辞 ( 共 同 研 究 者 ) 望 月 祐 志 ( 立 教 大 学 ) 福 澤 薫 (みずほ 情 報 総 研 ) 中 野 達 也 ( 国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 ) 山 下 勝 美 (NECソフト) 中 島 捷 久 ( 名 古 屋 市 立 大 学 ) 信 澤 枝 里 ( 国 立 感 染 症 研 究 所 ) 沖 山 佳 生 ( 東 京 大 学 ) 渡 邉 博 文 (OpenEye Japan) 岩 田 達 則 ( 神 戸 大 学 ) 竹 松 和 友 ( 神 戸 大 学 ) 吉 岡 彬 生 ( 神 戸 大 学 )