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1 独 立 行 政 法 人 物 質 材 料 研 究 機 共 用 基 盤 部 門 強 磁 場 共 用 ステーション 2008 年 度 成 果 報 告 書 独 立 行 政 法 人 物 質 材 料 研 究 機 構 NIMS ナノテクノロジー 拠 点 極 限 環 境 領 域 NMR ファシリティー 2008 年 度 成 果 報 告 書 ( 委 託 事 業 および 自 主 事 業 )

2 ご 挨 拶 この 冊 子 は 独 立 行 政 法 人 物 質 材 料 研 究 機 構 共 用 基 盤 部 門 および NIMS ナノテクノロジー 拠 点 の 強 磁 場 共 用 ステーション( 国 際 通 称 Tsukuba Magnet Laboratory)で 行 った 2008 年 度 の 研 究 の 成 果 をまとめたものです 物 材 機 構 の 強 磁 場 施 設 には 世 界 で2 番 の 定 常 強 磁 場 が 発 生 できるハイ ブリッドマグネットを 有 しており 独 法 化 以 前 の 組 織 である 金 属 材 料 技 術 研 究 所 時 代 の 平 成 10 年 度 から 共 同 研 究 に 供 してきました 平 成 17 年 度 に 着 手 したハイブリッドマグネットシステム の 改 良 計 画 のうち 年 度 には 冷 却 水 システムと 超 伝 導 マグネット 冷 却 システムの 改 造 を 行 いました すなわち 1100 トンの 大 型 水 槽 の 大 部 分 を 本 来 の 目 的 である 冷 熱 貯 蓄 に 使 用 し 冷 凍 機 運 転 が 均 一 化 できるように 改 良 しました この 改 良 では 熱 交 換 器 を 導 入 したのですが 予 め 心 配 した 熱 効 率 の 減 少 はなく むしろ 効 率 は 大 幅 に 上 昇 しました また マグネットの 冷 却 用 の ヘリウム 冷 凍 機 を 適 正 サイズに 小 型 化 することで 電 力 消 費 量 を 大 幅 に 減 少 し 年 間 710 トン 以 上 の 二 酸 化 炭 素 排 出 削 減 が 見 込 まれています この 事 業 には 環 境 省 の 補 助 金 が 一 部 で 使 われていま す 15 MW 水 冷 マグネット 電 源 の 改 良 も 順 次 行 っていますが 17 年 度 にフィルタ 部 を MOS-FET ドロッパーへ 交 換 し 大 幅 に 磁 場 変 動 とリップルを 抑 制 することに 成 功 しています 年 度 に は 制 御 部 に 最 新 技 術 を 取 り 入 れ 大 幅 な 省 力 化 を 目 指 しています また 強 磁 場 共 用 ステーションには 固 体 高 分 解 能 用 の 930 MHz(21.8T の 磁 場 における 水 素 核 の 共 鳴 周 波 数 )の NMR 装 置 を 含 め 500 MHz 400 MHz 270 MHz 装 置 などが 設 置 されています これらはナノ 領 域 の 構 造 評 価 に 活 用 されることから 国 際 ナノテクノロジーネットワーク 拠 点 の 支 援 事 業 に 提 供 されています このほか 当 ステーションには 希 釈 冷 凍 機 のついた 物 性 研 究 用 の 20T マグネットが2 台 と 18 T 汎 用 マグネット 及 び 内 径 10 cm の 室 温 空 間 で 10 T 及 び 12 T の 無 冷 媒 マグネットなどがあり 共 同 利 用 に 供 されています 最 後 に ユーザー 各 位 の 一 層 のご 支 援 と 強 磁 場 研 究 の 進 展 を 期 待 しております 強 磁 場 共 用 ステーション 長 木 戸 義 勇

3 目 次 独 立 行 政 法 人 物 質 材 料 研 究 機 構 共 用 基 盤 部 門 強 磁 場 共 用 ステーション 2008 年 度 成 果 報 告 書 低 次 元 磁 性 体 Cu 3 Mo 2 O 9 の 強 磁 場 磁 化 過 程 II 1 Magnetization curve at high magnetic field in the low-dimensional magnet Cu 3 Mo 2 O 9 II 上 智 大 学 理 工 黒 江 晴 彦 浜 崎 智 彰 関 根 智 幸 物 質 材 料 研 究 機 構 長 谷 正 司 北 澤 英 明 KFe 2 As 2 単 結 晶 の 電 気 抵 抗 と 臨 界 磁 場 測 定 3 Resistivity and upper critical field in KFe 2 As 2 single crystals 物 質 材 料 研 究 機 構 寺 嶋 太 一 木 俣 基 薩 川 秀 隆 硲 香 織 原 田 淳 之 宇 治 進 也 神 戸 大 播 磨 尚 朝 BaNi 2 P 2 の dhva 測 定 5 dhva measurements on BaNi 2 P 2 物 質 材 料 研 究 機 構 産 業 技 術 総 合 研 究 所 神 戸 大 播 磨 尚 朝 寺 嶋 太 一 木 俣 基 薩 川 秀 隆 硲 香 織 原 田 淳 之 今 井 基 晴 宇 治 進 也 鬼 頭 聖 伊 豫 彰 永 崎 洋 有 機 伝 導 体 -(BETS) 2 FeCl 4 における 磁 場 誘 起 超 伝 導 の 面 垂 直 磁 場 効 果 7 Effect of perpendicular field on field-induced superconductivity in organic conductor -(BETS) 2 FeCl 4 物 質 材 料 研 究 機 構 A 筑 波 大 数 理 物 質 B C A,B 日 大 理 宇 治 進 也 木 俣 基 A 薩 川 秀 隆 硲 香 織 A,B 寺 嶋 太 一 A 周 彪 C 小 林 速 男 C C 小 林 昭 子 A 原 田 淳 之 A (EDT-DSDTFVSDS) 2 MBr 4 の 巨 大 磁 気 抵 抗 9 Giant negative magnetoresistance of (EDT-DSDTFVSDS) 2 MBr 4 物 質 材 料 研 究 機 構 大 阪 府 立 大 院 理 薩 川 秀 隆 木 俣 基 原 田 淳 之 硲 香 織 寺 嶋 太 一 宇 治 進 也 邵 向 鋒 林 寿 樹 杉 本 豊 成 磁 性 有 機 導 体 (Me-3,5-DIP)[Ni(dmit) 2 ] 2 の 面 内 磁 場 下 における 特 異 な 磁 気 抵 抗 11 Anomalous magnetoresistance of magnetic organic conductor (Me-3,5-DIP)[Ni(dmit) 2 ] 2 under in-plane magnetic field 筑 波 大 数 理 物 質 A 物 質 材 料 研 究 機 構 B 埼 玉 大 理 C 理 研 D CREST * 硲 香 織 AB 山 口 尚 秀 B 木 俣 基 B 原 田 淳 之 B 薩 川 秀 隆 B 寺 嶋 太 一 B 宇 治 進 也 AB 高 坂 洋 介 CD 山 本 浩 史 D* CD* 加 藤 礼 三 鉄 フタロシアニン 伝 導 体 の 巨 大 磁 気 抵 抗 と 磁 気 トルク 13 Giant Magnetoresistance and Magnetic Torque of Fe-Phthalocyanine Conductor 物 材 機 構 1, 筑 波 大 2, 熊 本 大 理 3, 東 大 物 性 研 4 5, 北 大 理 宇 治 進 也 1,2, 松 田 真 生 3, 田 島 裕 之 4, 内 藤 俊 雄 5 5, 稲 辺 保 木 俣 基 1, 薩 川 秀 隆 1, 山 口 尚 秀 1, 寺 島 太 一 1, 不 整 合 格 子 系 有 機 超 伝 導 体 (MDT-TS)(AuI 2 ) の 反 強 磁 性 状 態 15 Antiferromagnetic state of the incommensurate organic superconductor (MDT-TS)(AuI 2 ) 東 京 工 業 大 学 川 本 正 坂 東 祥 匡 森 健 彦 物 質 材 料 研 究 機 構 鴻 池 孝 子 山 口 尚 秀 寺 島 太 一 宇 治 進 也 広 島 大 学 瀧 宮 和 男 大 坪 徹 夫

4 磁 場 誘 起 スピン 密 度 波 における 傾 斜 磁 場 効 果 の 検 証 レベッド 魔 法 角 の 場 合 17 Field-Induced Spin Density Waves transitions and Lebed resonance A Competition between two dimensional effects 青 山 学 院 大 学 理 工 物 材 機 構 a b 兵 庫 県 立 大 学 山 田 順 一 b 三 井 敏 之 小 林 夏 野 木 俣 基 a 薩 川 秀 隆 a 宇 治 進 也 a 寺 嶋 太 一 a 二 次 元 三 角 格 子 を 持 つスピンギャップ 物 質 YbAl 3 C 3 の 強 磁 場 磁 化 過 程 19 High field magnetization process of the spin gap system YbAl 3 C 3 with the two-dimensional triangular lattice 埼 玉 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 小 坂 昌 史 加 藤 慶 顕 小 檜 山 卓 也 物 質 材 料 研 究 機 構 鈴 木 博 之 ZnO2 次 元 電 子 系 における 強 磁 場 輸 送 特 性 21 High magnetic field transport measurements in ZnO two-dimensional electron systems 物 質 材 料 研 究 機 構 今 中 康 貴 高 増 正 産 業 総 合 技 術 研 究 所 反 保 衆 志 柴 田 肇 仁 木 栄 重 い 電 子 系 化 合 物 URu 2 Si 2 の 強 磁 場 下 輸 送 係 数 測 定 23 Transport measurements of a heavy fermion compound URu 2 Si 2 under high magnetic field 京 大 院 理 1 物 材 機 構 2 東 北 大 金 研 3 原 子 力 機 構 4 5 阪 大 院 理 宍 戸 寛 明 1* 橋 本 顕 一 郎 1 芝 内 孝 禎 1 高 増 正 2 竹 端 寛 治 2 今 中 康 貴 2 佐 々 木 孝 彦 3 大 泉 元 3 小 林 典 男 3, 芳 賀 芳 範 4 松 田 達 磨 4 大 貫 惇 睦 4,5 1 松 田 祐 司 非 磁 性 半 導 体 black SmS の 磁 場 による 金 属 化 25 Magnetic field induced metallization of nonmagnetic semiconducting phase of SmS 名 大 院 理 井 村 敬 一 郎 出 口 和 彦 佐 藤 憲 昭 東 大 物 性 研 松 林 和 幸 物 質 材 料 研 究 機 構 鈴 木 博 之 高 増 正 今 中 康 貴 竹 端 寛 治 層 状 マンガン 酸 化 物 単 結 晶 の 磁 場 誘 起 ステップ 転 移 の 外 場 効 果 27 Effect of external parameters on magnetic-field induced steplike transition of bilayered manganite single-crystal 岩 手 大 工 大 和 義 昭 村 野 由 松 川 倫 明 東 北 大 金 研 小 山 佳 一 小 林 典 男 物 質 材 料 研 究 機 構 二 森 茂 樹 パリ 南 大 学 R.Suryanarayanan A.Revcolevschi 微 小 Al 超 伝 導 ディスクにおける 過 剰 抵 抗 の 試 料 サイズ 効 果 29 Sample size dependence of excess resistance near the superconducting transition of a mesoscopic Al disk 物 質 材 料 研 究 機 構 A B 筑 波 大 数 理 物 質 薩 川 秀 隆 A 硲 香 織 A,B 小 玉 恒 太 A,B 寺 嶋 太 一 A A,B 宇 治 進 也 原 田 淳 之 A 榎 本 健 悟 A 矢 ヶ 部 太 郎 A 木 俣 基 A 磁 場 印 加 中 加 熱 による 熱 分 解 炭 素 の 作 製 と 磁 性 31 Preparation of pyrolytic carbon by heating under magnetic field and its magnetic properties 埼 玉 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 神 島 謙 二 4f 電 子 系 化 合 物 における NMAD スピングラス 現 象 に 関 する 研 究 33 NMAD Spin Glass Behavior in 4f Electronic Compounds 東 北 大 金 研 李 徳 新 物 質 材 料 研 究 機 構 二 森 茂 樹

5 光 化 学 反 応 の 磁 場 効 果 と 光 化 学 反 応 機 構 研 究 への 応 用 36 Study of the Magnetic Field Effects on Photochemical Reactions and its Application on Reaction Dynamics of Photochemical Reactions 埼 玉 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 神 戸 正 雄 田 中 深 雪 矢 後 友 暁 若 狭 雅 信 物 質 材 料 研 究 機 構 高 増 正 低 銅 比 銅 安 定 化 Nb 3 Al 線 材 の 特 性 39 Characteristics of Cu Stabilized Nb 3 Al Strands with Low Cu Ratio 物 質 材 料 研 究 機 構 菊 池 章 弘 日 立 電 線 株 式 会 社 中 川 和 彦 田 中 和 英 株 式 会 社 ヒキフネ 小 林 道 雄 フェルミ 国 立 加 速 器 研 究 所 R. Yamada, E. Barzi, M. Lamm, D. Turrioni, A. Zlobin 高 エネルギー 加 速 器 研 究 機 構 土 屋 清 澄 中 本 建 志 佐 々 木 憲 一 山 本 明 低 損 失 型 の Nb 3 Al 線 材 の 開 発 41 Development of low-ac-loss Nb 3 Al conductors 物 質 材 料 研 究 機 構 伴 野 信 哉 竹 内 孝 夫 日 立 電 線 ( 株 ) 田 中 和 英 中 川 和 彦 ジェリーロール 法 Nb 3 Al 線 材 における 箔 厚 の 影 響 43 Effect of the Jelly-Roll layer thickness on the properties of Nb 3 Al wires 高 エネルギー 加 速 器 研 究 機 構 土 屋 清 澄 寺 島 昭 男 山 本 明 物 質 材 料 研 究 機 構 竹 内 孝 夫 伴 野 信 哉 菊 池 章 弘 飯 嶋 安 男 二 森 茂 樹 上 智 大 学 福 田 嵩 大 竹 中 康 記 高 尾 智 明 日 立 電 線 田 川 浩 平 中 川 和 彦 田 中 和 英 ジェリーロール 法 Nb 3 Sn 線 材 の 開 発 45 Development of Jelly-Roll processed Nb 3 Sn superconducting wires. 日 立 電 線 ( 株 ) 大 圃 一 実 木 村 守 男 中 川 和 彦 ( 株 ) 日 立 製 作 所 高 橋 雅 也 岡 田 道 哉 東 海 大 学 工 学 部 太 刀 川 恭 治 物 質 材 料 研 究 機 構 竹 内 孝 夫 新 製 法 による Nb 3 Sn 超 伝 導 線 材 の 強 磁 場 特 性 47 High-Field Performance of Nb 3 Sn Superconductors Prepared by a New Process 東 海 大 学 工 学 部 太 刀 川 恭 治 佐 々 木 弘 樹 山 口 真 弘 林 裕 貴 中 田 光 栄 物 質 材 料 研 究 機 構 竹 内 孝 夫 Nb 3 Sn 超 伝 導 素 線 の Ic-B-T- 特 性 の 測 定 と 解 析 50 The measurement and analysis on the Ic-B-T- characteristics of Nb 3 Sn superconducting wire 古 河 電 気 工 業 株 式 会 社 杉 本 昌 弘 片 山 功 多 八 木 澤 進 坪 内 宏 和 物 質 材 料 研 究 機 構 佐 藤 明 男 伊 藤 喜 久 男 木 吉 司 RHQT-Nb 3 Al 線 材 開 発 における 線 径 柔 軟 性 について 53 Wire-diameter variety of RHQT Nb 3 Al conductor 日 立 電 線 田 川 浩 平 田 中 和 英 中 川 和 彦 物 質 材 料 研 究 機 構 竹 内 孝 夫 北 口 仁 伴 野 信 哉 飯 嶋 安 男 菊 池 章 弘

6 16wt%Sn ブロンズを 用 いた Nb 3 Sn 線 材 の Jc のフィラメント 径 依 存 性 55 Filament diameter dependence of Jc of Nb 3 Sn superconducting wires prepared with 16wt%Sn bronze. JASTEC 村 上 幸 伸 安 中 弘 行 *1 林 征 治 物 質 材 料 研 究 機 構 松 本 真 治 浅 野 稔 久 伊 藤 喜 久 男 木 吉 司 ITER CS 用 Nb 3 Sn 超 伝 導 素 線 の 軸 方 向 歪 印 加 時 における 臨 界 電 流 特 性 の 測 定 57 Measurement of critical current characteristics in Nb 3 Sn strand subjected to axial-strain for ITER central solenoid 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 辺 見 努 長 谷 隆 司 布 谷 嘉 彦 宇 野 康 弘 奥 野 清 物 質 材 料 研 究 機 構 伊 藤 喜 久 男 Nb-Zr 合 金 超 伝 導 線 材 の 新 しい 作 製 方 法 59 New Fabrication Process of Superconducting Nb-Zr Alloy Wire 足 利 工 業 大 学 斎 藤 栄 物 質 材 料 研 究 機 構 竹 内 孝 夫 伴 野 信 哉 内 部 拡 散 法 によって 作 製 した MgB 2 線 材 の 超 伝 導 特 性 61 The development of MgB 2 wires by internal diffusion process 物 質 材 料 研 究 機 構 松 本 明 善 戸 叶 一 正 熊 倉 浩 明 高 Ga 濃 度 Cu-Ga 化 合 物 を 用 いた V 3 Ga 超 伝 導 線 材 における Mg 添 加 効 果 63 Effect of Mg addition on the superconducting properties of the V 3 Ga multifilamentary wires using high Ga content Cu-Ga/V precursor 自 然 科 学 研 究 機 構 核 融 合 科 学 研 究 所 菱 沼 良 光 西 村 新 物 質 材 料 研 究 機 構 菊 池 章 弘 飯 嶋 安 男 竹 内 孝 夫 ( 株 ) 大 阪 合 金 工 業 所 谷 口 博 康 朝 永 満 男 YBCO コイルの 製 作 と 評 価 65 Construction and test of YBCO coils 物 質 材 料 研 究 機 構 Uglietti Davide 崔 世 鎔 松 本 真 治 木 吉 司 HTS テープ 線 材 の 磁 場 遮 蔽 67 Magnetic field shielding by HTS tape conductors 物 質 材 料 研 究 機 構 松 本 真 治 内 田 公 木 吉 司 押 し 出 しを 利 用 した Cu 安 定 化 V-Ti 合 金 線 材 の 超 伝 導 特 性 69 Trial manufacture of RHQT Nb 3 Al cable-in-conduit conductor 物 質 材 料 研 究 機 構 竹 内 孝 夫 瀧 川 博 幸 伴 野 信 哉 徳 島 大 学 中 川 正 規 井 上 廉 Gd 系 高 温 超 電 導 線 材 の 臨 界 電 流 の 磁 界 特 性 71 Critical current characteristics of GdBCO coated conductor in magnetic field 九 州 電 力 株 式 会 社 岡 元 洋 物 質 材 料 研 究 機 構 二 森 茂 樹, 伊 藤 喜 久 男 株 式 会 社 フジクラ 齊 藤 隆 超 電 導 工 学 研 究 所 町 敬 人, 塩 原 融 Bi-2212 線 材 臨 界 電 流 の 強 磁 場 中 温 度 依 存 性 73 Critical current density of Bi-2212 wires at various temperatures and high magnetic fields 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 礒 野 高 明 奥 野 清 物 質 材 料 研 究 機 構 伊 藤 喜 久 男

7 ブロンズで 補 強 した Bi-2223 テープ 線 材 の 高 磁 場 中 臨 界 電 流 75 Critical current of Bi-2223 tape wire reinforced by bronze in high magnetic field ( 株 ) 神 戸 製 鋼 所 財 津 享 司 濱 田 衛 ( 独 ) 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 長 谷 隆 司 物 質 材 料 研 究 機 構 崔 世 鎔 木 吉 司 強 磁 場 による [Cu(bpy) 2 (BF 4 ) 2 (bpy)] のゲート 圧 制 御 77 Control of Gate Pressure of [Cu(bpy) 2 (BF 4 ) 2 (bpy)] by High Magnetic Fields 信 州 大 学 理 学 部 橋 川 輝 一, 浜 崎 亜 富, 尾 関 寿 美 男 物 質 材 料 研 究 機 構 阿 部 晴 雄 ヘリカルシリカの 磁 場 による 構 造 制 御 79 Structural Control of Helical Silica due to the Magnetic Fields 信 州 大 学 理 学 部 久 保 田 佳 那, 浜 崎 亜 富, 尾 関 寿 美 男 物 質 材 料 研 究 機 構 阿 部 晴 雄 Cu 母 相 中 における bccfe-co 粒 子 のバリアント 選 択 に 及 ぼす 外 部 磁 場 効 果 81 Effects of magnetic field on variant selection of bcc Fe-Co particles in a Cu matrix 東 京 工 業 大 学 大 学 院 総 合 理 工 学 研 究 科 島 隆 一 郎 菅 野 千 晴 藤 居 俊 之 尾 中 晋 加 藤 雅 治 物 質 材 料 研 究 機 構 大 塚 秀 幸 熱 酸 化 法 による Co フェライト 薄 膜 の 作 製 と 磁 気 伝 導 特 性 83 Magnetic and transport properties of Co ferrite thins film fabricated by a thermal oxidation. 物 資 材 料 研 究 機 構 高 橋 有 紀 子 介 川 裕 章 三 谷 誠 司 猪 俣 浩 一 郎 宝 野 和 博 東 北 大 学 関 剛 斎 高 梨 弘 毅 強 磁 場 によるブロック 共 重 合 体 ラメラ 状 ミクロ 相 分 離 構 造 の 垂 直 配 向 化 を 目 指 した 試 み 85 Trial of Perpendicular Orientation of Lamellar Microdomains in Films of All-Amorphous Block Copolymers by High Magnetic Fields 京 都 工 芸 繊 維 大 学 安 井 章 文 櫻 井 伸 一 物 質 材 料 研 究 機 構 木 吉 司 首 都 大 学 東 京 山 登 正 文 京 都 大 学 木 村 史 子 木 村 恒 久 自 己 組 織 化 らせん 状 共 役 系 高 分 子 の 超 階 層 構 造 液 晶 性 ポリメタフェニレン 誘 導 体 の 磁 場 配 向 87 Hierarchical structures of self-assembled helical conjugated polymers Magnetically forced alignment of liquid crystalline poly(meta-phenylene) derivatives 京 都 大 学 高 分 子 化 学 専 攻 須 田 清 吉 田 淳 赤 木 和 夫 物 質 材 料 研 究 機 構 二 森 茂 樹 導 電 性 高 分 子 の 磁 場 電 解 合 成 89 Magnetoelectrochemical synthesis of conducting polymers 筑 波 大 数 理 物 質 科 学 研 究 科 物 質 工 学 系 後 藤 博 正 物 質 材 料 研 究 機 構 二 森 茂 樹

8 垂 直 磁 場 中 における 銅 電 析 反 応 の 電 流 応 答 91 Electrolytic Current of Copper Electrodeposition in Perpendicular Magneticdeno Field 早 稲 田 大 学 高 等 研 究 所 杉 山 敦 史 埼 玉 県 産 業 技 術 総 合 センター 森 本 良 一 物 質 材 料 研 究 機 構 山 内 悠 輔 東 北 大 学 金 属 材 料 研 究 所 茂 木 巖 早 稲 田 大 学 理 工 学 術 院 逢 坂 哲 彌 職 業 能 力 開 発 総 合 大 学 校 青 柿 良 一 タンパク 質 結 晶 成 長 における 対 流 の 効 果 に 関 する 理 論 的 考 察 93 The role of solutal convection in protein crystal growth -A new dimensionless number to evaluate the effects of convection on protein crystal growth- 物 質 材 料 研 究 機 構 若 山 信 子 蘭 州 交 通 大 学 王 良 璧 西 安 交 通 大 学 陶 文 せん 磁 場 中 DNA 電 気 泳 動 におけるローレンツ 力 効 果 95 Lorentz Force Effects on DNA Electrophoresis under the Magnetic Fields 横 国 大 院 工 小 澤 瞬, 黒 坂 大 希, 山 本 勲 物 質 材 料 研 究 機 構 高 増 正 強 磁 場 環 境 が 哺 乳 動 物 の 生 殖 細 胞 に 及 ぼす 影 響 97 - 母 マウスへの 靜 磁 場 暴 露 が 初 期 胚 から 着 床 後 の 胎 児 に 及 ぼす 影 響 - Effect of High magnetic Field on Mammalian Gametes; the Effects of 12T Static Magnetic Fields from the After Fertilized to the Implantation Stage in Vivo Treated Mouse Fetuses 東 邦 大 学 岡 田 詔 子 黒 田 優 横 藤 田 純 子 小 田 哲 子 五 十 嵐 宏 明 医 薬 基 盤 研 究 所 羽 鳥 真 功 山 海 直 物 質 材 料 研 究 機 構 二 森 茂 樹 強 磁 場 の 生 体 影 響 に 関 する 研 究 99 The study of biological effect of strong static magnetic field 財 団 法 人 鉄 道 総 合 技 術 研 究 所 池 畑 政 輝 吉 江 幸 子 物 質 材 料 研 究 機 構 廣 田 憲 之 竹 村 太 郎 箕 輪 貴 司 花 方 信 孝

9 独 立 行 政 法 人 物 質 材 料 研 究 機 構 NIMS ナノテクノロジー 拠 点 極 限 環 境 領 域 NMR ファシリティー 2008 年 度 成 果 報 告 書 ( 委 託 事 業 および 自 主 事 業 ) 改 良 したハイブリッド 磁 石 を 用 いた 強 磁 場 NMR 101 High-Field NMR with a Newly Designed Hybrid Magnet 物 質 材 料 研 究 機 構 端 健 二 郎 清 水 禎 藤 戸 輝 昭 後 藤 敦 大 木 忍 浅 野 稔 久 二 森 茂 樹 光 ポンピング 法 を 用 いた 核 スピン 偏 極 器 の 開 発 VII 103 Development of a nuclear spin polarizer with the optical pumping method: VII 1 物 質 材 料 研 究 機 構 2 科 学 技 術 振 興 機 構 さきがけ 後 藤 敦 1,2 清 水 禎 1, 端 健 二 郎 1, 大 木 忍 1 1, 瀧 澤 智 恵 子 カリウムを 吸 着 した SOD 型 ソダライトの NMR 特 性 105 NMR Property of Sodalite Loaded with Potassium 群 馬 高 専 五 十 嵐 睦 夫 大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 中 野 岳 仁, 花 澤 宏 文, 野 末 泰 夫 物 質 材 料 研 究 機 構 清 水 禎, 後 藤 敦, 端 健 二 郎 絹 モデルペプチドの 分 子 内 分 子 間 水 素 結 合 に 関 する 高 磁 場 1 H 固 体 NMR と 経 験 的 1 1 H 化 学 シフト 計 算 を 用 いた 研 究 A Study of Intra- and Inter-molecular Hydrogen Bonds in Silk Model Peptides with High-Field Solid State 1 H NMR and Empirical 1 H Chemical Shift Calculation 農 工 大 工 鈴 木 悠 高 橋 塁 山 内 一 夫 朝 倉 哲 郎 シェフィールド 大 マイク ウィリアムソン 物 質 材 料 研 究 機 構 清 水 禎 丹 所 正 孝 10 B および 11 B 高 分 解 能 NMR によるボロンドープダイヤモンドの 研 究 B and 11 B High-resolution NMR studies on boron-doped diamond 京 都 大 学 理 竹 腰 清 乃 理 ロシア 科 学 アカデミー E.A.Ekimov,V.A.Sidorov 物 質 材 料 研 究 機 構 村 上 美 和 清 水 禎 丹 所 正 孝 高 野 義 彦 石 井 聡 H, 13 C NMR による 液 晶 6BA の 分 子 配 向 および 分 子 ダイナミクスの 研 究 H and 13 C NMR Studies of Molecular Orientation and Dynamics in Liquid Crystal 6BA 1 金 沢 大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 物 質 科 学 専 攻 2 物 質 材 料 研 究 機 構 ナノ 計 測 センター 強 磁 場 NMRグループ 水 野 元 博 1 鈴 木 陽 1,2 村 上 美 和 2, 丹 所 正 孝 2 2 清 水 禎 強 磁 場 固 体 高 分 解 能 NMRによるモリブデン 化 合 物 の 局 所 構 造 の 研 究 115 A Study of Local Structure of Molybdenum Compounds by High-Field High-Resolution NMR in Solids 自 然 科 学 研 究 機 構 分 子 科 学 研 究 所 飯 島 隆 広 西 村 勝 之 東 京 工 業 大 学 山 瀬 利 博 27 Al-NMR による 脱 水 ゼオライトにおける 異 常 スピン-スピン 緩 和 の 研 究 117 Anomalous property of the spin spin relaxation of 27 Al NMR in dehydrated zeolite A a 群 馬 高 専 b 産 業 技 術 総 合 研 究 所 c 物 質 材 料 研 究 機 構 d 大 阪 大 学 五 十 嵐 睦 夫 a 小 平 哲 也 b 清 水 禎 c 後 藤 敦 c 端 健 二 郎 c 中 野 岳 仁 d d 野 末 泰 夫

10 アラニントリペプチドとオリゴマーの 高 磁 場 1 H-MAS および 15 N 交 差 分 極 -MAS-NMR による 研 究 : 反 平 行 および 平 行 βシート 構 造 と 2 つの 結 晶 学 的 に 独 立 な 分 子 の 峻 別 119 High-Field 1 H MAS and 15 N CP-MAS NMR Studies of Alanine Tripeptides and Oligomers: Distinction of Antiparallel and Parallel β-sheet Structures and Two Crystallographically Independent Molecules a 東 京 農 工 大 学 b 物 質 材 料 研 究 機 構 鈴 木 優 a 山 内 一 夫 a 朝 倉 哲 夫 a 丹 所 正 孝 b b 清 水 禎 生 体 分 子 の 固 体 酸 素 17 核 NMR 研 究 121 A Solid-state 17 O NMR Study in Biological Compounds a 理 研 ゲノム 科 学 総 合 研 究 センター b 物 質 材 料 研 究 機 構 山 田 和 彦 a 山 崎 俊 夫 a 清 水 禎 b b 大 木 忍 Analysis of 11 B NMR Powder Lineshape of MgB 2 in the Normal Phase 123 a 京 都 大 学 b 物 質 材 料 研 究 機 構 山 路 俊 樹 a 竹 腰 清 乃 理 a b 清 水 禎 Study of YbAl 3 C 3 in High Magnetic Field 125 a 神 戸 大 学 b 物 質 材 料 研 究 機 構 c 埼 玉 大 学 清 水 禎 b 後 藤 敦 b 大 木 忍 b 加 藤 慶 顕 c c 小 阪 昌 史 冨 澤 智 a 水 戸 毅 a 和 田 信 二 a 端 健 二 郎 b 低 -k 絶 縁 体 用 自 己 組 織 化 ポーラスシリカの Si-O-Si 骨 格 ネットワークの 結 合 性 に 対 する 前 駆 体 溶 液 中 の 有 機 アルコキシシラン 濃 度 依 存 性 127 Skeletal Si O Si network connectivity of self-assembled porous silica for low-k dielectrics depending on organoalkoxysilane concentration in precursor solutions a Advanced Semiconductor Research Center, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology b National Institute for Materials Science Syozo Takada a, Nobuhiro Hata a and Kikuko Hayamizu, Miwa Murakami b, Kenzo Deguchi b, Shinobu Ohki b, Masataka Tansho b, and Tadashi Shimizu b 常 磁 性 物 質 内 における 分 子 運 動 のマジック 角 回 転 2 H-NMR スペクトルによる 研 究 131 Molecular Dynamics in Paramagnetic Materials as Studied by Magic-Angle Spinning 2 H NMR Spectra a 金 沢 大 学 b 物 質 材 料 研 究 機 構 水 野 元 博 a, 鈴 木 陽 a 丹 所 正 孝 b b 清 水 禎 930MHz 固 体 NMR によるオレフィン 重 合 用 触 媒 の 構 造 解 析 133 Ti-NMR in Zigler-Natta Catalyst by High-Field Solid-State NMR a 東 邦 チタニウム b 物 質 材 料 研 究 機 構 齋 藤 雅 由 a 藤 田 孝 a 清 水 禎 b b 出 口 健 三

11 独 立 行 政 法 人 物 質 材 料 研 究 機 共 用 基 盤 部 門 強 磁 場 共 用 ステーション 2008 年 度 成 果 報 告 書

12 低 次 元 磁 性 体 Cu 3 Mo 2 O 9 の 強 磁 場 磁 化 過 程 II Magnetization curve at high magnetic field in the low-dimensional magnet Cu 3 Mo 2 O 9 II 上 智 大 学 理 工 黒 江 晴 彦 浜 崎 智 彰 関 根 智 幸 Haruhiko Kuroe, Tomoaki Hamasaki, and Tomoyuki Sekine Dept. Phys., Sophia Univ. 物 質 材 料 研 究 機 構 長 谷 正 司 北 澤 英 明 Masashi Hase and Hideaki Kitazawa National Institute for Materials Science Abstract: We report the magnetization curve under magnetic fields up to 30 T at low temperatures in Cu 3 Mo 2 O 9 single crystal. This material shows successive phase transitions to an antiferromagnetic phase at T N = 7.9 K and a weak ferromagnetic phase at T c ~ 2.5 K in low magnetic fields. With increasing magnetic field below T N, a rapid increase of magnetization is observed at 19.3 T for H//a and 17.5 T for H//c, respectively. On the other hand, it is not observed for H//b, which denies the spin flop transition, because the easy axis is almost pararell to the b axis. These rapid increases disappear above T N. The magnetic moments are canted towards the ac plane by the Dzyaloshinskii-Moriya interaction in the WF phase. Consequently, these rapid increases of magnetization at high magnetic fields are interpreted by a sudden rotation of the WF moment about the b axis. Keywords: Magnetization, low-dimensional magnet, Cu 3 Mo 2 O 9, Dzyaloshinskii-Moriya interaction kuroe@sophia.ac.jp 1. はじめに Cu 3 Mo 2 O 9 は 結 晶 学 的 な b 軸 方 向 に 延 びた 結 晶 学 的 に 非 等 価 な 三 種 類 の Cu 2+ イオンから 形 成 された 擬 一 次 元 スピン 鎖 を 持 つ[1] 一 本 の 磁 性 鎖 を 抜 き 出 すと 図 1(a) に 示 すように Cu1 スピンの 作 る DM 相 互 作 用 に 伴 う 擬 一 次 元 反 強 磁 性 スピン 鎖 は Cu2 および Cu3 の 作 るスピンダイマーと 相 互 作 用 している これ らの 磁 性 鎖 が 単 位 胞 の 中 に 図 1(b) の 様 に 並 んでいる 図 1(c) に 示 すように b 軸 方 向 に 隣 接 した 二 つの Cu1 イオンには Dzyaloshinskii-Moriya (DM) 相 互 作 用 が 働 き その Dzyaloshinskii ベクトル (D ベクトル) は 図 1(b), (c) の 様 に 交 番 化 する 各 々の 磁 性 鎖 では b 軸 方 向 の 反 強 磁 性 秩 序 の 位 相 の 違 いによって 図 1(b), (c) での case 1, case 2 の 様 な 異 なる 向 きの 弱 強 磁 性 的 なモーメント 成 分 (WF モーメント)を 生 じ 得 る Cu 3 Mo 2 O 9 は T N = 7.9 K で 反 強 磁 性 転 移 を 起 こし 約 2.5 K 以 下 で 弱 強 磁 性 的 な 性 質 を 持 った 新 しい 相 に 転 移 する[1] これらの 逐 次 相 転 移 は 鎖 間 相 互 作 用 や 磁 場 印 加 による WF モーメントの 配 向 と 熱 揺 らぎとが 競 合 して 起 こると 考 えられる 中 性 子 非 弾 性 散 乱 測 定 より 求 めた 分 散 関 係 から Cu1 スピン 鎖 の 鎖 内 方 向 の 交 換 相 互 作 用 の 大 きさ [ 図 1(a) の J 4 ] Cu2-Cu3 ダイマー 間 に 働 く 交 換 相 互 作 用 の 大 きさ [ 図 1(a) の J 3 ] Cu1 スピン 鎖 と Cu2-Cu3 ダ イマー 間 に 働 く 相 互 作 用 の 大 きさを 明 らかにし この 系 では Cu1 スピン 鎖 の 作 る spinon 励 起 と Cu2-Cu3 ダ イマーの 作 る triplon 励 起 が 結 合 している 事 を 明 らか にした[2] 2. 実 験 方 法 NIMS のハイブリッド マグネットを 用 いて 30 T までの 引 き 抜 き 法 による 強 磁 場 磁 化 過 程 測 定 を 行 った クライオスタット 内 の 三 個 の 試 料 ス ペースに 結 晶 軸 を Laue 写 真 で 特 定 した Cu 3 Mo 2 O 9 単 結 晶 試 料 を 取 り 付 けた 測 定 は T c と T N を 考 慮 して 2.0, 4.6, 6.0, 10.4 K で 行 った Fig1:Schematic drawing of Cu 3 Mo 2 O

13 4.6 K 以 下 での 温 調 はクライオスタット 内 部 のヘリウ ム 圧 力 の 調 整 で 行 い 4.6 K 以 上 での 温 調 はクライオ スタット 内 部 のヒーターに 流 す 電 流 を 調 整 することで 行 った 温 度 はクライオスタット 内 部 に 設 置 した CERNOX 温 度 計 を 用 いて 測 定 した 3. 実 験 結 果 と 考 察 図 2 には 磁 場 H を 結 晶 の a, b, c 軸 に 平 行 に 印 加 し た 場 合 の 昇 磁 場 での 磁 化 過 程 の 温 度 変 化 を 示 す 今 後 x 軸 方 向 に 磁 場 をかけた 場 合 の 磁 化 を M x (H) とし 一 般 的 な 場 合 には 添 え 字 を 省 略 する 2 T 以 上 では M(H) に 磁 気 ヒステリシスは 観 測 されなかった 弱 磁 場 から 順 にデータを 説 明 する M a (H) では 0 T と 0.1 T の 間 に M c (H) では 0.3 T と 0.8 T の 間 に WF モーメントの 配 向 秩 序 による 磁 化 の 上 昇 が 観 測 される 一 方 M b (H) は 0 T 付 近 では 直 線 的 な 磁 場 変 化 をする これらの 結 果 の 詳 細 は 文 献 [1]で 報 告 されている T N 以 下 での M a (19.3 T) と M c (17.5 T) に 磁 場 の 上 昇 に 伴 う 急 激 な 磁 化 の 上 昇 が 観 測 された この 変 化 は M b (H) については 観 測 されなかった この 変 化 は T N 以 下 で のみ 観 測 されていて T c 以 下 でも 同 様 な M(H) の 急 激 な 上 昇 が 同 様 の 磁 場 で 観 測 されている すなわち 反 強 磁 性 長 距 離 秩 序 の 形 成 に 関 係 した 現 象 であることが 示 唆 される しかしながら T N 以 下 では Cu1 のスピ ンはほぼ b 軸 方 向 を 向 いているので この 現 象 は 一 般 的 なスピン フリップとは 考 えられない 磁 化 の 急 激 な 上 昇 の 原 因 を 考 察 する 先 ずは 図 1(b) に 示 した 磁 気 構 造 をとるスピン 系 の 詳 細 を 見 る 印 加 磁 場 も 含 めて 考 えると Cu1 スピンは D ベクトルに 垂 直 な 面 内 で 結 晶 の b 軸 方 向 から 僅 かに 傾 いた 方 向 を 向 く これは 二 つの Cu1 スピンを 直 交 させようと する DM 相 互 作 用 と 反 平 行 にそろえようとする 交 換 相 互 作 用 J 4 と 印 加 磁 場 の 競 合 による Cu1 スピ ンの 回 転 方 向 は 二 種 類 あり 一 つは Cu1 スピンの b 軸 方 向 からのキャント 角 もう 一 つは b 軸 方 向 に 隣 接 した 二 つの Cu1 スピンが 含 まれる 平 面 の 法 線 ベク トルが a 軸 からなす 角 である a 軸 方 向 の 磁 場 を 印 加 する 僅 かな 磁 場 で b 軸 方 向 の 反 強 磁 性 秩 序 の 位 相 の 配 向 が 起 こり 0.1 T で WF モーメントが 揃 った 方 向 を 向 く[1] さらに 磁 場 を 印 加 すると Cu1 スピンは 印 加 磁 場 の 方 向 に 向 こうとする 19.3 T 以 下 の 弱 磁 場 領 域 では が 変 化 せずに だ けが 変 化 して ある 磁 場 で 不 連 続 に と が 変 化 す る D ベクトルは 結 晶 構 造 で 決 まり その 方 向 も 大 き さも 磁 歪 の 効 果 を 除 いて 磁 場 によらないと 考 えると の 不 連 続 な 変 化 は 実 効 的 な DM 相 互 作 用 の 減 少 を 伴 う そのためにエネルギーの 利 得 を 稼 ぐためにはキ ャント 角 も 同 時 に 不 連 続 に 上 昇 しなければいけな い それは WF モーメントの 不 連 続 に 上 昇 すなわち M a (H) の 急 激 な 上 昇 として 観 測 されるだろう これが M a (19.3 T) と M c (17.5 T) で 観 測 されていると 考 えられ る H//b の 場 合 にはスピンは D ベクトルに 垂 直 な 平 面 内 で 回 転 するため このモデルでは M b (H) では 急 激 な 上 昇 は 期 待 されない これは 実 験 結 果 と 矛 盾 しない この 議 論 が 成 立 するためにはスピン 方 向 が D ベク トルに 垂 直 な 面 に 束 縛 された 場 合 (ピンされた 状 態 ) を 想 定 する 必 要 がる そのため ピン 止 めの 機 構 の 考 察 が 不 可 欠 である 現 在 我 々はどの 様 な 条 件 でスピン がピン 止 めされるかを 数 値 計 算 の 助 けをかりて 探 索 している 4. まとめ Cu 3 Mo 2 O 9 の 強 磁 場 磁 化 測 定 を 行 い 反 強 磁 性 相 で 異 方 性 を 伴 う 磁 化 の 急 激 な 上 昇 を 観 測 した これは 一 般 的 なスピン フリップによる 磁 化 の 変 化 とは 違 うも のであり この 物 質 特 有 のものである 事 がわかった 参 考 文 献 [1] T. Hamasaki et al., Phys. Rev. B, 77 (2008) , 浜 崎 智 彰 博 士 論 文 (2009). [2] H. Kuroe et al. submitted to Phys. Rev. Lett. Fig.2:High magnetic-field magnetization curves in Cu 3 Mo 2 O

14 KFe 2 As 2 単 結 晶 の 電 気 抵 抗 と 臨 界 磁 場 測 定 Resistivity and upper critical field in KFe 2 As 2 single crystals 物 質 材 料 研 究 機 構 寺 嶋 太 一 木 俣 基 薩 川 秀 隆 硲 香 織 原 田 淳 之 宇 治 進 也 Taichi Terashima, Motoi Kimata, Hidetaka Satsukawa, Atsushi Harada, Kaori Hazama, Shinya Uji National Institute for Materials Science 神 戸 大 播 磨 尚 朝 Hisatomo Harima Kobe University Institute of Physics, Chinese Academy of Sciences Gen-Fu Chen, Jian-Lin Luo, Nan-Lin Wang Abstract: We have performed resistivity measurements on KFe 2 As 2 single crystals down to T = 0.3 K and in magnetic fields up to 17.5 T. The in-plane resistivity vs. T curve has a convex shape down to 50 K and shows a T 2 dependence below 45 K. The ratio of the c-axis to in-plane resistivities is 10 at room temperature and 40 at 4.2 K. The superconducting upper critical field B c2 (T ) has been determined from the resistivity data: B ab c2 (0) = 4.47 T and B c c2 (0) = 1.25 T. The anisotropy parameter Γ = B ab c2 /B c c2 increases with T and is 6.8 at T = T c. The strong curvature of the B ab c2(t) curve indicates the existence of strong spin paramagnetic effects. Keywords: iron pnictide superconductor, resistivity, upper critical field, anisotropy TERASHIMA.Taichi@nims.go.jp 1. はじめに 東 工 大 細 野 グループによる LaFeAsO 1-x F x における T c = 26 K の 超 伝 導 の 発 見 以 来 鉄 系 超 伝 導 体 は 盛 んに 研 究 されている Ba 1-x K x Fe 2 As 2 は x = 0 で T N = 140 K の 反 強 磁 性 金 属 であるが ドーピング x と 共 に T N が 低 下 し 超 伝 導 が 出 現 する T c は x = 0.4 で 最 高 の T c = 38 K を 取 り 更 に x が 増 加 すると 低 下 するが x = 1 でも T c = 3.8 K( 多 結 晶 の 場 合 )の 超 伝 導 体 である x = 0.4 から 1 まで T c や 格 子 定 数 は 連 続 的 に 変 化 するため x =0.4 と 1 の 化 合 物 を 比 較 検 討 することは 何 が 高 い T c に 重 要 なのか を 知 る 上 で 価 値 あることである そこで 本 研 究 では x = 1 の KFe 2 As 2 について 電 気 抵 抗 の 測 定 と 上 部 臨 界 磁 場 の 決 定 を 行 った 図 2(a)に ab 面 内 および c 軸 方 向 の 上 部 臨 界 磁 場 B c2 とその 比 の 温 度 変 化 を 示 す B c2 は 実 線 で 示 すように WHH 理 論 でよくフィットできる は 最 低 温 で 3.5 ぐ らいであるが 温 度 と 共 に 大 きくなる (b)には B c2 の 磁 場 方 位 依 存 性 を 示 した 実 線 は GL の 式 によるフィ ットである これらのデータを 解 析 検 討 した 結 果 以 下 のよう な 知 見 を 得 た (i) 電 気 抵 抗 の 異 方 性 は 室 温 で 10 程 度 ヘリウム 温 度 で 40 程 度 (ii)b c2 の 異 方 性 は T c で 6.8 これは 最 適 ドープの AFe 2 As 2 (A = Ca, Sr, Ba)の 場 合 の 2~3 に 比 べてかなり 大 きいが 電 気 抵 抗 の 異 方 性 からは 妥 当 である (iii)ab 面 内 の B c2 に 顕 著 な 常 磁 性 効 果 が 見 られる 2. 実 験 方 法 KFe 2 As 2 の 高 品 質 単 結 晶 は 中 国 の Institute of Physics, Chinese Academy of Sciences において フラックス 法 で 合 成 された 電 気 抵 抗 は4 端 子 法 により 測 定 した 磁 場 の 発 生 には 強 磁 場 共 用 ステーションの 超 伝 導 磁 石 を 使 用 した 3. 実 験 結 果 と 考 察 図 1に 面 内 電 気 抵 抗 の 温 度 変 化 を 示 す 室 温 から 50 K ぐらいまで 上 向 きに 凸 の 特 徴 的 な 温 度 変 化 を 示 す 残 留 抵 抗 比 は 87 と 大 きい 超 伝 導 転 移 温 度 は T c = 2.79 K で 多 結 晶 より 低 い Fig.1 Temperature dependence of the in-plane resistivity ρ ab of KFe 2 As 2. The inset shows a superconducting transition

15 Fig.2 (a)upper critical field B c2 for B // ab and B // c, and anisotropy parameter Γ=B ab c2/b c c2. The solid curves are fits by the WHH theory. (b)angular dependence of B c2 at T = 0.3 K. The solid curve is a fit by a GL formula. 4. まとめ KFe 2 As 2 について 電 気 抵 抗 の 測 定 と 上 部 臨 界 磁 場 の 決 定 を 行 った なお この 成 果 は T. Terashima et al., J. Phys. Soc. Jpn. 78, (2009)に 発 表 した - 4 -

16 BaNi 2 P 2 の dhva 測 定 dhva measurements on BaNi 2 P 2 物 質 材 料 研 究 機 構 寺 嶋 太 一 木 俣 基 薩 川 秀 隆 硲 香 織 原 田 淳 之 今 井 基 晴 宇 治 進 也 Taichi Terashima, Motoi Kimata, Hidetaka Satsukawa, Atsushi Harada, Kaori Hazama, Motoharu Imai, Shinya Uji National Institute for Materials Science 産 業 技 術 総 合 研 究 所 鬼 頭 聖 伊 豫 彰 永 崎 洋 Hijiri Kito, Akira Iyo, Hiroshi Eisaki Advanced Industrial Science and Technology 神 戸 大 播 磨 尚 朝 Hisatomo Harima Kobe University Abstract: We have performed measurements of the de Haas-van Alphen (dhva) oscillation and a band structure calculation for the pnictide superconductor BaNi 2 P 2, which is isostructural to BaFe 2 As 2, the mother compound of the iron-pnictide high-t c superconductor (Ba 1-x K x )Fe 2 As 2. Six dhva-frequency branches with frequencies up to 8 kt were observed, and they are in excellent agreement with results of the band-structure calculation. The determined Fermi surface is large, enclosing about one electron and hole per formula unit, and three-dimensional. This is in contrast to the small two-dimensional Fermi surface expected for the iron-pnictide high-t c superconductors. The mass enhancement is about two. Keywords: Fermi surface, BaNi 2 P 2, de Haas-van Alphen effect, electronic structure, pnictide superconductor TERASHIMA.Taichi@nims.go.jp 1. はじめに 東 工 大 細 野 グループによる LaFeAsO 1-x F x における T c = 26 K の 超 伝 導 の 発 見 以 来 鉄 系 超 伝 導 体 は 盛 んに 研 究 されている 表 題 の 物 質 BaNi 2 P 2 は BaFe 2 As 2 と 同 型 で T c ~ 3K の 超 伝 導 体 であり Ni 化 合 物 と Fe 化 合 物 の 電 子 状 態 の 比 較 に 適 当 な 化 合 物 である そこで BaNi 2 P 2 単 結 晶 の dhva 測 定 とバンド 計 算 を 行 い その 電 子 状 態 につい て 研 究 した これらのデータを 解 析 検 討 した 結 果 以 下 のよう な 知 見 を 得 た (i) 通 常 の LDA 近 似 のバンド 計 算 で 極 めて 正 確 にフェ ルミ 面 が 計 算 できる これは Fe 系 の 場 合 フェルミレ ベル 近 傍 の 電 子 状 態 が 異 常 に As の 位 置 に 敏 感 で 様 々 な 問 題 が 生 じるのと 対 照 的 である (ii)フェルミ 面 は 大 きく3 次 元 的 である これは 小 さく 2 次 元 的 な Fe 系 のフェルミ 面 と 対 照 的 である (iii) 質 量 増 強 (1+ )は 2 倍 程 度 である 2. 実 験 方 法 BaNi 2 P 2 の 高 品 質 単 結 晶 は 産 総 研 において 高 圧 法 で 合 成 された dhva 振 動 はトルク 法 により 測 定 した 磁 場 の 発 生 には 強 磁 場 共 用 ステーションのハイブリ ッドマグネット 水 冷 銅 磁 石 超 伝 導 磁 石 を 使 用 した 3. 実 験 結 果 と 考 察 図 1 上 図 に ハイブリッドマグネットによる 36 T ま での 測 定 データの 例 を 示 す 強 磁 場 側 ( 図 の 左 側 )で 低 磁 場 では 見 えない 高 い 周 波 数 の 短 い 周 期 の 振 動 が 現 れているのがわかる また 下 図 には 振 動 のフーリエ 変 換 を 示 した 複 数 の 周 波 数 が 含 まれていることがわ かる 結 果 をまとめたのが 図 2である 様 々な 磁 場 方 位 で 観 測 された dhva 周 波 数 をバンド 計 算 の 予 測 と 比 較 し ている 実 験 と 計 算 の 一 致 は 良 い また 図 右 にはバ ンド 計 算 によるフェルミ 面 を 示 した Fig.1 (upper) dhva torque oscillation in BaNi 2 P 2 and (lower) its Fourier transform (in inverse field)

17 Fig.2 (a) Angular dependence of the experimental dhva frequencies compared with the calculated ones. For the calculated band-25 frequencies, the second harmonics are also shown. (b) Calculated Fermi surface of BaNi2P2. Some of the possible dhva orbits are indicated. Points of symmetry (solid circles) and lines of symmetry (open circles) in the Brillouin zone are explained in the top left figure. 4. まとめ BaNi2P2 単結晶の dhva 測定とバンド計算を行い そ の電子状態について研究した なお この成果は T. Terashima et al., J. Phys. Soc. Jpn. 78, (2009)に発 表した - 6-

18 有 機 伝 導 体 -(BETS) 2 FeCl 4 における 磁 場 誘 起 超 伝 導 の 面 垂 直 磁 場 効 果 Effect of perpendicular field on field-induced superconductivity in organic conductor -(BETS) 2 FeCl 4 A,B 宇 治 進 也 木 俣 基 A 薩 川 秀 隆 周 彪 C 小 林 速 男 A 原 田 淳 之 C C 小 林 昭 子 A 筑 波 大 数 理 物 質 A 硲 香 織 A,B A 寺 嶋 太 一 B C 日 大 理 物 質 材 料 研 究 機 構 Shinya UJI A,B, Motoi KIMATA A, Hidetaka SATSUKAWA A, Atsushi HARADA A,Kaori HAZAMA A,B,Taichi TERASHIMA A, B. Zhow C, H. Kobayashi C, and A. Kobayashi C A National Institute for Materials Science B Graduate School of Pure and Applied Science, University of Tsukuba C Nihon University Abstract: In order to investigate the effect of the perpendicular magnetic field on the field-induced superconductivity of -(BETS) 2 FeCl 4, we have measured the interlayer resistance in a wide field and temperature range, using a resistive and hybrid magnet. We determined the field angle dependence of the superconducting critical temperature (B c ) and the Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO) state transition. We found that a kink structure in B c appears as a function of the field angle, and the FFLO state is stabilized only in a very limited angle region. Keywords: Organic conductor, FFLO sate, Superconducting transition uji.shinya@nims.go.jp 1. はじめに 2 次 元 有 機 伝 導 体 -(BETS) 2 FeCl 4 は BETS(ビスエ チレンジチオテトラセレナフルバレン) 分 子 が 結 晶 の ac 面 に 配 列 しており 伝 導 面 を 形 成 している この 系 で 磁 場 を 伝 導 面 (ac 面 )に 平 行 にかけると 10T で 絶 縁 相 から 金 属 相 (M)に 転 移 した 後 約 15T から 42T の 磁 場 範 囲 で 超 伝 導 (S)を 示 す FeCl 4 は 一 価 の 負 イオンであり BETS 分 子 面 の 間 に 入 り 込 んだ 構 造 となっている Fe イオンは 三 価 の 負 イオンで 局 在 3d 電 子 を5つ 持 ち そのため S=5/2 の 大 きな 磁 気 モ ーメントをもつことになる この 3d 電 子 の 磁 気 モ ーメントが 交 換 相 互 作 用 を 通 して BETS 分 子 面 の 伝 導 電 子 に 大 きな 内 部 磁 場 をつくる この 内 部 磁 場 が この 系 で 発 現 する 磁 場 誘 起 超 伝 導 の 原 因 とな っている この 磁 場 誘 起 超 伝 導 体 は クリーンリミットにあ り さらに 軌 道 効 果 が 強 く 抑 制 されている そのた め この S 相 において 超 伝 導 秩 序 変 数 が 空 間 的 に 変 調 した 構 造 を 持 つ 超 伝 導 Fulde-Ferrell-Larkin- Ovchinnikov (FFLO) 状 態 が 実 現 している 可 能 性 が 指 摘 されてきた 磁 場 が 正 確 に 伝 導 面 と 並 行 な 時 抵 抗 の 磁 場 依 存 性 に 極 小 が 出 現 する( 図 1 左 )が こ の 現 象 は FFLO 状 態 が 安 定 化 していると 仮 定 するこ とで 理 解 できる 抵 抗 の 極 小 の 理 由 は 特 定 の 磁 場 で FFLO 状 態 にあ る 超 伝 導 秩 序 パラメーターの 変 調 構 造 の 周 期 と 絶 縁 層 を 貫 くボルテックスの 間 隔 が 簡 単 な 整 数 比 に 成 るため ボルテックスには 強 いピン 留 めが 働 く( 抵 抗 の 極 小 )ためである 本 来 FFLO 状 態 は 軌 道 効 果 が 強 く 抑 制 されていないと 出 現 しない そのため 磁 場 方 位 を 伝 導 面 から 垂 直 方 向 に 傾 けると 軌 道 効 果 が 顕 著 に 働 くため FFLO 状 態 は 急 激 に 抑 制 される はずである この 点 を 調 べるため 低 温 強 磁 場 領 域 で 電 気 抵 抗 測 定 を 行 った 2. 実 験 方 法 2 次 元 有 機 伝 導 体 -(BETS) 2 FeCl 4 単 結 晶 の 伝 導 面 にカーボンペーストで 電 極 を 付 け ロックインアン プで 電 気 抵 抗 測 定 を 行 った 試 料 はヘリウム4クラ イオスタットにヘリウム3ジャケットを 挿 入 し 0.6K までの 低 温 まで 測 定 した また 試 料 を 磁 場 中 で 回 転 し 磁 場 方 位 依 存 性 を 精 密 に 測 定 した 水 冷 銅 マ グネット 及 びハイブリッドマグネットを 利 用 した 3. 実 験 結 果 と 考 察 図 1には T=1K で 伝 導 面 に 垂 直 に 電 流 を 流 した 時 の 抵 抗 の 磁 場 の 方 位 依 存 性 である 磁 場 が 伝 導 面 に 成 功 に 入 った 時 (B//c, =0 o ) 超 伝 導 が 出 現 する 様 子 が 見 れる - 7 -

19 =2o 度の時には 抵抗の磁場変化に特徴的な極小が 見られない さらに磁場を傾け =3o の時には も うゼロ抵抗は検出できない このように 軌道効果 によって まず抵抗の極小が消え さらに超伝導自 体が消滅する様子が分かる Fig. 1 Interlayer resistance as a function of the magnetic field angle for T=1 K. Fig. 3 Critical field and resistance minimum field as a function of field angles for T=1 K. 図３には 超伝導臨界磁場と抵抗に極小が出現す る磁場を 磁場の方位の関数としてプロットしたも のである この図から FFLO 状態が 2o の非常に 狭い領域でのみ観測されることが分かる さらに 臨界磁場が =2o 付近で折れ曲がる様子が分かる こ の振る舞いに関しては 現在検討中である 4. まとめ 磁場誘起超伝導体 -(BETS)2FeCl4 の 超伝導転移を 幅広い温度 磁場領域で精密に測定し 超伝導臨界 磁場と抵抗に極小が出現する磁場の磁場方位の依存 性を決定した この結果から FFLO 状態が極めて狭 Fig. 2 Interlayer resistance as a function of magnetic field at various field angles for T=1 K. い磁場方位の領域でのみ安定すること さらに臨界 磁場の特徴的な磁場方位の依存性を発見した 図２は 伝導面に垂直に電流を流した時の抵抗の磁 参考文献 場変化を 様々な磁場方位で測定したものである [1] S. Uji, et al. Nature 410, (2001) o =0 (B//c)の時 約 17Ｔで抵抗が減少し始める 超 [2] L. Balicas, et al. Phys. Rev. Lett. 87, (2001) 伝導転移 が 磁場を伝導面に垂直な方向に傾ける [3] S. Uji, et al. Phys. Rev. Lett., 97, (2006) につれて 超伝導が抑制されていく様子が分かる - 8-

20 (EDT-DSDTFVSDS) 2 MBr 4 の 巨 大 磁 気 抵 抗 Giant negative magnetoresistance of (EDT-DSDTFVSDS) 2 MBr 4 物 質 材 料 研 究 機 構 薩 川 秀 隆 木 俣 基 原 田 淳 之 硲 香 織 寺 嶋 太 一 宇 治 進 也 Hidetaka Satsukawa, Motoi Kimata, Atsushi Harada, Kaori Hazama, Taichi Terashima, Shinya Uji National Institute for Materials Science 大 阪 府 立 大 院 理 邵 向 鋒 林 寿 樹 杉 本 豊 成 Shao Xinagfeng, Toshiki Hayashi, Toyonari Sugimoto Osaka Prefecture University Abstract: We performed magnetoresistance (MR) and magnetic torque measurements of (EDT-DSDTFVSDS) 2 MBr 4 (M=Fe, Ga) to investigate the mechanism of negative magnetoresistance under low temperature. The magnetic field dependence of the interlayer resistance for the FeBr 4 salt at 30 mk shows an anomaly at 1.8 T, which corresponds to the spin flop transition. A striking feature is giant negative magnetoresistance at 30 mk, whose change amounts to three orders of magnitude. The observation of the hysteresis loop up to 8 T suggests that the 3d spins are in the antiferromagnetic state, and then in magnetically aligned paramagnetic state at higher fields. The saturation behavior in the resistance above 10 T, where the 3d spins are probably fully aligned along the field, shows that the -d interaction plays a crucial role in the giant negative magnetoresistance: the -d interaction causes a strong magnetic scattering in the electron transport below 10 T. Keywords: molecular conductor, -d interaction, negative magnetoresistance SATSUKAWA.Hidetaka@nims.go.jp 1. はじめに (EDT-DSDTFVSDS) 2 MBr 4 は EDT-DSDTFVSDS と 略 称 される 有 機 分 子 (Fig. 1)と 磁 性 陰 イオン FeBr - 4 もし くは 非 磁 性 陰 イオン GaBr - 4 が 2:1 で 組 成 した 電 荷 移 動 錯 体 である ドナー 分 子 EDT-DSDTFVSDS は 左 右 非 対 称 な 分 子 で 分 子 構 造 から 強 い -d 相 互 作 用 を 持 ち d-d 相 互 作 用 が 弱 いことが 予 想 される 実 際 の 計 算 か ら 得 られた -d 相 互 作 用 (J -d ) d-d 相 互 作 用 の 強 さ(J d-d ) は それぞれ 15.2 K 0.2 K である FeBr 4 塩 は 13.2 K で GaBr 4 塩 は 13.8 K 付 近 で 金 属 - 半 導 体 転 移 を 起 こすことが 知 られている この 半 導 体 転 移 のメカニズ ムはまだ 明 らかになっていないが この 塩 は 3/4 filled 塩 であること また EDT-DSDTFVSDS 分 子 の 二 量 体 化 が 観 測 されていないことから 電 荷 整 列 によるもの であると 考 えられる さらに 低 温 では 比 熱 測 定 から 3.3 K で 3d スピンが 反 強 磁 性 転 移 を 起 こすこと 磁 化 測 定 では 磁 場 容 易 軸 が c 軸 で 1.8 T 付 近 でスピンフ ロップ 転 移 を 観 測 した また 4.2 K から 0.7 K までの 磁 気 抵 抗 が 測 定 されており 巨 大 な 負 の 磁 気 抵 抗 が 報 告 されている 我 々は この 巨 大 な 負 の 磁 気 抵 抗 のメ カニズムを 調 べるため より 強 磁 場 低 温 で 磁 気 抵 抗 と 磁 気 トルク 測 定 を 行 った 2. 実 験 方 法 (EDT-DSDTFVSDS) 2 FeBr 4 GaBr 4 塩 の 単 結 晶 試 料 は 通 常 の 電 気 分 解 法 で 得 られている 電 気 抵 抗 測 定 は ロックイン 増 幅 器 を 用 いた 四 端 子 法 で 測 定 している 4 本 の 10 m の 金 線 を b 軸 方 向 ( 伝 導 方 向 )に 沿 って 取 り 付 けた 測 定 は 希 釈 冷 凍 機 を 用 いて 30 mk か ら 300 K の 温 度 域 で 測 定 した マイクロカンチレバー (SII PRC400)を 用 いた 磁 気 トルクの 角 度 磁 場 依 存 性 は 1.5 K で 測 定 している 外 部 磁 場 は 最 大 17.5 T まで 印 加 した 3. 実 験 結 果 と 考 察 図 2 に FeBr 4 塩 の 磁 気 抵 抗 の 結 果 を 示 す 外 部 磁 場 は 磁 化 容 易 軸 である c 軸 方 向 に 印 加 している T~30 mk では 3 桁 以 上 減 少 する 巨 大 な 負 の 磁 気 抵 抗 を 観 測 した 1.8 T 付 近 で 磁 気 抵 抗 に 異 常 が 見 られた この 磁 場 で スピンフロップ 転 移 が 観 測 されていることから この Fig.1 molecular structure of EDT-DSDTFVSDS Fig.2 The magnetoresistance of FeBr 4 salt

21 異 常 は スピンフロップによって 磁 気 散 乱 が 一 時 的 に 増 加 したため 起 こった 以 上 であると 考 える また 8 T 以 下 の 磁 場 域 では ヒステリシスを 観 測 した さらに 高 磁 場 の 10 T 以 上 から 磁 気 抵 抗 の 飽 和 が 見 られた 図 3 に FeBr 4 塩 の 磁 気 トルクの 磁 場 依 存 性 を 示 す その 結 果 H//c 付 近 での 磁 場 依 存 性 では 1.8 T 付 近 に 不 連 続 な 異 常 を 観 測 した この 振 る 舞 いは -(BETS) 2 FeCl 4 塩 でも 観 測 されており スピンフロップ 転 移 による 異 常 である また 10 T 以 上 では 磁 気 トルクの 飽 和 が 見 えられた このことから 1.8 T 以 下 では 反 強 磁 性 状 態 1.8 T<H<10 T では キャントな 反 強 磁 性 状 態 H>10 T では スピンが 印 加 磁 場 の 方 向 を 向 いた 強 制 強 磁 性 状 態 であることがわかった Fig.3 Field-angular dependence of magnetic torque と 考 える また 得 られた 磁 気 抵 抗 と 参 考 文 献 [2, 4] 中 で 提 案 されている 磁 場 の 向 き 大 きさによって 3d スピンの 垂 直 成 分 が 変 化 することで 伝 導 層 の 抵 抗 が どのようにふるまうかを 計 算 したものとを 比 較 したと ころ 計 算 から 得 られた 磁 気 抵 抗 の 振 る 舞 いは 測 定 から 得 られたものと 一 致 することが 分 かった そこか ら この 3 桁 以 上 減 少 する 負 の 磁 気 抵 抗 のメカニズ ムは -d 相 互 作 用 が 大 きく 影 響 していることが 分 か った 4. まとめ 強 い -d 相 互 作 用 をもつ 分 子 性 導 体 (EDT-DSDTFVSDS) 2 FeBr 4 の 磁 気 抵 抗 測 定 磁 気 トルク 測 定 を 行 った 低 温 で 3 桁 以 上 減 少 する 巨 大 な 負 の 磁 気 抵 抗 が 得 られた 磁 場 を c 軸 方 向 に 印 加 した 際 1.8 T 付 近 で スピンフロップ 転 移 に 対 応 する 異 常 を 観 測 し 8 T 以 下 の 磁 場 では ヒステリシスが 観 測 された さらに 10 T 以 上 の 高 磁 場 領 域 では 磁 気 抵 抗 の 飽 和 が 見 られた 磁 気 トルク 測 定 の 結 果 から 10 T 以 上 の 領 域 では 磁 化 が 飽 和 しており 全 てのスピンが 磁 場 方 向 に 向 く 強 制 強 磁 性 状 態 であることがわかった この 3d スピンの 強 磁 性 的 な 整 列 によって 磁 気 的 な 散 乱 が 減 少 し 巨 大 な 負 の 磁 気 抵 抗 が 現 れたことが 考 えられる 参 考 文 献 [1] T. Hayashi et al., J. Am. Chem. Soc. 128 (2006) [2] T. Fujimoto et al., J. Phys. Soc. Jpn. 77 (2008) [3] J. Nishijo et al., Inorg.chem. 44 (2005) 2493 Fig.4 Schematic magnetic structure of antiferromagnetic d spin and spin FeBr 4 塩 の 巨 大 な 負 の 磁 気 抵 抗 のメカニズムとして 低 磁 場 域 では 図 4 の(a)のように 3d スピンの 反 強 磁 性 転 移 によって 伝 導 を 担 う 電 子 スピンも 反 強 磁 性 的 に 整 列 し 実 効 的 な 移 動 成 分 が 大 きい 一 方 強 磁 場 域 では 3d スピンの 向 きが 磁 場 方 向 に 揃 い 磁 気 ポ テンシャルの 乱 れがなくなり 実 効 的 な 移 動 積 分 が 増 大 したため 3 桁 以 上 も 減 少 する 磁 気 抵 抗 が 得 られた

22 磁 性 有 機 導 体 (Me-3,5-DIP)[Ni(dmit) 2 ] 2 の 面 内 磁 場 下 における 特 異 な 磁 気 抵 抗 Anomalous magnetoresistance of magnetic organic conductor (Me-3,5-DIP)[Ni(dmit) 2 ] 2 under in-plane magnetic field 筑 波 大 数 理 物 質 A, 物 質 材 料 研 究 機 構 B, 埼 玉 大 理 C, 理 研 D,CREST * 硲 香 織 AB, 山 口 尚 秀 B, 木 俣 基 B, 原 田 淳 之 B, 薩 川 秀 隆 B, 寺 嶋 太 一 B, 宇 治 進 也 AB, 高 坂 洋 介 CD, 山 本 浩 史 D* CD*, 加 藤 礼 三 Institute of Materials Science, University of Tsukuba A NIMS B, Saitama University C, RIKEN D, CREST* K. Hazama AB, T. Yamaguchi B, M. Kimata B, A. Harada B, T. Satsukawa B, T. Terashima B,S. Uji AB, Y. Kosaka C *, H. M. Yamamoto D *, R. Kato CD * Abstract: Magnetic organic conductor (Me-3,5-DIP)[Ni(dmit) 2 ] 2 is composed of insulating Me-3,5-DIP cations and two kinds of Ni(dmit) 2 anion layers, Layer I and II. This salt shows paramagnetism arising from the localized π spins in Layer I and two-dimensional metallic conduction due to the itinerant π electrons in Layer II. To investigate transport properties under field, we measured magnetoresistance under in-plane field. We have also performed magnetic torque measurement to examine the magnetic properties. Under in-plane field, inter-plane resistance shows a sharp minimum and slow oscillatory behavior. The origin of anomalous resistance is an open question. Keywords: Magnetic organic conductor, magnetic torque, magnetoresistance HAZAMA.Kaori@nims.go.jp 1. はじめに π-d 系 磁 性 有 機 導 体 と 呼 ばれる 物 質 群 は 絶 縁 アニオン 層 に 局 在 d スピンを 持 ち 伝 導 カチ オン 層 のπ 電 子 との 相 互 作 用 により 特 異 な 物 理 現 象 が 現 れる 系 として 注 目 されている [1] 磁 性 有 機 導 体 (Me-3,5-DIP)Ni[(dmit) 2 ] 2 は 絶 縁 アニ オン( 陽 イオン) 分 子 層 (Layer I)と 金 属 アニオ ン 分 子 層 (Layer II)の 間 に 絶 縁 カチオン( 陰 イオ ン) 分 子 層 が 挟 まった 積 層 構 造 をしており(Fig. 1), 絶 縁 アニオン 層 に 局 在 スピンが 存 在 する [2] (Me-3,5-DIP)[Ni(dmit) 2 ] 2 は 内 部 磁 場 により2つに 分 裂 した 二 次 元 フェルミ 面 をもつことを 明 らかにした 磁 場 下 での 輸 送 特 性 をさらに 調 べるため 伝 導 層 に 平 行 な 磁 場 下 での 電 気 抵 抗 の 測 定 を 行 った また, 磁 性 と 伝 導 との 関 連 性 を 調 べるため カンチレバーを 用 いた 磁 気 トルクの 測 定 を 行 った 2. 実 験 方 法 20T 希 釈 冷 凍 機 / 超 伝 導 マグネットおよび1 軸 回 転 プローブを 用 いて 磁 場 下 での 抵 抗 測 定 およびカンチ レバーを 用 いた 磁 気 トルク 測 定 を 行 った 抵 抗 は 伝 導 面 間 方 向 (c 軸 方 向 )に 電 流 を 流 し 四 端 子 法 によ り 測 定 した 結 晶 軸 と 磁 場 角 度 の 関 係 を Fig.2 に 示 す Fig.1 Crystal structure of (Me-3,5-DIP)Ni[(dmit) 2 ] 2 これまでの 磁 性 有 機 導 体 とは 異 なり 局 在 d スピンを 持 たず アニオン 層 に 局 在 πスピンと 伝 導 π 電 子 が 存 在 し その 相 互 作 用 により 新 規 物 理 現 象 の 発 現 が 期 待 さ れている Layer I は 低 温 で 反 強 磁 性 的 相 互 作 用 を 示 し, Layer II は 二 次 元 金 属 的 な 伝 導 を 示 すが,どちらの 特 性 に 関 しても Ni(dmit) 2 アニオンのπ 軌 道 に 起 因 するも のであり,Me-3,5-DIP カチオンは 磁 性 および 伝 導 特 性 には 関 与 しないと 考 えられている 我 々はこれまでに 角 度 依 存 磁 気 抵 抗 振 動 および 量 子 振 動 測 定 を 行 い Fig. 2 Resistance in magnetic field parallel to the conduction layers

23 3. 実 験 結 果 と 考 察 伝 導 層 と 平 行 な 方 向 (θ=90 )に 磁 場 をかけ, 26mK で 伝 導 面 に 垂 直 な 方 向 の 抵 抗 を 測 定 した 結 果 を Fig. 2 に 示 す 伝 導 方 向 と 磁 場 方 向 が 平 行 である 場 合 通 常 の 二 次 元 導 体 では 抵 抗 に 磁 場 依 存 性 は 表 れないが 8T 付 近 で 抵 抗 にするどい 極 小 値 が 現 れ さらに 高 磁 場 でゆっくりとした 振 動 が 観 測 された θ=90 で 最 も 抵 抗 の 落 ちが 急 激 になり θ=90 から 外 れると 極 小 となる 抵 抗 値 は 増 加 し 極 小 値 を 示 す 磁 場 は 高 磁 場 側 へシフトする 傾 向 が 見 られた 26mK で 測 定 した 磁 気 トルクの 結 果 を Fig. 3 に 示 す 全 ての 結 果 は ゼロ 磁 場 での 測 定 結 果 を 用 いて 重 力 による 影 響 を 補 正 してい る 抵 抗 が 極 小 値 を 示 す 8 T 付 近 でも 磁 気 的 な 相 転 移 を 示 すような 結 果 は 現 れておらず での 抵 抗 の 極 小 値 は 磁 気 的 な 転 移 によるものではないと 考 えられる Fig. 4 The resistance vs. inverse of the magnetic field. 4. まとめ 伝 導 層 に 平 行 な 磁 場 下 では 伝 導 面 間 の 抵 抗 が 9T 付 近 でするどい 極 小 値 をもち さらに 高 磁 場 でゆっく りとした 振 動 を 示 す 9T で 磁 気 トルクに 異 常 はなく 抵 抗 の 極 小 値 は 磁 気 的 な 転 移 によるものではないと 考 えられる 高 磁 場 での 抵 抗 の 振 動 は 非 常 に 小 さいフ ェルミ 面 に 由 来 する 量 子 振 動 である 可 能 性 も 考 えられ るが 振 動 の 起 源 を 明 らかにするためには 研 究 の 進 展 が 必 要 である 参 考 文 献 [1] S. Uji, et al. Nature, 410 (2001) [2] Y. Kosaka, et al. JACS, 129(11) Fig. 3 Magnetic torque as a function of the field angle at various magnetic fields. 高 磁 場 での 振 動 を 磁 場 の 逆 数 でプロットした 結 果 を Fig. 4 に 示 す 確 認 できる 抵 抗 の 山 は 少 ないが 磁 場 の 逆 数 で 振 動 が 周 期 的 になっていることがわかる す なわち SdH 振 動 のような 閉 じたフェルミ 面 に 由 来 す る 量 子 振 動 である 可 能 性 が 考 えられるが 量 子 振 動 で あると 仮 定 すると 観 測 している 断 面 積 は 第 一 ブリルア ンゾーンの 0.36%であり 極 めて 小 さい 面 積 である また 量 子 振 動 は 自 由 エネルギーの 振 動 なので 磁 気 トルクにも 振 動 が 現 れるはずであるが 抵 抗 が 振 動 を 示 す 磁 場 でも 磁 気 トルクに 振 動 は 観 測 されていないた め 振 動 の 起 源 は 明 らかでない

24 鉄 フタロシアニン 伝 導 体 の 巨 大 磁 気 抵 抗 と 磁 気 トルク Giant Magnetoresistance and Magnetic Torque of Fe-Phthalocyanine Conductor 物 材 機 構 1, 筑 波 大 2, 熊 本 大 理 3, 東 大 物 性 研 4 5, 北 大 理 木 俣 基 1, 薩 川 秀 隆 1, 山 口 尚 秀 1, 寺 島 太 一 1, 宇 治 進 也 1,2, 松 田 真 生 3, 田 島 裕 之 4, 内 藤 俊 雄 5 5, 稲 辺 保 Motoi Kimata 1, Hidetaka Satsukawa 1, Yamaguchi Takahide 1, Taichi Terashima 1, Shinya. Uji 1,2, Masaki Matsuda 3, Hiroyuki Tajima 4, Toshio Naito 5, Tamotsu Inabe 6 1 National Institute for Materials Science (NIMS) 2 Graduate School of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba 3 Depertment of Chemistry, Graduate School of Science and Technology, Kumamoto University 4 Institute for Solid State Physics, University of Tokyo 5 Division of Chemistry, Graduate School of Science, Hokkaido University Abstract: Magnetoresistance (MR) and magnetic torque measurements are performed for a magnetic organic conductor TPP[Fe(Pc)(CN) 2 ] 2. The results suggest that the large negative MR is associated with a magnetic transition. This magnetic transition is considered as a metamagnetic transition of the localized Fe moments, and the MR effect is qualitatively explained by an analogy with the double exchange interaction system. Keywords: Giant magnetoresistance, Magnetic organic conductor KIMATA.Motoi@nims.go.jp 1. はじめに 物 質 中 に 存 在 する 様 々な 自 由 度 間 の 相 互 作 用 の 解 明 は 物 性 物 理 学 における 中 心 的 問 題 である. 巨 大 磁 気 抵 抗 は 磁 性 と 伝 導 の 相 互 作 用 に 起 因 して 現 れる 典 型 的 な 現 象 であり,その 一 つの 舞 台 として 磁 性 有 機 伝 導 体 を 挙 げ る 事 ができる.ジシアノ 鉄 フタロシアニン 伝 導 体 の 一 つ である TPP[Fe(Pc)(CN) 2 ] 2 (TPP=tetraphenylphosphonium, Fe(Pc)(CN) 2 =dicyano-fe-phthalocyanine)は 低 温 で 大 きな 負 の 磁 気 抵 抗 を 示 すが,その 起 源 は 未 だ 完 全 には 明 ら かになっていない. 我 々はこの 巨 大 磁 気 抵 抗 の 起 源 を 明 らかにする 目 的 で 25T までの 磁 場 中 で 磁 気 抵 抗 およ び 磁 気 トルク 測 定 を 行 った. TPP[Fe(Pc)(CN) 2 ] 2 は 結 晶 の c 軸 方 向 に 鉄 フタロシア ニン 分 子 が 積 層 した 一 次 元 伝 導 鎖 を 持 ち, 伝 導 はフタ ロシアニン 環 上 のπ 電 子 が 担 っている.また 分 子 中 心 には Fe 3+ イオンに 起 因 する 局 在 磁 気 モーメントが 存 在 し, 局 在 磁 気 モーメントとπ 電 子 との 強 い 相 互 作 用 が 期 待 される 系 である. 最 近 の 磁 化 率 と 核 磁 気 共 鳴 の 測 定 によれば, 鉄 の 磁 気 モーメント 間 には 反 強 磁 性 的 な 相 互 作 用 が 存 在 し,12K で 反 強 磁 性 磁 気 秩 序 すると 考 えられている. 2. 実 験 方 法 電 気 抵 抗 の 測 定 は 二 端 子 を 用 い,c 軸 方 向 の 電 気 伝 導 度 を 測 定 した.また, 磁 気 トルク 測 定 には 市 販 のピ エゾ 抵 抗 付 きマイクロカンチレバーを 用 いた. 磁 場 は 強 磁 場 共 用 ステーションの 25T 水 冷 銅 磁 石 を 用 いて 印 加 した. 3. 実 験 結 果 と 考 察 図 1は 様 々な 磁 場 方 位 における(a) 電 気 伝 導 度 と(b) 磁 気 トルクの 磁 場 依 存 性 である. 磁 場 は 試 料 の ac 面 内 で 回 転 させており,a 軸 からの 角 度 をθと 定 義 してい る.θ=0 の 時, 伝 導 度 は 15T 付 近 から 急 激 に 上 昇 する. この 伝 導 度 の 変 化 は 3 桁 以 上 にも 及 ぶ 非 常 に 巨 大 な 効 果 である.また, 磁 気 トルクにも 同 様 の 磁 場 で 異 常 が 観 測 され,この 事 は 約 15T 付 近 に 何 らかの 磁 気 転 移 が 存 在 する 事 を 示 している. 磁 場 を a 軸 から 傾 けていく と, 伝 導 度 が 急 激 に 上 昇 する 磁 場,および 磁 気 トルク の 変 化 する 磁 場 ( 図 中 の 矢 印 )は 次 第 に 高 磁 場 側 にシ フトしていく. 従 ってこの 磁 気 抵 抗 効 果 は 何 らかの 磁 気 転 移 によって 引 き 起 こされていると 考 えられる. 低 温 における Fe 磁 気 モーメントの 反 強 磁 性 秩 序 を 考 慮 すると,この 磁 気 転 移 は 強 磁 場 中 における 反 強 磁 性 状 態 の 不 安 定 性 に 関 与 していると 考 えられる. 一 般 的 な 反 強 磁 性 体 に 磁 場 を 印 加 した 場 合, 磁 気 モーメントは 反 強 磁 性 相 関 を 保 ったまま 徐 々に 磁 場 方 向 を 向 き, 強 磁 場 極 限 では 磁 気 モーメントが 完 全 に 同 一 の 方 向 を 向 く 磁 場 誘 起 強 磁 性 状 態 に 達 する.しかし 本 系 では Fe 磁 気 モーメントが 非 常 に 強 い 一 軸 異 方 性 を 持 っている ため, 反 強 磁 性 状 態 からただちに 磁 場 誘 起 強 磁 性 状 態 への 転 移 (メタ 磁 性 転 移 )が 起 こると 考 えられる. 一 方, 磁 場 中 での 電 気 伝 導 度 の 振 る 舞 いは, 二 重 交 換 相 互 作 用 系 と 呼 ばれるモデルと 類 似 の 考 え 方 で 定 性 的 には 理 解 する 事 ができる.このモデルでは 同 一 格 子 点 上 での 局 在 磁 気 モーメントと 伝 導 電 子 の 磁 気 的 な 結 合 が 重 要 な 役 割 を 担 う. 仮 に 隣 接 する 格 子 点 上 の 局 在

25 モーメントが 反 平 行 である 場 合, 伝 導 電 子 が 自 身 のス ピン 状 態 を 保 ったまま 隣 接 格 子 点 へ 跳 び 移 ろうとする と,その 状 態 は 磁 気 的 な 結 合 エネルギーの 分 だけ 不 安 定 であり, 伝 導 は 抑 制 される.しかし 隣 接 格 子 点 上 の 局 在 モーメントが 平 行 である 場 合 は, 伝 導 電 子 はスピ ン 状 態 を 保 ったまま 隣 接 格 子 点 へ 移 動 する 事 ができる ため 伝 導 は 阻 害 されない. 従 って,もしこのような 系 において 反 強 磁 性 状 態 にある 局 在 モーメントを 外 部 磁 場 によって 平 行 にする 事 ができれば, 電 気 伝 導 度 は 磁 場 によって 大 きく 増 大 すると 考 えられる. 今 の 場 合, 局 在 Fe 磁 気 モーメントとπ 電 子 の 間 には 強 い 相 互 作 用 が 期 待 されるため,Fe 磁 気 モーメントのメタ 磁 性 転 移 に 伴 って 伝 導 度 が 急 激 に 増 大 することも 考 えられる. 上 記 の 考 えを 模 式 的 に 表 した 図 が 図 2 である. 4. まとめ ジシアノ 鉄 フタロシアニン 伝 導 体 の 一 つのである TPP[Fe(Pc)(CN) 2 ] 2 において 低 温 (1.7K),25T までの 磁 場 中 において 電 気 伝 導 度 と 磁 気 トルクを 測 定 した.そ の 結 果, 何 らかの 磁 気 転 移 を 伴 う 巨 大 な 磁 気 抵 抗 効 果 を 観 測 した.12K 以 下 における Fe 磁 気 モーメントの 反 強 磁 性 秩 序 と 強 い 一 軸 異 方 性 を 考 慮 すると,この 磁 気 転 移 は Fe 磁 気 モーメントのメタ 磁 性 転 移 であると 考 えられる.またそれに 伴 う 巨 大 磁 気 抵 抗 効 果 は 二 重 交 換 相 互 作 用 モデルによって 定 性 的 には 理 解 する 事 がで きる. Fig.1 The magnetic field dependence of the conductance (a) and the magnetic torque (b) for several field directions. The field was rotated in the ac-plane and is measured from the a-axis. Fig.2 The schematic pictures of the magnetic states of this material. (a)antiferromagnetic ordered state. (b)field-induced ferromagnetic state

26 不 整 合 格 子 系 有 機 超 伝 導 体 (MDT-TS)(AuI 2 ) の 反 強 磁 性 状 態 Antiferromagnetic state of the incommensurate organic superconductor (MDT-TS)(AuI 2 ) 東 京 工 業 大 学 川 本 正 坂 東 祥 匡 森 健 彦 Tadashi Kawamoto, Yoshimasa Bando, and Takehiko Mori Tokyo Institute of Technology 物 質 材 料 研 究 機 構 鴻 池 孝 子 山 口 尚 秀 寺 島 太 一 宇 治 進 也 Takako Konoike, Yamaguchi Takahide, Taichi Terashima, and Shinya Uji National Institute for Materials Science 広 島 大 学 瀧 宮 和 男 大 坪 徹 夫 Kazuo Takimiya and Tetsuo Otsubo Hiroshima University Abstract: The magnetic properties of the incommensurate organic superconductor (MDT-TS)(AuI 2 ) are investigated, where MDT-TS is 5H-2-(1,3-diselenol-2-ylidene)-1,3,4,6-tetrathiapentalene. The magnetic torque provides evidence of an antiferromagnetic ordering with a high Néel temperature (T N = 50 K) and a high spin-flop field ( 0 H sf = 6.9 T) at ambient pressure. The obtained antiferromagnetic parameters of the present compound are much larger than the other organic conductors. Keywords: incommensurate crystal, organic superconductor, antiferromagnetism, spin-flop kawamoto@o.cc.titech.ac.jp 1. はじめに 瀧 宮 らによって 開 発 された MDT-TSF 塩 において 数 多 くの 超 伝 導 体 が 発 見 されている[1,2] MDT-TSF における 4 つの Se 原 子 の 内 2 つを S 原 子 に 置 換 した MDT-TS も 上 述 の 超 伝 導 体 と 同 型 の 結 晶 構 造 である AuI 2 塩 (Fig. 1) を 形 成 するが これは 低 温 で 金 属 絶 縁 体 転 移 を 示 す[3] スピン 磁 化 率 が 50 K 以 下 で 異 方 的 振 る 舞 いを 示 すことか ら 常 圧 での 基 底 状 態 は 反 強 磁 性 絶 縁 体 である また 圧 力 下 では 超 伝 導 相 が 現 れる[4] しかし 反 強 磁 性 状 態 に 特 徴 的 なスピンフロップ 転 移 が 5 T の 磁 場 下 においても 観 測 されていない 本 物 質 のスピンフロップ 転 移 を 観 測 し て 反 強 磁 性 秩 序 が 基 底 状 態 であることを 確 定 させるため に 磁 気 トルク 測 定 を 行 った Fig.1 (a) MDT-TS molecule and (b) donor arrangement projected along the molecular long axis. 2. 実 験 方 法 (MDT-TS)(AuI 2 ) の 単 結 晶 試 料 は 電 解 結 晶 成 長 法 によ り 作 成 した 単 結 晶 を 用 いた 磁 気 トルク 測 定 は 大 道 らに よって 考 案 された AFM 用 マイクロカンチレバーを 用 いる 方 法 を 採 用 した[5] 宇 治 グループの 1 軸 回 転 機 構 付 き T 超 伝 導 マグネットを 用 いてブリッジ 回 路 によりカ ンチレバーの 変 位 を 測 定 した 3. 実 験 結 果 と 考 察 磁 気 トルクの 磁 場 依 存 性 を Fig. 2 に 示 す 磁 場 が bc 面 内 にあるとき 磁 気 トルクはピークを 示 す 一 方 磁 場 が ac 面 にあるときは ピーク 構 造 を 示 さない ピークはスピン フロップ 転 移 に 起 因 するものであり この 物 質 が b 軸 を 磁 化 容 易 軸 とする 反 強 磁 性 秩 序 状 態 にあることを 示 す これ はスピン 磁 化 率 の 異 方 的 振 る 舞 いとも 一 致 する しかし スピンフロップ 転 移 以 上 の 磁 場 において 発 現 する 強 制 強 磁 性 状 態 への 転 移 は 14.5 T においても 観 測 されない 1 軸 性 反 強 磁 性 体 における 磁 気 トルクの 振 る 舞 いを 記 述 する 理 論 式 から 特 徴 的 なパラメータであるスピンフロ ップ 磁 場 ( 0 H sf = 6.9 T) と 異 方 性 エネルギー (K u = 1.4 X 10-1 J/mol) が 得 られる 様 々な 温 度 における 磁 気 トルク 曲 線 を Fig. 3 に 示 す ス ピンフロップ 磁 場 は 温 度 の 上 昇 に 伴 い 大 きくなる また スピンフロップのピークは 温 度 上 昇 に 伴 い 小 さくなり 52 K では 完 全 に 消 失 する これはスピン 磁 化 率 の 異 方 的 な 温 度 依 存 性 から 決 めたネール 温 度 (T N = 50 K) とよく 一 致 する 反 強 磁 性 秩 序 を 示 す 最 も T c の 高 い 有 機 超 伝 導 体 -(ET) 2 ICl 2 と(MDT-TS)(AuI 2 ) の 反 強 磁 性 パラメータと 超 伝 導 転 移 温 度 を Table 1 に 示 す[8,9] MDT-TS 塩 の 反 強 磁 性 パラメータは 極 めて 大 きな 値 である 一 方 超 伝 導 転 移 温 度 は ET 塩 の 半 分 にも 満 たない 両 者 の 構 造 上 の 大 き な 違 いは ET 塩 では 強 い 2 量 体 形 成 によりエネルギーバ ンド 充 填 率 が 0.5 であり MDT-TS 塩 は 不 整 合 格 子 のため である 点 である 電 子 相 関 がより 強 い 系 は ET 塩 で ある ET 塩 に 関 しては 電 子 相 関 が 強 いほど T c が 上 昇 す る 傾 向 にあることが 有 効 質 量 の 計 算 値 と 実 験 値 の 比 較 か ら 示 唆 されている[10] これは ET 塩 が MDT-TS 塩 より 高 い T c を 有 することと 矛 盾 しない 構 造 上 のもう 一 つの

27 大 きな 違 いは 不 整 合 格 子 であるが 不 整 合 格 子 ポテンシャ ルと 超 伝 導 発 現 の 関 係 は 未 だ 明 らかではない Table 1. Antiferromagnetic and superconducting parameters of organic superconductors. (MDT-TS)(AuI 2 ) (ET) 2 ICl 2 T N (K) H sf (T) K u (J/mol) 1.4 X X 10-3 T max c (K) P (GPa) Band filling (2) 0.5 Ground state Antiferromagnetic insulator Antiferromagnetic Mott insulator 4. まとめ 不 整 合 格 子 系 有 機 超 伝 導 体 (MDT-TS)(AuI 2 ) の 磁 気 ト ルク 測 定 から 明 瞭 なスピンフロップ 転 移 を 観 測 した こ の 物 質 は 高 いネール 温 度 (T N = 50 K) と 高 いフロップ 磁 場 ( 0 H sf = 6.9 T) を 有 するが 超 伝 導 転 移 温 度 は 高 くない 強 相 関 電 子 系 となる 1/2 充 填 率 からずれたバンド 充 填 率 が T c を 低 下 させている 可 能 性 がある なお 本 研 究 成 果 は T. Kawamoto et al., Phys. Rev. B 77, (2008)に 掲 載 されている Fig. 2 Magnetic torque curves at 1.7 K under various magnetic field directions of and, which are the angles tilted (a) from b to c and (b) from a to c axes, respectively. The red lines are the fitted results. 5. 参 考 文 献 [1] K. Takimiya, Y. Kataoka, Y. Aso, T. Otsubo, H. Fukuoka, amd S. Yamanaka, Angew. Chem. Int. Ed. 40, 1122 (2001). [2] T. Kawamoto, T. Mori, K. Takimiya, Y. Kataoka, Y. Aso, and T. Otsubo, Phys. Rev. B 65, (R) (2002). [3] K. Takimiya, M. Kodani, N. Niihara, Y. Aso, T. Otsubo, Y. Bando, T. Kawamoto, and T. Mori, Chem. Mater. 16, 5120 (2004). [4] T. Kawamoto, Y. Bando, T. Mori, K. Takimiya, and T. Otsubo, Phys. Rev. B 71, (2005). [5] E. Ohmichi and T. Osada, Rev. Sci. Instrum. 73, 3022 (2002). [6] K. Yosida, Prog. Theor. Phys. 6, 691 (1951). [7] T. Nagamiya, K. Yosida, and R. Kubo, Adv. Phys. 4, 1 (1955). [8] N. Yoneyama, A. Miyazaki, T. Enoki, and G. Saito, Bull. Chem. Soc. Jpn. 72, 639 (1999). [9] H. Taniguchi, M. Miyashita, K. Uchiyama, K. Satoh, N. Mori, H. Okamoto, K. Miyagawa, K. Kanoda, M. Hedo, and Y. Uwatoko, J. Phys. Soc. Jpn. 72, 468 (2003). [10] T. Kawamoto and T. Mori, Phys. Rev. B 74, (2006). Fig. 3 Magnetic torque curves at = 1.0º under various temperatures